俳句 e船団 ブックレビュー
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2012年6月25日号(e船団書評委員会)

荒川直美の推す2冊

コロナ・ブックス編集部編
『作家の旅』

 コロナ・ブックスの作家シリーズ最新刊。萩原朔太郎、種田山頭火、寺山修司、春日井健、堀内誠一、澁澤龍彦、須賀敦子など、旅を愛した作家15人の紀行文、旅日記、絵葉書や写真がオールカラーで掲載されています。私のおすすめは堀内誠一のイラスト地図! 眺めているだけで、楽しい気持ちになります。

本の画象

平凡社(1600円+税)
2012年3月刊
菊本るり子作/のぐちようこ絵
『みどりのカーテンをつくろう』

 今、節電などでブームになっている「緑のカーテン」。つる植物で壁面を緑化する取り組みです。この絵本では、緑のカーテンの効用やゴーヤーの栽培方法と食べ方を紹介しています。
 これを機会に、ゴーヤーを育ててみようかなあと検討中です。都心のマンションで育つゴーヤーはどんな味がするのでしょうか?
 

本の画象

あかね書房刊(1000円+税)
2012年3月刊


塩谷則子の推す2冊


星永文夫句集
『あらっこいしょ』

 せんだんの花降る 太宰の情死ほど
 けんけんの六歩目 蛇踏んじゃった

 「あれ、まあ、何てこと・・・」驚嘆五分に憐憫三分、「だから言わんこっちゃない」侮蔑と嘲笑二分という「あらっこいしょ」の精神を具現する上記のような句が99。やがて哀しきの世界を見事に描く。星永は昭和8年生まれ、熊本の俳人。

本の画象

本阿弥書店(2500円+税)
2012年3月刊
葉室麟 随筆集
『柚子は九年で』

 葉室は久留米在住。今回の直木賞作家。薩長同盟の口火を切りながら龍馬ほどは知られていない月形洗蔵や、1019年の女真族の博多襲来を撃退しながら時の権力者道長に遠慮して無視された藤原隆家(『枕草子』の海月の骨ですねの人)など歴史上の敗者に目をむける。鮮やかに切り取られた歴史の断面に目を見開かされる。文章は平明。

本の画象

西日本新聞社(1500円+税)
2012年4月刊



2012年6月18日号(e船団書評委員会)

桑原汽泊の推す2冊

J・P・ホーガン・原作/星野之宣・著
『星を継ぐもの 02』

「さっきから足が震えているんだよ・・・ヴィック。」
 「貧乏ゆすりするなよ、クリス・・・」(うそ)

 ヴィック、クリスと呼びあうなかになった二人。ファースト・コンタクトへ。

本の画象

小学館(1238円+税)
2011年12月刊
CasaBRUTUS 特別編集
新説・あなたの知らない
『岡本太郎』

 法印大子のでかいおしりの尻もちのあと。びみょうなスロープのとこは、あぶなくて改装されたらしい。すごい大浴場が日本列島の伊豆半島にある。

 芸術は尻もちだ!!  

本の画象

マガジンハウス(1238円+税)
2011年12月刊


舩井春奈の推す2冊


神野紗希句集
『光まみれの蜂』

 青嵐ピカソを見つけたのは誰
 これほどの田に白鷺の一羽きり
 なぐさめのつもりか金魚ひるがえる
 若き俳人神野紗希が高校生時代からの作品を集めた句集。のんびりとのびのびしている作品が多くて心地良い。気を衒った表現をせずして引き出される世界に、言葉の力を感じる。

本の画象

角川書店(1575円・税込)
2012年4月刊
藤城清治・影絵/宮沢賢治・原作
『セロ弾きのゴーシュ』

 周知のとおり宮沢賢治が書いた童話『セロ弾きのゴーシュ』。この原作を元にして、影絵作家である藤城清治氏が挿絵を施した絵本。光と影を駆使して作られた幻想的な影絵の世界。よく見ると隅々まで工夫がこらされており、ワクワクが止まらない。オトナの方が夢中になりそうな絵本。

本の画象

講談社(2400円・税込)
2012年4月刊



2012年6月11日号(e船団書評委員会)

赤石 忍の推す2冊

内田麟太郎著
『しっぽとおっぽ』

 いま児童詩集で商業出版できる人は、たぶん片手で十分かもしれない。まどみちおさん、谷川俊太郎さん、と名前をあげてみても次がなかなか続かない。絵本作家としても人気があるが、もともとが詩人である。良質な詩がたくさん詰まっている第4詩集。ぜひ子どもたちに読んでほしいと思う。お母さん、お父さんたちにも。

本の画象

岩崎書店(本体1200円+税)
2012年5月刊
あきびんご著
『ゆうだち』

 なにより絵が素晴らしい。もともとは日本画家だが、その枠の中に留まらず、自由奔放に描いている。本書はカリブ海に浮かぶ島国トリニダード・トバゴ共和国に伝わる民話がもととなっている。師匠仰ぐ野見山暁冶氏から勧められて絵本を描き始めたが、いま一番、のっている絵本作家の一人と言えるだろう。

本の画象

偕成社(1000円+税)
2012年6月刊


田中俊弥の推す2冊


森澄雄・矢島房利編
『加藤楸邨句集』

 『加藤楸邨全集』(全十四巻、1982年完結、講談社)を底本として、森澄雄と矢島房利とが本書に収録するための第一次の選句をおこない、しばらくのときを経て、森澄雄が永眠後に、本書は、刊行されることとなった。明治38年に生まれ、昭和の戦前・戦後を句作に生きた加藤楸邨の強い眼光をひしと感じずにはいられない。

本の画象

岩波文庫(1000円+税)
2012年5月刊
井波律子著
『論語入門』

 かりに宇宙に出かけるとして、一冊だけ本をもっていくとしたら何を選ぶかという問いを出すことがある。ボクの第一候補は、大学生のときに購入した金谷治訳注の『論語』である。「知者楽水、仁者楽山」をはじめ、深い含蓄に富む生きたことばの魅力は、孔子という人物から放射されていることを本書からあらためて学んだ。

本の画象

岩波新書(800円+税)
2012年5月刊



2012年6月4日号(e船団書評委員会)

三好万美の推す2冊

鈴木牛後著
『根雪と記す』

 俳句集団「いつき組」が主催した「第一回おとなのための句集を作ろう!コンテスト」の最優秀作品。「ハイクライフ100年俳句計画」の2012年5月27日4月号の付録として編集されたもの。句集タイトルの通り、作者は北海道在住の酪農家で、凍てつく冬、苦楽を共にする牛たちを詠んだ句が心にしみる。

本の画象

マルコボ.コム(1300円+税)
2012年4月刊
加賀乙彦著
『科学と宗教と死』

 作家として、医師として、キリスト教の信徒として、様々な側面からの「死」に対するアプローチをまとめたもの。東日本大震災ののちに、さかんに使われた「頑張ろう」に違和感を持ち、鼓舞するのではなく、哀しみに寄り添い、祈ることを提唱する姿勢に共感した。

本の画象

集英社新書(700円+税)
2012年1月刊


朝倉晴美の推す2冊


谷川俊太郎・箭内道彦・宮藤官九郎著
『自由になる技術』
―80歳詩人の言葉を聞く―

 フジテレビ系放映の「ボクらの時代」における座談会を収録、加筆したもの。谷川俊太郎、箭内道彦(クリエイティブ・ディレクター)、宮藤官九郎(脚本家)。〈メッセージは何もないんです。ただ日本語のきれいな魂をここに置きたいっていう気持ちがあるだけで、何を読み取るかは読者の自由っていう立場ですね。〉谷川さん言うー!!!

