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2015年6月29日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの推す2冊

アーサー・ビナード著
『もしも、詩があったら』

 「これしかない」と言われたら、「非常口」から出て、「もしも・・・」とあれこれ考えてみるのもいいかもしれない。著者は詩人で、タイトルも「もしも、詩・・」だが、話題は時代そのものである。「非常口」から出ると、そこには意外とたくさんの人たちが集まっているかもしれない。そこで、出会った人たちとお互いに声をかけ合うのだ、「もしもし・・」と。

本の画象

光文社新書(860円+税)
2015年5月刊
佐藤 優著
『知性とは何か』

 「大らか」という言葉はどこに行ったのだろう。思うままに世界を理解しようとする「反知性主義」は「大らか」とはほど遠い。「反知性主義」を克服するには、主に読書によって知性を復権することだ、というのが著者の主張。知性を保ち育てるには個人の努力しかないのだろうか。著者の本はいつも読書案内でもある。今回は、柄谷行人『遊動論』、藤原智美の本などを教えられた。

本の画象

祥伝社新書(820円+税)
2015年6月刊


若林武史の推す2冊

穂村 弘著
『ぼくの短歌ノート』

 穂村弘による有名無名の短歌を題材にした短歌手ほどきの本。多くの章が「◯◯な歌」という感じでまとめられている。例えば「高齢者を詠った歌」、「会社の人の歌」。はたまた「ちやらちやらてふてふ」、「システムへの抵抗」など内容は多岐にわたる。軽み、おかしみ、は今、短歌にある。そう思う。

本の画象

講談社(1500円+税)
2015年6月刊
中澤系著
『中澤系歌集 uta0001.txt』

 「3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって」が、中澤系の歌で初めに知った歌。中澤系がすでに37歳で亡くなっていたことは、この本を読むまで知らなかった。初期の作品には若々しい歌も目立つ。「ぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわ」などが面白かった。

本の画象

双風舎(1900円+税)
2015年4月刊



2015年6月22日号(e船団書評委員会)

塩谷則子の推す2冊

大阪文学学校講演集
(開校60年記念出版)

『詩と小説の学校』

 気にいった台詞や場面をメモする、一行のために資料を探すなど、後輩向けに実作者の心得を話す卒業生朝井まかて。別れ際ポケットに蜜柑を入れてもらい、「それぐらいの何かを欠いて生きている」とやっと欠如に気づく、その遅れてやってくる感情に興味があると語る小池昌代。9つの講演と対談はどれも面白い。

本の画象

編集工房ノア(2300円+税)
2015年3月刊
ダーグ・ソールスター著/村上春樹訳
『Novel 11, Book 18』

 32歳の時「冒険をしなくてはという強迫観念」から妻子と中央政府内での仕事を捨て、女を追い地方都市で生きる男。14年後に別れる女、男と同居する大学生の息子、共に「何かしらまわりの人をうんざりさせるところ」がある。男も驚くべきことを実行する。時に痛々しくみえる登場人物に惹きつけられる。92年刊、ノルウェイの小説。

本の画象

中央公論新社(1700円+税)
2015年4月刊


宇都宮哲の推す2冊

吉本隆明著
吉本隆明〈未収録〉講演集5
『イメージ論・都市論』

 戦後思想界で幅広いジャンルで思索・言論活動を展開し、数多くの講演をこなした著者の〈未収録〉講演集の第5巻。評者が20年前に携わった企画で講じてもらった「京都論」が収められており、久しぶりに再読。京都の持つ『伝統性とモダニズムの二重性』についての論点は今も京都が抱え続ける課題を提起している。他につくば、福岡、月島などの「都市論」は、独特の歴史認識と感性そして入念な下調べによって、それぞれの特質を抽出していて興味深い。

本の画象

筑摩書房(2200円+税)
2015年4月刊
澤田瞳子著
『若冲』

 江戸中期、精緻で彩色鮮やかな動植物画や大胆な筆づかいで知られ、京洛の画壇で活躍した奇想の絵師・伊藤若冲の生涯を描いた連作時代小説。同時代に生きた応挙、大雅、蕪村と錚々たる人物を各話ごとに登場させ、巧みに虚実織り交ぜながら、若冲の絵画制作への執念と当時の活気あふれる時代風景を迫力ある筆致で活写しており読み応え十分。ただ、蕪村の人物像の描き方がいささか物足りないのが残念。俳諧師の一面も掘り下げてほしかったのだが。

本の画象

文藝春秋(1600円+税)
2015年4月刊



2015年6月15日号(e船団書評委員会)

