俳句 e船団 ブックレビュー
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2011年6月27日号(e船団書評委員会)

桑原汽泊の推す2冊


杉田久信著
『奇跡の百人一首』
音読・暗唱で脳力がグングン伸びる

 こぐちのむらさき
 大きな字(奇跡は愛用した)
 めくると・・・

  憂しとみし世ぞ今は恋しき 清輔

本の画象

祥伝社黄金文庫(619円+税)
2010年12月刊
手塚治虫著
『火の鳥』 望郷編

 ハインラインの『夏への扉』。アシモフの『ファウンデーションと地球』。星新一は・・・
 「恐竜同様、地球人類も早晩滅亡するだろう」。最新型のロケットのように、いろいろな話が飛びだした。エデン17という星をおもいだしていた。

本の画象

あさひコミックス(571円+税)
2011年5月刊


舩井春奈の推す2冊


「週刊俳句」編
『虚子に学ぶ俳句365日』

 日めくりの中には、ペラペラペラと先々までめくりたくなるものがある。その衝動性を利用したかのように、一日一虚子句の日めくりを、堂々と読めるかのようなこの一冊。玉石混交と評される虚子の俳句を通し、俳句作方から虚子その人と作品まで、肩の力を抜いて読める。加えてコッソリと思うのは、どこかのお宅のお手洗いに置かれそうな予感。

本の画象

草思社(1500円+税)
2011年6月刊
梅津有希子著
『吾輩は看板猫である』

 店番、店内の見回り、ご用聞き…。接客に営業部長に、実は看板猫達は働き者?!ドッシリ座って抱く夢は、やがて手に入れたい社長の座か。
 キリッと威厳を持って応対をする猫も、休憩に入ってムニャムニャうたた寝。だってほら、そこは自由気儘な猫なのだから。
 昭和レトロな店頭で、ビシッとまったりと働く猫たち。

本の画象

文藝春秋(1000円・税込)
2011年3月刊



2011年6月20日号(e船団書評委員会)

田中俊弥の推す2冊


川合康三著
『中国の恋のうた』
『詩経』から李商隠まで

 中国の古典文学は士大夫の文学である。吉川幸次郎の『中国の知恵』で、このことを学んだとき、とても新鮮であったのをおぼえている。では、日本の古典文学の基本形とは何なのか。古今集は、春夏秋冬の季節の歌と恋の歌が大半を占める。中国古典文学の恋のうたには系譜とスタイルがあって、進化してきたのであった。

本の画象

岩波書店(2200円+税)
2011年5月刊
開 一夫著
『赤ちゃんの不思議』

 「赤ちゃん学」は、新しい学問である。その研究はまさに日進月歩で、世界の気鋭の研究者が創意工夫のもとに新たな知見を提出している。本書は、その研究の現場と最新の画期的な知見について、ていねいに教えてくれる。だれもが、みんな「赤ちゃん」だった。この普遍の真実は何を開示するのか。さらに探求してみたい。

本の画象

岩波新書(720円+税)
2011年5月刊


葉月ひさ子の推す2冊


新川和江著
『名づけられた葉なのだから

 読者の年齢層が広い日本童謡賞も受賞している詩人。一見、子供の位置から発信する詩人でありながら、実は知恵の魔法がかけられている。だから、ぐらぐらの僕の前歯が抜けたことや、モンゴルの子ども歌を歌ったりされれば心弾む。「名づけられた葉」の一編には「だからわたし考えなければならない。誰のまねでもない葉脈の走らせ方を、刻みのいれ方を」と。

本の画象

大日本図書(1200円+税)
2011年3月刊
新藤兼人著
『遺言シナリオ集』

 白寿の著者の「遺言」とは?と手にとって、一気に読み通した「霧の中」の凄みと生のエネルギーに圧倒される。主人公のモデル伊左衛門は著者の曽祖父、時代は明治維新前後の広島で一族の伝説的存在の方らしい。ほかの5編も題材はいずれも身近な人たち、「ロングタイムさいなら」でも著者が見え隠れ、あの世この世の出入り自由、父母姉兄を一堂に集め語り尽して飽きない。

本の画象

岩波書店(2500円+税)
2011年3月刊



2011年6月13日号(e船団書評委員会)

朝倉晴美の推す2冊


宇多喜代子句集
『記憶』

 全女性俳人の大先輩、宇多喜代子氏。その、パワフルでさっぱりとしたご気性の御方には、こんなふくよかな、馥郁とした句の数々があるのだ、と再認識。お若いころの〈冬の月はちみつ色に漂へり〉も好きであるけれど、本書所収の〈あなたはおかあさん正真の雪正真の白〉もたまりません!

本の画象

角川学芸出版(1500円+税)
2011年5月刊
酒井順子著
『紫式部の欲望』

 瀬戸内寂聴氏も「紫式部の欲望は酒井順子とあなたの欲望すべてです。」と、サカジュン独自の鋭い論評に賛を贈る。決して、ライトエッセイではない。新しい角度からの源氏物語論。平安も現在も、女の欲望こそがこの世を面白くしているのだ。ああ、女って。

本の画象

集英社(1300円+税)
2011年4月刊


赤石 忍の推す2冊


末廷芳晴著
『正岡子規、従軍す』

 子規はなぜ病魔に犯されていることを知りながら、日清戦争に記者として従軍を希望したのか。また子規はなぜ「敵を切り払え」とまで愛国的な従軍詩を残したのか。著者は子規の道程の中でもあまりスポットの当たらない部分を切り取り、大いなる矛盾を抱えた近代文学者の祖として再検討する必要性を唱えている。国家、戦争を鼓舞するもののふとしては死ねず、病状六尺の澄明な眼差しで国家、戦争を見つめ直そうとし、その断片のみを残していった子規。神棚に祭らず二十世紀文学として、子規文学の可能性と限界がどこにあるのか、問われるべきと著者。もっと単純な構図で読み解いてもいいのではないかと思いながらも、考えさせる一冊ではあった。

本の画象

平凡社(本体2600円+税)
2011年5月刊
小谷野 敦著
『久米正雄伝―微苦笑の人』

 確かに久米正雄という名前は有名ではあるが、その作品を読んだ人はそれほど多くはないに違いない。常に芥川や菊池寛等の周辺の脇役としてのみ登場するが、文壇の重鎮として文学史には刻まれているという人。俳人として現れ、夏目門下に入り、数多くの通俗小説を書き、文学報告会事務局長として戦争を鼓舞し、最後は鎌倉文庫社長として亡くなる。著者は、類まれな文章力を持っているが勉強と努力という言葉と無縁で、久米のあまりに下らぬ作品群を完読するのみは辟易したと記すが、一代の人物として魅力がない訳でもない。微苦笑というのは久米の造語だが、本人が多分、自分の人生の意味を問われた時、微苦笑を浮かべる以外にないというのがタイトルの意味なのだろう。

本の画象

中央公論新社(本体2900円+税)
2011年5月刊



2011年6月6日号(e船団書評委員会)

木村和也の推す2冊


金子兜太著
『悩むことはない』

 腹が据わっているというのか、91歳になった兜太の単純明快なリアリズムぶりが爽快な語りエッセイ。肉声に近い言葉が並んでいる。戦中の最前線であったトラック島での句会の様子は圧巻。
 よく眠る夢の枯野が青むまで  兜太

