2019年11月18日号(e船団書評委員会)

舩井春奈の推す2冊

藤井なお子句集
『ブロンズ兎』

 「ホームから十頭身の秋がくる」のように我が家に届いた。「囀りやときに曲線ときに点」のような軽やかな句集。時に「あはあはと泉の端をワンピース」にしてみたかと思えば、「多佳子忌のふくらはぎまで日本海」と開放的な句が多い。これからは「制服に日向の匂ひ冬木立」の季節。

本の画象

ふらんす堂(1700円+税)
2019年10月刊
川島由紀子著
『阿波野青畝への旅』

 「小学生向けの受験国語に、正岡子規や高浜虚子の俳句に混じって阿波野青畝の俳句が出てきた。一行だけの俳句と名前。ほかに情報はない。いや待てよ……この本があるじゃないか! 一行から始まった好奇心は、この本を通して旅が始まった。途中ブランコに乗る青畝とすれ違う。

本の画象

創風社出版(2000円+税)
2019年10月刊

松永みよこの推す2冊

若山牧水著
『エッセンシャル牧水』
 妻が選んだベスト・オブ・牧水

 牧水夫人で自らも歌人の喜志子は、牧水の死後、主宰を継承し彼の歌を守り伝え続けた。彼女の存在なくして、牧水の歌がここまで広く知られることはなかっただろう。その一方で、私たちが今見ているのは、喜志子が「こうであってほしい」と望む編集された牧水である可能性も否定できない。…歌よみ夫婦って難しいんだろうな。

本の画象

田畑書店(1320円・税込)
2019年9月刊
泉 鏡花著/秋山 稔監修/白水銀雪訳
 本当にさらさら読める! 現代語訳版
『泉鏡花』

 「本当にさらさら読める」って、あの鏡花様をさらさらと読んだら面白くないのでは…と思っていたが、訳者である白水銀雪氏の言葉が洗練されていて、鏡花世界を身近なものにしてくれた。『高野聖』とか教科書に載せられない妖しく美しい名作って結構あるんだよね。人に薦めたい気持ちとこっそり読みたい気持ちが半々の良書。

本の画象

角川書店(怪異・幻想 傑作選)(1300円+税)
2019年8月刊

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