本の画象

扶桑社(1100円・税込)
2012年3月刊
中脇初枝著
『きみはいい子』

 著者は、17歳で、「坊っちゃん文学賞」を受賞した高知の高校生。あれから20年。寡作(失礼)ながらも、注目されてきた中で、間違いなく代表作になるであろう本作。旧い土地を、新興住宅地化してできた街の子どもたちを描く短編集。過去と現代の子どもたちを、真摯に見つめて描き切った。そして、優しくせつない。

本の画象

ポプラ社(1400円+税)
2012年5月刊



2012年5月28日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊

堀本裕樹著
『十七音の海』

 俳句の若い入門書である。著者の好きな俳句が百四取り上げられている。著者はまず、俳句そのものを読んで、そこに広がる世界、宇宙をじっくり楽しむように書いているが、やはりこの本で読むべきは、著者の鑑賞文である。丹念に書かれた文章を読み進める愉楽に浸りたい。

本の画象

(株)カンゼン(1300円+税)
2012年4月刊
小田伸午著
『一流選手の動きは
なぜ美しいのか』


 それは、力感が感じられないから。どうすれば力みのない、美しい動きが手に入るか。そのヒントが得られるように思う。特に運動における主観と客観のずれが面白かった。なるほどねぇ、と思う所が数多くあった。

本の画象

角川選書(1700円+税)
2012年2月刊


木村和也の推す2冊


谷 さやん著
『芝 不器男への旅』

 「船団」連載当時から注目を集めていたエッセイ。丁寧で地道な取材と郷土の俳人不器男へのひたむきな思いがこの一冊となって結実した。多角的なアプローチが、夭折の俳人の姿をドキュメント風に浮かび上がらせている。殊に「不器男の死」の章が哀切。

本の画象

創風社出版(2200円+税)
2012年4月刊
嵐山光三郎著
転ばぬ先の 転んだ後の
『「徒然草」の知恵』

 『徒然草』は、天皇になろうとする皇子のための指南書として書き始められた、いわば日本版「君主論」(マキャベリ)なのだと筆者は言う。この古典を現実主義的処世訓として現代の社会に蘇らそうとする。「あまり興あらんとする事は、かならずあじきなき(つまらない)ものなり」は、文芸上においても真であるかもしれない。

本の画象

集英社(1260円+税)
2012年4月刊



2012年5月21日号(e船団書評委員会)

武馬久仁裕の推す2冊

山ア十生句集
『悠悠自適入門』

 尺蠖虫が国旗掲揚塔のポールを尺を取りながら上っている。と、突如、尺蠖虫のあずかり知らぬ所で「国歌斉唱」がなされた。かの尺蠖虫は哀れにもポールを上り始めた国旗に搦め捕られるはめに。「国歌斉唱をして尺蠖虫を捕る」(十生)なんと諧謔的、諷諭的、閑適的であろうか。恐るべし「悠悠自適」の境地!

本の画象

角川書店(2800円・税込)
2012年4月刊
石川九楊著
『説き語り 日本書史』

 筆の尖(さき)が紙(対象)と相まみえる時の筆触のあり方に日本人の思想を読み取ろうとするのが本書である。中でも「下手、奇癖、奇怪」と言われた藤原俊成の書が古代を超える可能性を持っていたことを見抜く所は凄い。俊成は書く自分=主体というものをはっきり意識した日本書史上初めての人物であったと言うのだ。石川九楊の日本書史は日本思想史である。

本の画象

新潮選書(1000円+税)
2011年12月刊


鈴木ひさしの推す2冊


近藤 真著
 『大人のための
 恋歌の授業』


 タイトルは「恋歌」だが、詩歌全般である。与謝野晶子、若山牧水、正岡子規、島崎藤村、北原白秋、炭太祇、高浜虚子、山之口貘、河野裕子、中原中也、ハイネ、・・・。詩歌だけ読めばアンソロジーとして、文章は、著者個人に引きつけた鑑賞文として読める。何より、21の課題は、「授業」のヒント集として参考にもなる。

本の画象
太郎次郎社(1600円+税)
2012年4月刊
丹下和彦著
『食べるギリシア人』

 トロイアに10年間滞留したギリシア軍6万は何を食べたのか?ホメロスはなぜ英雄たちに魚を食べさせなかったのか?古代ギリシア人は、なぜ水割りのワインを飲んだのか?二日酔いにはキャベツ?手ふきパン、匙パンとは?食客の条件は?志賀直哉『小僧の神様』や芭蕉の句も出てくる。長年の研究に裏付けられたこぼれ話。

本の画象

岩波新書(720円+税)
2012年3月刊



2012年5月14日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊

ねじめ正一著
『長嶋少年』

 「僕」が煙草を吸っていたら、小学生のくせに吸うな、と父に追っかけられる。「父さんの顔が五十センチぐらいうしろにあって、それでもどんどん走ったら、とうとう父さんに追いつかれて、父さんに捕まるかと思ったら、父さんはそのまま僕を追い越して、先にずんずん走っていきました。」このような「僕(ノブオ)の詩を孕む語りにわくわくする。
本の画象

文藝春秋(1650円+税)
2012年23月刊
井上章一著
『京都洋館ウォッチング』

 著者がガイドになって京都の洋風建築を案内する本。京都駅や京都タワーを皮切りに寺院、大学、銀行、銭湯、中華料理店など京都市内に存在する意外な洋風建築が続々登場。建築史家の著者も階段の踊り場などにしばしば登場、章一ファンとしては頁をめくるごとにドキドキする。写真いっぱいのシリーズ〈とんぼの本〉の1冊。

本の画象

新潮社(1600円+税)
2011年11月刊


塩谷則子の推す2冊


林一馬他4名著・白石ちえこ撮影
 『鉄川与助の教会建築』

 鉄川与助(1879明治12年〜1976昭和51年)は五島・中通島生まれの大工棟梁。仏教徒。工務店の力でなく与助個人の力により設計・施工された28棟のうち17棟が現存。筑後平野の今村教会や上五島の頭ケ島天主堂(石造・国指定重要文化財)などが写真つきで説明されている。美しい。近代遺産を見直そうとする最近の動きの一つ。与助が使った鉋の復元の試みは困難を極めたという。

本の画象
LIXIL出版(1800円+税)
2012年3月刊
伊藤比呂美訳著
たどたどしく声に出して読む
『歎異抄』

 間に挟まれている作者のカリフォルニア・熊本往復旅の記録以外は「声に出して読む」とよくわかる。歎異抄・和賛・親鸞書簡・恵信尼書簡・正信偈の現代語訳。「ひかりのうた」「かなしみのうた」「母や子のうた」「うみのうた」が和賛の題。自分のことば(声)にして訳している。又「自然」とは「人が塩梅できる」ことではないという愚禿親鸞86歳の手紙が辛い往復旅の肯定につながる。