本の画象

文藝春秋(952円+税)
2011年4月刊
西部 邁・佐高 信著
『難局の思想』

 政治思想的には左派と右派を代表すると見られる両者の対話集。田中角栄から毛沢東、親鸞、マイケル・サンデルその他までを俎上にのせて論じ合う。互いの人物評はつかず離れず曲折しながら、世相や時代思想、文化の襞を巧みに分け入ってゆく。

本の画象

角川書店(724円+税)
2011年5月刊


三好万美の推す2冊


ロバート・キャンベル編
『Jブンガク』

 清少納言、平家物語から山田詠美まで、あらゆる時代の日本語、日本文学を外国語の視点から楽しく追及している。「慌てて驚くJブンガク」「楽しみ数えるJブンガク」など、テーマ設定が独特で面白い。ここに挙げられている小説をいくつか読んでみたくなった。

本の画象

東京大学出版会(1800円+税)
2010年3月刊
井上ひさし著
『日本語教室』

 著者の母校上智大学で行われた連続講演の講演録。いくつもの時代を経て言葉や文法が変化することを受け入れたうえで、外来語やラテン文字の言葉の氾濫には毅然と警告する。少数民族の言語の消失に対して精神的な危惧感を訴える。そんな著者の一貫した姿勢に深く共感する。

本の画象

新潮新書(680円+税)
2011年3月刊



2011年5月30日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの推す2冊


板坂耀子著
『江戸の紀行文』

 江戸時代は、それまでと異なり、旅が娯楽でもあった。紀行は娯楽の記録であり面白いものであった。江戸時代の紀行の「面白さ」を伝えようとした本である。著者の面白さの基準は「豊かな情報」「前向きな旅人像」「正確で明快な表現」。この基準によると、『おくのほそ道』は代表作ではない。この時代には、近代の紀行文学につながる他の多くの作品があったのだ。

本の画象

中公新書(880円+税)
2011年1月刊
マイケル・サンデル著/小林正弥訳
『サンデル教授の対話術』

 サンデル教授が注目されるのは、政治哲学そのものより対話中心の講義法である。サンダース・シアターを舞台に講義を進める姿はスーツを着たソクラテスだ。圧倒的な存在感を支えるのは学識と周到な準備、大きな身振りと知的反射神経か。サンデルの講義法を取り入れようという人達が日本でも多いという。間違っても、人差し指で人を指してはいけない。

本の画象

NHK出版(1200円+税)
2011年3月刊


若林武史の推す2冊


藤村忠寿著
『けもの道』

 北海道テレビの伝説の番組「水曜日どうでしょう」をご存知でしょうか? その番組のチーフディレクターの藤村Dが書いたエッセイがこの本です。おそらく一般受けはしないでしょうが、この番組の視聴者であれば、藤村Dの息遣いを感じつつ、「ほぅ、そうですなぁ」という気分で御一読下さい。意外と深いです(おそらく狙ってますが)。

本の画象

メディアファクトリー(1100円+税)
2011年4月刊
長谷部誠著
『心を整える。』

 日本サッカー代表チームのキャプテンを務める長谷部選手の書いた、いわゆる自己啓発本の一つ。多くのメディアで取り上げられ、売れている。特筆すべき点がないのに日本代表のキャプテンになれたという彼の生き方がよく伝わってくる。古風なところのあるしっかりした若者の言葉が綴られている。また、あえて挑発的な言い方をすれば、読者の老人度が計れる一冊。少し気恥ずかしいところもある、その文章にどう対峙できるかという自己観察もまた楽しい。

本の画象

幻冬社(1300円+税)
2011年3月刊



2011年5月23日号(e船団書評委員会)

塩谷則子の推す2冊


深見けん二著
『選は創作なり』
高浜虚子を読み解く

 有名な「去年今年貫く棒の如きもの」は初め「去年今年貫けるもの棒のごと」であった。同様に「爛々と昼の星見え菌生え」は「昼の星見えしよりこの茸生え」だった。残された句帳からわかった。客観描写から主観によって飛躍する推敲過程に作句の秘密がある、という指摘やブラジルに渡航し誌友千人の「木陰」を創刊した佐藤念腹のことなど、細部も面白い。4月〜6月NHKラジオ第2放送テキスト。

本の画象

NHK出版(950円・税込)
2011年4月刊
橋口幸子著
『珈琲とエクレアと詩人』
スケッチ・北村太郎

 「さっき白いネギを一本/薄皮を剥いで丁寧に洗った/そのあまりの白さに/だれもいないうしろを振り返って/アアとことばを発した」(北村太郎) 自然体で生きているようにみえて、「あまりの白さ」で生きていた詩人。1992年秋に亡くなった。借家のお隣さん。友人。「北村さんを思うと今でも、胸がいっぱいになるのはなぜだろう。」と筆者。人を傷つけないように生きている人はたまにいる。

本の画象

港の人(1200円+税)
2011年4月刊


武馬久仁裕の推す2冊


久保るみ子句集
『さふらんさふらん』

 集中、最も好きな句〈片耳の希臘の壺の重きかな〉を読んでみよう。「希臘の壺」を、「片耳」故に一つの耳だけに手を掛けて持とうとしたため、形姿に似合わぬ意外な重さを感じたのである。作者はその重さに、遠く古代希臘の時代から幾人もの人の手を経て存在し続けて来た壺の持つ命の重さをかさねたに違いない。「片耳」という表現は、壺に身体性を与え、壺の来歴を思わせる。「深い深いイメージの集積が存在する」(あとがき)一句である。

本の画象

文學の森(2800円・税込)
2011年5月刊
上杉 隆著
『ウィキリークス以後の日本』
自由報道協会(仮)とメディア革命

 この本で、著者がまず言いたかったのは、政府からの情報を独占する大手メディアによる「記者クラブ制度」という悪弊のことなのであった。記者クラブを形成する会員社以外の記者は記者会見から排除される仕組みである。これを読み、民主党政権になってから、大手メディアの政府嫌いが度を越している場合があるように感じていたので、なるほどと思った。民主党政権は、記者会見のあらゆる記者へのオープン化を進めていたのである。

本の画象

光文社新書(740円+税)
2010年3月刊



2011年5月16日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


ねじめ正一著
『母と息子の老いじたく』

 このエッセー集は面白い。私は一晩で一気に読んだ。というより気づいたら読み終えていた。母親のこと、句会のこと、ジュリーや金魚のことなど、話題は作者の身辺のことがらだが、すべての話が「言葉」に関わっていると言ってよい。とりわけ、長生きした母を話題にするとき、著者の言葉は生き生きとしている。何が生じるか分からないという状態で母と向き合っており、そういう状態の中で言葉が噴き出している感じだ。ちなみに、著者は船団の会の新しい会員である。

