俳句 e船団 ブックレビュー
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2010年12月27日号(e船団書評委員会)

葉月ひさ子の推す2冊

能村研三監修
『能村登四郎全句集』

 図書館の新刊コーナーにひときわ分厚い1冊は、5880句を収めた15冊の句集の完全確定版。
 登四郎生誕百年と創刊四〇周年を迎えた主宰誌「沖」の節目に、と刊行委員会のあとがきにある。
 難解ではない句が心地良く、「寡作なる人の二月の畑仕事」など農事を詠んだ景が優しく懐かしい。句集ごとの「あとがき」「後記」の文章の簡潔さにも魅かれる。特に第六句集『有為の山』とは、いろは歌の「うゐのおくやま」でまぼろしの山だという。「私は今その山道をこつこつと歩みつづけている」とある。

本の画象

ふらんす堂(11429円+税)
2010年9月刊
丸谷才一著
『星のあひびき』

 独特な言い回しや、今時女性蔑視?ととれる表現が鼻に付くお人だがなかなかに面白い。5章に分けた内容の「T評論的気分」「U書評35本」で大方を占めるが、まな板に乗った古今東西の書籍群にはもちろん脱帽!「わたしは彼女を狙ってゐた」と言う題名には何事かと思いきやいたく感銘。書評の大家である著名人にして「いつも困るのは女の書評者ですね」と人選の苦労を語る。「いろんな方に狙ひをつけてうまくゆかなかった。そのなかで一番惜しかったのは米原万里です」とあり、彼女のファンとしてはうれしくなった次第。

本の画象

集英社(1500円+税)
2010年12月刊


桑原汽泊の推す2冊


戸田菜穂・大高翔著
『恋俳句レッスン』
俳句は恋を育てる

 セーターを脱いで白割烹着かな  菜穂

 ふわふわしている たまに ちょっと
 わすれてしまう またすぐ けつパンチ
 むかしはものをおもはざりけり
 よいお年を。

本の画象

マガジンハウス(1300円+税)
2010年10月刊
さいとう・たかを著
My First BIG ゴルゴ13
『HEART BREAK ANGELS』

 フォークランド戦争の後、ブエノスアイレス。MI6とゴルゴ13の死闘。運命にもてあそばれる一人の女、クレオ。ビッグコミック1986年9、10号掲載。「ナイトメア」。
 GOLGO GIRLSのインタビュー。ちょんまげをいじりながら・・・ 

本の画象

小学館(333円+税)
2010年11月刊



2010年12月21日号(e船団書評委員会)

赤石 忍の推す2冊


雲英末雄・佐藤勝明訳注
『芭蕉全句集』

 芭蕉作と認定される句983句を季語別に分類。可能性が残るものを含めて千句以上が収録されている。本書は雲英氏が執筆途中に急逝し、佐藤氏が受け継いだもの。このような研究・執筆には本当に頭が下がる。ところでここ数年、「子規日めくりカレンダー」をトイレで毎日めくっているが、その旨を坪内氏に伝えると「へたなのも多いでしょう」と言われ安心した。以前妻に「子規って俳句、へたじゃない」と言われ、「ばかもの、俳聖に向かって何て言うことを」と返してみたものも、時にはそう思ってしまう自分がいたから。そうだよな、あれだけたくさん作っているんだから。最近の気に入った句。「恋にうとき身は冬枯るる許りなり」。うん、子規、分かるよっていう感じ。

本の画象

角川文庫(1238円+税)
2010年11月刊
山下一海著
『芭蕉百名言』

 新刊『芭蕉全句集』を手に取り、年末・正月に芭蕉の句を読んでみようと考え、ふと横を見ると本書が。そうか、まず芭蕉先生の考えを、ということで読み始めたが、これが分かったようで分からず、よく分からないが、何となく納得してしまうという体たらく。取りあえず分かりやすいのをいくつかご紹介。「松のことは松に習えーはい」「風雅に理屈なし。理屈はおのれおのれが心の理屈なりーなるほど」「謂い応せて何かあるー説明になちゃ駄目よね」「発句は取り合はせ物と知るべしーハッ」。でも著者が言うように、芭蕉は風流に身を置く優雅な高踏的人物ではなく、ギラギラとした革新者であったということは、少しは分かったような気はした。

本の画象

角川文庫(本体857円+税)
2010年5月刊


田中俊弥の推す2冊


栗木京子著
『短歌をつくろう』

 俳句は「魔法の杖」であり、「アラジンの魔法の絨毯」でもある。俳句という五七五のことばをうまく使いこなせば、途方もないことをしでかすこともできれば、自由に空も飛べる。これに対し、短歌は、「方程式」である。解と解法があるのだ。そんなことを考えさせてくれた、周到で、やさしくも本質的な短歌入門書。

本の画象

岩波ジュニア新書(780円+税)
2010年11月刊
志水宏吉著
一人称の教育社会学
『学校にできること』

 教育と教育学。社会と社会学。教育も社会も、ともに現在進行形の複雑系。その両者をあわせた学問たる教育社会学とは、いかなるものなのか。学校臨床社会学のパイオニアである著者は、みずからの研究人生をふりかえり、その見取り図を提示している。地に足をつけて未来へと向かう、力ある大阪の教育学を学びたい。
 人生の清涼剤たる一冊。

本の画象

角川選書(角川学芸出版)(1700円+税)
2010年11月刊



2010年12月13日号(e船団書評委員会)

大角真代の推す2冊


茨木のり子集
『言の葉1』

 1950〜60年代の詩・エッセイ・ラジオドラマ等を収録。エッセイ「櫂小史」が面白く、事細かに櫂創刊から終刊、復刊までを記録している。「批評てのは、つまり讃えることだな」など印象に残るフレーズがあった。茨木のり子のその時々の思いが率直に書かれていて、彼女が身近に感じれて、ちょっと嬉しかった。

本の画象

ちくま文庫(820円+税)
2010年8月刊
日経ビジネス
仕事に効く脳を鍛える
『新しいランニング』

 ランニングを始めたいと思って、購入。なぜ経営者たちは走り始めたのか、などの特集記事あり。経営者は「走ると全てが効率化する。思考が健全化する」などの理由で走り始めているらしい。私はダイエットのために走りたいけど、いろんな面でいいことづくめであることがわかった。

本の画象

日経BP社(933円+税)
2010年12月刊


朝倉晴美の推す2冊


中村 明著
日本語
『語感の辞典』

 それぞれの語が持つ感じ、ニュアンスを教えてくれる初めての辞典。例えば、「湯上がり」と「入浴後」の違いには、ビールの旨さに差があり、「レストラン」にはないが「洋食屋」にあるイメージは、偏屈なおやじの有無など。読み物としても、言葉の変遷が知れて楽しく、価値大。

本の画象

岩波書店(3000円+税)
2010年11月刊
外山滋比古著
『ゆっくり急ぐ』

 思わず膝を打ち、思わず微笑み、時にはニヤリと…。外山さんの日常雑感は、なんて軽妙で、なんて可笑しいんだろう。それでいて、真実がいっぱい。
 それは、きっと外山さんの眼が、透き通っているから。毎日は退屈じゃなく、毎日はうれしいはず。
 人生の清涼剤たる一冊。

本の画象

毎日新聞社(1400円+税)
2010年12月刊



2010年12月6日号(e船団書評委員会)

