2017年9月25日号(e船団書評委員会)

塩谷則子の推す2冊

久松健一著
『原稿の下に隠されしもの』
遠藤周作から寺山修司まで

 剽窃論。「虚言、剽窃なんでもござれ」の修司。修司=修辞。虚言、剽窃は悪か?そうではない、そこに修辞の面白さがあると筆者は言う。「一本のマッチをすれば湖は霧・めつむれば祖國は蒼き海の上」(富澤赤黄男)の剽窃と指摘されても、修司の「マッチ擦るつかの間に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」は創作だ。

本の画象

笠間書院(2500円+税)
2017年7月刊
新村 恭著
『広辞苑はなぜ生まれたか』
新村出の生きた軌跡

 『広辞苑』は頼まれ仕事だった。言語学者として天草本『伊曽保物語』などの南蛮切支丹研究、25年続けた京大図書館長の仕事が主だった。だが『大日本国語辞典』のような大部のものでない家庭用・図書室用辞書の必要性を感じていたと孫の筆者は言う。ノブレス・オブリージュ―新村出は高貴に生きその義務を果したと思う。

本の画象

世界思想社(2300円+税)
2017年8月刊

宇都宮さとるの推す2冊

原田マハ著
『いちまいの絵』
生きているうちに見るべき名画

 『楽園のカンヴァス』はじめアート小説で人気を得ている作家が、ピカソやダ・ビンチなどの自分に影響を与えた26枚の名画について“いちまいいちまい”その出会いや想いを綴っている。著者は小説のモチーフを絵画から得るというが、では、果たして詩歌ではどうだろうか。本書の中ではゴッホの『星月夜』が星と月の空に伸びる一本の糸杉の影が幻想的で、確かに詩的イメージが膨らむよう。ただ、私は音楽の方が刺激的だと思うのだが……。

本の画象

集英社(900円+税)
2017年6月刊
泉田玉堂著
『軽やかに生きる』
心をもっと自由にするための
108の禅語


 本来、禅は不立文字、教外別伝、“それを言っちゃおしまいよ”の世界だが、あえて、大徳寺現住持である著者が、難しい漢字が並び近寄りがたい禅語を分かり易く解説した一冊。よく見聞きする言葉もあるが、ひとつづづ読み解いてみるとなかなか面白い。なかでも、薫風自南来、楓葉経霜紅、柳緑花紅、梅花和雪香などなど、四季折々の自然とともにある言葉も多く興味深いものがある。また、一句一句の音読がおススメ。心地よいリズムが身を軽くしてくれそうだ。

本の画象

世界文化社(1300円+税)
2017年6月刊

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