2019年7月15日号(e船団書評委員会)

紀本直美の推す2冊

デイヴ・エガーズ文/レイン・スミス絵/青山南訳
『あしたは きっと』

 曇りがちな表情の男の子が、じょじょに、そして、さいごはどんどん表情豊かになっていきます。「あしたはきっと」大人になって全く使わなくなった言葉だなあ、と。「あしたはきっと」をもっと使いたくなる世界に!

本の画象

BL出版(1600円+税)
2019年6月刊
塩谷歩波著
『銭湯図解』

 銭湯だいすきなので、すぐに手に取りました! 設計事務所にいた著者が建築の図法で銭湯を描いています。イラストをすみずみまでみると、お客さんの会話が聞こえてきそう。銭湯に行きたくなります!

本の画象

中央公論新社(1500円+税)
2019年2月刊


宇都宮さとるの推す1冊


古田徹也著
シリーズ世界の思想
ウィトゲンシュタイン

『論理哲学論考』

本の画象

 「語りえないものについては沈黙しなければならない」と哲学の終焉を告げた20世紀初めの天才言語哲学者の難解な『論考』を初心者向けに解説した一冊。それでもこの哲学書をすべて読み解くことは難しいのだが、我々素人はその論理展開の過程の中から哲学者のユニークな発想を誤読を恐れずに読み取っていくことが大切ではないか。そこで注目したのが「語る」と「示す」というアイデア。「語る」とは、世界のコト・モノを言葉で論理的に説明することだが、ただ「語りえないものがある」という、それは、“神、死、人生”など形而上のコトやモノやセカイ。冒頭の名言はまさにここから生まれた。だが、「語りえないもの」も「示す」ことによって表現できるとも。「示す」とはモノ・コト・セカイを“像やイメージ”で提示することだと。飛躍するがこのアイデアを文芸・詩歌に当てはめると、さしずめ短歌は「語る」、俳句は「示す」ではないか。さらには、実は俳句は「示す」ことによって人生や哲学を表現できる深い文芸ナンダなんて、妄想?がどんどん広がっていく。ウィトゲンシュタイン哲学は言語について様々なヒントが隠されていてまことに面白い。

KADOKAWA(1800円+税)
2019年4月刊

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