藤田 俊の推す2冊

笹公人歌集
『念力家族』

 にんげんを背後霊ごと詰め込んで
  朝の電車はきらきら走る
 念力等特殊能力を持つ家族を詠んだ歌集。最近ドラマ化。五感や言動が軽々と越境し、思念が具象化される様を写生(空想)している。五七五七七で状況を設定し出来事を発生させる。最終章にいたっては五七五が全部同じ。作者の内面の表れだろうが、三人称で物語になっており楽しく読める。

本の画象

朝日文庫(778円・税込)
2015年5月刊
イーピャオ原案・小山ゆうじろう著
『とんかつDJアゲ太郎 1』

 とんかつを揚げることと、DJとしてクラブを盛り上げることは似ている。目と耳でとんかつの揚がり具合をみることは、場や客をみて選曲しタイミングを図ることと同じ。とんかつ屋とDJの二足わらじには相乗効果が。突飛だが取っ付きやすい発想で楽しく読めるマンガ。  「とんかつ俳人」がいるとしたらどんな俳人だろう。

本の画象

集英社(626円・税込)
2015年2月刊


武馬久仁裕の推す2冊

伊藤政美句集
『天音』

 散る桜見えてより風届きけり
 濡れてから人動き出す花の雨
のような姿かたちの美しい句もよいが、私はやはり「夜店にゐた少年いまも虫を飼ふ」のような句を好む。この句は一句全体を夜店のイメージが蔽っている。夜店で買った虫をいまも飼う少年は、いまも、そしてこれからも「夜店にゐ」るのだ。少年の情念が切々と伝わってくる佳句である。著者は「菜の花」主宰。

本の画象

菜の花会(2500円+税)
2015年5月刊
半藤一利・保坂正康・御厨貴・磯田道史著
『「昭和天皇実録」
の謎を解く』


 著者達は、「実録」の個々の記述の裏にあるもの、即ち書かれていない事実を著者達の知っている別の資料で埋め、「真の実録」にしようとしている。少しでも生きた昭和天皇に迫ろうという意図はとても面白い。しかし、もっと面白いことは、この本自体の行間を読むことである。彼らの視点の限界が見えてくるのである。以前紹介した『昭和陸軍全史1・2』と合わせて読むことを勧めたい。

本の画象

文春新書(880円+税)
2015年3月刊

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2015年6月8日号(e船団書評委員会)

静 誠司の推す2冊

近藤大生著
『現代俳句断章』

 ざっくりとした題名だが、内容は有季定型論、虚子の評価の点検、山頭火&放哉そして自由律俳句についての整理、この3点。これが期待値以上に面白かった。例えば、過去から現在にかけての虚子評を並べて虚子を囲い込んで、最終的にいたぶるといういじめっ子的手口や、自由律を無理やり定型に変換してしまう発想などがユニーク。

本の画象

風詠社(1500円+税)
2015年3月刊
吉本隆明著
『吉本隆明 最後の贈りもの』

 詩歌について語った未発表の談話集。「俳句のゆくえ」という章もあり、「俳句とは主観性と客観性が一句の中に入っていることが重要だ」とか。しかしいささか断定的過ぎて、十分にその意を汲むには至らず。短歌についての段もしかりで、これが未発表であったのは必然的で、無理に発表する必要はなかったのではと、今回は「推さない」一冊。

本の画象

潮出版社(1600円+税)
2015年3月刊


紀本直美の推す2冊

川浦良枝/絵と文
しばわんこの
『和の行事えほん』

 人気絵本「しばわんこ」シリーズの最新作は「和の行事」。12月でクリスマスが紹介されていますが、クリスマスは立派な和の行事なんですね! 毎月こんなに楽しい行事があるのは、先人たちが生活を豊かに送る努力をしてきたおかげだとしみじみ実感。今年はひとつひとつの行事を大切に楽しもうと思います!

本の画象

白泉社(1300円+税)
2014年12月刊
クリス ウォーメル/さく・え
小風 さち/やく
『おおきな3びき
ゆうえんちへいく』


 ぞうのおばさん、せいうちのおばさん、くまのおじさんの3びきが主人公のユーモラスな絵本。3びきが無事にゆうえんちにいけるのかやきもきしてしまいます。どの世界でもおばさんは怖いものなし!何をやっても無敵! そして、おじさんは何かとルールや「〜しないといけない」気持ちにしばられてたいへんですね。

本の画象

徳間書店(1500円+税)
2015年2月刊



2015年6月1日号(e船団書評委員会)

田中俊弥の推す2冊

たにかわ・しゅんたろう著
『すきノート』

 谷川俊太郎が安野光雅や大岡信や松居直らとともに、小学1年生のための理想の 国語教科書として編集に取り組んだ『にほんご』(福音館書店)は、1979年に刊 行された。コミュニケーションということから、「にほんご」という「ことば」 のありようを開示した画期的な一冊であった。本書は、その進化形。オシャレで、 愛おしい。