木村和也の推す2冊


あざ蓉子句集
『天気雨』

 詩は日常を飛び越えなければならない。そんな当たり前のことを改めて想起させてくれる。摂津幸彦でも、坪内捻典でもない異次元の世界が出現している。そこには、したたかな言語感覚に支えられた計算が生きている。
 あやとりのなかはこの世の牡丹雪

本の画象

角川21世紀俳句叢書(2667円+税)
2010年10月刊
枝川公一著
これならわかる!
『ドラッカー思考』

 チリの鉱山事故から無事生還した男達のリーダーだった人がドラッカーを愛読していたということで、今またドラッカーブームが起こっているらしい。「我々の間違いが他の人たちより少ないのは、優れた判断力のせいではなくて、良心にのっとって決定するからだ」。経営学を超えた思想家としてのドラッカーが解説されている。

本の画象

PHP文庫(533円+税)
2010年10月刊


三好万美の推す2冊


川上弘美著
『機嫌のいい犬』

 小説家川上弘美の第一句集。俳諧と詩情、大胆と端正、彼女が綴る言葉の世界は多彩な輝きに満ちていて、小説やエッセイとは違ったおもしろさがある。「俳句をつくって、あらためて日本語が好きになった」というあとがきの言葉に共感した。

本の画象

集英社(1500円+税)
2010年10月刊
いせひでこ著
『七つめの絵の具』

  画家で絵本作家である著者のエッセイ集。痛々しいまでに繊細な感性を持つ著者の文章を読んでいると、芸術家にとっての幼少期の環境が、その後の作品世界にいかに深く影響しているかを感じる。

本の画象

平凡社(1400円+税)
2010年6月刊



2010年11月29日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの推す2冊


伊藤一彦・堺 雅人著
『ぼく、牧水!』
―歌人に学ぶ「まろび」の美学

 今年は若山牧水生誕125年。67歳の伊藤一彦、37歳の堺雅人、二人は元高校教員とその生徒という関係。伊藤は堺を「旧友」、堺は「先生」と呼ぶ。宮崎の牧水生家前のそば家、日向の居酒屋、宮崎市の居酒屋、と場所を変え、三日飲み続けて牧水を話題の中心に二人で語り合った記録。堺雅人の魅力を発見した。

本の画象

角川oneテーマ21(781円+税)
2010年9月刊
長谷川三千子著
『日本語の哲学へ』

 ここでいう「日本語の哲学」は「難解」な日本語を、さらに「平易」な日本語に言いかえることではない。和辻哲郎『続日本精神史研究』(1935)にある「日本語をもって思索する哲学者よ、生まれいでよ」ということばを遺言として引き受けて書かれた本。「底力のある日本語」「あえて誤差を生じさせる実験」にヒントをもらった。

本の画象

ちくま新書(780円+税)
2010年9月刊


若林武史の推す2冊


川名 大著
『挑発する俳句 癒す俳句』

 中村草田男から折原美秋までの23名の代表的な句集を軸に、俳句の表現史をまとめた一冊。俳句表現がどのように拡がってきたか、また、どのように洗練されてきたかを辿っている。不勉強な自分にとっては、いろいろと学ぶところも多かったが、俳句ってこんなに難しいの、という感じも否めなかった。とはいえ、俳人とその業績を歴史の中に位置付けることはとても重要であることに違いはない。

本の画象

筑摩書房(3000円+税)
2010年9月刊
高柳蕗子責任編集
『穂村弘ワンダーランド』

 歌人・穂村弘の歌、他の歌人によるオマージュ、歌論などで構成された、穂村弘を知るための一冊。穂村弘はいいな、と素直に思う。先日、青磁社の記念シンポジウムを見に行った(短歌です)。そこに穂村弘が呼ばれていた。今日の短歌界の一端が窺えて面白かった。そして、穂村弘は賢い人だなと改めて思った。

本の画象

沖積舎(1500円+税)
2010年10月刊

[e船団・週刊ブックレビュー]バックナンバー



2010年11月22日号(e船団書評委員会)

塩谷則子の推す2冊


渡辺 裕著
『歌う国民』
唱歌、校歌、うたごえ

 キーワードは「換骨奪胎」。「身を立て名をあげ」という歌詞が嫌われ「仰げば尊し」を歌う学校は少数。しかし卒業式そのものはイヴェント化。学校儀式は明治期の「国民づくり」という目的を骨抜きにしながら残っている。これが文化という。イヴェント化はいつまで続くだろう?変容し続ける時代、皆で歌う歌がない時代も悪くない。

本の画象

中央公論新書(840円+税)
2010年9月刊
森まゆみ著
『明るい原田病日記』

 100万人に5、6人という原田病。ものがぐにゃりとみえる。メラニン色素を破壊する自己免疫病。07年4月の発病から1年半の記録。視力がもどったので、耳鳴りや頭痛を訴えても真剣に考えてくれない医療への不満が述べられている。同感。検査を主にして生活の質を考えない医療は困る。著者は雑誌「谷中・根津・千駄木」を終刊、時々宮城県丸森で百姓をする。半田舎暮らしは時代の先端かも。

本の画象

亜紀書房(1600円+税)
2010年9月刊


武馬久仁裕の推す2冊


安井浩司句集
『空なる芭蕉』

 「夏の峰吹く塩詰まりの法螺貝よ」に出会った時、安井浩司は一句で「法螺」を吹いているのではないかと思った。そこですぐ前の「引き寄せて漂流山を春庭に」を読み直してみれば、まさしく法螺ではないか。これを単に借景の句と読んでは身も蓋もない。文字通り漂流し来たった山を春の庭に置き、築山とするのである。なんという大景! 法螺は、我々の内なる規範を取り払い、ユーモアで一句を包み込む。安井の句集がいよいよ面白くなった。

本の画象

沖積舎(3800円+税)
2010年9月刊
『大澤真幸THINKING「O」』6号
特集「生きることを哲学する」

 思想家・大澤真幸の哲学者・鷲田清一との対談と自らの論考「サッカーの(非)人間学」を収める。大澤は、資本主義における「商品交換」に代わるものとして、「贈与」を構想しつつあるようだ。彼はサッカーというゲームに潜む「贈与の論理」に着目し、オフサイド、パス、ゴールなどを全て贈与の論理で解明する。そして、サッカーに「人間に普遍的な贈与への衝動」を見た彼は、その非合理性故に実現可能な交換の形態と、見て取ったようである。

本の画象

左右社(1000円+税)
2010年9月刊



2010年11月15日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


雑誌
「国文学 解釈と鑑賞」
2010年11月号

 「正岡子規―時代を生きる」を特集している。「時代を生きる子規」「さまざまな子規」「資料と文献」の3部からなる特集だが、船団関係では中原幸子、わたなべじゅんこ、船井春奈、小西昭夫、鈴木ひさし、そして私が執筆している。国文学の雑誌の地味な子規の特集だが、真摯に子規と向き合っている姿勢がどの論考からも感じられる。

本の画象

ぎょうせい(1619円+税)
2010年11月刊
後藤正治著
『清冽』
詩人茨木のり子の肖像

 70代に出した詩集『倚りかからず』がヒットした詩人の評伝である。著者は巻末近くで「行方不明の時間」という詩を紹介している。「人間には行方不明の時間が必要です」と始まり、「三十分であれ 一時間であれ ポワンと一人 なにものからも離れて うたたねにしろ 瞑想にしろ 不埒なことをいたすにしろ」と続く。活字化された茨木の最後の詩らしい。実はノンフィクション作家、後藤正治も、対象の人物の行方不明の時間を大事にする。彼はそういう書き手だ。

