2018年10月15日号(e船団書評委員会)

原 ゆきの推す2冊

短歌ムック
「ねむらない樹」vol.1

 短歌を読む…誰かがこっそり書いた日記を盗み読みする感覚がある。湿り気があって恥ずかしい感覚。この本も、こっそり買ってきた。注目作が多数。読んでいるところを、人に見られたくなかった。読み終えると自分も作りたくなり、何首か作って、その後ギャッと言って放り出した。やはり、恥ずかしい。どうしてだろう。

本の画象

株式会社書肆侃侃房(1300円+税)
2018年8月刊
立花 隆著
『死はこわくない』

 自殺を禁忌と捉えない立花さんに唖然。人間の健全な精神的成長の一階梯であり、子どもに自殺機械を工作させても(!)と。「(自殺が)ダメだと言う必要はない。だけど、やり直せないよといえば十分」と。禁忌とすることで却って生じていたらしい磁力が突然無くなって、ぽかん。頭の中の何かが、確かに変質して、ぽかん。

本の画象

文春文庫(600円+税)
2018年7月刊

赤石 忍の推す2冊

高浜虚子著
『俳句の五十年』

 1942年12月に刊行の口述集の文庫化。虚子68歳の時。子規との邂逅が1891年夏だから、まさに「俳句の50年」である。世俗的には大成功を収めた人だが、本書を読む限り、他人を押し退けても成り上がろうとした感じは余り受けない。流れの中で不本意ながら前面に押し出されたようにも。根源的な部分では目立たず、大学教授のままの漱石等と面白可笑しく、市井の中で人生を全うしたかったのかも知れない。

本の画象

中公文庫(860円+税)
2018年8月刊
芳賀博子川柳句集
『髷を切る』

 素敵な川柳句集である。使用する言葉には意外性があり、取り合わせも斬新である。となると、俳句と川柳との相違は何か。今さら切れ字の有無、自然と事象、詠む対称の違いという説明では満足しない。では季語。坪内氏が言うように、作者の存在を薄める、読み手に解釈を託するために俳句は季語を使い、川柳は例え季語であっても、自分を主張するために、言葉として使用するという考えが一番しっくりと、私にはする。

本の画象

青磁社(1600円+税)
2018年9月刊

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