2019年8月19日号(e船団書評委員会)

田中俊弥の推す1冊


山本純子詩集
『給食当番』

本の画象

 しなやかさは知性の力であると、山本純子さんの詩を読んで、そう思う。本詩集は、前作『きつねうどんを食べるとき』(2018、ふらんす堂)につづく。読者をクスリとさせるユーモアは、本作においては、ちょっと控えめ。むしろ、季語の日常とは、こういうものでないかしらと伝えたいのでは。詩「てんとう虫」は、「地図記号が好きだ//畑 果樹園 針葉樹林/一つ一つは小さな記号が/一面に広がる世界を表している//今年 初めて見つけた/てんとう虫/ヨモギの葉っぱにとまっている//てんとう虫も かわいい記号だ/伝えているよ/このあたり一面 夏が広がっています と」とある。「声にすると、詩はいっそうげんきがよくなります。」それは、実は俳句の本質そのものではないかしら。

四季の森社(800円+税)
2019年8月刊


太田靖子の推す2冊

川副秀樹著
『笑う 神さま図鑑』

 神さまと共に笑うことを勧める本。71のほとんど知らない神さまばかりが紹介されている。箒神はお産に関係が深い。嫌なものを掃き出す力もあるという。映画などで戸口に立てかけられた箒の場面を思い出した。「江戸のヌードフィギュア江の島弁財天」「閻魔の脇侍・倶生神は地獄のスパイ」など各項のタイトルはかなり刺激的だ。

本の画象

言視舎(1200円+税)
2019年5月刊
橋本 昇著
『内戦の地に生きる』
フォトグラファーが見た「いのち」

 ソマリア、ルワンダ、カンボジアなど内戦や紛争に苦しむ9ヵ国を取り上げ、写真と文章で綴る。最終章は飯館村。白黒の写真が想像力を掻き立てる。作者の信条は、自身はプラカードを掲げないこと。本書によって複雑な世界の内面も理解できる。自爆要員のひとりは、飼っていた鳩の死を一日中泣き悲しむような子供だったとは。

本の画象

岩波ジュニア新書(900円+税)
2019年3月刊


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