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2006年12月25日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの推す2冊


坪内稔典著
『子規のココア・漱石のカステラ』

 1998年版の文庫化。病床の子規は、いとまごいをする又従兄弟に、「もう少し居ておくれよ。お前帰るとそこが空っぽになるぢやないか」と叫ぶ。ロンドンの漱石は淋しい淋しいと妻に訴える。子規も漱石も淋しがり屋のようだ。著者は「変な存在」に「過渡の魅力」を見出す。子規も漱石も「変な人」であった。

本の画象

NHK出版(920円+税)
2006年11月刊
前田 愛著
『幻景の明治』

  「嗚呼 世は夢か幻か−野口男三郎事件顛末」、「日比谷焼き討ちの「仕掛け人」」の語り口、展開は、まさに松本清張の小説である。「日本風景論」の著者志賀重昂の描く鳥瞰図的戦場と田山花袋の描く虫瞰図的戦場の対比も興味深い。「維新」と「御一新」との対比で、漱石作品は一層面白くなってくる。

本の画象

岩波現代文庫(1000円+税)
2006年11月刊


武馬久仁裕の推す2冊


久保純夫著
『久保純夫句集』

 「ほぼ40年間の私が在ります」と「あとがき」にあるように、最初期の奇怪な「ぎるぎると釣瓶で水汲む毛深い猫」や、最近の南国耽美調の「くねくねとランブータンが近づき来」など400句が収録されている。この2句のオノマトペの使われ方からも分かるように、久保純夫の句は、極めて官能的である。官能的と言えば「ぎるぎる」の不器用さと「くねくね」の爛熟との違いもまた味わい深い。

本の画象

ふらんす堂(1260円)
2006年10月刊
椎名 誠著
『砲艦銀鼠号』

 これを読んだ後、『武装島田倉庫』をまたまた読んでしまった。そこで、一つ発見。それは、貨幣のことである。『武装島田倉庫』には、単位は一切出てこない。それどころか貨幣の影は薄い。それに対して、続編とも言える『砲艦銀鼠号』では、海賊を始めた主人公達がとある島で買った食糧代〆て「82元」とある。これは、何を意味するのか。シーナワールドが、徐々に現実に近づきつつあるのか、ないのか。それは、読んでのお楽しみ。

本の画象

集英社(定価1365円)
2006年6月刊



2006年12月18日号 (e船団書評委員会)

小林幸夫の推す2冊


綿抜豊昭著
『連歌とは何か』

 中世人は連歌に熱狂した。それこそ堂上・地下をこきまぜて熱中した。その模様は狂言にも伝えられている。今から思えば信じられない。俳諧に関心を持つ人はいても、連歌となると、今では研究者ぐらいしかいないだろう。そんな連歌の世界を、歴史、式目、つまり連歌の約束事を中心に解説してくれる。一般読書人を相手にするため、堅苦しい説明はなるべく避けて、連歌師のエピソード(逸話)を盛り込んでいるところが目新しい。そんな逸話をたくさん生むほど連歌は流行したのである。もう少し和歌への目配りがあればよかった。

本の画像

講談社選書(本体1500円+税)
2006年10月刊
安田 登
『ワキからみる能世界』

 本屋の棚に能の解説書があると、つい手が伸びてしまう。これもその一冊。著者は下掛宝生流ワキ方能楽師である。ここでは夢幻能の世界が、ワキの立場から眺められる。そうすると「能」という物語世界は、ワキが異界の住人(シテ)に出会う劇として見えてくるという。ワキ(生者)は旅に出ることによって霊(シテ)に出会う。著者は演能の世界から人生を眺めようとしている。それは人生を旅とみなした芭蕉だけでなく、われわれ現代人の行き方にもつながっている。能が人生論ふうに読み解かれていくのが特長。

本の画象

NHK出版(本体740円+税)
2006年10月刊


塩谷則子の推す2冊


片山由美子著
『俳句を読むということ―

―片山由美子評論集』

 落葉松はいつめざめても雪降りをり(楸邨)
 目覚めたのは、落葉松か作者楸邨か?助詞「は」についてあれこれ考察した上で、曖昧模糊が楸邨のねらいと論じる。基本を知った上で、柔軟に多様に読みたいという意見に賛成。一茶「正月の子どもに成て見たき哉」の本音は「お年玉がほしい」、高橋順子説の紹介など細部が楽しい。

本の画象

角川書店(2381円+税)
2006年9月刊
秦 恒平著
『逆らひてこそ、父』

 構成が上手い。辛かった13歳のとき出会った「姉さん」への父の40数年にわたる執着が終末で語られ、辛辣な娘や息子、家族批判の毒がそこで一挙に解毒される。私小説を装っていて禍々しい。毒を飲みたい人は一読を。書くことの怖さを考えさせられる。秦恒平が私家版(湖の本)を出し始めて20年、88冊目の小説。郵便振替00140-8-168853。

本の画象

湖(うみ)の本版元(送料とも2300円)
2006年7月刊



2006年12月11日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


山田 稔選
『天野 忠随筆選』

 息子の嫁が3匹の金魚に名前をつけた。ハイ、ソウ、デス。カリフォニアが故郷の嫁に、どうしてそのような変な名をつけたのかと聞くと、「主人が一番早く覚えて欲しいに日本語だといったから」と応じた。これは「山吹と金魚」の一節。ともかく楽しい。読まないと損をする。天野は1993年に86歳で亡くなった京都の詩人。


本の画象

編集工房ノア(2200円+税)
2006年10月刊
梅原 猛著
『歓喜する円空』

 一節を抜く。「遊びのない学問や芸術はつまらない。作者が無心になって遊んでいるような学問や芸術でなくして、どうして人を喜ばせることができようか。」円空を相手に80代の梅原は無心に遊んでいる。その遊びが明らかにするのは、神仏習合思想の深い秘密だ。

本の画象

新潮社(2200円+税)
2006年10月


桑原汽白の推す2冊


仁平 勝著
『俳句の射程』

 「箒木に影といふものありました」(e船団 2003年9月16日)が出てくる。虚子の句を著者が書き換えてみた。
 名前と物が・・・、季節なぞもわからない。正体不明が、影で、自ずから、実体を主張している(いた)。んだろうか。

本の画象

富士見書房(2600円+税)
2006年10月刊
永井豪・ダイナミックプロダクション著
『永井豪WORLD(4)』
「凄ノ王」暴露の章+「けっこう仮面」SP

 悪書はこのBOXへ。そういえば、芦原すなおの小説、若いスサノオ・・・。
 『月刊少年ジャンプ』だった。「おっぴろげージャーンプ」。SFバイオレンスは後半へ。伏線は交わらなくても・・・。

本の画象

ゴマブックス(476円+税)
2006年8月刊



2006年12月4日号(e船団書評委員会)

葉月ひさ子の推す2冊


宮沢和史著
『言の葉摘み』

 代表曲「島唄」のTHE BOOMボーカリスト宮沢が旅、人、歌から得た珠玉の言葉を綴ったエッセイ集。彼の夢は「顔も文化も宗教も違う人々が、一つの歌をみんなで笑顔で歌う」こと。夢の基は「スキヤキ:上を向いて歩こう」、1992年東南アジアの旅中、ここにいる全員が知っているよとカラオケで歌わされた時の感動。彼の「島唄」も2002年アルゼンチンで大ヒット、その後各国のミュージシャンにカバーされ続けている。