本の画象

中央公論新社(1900円+税)
2010年11月刊


田中俊弥の推す2冊


中川 裕著
『語り合うことばの力』
カムイたちと生きる世界

 日本・ニッポンとは、どういう国なのであろうか。いまその屋台骨が問われている。アジアの中のニッポン、世界の中のニッポン、原始ニッポン、わたしたちは、あらためてそのアイデンティティを確かめなければならない。そして、「にほんご」の奥行きと歴史についても深く学ぶ必要がある。本書は、その根源に迫る。 I

本の画象

岩波書店(2300円+税)
2010年9月刊
成山治彦著
『格差と貧困に立ち向かう教育』
人権の視点で問い直す

 「教育力は人のつながりの中にあるものです。子どもを軸にどれだけの人々がつ ながっているかが指標です。」「教師が子どもや地域に向き合うということは、 地域を通して、子どもや教育に大きな影響を与えてきた時代そのものと向き合う ことでもあるのです。」著者のことばに、大阪の実践者の千鈞の重みを感ずる。

本の画象

明治図書(2000円+税)
2010年8月刊



2010年11月 8日号(e船団書評委員会)

葉月ひさ子の推す2冊


山下多恵子著
『啄木と郁雨』
友の恋歌 矢ぐるまの花

 副書名は「函館の青柳町こそかなしけれ友の恋歌矢ぐるまの花」に拠るもの。啄木の函館在住は132日だというから驚くが26年の生涯では短い期間とは言えまい。啄木が函館で出会った「真の男」である宮崎郁雨とその周辺のことを、史実と資料に則して記述してあるだけに「情」としての歌が一層切ないのだろうか。著者は国際啄木学会理事。

本の画象

未知谷(2500円+税)
2010年8月刊
新藤 謙著
『石牟礼道子の形成』

 「要するに石牟礼道子は、規範はずれという意識を自覚しながら成長してきたのである」と文中にある。異色強烈な個性の形成過程をあえて「評伝」ではないと断じてあるのはあとがき。テキストは刊行中の全集(藤原書店)に拠るものという。かつて『苦界浄土』の能楽を観劇した時、作者の立つ位置が「自然との共生」に徹していることを知った。

本の画象

深夜叢書社(1800円+税)
2010年9月刊


桑原汽泊の推す2冊


寺尾紗穂
『放送禁止歌』

 ひざまわしにはまっています。青い・・・。うるさい、とか、近所迷惑だ、とか・・・。さいきん、コーラスに行きだし、ご指導がいいのか・・・

 「アジアの汗」、「家なき人」、「竹田の子守唄」。

本の画象

MIDI Creative(1000円+税)
2010年6月刊
Prints21 2010年秋号
特集 水木しげる

 「山口晃先生の極私的水木しげる論」。「漫画はアートなのか?」、椅子、LとM(一方はアート)が聴講できます。
 横須賀中央・・・、尾高ベーカリーもそうだ。この見開き大のYなんて、まるで実物・・・
 みんなで歌おう ゲゲゲのゲー

本の画象

(株)プリンツ21(1429円+税)
2010年8月刊



2010年11月 1日号(e船団書評委員会)

朝倉晴美の推す2冊


外山滋比古著
思考の実技 『ものの見方』

 句読点の効果って?縦書きと横書きって意味が違ってくるの?外国語を学ぶとセンス が良くなる?
 すべての読み書きは、大なり小なり、その人の思考に影響を与えるのだそう。  例えば、英文科の受験生に、とてもエレガントな数学の解法があったりしたという。 納得。
 著者の語りが、大いに私の思考に影響を与えています。

本の画象

PHP(1000円+税)
2010年9月刊
酒井順子著
『着れば分かる!』

 制服好きのサカジュン。我々を代表して、魅惑の制服たちを着こなして(?)くれまし た。東京女学館高校に始まり、バスガイドに養蜂服、果ては永ちゃんのコンサート仕 様のチャイナドレスまで。
 決してコスプレではない(はず)。制服の持つ魔力に迫る!ついでに職業体験も。あた なも楽しく疑似体験ができます!

本の画象

文芸春秋(1400円・税込)
2010年8月刊


赤石 忍の推す2冊


谷川俊太郎文・元永定正著
『ココロのヒカリ』

 名作中の名作『もこもこもこ』が出てから実に33年。絵本で再び、この両人の顔合わせが実現するとは思わなかった。
 「ココロのヒカリはいつうまれる?/たのしいきもちになったとき?/だれかとキモチがひとつになるとき?/みんなでおんなじうたうたうとき?/ココロのヒカリはときにワになり/ときにバラバラ/ほのかにかがやくココロのヒカリ/にこにこわらうココロのヒカリ。/どこかとおくにかくれても/つむじかぜとまいあがっても、/ウチュウにつながるココロのヒカリ/はるかかなたにココロのヒカリ/なぞなぞみたいなココロのヒカリ/ひとりひとりのココロのヒカリ/ココロのヒカリでよがあける」。これもいいけど、やはり『もこもこもこ』の方がいいかな。

本の画象

文研出版(1400円+税)
2010年9月刊
邦枝完二著
小説『子規』

 著者邦枝完二は明治25年生まれで「江戸情緒豊かな官能美の世界を描く時代風俗小説家」だそうだが、よく知らない。本書は1951年が初版。ともあれ読み進めて驚いた。子規がモテまくっているのである。小説などからイメージにされる子規像には、宮澤賢治と同様に女性の影がまとわりつかない。賢治に妹トシがいるように、妹律の姿が浮かぶだけ。本当はどうなんだろう。文中には子規に学問に集中しろと叱られる虚子が出てくるが、その虚子の序文がおもしろい。一見平明でそっけないが、よく読むと「事実とは違うが、こんな子規がいてもいいなあ」という慕情があふれている。子規って本当に愛されるべき人だったのでしょうね、たぶん。

本の画象

河出書房新社(本体720円+税)
2010年10月刊



2010年10月25日号(e船団書評委員会)

三好万美の推す2冊


田正子著
『子どもの一句』

 本書は2008年元旦から一年間、ふらんす堂ホームページに連載された「子どもの一句」をまとめたもの。
 親目線、大人目線でとらえた子ども俳句だけでなく、大人となった作者の親子関係、または自らの子ども時代の友人・兄弟関係を詠んだ俳句も多く取り上げているなど、選句に幅があって共感できる。母親である著者の、子育ての本音が垣間見えるところも読んでいてほっとする。

本の画象

ふらんす堂(1714円+税)
2010年4月刊
長田 弘著
『詩ふたつ』

 二つの詩からなる詩集。大切な人を失った著者の、「死と再生」をつむぐことばは、クリムトの描く力強いタッチの鮮やかな花々や木々と適度の距離感を保ちながら、二つでひとつの物語となっている。大切なものを失ったとき、または失いかけているとき、心に留めておきたい言葉がいくつもある。

本の画象

クレヨンハウス(2800円+税)
2010年6月刊


大角真代の推す2冊


杉田 圭著
超訳百人一首
『うた恋い。』

 百人一首がコミックに?!話のネタ程度と思って読みましたが、在原業平はかっこいいし、平安美女が盛りだくさんで、話は胸きゅん。巻末の超訳百人一首も、古文の知識が薄れた今の私には、現代的でわかりやすく面白い。このコミック、意外な掘り出しものかも。

