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| 2012年1月30日号 | (e船団書評委員会) |
| 赤石 忍の推す2冊 |
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荒川洋治著 『忘れられる過去』 「キルギスの草原に立つ人よ/君のありかは美しくとも/再びひとよ/単に/君の死は高低だ」という一文を含む詩「キルギス錐情」に、初めて詩が高さを持つことを知ったような気がする。同時に青野季吉や真山青果等、色を含む人名を多用したことに、当時、精神を理解せず表面をなぞっているだけと酷評されたことも覚えている。だが本書を読むと、本・作家に対する膨大な知識がその裏に根ざしていることが分かるし、柔らかな読書に対する姿勢がそれらを支えていることも理解できる。講談社エッセイ賞本の文庫化。少々気障だが、キース・ジャレットのソロピアノCD等をバックに一読すると、嫌のことを忘れ至福の時間を得ること、それには間違いはない。
朝日文庫(本体780円+税)
2011年12月刊
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加地伸行著 『沈黙の宗教―儒教』
儒教。孔子、道徳、韓国・中国の一族礼拝、江戸武家社会のイデオロギー等、断片的な知識があるだけで宗教と感じたこともない。確かに本書の言う通り、輪廻転生を死生観に持つ仏教なら墓も位牌も彼岸参りも必要ないし、先祖も転生し、他人もしくは別世界にいる訳で大事にすることもない。日本仏教は大衆化を図るために、儒教の招魂再生、祖先礼拝等の思想を巧みに取り入れ、我々は無自覚にその儒教の教えを実行しているのだそうだ。儒教は家族による家族のための宗教行為であるゆえ、教団も集会所も持たずひたすら沈黙していると著者だが、絶対神を持たない日本人にとって西洋個人主義は、恐れをしらない利己主義な人間を育てるだけ等、刺激的な示唆に満ちている。
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ちくま学芸文庫(1200円+税)
2011年4月刊
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| 田中俊弥の推す2冊 |
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高橋睦郎著 『詩心二千年』 スサノヲから3・11へ 国語の先生としての仕事を営んで、すでに三十年以上。小林秀雄の古典評論に魅せられ、いくばくかの古典文学の本を読んできた。そのなかには、山本健吉の『詩の自覚の歴史』(1979)もある。ホンモノの教養が問われている今日、本書に展開されたスリリングな詩史・詩心論が、ニッポンのコモンセンスとなる日を切に希求したい。 ![]() 岩波書店(3400円+税)
2011年12月刊
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伏木暢顕著 「発酵食堂・豆種菌」の 『麹の料理』 「麹」とは「米や麦、大豆などの穀物に火を入れて、種麹(通称、もやし)を振りかけ、麹菌(=麹カビ)を繁殖させたもの」。お酒やみそやみりんなどに使われているのが「ニホンコウジカビ」で、別名は「黄麹菌」。世界でも有数の分解力をもつ酵素を生産するのだ。麹の力はニッポンの力。ホンモノの味へ近づく実践をはじめよう。
日本文芸社(1200円+税)
2011年9月刊
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| 2012年1月23日号 | (e船団書評委員会) |
| 三好万美の推す2冊 |
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町田 康著 『残響』 中原中也の詩によせる言葉 「詩によせる言葉」とあるが、よく見かける鑑賞文や作品論の類ではない。中原中也の詩の世界を受けて、著者独自の新たな散文詩のような文章が展開されている。ウェブマガジンに連載されていた部分が多いためか、ネット世代を意識した若者言葉が時々見られるのが特徴。中也の詩によせる言葉、自分ならどう書くか・・・。感覚を研ぎ澄まし、ふさわしい言葉を紡いでいけるだろうか。
NHK出版(1400円+税)
2011年7月刊
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三山 喬著 『ホームレス歌人のいた冬』
温かき缶コーヒーを抱きて寝て覚めれば冷えしコーヒー啜る (ホームレス)公田耕一
2008年の暮れから翌年夏まで、朝日新聞歌壇にその短歌が掲載され、話題となった歌人公田耕一。突然投稿が途絶えた彼を案ずる投稿仲間は全国に及び、著者のように雑誌連載で追跡調査する者まで現れた。ホームレスであるが故に注目されたことは否ないと言っているが、淡々としていながらも、嘘のない澄んだ言葉で詠われる公田氏の短歌に力があるからだろう。それだけに、選外も含め全ての公田氏の短歌をまとめて掲載していないのが惜しい。