本の画象

新潮社(1400円+税)
2006年8月刊
エイミー・B・グリーンフィールド著
佐藤 桂訳
『完璧な赤』

 原題もずばりA PERFECT RED。全米ペンクラブのノンフィクション部門最優秀新人賞の書、副題に「欲望の色をめぐる帝国と密偵と大航海の物語」とある。時は1519年、スペインの征服者達は降り立った新大陸の市場で鮮やかな赤に目を奪われた。この色をヨーロッパに持ち込めば巨額の利益を生むと原料、産地を国家機密とし18世紀まで守り通した。ヨーロッパ全土を競争へ駆り立てたその正体は?現在も天然染料として使用中。

本の画象

早川書房(2000円+税)
2006年10月刊

宮嵜 亀の推す2冊


「すばる」10月号特集
「短詩形文学の試み」(三)

 金子、熊倉、高橋三氏に司会・石氏の錚々たるメンバーの句談。「切れ」の価値、意味から取り合わせのこと、ディスプレイの時代もいずれ作者が消え、無名性に至ろうことなど。芭蕉、千利休、第二芸術論、子規、プロ・アマ論、禅、と話題は自由自在。脳内写像(掘切氏)、子規の革新(石氏)の記事が続く。古典を読まねば。

道はるか枯蟷螂をまたぐかな  ひさし


本の画象

集英社(838円+税)
2006年10月刊
中川人司著
『宇宙授業』
安全・安心生活はありうるか

 何とも楽しい。星の数は銀河系だけで2000億個、そんな銀河が宇宙には1000億個あるそうだ。宇宙は始め10のマイナス34乗センチの大きさだった。今見ている北極星は安土桃山時代のもの、というように著者は面倒臭い計算をすべてやってくれている。冬の夜の肴にも打ってつけ。光速のロケットにも乗れる。

先生はボジョレヌーボー怒るなよ  ひさし


本の画象

サンクチュアリ出版(1400円+税)
2006年8月刊



2006年11月27日号(e船団書評委員会)

赤石 忍の推す2冊


清水達也句集
『用宗海岸 夏館』

 清水氏は静岡県子どもの本研究会会長であり、駿河の地に伝わる数多くの民話を題材にした絵本作家だ。ロアルド・ダールの翻訳者でもあり、かつては前衛詩人でもあった。本書は十年前、静岡市の程近い用宗海岸に建てた、自らが収集した児童書・絵本を公開する私立図書館「遊本館」でのんびりと詠んだ句をまとめたもの。静岡に立ち寄る機会があったらぜひ訪ねるといいと思う。目の前の砂浜を太平洋の波が打寄せている。(遊本館連絡先― 054-256-0150)

本の画象

遊本館(私家版)
2006年11月刊
川島隆太著
『脳を鍛える大人の書写ドリル』

 推薦者が勤務する社の本を紹介するのは心苦しい。本書は六十句ずつの俳句と短歌を書き写して脳の活性化を図ることを目的としている。ベースには東北大教授の脳科学者川島氏の理論がある。ちなみに小社の俳句・短歌・詩との出会いは、坪内稔典氏に選者になっていただいた幼児・児童用のカードにある。ただ『俳句カード』には氏の句はなく、『短歌カード』に「さくらさくら朝のごはんをふっくらと箸にのせつつまたさくら見る」の歌が収められている。

本の画象

くもん出版(本体1000円+税)
2006年11月刊


朝倉晴美の推す2冊


新川和江著
『詩の履歴書』
―「いのち」の詩学―

 改めて、新川さんの豊かな詩に感激し、涙が溢れてきた。詩作のきっかけや過程、そして出来た作品のその後。新川さんらしい口調で語られている履歴は、詩人としての言葉へ向き合う姿が心に残る。こんな風に、日常を感じ、言葉を扱えたら、と憧れ、言葉を大切にしたくなる気持ちでいっぱいになる。

本の画象

詩の森文庫(思潮社)(980円+税)
2006年6月刊
山本麻子著
『ことばを使いこなす
イギリスの社会』


 『ことばを鍛えるイギリスの学校』(同著者)に続く一冊。イギリスもまた、日本と同じように、子どもの国語力低下が問題となっている。しかしながら、国、学校、社会や家庭の姿勢にその本気さが見られる。国力にも個人の生活力にも、そして豊かな人生にも、母国の言葉を駆使できることが不可欠だと伝えている。

本の画象

岩波書店(2000円+税)
2006年10月刊



2006年11月20日号(e船団書評委員会)

大角真代の推す2冊


穂村 弘編
日常の短歌
『そこにいますか』

 めくってびっくり短歌絵本全5巻のうちの第1巻。穂村弘選の短歌に第1巻の絵は西村 敏雄。ページの半分が隠れた状態なので、ページをめくる楽しさがあり、開いたその中には短歌の秘密の世界が隠れていて、なんだか嬉しい。
 毎夜毎夜この本を広げる日が続いている。全巻揃えたい。お薦めです。

本の画象

岩崎書店(1470円)
2006年11月刊
城 繁幸著
『若者はなぜ3年で辞めるのか? 』
― 年功序列が奪う日本の未来 ―

 私自身就職後3年めになる。仕事もつまらないし辞めたい。就職前の期待を大きく裏切っている。実際の仕事は夢の欠片もない。
 そんな時、題名に惹かれて買った。モヤモヤしていた気持ちがすっと整理できた。なるほど、辞めたくなるはずだ、と。
 今、若者の3人に1人が3年以内に退職している。

本の画象

光文社(735円)
2006年9月刊


木村和也の推す2冊

 
宮坂静生著
『語りかける季語
ゆるやかな日本』


 今まで季語集に採録さずに、地方の人々にのみ愛用されてきた季節のことばを、「地貌季語」として蒐集したもの。和歌の伝統以来の都中心の季語体系を見直す。沖縄の「小夏日和」など、風土の再発見が俳句の世界を芳醇にする。

本の画象

岩波書店(2100円+税)
2006年10月刊
高橋義人著
『グリム童話の世界』
―ヨーロッパ文化の深層へ―

 キリスト教的世界観からも、近代の精神分析的解釈からも自由にグリム童話を読み解く。そこからヨーロッパ人の意識や文化の深層に迫る。
 西洋のハッピーエンドメルヘンと日本の「夕鶴」などの悲哀メルヘンとの比較も面白い。

本の画象

岩波新書(700円+税)
2006年10月刊



2006年11月13日号(e船団書評委員会)

三好万美の推す2冊


山田春生編/皆川盤水監修
新編月別 仏教俳句歳時記』

 仏教歳時記とあるが、仏教関係の季語だけでなく、日本全国津々浦々の伝統行事や祭りなどが細かく取りあげられている。また忌日も、「ショパン忌」や「エジソン忌」など、ふつうの歳時記には載っていないものが多く、新鮮な印象である。
 それぞれの季語に対して例句が多いのも、作句の参考になる。巻末に行事カレンダーと主要俳句賞一覧がある。

本の画象

東京新聞出版局(1600円+税)
2006年6月発行
田辺聖子著
『残花亭日暦』

  車椅子生活を送っていた田辺氏の夫に新たな病気が見つかった。やがて来るであろう別れの時を感じながら、看護と原稿執筆、講演、と精力的に活動する作者。
  そんな毎日を日記形式で淡々と綴っていく。人生のなかで必ず何度かはおとずれる大切な人との別れを、感傷におぼれることなくあるがままに受け入れようとする田辺氏と夫とのやりとりが胸を打つ。田辺氏の自伝を元にしている、現在放送中の朝の連続ドラマ「芋たこなんきん」とあわせて読んでみると、一層おもしろくてせつない。

本の画象

角川文庫(476円+税)
2006年7月刊


若林武史の推す2冊


角川春樹著
『朝日のあたる家』

 著者の「魂の一行詩」をまとめた第二句集。自身の受刑者経験が感じられる一方、違った趣の詩(句)にも出会える。「背の螺子をひとり軋ます春の暮」「男にも乳首がふたつ夕ざくら」「衣更へて耳うつくしき女将かな」「父の日や爪切る背中あれが父」など、少し明るめのものが印象に残った。

本の画象

思潮社(2200円+税)
2006年10月刊
柴田英寿編
「いつもの」朝を変える技術』
あの人の「朝時間」から学ぼう!

