俳句 e船団 ブックレビュー
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2008年6月30日号(e船団書評委員会)

木村和也の推す2冊


関川夏央著
『現代短歌 そのこころみ』

 斎藤茂吉の死の翌年に登場した中城ふみ子と寺山修司にはじまる現代短歌史の中に、若き歌人達の群像と志を浮かび上がらせている。「佐野朋子のばかころしたろかと思ひつつ教室へ行きしが佐野朋子をらず 小池 光」こんな短歌が発見できたりする。

本の画象

集英社文庫(619円+税)
2008年1月刊
トルーマン・カポーティ著
村上春樹訳
『ティファニーで朝食を』

 映画では知っていても、小説を読んでいる人は少ないのではないか。私も村上春樹の訳に引かれて初めて読んだ。小説のヒロインはヘップバーンよりもさらに魅力的。他の三つの短編も「冷血」の作者からは想像できない「無垢」の高貴さが主調音となっている佳品。

本の画象

新潮社(1260円+税)
2008年5月刊


大角真代の推す2冊


天野 慶著
『ウタノタネ』
〜だれでも歌人、どこでも短歌

 短歌入門書としてお勧め。私と同い年の著者。自身の短歌体験も素敵だが、誰でも歌人になれますよ、とやさしく耳元で囁かれたようなくすぐったい感じ。短歌練習帳もあり、私も早速歌人となった。著者の短歌が好きな気持ちが伝わってきて、私も俳句作るぞー!ってやる気になりました。

本の画象

ポプラ社(1500円+税)
2008年2月
鬼丸昌也著
『こうして僕は世界を変えるために一歩を踏み出した』

 学生時代にNPO法人を設立し、カンボジアでの地雷除去、ウガンダでの元子ども兵社会復帰プログラムを支援を行う。この一見無謀な活動を支えたのは自分の可能性を信じる強さだ。この著者も私と同い年。私にも世界を変える力があるかもしれない。一人でも多くの人に読んでもらいたい。

本の画象

こう書房(1400円+税)
2008年5月刊



2008年6月23日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊


石原千秋著
『ケータイ小説は文学か』

 ケータイ小説をまともに文芸批評の俎上に載せるとどうなるのか、そういう点からケータイ小説を考えることができる一冊。ケータイ小説は「性」という「真実の言説」も記号化してしまうのだと筆者は言う。これを読むと、若者たちの救いは「リアル」なケータイ小説にはないような気がする。

本の画象

ちくまプリマー新書(680円+税)
2008年6月刊
有吉与志恵著
『40歳からの肉体改造』
―頑張らないトレーニング―

 「コンディショニング」という技術から、肉体のメンテナンスを行うことを提言した一冊。タイトルにあるように、肉体改造と言ってもムキムキの体を作ろうというのではない。ちょっとした手入れで体の不調を改善したいという人はご一読ください。

本の画象

ちくま新書(720円+税)
2008年6月


三好万美の推す2冊


松本秀一著
『ペーパーウェイト』

 愛媛新聞「四季禄」に一年間連載されたエッセイをまとめた句文集。描き、詠み、耕し、語らう。松本さんは日々の暮らしを大切にする方だ。収録されている文章、俳句、短歌、版画や素描のすべてからそれが伝わってくる。エッセイの中に句友たちをさりげなく登場させ、紹介してくれているのが微笑ましい。

本の画象

ふらんす堂(2700円(税込み))
2008年5月刊
こうの史代著
『夕凪の街 桜の国』

 この漫画に登場する二人のヒロインは、原爆投下後十年経った広島に住む被爆女性とその姪。被爆者家族の数十年にわたる戦後の物語である。「ヒロシマ」をテーマにした話だが、読後は重苦しくなく、人々のあたたかさや強さが心に残る。映画化もされており、ぜひ一読、鑑賞をお薦めしたい。

本の画象

双葉文庫(476円+税)
2008年4月刊



2007年6月16日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの推す2冊


高田 渡著
『バーボン・ストリート・ブルース』

 この本を読むと、高田渡が魅力的になる。父親のこと、夜逃げの話、せつない話。明治の演歌師添田唖蝉坊の演歌、山之口貘、金子光晴、永山則夫、黒田三郎、石原吉郎、・・詩人の詩は一転高田渡の世界へ。写真を撮る高田渡、自転車に乗る高田渡、飲んでいる高田渡、どれも高田渡そのまま。一度ライブに行きたかった。

本の画象

ちくま文庫(720円+税)
2008年4月刊
十川信介著
『近代日本文学案内』

  立身出世の欲望、現実からの脱出願望、「交通」機関はどう描かれてきたのか。作品に冠せられてきた「主義」が外されると時代が見え、作品が見えてくる。思わぬところに最近の作家を発見するのも面白い。女性専用車は乃木希典の要請とは知らなかった。地味なタイトルは筆者の謙虚さの表れか、・・・このタイトルも意外といい。

本の画象

岩波文庫(760円+税)
2008年4月刊


武馬久仁裕の推す2冊


金時鐘訳
『再訳 朝鮮詩集』

 本書は、金素雲が戦前に訳した朝鮮現代詩からなる『朝鮮詩集』(岩波文庫、昭和29年)の、金時鐘による再訳である。日本の抒情詩と時代状況からの解放を果たした再訳を、金素雲の名訳と共に読む喜びは格別であった。そして、朴龍普u冷やっこい額」の一連目の「底知れぬ寂しさ」が、素雲訳では単に「寂しさ」となっているのを発見し、「底知れぬ」という批評性を含んだ言葉を消し、我が身に飲み込んだ金素雲のことを思ったりした。

本の画象

岩波書店(定価2940円)
2007年11月刊
原 武史著
『昭和天皇』

 近代天皇制国家を支える思想は、神道、儒教、西洋合理主義であった。本書を読むと、昭和天皇が、大日本帝国の元首として、いかにこの三つの思想を一身に体現しようとしていたかが、よく分かる。一に皇祖皇宗を祭る宮中祭祀に励み、二に近代科学の一分野たる生物学の研究に勤しむ姿がそれである。しかし、儒教の要たる「孝」の実現には厳しいものがあった。本書は、母、貞明皇后との確執を経糸にして展開する興味深い物語である。

本の画象

岩波新書(定価777円)
2008年1月



2008年6月9日号 (e船団書評委員会)

小林幸夫の推す2冊


文芸春秋編
『源氏物語の京都案内』

 今年、京都は源氏物語誕生一千年紀でさまざまなイベントが企画されているようだ。文庫の帯に「誕生一千年」(京都に行くなら、この一冊)と書かれてあるから、ブームにのった企画だろう。それでも馬鹿にはできない。丁寧に作ってある。わたしは早速「夕顔」の項を開いた。美しいカラーの絵とゆかりの和菓子まで紹介してある。至れり尽くせりだ。そして簡便なのがいい。読むだけで、源氏探訪の気分になれる。この一冊を持って、京都へ行くか。