本の画象

中央公論新社(1500円+税)
2011年4月刊
岩切友里子監修
没後150年『歌川国芳展』

 大阪市立美術館で開催中(6月5日まで)の展覧会の図録。国芳の絵は発想がとても俳句的である。取り合わせがふんだんに使われており、その取り合わせがユーモアを生み出している。俳句も浮世絵も江戸時代という時代の表現だから似ていることに不思議はないが、その大胆な取り合わせを見ていると、破格が取り合わせの真骨頂だと痛感する。この展覧会、7月からは静岡市美術館、12月からは東京の森アーツセンターギャラリーで行われる。

本の画象

会場で販売(2500円)
2011年2月刊


桑原汽泊の推す2冊


川崎 洋著
『教科書の詩をよみかえす』

 「うち 知ってんねん」
 ばれてた
 おしりをよくふいて
 2度ねする だけど
 なごやはしろでもつ
 ZZZzzz(エビフライ)・・・

本の画象

ちくま文庫(580円+税)
2011年3月刊
里中満智子著
マンガ
『旧約聖書』1―創世記―

 地元の本屋さんへ。「なんじまでやってるの?」。ぼくには10円ハゲがある。満智子先生にもあるのかな。天の使いがやったきた。
 ペヤングソースやきそば
 まだ、創世記。さきは、ながそうです。

本の画象

中央公論新社(1500円+税)
2011年4月刊



2011年5月9日号(e船団書評委員会)

田中俊弥の推す2冊


川柳 家・東正秀/漫画家・田中圭一
『セクシィ川柳』

 川柳の名称は、前句付の点者である柄井川柳(1718-1790)による。『誹風柳多留』は、柄井川柳の側近・呉陵軒可有が編んだ。江戸の世は、爛熟した。『誹風末摘花』『柳の葉末』『雪の花』など、猥褻な「破礼句(ばれく)」満載の句集もあったとか。江戸の「うがち」(筆者は「みつけ」とする)を学ぶも、またこれを楽しむもよし。

本の画象

メディアファクトリー(740円+税)
2011年4月刊
日本酒サービス研究会・
酒匠研究会連合会監修

初歩からわかる
『日本酒入門』

 山形生まれの国分一太郎の教育実践と国語教育論を研究して、はや30年近く。このところ山形の水(日本酒)を深く愛好している。酒は、水と米の世界に冠たる菌食日本の伝統文化。天の時・地の利・人の和を得て、ゆたかな水は育まれる。そして、知識は生活のなかで確かな教養となる。今宵もゆるりとニッポンの水に親しむべし。

本の画象

主婦の友社(1500円+税)
2011年1月刊


葉月ひさ子の推す2冊


馬場あき子著
馬場あき子と読む
鴨長明『無名抄』

 『無名抄』は中世の歌論、俊成・定家に比べると傍流の感があるという鴨長明の歌論を、現代に引き付けて読み解くという試み。第一線の女性歌人達、花山多佳子ほか8名の多士済々組が座談会形式であき子先生を囲むが、先生の論陣のみが抜きん出て鮮やかで明快。歌論プラス説話集的な長明の語り口から、当時の歌会の肉声や体温、果ては愚痴まで伝わるというが確かに。

本の画象

短歌研究社(3000円+税)
2011年1月刊
井上ひさし著
創作の原点
『ふかいことをおもしろく』

 こまつ座井上芝居の新作は相当楽しんだ。脚本が間に合わず、遅筆のリアルタイムも観劇の一環だった。遅筆の理由は「深いことを面白く」納得行くまで推敲するという堂々ぶり。最終章「デジタルの時代に」に、「手が記憶する、記憶した手で新しいことを作っていく」と一生のエキスのような見出しがある本文には「本とは、人類がたどり着いた最高の装置のひとつ」と記される。

本の画象

PHP研究所(1100円+税)
2011年4月刊



2011年5月2日号(e船団書評委員会)

朝倉晴美の推す2冊


伊藤氏貴著
エチ先生と「銀の匙」の子どもたち
『奇跡の教室』

 「すぐ役立つことは、すぐに役立たなくなります。」
 灘校伝説の、スロウリーディング授業『銀の匙』。エチ先生の真髄。国語が勉学の基本だと言われながら、この国の国語教育は貧しい。私はやっぱり、足で歩く遠足のような授業をしたいし、子どもたちの可能性がいとおしい。

本の画象

小学館(1300円+税)
2010年11月刊
佐々木正美著
 『子どもへのまざなし』

 児童精神科医佐々木正美先生、まなざしシリーズ最終の三巻目。
 掲書は、高機能自閉症、アスペルガー症候群について、多くのページを割く。真のノーマライゼーションとは、当事者が自身の性質を認め、周囲が彼らを独立と自律へと導くことだ、と。共生とはこういうことなのだ。

本の画象

福音館書店(1700円+税)
2011年1月刊


赤石 忍の推す2冊


関川夏央著
『子規、最後の八年』

 明治二十八年から三十五年まで、つまり子規の発病から死去に至る八年間にスポットを当て、子規と子規を取り巻く人物たちのその一年一年の動向を時系列的に記したもの。作品論ではなく重箱の隅的にもならず、適度な物語性を加えて書かれているので、その時代を俯瞰するには楽しく読める一冊。ちなみに虚子と碧梧桐、その決別の端緒を虚子の結婚とし、子規の後継問題、「ホトトギス」の刊行・経営と、不満、違和感の時代的な重積が俳句表現の決別までに至らせたように匂わせているが、あながちそういうことかも知れないと思わせてしまうが本当はどうだろう。子規存命中、かろうじて繋がっていた取り巻き連の関係が破裂する、その萌芽が「最後の八年」にあったのだろうか。

本の画象

講談社(本体2300円+税)
2011年3月刊
田澤拓也著
『太宰治の作り方』

 今なお絶大な人気を誇る太宰治。読者に「太宰は自分にしか分らない」という思いにさせるところに、その秘密があると著者。私小説というと概ね、著者の思想と来歴に根ざしていることが多いが、太宰の私は「わたし」をすら虚構に包み込み、その虚構の中のかすかな人生の真実に読者の共感を得ようとする巧みな技。簡単に言えば「共感できるウソを吐き通す」ということか。自分史すら虚構の表現をせざるを得ない同様の人物に、同郷の後輩寺山修司がいるが、ネガティブな太宰に比べ、寺山には「世界が虚構なのに私が虚構で何が悪い」という攻撃的な居直りがある。著者も青森出身だが、辺境津軽には虚構に生きる人々を輩出する風土性があるのだろうか。

本の画象

角川選書(1800円+税)
2011年3月刊



2011年4月25日号(e船団書評委員会)

三好万美の推す2冊


立川昭二著
『気の日本人』

 熟語に慣用句に、日ごろほとんど無意識のうちに、日本人はなんと多くの「気」の字を使っているか。「気=心(精神)、気=息(身体)であることを、小説や短歌、エッセイなど幅広く引用しながら紹介している。最初と最後の引用がともに蕪村の俳句というのが印象的。
 牡丹切て気のおとろひし夕かな 蕪村
本の画象

集英社(1300円+税)
2010年11月刊
野口聡一著
『Wonderfu1 Planet!
ワンダフル・プラネット

 約半年にわたる宇宙生活の間に、宇宙飛行士野口氏は、ツイッターを介してリアルタイムで地球の映像を公開していた。本書はその総集編。世界中の人々から同じくツィターで送られてくるコメントが、著者にとってとても楽しみだったそうだ。うすいブルーの地球に沈んでいく月が殊の外美しい。

本の画象

集英社インターナショナル(952円+税)
2010年11月刊




2011年4月18日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊


百句他解シリーズ1
『金子兜太×池田澄子』
兜太百句を読む。

 益々盛んになったといってよい金子兜太氏と、池田澄子さんの対談的百句鑑賞の一冊である。もう細かいことはいいから、楽しんでください。老いることに一種の喜びを感じさせるような、お二人のやりとりが眩しく感じられた。

本の画象

ふらんす堂(2000円+税)
2011年4月刊
本田由紀著
『若者の気分』
学校の「空気」

 IT化が進む環境下で、学校の友達空間が恐ろしく閉鎖的になっている。そのこととその影響下にある諸事象を統計的に捉えようという一冊。友達は、共同体は、社会はどうなるんだろう、この先…と思わずにはおれないが、一体どうしたらいいんだ、この流れは?