 多忙感が増してきたこの頃、思うように活動的になれない自分を鼓舞するために買った本。面白かったのは作家の角田光代のページ。月に28本も原稿の締切がある。ほとんど毎日が締切。早起きが必要な自分になるのが先決かと思った。

本の画象

WAVE出版(1300円+税)
2006年10月



2006年11月6日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの推す2冊


佐藤千登勢著
『シクロフスキイ 規範の破壊者』

 「生きることの感覚を取り戻し、事物を感じ取るためにこそ、石を石らしくせんがためにこそ、芸術と呼ばれるものが存在する。」「(シクロフスキイの)生涯は規範の設定と破壊活動の永続革命である」と筆者は書く。その「異化」の概念は、ロシア革命の年に生まれ、今も新鮮、魅力的。書く行為、読む行為において、「異化」はまだまだ意識されてもよい。

本の画象

南雲堂フェニックス(2940円)
2006年7月刊
森山大道著
『昼の学校 夜の学校』

  若者の質問を真っ正面に受け止め、答える姿勢は真摯。しかし、距離を保っている所がいい感じ。森山大道は「撮る欲望体」となり、今日もコンパクトカメラと一体化して街を歩く。「光と時間」が「化石」となる瞬間、現在はモノクロの過去となり、写真が生まれる。監視カメラの並ぶ日本の街のあちこちに、森山大道は出没してほしい。

本の画象

平凡社(1680円)
2006年8月刊


武馬久仁裕の推す2冊


滝沢和枝詩集
『狐の顔』

 「はみ出し者」ではなく「はみ出され者」の哀歓に満ちた滝沢和枝の世界。傑作は「襖の一生」。「お屋敷から放り出され」た襖が、女軽業師に拾われ「足の裏に乗せられて/とんくるり」。ねえさんの胸に抱かれたいという襖の思いが通じ、落下する襖を「抱きとめて にっこりと 笑って…胸の骨が粉々に砕けて…こと切れ」たねえさん。襖は焼却。二人の一生は官能の極致をもって終了。全部がこうではないが、全部が何だか可笑しい詩集である。

本の画象

ふらんす堂(2700円)
2006年6月刊
入江曜子著
『溥儀‐清朝最後の皇帝‐』

 「『あの人』(「新社会から預かった妻」李淑賢)の発作を鎮めるために、自身も血尿のつづく不安を抱えながら安定剤を飲ませ右往左往する」晩年の溥儀のあまりにも人間的な姿、満州国時代の溥傑の妻(嵯峨)浩の「古い階級意識」を知っている溥儀が、浩の帰国に関しては「珍しく総理(周恩来)に頑強に反対」する姿などからして、溥儀はひょっとして「改造」されたのではないか。そんなこともふと思わせる本である。

本の画象

岩波新書(819円)
2006年7月刊



2006年10月30日号 (e船団書評委員会)

小林幸夫の推す2冊


駒田信二著
『漢詩百選―人生の哀歓―』

 高校教師のとき、漢文を教えるのがいちばん好きだった。今でも時折、その一句が口をついて出てくるときがある。「人生の哀歓」というこの題を見て、つい手に取ってしまった。
 かつて教えた漢詩がいっぱい載っている。「人生の哀歓」を詠わせれば、何といっても漢詩に尽きる。「旅情」、「望郷」、「戦乱」、「別離」、そして「情愛」。うれしい詞華集(アンソロジー)となっている。どこから読んでも楽しい。ちなみにわたしは杜牧がいい。併せて『杜牧詩選』(岩波文庫)を読まれるのもいいだろう。

本の画像

ちくま文庫(本体950+税)
2006年7月刊
吉村公三郎著
『京の路地裏』

 京都を舞台とした映画を幾本も撮っている監督のエッセイ。映画は観たことはないが、「路地裏」ということばに魅かれて、つい買ってしまった。京都育ちのわたしには、「路地裏」ということばはなつかしい。少年時代の記憶と結びついている。路地裏はわたしたちの遊び場だった。それだけではない。祇園や宮川町、京都を代表する花街のしきたり、失われつつある古都の風情が、ここに再現されていて教えられることも多かった。ことに興味深かったのは、「月天心貧しきまちを通りけり」という蕪村の一句、これは細長い路地から見上げた空を想像しなければならない、と吉村は云う。これは京都独特の空だと云う。萩原朔太郎の解釈とは異なるが、こちらもなかなか絵画的ではある。

本の画象

岩波現代文庫(1000円+税)
2006年8月刊


塩谷則子の推す2冊


前田霧人著
『鳳作の季節』

 名句「しんしんと肺碧きまで海のたび」の作者篠原鳳作の伝記。優れた無季俳句を作りたいという鳳作の熱い思いを、筆者は残された文献を丹念に探し出し読み抜くことによって描く。「にぎりしめにぎりしめし掌に何もなき」(連作「赤ん坊 」)。昭和11年、30歳で亡くなる数ヶ月前の句である。悔しさ、無念が伝わってくる。

本の画象

沖積舎(3500円+税)
2006年9月刊
国際交流基金企画
柴田元幸・沼野充義・藤井省三・四方田犬彦編
『A Wild Haruki Chase』
―世界は村上春樹をどう読むか―

 春樹ファンではないらしい四方田の提案によって3月にほとんど日本語で行われた17ケ国23人によるシンポジウムの記録。中東で翻訳されないのはなぜか、など村上作品の受容状況から各国の文化が見えてくるという四方田の発言が、お祭りを支えている。二つの異なる世界の関係を楽しむ村上作品の構造は俳句の二句一章に通じる。

本の画象

文藝春秋(1714円+税)
2006年10月刊



2006年10月23日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


高橋順子著
『草しずく』

 詩人の著者は昭和19年生まれ。私は勝手に同級生的親愛感を抱いている。その著者のこれは最新のエッセー集。夫の小説家、車谷長吉の話、季語の話、良寛の話などどれも楽しい。ちなみに、夫妻で時折句会をしており、互いに○×を付け合う。「ふりむけば尻尾の風は鼬かな」(順子)は丸の句。


本の画象

世界文化社(1600円+税)
2006年10月
車谷長吉著
『世界一周恐怖航海記』

 嫁はん(高橋順子)について船による世界一周旅行をした日記。いや、日記的小説というべきか。狭い客室に監禁されていると思いながらも、船内食はほぼ毎回美味。でも、女性たちはことごとくセックス体操に励んでいるように見える。嫁はんもまた。世界一周船旅には行きたくなくなるような、そんな不思議な作品である。