本の画象

メディアファクトリー(950円+税)
2010年8月刊
くるねこ大和著
『くるねこ6』

 6巻も相変わらずの5匹の愚連隊ねこと飼い主のお話。
 ねこたちのほんわかとした日常生活でこちらの顔はニヤニヤしっぱなし、 でも巻末はしんみり、ほろりとさせられ、これぞエンターテイメント!と拍手喝采を送りたくなる。
 ねこそれぞれに個性があって、これだけ描き分けられる作者を私はまだ知らない。

本の画象

エンターブレイン(1000円+税)
2010年10月刊



2010年10月18日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊


津本 陽著
『孤塁の名人』
合気を極めた男・佐川幸義

 大東流合気柔術(わかりやすく言うと合気道、でも今のいわゆる合気道ではない)の創始者武田惣角とその弟子である佐川幸義の評伝。触れるだけで人が吹っ飛ぶような合気の世界を筆者自らの経験を交えながら、読ませる一冊である。技術が備われば肉体的な鍛練は要らないのではなく、むしろ鍛えつづけることで新たにみえてくる世界があるという言葉に、何だかわからないが反省をした。

本の画象

文春文庫(571円+税)
2010年10月刊
千葉 聡著
『飛び跳ねる教室』

 歌人・千葉聡の中学校での教師体験とその当時詠まれた短歌がちりばめられた自伝的な小説。多感な中学生とそれに真正面から向き合う「ちばさと」先生の交流に感動すると同時に、やっぱり反省した。教育という仕事の逃れられない重みと明日への希望を感じとることのできる一冊。

本の画象

亜紀書房(1500円+税)
2010年9月刊


木村和也の推す2冊


水上博子句集
『ひとつ先まで』

 私が初めて船団の句会に出たとき、隣でさらりと親切に句会のやりかたを教えてくれたのが水上さんだった。そんな衒いのないフランクさがこの句集によく出ている。
 瀬田川にオールの揃う薄暑かな
 空仰ぐ椅子の置かれて秋の庭
など、ケレン味のないストレートな句群にひかれる。

本の画象

ふらんす堂(2000円+税)
2010年9月刊
上原善広著
『異形の日本人』

 大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『日本の路地を旅する』(文藝春秋)の続編。今回は人物に、それも社会でタブー視されてきた「異形」の人々にスポットを当てる。著者が言う「忘れられた日本人」のストーリーから、現在に屹立する日本人の姿が見えてくる。

本の画象

新潮新書(680円+税)
2010年9月刊



2010年10月11日号(e船団書評委員会)

武馬久仁裕の推す2冊


淺井霜崖著
『淺井霜崖全句集』

 私は霜崖の境涯の句に惹かれる。若き日の結核療養時代に彼の境涯は耀く。彼の自然が、「地図に記されゐし冬河の涸れゐたり」「前途暗澹たり野に桑くくられ」と言った絶望的なものであっても、耀かしいものなのだ。絶望的であるが故に耀くのだ。「血を喀きて五月のいのち華麗なる」と。巻末の療養時代をテーマにした随想「雪の舞ひこむ窓」で彼は言っている。「いまから思ふとその一日一日が偽りでなく充実した日々であつた気がしてならない。」

本の画象

邑書林(4761円+税)
2010年6月刊
金 文京著
『漢文と東アジア』
―訓読の文化圏

 漢字と固有文字による「複数の文字を使用した多様な文体の存在」は東アジア特有の現象であろうと著者は言う。しかし、中国の周辺諸民族においては、日本を除き漢字は消えてしまった。漢字が唯一残った日本には、複数の文字を使用した極めて多様な文体が共存している。この多様な文体を駆使して、俳句という短詩形文学が成り立たっていることを思い、感慨深い。我々はこの稀有な条件を活かし更に豊かな文学表現をめざすべきであろう。

本の画象

岩波新書(800円+税)
2010年8月刊


鈴木ひさしの推す2冊


木津川計著
『人生としての川柳』

 著者は『上方芸能』発行人。話芸には定評があり、文章は簡潔で力があり、魅力的である。著者の川柳観、世の中に対する見方、矛盾を抱えた人間の生の肯定が、話芸に裏打ちされた筆力で語られる。俳句でできること、川柳でできること、五七五でできること、いろいろと考えたくなる。「人の世や嗚呼にはじまる広辞苑(橘高薫風)」

本の画象

角川学芸ブックス(1400円+税)
2010年7月刊
多田富雄著
『寡黙なる巨人』

 著者は免疫学者として知られ、新作能の作者でもあった。脳梗塞に倒れ、リハビリを始めた時、前の自分ではない「新しい人」が生まれたのだ、と著者は言う。「新しい人」を「巨人」と呼び、「巨人」は弱者を守るために政府と渡り合うまでに育った。「死」を意識した「巨人」の成長と生きた記録、貴重な本である。

本の画象

集英社文庫(600円+税)
2010年7月刊



2010年10月4日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


中津昌子著
『芝の雨』

 歌集である。「ふかぶかとリルケに沈む 一国をとどまらず秋がおほひくるとき」「しつかりとした目をもてる台風の近づきくれば壺は明るむ」「かるさうな雲いつまでもかかりゐるフィラデルフィアの窓にもたれて」「夏のベンチに両脚上げてをりたれば木の葉のやうに下りて来る鳥」。作者はアメリカ東部の町で暮らした。これらの歌、アメリカ産なのだが、短歌形式がやわらかくアメリカと響きあっている。

本の画象

角川書店(2571円+税)
2009年11月刊
倉橋健一著
『詩が円熟するとき』
詩的60年代還流

 「口語自由律であることの現代詩のもつ詩型としての主題」を真摯に考えた、あるいは考えている最中の詩論集である。私もしばしば話題になっているが、大学生のころからこの詩人の口語自由律を追求する姿勢に共感してきた。倉橋の口語自由律に対して、私は口語定型詩を主題化しようとしてきた気がする。

本の画象

思潮社(2800円+税)
2010年9月刊


塩谷則子の推す2冊


セース・ノーテボーム著/松永美穂訳
『木犀!
日本紀行』


 オランダの喜寿の作家ノーテボームの小説と紀行文。紀行文から読むのがお勧め。「美は細部に宿っている」との日本理解に共感する。特に中津川駅前で美しい和菓子に見とれる場面。ロンドンまで日本美術展を見に行き、時間(歴史)的にも理解しようと『枕草子』(独訳)などを読む。小説『木犀!』では「雪面・サトコ・木犀」と三通りに呼ばれる女性への一方的な思い込みだったが、紀行文では恋人日本を理解しようとしている。その情熱が魅力的。

本の画象

論創社(1800円+税)
2010年8月刊
マブソン青眼著
『江戸のエコロジスト一茶』

 一茶50歳から65歳の死までの15年間の評伝。「幼少から愛情に飢えた小雀」シャンソン歌手エディット・ピアフ(邦訳小雀)が『愛の賛歌』を亡き夫に捧げ続けたように、一茶も次々と亡くなってしまう不運に耐え、妻と四人の子への賛歌として俳句を作ったという説。ここでエコロジストとは人間への愛にあふれた人のこと。ひねくれていない一茶にほっとする。一茶に絡め論じられるエコロジー論、子を授かる筆者の喜び、は具体的でわかりやすい。

本の画象

角川学芸出版(1600円+税)
2010年8月刊



2010年 9月27日号(e船団書評委員会)