本の画象

岩波書店(1500円+税)
2011年2月刊


木村和也の推す2冊


神奈川大学広報委員会編
『17音の青春2011』
575で綴る高校生のメッセージ

 毎年このシリーズを楽しみにしているのだが、年々気になりだしていることがある。だんだん予定調和的というか、新鮮味が乏しくなっているようなのだ。有り体に言えば、古くなっているのだ。それでもまだ、「心臓の音まっすぐに薔薇咲けり山下舞子」のような青春句に出会うことができる。

本の画象

NHK出版(700円+税)
2011年3月刊
島田裕巳著
『人はひとりで死ぬ』
「無縁社会」を生きるために

 孤独死に象徴される「無縁社会」は、われわれの生き方や社会の在り方が必然的に招来したものである、と著者は言う。無縁を懼れず、むしろ無縁を究極の自由と思いなして、無縁を生きる覚悟を説く。宗教学的、社会学的アプローチが交錯して読み応えがある。

本の画象

NHK出版新書(740円+税)
2011年1月刊



2011年4月11日号(e船団書評委員会)

武馬久仁裕の推す2冊


東 隆美句集
『キラリと』

 読み解く楽しみが一杯の句集だ。例えば、「十二月空のきれいな水曜日」。なぜ水曜日か。それは「水曜日」の「水」が、きれいな透き通った一年の終りの十二月の空をより鮮やかにイメージさせるからだ。一月戻って、「階段を十一月の影が行く」。一年の終りが近づく十一月、長くなった影が、一段一段極月を目指して上って行くところが面白い。十一月の「十一」の字は、まるで階段に映じた影のようだ。全編、さりげない抒情がまた好もしい。

本の画象

創風社出版(1200円+税)
2011年3月刊
佐藤 優著
『日米開戦の真実』
大川周明著
『米英東亜侵略史』を読み解く


 「大東亜戦争」の正当性を歴史的、合理的に説いた大川の『米英東亜侵略史』(1942年1月)全文を本書によって読む機会を得た。私は、「(インド農民は)家には明りがなく、日暮れて月なき夜には、彼らは悄然として闇黒の裡に据っている」に到り、図らずも、蛇笏が1940年朝鮮農村を訪ねた時の文「山姥のような老媼が何か襤褸らしいものを膝にのせてしごとをしながらじっとこちらを見たときぞっと悪寒が頸筋を走るのを感じた」を思い出した。

本の画象

小学館文庫(750円・税込)
2011年2月刊


鈴木ひさしの推す2冊


正 徹著/小川剛生訳注
『正徹物語』現代語訳付き

 「この道にて定家をなみせん輩は、冥加もあるべからず、罰をかうむるべき事なり。」排他的なまでに、正徹が定家に心酔し、崇拝する理由は何か。正徹から見た定家そのものの魅力もさることながら、言葉や文字に対するとらえ方の時代性の反映でもある。「言葉の力」のとらえ方が現代とは異なるのだ。むしろ定家を読みたくなる本である。

本の画象

角川ソフィア文庫(1143円+税)
2011年2月刊
原 武史著
『「鉄学」概論』
車窓から眺める日本近現代史

 「トリテツ」「ノリテツ」「鉄女」、・・きっとそういう本かと思い、少し遠巻きに見ていたが、副題が「車窓から眺める日本近現代史」。開いてみると面白い。ある時は車窓から、ある時は途中下車しながら、時代と社会が語られる。140年の鉄道の歴史と共に、有名無名を問わず人々の喜怒哀楽、愛別離苦、様々な人生がある。

本の画象

新潮文庫(438円+税)
2011年1月刊



2011年4月4日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


井上隆雄著
『光りのくにへ』
親鸞上人の足跡を訪ねて

 写真集。サブタイトルのように親鸞ゆかりの地をめぐった写真が集められているのだが、道や畑のさりげない光りはあたかも〈光りの詩〉だ。その光り、井上のレンズにおのずと入った感じ。眺めていると胸がすく。井上は1940年生まれ。京都を中心に活躍する写真家である。

本の画象

淡交社(2300円+税)
2011年3月刊
井波律子著
『中国侠客列伝』

 つい先日、〈梅三分侠気も三分ある日和〉と詠んで句会に出したら、草食系男子の侠気だと評された。その直後にこの本をもらった。歴史上の人物、物語世界の人物の2部に分けて、春秋時代以降の中国における侠の諸相を描いている。「躍動的な侠の精神とパトスには、世界を変える可能性がある」とはあとがきの井波の言葉。三分の侠気では世界は変わらない?

本の画象

講談社(1900円+税)
2011年3月刊


塩谷則子の推す2冊


与謝蕪村/玉城 司訳注
『蕪村句集』現代語訳付き

 晩年の手紙によると蕪村は「表面的な意味とその裏に隠された故事を読みとり、二重に句が読解されることを願っている」(解説)。そこで、表面的な意味は現代語訳で、隠された故事は語釈・解説・参考欄を読めばわかるように構成されている。約2850句の発句中1000句を収録。持ち歩いて、句だけ通読しても参考欄まで熟読・精読してもよい。便利。

本の画象

角川ソフィア文庫(1238円+税)
2011年2月刊
藤田真一著
『蕪村余響』
そののちいまだ年くれず

 「時の詩人」蕪村にも目をむけるべきという意見がおもしろい。助動詞「む・し」の使い方の妙を論じた次の章は「季重なりのすすめ」。万葉・古今集以来の季節のめぐりを美とする美意識の体得に季重なりは有用という意見。もちろん蕪村は季重なりの句を作った。〈みの虫の古巣に添ふて梅二輪〉。秋成や暁台・几董など人々と共にいる文人蕪村を描く。

本の画象

岩波書店(3800円+税)
2011年2月刊



2011年3月28日号(e船団書評委員会)

葉月ひさ子の推す2冊


戸田佳子著
『鑑賞
佐藤佐太郎の花の歌』


 作品鑑賞のひとつの方法として「花の歌」を調べていくうちに、ひとつの結論が見えて来た、とあとがき。その結論とは「花」なのに華やかな印象ではない「歌風」のことかもかもしれない。「蛇崩のみちの桜は家いでてゆく日々緑暗くなりたり」は「さくら」の歌56首中の1首。身近な「花」を詠むことが多く、採りあげられた44種類中、外来種は「ゼラニューム」のみ。