本の画象

文藝春秋(1333円+税)
2006年7月刊


赤石 忍の推す2冊


内田麟太郎詩集
『きんじょのきんぎょ』

 「ありは/みたとおり/ありのままだけど ぞうは/みたとおり/ぞうのままかしら ありは/みたとおり/ありのママだけど ぞうは/みたとおり/ぞうのママかしら」『ありのまま』と題した児童詩。内田麟太郎の面目躍如といったところ。そう言えば「秀句」には「すぐれた俳句」と「巧みなしゃれの句」の両意がある。地口、口合、語呂合、氏の詩を読んで肩から力の抜けた秀句が作れればとも思った。

本の画象

理論社(本体1400円+税)
2006年9月刊
寺山修司著
『寺山修司の俳句入門』

 何と評したらよいのか、修司は自身さえ放り投げてしまうから読み手は困惑してしまう。昔、青森で戯曲『邪宗門』を観た。整然と進行していた舞台が終盤に差し掛かった頃、演者全員が劇を止めて観客に向かい罵倒し始めた。「お前たちはいつまで傍観に留まっているのだ。なぜ演じようとしないのだ」と。本書で特に気になった言葉。「定住とは何か。通行しないやつは墓地に眠るものだけだ」。

本の画象

光文社(本体629円+税)
2006年9月刊



2006年10月16日号(e船団書評委員会)

宮嵜 亀の推す2冊


仁藤さくら句集
『光の伽藍』

死者のゆめいまゆふすげのあたりなり
さくら

 生に死を見つめる、繊細な句群は新鮮であった。光百態。現世は光の伽藍である。光と同速度で移動する物体は時間と空間を失う。オビの何億年昔への言及に納得。「ただいまといへば閻王やさしからむ」愉快。評者も「ただいま」と言おうと思うが、二枚目の舌も抜かれるかもしれぬ。

本の画象

ふらんす堂(2476円+税)
2006年8月刊
中谷内一也著
『リスクのモノサシ』
安全・安心生活はありうるか

 BSE、鳥新型インフルエンザ等身近に溢れる生活、生命リスクについてのメディアの報道、専門家の発信、その情報の受け手の問題などをやさしく解説する。受け手の我々はリスク表現の基となる考え方にも心許ない。リスク管理に情報交換、信頼の構築を重視する著者の立場は古くて新しい。

蛇穴に入り国際便明滅す   ひさし


本の画象

日本放送出版協会(970円+税)
2006年7月刊


桑原汽白の推す2冊


都築響一著
『夜露死苦現代詩』

 「現代詩のアウトサイダーたちを僕は探しに行きたい」(響一)。詩未満の詩を『痴呆系』、点取占い、木花開耶姫神社の短冊など、あちらこちらから収集。
 「あんた、月の十五夜をなんととる」
 「水中翼船にのれる ○10点」

 「佐渡までジェットホイルで一筋に」(汽白)

本の画象

新潮社(1600円+税)
2006年8月刊
赤川次郎著
『深夜の見舞客』

 滝川クリステルが林から夜の生中継。ライトのなか、降り止まない落ち葉。
 5話収録。『近道』の初出は2003年。人々の足で林に自然と出来た近道。そこにすむ魔物、得体の知れないものが虚の主人公なのだろうか…。

本の画象

小学館(800円+税)
2006年4月刊



2006年10月9日号(e船団書評委員会)

朝倉晴美の推す2冊


木内喜久雄編/村越昭彦絵
水上不二詩集
『ぼくは地球の船長だ』

 教師として子供の作文指導に熱心。童謡雑誌「昆虫列車」を創刊。まどみちおさんとの交流。詩や童謡を書き続け、昭和41年、61歳で逝去。作詞した校歌や民謡も多く現存。故郷の宮城県大島の自然と、子供たちへの想いが、豊かに波のように打ち寄せる詩集。おおらかに丁寧に生きていきたくなる。

本の画象

理論社(1400円+税)
2006年8月刊
太田光・中沢新一著
『憲法九条を世界遺産に』

 お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光さんと、思想家・人類学者の中沢新一さんの熱くて濃密な対談。戦後の日米合作の奇跡だという憲法九条の存在の意味を考える。改憲も護憲も覚悟と犠牲が必要なこと、平和を主張する時にある危険、芸や論は日本や世界を救えるのか。そして、愛とは言葉とは。

本の画象

集英社新書(660円+税)
2006年8月刊


葉月 ひさ子の推す2冊


岡野弘彦歌集
『バグダッド燃ゆ』

 十年以上も歌集を出さないで来たという著名な歌人の、歌集名『バクダッド燃ゆ』を冠する一連の二十首は、戦争という究極の時事詠である。一連には激しい憤怒の歌が並ぶが、やがて「砂あらし 地を削りてすさぶ野に 爆死せし子を抱きて立つ母」「コーランの祈りの声は 砲声のしばらく止みし丘より ひびく」と、「海ゆかば水漬く屍 山ゆかば草生す屍」の詞章を彷彿とさせるかのようだ。

本の画象

砂子屋書房(3000円+税)
2006年7月刊
ジョン・D・コックス著/東郷えりか訳
『異常気象の正体』

 著者は90年代から気候問題を追うベテラン、ジャーナリスト。訳者は気候科学などとんちんかんであったとあとがきに記しているが、読者を魅了するサスペンスタッチの科学読物である。地球科学の革命「大陸移動説」を提唱したヴェーゲナーは、気象観測に赴いたグリーンランドで凍死。その1930年の調査を基点に、現在の地球温暖化問題に至った世界の科学者の熱き記録書でもある。

本の画象

河出書房新社(本体1800円+税)
2006年6月刊



2006年10月2日号(e船団書評委員会)

大角真代の推す2冊


寺山修司著
『寺山修司の俳句入門』

 寺山修司は十代を俳句に注いだ。同人誌掲載の評論や俳句百句が掲載されており、若く、熱い。こちらまで感染してしまいそうだ。
 間違っても俳句入門の本ではない。寺山修司がいかに俳句に情熱を注いだか、がわかる本だ。

本の画象

光文社(629円+税)
2006年9月刊
k.m.p.
『おかあさんと旅をしよー。』

 誰しも思うだろう。
 旅先で美味しいものを食べた時、お母さんに食べて欲しい。美しい景色を見た時、お母さんに見せたい、と。
 いつも貧乏旅行をしている筆者が、いつもより豪華にお母さんと旅をして、感動を分け合う本。楽しそうなので私も母との旅を計画中だ。

本の画象

メディアファクトリー(1200円+税)
2006年7月刊


木村和也の推す2冊


長田 弘詩集
『人はかつて樹だった』
―言葉が生まれる現場―

 樹をテーマにした21編の詩から成る。「ひとの日常の中心には、いまここに在ることの原初の記憶がひそんでいる。たたずまう樹が思いださせるのは、その原初の記憶なのだ」とあとがきに言う。長田弘がこのような世界に到達したことに驚くと同時に粛然とした気持ちにさせられる。