本の画象

ぷうねま舎(1600円+税)
2012年4月刊



2012年5月7日号(e船団書評委員会)

舩井春奈の推す2冊

加納綾子句集
『大きな鋏』

 「りょうこちゃんりょこりょこしているおんなのこ」が、大学を卒業するまでに詠んだ作品をまとめた処女句集。
 小中学校で作った作品は比較的残りやすいけれど、保育園時代から俳句を作り、それをご両親が残してくれているというのだからスバラシイ。
 天真爛漫でいて時にドキリとする綾子(りょうこ)ちゃんワールドが展開中☆
本の画象

私家版
2012年2月刊
高橋久美子 詩・文/干田正浩 写真
『家と砂漠』

 大都市という空間。片田舎という空間。遥か異国の空間。雑然とした写真たちに紛れ突如として現れる黄色い紙。混沌とした世界の中でふと現実に戻りしは高橋氏の詩。彼女曰く「今回、出版者を入れずに全部やりたいほうだいやった幻の写真詩集」。
 ココマデ書イテナンデスガ、発売数ヶ月デアットイウ間ニ完売シタソウナ。悪シカラズ。

本の画象

自主出版・限定1000部(1500円)
2012年1月刊


荒川直美の推す2冊


はいじまのぶひこ著
 『きこえる?』

 切り絵のようなタッチで描かれた、シンプルな動物と背景。色合いも美しく、ページを 「きこえる?」 という呼びかけに答えることで、作者と読者で詩をともに作る感覚を味わうことができます。詩を視覚的に楽しむ、絵本の魅力あふれる一冊です。

本の画象
福音館書店(1400円+税)
2012年3月刊
モリナガ・ヨウ 作・絵
『図解絵本
東京スカイツリー』


 先日、東京スカイツリー見物に行ったのですが、天気が悪く、展望台が雲に覆われて見えませんでした。まるで「ジャックと豆の木」の、天に伸びたつるのよう。
 この絵本は、手描きイラストで東京スカイツリーができるまでを図解しています。誰にも見られない基礎部分や部品など、丁寧に細かく描かれていて、子どもも大人も楽しめます。

本の画象

ポプラ社(1429円+税)
2012年3月刊



2012年4月30日号(e船団書評委員会)

田中俊弥の推す2冊

吉野朋美
『後鳥羽院』
コレクション日本歌人選 028

 プリマヴェーラはイタリア語で「primavera」、春を意味し、ボッチチェリの画題でもある。後鳥羽院(1180-1239)は、高倉天皇の第四皇子として生まれ、承久の乱に破れ、ついには遠流の地・隠岐に没する。帝王としての国見の歌「見わたせば」は、春の歌であった。本書を機縁に、後鳥羽院の存在とルネサンスを重ねてみても面白い。

本の画象

笠間書院(1200円+税)
2012年2月刊
橋爪紳也監修
増補改訂版 『大阪の教科書』
大阪検定公式テキスト

 本年7月1日(日)に第四回の「大阪検定」の試験が実施される。申し込みは、すでに始まっている。本書は、その名の通り、その検定のための公式テキストである。問題は、地理や歴史、文化や芸能など、多方面の領域から出題される。かつて、大阪には「都」があった。深く知ることは、きっと楽しく生きることにつながるはずだ。

本の画象

創元社(1900円+税)
2012年3月刊


桑原汽泊の推す2冊


岸本尚毅著
虚子選ホトトギス雑詠選集
100句鑑賞
 『秋』

 二つづゝふぐりさがりにむかごかな
                  寸七翁

 当たったり、ぶつけたりすると、それは、それは、死ぬほどいたい。それで、プロの選手とかは、ちゃんと、プロテクターをしている。

本の画象
ふらんす堂(1500円+税)
2011年12月刊
荒木飛呂彦著
『ジョジョの奇妙な冒険』
PARTE X 黄金の風 黒い罠

 左手は他人のはじまり蛇穴を 泰輔
                (『俳コレ』)

 「他人のはじまり」は、他人のおわり。「左手は」、左手で手をにぎっているこのひとは。恋句。
 パープル・ヘイズ、おそるべきスタンド。
本の画象

集英社ジャンプリミックス(524円+税)
2012年3月刊



2012年4月23日号(e船団書評委員会)

朝倉晴美の推す2冊

宇多喜代子著
新版『里山歳時記』

 「また、お若いかたの目に触れることがありましたら、あなたもぜひご自分の「田んぼのまわり」で、ひとときの風に触れてごらんなさい、と言いたいのです。」と、宇多さん。  食物を食べて生きる以上、どんなに近代化をしても、田んぼが『絶対』です。もうすぐ、大好きな青田の季節がきます。

本の画象

角川学芸出版(1600円+税)
2012年2月刊
俵万智/山中 桃子 (イラスト)
俵万智3・11短歌集
『あれから』

 万智さん、賛否ある行動で、仙台から石垣島へ移住。8歳の坊ちゃんと。まごうことなき震災歌集なんだけど、私は、「子恋」の歌として読みたい。そして、母は強し、と。
 「何色にもなれる未来を願う朝 白いガーベラ君に渡す 万智」

本の画象

今人舎(1200円+税)
2012年1月刊


赤石 忍の推す2冊


鈴木嘉一著
『桜守三代』
佐野藤右衛門口伝

 京都の造園家佐野家三代にわたっての全国の名桜・老桜の保存活動が記されている。各地に点々とする樹齢を重ねる桜の接ぎ穂を自らの桜畑で栽培し、親木が枯れると元の場所に移植するのだそうだ。それはそれで深い感銘を受けたが、特にソメイヨシノの話に興味がそそられた。私たちが見ている桜の七、八割はこれ。明治初期に交配されて広まったもの。ソメイヨシノはめしべが退化し、花粉も実もなく自生ができない。だから鳥も虫も寄り付かないという。薄紅色の花びらとともに寂しさも感じるのはこのせいかとも思う。となると明治以前の歌人・俳人が見た桜はこれではない。そう考えると、彼らはどのような桜をふれ、詠んだのか、その観点も大切なように思えてきた。

本の画象
平凡社新書(800円+税)
2012年3月刊
工藤重矩著
『源氏物語の結婚』
平安朝の婚姻制度と恋愛譚

 私だけだろうが、平安貴族の婚姻制度と言えば「通い婚」。正妻がいても同等な立場、権利を保有する多数の側室を持つ一夫多妻制とばかり思っていた。著者によれば夫婦関係は「律令」にきちんと定められていて、法的にはまさしく一夫一妻制であり、妻妾の間には明らかな社会的待遇の違いがあったという。その観点で『源氏物語』を読み解くと、好色な光源氏の単なる恋愛譚だけではなく、正妻の座をめぐる確執・葛藤がストーリーの中核をなしていく。一夫一妻制という切り口で読み進んでいくと、作中人物たちの心情がよりいっそう理解できるとのこと。確かにさわりだけだが本書読後、筋書きの意味が明確となり、作者の意図が分かったような気がしたのも確かであった。
本の画象

中公新書(820円+税)
2012年3月刊



2012年4月16日号(e船団書評委員会)

