2018年12月17日号(e船団書評委員会)

松永みよこの推す2冊

坂本宮尾著
『竹下しづの女』
 理性と感性の俳人(1887-1951)

 (もつと言葉を穏ヤカニシテハイカガデス)と虚子に添削された竹下しづの女の句は、気風がよく、瑞々しく、辛辣な諧謔性を持ち今読んでも新しい。客観写生では飽き足らず、主観をあらわにした情熱的な句は、彼女が、生きる中で味わった苦労から生み出されたものと知り、「ボーッと生きてんじゃねえよ!」と活を入れられた。

本の画象

藤原書店(3600円+税)
2018年7月刊
与謝野晶子著
『私の生い立ち』

 最も心に残ったのは、父がこしらえてくれた「西瓜燈籠」の章。「青白く光って透き通る美しさの限りもなく思われる燈籠」が三日目に「彫跡は錆色を帯び、青い地は黒い色になっ」ているのを見て、「初めて老いと云うことと死と云うこと」を考えた少女晶子の隣でその燈籠を見ているような、しんと静まり返った気持ちになった。

本の画象

岩波文庫(640円+税)
2018年8月刊

田中俊弥の推す2冊

最果タヒ詩集
『天国と、とてつもない暇』

 消費されないコトバ、反芻されるコトバ、それが詩だとおもっていた。純度の高いコトバこそ詩だとおもっていたが、この詩集を読むと、どうもちがう。詩のことばの力は、自分の世界そのものを逆倒、屹立させてこそ価値があるのだと。「宇宙の果ては宇宙の果てだけを見ている。」(「夏の深呼吸」)。詩集は、もっと読まれるべきなのだ。

本の画象

小学館(1200円+税)
2018年10月刊
白川 静著
『白川静 漢字暦 2019』

 師走を迎え、世の中すべてが暮れては新たに生まれんとして動き出している。1日1日とて、暮れては、また生まれ出づる。その当たり前がひしと感じられるこの12月。本屋には、カレンダーがあふれている。1月は「寶」、12月は「聆」、月ごとの漢字は、古代の漢字の姿のままの呪力で迫ってくる。時は神にして聖なるものなのだ。

本の画象

平凡社(1300円+税)
2018年10月刊

[e船団・週刊ブックレビュー]バックナンバー


トップへ戻る