本の画象

角川書店(2857円+税)
2010年11月刊
田 原(Tian Yuan)著
『谷川俊太郎論』

 現在の中国で谷川俊太郎ブームがあると聞けば隣国に親しみがわいて来る。訳詩した立役者が著者田原、1991年に来日、2003年に立命館大学にて『谷川俊太郎論』で文学博士号を取得した留学生であった。2冊目の訳詩集に寄せた谷川の「自序」は、詩人でもある著者への信頼感が溢れ「中国料理と日本料理に例えて、詩は理解するものというよりは味わうものだ」と結ぶ。

本の画象

岩波書店(2400円+税)
2010年12月刊


桑原汽泊の推す2冊


アビゲール・フリードマン著/中野利子訳
『私の俳句修行』

 北朝鮮問題のレポートを本省へ電送した。
 新幹線で三島へ。右、左、もしかしたら、ZENのカルト。引き返そうか、そんな気持ちもいだきつつ、沼津へ。「つぎはゴヨウテイです」。

 修善寺でしっぽりしよ。

本の画象

岩波書店(2200円+税)
2010年11月刊
レオ・レオーニ著/宮本淳訳
『平行植物』

 「・・・現実を理解するためには、われわれの観察も視点を変えなければならないし、探求方法や知覚の手段さえも新しく作り出さざるを・・・」(レモ・ガバッツィ)。美しすぎる新体操の・・・
 〈森の角砂糖バサミ〉。
 「タケオー島は、太平洋の南緯19・・・

本の画象

工作舎(2200円+税)
2011年1月刊(新装版)



2011年3月21日号(e船団書評委員会)

赤石 忍の推す2冊


川村蘭太著
『しづ子』
娼婦と呼ばれた俳人を追って

 多義性を持たない文芸に出会った時、読者はそれが真実に根差しているのか虚構なのか、作者その人自身に興味を抱くのは致し方ないことだと思う。私も娼婦俳人という言葉に釣られて思わず一読したが、その俳句には様々な意味で呻ったものの、著者のようには、鈴木しづ子という俳人の来歴に興味を覚えなかった。著者が本書を通して何を語りたかったのかはよく理解できなかったが、未発表句約7300句に辿りついたのは大きな功績である。児童作家矢崎節夫氏が金子みすずを世に出したように、鈴木しづ子が娼婦俳人という言葉の呪縛から逃れて、俳句史にどのような位置を占めるのか、二冊の句集と未発表句を研究する今後の人々の腕に託されている。

本の画象

新潮社(2000円+税)
2011年3月刊
山形明郷著
『卑弥呼の正体』
虚構の楼閣に立つ「邪馬台」国

 この数年韓国に取りつかれ、仲間と安いチケットで年に数回訪れている。ソウルはもとより新羅の古都慶州、百済の古都扶余などの地を踏み、白馬江を見て「ここが白村江か」等と(歴史的には違うらしいが)一人勝手に感慨にふけっているが、本書の骨子、高句麗・百済・新羅は中国の遼東半島以北にあり、「韓半島に無かった」等と書かれると、私の感慨は何だったのかと思ってしまう。そうなると邪馬台国は日本には無かったことにもなり、卑弥呼は誰かなどもどうでもいいことになる。古代中国の文献を注意深く読むとそういう結論になるそうだが反論も多そうだ。私の韓国熱をからかう知人が無理に貸し与えたものだが、マッコリと焼貝に取りつかれた私は負けるつもりはない。

本の画象

三五館(1540円+税)
2010年6月刊


田中俊弥の推す2冊


柏倉ただを句集
『出羽山河』

 大震災に肝苦しさを覚えずにはいられない。多くのふるさとが失われてしまった。柏倉ただをは、出羽・大石田、金子兜太主宰「海程」の俳人。ふるさとの山河・最上川を畏敬し、句作を重ねてきた。〈乾坤の秋住まはせて最上川〉、〈最上川剛と山々目覚めさす〉。生きることは、この山河に住まいし句作することから始まる。

本の画象

角川書店(2800円・税込)
2011年2月刊
高 護著
『歌謡曲』
―時代を彩った歌たち

 歴史は、固有名詞である。この本のテーマは、昭和戦後期の歌謡曲の歴史を人とその音楽性から記述することにある。これほど、固有名詞の出てくる本を読んだのは、はじめて。1960年生まれのわたしの人生は、この本のなかの「歌たち」とともにあった。自分の歴史を固有名詞として記述してみたくなった刺戟的で貴重な一冊。

本の画象

岩波新書(800円+税)
2011年2月刊



2011年3月14日号(e船団書評委員会)

朝倉晴美の推す2冊

吉野 弘著
『詩の楽しみ』

 1982年初版のリクエスト改版。名著揃いの岩波ジュニア新書。吉野弘さんが、高校生の投稿詩を10年間選評した経験からの一書。「詩」の言葉というものは、何年何十年絶っても、全く古びない。この書もまた然り。30年経っても、「詩」の楽しさを教えてくれる吉野さんの言葉も、新鮮なままだ。
 生徒と読みたい新書。

本の画象

岩波ジュニア新書(840円+税)
2011年2月改版
辻村深月著
『本日は大安なり』

 結婚式場で、4組のカップルが織り成す結婚模様。グランドホテル形式の小気味良いテンポで進み、一気読みさせられた。それぞれの思惑、それぞれの人生模様が、1980年生の若い著者とは思えない力量で描かれ、パワーも感じる。ああ、楽しい小説を読んだなあ、とお腹いっぱい。

本の画象

角川書店(1600円+税)
2011年2月刊


大角真代の推す2冊


穂村 弘著
『短歌の友人』

 短歌の解説がわかりやすくて面白い。すとんとお腹に入るかんじ。第6章の「短歌と私」が一番読み応えがあり、作者の体験を追体験できるようで、なんだか頑張れって励まされました。作者が私の友人になってくれたみたいだ。文庫化されてよかった。

本の画象

河出文庫(690円+税)
2011年2月刊
東大折紙サークル「Orist」著
『トイレットペーパーおりがみ』

 トイレットペーパーで折紙しようという人がこの世にはいるんです。私も人並み以上にいたずら心があるので、人の家でやったら、みんなが驚くかも、とおもったけど意外に地味で、なおかつ覚えるのが難しい。トイレに籠った時にうんうん言いながら折るのがあってそう。

本の画象

講談社(952円+税)
2011年2月刊



2011年3月7日号(e船団書評委員会)

木村和也の推す2冊


笹井宏之歌集
『てんとろり』

 一昨年26歳で夭折した歌人の死後にまとめられた第二歌集。「生涯をかけて砂場の砂になる練習をしている子どもたち」「悲しみに似た関取があらわれてひたすら塩を舐めている夜」など、新しいリズムと新しい詩情を獲得している。塚本邦雄に続く才能だったかもしれない。

本の画象

書肆侃侃房(1300円+税)
2011年1月刊
羽生善治著
『大局観』
―自分と闘って負けない心

 七大タイトルを独占した将棋界第一人者のエッセイ。一にらみ二千手といわれるがむしゃらな読みは若手が上。しかし大局観はむしろ年齢を重ねることで強くなるという。四十歳になって、いよいよ発揮される「泥臭く頑張る」精神がスマートに語られている。