木村和也の推す2冊

長谷川櫂著
『海の細道』

 「芭蕉が葬られた琵琶湖のほとりから杜甫が死んだ湘江までは、一本の巨大な水路でつながっている」。こんな魅力的な視点から、晩年の芭蕉が企図していたといわれる西国への旅を、さらに杜甫の揚子江まで延ばして試みる、現代版歌枕の旅である。

本の画象

中央公論新社(1600円+税)
2012年3月刊
中村仁一著
『大往生したけりゃ
医療とかかわるな』

―「自然死」のすすめ

 著者が医師として勤務する特別養護老人ホームでは、おだやかな死が日常となっているという。それは、できるだけ医療と関わらない結果だといのだ。題名がやや品下がるが、生物本来の「自然死であれ」との主張には、文明に毒された我々の死生観を糺す趣意が込められている。

本の画象

幻冬舎新書(760円+税)
2012年1月刊


三好万美の推す2冊


松本秀一歌集
『男(お)の子のやうに、日差しのやうに』

 耕す芸術家、船団会員松本秀一さんの第一歌集。詠われているのは、松本さんの日々の暮らしや自然。身の回りの花や動物はみな共に暮らす仲間だよ、と呼びかけるような優しい歌たちは、読む人の心を清潔にする。一つ一つ手作りされた布張りの箱にしまわれ、あたたかな質感の紙のこの歌集、芸術品のよう。

本の画象
水仁舎(8000円+税)
2012年3月刊
ダライ・ラマ十四世・茂木健一郎著
『空(くう)の智慧、科学のこころ』

 前半は般若心経の解説とチベット仏教お取り巻く現実、後半に一昨年愛媛県新居浜市で開催されたダライ・ラマ十四世と茂木氏の 対談が収録されている。ダライ・ラマ氏が科学にとても関心があり、仏教の修行や仏教哲学に科学的論理性を生かそうと、好奇心を  持ちつづけ、勉学に励んでいる姿に、ただ頭が下がる思いである。
本の画象

集英社新書(700円+税)
2011年10月刊



2012年4月9日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの推す2冊

中山義秀著
『芭蕉庵桃青』

 1965年11月〜1969年7月まで『中央公論』に連載されたもの。日本が激しく動いていた時代に、この文章はどのように読まれたのか。著者の身辺の出来事と心情と、取り巻く時代が、芭蕉像に大きく重ねられているようだ。よく知られた芭蕉の句がどう読まれているのかを読むのも面白い。1975年初版の改版。

本の画象

中央公論新社(1143円+税)
2012年1月刊
日下 力著
『とはずがたり』の世界
『中世尼僧 愛の果てに』

 文字にして残す行為は、時代によって、あるいは人によって異なる意味を持っているに違いない。「『とはずがたり』という作品は、長い間誤解されてきたのではなかろうか。」という書き出しで、この本は始まる。『とはずがたり』が、従来の日記文学という見方ではなく、自伝としてていねいに読まれ、豊かな構想の文学作品として見えてくる。

本の画象

角川選書(1700円+税)
2012年2月刊


若林武史の推す2冊


井上弘美著
現代俳句文庫69
『井上弘美句集』

 現在、活躍されている井上弘美さんの句集。初期の『風の事典』から近作『汀』の抄録が載せられている。最近、「汀」を主宰された。私事だが、井上弘美さんとは元同僚、というか、偉大な先輩教員であった。どんどんと活躍の場を広げられていて、驚くばかり。端正な印象の句が多くていいなぁ、としみじみ思う。

本の画象

ふらんす堂(1200円+税)
2012年1月刊
文・白井明大/絵・有賀一広
『日本の七十二候を楽しむ』
―旧暦のある暮らし―

 七十二候の旬の草花や動物等をあたたかみのあるイラストと文で紹介した一冊。例えば今なら、春分の末候として、「雷乃声を発す」と題し、春雷、うど、真鯛、木蓮、エイプリルフールが簡明に述べられている。欲張らないで、詩歌に偏らないで書かれているが、所々で俳句が紹介されている。ちなみにこの頁では、「春雷や煙草の箱に駱駝の絵 横山きっこ」とあった。
本の画象

東邦出版(各1600円+税)
2012年3月刊



2012年4月2日号(e船団書評委員会)

塩谷則子の推す2冊

谷川俊太郎編
『祝魂歌』

 伊藤比呂美の解説がよい。口承詩2編以外の28編の作者や訳者の生年と死亡年を調べ、どんな死も死にいたる生も壮絶、3・11の後も前も「生きて、死んだ」それだけだと書く。「ぼくが/死んでからでも/十二時がきたら 十二/鳴るのかい/苦労するなあ/まあいいや/しっかり鳴って/おくれ」(淵上毛銭)。どの一編も心に沁みる。

本の画象

朝日新聞出版(600円+税)
2012年3月刊
水村美苗著
『母の遺産』
新聞小説

 カーテンは「かげろうの羽より薄い黄金色のオーガンジー」でなければという美意識を持つ主人公が受け取った母の遺産は姉と折半して3680万円。「中産階級」を目指した母と夫の世態風俗が淡々と描かれていて笑ってしまう。姉は動産だけで10億円のお金持ち。介護・離婚と現代のテーマを金額で語る。これぞ日本の今。524pを一気に読んだ。

本の画象

中央公論新社(1800円+税)
2012年3月刊


武馬久仁裕の推す2冊


片野 蓮句集
『白く踊つてゐたりけり』

 私はこの清らかな句集の中で「けふもまた影として在り吾亦紅」に惹かれた。「吾亦紅」は「紅」としてではなく、昨日も今日も「影」として在り続ける。「紅」は仮の姿であり、本当は「影」なのだ。これはある意味でこの世に存在するものの在り方を言い当てている。影として在るのは吾亦紅だけではない。「吾」もまたそうなのだ。人というもののはかなさを思い、ふと淋しくなった。

本の画象

文學の森(2200円・税込)
2012年2月刊
夢枕 獏著
『東天の獅子』(全4巻)

 柔道草創期を扱った痛快時代小説である。話の経糸を開明派支配層の知識人加納治五郎の柔術の近代化に、緯糸を近代日本から処分された沖縄(琉球)の唐手と福島(会津)の秘伝御式内柔術の対決に置いている。この経糸と緯糸の交差する時、死闘が始まる。終末での警視庁武術試合における、唐手の天才・東恩納寛量と講道館に入門した御式内柔術の天才・保科四郎(姿三四郎のモデル)との闘いの描写は凄い。
本の画象

双葉社(各980円・税込)
2012年1月刊



2012年3月26日号(e船団書評委員会)

坪内稔典の推す2冊

黛まどか著
『引き算の美学』
もの言わぬ国の文化力

 世界の各地に出かけて生き生きと活躍する著者の姿が楽しい。だが、「一句の中に、日本人のすべてがある。俳句には日本人の本質が詰まっている」と断言されると、えっ?と身を退く。俳句的なものは日本文化の一部ではあるが、すべてではないだろう。それに、俳句ってほんとうに「引き算の美学」なのか。私には「片言の美学」と見える。