本の画象

みすず書房(1800円+税)
2006年7月刊
上田 篤著
『一万年の天皇』

 近頃の皇統女帝女系論争にかくされているものがある。どの文化史よりも長い一万年のスパンで天皇制を読み解く。縄文文化や万葉の世界が、そして日本文化の源流が確かな手ざわりで、捉えられている。

本の画象

文春文庫(750円+税)
2006年9月刊



2006年9月25日号(e船団書評委員会)

三好万美の推す2冊


加賀美幸子著
『こころを動かす言葉』

 著者は人と言葉に真摯に関わってきたベテランアナウンサー。40年以上におよぶキャリアのなかで培った、言葉と生活の素敵な関係をさりげなく教えてくれている。
 「過ぎては抑え、足りなければ補う」「聞き上手とゆとりの関係」など、人と接する上でヒントとなるたくさんのキーワードがある。日々謙虚に、すべてのものからメッセージを聴き取ろうとしている筆者の姿勢に共感する。

本の画象

幻冬舎文庫(495円+税)
2006年6月発行
瀬戸内寂聴・玄侑宗久著
『あの世 この世』

 作家であり僧侶でもある二人の対談集。帯には「日本一やさしい仏教入門」とある。仏門に入るまでの生活や修行時代の秘話、お釈迦様の慈悲やこの世の苦楽について、読者にテーマや問題を提示しながら、共に考えていく形式で、仏教について語られている。だれにも分かる言葉で、楽しく語り合う二人の僧侶の姿から、仏教を身近に感じることが出来る。時折引用される釈迦の言葉が心に響く。不思議に心がおおらかになる一冊である。

本の画象

新潮文庫(362円+税)
2006年5月発行


若林武史の推す2冊


穂村 弘歌集
『ドライ ドライ アイス』

 多方面で活躍中の穂村弘の最新歌集。短歌の今日の一つの形を見ることができる。穂村短歌は、主題性よりも言葉の自在性を追う方向に展開しているのだろうか。言葉の組み合わせによる発見を楽しむ感覚で読みたい。例えば「真夜中の中古車売り場で思い切り振って渡した三ツ矢サイダー」など。

本の画象

沖積舎(1500円+税)
2006年4月刊
池谷祐二著
『脳はなにかと言い訳する』

 大脳生理学の最近の研究成果をわかりやすい形で説明している一冊。何気ない所作が、実は脳の自然な反応の表れなのだということらしい。日常、思い悩むことも脳の働きの一種だなと思うと、少し気が楽になる。

本の画象

祥伝社(1600円+税)
2006年4月刊



2006年9月18日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの推す2冊


ウイリアム・エンプソン著・岩崎宗治訳
『曖昧の七つの型』上・下

 書店に行って「『曖昧』ありますか?」と言うと、「はい、『曖昧』ですね。こちらです。」と返ってくる。有名なのだ。否定的に使われる「曖昧」を肯定的に捉えて七つの型に分けて分析している。筆者24才の時の本で、決してわかりやすいとはいえないが、私たちが、俳句を作り解釈する中で、すでに行っていることもある。

本の画象 本の画象

岩波書店(上下とも860円+税)
上2006年4月刊・下2006年8月刊
高橋英夫著
『洋燈の孤影−漱石を読む』

  明かりの歴史は、そのまま人と人との関係の歴史でもある。豊富な語彙の持ち主にして、意識的な言葉の使い手でもあった漱石は、「洋燈(らんぷ)」を小道具に、作品ごとに役割を変えて、効果的に使っていることがわかる。長年にわたる、筆者の丁寧な読みが見えてくる本である。

本の画象

幻戯書房(2600円+税)
2006年7月刊


武馬久仁裕の推す2冊


石川忠久著
『漢詩の魅力』

 「陶淵明」の項で、有名な「飲酒其五」の一節「廬を結びて人境に在り」に出会った。その時脳裏に浮かんだのが、飯田蛇笏が自分の住居を「山廬」と呼んだことである。これは蛇笏の造語とされるが、それは、淵明の「人境(=人里)の廬」に対抗して名付けられたのではないかと思ったのである。淵明はもちろん隠者詩人であった。では、蛇笏は隠者俳人たらんと欲したのか。楽しい疑問がまた増えた。

本の画象

ちくま学芸文庫(1365円)
2006年6月刊
黒田信一著
『カフェ・ビエンチャン大作戦』

 これは、現代の隠者の根拠地をラオスに作ろうとした一人の中年男の爽やかな交遊録である。首都ビエンチャンにカフェ(酒場)、即ち日本から<自分たちが逃げていける場所>を、手作りで開こうという訳である。読んでいると改装工事の現場にノコギリを持って立っている自分を危うく想像しそうな本である。カフェは多くの良き人々の協力で無事2005年8月27日にオープン。世は正にグローバル時代である。

本の画象

本の雑誌社(定価1680円)
2006年4月刊



2006年9月11日号 (e船団書評委員会)

小林幸夫の推す2冊


富岡多恵子著
『釋迢空ノート』

 折口信夫の同性愛嗜好についてはあまり興味がない。しかし、かれが歌人として「釋迢空」を名乗ったことについては、ぜひとも知りたかった。彼は国文学者、民俗学者としては本名「折口信夫」を名乗り、歌人・詩人としては「釋迢空」と称した。この本はまさにその疑問からはじまる「法名」を「ノート1」として、「ノート10」の「短歌の宿命」で閉じられる。もうひとつ、かれが生まれ育った「大阪」をキーワードとして、その作品が読み解かれる。これもおもしろい。

本の画像

岩波書店(1100+税)
2006年7月刊
堤 邦彦著
『女人蛇体』
―偏愛の江戸怪談史―

 出版界の妖怪ブームも久しいが、これはその手の本ではない。怪談という言葉に騙されてはならない。「蛇と化す女」、その執念の背後に働いている想像力の世界に分け入って、それを支える宗教性、民俗性を明らかにしてくれる。従来の文学史が軽んじてきた寺社縁起や民談を駆使して、中世から近世へと展開する、説話の怪異表象史である。泉鏡花の小説を読むようなおもしろさである。

本の画象

角川書店(2700円+税)
2006年6月刊


塩谷則子の推す2冊


山折哲雄著
『「歌」の精神史』

 歌に括弧がついている。声を媒介にした歌――本来の歌には歌い手と聞き手がいると主張するためだ。また歌は、身もだえ、涙が涸れたところから始まるという。そうなのか?と反論しながら読むうちに、叙情と無常は中身のない言葉だと気付かされる。使用注意の言葉だと。第十二章「瞽女唄と盲僧琵琶――小林ハルと永田法順」が白眉。



中公叢書(1500円+税)
2006年8月刊
小野正嗣著訳
『森のはずれで』

 感情を表現する言葉を使わないで淡々と事実を述べる短い文から成り立っている。それらの文がテーマに集約されていく。テーマは優しさ。読み易い小説ではないが、読後感はさわやか。母親は二人目出産のために実家へ。残された35歳の父と5歳ぐらいの息子の物語。息子は仲間はずれや弱い者と自然につきあい、それが父の心を救う。

本の画象

文藝春秋(1714円+税)
2006年6月刊



2006年9月4日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


加藤治郎歌集
『環状線のモンスター』

 テロの時代を強く意識した歌集である。歌の表記の仕方などにさまざまな試みがなされているが、意欲的な試みを消去したように見える次の歌などがよいのではないか。「餌箱をしきりにつつく文鳥のうすくれないのくちづけを欲る」。夏目漱石の絶品の小品「文鳥」を連想した。著者は1959年生まれ。岡井隆門の俊秀である。