本の画象

角川書店(724円+税)
2011年2月刊


三好万美の推す2冊


金子兜太著
『人間 金子兜太の
ざっくばらん』


 ロングインタビューと講演録で構成された一冊で、兜太俳句のルーツと目指すものが明らかになっている。
 一茶の俳句に見る純粋なアニミズムへの敬愛が、率直かつ丁寧に語られており、一茶への関心も湧いてくる。

本の画象

中経出版(1500円+税)
2010年8月刊
朝日新聞社編
『朝日歌壇2010』

 選者は佐佐木幸綱、高野公彦、馬場あき子、永田和宏。2009年1月から一年間の年間秀歌と各週の入選作品と選評がまとめられている。どの選者の評にも、一時期話題になりその後投稿が途絶えたホームレス歌人公田耕一氏の作品について触れている。
 温かき缶コーヒーを抱きて寝て覚めれば冷えしコーヒー啜る(公田耕一)
 この歌人の近作を待つ読者は多いだろう。

本の画象

朝日新聞出版(762円+税)
2010年7月刊



2011年2月28日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの推す2冊


藤井貞和著
『日本語と時間』
〈時の文法〉をたどる

 使われたことばがあり、書かれた文章がある。その全てを区切る一つの方法として、文法がある。世の中の区切り方に様々あるように、本来はまだまだ奇抜な文法があってもよいのではないか?「古代人は時間を類別して、六通り、ないし八通りにせっせと使い分ける言語生活を送っていた。」古文を古文のままに読みたいときに役に立つ本である。

本の画象

岩波新書(定価:800円)
2010年12月刊
内田 樹著
『ひとりでは
生きられないのも
芸のうち』


 「僕たちの時代がしだいに貧しくなっているのは、システムの不調や資源の枯渇ゆえではなく、僕たちひとりひとりが、よきパッサーである努力を怠ってきたからではないか。」この本は上野千鶴子『おひとりさまの老後』に対するアンサーソングでもある。二冊とも読むべきかもしれない。内田樹の本はだいたい面白い。

本の画象

文春文庫(571円+税)
2011年1月刊


若林武史の推す2冊


詩・谷川俊太郎/写真・伴田良輔
『mamma まんま』

 お馴染み、谷川俊太郎の詩である。この本の特徴は、詩の側に美しい女性の乳房の写真があるということ。写真と詩のコラボレイトというのはよくあると思うが、ここまで徹底されているものは珍しいのではないだろうか。妙に和みます。女性目線での感想も知りたいところです。

本の画象

徳間書店(1600円+税)
2010年11月刊
福田誠治著
『こうすれば
日本も学力世界一』


 PISAの学力調査で日本は第何位という話題もすっかり定着し、こういったタイトルの本も珍しくないのだが、この本は、フィンランドの教育の根っこのところからを伝えようとしている点に特徴があると思う。学力を一元的に捉える限り、こうした議論は続くのだろう。グローバルスタンダードの呪縛からはもはや解放されないのだろうか?

本の画象

朝日新聞出版(1500円+税)
2011年2月刊



2011年2月21日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


井波律子編
『中国名詩集』

 前漢の劉邦から現代の毛沢東までの中国詩137編を集めたアンソロジー。巻頭にあるのは大好きな「江南の春」(杜牧)である。「千里 鶯啼いて 緑 紅に映ず/水村 山郭 酒旗の風」とはじまる七言絶句だ。ここから後半への転調が「なんとも絶妙な極めつきの傑作」と井波は評している。この本、きれいな箱入りの上製本。私は机辺において日に一度は開いている。

本の画象

岩波書店(2800円+税)
2010年12月刊
安野光雅・半藤一利・中村 愿著
「『史記』と日本人」

 『史記』をめぐって3人が蘊蓄を傾けた本。というより放談を尽くした本、と形容すべきか。ともかくどこを読んでも笑ってしまう。「知」とはこのようにユーモラスで自在なものなのだ、と実感した。ちなみに安野、半藤は80代、中村は60代。読後、私は岩波文庫『史記』の全冊を買ってきた。今まで図書館で済ませていたが、手元において玩弄したくなったのである。

本の画象

平凡社(1600円+税)
2011年2月刊


武馬久仁裕の推す2冊


永井江美子句集
『玉響』

 淡々と過ぎ行く日々にあって非日常的な出来事への予感を表現した「牛乳瓶握れば遠き春の雷」(第一章 家)、情念をもってすれば燃やすことができるかもしれないという予感を表現した「炎えるかもしれぬ薊を束ねおく」(第二章 炎)、十二の橋を越えて行けば遠い昔の雪深い美濃国の奥また奥へ行けるかもしれないという予感を抱かせる極月十二月を表現した「奥美濃は橋いくつ越え十二月」(第三章 音)など三章197句からなる第二句集。

本の画象

美研インターナショナル(非売品)
2011年1月刊
平野啓一郎著
『かたちだけの愛』

 事故で左足を失った女優と彼女の義足のデザインを引き受けた男の愛の物語である。本書の魅力は随所に鏤められた比喩表現にある。二人が初めてセックスする場面は「ぴんと張られた白いシーツが、忍び笑いのように音を立てる」と書かれ、私の愛する箇所である。愛を確認し合う男女の営みが、まだここでは世界からよそよそしく見られているのである。最後の場面では「世界が親しげに微笑みかけて」くるが、この表現は些か物足りない。

本の画象

中央公論新社(1700円+税)
2010年12月刊



2011年2月14日号(e船団書評委員会)

桑原汽泊の推す2冊


クレモンティーヌ歌
『アニメンティーヌ・プラス
〜ボッサ・ドゥ・アニメ〜』


 かわいそうな・・・。肝ぞうの××××ちゃん。ノンアルコール・ビールのコマーシャル。ナルトのうず。♪ボンボンバカボンボンカレー、ヤナギノエダニネコガイル、ジュテーム、ボンジュール・・・。クレモンティーヌはちょい下ぐらいかな。

本の画象

IT’S A SONY(2600円+税)
2011年5月まで(期間限定生産盤)
川口晴美編
『名詩の絵本U』

 そこはカナヅチでも浮くという。ガンダーラ。浮いてみたいな。とある温泉地で、詩人のケンさんに、ばったりあった。「とりあえず! たいそーお世話になりました」とは言わなかった。八甲田という部屋で、ソーナンしちゃった。ヒモノがうまいからね。ふりそうでふらない。ラクダの背にゆられ・・・

本の画象

ナツメ社(1300円+税)
2010年12月刊


塩谷則子の推す2冊


岩岡中正著
『虚子と現代』

 西南戦争、水俣病、こうのとりのゆりかご、漱石を加えてもよい。熊本は日本の近代が失ったものについて考えさせる所だ。筆者は熊本在住。自然との、人間との豊かな関係を取り戻そうとする石牟礼道子、渡辺京二の仕事にも触発された虚子論。虚子の花鳥諷詠論は、単に自然を詠めばよいという没主体論ではない、と言い切らない誠実さ。一読を。