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東海教育研究所(1800円+税)
2011年3月刊
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| 朝倉晴美の推す2冊 |
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「俳句あるふぁ」増刊号 『わたしの一句』 現代300俳人書き下ろし自句自解 300人の現代俳人のプロフイールとミニエッセイ付き。ついでにお顔写真も。とっても便利な一冊。現代俳句界の人間関係もなんとなく頭に入る感じ。お恥ずかしながら、お名前とお顔と俳句が、私の頭のなかで繋がっていない方々が、すっきりいたしました。 ![]() 毎日新聞社(1500円)
2012年1月刊
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杉浦 由美子著 『20代女性が セックスしてない』 彼女たちはなぜ男に求められない? そうか…、20代の女子はそうなのか…ということは20代前後の男子もそうだということ。本書では、本気ではない人とは一線を超えられるが、恋愛の対象の相手とは「できない」女子の本音を論じる。理由の一つに彼女たち独特の自尊心がある。ちょっと寂しい現実。恋で泣くのも悪くないのに。
角川oneテーマ21 新書(760円)
2011年12月刊
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| 2012年1月16日号 | (e船団書評委員会) |
| 若林武史の推す2冊 |
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NHK・NHKサービスセンター編 『週刊 ブックレビュー』 20周年記念 ブックガイド NHKの週刊ブックレビュー20周年を記念して発行された一冊。故・児玉清氏の思い出を語る部分が多く、追悼を意識したつくりになっている。合評がよい番組であるが、この本では、様々な著名人のお薦めの本が紹介されている。
NHKステラMOOK(980円)
2011年12月刊
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アルボムッレ・スマナサーラ著 『小さな「悟り」を積み重ねる』
人間の小ささを肯定的に捉え、いかに生きるかをわかりやすく説いた一冊。人生は紙コップ程度のもの、と言われ何だか楽になった。力を抜いて生きるためには、能力を上げればよいという。スリランカ上座仏教の長老が説く話には、説得力がある。
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集英社新書(700円+税)
2011年11月刊
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| 木村和也の推す2冊 |
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岸本尚毅著 『生き方としての俳句』 句集鑑賞入門 俳句がその人の生き方や人生と不可分に結びついていた幸福(?)な時代の俳句を、「個展」としての句集によって振り返って見ようとする試みである。虚子を取り巻く俳人達の中で、今まであまり取り上げられることの少なかった俳人に焦点が当てられている。 ![]() 三省堂(1800円+税)
2011年12月刊
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植木雅俊著 『仏教、本当の教え』 インド、中国、日本の理解と誤解 インドで生まれた仏教が中国、日本と伝わる過程で、どのように変容してきたか。その変容は文化の差であると同時に、教典の誤読からも生まれているとして、サンスクリット原典から読み解く。思想家、思惟する人としての釈迦像が浮かび上がる。
中央公論新社(800円+税)
2011年10月刊
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| 2012年1月9日号 | (e船団書評委員会) |
| 武馬久仁裕の推す2冊 |
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小川双々子著 『非在集』 2006年1月17日に83歳で亡くなった戦後を代表する俳人の一人、小川双々子の最終句集である。全796句。巻末に双々子の2005年12月2日から2006年1月6日までの句帳が影印されている。最後の句は「屋根の雪せり出し雫く人の世は」である。降り積もった雪は融けて徐々に屋根からせり出し、雫となって尽きることなく堕ちて行く。それはどうしようもないことなのだ。この句の次には、「十二月二十八日/いよいよ押し詰り年の終りへ」とあった。
木偶坊俳句耕作所(非売品)
2012年1月刊
