2017年8月21日号(e船団書評委員会)

香川昭子の推す2冊

リチャード・ブローティガン著/福間健二訳
『ブローティガン東京日記』

 ああ 1967年6月1日 午前0時1分だ ぼくたちが死者となったあとに 生きるすべての者たちよ ぼくたちはこの瞬間 ぼくたちはここにいると知っていた
 日本に滞在した1ヶ月半の日記のような詩集の再刊。「日本の俳句詩人一茶をたたえる」という題の詩。日本の飲み屋で 酔った へいき だよ*は575だけど。

本の画象

平凡社(1300円+税)
2017年4月刊
福田貴大著
『おんなのこはもりのなか』

 作者は1985年生まれの演劇作家。認識や常識なんて簡単に覆す女子への尽きない興味。日々振り回され、悶々としながら、うでの毛、目やに、口内炎などの、ちょっと変なものから、女子への愛しさやら妄想やらを書いている。母や祖母も、時にはおんなのこだったりする。ひとりごとみたいなものがどんどんふくらんで文になっている。

本の画象

マガジンハウス(1300円+税)
2017年4月刊

原 ゆきの推す2冊

金子兜太・いとうせいこう著
『他流試合
 ―俳句入門真剣勝負!』


 やっぱり季節というのは怖いものだと思うでしょう、と、この対談集での兜太氏の発言。季節への感覚は事物の薄皮を剥いて鮮やかにしてくれる、季語はお喋り過多にならず一句を委ねられる便利なもの、と思っていたが、兜太氏は、そこが落とし穴みたいに思える、と指摘。まずは吃驚。便利と思った自分を疑おう。まだ考えるぞ。

本の画象

講談社+α文庫(890円+税)
2017年2月刊
小川洋子編著
『小川洋子の陶酔短篇箱』

 仮に、あてどない駅員さん、なんてものが存在するとして、そういうのは何だか困る、という気がする。あてどない店員さん、先生、どれもちょっと困るな。でも生きていくのに邪魔な、あてどないことを思う人が私は好きなのだ。小川洋子さんの選ぶ16の短篇には、そういう人ばかりが出てくる。読むほどに帰り道を見失いそう。

本の画象

河出書房新社(860円+税)
2017年6月刊

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