本の画像

文春文庫(743円+税)
2008年3月刊
榎原雅治著
『中世の東海道を歩く』
―京から鎌倉へ、旅路の風景―

 少し専門的だが、昔の鎌倉街道、そして東海道を本のうえでたどってみようと思った。というのは何年か前、熱田の宮宿から鳴海まで何人かで歩いたことがある。寄り道しながらだけど、ずいぶん歩いた。くたびれた。当たり前だが、昔の街道とは大きく変わっている。かつて熱田神宮の前は海だった。鳴海潟だ。今はもうその面影もない。交通の要衝だった萱津(甚目寺町)もすっかりさびれている。ここも以前に歩いてみた。鎌倉街道をさがすのに一苦労した。街道の昔をたどることは、今を見ることだ。

本の画象

中公新書(800+税)
2008年4月刊


塩谷則子の推す2冊

工藤直子著
『こころはナニで
出来ている?』


 「つよく/おおしく/いきる!/それが ぼくのけっしんです/でも ときどき/むねの やわらかいところが/泣きたくなるのね/・・・・・・・/なんでかなあ」詩ならば9行。散文で解説すると1冊。8歳の直子ちゃんは小柄な継母におんぶしてもらって「うっとりしていた」。継母の無償の愛。釣り用に紅色の雨靴を買ってほしいという晩年の父。父や継母の柔らかな心が工藤直子の詩の原点。

本の画象

岩波現代文庫(900円+税)
2008年4月刊
辻 惟雄著
『岩佐又兵衛』
浮世絵をつくった男の謎

 岩佐又兵衛は伊丹有岡城主荒木村重の子。村重は信長に歯向かい一族郎党500人が焼き殺された。「生んで間もない乳飲み子のことを案じながら刑場に臨んだ」母の姿を重ねているから「山中常盤物語絵巻」の常盤殺しのシーンは残酷と筆者はいう。また絵巻をめぐる話もおもしろい。が、この本の眼目は1970年出版の『奇想の系譜』での自説の誤りを認め「舟木屏風」は又兵衛作と認めたこと。若冲や蕭白を論じ新鮮だった筆者の研究者魂に敬服。

本の画象

文春新書(1200円+税)
2008年4月刊



2008年6月2日号(e船団書評委員会)

大角真代の推す2冊


宇野直人著
『漢詩をよむ』
漢詩の来た道

 本書は『詩経』から魏までの漢詩を辿る。当時の詩人の背景や詩情、時代を経るごとの漢詩の変化を簡単に楽しめる。ラジオ番組のテキストだが、有名な詩が多くて説明がわかりやすく軽いのが魅力。カラー写真もあり、この値段はお得。

本の画象

NHK出版(798円+税)
2008年4月刊
杉山登志郎著
『発達障害の子どもたち』

 「発達障害が治る子と治らない子、その違いはどこに?」という帯に惹かれた。具体的事例を挙げなながら障害についての誤解と偏見を丁寧に取りのぞく。発達障害って治るの?と驚いた人はぜひ読んで欲しい。私もその一人だった。慧眼の一冊。

本の画象

講談社(720円+税)
2007年12月刊


桑原汽白の推す2冊


朝倉晴美句集
『宇宙の旅』

 どの白髪の師匠も真空管のように、ちょっと弟子をみなしてる。と思うけど、異色かも。
 かのキュレーターXが、「この初句集はB.V.D.」と、ののしったとしても、言葉はとどくかであろう。

 夕立だデートだ祭りだ不本意だ  晴美

本の画象

創風社出版(1200円+税)
2008年2月刊
柴田元幸責任編集
『モンキー ビジネス』
2008Spring vol.1野球号

思い出は
いつも
終身刑の海

ニュースジャパーン! 川上弘美の2、3ページ(立ち読み)。ときどき買って帰ってもいいかな。

本の画象

ヴィレッジブックス(880円+税)
2008年4月刊



2008年5月26日号(e船団書評委員会)

宮嵜 亀の推す2冊


大岡信・岡野弘彦・丸谷才一著
『歌仙の愉しみ』

 歌仙というものを勉強してみたいと思っているが、ルールが面倒くさそうで何となくとっつきにくいという人にはおすすめのテキスト。まず、丸谷氏のイントロで肩の力が抜け、次々先を読んでみたくなる。

 この年は鞍馬天狗で謡初 信

 で始まって、合計8歌仙。各句に詳細な解説が座談会でつづく。連句が身近になった。


本の画象

岩波新書(780円+税)
2008年3月刊
山田肖子編著
『アフリカのいまを知ろう』

 社会・人文系アフリカ研究者10人へのインタビューで提示されるアフリカの政治経 済、歴史、社会・文化など。現場に立つミクロの視点、また西欧をはじめ日本を含む 各国との関わり合いから、アフリカの多様性、共通点、問題等が見えてくる。アフリ カ文学についての考察が興味深い。

洋上にボーイソプラノ乾季来る  亀

本の画象

岩波ジュニア新書(780円+税)
2008年3月刊

葉月ひさ子の推す2冊


田中未知編
『月蝕書簡』
寺山修司未発表歌集


 刊行するまでに25年を経てしまったと編者のあとがき「経緯」にあるが、寺山修司没後4半世紀の節目にあたる。1頁に1首1行というシンプルさなのに計188首は幾重にも増幅されて迫ってくる。「わが家族変」で括られた22首の濃密な人間模様は半世紀をタイムスリップさせるし、結句がシュールな歌は超が付く飛躍で理解不能!「階段の下の暗闇ひっそりと花粉喘息うずくまりおり」は現在進行形的。

本の画象

岩波書店(1800円+税)
2008年2月刊
牛山 泉著
『風と風車のはなし』

 「古くて新しいクリーンエネルギー」という副題がある気象ブックスのシリーズ。CO2を排出しないために注目されている風力エネルギーの開発状況や、紀元前から現代までの「風」との関わりをコンパクトにまとめて読みやすい。グラビアや図版の風車を眺めるのも楽しいし、風を起こす道具「ふいご」に関する記述が『日本書紀』にあるそうだ。コラム欄には風の詩歌が多数引用されているが「秋の風」が圧倒的。

本の画象

成山堂(1600円+税)
2008年1月刊



2008年5月19日号(e船団書評委員会)

朝倉 晴美の推す2冊



週刊『日本の歳時記』05号
「風薫る」


 なんとまあ、お花見幕の内弁当のような一冊なのだ。写真美しく、読み物も充実。個人的には、宇多喜代子さんの「伝統としきたり」、山田弘子さんの「俳句を楽しむ」の連載が好き。それに『虎屋』の和菓子歳時記も美味しい(?)。見て読んで感じて楽しめる580円。一度買ってみても損は無し!