本の画象

角川書店(2571円)
2006年7月刊
林 和清歌集
『匿名の森』

 今回は現代短歌の次代を担うと予測できる40代の歌集をとりあげた。この歌集の著者は1962年生まれ、塚本邦雄の門下である。やはり意欲的な試みに富むが、その試みが消えたような歌がいいだろう。たとえば「ここでさへ誰かが死にき漆器屋のうるしにうつる八月の街」「どの家も死者を蔵つてゐるとおもふ環状線の半ばを過ぎて」。

本の画象

砂子屋書房(3000円+税)
2006年6月刊


桑原汽白の推す2冊


土谷 倫句集
『風のかけら』

 今朝トラがとかげをつついてた。夜トラと虫をきき…。ねこは体温が高いね。へへっ。
 三匹の子に乳をやるねぶの花  倫

 扇風機は1/fゆらぎ(強中弱弱中強弱…)? 冬美が「夜桜お七」歌ってるし…。
 折紙をまた三角に秋夕焼  倫

本の画象

ふらんす堂(2476円+税)
2006年3月刊
小林信彦著
『うらなり』

 かなしさも、ときには、こぼれ、しおり。
 まだまだ暑い秋、銀座4丁目(S9)。ひとを待つ君子うらなりの回想からはじまる。
 ぼくは、漱石党坊っちゃん派。五分刈りのお天道様は、過去、未来…。えーと、無季だけど、
 おほなみにあらがふ白き船あはれ 草城(S10)

本の画象

文藝春秋(1143円+税)
2006年6月刊



2006年8月28日号(e船団書評委員会)

葉月ひさ子の推す2冊


 
中原幸子句集
『以上、西陣から』

 「雷雨です。以上、西陣からでした」の句、謎解きさながらに切り取った題名からして、ウイットに富む船団会員、中原幸子さんの第二句集。「吊革」と「冬の脳」、「エジプト」と「卵」などを取り合わせる妙も、自在な想いを十七音に律する楽しみとなるようだ。一方「母のもの母に返して薺粥」、「花かぼちゃ顔洗ったかどうだかな」などには、巧まざるユーモアが郷愁を誘う一幅の絵を秘めていると思う。

本の画象

ふらんす堂(2476円+税)
2006年7月刊
内澤旬子 文+イラスト
『センセイの書斎』
イラストルポ 「本」のある仕事場

 各国の図書館、印刷所、トイレなどの現場を知る著者が、7年がかりで養老孟司、石井桃子、金田一春彦センセイほか31名の、高名な作家や研究者の書斎をイラストと文でルポした。書斎の主と話し、状況をつぶさに描き、圧巻は書架の書名をるいるいと手書き。見てはならない機織り部屋にも似る秘密基地、「書斎が見られるとは、うれしいことだ」と、荒川洋治氏の推薦帯文もはずんでいる。

本の画象

幻戯書房(2200円+税)
2006年5月刊


宮嵜 亀の推す2冊


寺井谷子著
『紙の碑(いしぶみ)』

ラガー等のそのかちうたのみじかけれ
白虹

 「自鳴鐘」主宰の子女として生を受けて今日にいたる著者が、俳句という世界の中で自身も俳人として活躍の中に書き留めた俳論集である。作家論、父の白虹論、結社誌の軌跡、著者俳句の原風景など、素直で飾らない物言いに納得して共感。好きな掲句が何度か出てうれしい。

本の画象

飯塚書店(2476円+税)
2006年7月刊
山田 勇著
『世界森林報告』

 生態学者の著者が東南アジア、南北アメリカ、環ヒマラヤ地帯、ヨーロッパ、アフリカの森の過去、現状と将来を語る。安らぐこともあれば、後ろめたい気持にもさせられる。著者は森や自然との出会いにエコツアーを推奨するが、これが森を守るぎりぎりの妥協点だろう。森と人への愛情が光る。

尺取虫一四〇億年後の枝の上   亀


本の画象

岩波書店(780円+税)
2006年3月刊



2006年8月21日号(e船団書評委員会)

赤石 忍の推す2冊


長田 弘詩集
『人はかつて樹だった』

  この人が「人はかつて樹だった」と言うのだったら、多分そうなのだろうと思う。母のように一本の木は……/どこかに未来を探しているかのように/遠くを見霽かして/凛とした空気のように/みじろぎもせず立っていた/私たちはすっかり忘れているのだ/むかし、私たちは木だったのだ。「深呼吸の必要」を説く詩人、今、人は木がするような、呼吸をすることさえも忘れているのかもしれない。

本の画象

みすず書房(本体1800円+税)
2006年7月刊
内田麟太郎著
『絵本があってよかったな』

 『さかさまライオン』『うそつきのつき』『ともだちやシリーズ』などで、今、一番の売れっ子絵本作家の自伝的エッセー。超ナンセンスの作風の裏側に根付く「義母への殺意」を初めとする強烈な反権力、反体制の意思。絵本がなければどこへ向かっていたのだろうかと著者は自問する。父は九州のプロレタリア詩人内田博。本人も『あかるい黄粉餅』『なまこ饅頭』などの詩集を持つ詩人でもある。

本の画象

架空社(本体1500円+税)
2006年7月刊


朝倉晴美の推す2冊


金子みすゞ詩集(挿絵の人形・三瓶季恵)
『みすゞさんぽ』

 みすゞさんの詩は、歌の詞でもあると思う。つい、節をつけて口ずさんでいるから。そして、ごく普通の日常に、たくさんの幸せと素敵な気分があることを気づかせてくれる。それは、子どもの視線とも似ている。日々のステキに感謝しながら読んでしまう詩選集。『みすゞびより』との二冊同時発売 。

本の画象

春陽堂書店(1200円+税)
2006年5月刊
田辺聖子著
『ひよこのひとりごと』
―残るたのしみ―

 「大人の作者が書いた、大人のための文章(川上弘美)」と帯に。より大人な女性になるためのエッセイとも言えそう。もちろん男性も大歓迎。60余りのテーマには、それぞれお聖さんの気骨が入っている。読者は、膝を打ったり、ホロリとしたり、目から鱗だったり・・・楽しめ学べる一冊。知識も増えてとってもお買い得感有り。

本の画象

中央公論新社(1400円+税)
2006年6月刊



2006年8月14日号(e船団書評委員会)

大角真代の推す2冊


書/依田草栄
えんぴつでなぞり書き
『百人一首』

 以前「えんぴつで奥の細道」を紹介したが、百人一首も登場した。一首一首鉛筆で書いて、じっくり鑑賞文を読む。楷書と行書とあるのも嬉しい。
 中学生の時に夏休みの宿題で百人一首を覚えた。社会人になった今、百人一首を再度覚え直してみようか。

本の画象

角川SSコミュニケーションズ(1400円+税)
2006年7月刊
ヨシナガ著
『ゆかいな誤変換DX』

 パソコンで文章を入力すると必ず起こる誤変換をまとめた一冊。どれも くすりと笑える誤変換で読んでいて楽しい。無理やり誤変換したものも あったが、中には唸ってしまうものも。
 「大臣は無遅刻無欠席です→大臣は無知 国務欠席です」「スーパー銭 湯に浸かってた→数%ウニ使ってた」