本の画象

角川書店(2381円+税)
2010年12月刊
吉田優子著
『旅あるいは回帰』

 バスを何度か乗り換え2日、3時間もあれば見て回れる小さな村に3泊する。詩人ヒメネスの生まれた村、モゲル。地図もカメラも持たないで。品性のありかを訪ねる旅―そこはスペインの僻地。阿蘇在住の筆者はここ10年、毎年数ヶ月をスペインで暮らしている。69歳。熊日文学賞受賞の随筆集。

本の画象

石風社(1500円+税)
2010年10月刊



2011年2月 7日号(e船団書評委員会)

田中俊弥の推す2冊


鷹羽狩行著
ラジオ深夜便
『季語で日本語を旅する』
【総集編】


 学習指導要領が改訂され、この四月から小学校の国語教科書が一新する。中学年で俳句に親しみ、高学年では俳句をつくることが必須となった。意外と知られていないかもしれない大改革である。ある教科書では「季節のことば」が春夏秋冬にわたってとりあげられた。「にほんご」の新時代、俳句の基礎教養はおおらかに。

本の画象

NHKブックセンター(定価:1200円+税)
2010年12月刊
山口仲美著
『日本語の古典』

 同じく日本の伝統的な言語文化として「古典」が小学校の国語教科書にたくさん登場する。「にほんご」の奥ゆきと広がりのなかで、「にほんご」の教育として国語教育を活性化したい。本書は、そんな願いに正面からこたえてくれる。擬音語・擬態語研究の第一人者である著者ならではの感性きらめく秀逸の古典入門の書。

本の画象

岩波新書(800円+税)
2011年1月刊


葉月ひさ子の推す2冊


安野光雅著
『口語訳即興詩人』

 著者の青春の書であったという森鴎外の文語訳を口語訳したものと明記。流麗な文語訳を読むことを強く薦めている文章からは、生誕150年の鴎外と同郷の津和野出身者が、鴎外を敬愛する気持が伝わって来る。原作は1834年に発表されたアンデルセンの自伝と言われる若き吟遊詩人のイタリア流浪の物語。やはり口語訳の方が、地名を辿りながらの旅ができそうで楽しい。

本の画象

山川出版社(1900円+税)
2010年11月刊
武部好伸著
『北アイルランド
「ケルト」紀行』


 著者は魅せられてケルト文化圏への旅を続けている元新聞記者とのこと。その文化圏とはヨーロッパ各地のことであり国別の著書だけでも10点余。ケルト文化の浸透ぶりが「ハリーポッターシリーズ」のベストセラーズ現象となったのであろうか。今なお、紛争の影濃き北アイルランドを「ケルト」をキーワードにして紀行し「改訂版」とした著者のジャーナリスト魂が伝わって来る。

本の画象

彩流社(2300円+税)
2010年11月刊



2011年1月 31日号(e船団書評委員会)

朝倉晴美の推す2冊


まどみちお著
詩人まど・みちお100歳の言葉
『どんな小さなものでも
みつめていると宇宙に
宇宙につながっている』


 まどさんは言う
言葉自身が遊びたがっているところが/あるように思えるんです。/それに乗っかって書くと、すごくいい言葉が生まれる。
 まどさん、ステキッ!200歳まで現役でいて下さい!

本の画象

新潮社(1200円+税)
2010年12月刊
長野まゆみ著
『野川』

 独特の少年世界を描いてきたまゆみ氏。『野川』は、新しい、少年たちの世界が見える。ロマンティシィズムに溺れない、健全たる少年の姿がある。伝書鳩と武蔵野の台地をモチーフに、現代的少年の成長を描く。
 まゆみ氏、新境地の気配。

本の画象

河出書房新社(1300円+税)
2010年7月刊


赤石忍の推す2冊


東 直子歌集
『十階』
短歌日記2007

 穂村弘氏と並んで、今一番、勢いのある歌人。本書は2007年元日から1年間、出版社ふらんす堂のホームページに毎日「短歌日記」として掲載した365編の集積。その中から6月15日をご紹介。地の文「十階に座って、未来を考えていた。曇天の空の見える窓辺で」。その日の短歌「おうと声かけるがごとく吹き上がる重たい風を抱くごとく受く」。最近は気鋭のイラストレーター木内達朗と組んで絵本を刊行している。『あめぽぽぽ』『ほわほわさくら』『ゆきふふふ』、木内氏が描く美しいそれぞれの季節の中で、すてきな言葉が踊っている。本書とともに、ぜひ一度、すてきな東直子ワールドに足を踏み入れてみてはいかがでしょう。

本の画象

ふらんす堂(本体2000円+税)
2010年12月刊
帯刀益夫著
『われわれはどこから来たのか、
われわれは何者か、
われわれはどこへ行くのか』


 刺激的な1冊。高校レベルの生物学の知識しか持ち合わせていないので理解したとは言いがたいが、久々に興奮した本に出会った。書名はお分かりの通り、ゴーギャンの絵の題名から。我々人類の過去も現在も、遺伝子の解析によってほぼ分かりかけてきている。例えば「中央アジアの男性1600万人はチンギス・ハーンの末裔」「新生児は母語のメロディで泣いている」など、えっと思うことが科学的に説明されている。そして利己的な遺伝子、利己的な細胞の乗り物としてのヒトは自然選択の中、どこへ向かっていくのか。著者は意欲的で自律的な悟りも持った祖先の精神が遺伝子の中に刷り込まれている叡智こそが、「生命システムの永続性」を果たすものと結論付けている。

本の画象

早川書房(1400円+税)
2010年5月刊



2011年1月24日号(e船団書評委員会)

三好万美の推す2冊


『俳句』編集部編
『正岡子規の世界』

 俳人を中心に歌人、文化人など実に113人もの筆者が子規を鑑賞、分析している。佐佐木幸綱、坪内稔典、天野祐吉の座談会録は、表現者、批評家、ディレクターとさまざまな顔を持つ子規を多角的に論じている。現代日本文学において子規はまさにパイオニアであったことを裏付ける一冊。

本の画象

角川学芸出版(定価:1800円)
2010年6月刊
星野道夫著
『アフリカ旅日記』
ゴンベの森へ

 生涯アラスカの自然を撮り続けた写真家星野道夫が、アフリカ、タンザニアへ旅した際のフォトエッセイ。極北でも熱帯でも、さりげなく自然と一体になろうとする筆者の姿勢がいい。収められた写真のチンパンジーたちは、みな穏やかで優しい表情をしている。

本の画象

MF文庫ダ・ヴィンチ(590円+税)
2010年8月刊


大角真代の推す2冊


笹井宏之作品集
『えーえんとくちから』

 最近仕事で疲れているせいもあるかもしれない。年のせいで涙腺が弱くなっているのかもしれない。が、短歌を読んでいて涙が出たのは初めて。なんだかもやもやしていた心が救われた気分。
 空と陸のつっかい棒を蹴飛ばしてあらゆるひとのこころをゆ るす