本の画象

小学館ウィークリーブック(580円)
2008年4月刊
土井康弘著 『本草学者 平賀源内』

 エレキテル、高松藩出身、からくり「おみき天神」、天狗小僧、、、ユーモラスな人物と思い込んでいた源内が、実は志半ばで獄死したとは知らなかった。また、薬学や鉱物発掘、化学に才気を発するが、どれも大成とは言いがたい。寂しい最期ではあったが、魅力を感じるのは私だけではないだろう。

本の画象

講談社選書メチエ(1500円+税)
2008年2月刊


赤石 忍の推す2冊


丸山圭三郎著
『言葉とは何か』

 1993年に没した現代言語学の祖ソシュール研究家の文庫化本。「言葉は単なる事物の名称リストでなく、表現であり意味ではあるが、これらはもともと存在しなかった関係でありながら、混沌としたカオスのような連続体に人間が働きかける活動を通して生み出されたもの」だそうだ。通読すると何となく分かったような気にもなる。ガリバー旅行記の「言葉とは物の名。それなら言葉を全廃し、物を示し合った方が健康に良い」という風刺例もあり、その完全本も読もうと思う。

本の画象

ちくま学芸文庫(本体900円+税)
2008年4月刊
川島良彰著
『コーヒーハンター』

 サブタイトルが「幻のブルボン・ポワントゥ復活」。マダガスカル島右隣にある仏領レユニオン島でかつて突然変異種として出現し、絶滅したと言われてきた伝説の珈琲種ブルボン・ポワントゥを探し栽培にこぎつけるまでのストーリー。著者は1975年高卒後エクアドルに渡り、国立コーヒー研究所で珈琲栽培技術を学んだ我が国の草分け的存在。基礎的知識が詰まったすこぶる良質のノンフィクションであり、珈琲好きには堪らない香り豊かな一冊である。

本の画象

平凡社(1700円+税)
2008年2月刊



2008年5月12日号(e船団書評委員会)

木村和也の推す2冊


安井浩司著
『安井浩司 選句集』

 著者にとっては初めての選集。イメージの衝突、言葉の過剰、何とでも言えそうだが、そこにはっきりとあるのは、俳句へのもっといえば文芸への志である。軟弱なはらわたでは消化不良をおこすかもしれない。
 睡蓮や今世(こんぜ)をすぎて湯の上に

本の画象

邑書林(2381円+税)
2008年2月刊
山折哲雄著
『日本人の顔』
図像から文化を読む

 なぜ日本の神像は老人の顔をしているのか。そんな素朴な問いが新鮮。皆の関心事であるのに、学問的には無関心にさらされてきた顔についての論究である。土偶と埴輪、平安貴族と武士、ニイチェと内村鑑三など、縦横に提示されるそれらの顔の対比の中から、日本文化の深層に分け入る。

本の画象

光文社知恵の森文庫(724円+税)
2008年4月刊


坪内稔典の推す2冊


三浦雅士著
『漱石』
―母に愛されなかった子

 母に愛されなかった子にはいつでも「じゃ、消えてやるよ」という思いがあるという指摘が鋭い。漱石の小説の人物たち、たとえば坊っちゃんにしても苦沙弥先生にしても「じゃ、消えてやるよ」という思いによって自在にも大胆にもなっている。ちなみに、その思いがあまり発揮されない小説は面白くないのではないか。「道草」「明暗」などだが。

本の画象

岩波新書(740円+税)
2008年4月
杉本秀太郎著
『ひっつき虫』

 絵と草花にかかわる随筆集。「百合」の末尾で漱石の「それから」を取り上げ、「百合の花なくしては成り立たない小説」と書いている。さまざまな草花が出る「それから」は一種の草花小説であろう。著者はこの本と同時に文芸にかかわる随筆集『火用心』(編集工房ノア)も出した。この2冊、私の初夏の日々に清爽な風をもたらしている。ページを繰るのが楽しい。

本の画象

青草書房(1900円+税)
2008年5月刊
2008年5月5日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊


三木 卓編・解説
柚木沙弥郎絵
『詩の玉手箱』

 三木卓氏による詩のアンソロジー。表紙に「意表をつく51編の名詩」とあって、本当かなという気持ちで手にとった。4月から3月まで季節ごとに詩が並べられ、その一つ一つに三木卓の言葉が添えられている。詩もすばらしいが、三木卓の語りかけるような解説もじんわりと心に響いてよい。少し疲れた時には最適の一冊だろう。

本の画象

いそっぷ社(1600円+税)
2008年4月刊
植田紀行著
『かけがえのない人間』

 今話題のダライ・ラマ14世と対談したこともある著者の、人間の尊厳を真正面から問うた一冊。市場原理が教育にも広がりつつある今日、何が一番大切なのかもう一度考えることができた。損得で物事を考えてしまいがちな日常に流されそうになる自分を振り返るきっかけになる本だろう。何だかごめんなさい、ちゃんとしますって思ったりした。

本の画象

講談社現代新書(740円+税)
2008年3月刊


三好万美の推す2冊


鹿島 茂編
『あの頃、あの詩を』

 ここ数年の昭和ブーム。ファッションや食、雑貨といった「物」中心の特集はひととおり終わった今、昭和30年から40年代前半の中学国語教科書に掲載された詩のアンソロジーは、今までになかったように思う。その頃中学生だったのは、まさに団塊の世代であり、編者もその一人である。未来に希望が持てた昭和30年代。団塊の世代はもちろん、それ以外の人々にとっても、今となってはそれは憧れであり、幻想なのだろう。

本の画象

文春新書(760円+税)
2007年12月刊
吉川敏一著
『最新 ビタミンブック』

 「食育」が広く重視され始め、医療、健康番組も人気。ビタミン剤やサプリメントを利用する人は珍しくなくなった。前半の各種ビタミンの説明はやや専門的だが、活性酸素とビタミンや生活習慣病を防ぐサプリメントの活用法の章は、手軽に実践できる例が多く紹介されている。抗酸化ビタミンと言われるビタミンC、Eとβカロテンの力には特に敬服した。

本の画象

みすず書房(1500円+税)
2007年9月刊



2007年4月28日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの推す2冊


坂部 恵著
『かたり』 ―物語の文法

 「はなす」「うたう」「つげる」「のべる」は「かたる」とどう違うのか。「つげる」「のる」「うたう」「となえる」「いのる」はそれぞれどのような意味か。野家啓一氏の「詩人哲学者の面目」と題された解説がわかりやすい。俳句を考える上で一読の価値。作者に「かたり」が意識されているかどうかが、作品(俳句も)の違いとなるのではないか。

本の画象

ちくま学芸文庫(950円+税)
2008年2月刊
橋爪紳也著
増補『明治の迷宮都市』
―東京・大阪の遊楽空間―

  「都市とは、存在自体が見世物である」という着想が全体を貫いている。見世物小屋、塔、迷路、パノラマ、博覧会、屋上遊園、ジェットコースター、映画館、住宅展示場、なければならないものではないが、それらが人の流れを作っていく。ハリボテのような建物が林立する中の人間の未来はどうなのか。図版・写真が多く、よく見ると面白い。

本の画象

ちくま学芸文庫(2008年3月刊)
2006年10月刊


武馬久仁裕の推す2冊


米山久美子句集
『おきなぐさ』

 この句集の持つ空虚さに私は惹かれる。例えば「餅黴びる男ばかりの屯して」。餅が黴びてハレの日からケの日=日常へと戻れば、所在無げにただ群れ集まっている男ばかりの世界。そこはまた「短夜を他人ばかりのなかに寝て」と書かれる他人ばかりの「短夜」であり、何も書かれていない白紙だけが散らばる、片蔭すらない夏の町である。「白紙散らばる片蔭のなき町よ」。では、片蔭を恋いつつ、その町を眺めている淋しい人物は一体誰だろう。