葉月ひさ子の推す2冊


現代短歌研究会編
『〈殺し〉の短歌史』

 2001年に立ち上げた会を小笠原賢二、菱川善夫の二人を病で失くして解散に至ったとあり、その間の会誌やシンポジウムから13編をまとめたもの。第1部の「近代日本」では土岐善麿の記録性、2部の「前衛たち」では山中智恵子の鎮魂歌、3部「現在」では安保闘争を扱った各編が、〈死〉ではなく〈殺し〉の「文学史」と冠した所以であろうかと読み取った。

本の画象

水声社(2800円+税)
2010年6月刊
リチャード・W・ブラウン著
『ターシャの喜びの庭』

 見開きで幅50cmという大型本いっぱいにターシャの庭の花々が溢れている。イングリッシュガーデン風の広い敷地に自給自足、92歳で亡くなるまでのターシャの暮しと老いの表情を美しく捉えている。15歳で学校をやめ一人暮らしを始めたというターシャ・チューダーは絵本作家であり挿絵画家。「庭はわたしの自慢なの!謙遜なんかしないわ」というナチュラルライフがリチャード・ブラウンの写真によって世界中に知られた。。

本の画象

メディアファクトリー(2800円+税)
2010年4月刊


桑原汽泊の推す2冊


くぼえみ句集
『猫じゃらし』

それからの坊っちゃんと行く赤とんぼ
えみ

 かの不浄の地をハーあとにしてからは(まけおしみ?)、ヒーハー、あの大地震(19××)の後・・・。新バイオレンスジャックは、ハー坊っちゃん。クイーンは・・・。欣求浄土、ハー・・・

本の画象

創風社出版(1200円+税)
2010年8月刊
永井豪とダイナミックプロ著
『新バイオレンスジャック』(上)

 スカルキング、金髪。こわいんだけれど、あいきょうもある。きっと、すくいだって・・・。つかのまの静けさ。思い出せない、そんな、キングの前に、一糸まとわぬ・・・
 「いたのか? 気がつけばどこかへ行ってしまう気がしていた」

本の画象

メディアファクトリー(714円+税)
2010年7月刊



2010年 9月20日号(e船団書評委員会)

赤石 忍の推す2冊


辻邦生・北杜夫著
『若き日の友情』
―辻邦生・北杜夫往復書簡

 高校1年の時『どくとるマンボウ青春記』に出会って以来、北杜夫のファン。その中の学校(旧制松本高校)から遠く離れた下宿にこもり、ひたすらトーマス・マンを読みふける憧れの先輩Tが辻邦生。本書は、留年を繰り返す辻を残して大学に進学した北の思い遣りの手紙から始まり、続いて辻を何とか文壇に登場させようとする北の姿が浮かび上がる。一方で『航海記』がベストセラーとなり、ユーモア作家のレッテルを貼られ、困惑する北をなだめる辻のやさしさが記されている。手紙は単なる伝達文にとどまらず、一人の読者に向けた文学でもある。「売れる、売れない」が考えに入らないだけ、良質なものが多いような気もする。

本の画象

新潮社(1800円+税)
2010年7月刊
井伏鱒二・飯田龍太著
井伏鱒二・飯田龍太『往復書簡』

 もう一冊、書簡集の紹介。ちょっと自慢(?)が入るのでご容赦の程を。以前、坪内稔典氏選・監修の児童向け詩集を作った時の事。井伏氏の『厄除け詩集』から一詩を借りた。その旨を手紙で連絡したところ、激怒の電話が入った。「君のところは僕の詩を使って、なおかつ金を取るのか」。あわてて「先生、違います。先生の詩をお借りして、当方がお支払いするのです」。後日、井伏氏から丁寧な陳謝の手紙が届いた。文面は「先日は大失態しました。愚劣なことを口走り申しわけありません。専ら老人ぼけしたためです。どうか悪しからず。」さすが文豪、人格者だと思った。本書はそんな文章名人のやりとり。弟子太宰治風に言うと「秋夜には書簡集がよく似合う」といったところか。

本の画象

角川学芸出版(4200円+税)
2010年8月刊


田中俊弥の推す2冊


加藤郁乎編
『芥川竜之介俳句集』

 1892年(明治25年)3月1日 に誕生し、1927年(昭和2年)7月24日に自死した芥川竜之介は、スタイリッシュな小説家であり、説話作家でもあったが、江戸俳諧や近代俳句にも通暁した俳人でもあった。ここに、厳密な考証を経て千を越える竜之介俳句が年次ごとに確定された。俳句の何たるかを知る格好の一書。

本の画象

岩波文庫(700円+税)
2010年8月刊
山田克哉著
『量子力学はミステリー』

 科学せんとする意欲が授業を変えていく。これが、最近のわたくしの授業論である。物理学は窮理学とも呼ばれ、理(ことわり)をきわめ、それを明瞭なかたちにあらわすことでもある。この世という大いなる物理現象の中に存在するわたくしたちは、あらためてその大いなる理法に驚くべきである。まさに驚愕の一書。

本の画象

PHPサイエンス・ワールド新書(820円+税)
2010年9月刊



2010年 9月13日号(e船団書評委員会)

大角真代の推す2冊


アーサー・ビナード/木坂涼翻訳
『ガラガラヘビの味』
アメリカ子ども詩集

 子ども向け詩集とはいえ当たり前だがアメリカっぽい雰囲気で明るくポップな詩集。書名は「あるグルメ通の男が、ぼくにやたらとガラガラヘビの肉をすすめた。」から始まる詩から取られており、しりあがり寿の挿絵が良い。子ども向けとはいえ、原語も一緒に載せてあったら、もっと楽しめたかも?

本の画象

岩波少年文庫(640円+税)
2010年7月刊
有川 浩著
『阪急電車』

 田舎に住みだしてから、電車に乗るのは年に1〜2回度。電車が嫌いになった。この小説は阪急電車今津線を舞台とした話で、オムニバス形式かと思いきや、全ての小さなドラマが一つに繋がっていて、あぁ、電車っていいなぁ、と何だかよくわからないことを呟いてしまった。

本の画象

幻冬舎文庫(533円+税)
2010年8月刊


朝倉晴美の推す2冊


門 玲子著
『江馬細香』
化政期の女流詩人

 江戸後期、美濃大垣、医者の娘、細香。幼いときから、画が好きで、文字、漢詩、絵画と自由闊達に学び、才を発揮する。理解ある父と家族に守られ、好きという一念で文学に生きた。そして、師「頼山陽」とのプラトニックな相愛。二百年も前に、こんな女性がいたなんて。とっても力強く思います。ファンになりました。

本の画象

藤原書店(4200円+税)
2010年8月刊
小泉武夫著
『絶倫食』

 絶句…じゃなくて絶倫。恥いる年齢ではございませんので、思い切って私めが紹介いたします。
 発酵学者、小泉武夫先生の最新刊。日経新聞夕刊の連載「食あれば楽あり」が人気ですよね。世界中、多種多様の強精食の逸品、珍品を、歴史的背景や、科学的根拠も考察しながら、解説。なるほど、文化だ、と楽しく読めます。

本の画象

新潮社(1300円+税)
2010年8月刊



2010年 9月 6日号(e船団書評委員会)

木村和也の推す2冊


金子兜太著
人間
『金子兜太のざっくばらん』

 インタビュー記事や講演録なので、大変読みやすい。米寿を過ぎた金子兜太がますます旗幟を鮮明にしているところがおもしろい。この俳人の最近の口癖となっている「生き物感覚」や「アニミズム」も、自然に直にとことん触れる経験から生まれているのだということがすっきり読み取れる。

