2020年4月6日号(e船団書評委員会)

原 ゆきの推す1冊


小西昭夫著
朗読句集『チンピラ』

本の画象

 俳句は黙読するもの、とどこかで思っていた。句を作る時や読む時に、黙読という「声」を自分の内側で多用することに慣れていた。しかし句が音読される時(例えば句会などで)黙読では気づけなかった様々な点に明確に気づけるとも感じていた。そんな折、この本と出会った。指まで染まりそうに真っ赤な表紙は、やけに艶っぽい。写真の小西昭夫氏は腰に手をやり楽しげ。「初夢の変なところで目覚めけり」「青田又青田雨雨雨青田」聴衆のざわめきと笑い。前書きも述べさらにウケようとする小西氏。ああ、ウケるのもアリなのだと、しかつめらしいハラユキは目を見張る。「この朗読は作者に声をかえしてやる試み」との言葉が、あとがきに。また目を見張る。

マルコボ.コム(1000円+税)
2020年1月刊


赤石 忍の推す2冊

三木 卓著
『若き詩人たちの青春』

 昔、一度だけ著者を見た事がある。某地方都市のブックフェアの展示会場。講演で紹介する自書が展示されていないと、版元の担当者を怒鳴っていた。静謐な詩から温厚な人物をイメージしていたが、激情家なのだと思った。本書を読んで、成る程と改めて納得した。1960年から70年前後。あの頃には確かに「詩人」達がいた。向き合えるだけの時代性があったとも言える。懐かしい詩人達の名が連なり、各々の置かれた状況との格闘が、著者の独自の視線から生々しく記されている。

本の画象

河出文庫(1350円+税)
2020年3月刊
うさ著
『災害で消えた小さな命』

 2011年3月11日、津波にのまれたのは人間だけではない。家族の一員でもあった、多くの身近な動物たちも海に消えていった。中には、愛するペットと離れることができず、避難所前に止めた車と一緒に流された人もいたと言う。一緒に避難所に入れず、泣く泣く自宅や屋外に繋いで波に消えた愛犬、愛猫への罪悪感から、空白となった心の隙間を埋めることを目的として、著者は個々の話を受け止め、その姿を絵に描いて共に生きる証にしてもらう活動を、現在までこつこつと続けている。

本の画象

毎日新聞出版(1600円+税)
2020年2月刊


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