本の画象

毎日新聞社(1800円+税)
2012年2月刊
鷲田清一著
『語り切れないこと』
―危機と痛みの哲学

 自分の考えと照らし合わせて読む、そういう読書の対象として私はこの著者に親しんでいる。鷲田は言う。「じぶんの言葉の感触を確かめながらの語りは、訥々とした、たどたどしいものですが、むしろそのたどたどしさを、人は信用するようです」。そうだと思う。そのたどたどしさが表現の豊かさだろう。

本の画象

角川学芸出版(724円+税)
2012年2月刊


荒川直美の推す2冊


斉藤 孝著
『ピカピカ名詩』

 谷川俊太郎の『朝のリレー』や、金子みすゞの『こだまでしょうか』など、誰もが知っている詩を31点収録しています。驚くのが、とにかくカラフルなこと。子どものころ教科書で読んだ『朝のリレー』が、色文字で掲載されているのを見てカルチャーショックをうけました。黒い教科書体の字と、なにか根本的に違う気がします。
 そのうち、教科書もipadになって、詩の文字自体が自在に動くようになるのだろうななどといろいろと将来を想像してしまった1冊です。

本の画象

パイインターナショナル(1600円+税)
2011年11月刊
安藤忠雄著
『住宅』

 同世代の友人で「家を買う」人が初めて出現しました。家を買うなんて選択肢は自分には訪れないだろうなあと思っていたところ、目に留まったのがこの本です。安藤忠雄が手掛けた住宅は200件近く。写真と間取り図が載っている完全住宅作品リストや、施主からの手紙(コシノヒロコや佐渡裕、U2のボノなど)が掲載されていて面白いです。
 安藤忠雄の家に住むこと自体がチャレンジングで、生きてる感が増すんだろうなあと思いました。
本の画象

ADAエディタトーキョー(2400円+税)
2011年3月刊



2012年3月19日号(e船団書評委員会)

桑原汽泊の推す2冊

 
井上じろ句集
『東京松山』

 金平糖くらゐの春が来てをりぬ   じろ

 ふたをあけると、ペヤングソースやきそばの四角い箱にコンペイトウがぎっしり・・・

本の画象

マルコボ・コム(1800円+税)
2012年1月刊
荒木飛呂彦著
『ジョジョの奇妙な冒険』
PART W
ダイヤモンドは砕けない 吉良吉影


 早春やカルボナーラを巻き上げて 阪西敦子『俳コレ』
 スタープラチナ、時を止める能力を持つスタンド。JOJOは、2012.25th. Anv. です。

本の画象

集英社ジャンプリミックス(571円+税)
2011年11月刊


舩井春奈の推す2冊


佐藤真由美著
『恋する言ノ葉』
元気な明日に、恋愛短歌。

 「でもこれでよかったよね
一つのボタンかけ違えても知らない世界」
 恋愛の悩みは、いつの世にも付きもの。作者の恋愛短歌とエッセイ、それからうんと昔の人たちの恋愛の歌まで。共感できる恋の句も知らない気持ちの恋の句も。いろんな恋の形があるから、恋の歌もたくさん生まれる。

本の画象

集英社(500円・税込)
2011年10月刊
Ribbonesia著
リボンで作るクラフトアート
『リボネシアの世界』

 リボンリボン。平らなリボンからクルクルっとあら不思議☆
 生みだされしは、ウサギやパンダはじめ動植物たちの世界。アシカがヒョイとボールを回せば、ハチもブンブン飛ぶ。リボンのサイズや色を工夫してみたり、異素材を組み合わせてみたり、リボンの可能性は無限大?!
本の画象

マイナビ(1500円+税)
2011年12月刊



2012年3月12日号(e船団書評委員会)

赤石 忍の推す2冊

 
川村蘭太著
伝説のCM作家杉山登志』
―30秒に燃えつきた生涯

 「リッチでないのに、リッチな世界などわかりません。ハッピーでないのに、ハッピーな世界などえがけません。夢がないのに、夢を売ることなどは…とても。嘘をついていてもばれるものです」。この遺書を残して売れっ子CMディレクターの杉山は37歳で自殺する。エンストした車を押す二人の男の映像に「のんびりいこうよ、俺達は〜」の歌が被さり、「車はガソリンで走るのです」のナレーションが流れるモービル石油のCMは、アンチ高度成長のシンボルにも感じられた。当時は虚業に対する葛藤を自殺の因としたものが圧倒的だったが、本書では本来の鬱的気質が大きく作用していると結論づける。ともあれ私には、マラソンの円谷幸吉と同様なインパクトのある遺書であった。

本の画象

河出書房新社(本体1900円+税)
2012年1月刊
なかむらるみ著
『おじさん図鑑』

 売れているんだそうだ。何がおもしろいんだかと一読してみたが、やはり大して面白くない。若い女性にとってはきっと、おじさん族は動物園のカバぐらいに見えるんだろうな。よく見ると同業のおじさんが笑って載ってる。あれ、この人、俺より4,5歳上だぞ。おじさんではなく、もはやおじいさんに分類されるべきではないのか。そうか、若い女性には70くらいまでは「おじさん」か。数年前まで60間際の先輩達は「村の渡しの船頭さんは、今年六十のおじいさん。年はとってもお船をこぐ時は、元気いっぱい櫓がしなる」と飲み屋で悲しそうに歌っていたが、人生、そう悲観することもないなと、読後、正しいおじさんと成るべく決意を固めたのであった(そう甘くはないって)。

本の画象

小学館(1000円+税)
2011年12月刊


田中俊弥の推す2冊


黒田杏子著
新版
『俳句、はじめてみませんか』

 初版(1997)につづき、本書は、「第一章 あなたも俳句を作りませんか」「第二章 添削による実作教室」「第三章 みなさんの秀句と杏子のひとこと」「第四章 名句を読む」「第五章 知っておきたい俳句のあゆみ」から構成されている。第五章から順次さかのぼるように読むことを勧めたい。言語生活充実のために役立てたい。

本の画象

学研パブリッシング(1500円+税)
2012年2月刊
沼澤茂美・脇屋奈々代著
『金環日食』パーフェクトガイド

 大阪では、今年の5月21日午前7時半ころ「金環日食」が見られ、11月14日には、オーストラリアのケアンズあたりで、午後6時半ころ「皆既日食」が見事に見られるということだ。わたしたちの地球は、太陽系にあること、月を衛星とする惑星として存在していることをしかと感じたい。日食メガネ付きで、コンビニエント。
本の画象

成美堂出版(1000円+税)
2012年3月刊



2012年3月5日号(e船団書評委員会)

三好万美の推す2冊

 
山西雅子著
『花の一句』

 ふらんす堂ホームページに一年間連載されたコラム。毎日季節の花の句を鑑賞文とともに紹介している。その日の日付で読むもよし、自分や家族、友人の誕生日、節目の日のものを読むもよし。その時々の気分で気軽に読んで楽しめる。

本の画象

ふらんす堂(1714円+税)
2011年9月刊
津沢マサ子著
『穹天譜』

 既発表句、最新句、津沢雅子論、自身による俳句論、と多彩な内容。枯野(荒野)、昏さ、夏、炎天、など、津沢マサ子の俳句の中に繰り返される言葉が、詩の断片のような強いイマジネーションを生んでいる。「私が無季で俳句を作る理由」を読むと、著者の確固とした作句姿勢がわかる。

