2019年1月21日号(e船団書評委員会)

香川昭子の推す2冊

谷川俊太郎著
『バウムクーヘン』

 かなだけで書かれた詩集。ぱっと開いたところを音読。むずかしい言葉はないけど。「なに?」読み返す。なーんだ、そういうことか。こんな風に展開するのか。時間も場所もなんのことわりもなく移動する言葉たちのひらひらを楽しむ。たとえばこんな言葉のつらなり。(れきしのほんがとりおとすせつなを/わたしはとりあえずいきています)「せつな」より。

本の画象

ナナロク社(1300円+税)
2018年9月刊
和田博文編
『星の文学館』
 銀河も彗星も

 35篇の星の文学アンソロジー。初めて稲垣足穂を読んだ。「星を造る人」。少年っぽい発想に驚いた。川端康成「雪国」からの「天の河」。昔読んだ時は、ほとんどわからなかった島村と駒子の交情みたいなものが感じられた。また、埴谷雄高、倉橋由美子など、なんとなく敬遠していた作家たちを、ひょいと読んだ。味見だけはできた。

本の画象

ちくま文庫(820円+税)
2018年7月刊

原 ゆきの推す2冊

工藤一紘著
小説『露月と子規』

 文士を夢見て上京した青年露月。子規と出会い評価を得た喜びが初々しい。子規庵での句会、皆「お頼みィ」と言って入ってくる。これは伊予の俳句仲間の挨拶言葉。秋田出身の露月も、つられて「お頼みィ」と言う。「いま、たれが来ておいでるのぞい」と子規の声もする。(どんな声だろう?)「秋風の猪病んで死なんとす」露月

本の画象

秋田魁新報社 さきがけ文庫(800円+税)
2018年7月刊
佐倉海桜著
五・七・五で伝わる母の味
『一食一句』

 いわゆる料理本。違うところは子規の句がちりばめられている点。「夕立や豆腐片手に走る人」の句に続いてお酒に合う麻婆豆腐、が紹介されたりしている。子規の句を好んだ著者の母は料理好きでもあり、ここには母のレシピも反映されているらしい。それにしても、夕立や、の句は面白い。滑稽味。走る振動が豆腐の面に及ぼす光。

本の画象

幻冬舎(1200円+税)
2018年12月刊

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