本の画象

邑書林(非売品)
2008年3月刊
吉野孝雄著
『文学報国会の時代』

 昭和17年、国民と作家の心を操る機関、日本文学報国会が創設された。会員数3138人。8部会の一つ、俳句部会は738人(川柳分科会を含む)で、2位の短歌部会470人を大きく引き離し堂々の1位。俳句と文学報国会のことはこれ位で期待外れであったが、敗戦の報を聞いて、身も心も崩壊せんばかりに動揺する横光利一が見た光景に出会ったことは収穫であった。それは正しく新感覚派横光の面目躍如たるものであったのだ。

本の画象

河出書房新社(定価2100円)
2008年2月



2008年4月21日号 (e船団書評委員会)

小林幸夫の推す2冊


井波律子著
『中国名言集』

 京都新聞に『井波律子の一日一言』として連載されたもの。2007年1月1日から12月31日まで、一年間。毎日読むことはできなかったので、一冊にまとめられたのを機会に購入した。1月から12月まで、歳時記・季語集のようにして楽しめる。孔子のような思想家から、詩人杜牧の詩句のことばまで。こうして一冊にまとまると、宝物のような金言集ともなる。知っているつもりだったが、意外な発見もある。巻末の人名索引、出典索引、語句索引、年表が、大変ありがたい。

本の画像

岩波書店(2700円+税)
2008年1月刊
日本口承文芸学会編
『ことばの世界』(第3巻)
はなす

 全4巻のシリーズ。昔話・伝説・神話・語り物・民謡・なぞ・ことわざ、など口承文芸の世界全般が取り上げられている。本巻ではとくに「T伝説」、「U世間話」、「V現代伝説」が論じられる。「はなす」とは、本来型にはまらない自由な物言いを云う。韻律をもつ詩歌や語り物とは異なる。「うたう」や「かたる」とは違うはずなのだ。その自由な物言いである「はなし」の世界が、どんな「世間話」や「現代伝説」を生み出していくか。「伝説」と比較しながら読んでみるのも楽しかろう。

本の画象

三弥井書店(1900円+税)
2007年12月刊


塩谷則子の推す2冊

焦桐(チャオ・トン)詩集 池上貞子訳
『完全強壮レシピ』

 焦桐は56年生まれの台湾の詩人。1999年台北で出版された詩集。「欲望は ぼくの思想」という断言に打ちのめされる。欲望をあからさまにしないことが成熟することと思っていたのではないかと気づかされる。レシピ----食べ物の材料・作り方・注意---の後、その食べ物の強壮効果が詩で語られる。元は「完全復讐レシピ」だったという。欲望とは食欲、性欲そしてよりよい政治への欲望。

本の画象

思潮社(2000円+税)
2007年12月刊
河内一郎著
『漱石、ジャムを舐める』

 千駄木時代、夏目家の朝食は火鉢で焼いた食パンに砂糖をつけて。森鴎外もパンに砂糖をつけていた。さて、当時のパンと砂糖の価格、その来歴は? 高校時代から漱石ファンだったという筆者が食品会社を定年退職後、漱石の作品に出てくる食べ物について詳しく調べた本。三四郎が上京するとき食べた駅弁の考察や松山の団子の数など。豆知識人になれる。06年7月創元社版に加筆訂正、文庫本に。

本の画象

新潮文庫(590円+税)
2008年4月刊



2008年4月14日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


角川学芸出版編
『鑑賞女性俳句の世界』
―激動の時代を詠う

 全6巻のシリーズの第3巻。細見綾子、岡本差知子など25名の句が鑑賞されている。ほとんどが作者に即した鑑賞になっているのは今日の俳句の読み方の傾向だろう。句会では無署名で、すなわち、作者を隠して読むが、この本を媒介にして俳句の読みをめぐる議論の生じることを期待したい。

本の画象

角川学芸出版(2667円+税)
2008年3月刊
高橋順子著
『花の巡礼』

 宮沢賢治は、落葉松の芽をネクタイピンにしたい、と詩で表現しているという。この本、詩人の花をめぐるエッセー集だが、はっとする新鮮な話題がいっぱい。私は今、落葉松の芽を訪ねる旅を計画中。行き先は長野県。落葉松の芽をめぐって句会もする。行きたい人、この指とまれ!

本の画象

小学館(1600円+税)
2008年3月刊


桑原汽白の推す2冊


鈴木みのり句集
『ブラックホール』

 アイゼンなしで陣馬山。あまったキャラメル、中箱にやっぱり絵。「懐かしの風景」、もう電話ボックス。モーちゃんにもおすそ分け。肌色だったか、角も取っ手も丸い。武田勢と北条勢のにらみ合い…。

 自転車の三角乗りや鬼やんま  みのり

本の画象

ふらんす堂(1810円+税)
2008年1月刊
ジェレミー・ストロング作
岡本浜江訳/矢島眞澄絵
『すっとび犬指名手配』

「あんたがそうするの、好き。」(←大阪弁!)
ティーナはにっこりした。
「するって、どう?」
「いじ悪っぽく、むっつりするの。」
以上、18ページから。ティーナも女優:藤原紀香のようにキレイなんだろう。

本の画象

文研出版(1200円+税)
2008年1月刊



2008年4月7日号(e船団書評委員会)

宮嵜 亀の推す2冊


橋場千舟句集
『視線』

 作者第3句集、232句収集。何気ない日常の句、少しほほ笑ましくてユーモラスな句、どことなく艶を感じさせる句など多様なのだが、それらがすべて静謐の中にあるので疲れない。理由がわからないが、元気をもらえる句がある。自在であって、突き放さないという境地によるのだろう。

人間は水平に寝て蛍の夜  千舟

本の画象

ふらんす堂(2381円+税)
2008年1月刊
田嶋謙三・神田リエ著
『森と人間』
生態系の森、民話の森

 充実した森の話が満載だ。森の地政学や生態学もだが、何と言っても森と人との互いの関わり合いを通して、文化の骨格や歩みが語られていて興味深い。ユニークなのは、森の民話や宮沢賢治の童話、西欧の森の童話などが具体的であり、面白い。現代の我々にとって森とは何かを考えさせてくれる。

桃の花軽トラで来る回覧板  亀

本の画象

朝日新聞社(1200円+税)
2008年1月刊

葉月ひさ子の推す2冊


穂村 弘著
『短歌の友人』

 冒頭に引用された短歌「電話口でおっ、て言って前みたいにおっ、て言って言って言ってよ 東直子」が面白いのだという著者の感覚に「えっ」と言いたいところ。しかしながら「歌人論」の中で特に、「想いの圧縮と解凍(俵万智論)」や「覚醒者の孤独(馬場あき子論)」の項に感じ入った。今まで漠然とあった謎に明快な回答を得た感じ、なるほど「友人」と呼べるような一冊である。

本の画象

河出書房新社(1900円+税)
2007年12月刊
横田由美子著
『ヒラリーをさがせ!』

 人前に曝され続ける一面を持つ職業の筆頭は、芸能人か政治家かと思う。女性の政治家の場合はなおさら芸能人張りの注目度が襲いかかる。「悪名が有名にまさる」とも揶揄される政治の世界で生き抜くことを選んだ女性達、その中からアメリカ大統領選挙に打って出た『ヒラリー』のような政治家を探す試み。単なるミーハーと好奇心だけでは日本の「ヒラリー」達を応援できないかもしれない。