本の画象

中経出版(1500円+税)
2010年8月刊
小林秀雄・岡 潔 著
『人間の建設』

 文芸批評家と数学者という、分野を異にする二つの知性が文学や哲学から物理や数学までを縦横に語り合った「対話」である。本物の教養と知性といったものがいかに深く情趣という水脈につながっているのかがよく分かる。それが爽快感をもたらしてくれる。小林の俳句についての話も面白い。

本の画象

東京書籍(1300円+税)
2010年3月刊


三好万美の推す2冊


杉山久子句集
『鳥と歩く』

 第二回芝不器男俳句新人賞受賞から四年。著者はさらに輝きを増して現れた。十分に吟味された言葉を五七五のリズムにふわりと乗せ、季節を、人を、生き物を大切に詠む。一冊読み終えると、オムニバス映画を観たような感覚が残る。

本の画象

ふらんす堂(2400円+税)
2010年7月刊
杉ア恒夫著
『パン屋のパンセ』

 70代、80代の作品を収めた第二歌集であるが、一読してファンになった。まさに永遠の青年詩人。年齢をまったく感じさせない透明感溢れる詩情とユーモアがどの歌にも漂う。「死」や「老い」を詠ってもかなしみとともにどこか瑞々しく明るい。彼の新しい短歌を読むことができないのが本当に残念である。

本の画象

六花書林(2000円+税)
2010年4月刊



2010年 8月30日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊


別冊俳句・俳句生活
一冊まるごと 『俳句甲子園』

 俳句甲子園の歴史とそこで生まれた秀句が窺える記念碑的な一冊。若い人の詩情豊かな俳句の風味に憧れを持つ一方、個人的にはこれも「俳句」という大きな箱に回収されていくのだろうかという不安もよぎった。高校球児がプロ野球で活躍するように、プロの俳人が若くから活躍されていく姿を遠くから見送りたい。

本の画象

角川学芸出版(1800円+税)
2010年7月刊
和田秀樹・繁田和貴著
『難関校に合格する人の共通点』

 身も蓋もない書名である。難関校にいく人は、やっぱり精神的に余裕があるんだなと思う。逆に言えば、余裕があるからこそ難関校に受かるのだろう。すごいハウツー本であるが、心に迷いが生じた時にパラパラめくるといい本です。

本の画象

東京書籍(1300円+税)
2010年6月刊


鈴木ひさしの推す2冊


笹公人・和田誠著
『連句遊戯』

 和田誠は、星新一・丸谷才一の本の表紙やハイライトのパッケージ、「ゴールデン洋画劇場」のオープニング等、・・・活躍は幅広く、俳人でもある。笹公人はミュージシャンで『念力家族』の歌人。FAXでやりとりされた二年分の連句が解説対談篇とともに収められている。『連句遊戯』というタイトル通り、一生懸命遊んでいるのがよい。

本の画象

白水社(1800円+税)
2010年7月刊
福岡伸一対談集
『エッジエフェクト』

 福岡伸一『動物と無生物の間』(講談社新書)は高校生の必読書。「二つの生態系が出会う場所で生成される現象」を表す『エッジエフェクト(界面作用)』というタイトルはときめきを感じさせる。桐野夏生、柄谷行人、森村泰昌、小泉今日子、鈴木光司、梅原猛、魅力的な人たちと、エッジエフェクトを求めて話は弾む。丁寧な「あとがき」に好感が持てる。

本の画象

朝日新聞出版(1200円+税)
2010年7月刊

[e船団・週刊ブックレビュー]バックナンバー



2010年 8月23日号(e船団書評委員会)

塩谷則子の推す2冊


松本章男著
『業平ものがたり』

 細川幽斉が「源氏は虚を実に書きたり。この物語は実を虚に作りたり」と述べた『伊勢物語』125段の順序をバラして、在原業平の一代記として並べ変える。恣意的といわれてもよい、楽しく読もうという試み。少女崇拝だったとか、斎宮との一夜で子をなしたとか、ワイドショー的。京都大原野の塩釜跡や小塩山という地名を根拠に製塩していたとも。実を追求しても嘘、虚構にみえてしまうのが業平。

本の画象

平凡社(2200円+税)
2010年7月刊
美留町義雄著
『鷗外のベルリン』
交通・衛生・メディア

 1884年 〜88年森鷗外はコッホのもとで下水中の病原菌について研究。ベルリンでは56年に上水道が開通、各戸の汚水や汚物(大小便)を貯水槽に集め上澄みをポンプで農場に送る下水道システムも完成していた。しかし日本に導入できなかった。当時は公衆衛生の概念そのものがなかったからだ。衛生という観点から鴎外の挫折を描いた章が新鮮。 菌を恐れ家庭内で潔癖症が高じるしかなかった。

本の画象

水声社(3500円+税)
2010年8月刊


武馬久仁裕の推す2冊


復本一郎校注
『鬼貫句選・独ごと』

 鬼貫と言えば、「まことの外に俳諧なし」という言葉で名高いが、彼の著書『独ごと』の冒頭から、その「まこと」の一端に触れることができる。ここで鬼貫が「まこと」の例として挙げていたのは、「孝心」であった。「孝」こそが第一に人間の真情=まことであった。封建道徳の根本である忠孝の一端を担う、子にとって絶対的な「神慮」に基づく親への「孝」が、連句の調和的な付け合いを導き出すものとして語られていたのである。驚きであった。

本の画象

岩波文庫(720円+税)
2010年7月刊
黒井千次著
『高く手を振る日』

 70歳台の男女の恋愛物語である。別れの場面が興味深い。老人ホームへ行くために別れを告げに男の家に女がやって来る。そこで「茶飲み友達では絶対にない」と男女は確認し合う。では「茶飲み友達」ではない男女の関係とは何か。言うまでもなく「性愛」の関係である。茶を飲んだ後、二人は激しくキスをする。抱擁の最中携帯が鳴る。女の子供からの電話だ。「彼女は、スーツの裾を下に延ばしながら……携帯電話を取り出」すのであった。

本の画象

新潮社(1470円)
2010年3月刊



2010年 8月16日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


井川博年著
『平凡』

 20編の作品からなる詩集。最初の詩「芙美子さん、翠さん」は「今年の正月は/あまり暖かだったから/林芙美子さん、尾崎翠さんのお二人が/昔住んで居られた上落合の辺りを/ぶらぶら歩いて参りました。」と始まる。暖かいから林芙美子、尾崎翠の住んでいた辺りを訪ねる、というところが少し変だ。暖かい正月にだれもがこの2人を訪ねるとは限らないから。このちょっとした「変」がこの人の詩を発生させる。一見して平凡な日常に「変」を見つけ、その「変」を種にして「詩」を発生させた詩人は、「死ぬこともこわくない」気分になったという。詩の力というか、錯覚というか。ともあれ、読者の私もそんな気になった。

本の画象

思潮社(2000円+税)
2010年7月刊
安水稔和著
『杉山平一
―青をめざして

 この本、「杉山さんの詩をことあるごとに繰り返し読んできた。」が最初の文だ。1914年生まれの杉山の本を、私も繰り返し読んできた。詩は日常とはちがう言葉の世界を作るもの、という杉山の明晰で平易な認識にずっと示唆されてきたのだ。安水のこの本は、杉山にかかわるエッセーや講演、杉山との対談を集めたものだが、明晰で平易な杉山平一の像がかなりクリーンに出ている。「生きることに対し、またも自分は質問の手をあげる」は安水がエッセーで引用している杉山の詩の一節だが、安水もまた杉山に向かって質問の手をあげている。

本の画象

編集工房ノア(2300円+税)
2010年6月刊


桑原汽泊の推す2冊


谷川俊太郎著
『みんなの谷川俊太郎詩集』

 INCEPTION、夢で×××ってあるし・・・。ケン・ワタナベと俳優たち、スタイリッシュ。映像詩っぽい。みてみそ。
 アマノジャクで、アダムス・ファミリーで、エドっ子のぼくだし。で、「はがき」。うひょひょ。

本の画象

ハルキ文庫(680円+税)
2010年7月刊
梶原一騎原作/川崎のぼる作画
『新巨人の星』
飛雄馬VS左門豊作の執念!!

