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2018年1月8日号(e船団書評委員会)

塩谷則子の推す2冊

山折哲雄著
『勿体なや祖師は
 紙衣の九十年』

 ―大谷句仏―

 書名は大谷句仏(1875~1943)の代表句。句仏は東本願寺管長だった。祖師は親鸞。碧梧桐の全国俳句旅行を支援、虚子を東本願寺に招いたりした。教団革新の中心にいた暁烏敏と虚子が知り合い、句仏につながったのだろうと筆者はいう。句仏は教団の財政再建に失敗、50歳で引退する。63歳での自選句集名は『我は我』。

本の画象

中央公論新社・中公叢書(1600円+税)
2017年9月刊
池内 紀著
『記憶の海辺』
 一つの同時代史

 27歳で留学したウィーンでは、奨学金の延長に支障がないことを確かめ、大学の授業に出ず、街歩きや女優の追っかけ。「目や耳や感覚を鍛えておこう」。一方で市立図書館に日参、昔の新聞・雑誌を閲覧、ノートをとる。自由。知的好奇心旺盛。生涯に捨てた恋二つ。人間観察が鋭い独文学者の回想録。筆者は40年生まれ。

本の画象

青土社(2400円+税)
2017年12月刊

宇都宮さとるの推す2冊

谷川俊太郎、横尾忠則、石牟礼道子、
筒井康隆著

武田将明、飯田橋文学会編
『現代作家アーカイブ2』
自身の創作活動を語る

 現代の個性あふれる4人の詩人・作家たちが自分の創作活動の機微を語ったインタビュー集。聞き手の第一線の文学者たちが作家の本音を引き出していていずれも興味深いが、20代から詩作を職業としてきた谷川俊太郎の一言一言が刺激的だ。「現代詩が意味に偏っていて……日本語の豊かな面白い音を無視している」「言語以前の存在に…近づきたい」「道端に生えている雑草みたいな詩が書きたい」などなど。考えてみたいフレーズである。

本の画象

東京大学出版会(2200円+税)
2017年12月刊
本橋信宏著
『新橋アンダーグラウンド』

 行間から新橋(特に烏森口界隈)の街が持つ独特の臭いがぷんぷんと漂ってくるこれぞルポルタージュという一冊。『ガード下の焼き鳥(豚モツ)屋』『SL広場』『花街、闇市跡』『風俗』などある種の魔境がしたたかに生き続けている様をこれでもかとリアルに抉り出している。評者も20代の10年程、人間社会の光と影が交錯するこの街の素敵な不穏にハマっていた一人だが、新橋の妖しげな魅力は今も色褪せていないようだ。

本の画象

駒草出版(1500円+税
2017年11月刊



2018年1月1日号(e船団書評委員会)

紀本直美の推す2冊

カーソン・エリス作/アーサー・ビナード訳
『なずず このっぺ?』

 「なずず このっぺ?」「ずんずううう」「じゃじゃこん!」昆虫たちの会話に引き込まれていきます! よく見ると「、」や「。」の文字のデザインが複数あり、それも意味があるのかも! 虫好きの人の方がよくこの会話がわかるのかしら?

本の画象

フレーベル館(1600円+税)
2017年11月刊
谷山彩子作
『文様えほん』

 「文様」と「紋様」と「模様」の違いを初めて知りました! 日本の文様や世界の文様がたくさん紹介されていて、ながめているだけで楽しくなります。これからは、今まで気がつかなかった文様が目に留まるようになりそう!

本の画象

あすなろ書房(1400円+税)
2018年1月刊

武馬久仁裕の推す2冊

安西 篤句集
『素秋』

 「春愁へこみやすきはビール缶」「原子炉の全き球形かぎろえり」「手のひらに円錐を置く秋思かな」という句を読みながら、「自然は円筒形、球形、円錐形からなっている」というセザンヌの言葉を思い出した。しかし、それら世界を形成する形態は、句集においては、みな危うい。全き球形などは、破滅の兆しを見せ、かげろうのようにゆらめているのだ。

本の画象

東京四季出版(2800円+税)
2017年11月刊
藤尾 州句集
『美濃白鳥』

 死の淵を何度も潜り抜けたという。しかし、死を免れても作者の俳句には光明はない。「地も天も昏し榠樝の点りゐて」。「かりん」という心地よい響きとは裏腹に、魁偉な相貌を持つ榠樝の実が暗く点るのみ。まさに「あぢさゐ昏しあの家もこの家も」として、世界はある他ないようだ。「秋刀魚焼く尾張しづかに苦山河」。故郷の山河も苦い。藤尾州に光あれ。

本の画象

木偶坊俳句耕作所(私家版)
2017年10月刊



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