本の画象

文春新書(710円+税)
2008年1月刊



2008年3月31日号(e船団書評委員会)

朝倉 晴美の推す2冊


吉本隆明著
『日本語のゆくえ』

 著者の最新文芸批評。東工大での講義「芸術言語論」に基づいた論考。文学に使われてきた日本語を、言語のレベルで解き明かす。そして現代詩の問題と発展し、若い世代の詩を「無」と言い切る。もしかすると、私達は文化としての日本語を失いつつあるのではないだろうか。

本の画象

光文社(1500円+税)
2008年1月刊
島田裕巳著
『日本の10大新宗教』

 10大新宗教といっても、それが評価の優劣になっているわけではない。十を選び述べることによって、日本の新宗教の特徴と社会との関わり、つまり発生や活動、その影響を明らかにしている。宗教とは古今東西、時代と密接ではあるが、私達は日本人の在り方、日本国の在り方も認識しなければならないと感じた。

本の画象

幻冬舎新書(720円+税)
2007年11月刊


赤石 忍の推す2冊


長谷川郁夫著
『本の背表紙』

 冒頭「文芸をめぐる雑談」としながらも、「幸福の哲学」について語りたい、とある。フランスの思想家アランを例にし、幸福とは魂と肉体が一致した状態、つまりは幸福とは実質的なものだと言う。歳時記のように春夏秋冬に分け、季節の言葉とそれに関する作家達の振る舞いを述べているわけだが、総じて紆余曲折の後、晩年に至って自然と一体化する諦念にも似た幸福感を著している。底流にはそのような作者の意図はあるが、物故文学者への興味だけでも十分に応えてくれる。

本の画象

河出書房新社(2400円+税)
2007年12月刊
井上ひさし著
『ボローニャ紀行』

 北イタリアの自治都市ボローニャは他の都市に比べあまり名高くはないが、児童図書編集者には毎年春、国際児童図書展が開催される関係上なじみが深い。市民が命をかけてファシストから街を解放したことでも有名だが、著者は三十年来、この場所を訪ねたくて恋人よりも慕わしい存在となったとまで言い切る都市である。何度か図書展に参加したが、読後ふーんと思うことばかり。と言うことは、会場とホテルと飲み屋にしか行ってないということなんだなあ。

本の画象

文藝春秋(1190円+税)
2008年3月刊



2008年3月24日号(e船団書評委員会)

木村和也の推す2冊


俳句・エッセイ・カット/ふけとしこ
写真/藤井章徳
『草あそび』

 姉弟による俳句・エッセイと写真とのコラボレーションがとても美しい。日常や自然への細やかな観察とそれらへの愛情ともとれるこころを寄り添わせる姿が、読後の幸福感をもたらしてくれる。シンプルな装丁も、姉弟の人柄が偲ばれて好もしい。

本の画象

郁書房(1800円、税込み)
2008年2月刊
大岡昇平著
『ながい旅』

 B級戦犯として処刑された岡田資中将の裁判闘争の記録と手記を丹念に辿りながら、戦後われわれが失った日本人の典型を描出している。同時に、アメリカ軍の本土空襲の違法性もあぶり出す。ちなみに映画化された「明日への遺言」は、岡田の仏教精神に徹した明るさが伝わらず駄作である。

本の画象

角川文庫(590円+税)
2007年12月刊


大角真代の推す2冊


陸游著/一海知義編
『陸游詩選』

 南宋の詩人陸游の詩選。国を愛し、政治を批判し、郷土を豊かに歌う。政治の詩がやはり面白いし、熱い。熱すぎて読むのが大変。
 辞世の詩、死去元知萬事空但悲不見九州同。死に際しても国を憂う。熱い。

本の画象

岩波文庫(860円+税)
2007年12月刊
海堂 尊著
『チームバチスタの栄光』(上・下)

 成功率6割のバチスタ手術において成功率100%を誇る東城大医学部チームバチスタの手術に連続術中死が発生。医療過誤か殺人か単なる不運なのか。緊張感漂う上巻、漫画的な下巻と違う雰囲気で楽しめた。久しぶりに良質なミステリーに会えた。

本の画象 本の画象

宝島社(上下各476円+税)
2007年11月刊



2008年3月17日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊


香山リカ著
『キレる大人はなぜ増えた』

 精神科医の香山リカによる現代社会分析。巷間では、クレーマー、モンスターペアレンツという言葉も市民権を得てきたように思う。自分自身、カッとなることが増えたなと反省することが多くなった。年のせいばかりにもしていられない。自分がキレないようにするために、何をしたらいいのか考えるいい機会となった。

本の画象

朝日新書(700円+税)
2008年1月刊
吉田悟美一著
『ケータイ小説がウケる理由』

 書籍化されてベストセラーにまでなっているケータイ小説。なぜこんなに若者にウケるのかが少しわかった気がした。ケータイ小説は、本屋に並ぶ「小説」ではなく、ケータイ文化の一つとして理解した方がいい。翻って、俳句はどうだろうか。俳句がケータイ文化に広がる可能性があるとしたら、答えは2つ。1つは俳句で恋愛を積極的に読むこと。もう1つはケータイサイトに中高年層が女子中高生並に頻繁にアクセスすることだろう。

本の画象

毎日コミュニケーションズ(780円+税)
2008年2月


三好万美の推す2冊


阿久 悠著
「阿久悠 命の詩 『月刊you』とその時代」

 本書は1976年から約2年間、阿久悠が執筆・編集した月刊雑誌『you』を再構成したもの。エッセイ、対談に加えて、新曲紹介、プロデュースする歌手への手紙などもあり、プロデューサーとしての信念や、時代とともに生きてきた歌謡曲にかけた情熱が伝わってくる。昭和の一時代を築いた阿久悠の言葉、文章は、様々な局面で示唆に富んでいる。

本の画象

講談社(1600円+税)
2007年12月刊
エリザベス・スパイアーズ
絵 クレア・A・ニヴォラ
訳 長田 弘
『エミリ・ディキンスン家のネズミ』

 アメリカの女性詩人エミリ・ディキンスンと白ネズミのエマライン。ふたり(?)はなんと、詩の文通をする友達なのだ。エミリの部屋に住むエマラインの目から見た詩人の日常が生き生きしている。紹介されているエミリ・ディキンスンの詩は長田弘の新訳。小学校高学年くらいから読める児童書で、なじみやすい。これを機にエミリ・ディキンスンの詩集を読んでみたくなった。

本の画象

みすず書房(1500円+税)
2007年9月刊



2008年3月10日号(e船団書評委員会)

武馬久仁裕の推す2冊


村上 護編
『尾崎放哉全句集』

 文字通り全句集である。大正14年5月から15年4月の放哉の死までの新発見の句稿すべてを収録した「V句稿」は圧巻だ。1頁17句2段組で独り言のような句が95頁続くが決して飽きさせない。深夜一人読んでいると放哉の声が聞こえ、人の哀れさが迫ってくる。「眼が悪い人で仏の線香くゆらし」「母子暮しの小さい家であった」「妻の下駄に足を入れて見る」五七五定型では掬うことのない世界のことを、しみじみ思うのである。