本の画象

深夜叢書社(2500円+税)
2011年11月刊


朝倉晴美の推す2冊


俵万智著・奥宮誠次写真
『風が笑えば』

 万智ちゃん、ただ今、息子ちゃんと沖縄の離島にて生活中。そうなった経過もエッセイにて収録。写真と韻文のコラボ。目新しくもないし、私は苦手でしたが、写真も短歌も心に入ってきました。なぜ?やっぱり、写真も短歌も力ある作品だから。

本の画象

中央公論社(1500円+税)
2012年2月刊
広谷鏡子著
『胸いっぱいの愛を』

 地方の文武両道を掲げる公立高校を描く。野球部を軸に、なりゆきマネージャーである主人公の恋や友情、家族の問題も。
 高校生たちの姿に、瀬戸内の潮風と、明るい日差しを感じながら。実は、私の母校がモデル。著者は9コ上の先輩です。
本の画象

徳間書店(1500円+税)
2012年1月刊



2012年2月27日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊


 
月刊「俳句界」2012年1月号

 お馴染みの俳句誌の一冊。1月号の特集は「俳句史にみる表現革命」というもの。はじめに表現革命史なる年表があり、その後、口語表記、水原秋桜子、山口誓子、高柳重信、伊丹三樹彦、坪内稔典、月刊ヘップバーンと小論が編まれている。あっという間に読めてしまう表現史というのは、少し寂しいものだが、見通しがきくという点ではよかった。

本の画象

文學の森(900円+税)
2012年1月刊
八柳李花詩集
『サンクチュアリ』

 久しぶりに詩集を買った。硬質な言葉の織物を丹念に読んでいく感覚が味わいたかったからだ。
 現代詩の潮流がどうなっているかは知らないが、何となく合う詩人の言葉に出会えると嬉しいものだ。おそらく万人向けではない。「内耳が潤っていくなかで/ふかぶかと持ちあがる頭がある、/サンショウウオの背骨の輝きに/ぬれた愛は虹を破りながら/瑪瑙のなかに血族をたどっていく、/いつしか陸にあがるまえに/あまたの閏月を孕んだ。」こういうのが好きという人にお勧めします。

本の画象

思潮社(2200円+税)
2011年10月刊


木村和也の推す2冊


宮坂静生著
NHK俳句『昭和を詠う』

 長野の地に腰を据えて、かつて地貌を眺めたように、昭和という時代を俳句を通して慈しみながら描いていく。伝統俳句から前衛俳句まで、昭和俳句を集めて昭和にコミットしようとする姿勢は、ややオーソドックスにすぎるかもしれないが、あくまでもポジティブである。

本の画象

NHK出版(1200円+税)
2012年1月刊
佐伯啓思著
『反・幸福論』

 「反幸福論」と言っても、幸福を否定するわけではない。現今の幸福の条件とされるものへの痛切な批判である。自由や人権の拡大で人は幸福になれたのか。現代が喪失してしまった死生観を起点に幸福というものの意味を問い直す。

本の画象

新潮新書(740円+税)
2012年1月刊



2012年2月20日号(e船団書評委員会)

武馬久仁裕の推す2冊


辺見 庸詩集
『眼の海』

 1月に出た『瓦礫の中から言葉を―私の〈死者〉へ―』で、辺見は、この度の東日本大震災では一人として「ふとどきで不謹慎な言葉」を発することはなく、言論を弾圧する敵は「わたしたちひとりびとりの内面に棲んでいる気がいたします」と言っている。ここを読み、私は、核をいかに俳句で表現するかについて書いている時に、一瞬筆がゆらいだことを思い出し慄然とした。この詩集『眼の海』は、内面に棲む敵に対する辺見の回答である。

本の画象

毎日新聞社(1700円+税)
2011年11月刊
チェスター・リーブス著/服部圭郎訳
『世界が賞賛した
日本の町の秘密』


 首都圏で生活した体験と専門の文化景観史がコラボして書かれたママチャリ文化論である。外の目で見ると「凡庸な買い物『自転車』」が普及した日本は、素晴らしい世界なのである。自転車でこと足りる生活圏、自転車町内。自転車を駅の駐輪場に置けば、公共交通機関でどこへでも行ける交通システム。エネルギーを大量消費しない持続可能な社会への道を日本は指し示していると言う。自分のことはこんなにも見えないものかと、思い知らされた本である。

本の画象

洋泉社新書(760円+税)
2011年12月刊


鈴木ひさしの推す2冊


小谷津孝明著
『〈こころ〉で
視る・知る・理解する』


 この本は認知心理学の本である。詩歌や小説、映画を、なぜ、面白いと感じるのか。なぜ、共感するのか。具体例としてあげられるのは、三浦綾子『塩狩峠』、川端康成『千羽鶴』、古井由吉『影』、『万葉集』、『藤富保男詩集』、杉山平一の詩集『ぜぴゅろす』、久保田万太郎の俳句、蕪村・芭蕉の俳句、映画『となりのトトロ』・・・。何事も、時々、観点を変えて、整理してみることも必要である。

本の画象

放送大学叢書(1619円+税)
2011年12月刊
石川九楊著
『説き語り日本書史』

 この本は、二つの認識に支えられている。日本語は二重複線言語(先史時代倭語の上に中国語がのしかかり、「中国語+新生倭語」の構造が成立した)であるということ。もう一つは、日本の書史が、中国3500年の中国書史に楷行書の時代から途中乗車し、近代化によって、東アジア書史から途中下車したということ。書になじみのない人にも読む気にさせる本である。

本の画象

新潮選書(1000円+税)
2011年12月刊



2012年2月13日号(e船団書評委員会)

荒川直美の推す2冊


長田 弘著
『詩の樹の下で』

 「山路の木」「手紙の木」「水辺の木」などの木についての詩と「セザンヌの樹」「クリムトの樹」など、樹の絵についての詩、そして、震災についてなど39篇が収録されています。
 あとがきを読んで、著者が福島市出身だったこと、偶然にも震災と同時期に生死をさまよう大手術を受けていたことを知りました。
 木のように時間をかけて生きる。身の回りの木がどれも愛おしく感じられる一冊です。

本の画象

みすず書房(1800円+税)
2011年12月刊
岡田好弘作/神谷 圭介文・絵
あたらしい
『みかんのむきかた』2

 みかんの皮に線を書いて、切込みを入れ、それをむくと、ティラノサウルスやエビができあがります。…とあるのですが、不器用な私は難易度が低いものがやっとひとつ作れた程度。子どもの頃、立体を展開図にする問題が全然できなかったことを思い出してしまいました。
 子どもと大人がいっしょに挑戦してなんとか完成するくらいの難易度ですが、おもしろいので家族でぜひ挑戦してみてください。

本の画象

小学館(1000円+税)
2011年10月刊


塩谷則子の推す2冊


岡井 隆著
『わが告白』

 うつくしき女と会いし中欧のカフェテラスより現在(いま)が生まれつ(歌集『宮殿』・91年)89年10月二人が出会ったとき岡井隆は61歳、妻の恵理子さんは29歳。恵理子さんとの現在の出来事を描きつつそれまでの3人の女性との婚暦を語る。出来事が面白い。Qというストーカーに訴えられる話や「岡井さんしよう」と天皇皇后が歌を作るという宮内庁御用掛としての話など。結社を教団化しまいとした誇りも。日記体の散文詩。