本の画象

株式会社イーストプレス(880円+税)
2006年5月刊


木村和也の推す2冊


谷川俊太郎著
『詩を考える』
―言葉が生まれる現場―

 言葉がついに生活から訣別することがなければ詩ではない。けれど、その言葉が生活から生まれるのでなければ、詩として人と結びつく力はない。
 「詩人とは、言葉のために決意するものの謂だ」とは、そのことを明確に意識して言葉と生活の格闘を行ってきたものの言である。

本の画象

詩の森文庫(思潮社)(980円+税)
2006年6月刊
佐藤 優著
『日米開戦の真実』
―大川周明著「米英東亜侵略史」を読み解く―

 ファシスト、超国家主義イデオローグとして葬り去られて来た大川周明の理論にスポットを当てる。現代の我々の歴史観が、どれだけ当時の現実に近接しているか、あるいは遠ざかってしまったか、今日の国際政治のダイナミズムと合わせて一度考えてみるのはよいことだ。

本の画象

小学館(1600円+税)
2006年7月刊



2006年8月7日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊


「BRUTUS」No.599

 本号は「若冲を見たか?」という特集。江戸時代の天才画家、伊藤若冲の絵と短い評論、対談などが組まれている。おおらかというか、奇抜というか、とにかくその存在感は、一種、岡本太郎と通ずるところがあるかも。冒頭で穂村弘の短歌と伊藤若冲の絵のコラボレーションが見られる。

本の画象

マガジンハウス(552円+税)
2006年8月刊
内田 樹著
『子どもは判ってくれない』

 神戸女学院大学文学部教授の内田樹さんのエッセイ集。2003年に出た本の文庫版なのだが、今読んでもタメになる。相手の言葉を届けることの大切さ、わかりやすさに対する疑念など課題は重大だ。考えが深くなる一冊。

本の画象

文春文庫(629円+税)
2006年6月刊


武馬久仁裕の推す2冊


森澤 程句集
『インディゴ・ブルー』

 このあっさりした書き振りが、私は好きだ。たとえば、「天近き駅に降り立ちハイヒール」。一見自然に見える光景である。しかし、絶妙の言葉の展開がなされている。ハイヒールによって、更に天に近づこうとする颯爽とした女性の姿が見えてくるのである。また、「青芝に赤子をおろし両手空く」。高貴な赤い荷を命溢れる青芝に降ろした安堵感が伝わってくるである。読者は、くれぐれも見過ごされないように。

本の画象

草子舎(2415円(税込み))
2006年7月刊
富山太佳夫著
『笑う大英帝国
―文化としてのユーモアー

 自分のユーモアのセンス度を測定するのにうってつけの本である。即ち、腰巻にある「爆笑、大笑、哄笑、激笑、…」という笑いを、この本を読んで幾つしたか数えればよいのである。しかし、結果が零であってもうろたえることはない。「要するに、ユーモアなるものは分からないひとには分からないということだ。私は、そういう人々の人権まで否定するつもりはない」とあるからである。

本の画象

岩波新書(777円(税込み))
2006年5月刊



2006年7月31日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの推す2冊


長尾壮七著
『正岡子規の脊椎動物句』

 著者は獣医師で日本ペット&アニマル専門学校校長。子規の俳句の鑑賞より、俳句に登場する脊椎動物の説明の方が一層面白い。著者の俳句観が随所に見られ、動物名表記、進化論、動物をめぐる問題についても専門家ならではの主張がある。フクロウの首が360度回るのはウソ、今度、動物園に行って観察してみよう。

本の画象

東京四季出版(2600円)
2006年6月刊
大竹昭子著
『きみのいる生活』

  モンゴル産スナネズミとの生活。ネズミの一挙手一投足の描写が「愛」にあふれている。極小の出来事から、自然、都市、人間、・・・へ、さりげなく広く深くつながっていく。語られるのは主にネズミのことだが、ニンゲンに向けられた暖かな視線がある。著者の日常の思慮の深さをうかがわせる。

本の画象

文藝春秋(2095円+税)
2006年6月刊


三好万美の推す2冊


松本秀一句集
『早苗の空』

 船団松山句会のメンバー松本秀一氏の第一句集。画家である作者の繊細な美意識と、叙情性溢れる句が印象的。自然や身近なものの最も美しい瞬間をとらえている。でもこの句集、美しいだけではない。故郷の大地を日々耕し続ける、「農の人」としてのたくましさや実直さもうかがえる。句集に掲載されている松本氏の細密な版画(メゾチント)も、俳句とともに味わい深い。
 「一枚の早苗の空となりにけり」「月光が先に扉を開けにけり」「わたくしの頭にふいに鬼やんま」「水の秋牛乳壜のふれあへり」

本の画象

書肆林檎屋(3,200円+税)
2006年6月刊
司馬遼太郎著
司馬遼太郎対話選集2
『日本語の本質』

 本書のなかで司馬遼太郎と対談しているのは、大岡信、丸谷才一ら6人の文化人。俳人赤尾兜子とは、空海、芭蕉、子規について論じている。方言や日本語の起源説、詩歌論などを切り口として、日本文化、日本語の成立と変遷を語り合っている。丸谷才一との対談「なぜ天皇が恋の歌を詠まなくなったか」は、天皇のとらえ方や、詩歌、特に和歌が果たした文化的役割について論じていて、とりわけ興味深い。

本の画象

文春文庫(457円+税)
2006年4月刊



2006年7月24日号 (e船団書評委員会)

小林幸夫の推す2冊


西郷信綱著
『古事記注釈』第八巻

 全八巻の最終巻。ブックレビューでも担当しない限り、古事記の注釈を最後まで読むことは、おそらくなかっただろう。その意味ではいい機会だった。つぶやきながら読みすすめると、なにやらリズムが感じられる。口誦されたことと、やはり関係あるのだろうか。万葉歌をさまざま用例に引かれて、古事記歌謡について教えられることも多かった。なによりも筆者の明晰な文体が、私には心地よかった。巻末の歌謡索引、本文索引、神名・人名・氏族名索引がたいへんありがたい。

本の画像

ちくま学芸文庫(1500円+税)
2006年6月刊
谷川健一著
『四天王寺の鷹』

 秦氏と物部氏の古代史。四天王寺の守屋祠から始まって四天王寺の聖霊会に終わる。聖徳太子と協力して、物部守屋を敗死させた秦河勝の古代史を追って、四天王寺建立が、守屋の霊の鎮魂にあったと結論する。『白鳥伝説』につづくフィールドワークを生かした作であるが、鍛冶神を奉じる秦氏と、宿神(芸能神)を奉じる秦氏、その二つの活動が、どこで交わるのか、今ひとつ私にはわかりにくかった。

本の画象

河出書房新社(2600円+税)
2006年5月刊


塩谷則子の推す2冊


高取 英著
『寺山修司 過激なる疾走』

 高3の時、皆勤だったが欠課は275時間。学校は、先ず友だちと出会う所。劇団結成もラジオドラマや映画のシナリオを書いた時も、転進へのきっかけは友だち。寺山は「人道説」の人だった。欠課の275時間、彼は図書室でひとり本を読 んでいた。夥しい寺山の「引用」は、「私の解体」=想像力を持て、につながるという論は魅力的。