本の画象

ちくま文庫(定価903円)
2008年2月刊
黒田日出男著
増補『絵画史料で歴史を読む』

 『一遍聖絵』の中の富士川に描かれた無人の船橋を、絵空事ではなく実在のものとする分析が面白い。黒田は、蒙古襲来期において鎌倉と西日本間の情報伝達のスピード化を図るための政治的・軍事的な橋だったとするのである。一遍上人の踊念仏(宗教的狂躁)は文永・弘安の役の間にあたる弘安2年に始まった。船橋が描かれることによって時代が描かれたのである。美術作品といえども歴史的存在であることを改めて認識させてくれる本である。

本の画象

ちくま学芸文庫(定価1050円)
2007年12月刊


鈴木ひさしの推す2冊


磯辺 勝著
『江戸俳画紀行』

 「よい絵を描かせるものは、技術や感性だけでなく、批評(感覚)である。」也有のつぶやき文字・バランスのいい空間、西鶴のエキセントリックな文字・狂おしい空間、気持ちの動きのままの涼袋、江戸のサンボリスト青蘿、素檗のリズム・視線。樗良のクールな線・スピード感、・・・・。奥行きのある楽しめる本である。

本の画象

中公新書(860円+税)
2008年1月刊
入不二基義著
『哲学の誤読』
―入試現代文で哲学する!

 4つの問題文(野矢茂樹、永井均、中島義道、大森荘蔵の文章)を、哲学的な視座から読み解くためには300ページが必要だったのだ。問題作成者、問題解説者、問題文著者それぞれの誤読が検討される。しかし、採点者も知識による予断で答案を誤読するのではないか。しつこくて「変」な本、おもしろい本である。

本の画象

ちくま新書(860円+税)
2007年12月刊



2008年3月3日号 (e船団書評委員会)

小林幸夫の推す2冊


島田修三歌集
『東洋の秋』

 第五歌集。平成14年春から19年夏まで、六百首余りが収められている。私と同じ年のこの歌人の日常詠を読みながら、短歌に妙に親しみを感じてしまうのは不思議だ。それをうまく説明できない。鬱屈した思いが歌われているのだが、なにやらユーモアがただよう。それがおもしろい。私の好物、秋鯖に託した一首。「秋鯖のずしりと重きをあがなへば夕餉は華やぐ房事のごとし」。

本の画像

ながらみ書房(3500円+税)
2007年12月刊
原 武史著
『昭和天皇』

 昭和天皇は「神」に向かって何を祈り続けたのか。著者はこう問いを投げかけて「お濠の内側から祭祀王としての生活を述べていく。おもしろかったのは天皇とその母、貞明皇后との宮中祭祀をめぐる葛藤である。それはまた第二次世界大戦とその終息の仕方について、微妙なずれと感情の対立を生んでいく。「お濠の内側」と「お濠の外側」から眺められた興味深い昭和史である。松本清張の『神々の乱心』とあわせて読むのもおもしろい。

本の画象

岩波新書(740円+税)
2008年1月刊


塩谷則子の推す2冊

2008年2月号
『現代詩手帖』

 高柳克弘と黒瀬珂瀾の新連載が始まった。俳句と短歌の時評。高柳は中村和弘の「黒船を閉じ込めいたる椿かな」を取り上げ、超現実的イメージへの挑戦を提案している。ありふれた季語、椿の赤を生々しく感じさせるために黒船を取り合わせた中村を評価して。黒瀬珂瀾の過剰と寡黙、2冊の歌集の比較も鋭い。見開き2ページのために1冊を買おう。 (特集は日中現代詩シンポジウム。タイムリー。)

本の画象

思潮社(1333円+税)
2008年2月刊
秋元幸人著
『吉岡実と森茉莉と』

 森茉莉の本の装幀をしたのが吉岡実。古新聞と一緒に売ってしまった3冊目の『記憶の絵』の原稿を探す二人。作家の目で事の成り行きを観察する老童女と、事のついでに西日の中の九官鳥などを見て詩を養う中年詩人。愛読者ならではの鋭い分析。かつて森茉莉の辛辣なテレビ評を読むために週刊誌を買い続けたがそれは現実逃避とのこと。なるほど。

本の画象

思潮社(2200円+税)
2007年10月刊



2008年2月25日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


飛高隆夫・野山義正編
『展望・現代の詩歌』(全11巻)

 現代の詩、短歌、俳句を作家論的な括りで鑑賞したもの。「船団」の関係者では滝浪貴史が富澤赤黄男、わたなべじゅんこが赤尾兜子、私が日野草城、稲畑汀子を鑑賞している。私についての鑑賞は林桂がしてくれている。地味な叢書だが若い人や中・高の国語教師に勧めたい。


本の画象

明治書院(1巻2800円+税)
2008年2月完結
井波律子著
『中国名言集』

 「一日一言」というサブタイトルがある。たとえば2月26日だと「三分の白 一段の香(かおり)」。宋の蘆梅坡の詩「雪梅」にある言葉だという。以下は井波の解説。「白さでいうなら梅は雪にいささかひけをとり、香りでいうなら逆に雪が梅に劣るというわけだ」。

本の画象

岩波書店(2700円+税)
2008年1月刊


桑原汽白の推す2冊


藪ノ内君代句集
『風のなぎさ』

 片隅に台秤がある。分銅は5kg、10kg、20kgでも、手のひらにのるようなもの。まっ黒な板の間で転がすもの。そんな雪国の一こま…。

 風花や魚屋さんの量り売り  君代


本の画象

創風社出版(1200円+税)
2007年12月刊
白土三平著
『こがらし剣士』

ザー ザー
マンガの雨。
 「白雲! きさまの持っている三日月城の秘密をしるした巻物二巻 たった今もらいたい」。

本の画象

小学館クリエイティブ(1900円+税)
2007年12月刊



2008年2月18日号(e船団書評委員会)

宮嵜 亀の推す2冊


山口誓子著
新装版『山口誓子自選自解句集』

 自作215句収集。さらりとしたのから懇切丁寧な自解まで、著者の作句の場面と背景が推量されて興味深い。自解はまさに俳文である。今まで気にかかっていた句の自解を読むのは著者自身によるオリジナルだからよくわかってよかったとも思うし、ある意味で申し訳ないとも感じる。

枯野犬四肢とも速歩やまざるも  誓子

本の画象

講談社(1800円+税)
2007年7月刊
熊沢孝朗著
『痛みを知る』

 著者は痛覚が専門の医学者。痛みの基礎と医療の重要性を説く。痛みには急性痛と慢性痛があり、前者は原因が明確な身体警告信号だが、後者は神経系伝達経路がちがっていて、中枢の可塑性によるもの(記憶)だという。草食動物が肉食獣に捕らえられた時やハリ鎮痛などを例に痛み抑制系も語られる。

老犬吠えて春雪山に舞う  亀

本の画象

東方出版(1500円+税)
2007年12月刊

葉月ひさ子の推す2冊


久我田鶴子歌集
『鳥恋行(とりこひかう)