本の画象

新潮社(1900円+税)
2011年12月刊
鈴木志郎康著
『結局、極私的
ラディカリズムなんだ』


 初出は79年〜06年。ジョナス・メカス、小川紳介、木村伊兵衛、つげ義春論と詩論。真ん中に79年晩秋に15日間連続で撮影した自作自演の16ミリ日記映画『15日間』(93分)の全スクリプト。日々の出来事をカメラに向かって語る。「書いている自分の肉体的心理的状態を同時的に言葉にすることはできない。」しかしカメラは出来事を語る表情を映す。映像と言葉との違いは何か。極私的という筆者の言葉が新鮮だった60年代末はラディカル(根源的)さを求めた時代だった。懐かしい。
本の画象

書肆山田(2800円+税)
2011年11月刊



2012年2月6日号(e船団書評委員会)

桑原汽泊の推す2冊


えひめ発 百年の俳句
郷土俳人シリーズ8

『芝不器男 富澤赤黄男』

   妻よ
玉ねぎが白くて風邪をひいてゐる 赤黄男

   赤い月
赤い月をみなをとこをとりこにせり 赤黄男

モノローグ。しずけさが、すてきだ。  

本の画象

愛媛新聞社(4000円+税)
2011年9月刊
累計41万部のベストセラー第3弾!
最新版『爆笑 テストの珍解答 500連発!!』vol.3

「私の頭の中に大きなパイナップルを感じます」
およそ2万光年・・・

「I feel a heavy pain in my head.」
Won't you please, please help me ♪

本の画象

TETSUJINSYA(476円+税)
2011年10月刊


舩井春奈の推す2冊


週間俳句編
『俳コレ』

 「ハイコレ」と言って貸して下さったのがこの本だった。その名も『俳コレ』。
19歳から77歳までの幅広い年齢層の俳人が読んだ俳句のコレクションがずらりと並ぶ。若い新進気鋭な俳人に絞られていないところに親近感が沸く。そうなのだ。俳句ってそういうものなのよね。

本の画象

邑書林(1800円+税)
2011年12月刊
加藤碵一・秋山正博著
『賢治と鉱物』
文系のための鉱物学入門

 石っこ賢さん。これ、宮沢賢治のあだ名なのだ。
 石頭ではなくて鉱物好きな賢さんということ。
 その賢さんの文学作品に出てくる鉱物を集めて紹介してくれているのがこの書。
 賢さんが教えるのが上手だったと言われているように、この書も分かりやすく鉱物の世界を紐解いてくれている。

本の画象

工作社(3200円+税)
2011年11月刊



2012年1月30日号(e船団書評委員会)

赤石 忍の推す2冊


荒川洋治著
『忘れられる過去』

 「キルギスの草原に立つ人よ/君のありかは美しくとも/再びひとよ/単に/君の死は高低だ」という一文を含む詩「キルギス錐情」に、初めて詩が高さを持つことを知ったような気がする。同時に青野季吉や真山青果等、色を含む人名を多用したことに、当時、精神を理解せず表面をなぞっているだけと酷評されたことも覚えている。だが本書を読むと、本・作家に対する膨大な知識がその裏に根ざしていることが分かるし、柔らかな読書に対する姿勢がそれらを支えていることも理解できる。講談社エッセイ賞本の文庫化。少々気障だが、キース・ジャレットのソロピアノCD等をバックに一読すると、嫌のことを忘れ至福の時間を得ること、それには間違いはない。

本の画象

朝日文庫(本体780円+税)
2011年12月刊
加地伸行著
『沈黙の宗教―儒教』

 儒教。孔子、道徳、韓国・中国の一族礼拝、江戸武家社会のイデオロギー等、断片的な知識があるだけで宗教と感じたこともない。確かに本書の言う通り、輪廻転生を死生観に持つ仏教なら墓も位牌も彼岸参りも必要ないし、先祖も転生し、他人もしくは別世界にいる訳で大事にすることもない。日本仏教は大衆化を図るために、儒教の招魂再生、祖先礼拝等の思想を巧みに取り入れ、我々は無自覚にその儒教の教えを実行しているのだそうだ。儒教は家族による家族のための宗教行為であるゆえ、教団も集会所も持たずひたすら沈黙していると著者だが、絶対神を持たない日本人にとって西洋個人主義は、恐れをしらない利己主義な人間を育てるだけ等、刺激的な示唆に満ちている。

本の画象

ちくま学芸文庫(1200円+税)
2011年4月刊


田中俊弥の推す2冊


高橋睦郎著
『詩心二千年』
スサノヲから3・11へ

 国語の先生としての仕事を営んで、すでに三十年以上。小林秀雄の古典評論に魅せられ、いくばくかの古典文学の本を読んできた。そのなかには、山本健吉の『詩の自覚の歴史』(1979)もある。ホンモノの教養が問われている今日、本書に展開されたスリリングな詩史・詩心論が、ニッポンのコモンセンスとなる日を切に希求したい。

本の画象

岩波書店(3400円+税)
2011年12月刊
伏木暢顕著
「発酵食堂・豆種菌」の
『麹の料理』

 「麹」とは「米や麦、大豆などの穀物に火を入れて、種麹(通称、もやし)を振りかけ、麹菌(=麹カビ)を繁殖させたもの」。お酒やみそやみりんなどに使われているのが「ニホンコウジカビ」で、別名は「黄麹菌」。世界でも有数の分解力をもつ酵素を生産するのだ。麹の力はニッポンの力。ホンモノの味へ近づく実践をはじめよう。
本の画象

日本文芸社(1200円+税)
2011年9月刊



2012年1月23日号(e船団書評委員会)

三好万美の推す2冊


町田 康著
『残響』
中原中也の詩によせる言葉

 「詩によせる言葉」とあるが、よく見かける鑑賞文や作品論の類ではない。中原中也の詩の世界を受けて、著者独自の新たな散文詩のような文章が展開されている。ウェブマガジンに連載されていた部分が多いためか、ネット世代を意識した若者言葉が時々見られるのが特徴。中也の詩によせる言葉、自分ならどう書くか・・・。感覚を研ぎ澄まし、ふさわしい言葉を紡いでいけるだろうか。

本の画象

NHK出版(1400円+税)
2011年7月刊
三山 喬著
『ホームレス歌人のいた冬』

 温かき缶コーヒーを抱きて寝て覚めれば冷えしコーヒー啜る (ホームレス)公田耕一 2008年の暮れから翌年夏まで、朝日新聞歌壇にその短歌が掲載され、話題となった歌人公田耕一。突然投稿が途絶えた彼を案ずる投稿仲間は全国に及び、著者のように雑誌連載で追跡調査する者まで現れた。ホームレスであるが故に注目されたことは否ないと言っているが、淡々としていながらも、嘘のない澄んだ言葉で詠われる公田氏の短歌に力があるからだろう。それだけに、選外も含め全ての公田氏の短歌をまとめて掲載していないのが惜しい。

本の画象

東海教育研究所(1800円+税)
2011年3月刊


朝倉晴美の推す2冊


「俳句あるふぁ」増刊号
『わたしの一句』
現代300俳人書き下ろし自句自解

 300人の現代俳人のプロフイールとミニエッセイ付き。ついでにお顔写真も。とっても便利な一冊。現代俳句界の人間関係もなんとなく頭に入る感じ。お恥ずかしながら、お名前とお顔と俳句が、私の頭のなかで繋がっていない方々が、すっきりいたしました。

本の画象

毎日新聞社(1500円)
2012年1月刊
杉浦 由美子著
『20代女性が
セックスしてない』

彼女たちはなぜ男に求められない?