平凡社新書(780円+税)
2006年7月刊
夏伊(シア・イー)著/桑島道夫訳
『雲上的少女』

 「唇は花びらのように柔らかかった」ファーストキスまで1年半。高3の誕生日に鼻柱を打たれて鼻血を出し恋愛を卒業するまでを告白体で描く。鼻柱の強い主人公の少女は、ロラン・バルトを読み、ケンゾーの香水をつけている。作者は88年 生。執筆時は中3。「校園小説」流行中という北京でお嬢様が書いた超お洒落小説。明るく軽い。

本の画象

文藝春秋(1857円+税)
2006年6月刊



2006年7月17日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


松林尚志著
『斉藤茂吉論』

 若い日にこの著者の『古典と正統』という評論集を読んだ私は、以来、俳句評論のしたたかな先達としてこの人を敬愛して来た。この新著では子規と対比するかたちで茂吉が論じられている。子規が権威に立ち向かったのに対し、茂吉は「権威の後楯」を必要としたという指摘などがことに鋭い。その後楯のひとつが御用歌人・人麿だったと著者は説く。


本の画象

北宋社(2800円+税)
2006年6月刊
坪内稔典監修
『書で見る日本人物史事典』

 私の関わった本だが、俳句からそれたやや高価な本なので自分で紹介しておく。この本、知人の古賀弘幸が中心になって編集した。聖徳太子から円谷幸吉までの123人の日本人の書が集められている。三遊亭円朝、南方熊楠、手塚治虫などの書もあり、彼らの生涯が書に絡めて簡潔に解説されている。暇つぶしという贅沢な時間にどうぞ。

本の画象

柏書房(9500円+税)
2006年6月刊


桑原汽白の推す2冊


松下美奈子句集
『ルミナリエ』

 姑のさくら餅しょっぱい。桜鯛を買いに市場へ。まどかさんの『月刊ヘップバーン』を開き…。ゴム長の女衆。特攻の碑。つくつくしつくつくし。長崎に原爆。「あるときには、いつでも他人のふたり♪」。未明の冬銀河。
 春雪のベールを纏ふマリア像 美奈子
 『ルミナリエ』にしおりを。西海の島々。天草か…。

本の画象

文學の森(1300円+税)
2005年12月刊
村上 護著
『けさの一句』

 涼しさのいつもあなたを感じてゐる 黛まどか
 365句選の著者、「いわば半切れで〈涼しさ〉が〈あなた〉にかかってゆく優美さがある」。
 新聞でだったろうか。「聖善清涼」ってきいたことがある。前の23は、ぼくには無理。風鈴とか…。官能のまどか。

本の画象

信濃毎日新聞社(1200円+税)
2006年5月刊



2006年7月10日号(e船団書評委員会)

葉月ひさ子の推す2冊


長谷川櫂著
カラー版『四季のうた』第二集

 読売新聞連載の「四季」2005年4月〜2006年3月分をまとめた新書版第2集。並み居る新刊新書の中で目立つカラー版、開くと目に飛び込んできたのは「アモー・アマリリス・アジュ―ア・アベーイ・夏が来た 西脇順三郎」。短い音の連なり、古今東西のうたを収録という。
 「応仁の乱のさなかの三月の桜のつぼみ、みたいだ、あなた」稔典さんのうた、恋の短歌として紹介されている。

本の画象

中央公論新社(980円+税)
2006年6月刊
北尾トロ、高野麻結子編著
『新世紀書店』
自分でつくる本屋のカタチ

 「全国小売書店経営実態調査報告書」は、町の本屋の存亡の危機をくっきりと浮かび上がらせているという。古書販売会の仲間内で立ち上げた実験イベント、「新世紀書店・仮店舗営業中」(2004年11月渋谷パルコで実施)のレポート。「参加型書店」や「場所の提供」など「理想の本屋」の多様化を予測する。ヨーロッパ、アジアの本屋事情にも触れお国柄が伺える。

本の画象

ポット出版(2000円+税)
2006年4月刊


宮嵜 亀の推す2冊


嵐山光三郎著
『奥の細道温泉紀行』

露天湯に溺死したるやかなぶんぶん 亀

 内容は至れり尽せりである。時々著者のご機嫌入浴シーンも入った写真付き温泉ガイドとデータ、地図あり施設案内あり、行程のスケッチと写真。もちろん中心は『奥の細道』俳句の背景と解説。ふむふむと納得しながら全部を通読しようとすると溺れるのでご注意。ひろい読みもたのしい。

本の画象

小学館( 695円+税)
2006年 月刊
松本仁一著
『カラシニコフII』

 舞台は南米、中東。貧困故に適法、違法集団に加わり銃を手にする南米の若者達の現実。ライセンスや国法などとは無関係のところで銃をあっけらかんと製造、保持する中東の国々の諸部族と派生している難問題の数々。世界平均で60人に1人がこの自動小銃を所有する。著者の記者魂がすごい。

青田道銃弾がいつも飛んでいる 亀


本の画象

朝日新聞社(1400円+税)
2006年5月刊



2006年7月3日号(e船団書評委員会)

赤石 忍の推す2冊


後路好章著
『絵本から擬音語擬態語ぷちぷちぽ−ん』

  日本語は擬音語・擬態語がとても多い言語だと著者。英語のそれは、日本語の三割にも満たず、特に擬態語は極端に少ないのだそうだ。この二つは元来、感覚的な言葉、幼児・児童を主な対象とする絵本においては、特に重要な位置を占める。どの絵本にどんな擬音語・擬態語が使われているのか。著者は千冊を超える児童書刊行に携わっている編集者。坪内氏の「甘納豆」の句も紹介されている。

本の画象

アリス館(本体1400円+税)
2005年11月刊
文・巌谷國士/絵・上野紀子/
構成・中江嘉男

『扉の国のチコ』

 稀代のシュールリアリスト滝口修造に捧げられている、『不思議の国のアリス』を彷彿とさせる絵本。若者を愛した滝口氏と交友のあったそれぞれが、それぞれの思いを込めて制作したもの。ちなみに未発表詩「遺言」が地の文に使用されている。「・・・ぼくが見えないだけだ。あの二つの眼では。さあ行こう、こんどはもうひとつの国へ、みんなで・・・。こんどは二つの眼でほんとに見える国へ・・・」

本の画象

ポプラ社(本体1400円+税)
2006年6月刊


朝倉晴美の推す2冊


疋田寛吉著
『詩人の書』

 藤村や朔太郎、高橋新吉など、代表的な近現代詩人が書いた詩書の写真入り。「うまいまずいでない近代芸術家の、書き手の心を剥き出しにした、書の面白さが人々に懐かしいのだ。有難いし嬉しいのだ。」と。書家が書く詩ではなく、詩人の書く書(詩)には、書によって呼び覚まされるものがあるというくだりに納得。

本の画象

二玄社(1600円+税)
2006年3月刊
小川洋子著
『ミーナの行進』

 時は1972年、12歳の朋子が芦屋のお屋敷で住んだ一年間のお話。ドイツ人の血を引く伯父家族と一緒に。通学にカバ(動物の河馬です!)の背に乗る病弱で本好きな従妹ミーナ。彼女との友情と伯父一家のほろ苦い事実。その中で二人は健やかに成長してゆく。かけがえのない想い出が、人を豊かにすると実感する一冊。

本の画象

中央公論新社(1600円+税)
2006年4月刊

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