 「人は、肉体的にも精神的にもあやうさを抱えて生きている」とあとがきに記する著者の6冊目渾身の歌集。外来語のカタカナでさえ吸い込むような文語体の美しい歌の形を詠む人だ。高校教師である著者の現場、学校のさまざまな様相が垣間見える歌を二首。「黒板に風鈴さげしは誰ならむちりりりりんがわが声を消す」「ジェネレーションギャップとあっさり言ひ放つ若きを前に言たてなほす」

本の画象

砂子屋書房(3000円+税)
2007年12月刊
佐伯有清著
『最後の遣唐使』

 9世紀前後の東アジアを背景とした韓国歴史ドラマ「海神(ヘシン)」にすっかり魅せられていた矢先に見つけた文庫本だが原本は1978年刊。日本史に欠かせない中国唐への使節団「遣唐使」の派遣期間はおよそ260年間、前後18回にも及んだというが海の藻屑と消えた犠牲者は数多。最後の「承和の遣唐使」の派遣に渡航拒否したのが小野篁。百人一首の「わたの原やそしまかけてこぎいでぬと人にはつげよあまのつり舟」の学術的な解釈も興味深い。

本の画象

講談社学術文庫(800円+税)
2007年11月刊



2008年2月11日号(e船団書評委員会)

朝倉 晴美の推す2冊


佐高信対談集
『詩歌と俳句の湧き口』
生命のリズムを語る20人

 上野千鶴子に井上陽水、村松友視に筑紫哲也、花田春兆、中村吉右衛門。さまざまな分野の魅惑的な人物との対談。彼らと話すことから、彼らの内部にある韻律を引き出す佐高信。人にはそれぞれのバックグランドがあるのだから、琴線もそれぞれ。だから、人それぞれに、その人に内在する韻律、リズムがあるのではないか。そんなことを感じた。

本の画象

七つ森書館(2000円+税)
2007年11月刊
油井宏子著
『江戸奉公人の心得帖』

 今、江戸時代が熱い?!確かに、元禄バブルと言われるように、商工業と文化の隆盛は、他時代の比ではないだろう。それを、一番底辺で支えていたのが奉公人。その完膚なきまでのヒエラルキー制度。重箱の隅まで徹底した社則ならぬ心得帖。現代サラリーマンも楽ではないが、江戸時代の奉公人だって根性あるのみだったのだ。

本の画象

新潮新書(680円+税)
2007年12月刊


赤石 忍の推す2冊


田中優子著
『江戸はネットワーク』

 著者は法政大社会学部の有名教授。関口宏司会の「サンデーモーニング」にも着物姿で出演している。松岡正剛氏の解説には「江戸時代には連という小さな人のつながりがあり、趣向と世界をめぐるコンテンツの共有の中で遊びあった」とある。連歌や連句等、クリエイティブルールを持つコンテンツだからこそ、新たな文化をダイナミックに創出するネットワークに成り得たと続ける。今様のネット社会からは強烈な文化は生まれないのではと、「連」の再構築を促す書でもある。

本の画象

平凡社(1300円+税)
2008年1月刊
亀井孝・大藤時彦・山田俊雄編
『日本語の歴史』別巻
言語史研究入門

 知人からいただいたが、難解すぎてなかなか読み進めず書評に値しないこと重々承知の上、この別巻も含め全8巻、いつか読了したいという思いを込めて、また、言葉に携わる皆様にも挑戦をお薦めしたく、ご紹介させていただいた。平凡社ライブラリーにはこの手のものが多く、『日本残酷物語』全5巻も同類で、2巻からなかなか先に進めない。本書の題名にもあるように、日本語はいったいどこから来たのか、その興味だけは数十年、持ち続けてはいるのだが。

本の画象

平凡社(1680円、税込み)
2008年1月刊



2008年2月4日号(e船団書評委員会)

木村和也の推す2冊


國文學編集部編(平井照敏他著)
『知っ得
俳句創作鑑賞ハンドブック』


 俳句の魅力を多角的視点から1冊にまとめたハンドブック。「俳句の本質」「俳句の歴史」「俳句の鑑賞」などの章から成る。すべて見開き2頁でコンパクトにまとめられていて読みやすい。ちなみに「鑑賞」の章の最後を坪内稔典が担当している。他に俳句年表や季語一覧が付いていて便利。

本の画象

學燈社(1800円、税込み)
2008年1月刊
小関智弘著
『道具にヒミツあり』

 例えば全世界に普及する携帯電話の小型化、軽量化は、東京下町の従業員6人の町工場の技術に支えられているという話。その技術を作り出している職人たちの「ヒミツ」が、元職人であった著者の実直な口調(文体)で語られている。日本文 化の基底にまで想像が及んでいく好著。

本の画象

岩波ジュニア新書(780円、税込み)
2007年12月刊


大角真代の推す2冊


八木章好著
『心の「ツボ」に効く漢詩漢文』

 現代人はいろんな問題を抱えている。それを呟きとして提示し、それに答えるような名文を著者が選び、三章だてで立派な・賢い・豊かな生き方を提示する。
 清風朗月は一銭の買うを用いず。心豊かに生きたいと思う。自然は無尽蔵にあり、昨夜の雪が私を喜ばせる。

本の画象

講談社(800円+税)
2007年11月刊
尾塚理恵子著
『美人のお作法』

 結婚してから美人になりたいと思うようになった。女性の品格本が売れてるけど、そこまでまじめには考えてない。そこで本書。実例付きなので実践的。ふるまいって以外に奥が深い。とくに笑顔の使い方で異性のハートを射止める方法は感心。早速実践しようと思ったけど、私もう結婚してたか。

本の画象

中経出版(1200円+税)
2007年11月刊



2008年1月28日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊


穂村 弘著
『短歌の友人』

 ニューウェイブ短歌の旗手、穂村弘の初の歌論集。私などの一般読者が「なんじゃこりゃ」という感想を持つであろう現代短歌の読み方も教えてくれる。大岡信が「プロ」は自分の仕事を歴史に位置づけられる人であるというようなことを何かに書いていたことを思い出しながら、短歌の今について考えることができた。短歌界の人はみんな知ってるんだろうけど・・・。

本の画象

河出書房新社(1900円+税)
2007年12月刊
茂木健一郎著
『脳を活かす勉強法』
―奇跡の「強化学習」―

 脳科学者らしい切り口で、自らの経験をベースに「学習」のあらまほしき方法をわかりやすく示している。安全確実なものと挑戦的なもののバランスのとれた状態「偶有性」を考えるのが大事らしい。俳句を作る時の脳の働きも、きっとこの「偶有性」に左右されているんじゃないかなと思う。

本の画象

PHP研究所(1100円+税)
2007年12月刊


三好万美の推す2冊


小池昌代編
―かがやけ・詩/いきることば―
絵本 『どっさりのぼく』

 小学生から読める絵本形式詩集シリーズの三作目。哲学的な深みのあるものから、日常風景、こどものつぶやきの四行詩まで、バラエティー豊かに集められた詩たち。
 色鮮やかな絵とあわせて大人も楽しめる一冊。詩人である編者が、読者のこどもにあてたメッセージ風巻末解説もいい。 