 それぞれのうちのなにかを失った。少なくはない、きっと・・・。テレビの背中の90番に、焼酎のコップをあおる飛雄馬・・・
 丸は、大洋ホエールズの左門の活躍。そして、スター、鷹ノ羽圭子の・・・

本の画象

講談社(619円+税)
2010年3月刊

[e船団・週刊ブックレビュー]バックナンバー



2010年 8月9日号(e船団書評委員会)

葉月ひさ子の推す2冊



「短歌」7月号

 3月に亡くなった追悼特集として「魂の歌人、その足跡をたどる:竹山広の残したもの」が組まれている。佐佐木幸綱氏が竹山広と「心の花」との関わりは昭和10年代からで、昭和51年8月の「心の花」に晋樹隆彦の評論掲載「原爆短歌の発見」が被爆歌人としての最初だと述べている。三枝昂之氏の「終りなき昭和」に引用されている歌は「思ひつつ切らざりし足の爪も切りぬ原爆の日のふしぎなこころ」(『眠ってよいか』)

本の画象

角川学芸出版(980円+税)
2010年6月刊
大場秀章・田賀井篤平共著
『シーボルト博物学』

 「石と植物の物語」と副題があり二人の著者が石物語と植物物語を分筆、植物のシーボルトコレクションの本格的研究は日蘭修好400年を記念して植物標本が東京大学に寄贈された2000年に始まったとのこと。いわゆる押し花のような状態で170年ぶりに里帰りした標本の図版、特にオタクサアジサイを見るだけでも驚き。シーボルト研究において植民地科学者的な膨大なコレクションが、今や江戸時代の動植物、自然理解に偉大な貢献をしているのだという。

本の画象

智書房(3600円+税)
2010年6月刊


田中俊弥の推す2冊


池内 紀著
『文学フシギ帖』
―日本の文学百年を読む

 文学作品にその作家の運命の刻印を読み取ることが批評だと、小林秀雄は言っていた。また、批評とは、畢竟、他人をだしにして「わたくし」を語ることだとも言っていた。本書は、ドイツ文学者でもある作者の読書人生の記録であり、正統な作家論・文学批評ともなっている。玄人の読み手のための、近代日本文学をナビする一冊。

本の画象

岩波新書(定価720円+税)
2010年7月刊
興膳 宏著
『漢語日暦』

 文学の素養・教養のありかたが問われている今日、和洋漢のことばに精通した夏目漱石や芥川龍之介や石川淳のことがおもいおこされる。「漢語」の力は、近代日本文学の屋台骨であり、グローバルな世界へ出て行くための通路でもある。一日一善、一日一言と同じく、一日一漢語をもって日々にわたしたちの教養力を鍛錬していきたい。

本の画象

岩波新書(定価760円+税)
2010年7月刊



2010年 8月2日号(e船団書評委員会)

朝倉晴美の推す2冊

群ようこ著
『小福歳時記』

 小福、なんて可愛く幸せなことば。でも日常ってそうですよね、ちょっとした小幸せの積み重ねじゃないかしら。
 群さんの生活は、親の病気でケチの弟を殴りそうになったり、しつこいセールス電話でけんかをしたりと、いろいろあっても小福。小福っていいわあ。

本の画象

集英社(1300円+税)
2010年6月刊
茂木 健一郎・黛 まどか著/訳
『言葉で世界を変えよう』
万葉集から現代俳句へ

 う〜む、言葉で世界を変えるのか…大仰なタイトルを捨て置けず、拝読。
 俳人まどかさんと脳科学者茂木さんとの異色コラボ。万葉の地を歩いて対談したり、言葉の力を説く。
 ただ、俳句を(例えば芭蕉や漱石の句)そんなに哲学にしなくても、と感じてしまった。

本の画象

東京書籍(1470円)
2010年7月刊


赤石 忍の推す2冊


ねじめ正一著
『荒地の恋』

 詩誌「荒地」の同人で高校時代からの友人である田村隆一と北村太郎。北村は会社員生活も定年間近、田村の妻と恋に陥り家庭を捨てる。もっとも田村も酒に溺れ女に頼る生活を本気とも言えずに送っている。この奇妙な三角関係の中で、寡作の詩人北村が詩魂を取り戻すという事実に基づいた小説。ステロタイプな解釈だが、酒、女と敗戦後の荒地に未だ身を置く田村を身近に、北村も小市民的生活を捨て、詩を取り戻すために荒地に身を投じたかったのか。そんなことを考えながら出た先回の東京句会で、私も採った特選句本村弘一さんの「炎昼により添っているもういいだろう」。炎昼は家庭、しがらみ? この感想は参加者たちの共感を得なかったけれど。

本の画象

文春文庫(定価581円+税)
2010年7月刊
佐野真一著
『宮本常一が見た世界』

 「日本地図の白地図の上に宮本君の足跡を赤インクで印していったら、日本列島は真っ赤になる」とは渋沢敬三の言葉。地球4周の16万キロ、4千日の旅。気の遠くなるような行程で宮本は一貫して社会の「影」を記録する。どんなものであろうとも、社会的行為は「光」とともに「影」を作り出す。その「光」が強ければ強いほど、その「影」は地上を広く深く覆うことになる。代表作『忘れられた日本人』には、その影を丹念に描き出す宮本の姿がある。著者の佐野自身、事件、物事の影を膨大な資料と足を使った取材のもとにした現代ノンフィクション作家の第一人者だが、安っぽい正義や現象の表層しか語らない経済、文化学者が多いなか、在るべき原点を宮本に見ているのだろう。

本の画象

ちくま文庫(本体950円+税)
2010年5月刊



2010年 7月26日号(e船団書評委員会)

三好万美の推す2冊


川上未映子著
『六つの星星』
川上未映子対談集

 哲学、文学、精神分析とその分野の第一人者との対談集。哲学好きで、物事をさまざまな角度から深く考えようとする川上未映子の姿勢は、彼女独特の長い文章や書き言葉などに表れていると思った。特に作家松浦理英子との対話は、両者の知性と感覚が互いを刺激しあっており、読んでいてとても楽しかった。

本の画象

文芸春秋(1300円+税)
2010年3月刊
水谷 修、大下大圓著
『手放してみる
ゆだねてみる』


 夜回り先生こと水谷修と、円空仏で有名な飛騨高山千光寺大下住職との往復書簡と対談集。悩み苦しむ多くの人々救おうと、長年にわたり尽力してきた二人。
 「否定するのではなく、あるがままを受け入れ認めることから始まる」等の大下住職の言葉が胸に響く。お寺がもっと社会的に目を向けた活動ができるようにネットワーク  づくりをしているという。未来が明るくなる前向きなこの取り組みを応援したい。