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山崎十生著 『恋句』
恋の句を作りたい中高年俳人必読である。あらゆる恋の形が表現されており、かっこうのお手本集だ。まさしく「この上もなく薄氷の恋激し」であり、「遂げられし恋など邪道青き踏む」である。若い女性へのほのかな思いを詠った官能的な句もある。「美しき膕水を打ってゐる」。夏の日に、水を打っている短パンの女性に寄せた句だ。後ろ姿、しかも「ひかがみ」に着目した所に作者の技倆が光る。そして結論。「ほんたうの恋は片恋霏霏と雪」。
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破殻出版(非売品)
2011年10月刊
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| 鈴木ひさしの推す2冊 |
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三浦しをん著 『あやつられ文楽鑑賞』 国立文楽劇場で初めて文楽を観た時、太夫、三味線、人形、人形遣い、黒子、全てが舞台上に見えて、字幕まで流れ、「異様」に感じた記憶がある。私の視線は泳ぎ、公演の長さに一眠りしてしまった。が、その後、いつの間にか手元の床本が増えていった。文楽を愛する人の本、文楽をまだ遠巻きにしている人のための本。三浦しをん『仏果を得ず』(双葉文庫)も読めば、さらに楽しめる本である。 ![]() 双葉文庫(600円+税)
2011年9月刊
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内山 節著 『時間についての十二章』 哲学における時間の問題 「関係が主体の役割をはたしながら個体を生成している」「いかなる関係の創造が、どのような時間を生み出しうるのか」というように「関係」という言葉がこの本のキーワードである。この本の初版から18年後、3.11後に書かれた内山節『文明の災禍』には、「地震、津波、原発事故という不幸な経験は、確かな生は確かな関係とともにあるのだということを私たちに教えた」とある。
岩波書店(2600円+税)
2011年11月刊
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| 2012年1月2日号 | (e船団書評委員会) |
| 舩井春奈の推す2冊 |
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宮地 裕・甲斐睦朗監修 「日本語学」 2011年12月号 (第30巻 15号) 国語教師の知人友人達が俳句について話し出すと、決まって俳句指導における困難さに話が終結していた。 今月号の「日本語学」では学校教育における俳句が取り上げられている。教育系ではなく、日本語学の雑誌に取り上げられていることも意味があるだろう。
明治書院(895円+税)
2011年12月刊
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MOE編集部編 『絵本美術館のある旅』
絵本を主体にした美術館は少ない。
でも、心から落ち着く。優しい気持ちになる。 それは絵本の持つ力というものが、美術館の環境づくりに影響を与えるのだろう。 直接、絵本美術館へ行きたいけれど、物理的に叶わないとき、この本を見ているだけでもほんわかとなる。 ![]()
白泉社(1260円・税込み)
2011年6月刊
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| 塩谷則子の推す2冊 |
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五味文彦著 『西行と清盛』 時代を拓いた二人 西行は23歳で出家後、その繁栄が都に伝えられていた平泉など奥州を修行の場とした。帰京後東国の情報を得ようとして、また歌枕を見てきた歌人として尊重された。時代を読んだ上での修行。 武芸や蹴鞠にも秀でていたのに出家遁世したのは、積極的に生きようとしたからという説に納得させられる。清盛とは1118年生まれの同い年。 資料を駆使、清盛と比較して描かれた西行論。 ![]() 新潮社(1500円+税)
2011年11月刊
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渡辺京二著 『未踏の野を過ぎて』 著者は47年、17歳で大連から熊本に着のみ着のままで引き揚げて来た。6畳一間7人で暮らす。これらの経験から、長期的なスパンでものごとを考えようという警醒の書。「本当に世の中、変りますかな。」と冷静だが。「社会に役立とうが役立つまいが、人はすべて、生きよ、おまえはそれだけで意味があると告げられている。」時々この一節を思い出そう。天が地が、鳥が樹が花が告げている。
弦書房(2000円+税)
2011年11月刊
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