本の画象

あかね書房(1800円)
2007年11月刊
岩合光昭著
『いのちの記憶』

 南極、熱帯、サバンナ、極寒の海や川、地球のあちこちを訪れ、一定期間野に滞在し、動物たちを見守りながらシャッターを切り続ける。その写真からは、厳しい環境の中で懸命に命をつないでゆく野生動物たちへの、あたたかな敬意が感じられる。現在では純粋な野生種はいないとされているホワイトライオンの、淡い水色の目が心に残る。

本の画象

世界文化社(2400円+税)
2007年10月刊



2008年1月21日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの推す2冊


高橋英夫著
『音楽が聞こえる』

 朔太郎詩のリフレーン・オノマトペの音楽、「音楽心象帳」としての賢治『春と修羅』、光太郎の詩タイトルの音楽性など、詩と音楽について語られる。特に串田孫一の受動性の積極的側面、アマチュア性への思いやりの発見からは、むしろ著者のまなざしが見えてくる。音楽を介した人と人とのつながりが興味深い。

本の画象

筑摩書房(2500円+税)
2007年11月刊
アントワーヌ・コンパニョン著
中地義和/古川一義訳

『文学をめぐる理論と常識』

 わかりやすい本ではない。著者は文学、作者、世界、読者、文体、歴史、価値の七つについて問いかけ、「理論と常識の対立」と「文学の基本要素という領域での両者の論戦」を描こうとする。結論部分にある「俳句みたいなもの」という表現は??である。原題の直訳は『理論の魔(力)−文学と常識』、こちらのタイトルの方が魅力的。

本の画象

岩波書店(3800円+税)
2007年11月刊


武馬久仁裕の推す2冊


今井真子句集
『約束』

 俳句にも一種のエロスというものが必要だと思う。例えば、今井真子の「立春の五臓きらきらしておりぬ」。春立つ日といっても、現実にはまだ寒い。しかし、春を迎え人は心華やぐ。それを、作者は、身体の内部で五臓=内臓がきらきら輝いていると感受したのである。そこに、私はエロスが匂い立つのを感じたのである。エロスのない俳句は、空疎に響く。真子俳句に私は願おう。もっともっとエロティックに。

本の画象

邑書林(定価2625円)
2007年11月刊
久生十蘭作/小林真二翻刻
『久生十蘭「従軍日記」』

 「作家、久生十蘭は昭和18年2月、羽田からジャワへ向かった。まず、大東亜共栄圏に編入されたジャワの異常な日常が、「ほとんど傍若無人なり」と評された不眠症で撞球狂の武政マデウン州司政長官など、倦怠の日々を送る日本人の生態を通して活写される。そこでは十蘭を含め、皆浅ましい限りである。しかし、読むにはすこぶる面白い。やがて彼は「おれ自身…慚愧に耐えぬ思いなり」と、心を入替えニューギニアの前線へと旅立つのである。

本の画象

講談社(定価1890円)
2007年10月刊



2008年1月14日号 (e船団書評委員会)

小林幸夫の推す2冊


橋本 治著
『小林秀雄の恵み』

 小林秀雄の『本居宣長』に導かれて、考えること、学問することの喜びについて語った本のように見える。しかし、そう単純ではないようだ。これは小林の宣長論をダシにした橋本の「もののあはれ」論だと思う。だから桜を愛した宣長の和歌論へといきつく。桜への愛着、宣長の桜への恋心が和歌によって表現される。それが「もののあはれ」の認識へとつながる。ついにはその根源をもとめて『古事記伝』へといたる。小林秀雄とは異なる宣長論がここにある。いつものような饒舌体の文章だが、おもしろかった。

本の画像

新潮社(1800円+税)
2007年12月刊
高橋利樹著
『京の花街「輪違屋」物語』

 京都の島原に行くたびに、輪違屋を覗き込む。しかし、一見さんお断りだから、玄関を覗くだけである。しかし、今度はちがう。なにしろご主人手ずからの本だから、案内者にまちがいはない。子どもの頃、新聞に島原の大夫行列のことが年に一度、年中行事として報道されていた。けれども、京都にいながら、島原や大夫のことがわからなかった。学生時代に井原西鶴のことを勉強してわかった。それは知識だけのこと。一度だけでもお座敷にあがってみたい。そう思ったこともあったけれども、ようやく置屋と揚屋の実際がわかった。角屋さんのことも思い合わせればいい。そして、何よりも大夫さんは今でも活躍されているのが、うれしかった。

本の画象

PHP新書(720円+税)
2007年8月刊


塩谷則子の推す2冊

柳克弘著
『凛然たる青春――若き俳人たちの肖像』

 この連載を読みたくて図書館でコピーしています、という人がいた。「俳句研究」の休刊で柳克弘の評論を手軽に読めなくなったのが残念。23人の俳人の青春詠を解説しながら筆者の俳句観を語る。個人の俳句観を超えて俳句のありようを語っているのが見事。桂信子から「生きることに野太くあれ」を読み取るなど圧倒される。

本の画象

富士見書房(2600円+税)
2007年10月刊
魚村晋太郎歌集
『花柄』

 冒頭「感情のかたちをとらぬ容積が追い出しがたく窓の冬の木」。なぜ「容積を」でなく「容積が」なのだろう。容積をいとおしんでいるのだ。人妻との恋が少し以外にどんな物語もない歌集。「週の重心は木曜ゆりの木の並木だったと帰りに気づく」。丁寧に作られていてしかけに気づくまで時間がかかる。知恵の輪のようで、解けるまでが楽しい。

本の画象

砂子屋書房(3000円+税)
2007年12月刊



2008年1月7日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


高野公彦歌集
『天平の水煙』

 高野公彦は私の同郷の歌人。3歳年長のこの人にずいぶん刺激を受けてきた。今も受けている。やや頑なに見える言葉への姿勢、その私にはない姿勢にことに。『天平の水煙』は高野の11番目の歌集。「混み合ひて良き匂ひ満つ十二月二十九日の町のさんぱつ屋」。


本の画象

本阿弥書店(2500円+税)
2007年12月刊
伊藤一彦歌集
『微笑の空』

 著者の10番目の歌集。「光年をとびこえてくる父なれば誰よりも近し冬の星夜は」。この感じ、よく分かる。もっとも、パチンコ好きだった私の父は軍艦マーチに乗って近づいてくるが。もう1首引こう。「パチンコが俳句に変はり稔典氏苦界を出でて句会に遊ぶ」。

本の画象

角川書店(2571円+税)
2007年12月刊


桑原汽白の推す2冊


井上洋介句集
『大階段』

 階段のパロディー…?。それは、想像や現実、舞台裏のゴシップ、ないまぜの幻の世界。

 大蚤は幼童喰えて跳ねるなり  洋介

 一句一枚ずつ。宵闇に沈みゆくもの。

本の画象

トムズボックス(1200円+税)
2007年10月刊
大道珠貴著
『ミルク』

 小篇集。「ミルク」、一人称の、独白体というの…。M.C.エッシャーのプリント・ギャラリーのように、回廊を曲がると4分の1、一回りしたら、あれっ、なんて…。いつのまにか、高校生トシマリュウジ、なんて…。軽いめまい。

本の画象

中公文庫(629円+税)
2007年10月刊




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