 そうか…、20代の女子はそうなのか…ということは20代前後の男子もそうだということ。本書では、本気ではない人とは一線を超えられるが、恋愛の対象の相手とは「できない」女子の本音を論じる。理由の一つに彼女たち独特の自尊心がある。ちょっと寂しい現実。恋で泣くのも悪くないのに。
本の画象

角川oneテーマ21 新書(760円)
2011年12月刊



2012年1月16日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊


NHK・NHKサービスセンター編
『週刊 ブックレビュー』
20周年記念 ブックガイド

 NHKの週刊ブックレビュー20周年を記念して発行された一冊。故・児玉清氏の思い出を語る部分が多く、追悼を意識したつくりになっている。合評がよい番組であるが、この本では、様々な著名人のお薦めの本が紹介されている。

本の画象

NHKステラMOOK(980円)
2011年12月刊
アルボムッレ・スマナサーラ著
『小さな「悟り」を積み重ねる』

 人間の小ささを肯定的に捉え、いかに生きるかをわかりやすく説いた一冊。人生は紙コップ程度のもの、と言われ何だか楽になった。力を抜いて生きるためには、能力を上げればよいという。スリランカ上座仏教の長老が説く話には、説得力がある。

本の画象

集英社新書(700円+税)
2011年11月刊


木村和也の推す2冊


岸本尚毅著
『生き方としての俳句』
句集鑑賞入門

 俳句がその人の生き方や人生と不可分に結びついていた幸福(?)な時代の俳句を、「個展」としての句集によって振り返って見ようとする試みである。虚子を取り巻く俳人達の中で、今まであまり取り上げられることの少なかった俳人に焦点が当てられている。

本の画象

三省堂(1800円+税)
2011年12月刊
植木雅俊著
『仏教、本当の教え』
インド、中国、日本の理解と誤解

 インドで生まれた仏教が中国、日本と伝わる過程で、どのように変容してきたか。その変容は文化の差であると同時に、教典の誤読からも生まれているとして、サンスクリット原典から読み解く。思想家、思惟する人としての釈迦像が浮かび上がる。
本の画象

中央公論新社(800円+税)
2011年10月刊



2012年1月9日号(e船団書評委員会)

武馬久仁裕の推す2冊


小川双々子著
『非在集』

 2006年1月17日に83歳で亡くなった戦後を代表する俳人の一人、小川双々子の最終句集である。全796句。巻末に双々子の2005年12月2日から2006年1月6日までの句帳が影印されている。最後の句は「屋根の雪せり出し雫く人の世は」である。降り積もった雪は融けて徐々に屋根からせり出し、雫となって尽きることなく堕ちて行く。それはどうしようもないことなのだ。この句の次には、「十二月二十八日/いよいよ押し詰り年の終りへ」とあった。

本の画象

木偶坊俳句耕作所(非売品)
2012年1月刊
山崎十生著
『恋句』

 恋の句を作りたい中高年俳人必読である。あらゆる恋の形が表現されており、かっこうのお手本集だ。まさしく「この上もなく薄氷の恋激し」であり、「遂げられし恋など邪道青き踏む」である。若い女性へのほのかな思いを詠った官能的な句もある。「美しき膕水を打ってゐる」。夏の日に、水を打っている短パンの女性に寄せた句だ。後ろ姿、しかも「ひかがみ」に着目した所に作者の技倆が光る。そして結論。「ほんたうの恋は片恋霏霏と雪」。

本の画象

破殻出版(非売品)
2011年10月刊


鈴木ひさしの推す2冊


三浦しをん著
『あやつられ文楽鑑賞』

 国立文楽劇場で初めて文楽を観た時、太夫、三味線、人形、人形遣い、黒子、全てが舞台上に見えて、字幕まで流れ、「異様」に感じた記憶がある。私の視線は泳ぎ、公演の長さに一眠りしてしまった。が、その後、いつの間にか手元の床本が増えていった。文楽を愛する人の本、文楽をまだ遠巻きにしている人のための本。三浦しをん『仏果を得ず』(双葉文庫)も読めば、さらに楽しめる本である。

本の画象

双葉文庫(600円+税)
2011年9月刊
内山 節著
『時間についての十二章』
哲学における時間の問題

 「関係が主体の役割をはたしながら個体を生成している」「いかなる関係の創造が、どのような時間を生み出しうるのか」というように「関係」という言葉がこの本のキーワードである。この本の初版から18年後、3.11後に書かれた内山節『文明の災禍』には、「地震、津波、原発事故という不幸な経験は、確かな生は確かな関係とともにあるのだということを私たちに教えた」とある。
本の画象

岩波書店(2600円+税)
2011年11月刊



2012年1月2日号(e船団書評委員会)

舩井春奈の推す2冊


宮地 裕・甲斐睦朗監修
「日本語学」 2011年12月号
(第30巻 15号)


 国語教師の知人友人達が俳句について話し出すと、決まって俳句指導における困難さに話が終結していた。
 今月号の「日本語学」では学校教育における俳句が取り上げられている。教育系ではなく、日本語学の雑誌に取り上げられていることも意味があるだろう。

本の画象

明治書院(895円+税)
2011年12月刊
MOE編集部編
『絵本美術館のある旅』

 絵本を主体にした美術館は少ない。
 でも、心から落ち着く。優しい気持ちになる。
 それは絵本の持つ力というものが、美術館の環境づくりに影響を与えるのだろう。
 直接、絵本美術館へ行きたいけれど、物理的に叶わないとき、この本を見ているだけでもほんわかとなる。

本の画象

白泉社(1260円・税込み)
2011年6月刊


塩谷則子の推す2冊


五味文彦著
『西行と清盛』
時代を拓いた二人

 西行は23歳で出家後、その繁栄が都に伝えられていた平泉など奥州を修行の場とした。帰京後東国の情報を得ようとして、また歌枕を見てきた歌人として尊重された。時代を読んだ上での修行。
 武芸や蹴鞠にも秀でていたのに出家遁世したのは、積極的に生きようとしたからという説に納得させられる。清盛とは1118年生まれの同い年。
 資料を駆使、清盛と比較して描かれた西行論。

本の画象

新潮社(1500円+税)
2011年11月刊
渡辺京二著
『未踏の野を過ぎて』

 著者は47年、17歳で大連から熊本に着のみ着のままで引き揚げて来た。6畳一間7人で暮らす。これらの経験から、長期的なスパンでものごとを考えようという警醒の書。「本当に世の中、変りますかな。」と冷静だが。「社会に役立とうが役立つまいが、人はすべて、生きよ、おまえはそれだけで意味があると告げられている。」時々この一節を思い出そう。天が地が、鳥が樹が花が告げている。
本の画象

弦書房(2000円+税)
2011年11月刊




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