2020年6月22日号(e船団書評委員会)

紀本直樹の推す1冊


アーサー・ビナード作/スズキコージ画
『そもそもオリンピック』

本の画象

 オリンピックという言葉を今年に入って、何回耳にしたでしょうか? なぜこれほどまでにオリンピックに世界が注目するのでしょうか?
 この絵本は「日本人初のオリンピック金メダリスト」織田幹雄の人生を描きながら、そもそもオリンピックってなんだろう? と考えるきっかけを与えてくれます。
 刊行されたのが、2020年2月。著者ふたりは、この絵本を制作しているとき、まさかオリンピックが延期になるなんて考えていなかったと思います。来年、オリンピックはどうなるのでしょうか。織田幹雄は、天国でこの騒動のことをどう思っているでしょうか。

玉川大学出版部(1800円+税)
2020年2月刊


宇都宮さとるの推す1冊


ハルオ・シラネ著
『四季の創造』
日本文化と自然観の系譜

本の画象

 日本文学の研究で知られるコロンビア大学教授が、日本文化と自然や四季との関係性を様々な角度から検証した一冊。検証は和歌を中心に連歌、俳句などの詩歌をはじめ、絵画、調度、衣装、能、立花、さらには里山など、伝統文化・芸能から生活様式まで多岐にわたる。それらを二次的自然と呼び、平安期以降、天然の自然の代用品として創造・発展させてきた経緯と役割をきめ細かく解き明かしていく。
 ただ、読み進めると自然や四季と寄り添ってきた日本人が浮き彫りになりその深い関係性が明らかになってくるのだが、ひとつの問いかけが聞こえてくる。それは、そこまでの強い自然とのつながりが、今現在の日本の生活や文化の中にどこまで残っているのか。とりわけ、現代詩、短歌、俳句などの詩歌の中に。いずれも色濃く自然とともに存在していた時代が間違いなくあったのだが、その濃度はどんどん希薄になっているのではないか。日本の詩歌のゆく先が判然としない今こそ、もう一度その自然との根源的なかかわりを、歴史を含めて見つめ直してみてはどうか。そんな問いかけの一冊でもあった。

角川選書(2000円+税)
2020年5月刊

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