本の画象

PARCO出版(1600円+税)
2011年1月刊
美篶堂著
『製本工房・
美篶堂とつくる文房具』


 一度は自分で製本や文房具を作ってみたいな、と思って購入したが、そんな考えは甘かった。非常に緻密で繊細な作り方で大雑把な自分には到底無理。「使い手の役に立とうとする一心から生まれた物のたたずまいは美しい」という言葉に誤りはなく、眺めているだけで楽しい気分に。写真と詳細な解説があり、美しい文房具を作ることができる。

本の画象

河出書房新社(1600円+税)
2010年10月刊



2011年1月17日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊


「ユリイカ」1月増刊号
総特集『村上春樹』

 『1Q84』を軸にした村上春樹についての評論、鼎談、評論ガイドなどが網羅された一冊。本人へのメールインタビューが読みどころ。文芸時評とは何なのかと考えさせられた。社会現象としての村上春樹という視点で読むのが正しい読み方なのだろう。

本の画象

青土社(定価:1300円)
2010年12月刊
寿岳章子・文/沢田重隆・絵
『京に暮らす悦び』

 寿岳章子による京都の町や風物の様子や思い出などが滋味豊かな文章で書かれた一冊。沢田重隆の絵にも惹かれる。暮らす町としての京都の魅力を丁寧に記す姿勢に感銘を覚える一方、伝統の重みをひしひしと感じる部分も多い。

本の画象

角川ソフィア文庫(1143円+税)
2010年10月刊


木村和也の推す2冊


四ッ谷龍句集
『おおいなる項目』

 四ッ谷にしては一見おとなしめの句群だが、色々な仕掛けが凝らされている。いくつかの言葉やテーマによる連作もその一つ。その執拗な意思に詩を獲得しようとする俳人の志が貫かれている。
 花挿せば冬の虻来て明るみぬ

本の画象

ふらんす堂(2500円+税)
2010年11月刊
曾野綾子著
『老いの才覚』

 「高齢であるということは、若年であるというのと同じで、一つの状態に過ぎない。それは善でも悪でもなく、資格でも功績でもない。」と颯爽と断言する。自立的な老いを生きるための心構えと実践の方法が小気味のいい筆致で語られている。

本の画象

KKベスト新書(762円+税)
2010年11月刊



2011年1月10日号(e船団書評委員会)

武馬久仁裕の推す2冊


伊藤政美句集
『天網』

 「一枚の空一枚の大枯野」。「一枚の」が繰り返され更に大きくなる一枚の世界。その世界の只中に、身は小さな存在だが一望の元に空と大枯野を見渡す人物がいる。「蝉の駅発ち蝉の駅蝉の駅」。絶えることの無い蝉時雨の中、人は限りない旅を続ける。「天網の疎にして疎なり鵙の贄」いよいよ広い天網の中にある「鵙の贄」。決して逃れることのできない生き物が生き物を殺して生きる世界がそこにある。方法としての繰り返しを『天網』に見た。

本の画象

菜の花会(頒価:2700円)
2010年9月刊
依田仁美著
『正十七角形な
長城のわたくし』


 17組の文と歌群による歌論が、表紙のように美しい正17角形に擬されている。例えば「前うしろおのれしだいで左右と呼ぶ自己中心の交差点中央」。著者の横紙破りの短歌への姿勢をこの歌ほど表現しているものはない。横紙破りの歌人の悲哀が一首全体から立ち上がって来る。この歌に対応する文の題は「歌は流転する人生の投影である」。正17角形を長城と歌人は見るが、私には歌人を乗せて回転し続ける正17角形な観覧車に思えてならない。

本の画象

北冬舎(1900円+税)
2010年11月刊


鈴木ひさしの推す2冊


外山滋比古著
『省略の詩学』
俳句のかたち

 タイトルは『省略の詩学』だが、「省略」というより、むしろ「捨象」または「削除」と言った方がよいかもしれない。主張の基本は、文中でしばしば引用される「いひおほせて何かある」(芭蕉)にある。文は短く歯切れが良い。的確な譬えが多く、文章は明解そのもの。著者による現代の俳句への言及を読んでみたい。

本の画象

中公文庫(571円+税)
2010年10月刊
藪田 貫著
『武士の町 大坂』
「天下の台所」の侍たち

 江戸時代の大坂に武士は何人いたのか。司馬遼太郎の200人に対して、著者は8000人とする。なぜ、「武士は少なかった」「いないも同然」という言説が広がったのか。「武士の町 大坂」という問いを立てながら、「大坂の町」の実態を検証する。小西来山「お奉行の名さへ覚えずとしくれぬ」の著者なりの読みも出ている。

本の画象

中公新書(780円+税)
2010年10月刊



2011年1月3日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊


細見和之著
『家族の午後』

 詩集である。たとえば「金魚」という詩は「母の足腰がとうとう立たなくなった」と始まる。それで、母には金魚になってもらい、バケツに日なた水を入れてその中で泳いでもらう。「勤めから帰ると/懐かしい口をぱくぱくさせて/フンを尻につけたまま/ときおりおおきな目で/こちらをじっと見つめている」。この詩の後には「薪」という詩があり、足腰の立たなくなった父には薪になってもらう。ユーモラスでどことなく怖い物語詩、それがこの詩集である。

本の画象

澪標(1500円+税)
2010年12月刊
鬼貫を読む会著
『鬼貫百句』

 上島鬼貫の百句を鑑賞した本。伊丹市の俳句塾・也雲軒(昔、鬼貫たちが学んだ俳句塾を平成になって柿衛文庫が再興した。塾頭は私。)で学んだメンバーが数年をかけて読んだ。もちろん、私もそのメンバーの1人である。「六日八日中に七日のなずなかな」「白魚や目までしらうお目は黒魚」「鶯の青き音をなく梢かな」「宿替えに鼻毛もぬきぬ梅の花」などの鬼貫の句は、言葉遊びを底に持つ俳句の楽しさをよく伝えるだろう。

本の画象

創風社出版(1200円+税)
2010年11月刊


塩谷則子の推す2冊


坪内稔典著
日本語
『正岡子規 言葉と生きる

 なぜ書くのか。書くことが作者に思いがけないものをもたらす体験、言葉が言葉を呼び寄せ拡がる世界を発見する喜び。子規の文章観の根っこには鬱さ晴らしがある、書くことによって「自己を権威化せず(固定せず)、自己を他者へたえず開く」。墓碑銘さえ「書く楽しさを遊ん」だという子規の評伝。
 子規の文章の引用のあとに3〜5ページの解説。短く読みやすい。随所に挟まれている絵や図表も楽しい。子規の言葉観は、著者の書く喜びと重なるだろう。

本の画象

岩波新書(720円+税)
2010年12月刊
岸本尚毅著
『高浜虚子 俳句の力』

 子規に「縦横」と評された虚子。子規の死後明治36年10月に発表された「渇望に堪へない句は、単純なる事棒の如き句、重々しき事石の如き句、無味なる事水の如き句、ボーッとした句、ヌーツとした句、ふぬけた句、まぬけた句等」の意味を虚子自身の句から探求した評論。章立ては「虚無を飼いならした男」「孤独な選者」等。大正・昭和を生きた虚子は近代の虚無や孤独をボーッとヌーツとふぬけたまぬけた句で乗り越えようした。その視点が面白い。

本の画象

三省堂(1600円+税)
2010年11月刊

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