本の画象

日本評論社(1700円+税)
2010年3月刊


大角真代の推す2冊


都築響一著
『夜露死苦現代詩』

 現代詩は詩人だけのものじゃない。老人の独語、死刑囚の俳句、ヒップホップやPCの誤変換までが生活に息づいた詩となるのだ。とにかくジャンルが幅広く読み応えあり。
 綱
 よごすまじく首拭く
 寒の水      和之

本の画象

ちくま文庫(950円+税)
2010年4月刊
山内祐平編著
『学びの空間が大学を変える』

 大学の学習空間をどのように形作るかによって大学教育が変わっていく可能性がある。同じ学習空間でも講義の形態によって変化できる机の開発や空間を活かした学習支援の在り方など6つの面白い取組事例が掲載。刺激的。

本の画象

ボイックス株式会社(1886円+税)
2010年5月刊



2010年 7月19日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊


「現代詩手帖」編集部編
「現代詩手帖」 6月号

 短詩型新時代―詩はどこに向かうのか、という特集号。ゼロ年代世代の俳句100選、詩人、俳人、歌人による鼎談、座談会、幅広い論考が盛り込まれていて読みごたえがある。新しさがそこにあるのか、それは疑問だが、こうして包括的に詩を捉えることに意味があるなあと思った。

本の画象

思潮社(1400円)
2010年6月刊
穂村 弘著
『絶叫委員会』

 穂村弘による、日常の言葉の隙間の発見を集めた一冊。糸井重里の『言いまつがい』に通じるところもある。日常の言葉に対する感性が溢れていて、おもしろかった。俳句は別物かなとも思うが、こうした日常感覚も磨いておきたい。

本の画象

筑摩書房(1400円+税)
2010年5月刊


木村和也の推す2冊


司 修著
『蕪村へのタイムトンネル』

 大江健三郎の装丁画家として有名な著者の力作。昭和中期を時代背景にした小説だが、主題は蕪村研究というか、蕪村への恋歌である。蕪村の生い立ちや実生活が考証学的に語られてゆく。一頁ごとに蕪村の俳句がストーリーとは一見何の脈略もなく配されていて、その配合の妙も味わい深い。
 すずしさや鐘を離るゝ鐘の声  蕪村

本の画象

朝日新聞出版(定価3800円+税)
2010年6月刊
塩野七生著
『日本人へ』 
―リーダー編―

 ローマ史の著述に精魂を傾けてきた著者の新聞連載をまとめたエッセイ集。歴史への思考を重ねてきた作家の透徹した眼が、現在の日本の政治状況を的確に捉える。「日韓でも日中でも、学者たちが集まって歴史認識の共有を目指すのは、時間とカネの無駄である」。その語り口は颯爽としている。

本の画象

文春新書(定価850円+税)
2010年5月刊



2010年 7月12日号(e船団書評委員会)

武馬久仁裕の推す2冊


深海俳句会著
『霆』

 1860句からなる合同句集である。主宰・中村正幸の跋に「素直な精神が自然の真、芸術の真への扉を開いてくれる」とある。その跋を読み、山田和歌子の「理科室の骸骨笑ふ大試験」を思った。笑うはずのない骨格模型が人間の欲の象徴である大試験をせせら笑う。せせら笑うことによって、骨格模型は人間を超脱した「骸骨」となる。痛快な句である。神谷あさ江の「秋刀魚焼く片側はまだ海の色」は、生ある物への哀惜を詠んで美しい。

本の画象

文學の森(定価3800円)
2010年5月刊
中村哲・澤地久枝著
『人は愛するに足り
真心は真ずるに足る』
―アフガンとの約束―


 中村は、アフガニスタンで用水路を作り続ける医師である。その中村に澤地がインタビューをした。そこに見えてくるのは、本当に必要な所には政治の手は差し伸べられないということである。アフガニスタン復興支援しかり。中村の現地での活動は、彼の著書『医者、用水路を拓く』(石風社)に詳しい。そこで私が感動したのは、彼が集まった現地職員に向かって語った言葉の中に「死を恐れてはなりません」という言葉を発見した時である。

本の画象

岩波書店(定価1995円)
2010年2月刊


鈴木ひさしの推す2冊


近藤信義著
『音感万葉集』

 「音と声」に注目して『万葉集』を解説した新書。文字による表現として和歌が変わりつつあった時代の『万葉集』から、「音と声」を取り出す。さや、びしびし、さわさわ、さやさや、おきよおきよ、ころく、・・・等々。和歌は実際の音から離れつつあったとしても、トーンとリズムとは一体であったに違いない。

本の画象

はなわ新書(1200円+税)
2010年4月刊
石原千秋著
『漱石はどう読まれてきたか』

 「面白い読み方」も、商品にならなければ意味がない?夏目漱石作品の「面白い読み方の商品カタログ」を目指した本である。論文は商品、タイトルは商品名、もっと読まれることを意識すべきだ、ということだ。作品ごとの「梗概」、「ふつうの読み方」、個性的な論文の輪郭が紹介される。「商品カタログ」として読み、使いたい本である。

本の画象

新潮選書(1500円+税)
2010年5月刊



2010年 7月 5日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


佐々木幹郎著
『旅に溺れる』

 この詩人の旅に関わるエッセーはいつも楽しい。この本も書名どおりに旅のエッセーが中心。たとえば「女性がしきる赤岡、絵金の町」。高知県赤岡の絵金歌舞伎を話題にしているのだが、上の前歯2本に絵と金の金文字を彫った「横矢のおばば」が紹介されている。赤岡のアイドルのこの人、だれもが思いつかない突拍子もないことをする。そういうおばばに著者は溺れる。おばばは著者に言う。「まっこと、オナゴに負けよったらいかんぜよ。ええめに会いない(会いなさい)」。

本の画象

岩波書店(2000円+税)
2010年5月刊
大井浩一著
『六〇年安保』
メディアにあらわれたイメージ闘争

 イメージ闘争が前景化した最初のケースとして60年安保を検証している。その闘争はやがて小泉首相の政治の劇場化現象につながると説くが、この論理には説得力がある。俳句のような短い文芸では、時代のイメージと言葉が密接にからまる。そのからまりを避けると俳句の言葉が空虚化する。つまり芭蕉のいう不易流行の流行にあたるのが時代のイメージ。著者は1962年生まれの毎日新聞社学芸部編集委員。

本の画象

勁草書房(3200円+税)
2010年5月刊


塩谷則子の推す2冊


金子兜太・佐々木幸綱著/黒田杏子編
『語る 俳句 短歌

 対談時、90歳の兜太と70歳の幸綱に共通するのはさわやかさ。蒸し暑さを緩和してくれる。結社誌「心の花」掲載を年功序列からあいうえお順にした幸綱。大切な人の名前を200名ぐらい!心に唱える立禅を毎日欠かさない兜太。自由闊達に生きると風通しがよくなるようだ。

呼吸とはこんなに蜩を吸うことです 兜太

本の画象

藤原書店(2400円+税)
2010年6月刊
船曳由美著
『100年前の女の子』

 小学生高学年から中学生むきに書かれた児童書。  百歳になる筆者の母の少女時代を描くことによって足利市近くの村の行事を丁寧に描く。養女に出されたことのある母が実母を恋う物語でもある。行事のあれこれが懐かしい。また、失われたものに気づかされる。例えば、まず食べ物を、と物乞いの親子におにぎりを作ってあげるおばあさんの気持ち。

本の画象

講談社(1600円+税)
2010年6月刊

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