本の画象

アリス館(1300円+税)
2015年4月第6刷
ラズウェル細木著
『旬の魚とうまい酒を楽しむ』【春夏編】

 「目には青葉」と素堂の句を口ずさんで、急に鰹を食べたくなって、なじみの居 酒屋にいそいそ足を運ぶのだが、日本酒に比して旬の魚についての知識は、われ ながら実に貧しい。市場や商店街と離れて暮らしているせいかもしれない。酒飲 みたるもの、もっともっと旬のものに貪欲たるべし。そんな気持ちにさせられる、 楽しい一冊。

本の画象

綜合図書(650円+税)
2015年4月刊


太田靖子の推す2冊

高銀・石牟礼道子著
『詩魂』

 二人の共通点は、幼少期からの海への憧れ。夕方、海辺に立ち水平線を眺め、誰かがやって来るのではないかと期待を膨らませた高。夜中にひとりで海辺に行き岩に腰かけて歌いながら、未来を呼んでいた石牟礼。世界を共有できた二人の話題は、歩んできた人生、現代人・文明への歎き、何のための文学か、詩の使命など。

本の画象

藤原書店(1600円+税)
2015年3月刊
俳句四協会編
『東日本大震災を詠む』

 「片陰の一枚も無き津波跡」「『ガンバレ』はもう飽きました武者幟」被災しなかった我々こそ読みたい一冊。この句集を読んで大震災に思いを馳せ、被災者のことを考えたい。これらの句を頭のなかにいつまでも刻み付けておかなければならない。二度と同じような句が生み出されることのないように願いつつ。

本の画象

朝日新聞出版(1200円+税)
2015年3月刊



2015年5月26日号(e船団書評委員会)

赤石 忍の推す2冊

野上 暁著
『子ども文化の現代史』
遊び・メディア・サブカルチャーの奔流

 著者は1943年生まれで元小学館の名物編集者。今は新聞・雑誌で児童文学・児童文化論を展開する評論家でもある。本書は戦後70年にわたり、押し付けられた「こうあるべき」という児童文化ではなく、子どもたち自身が選び育てた文化、つまりサブカルチャーをまとめたもの。ご自身が撮った写真を含めて、しかしまあ、よく集めたなあと思う。偉大なる研究者は畢竟、偉大なる「オタク」に相違ない。

本の画象

大月書店(2000円+税)
2015年3月刊
山中 恒著
『靖国の子』
教科書・子どもの本にみる靖国神社

 「靖国の子」とは、戦死して東京・九段にある「靖国神社の神」に祭り上げられた将兵遺族の子どもたちを指す。日清・日露の戦争を経て昭和初期の日本国は、教科書や児童書等を通して「靖国の子」になることこそが、「素晴らしき児童」であるとする思想教育を徹底的に施した。だが日本国とは一部の政治家や軍人だけを指すのではなく、大部分の国民がその方向を支持したということ。今また、その足音が大きくなってきている。

本の画象

大月書店(1600円+税)
2015年3月刊


舩井春奈の推す2冊

長田 弘著
『長田弘全詩集』

 詩を書くとは、一篇一篇の詩を書くことであるのと同時に、一冊の詩集にむかって書くということ。そうした姿勢をつらぬいてきて、初めての全詩集をつくるなかで実感したのは、魅惑がちからでなければならないのが詩集という本なのだということでした。
 それから、この全詩集が刊行されたちょうど十日後に作者がご逝去された。

本の画象

みすず書房(6000円+税)
2015年4月刊
西牟田靖著
『本で床は抜けるのか』

 ドキリとするこの題名。床が抜けるかどうかはともかく読書家なら避けて通れないのではないだろうか、本の置き場所問題。その答えは潔く分かってしまう。実際に床が抜けた人を探し出したり、一級建築士に床が抜けない本の積み方を聞いたり。かつて井上ひさしがこの問題をおもしろがったように、著者も楽しんで執筆したよう。

本の画象

本の雑誌社(1600円+税)
2015年3月刊



2015年5月18日号(e船団書評委員会)

千坂希妙の推す1冊


辻 惟雄著
『あそぶ神仏』
江戸の宗教美術とアニミズム

本の画象

 著者は美術史の研究家。従来あまり注目されてこなかった近世仏教美術の遊戯性やアニミズムに着目した新しい視点を提示した。奇想の画家、曽我蕭白や伊藤若冲の個性を取り上げて後のブームのきっかけを作ったのもこの著者だった。また、円空や木喰の微笑する木彫りや白隠、仙香A風外らの禅画とも俳画ともつかぬ作品を、単に美術として観るのでなく、彼らの純真なユーモアの根底にある内面にも迫ろうとした。木喰を最初に発見したのは柳宗悦だが、稚拙と見られがちだった民芸同様,上手い仏師や絵師になることを拒否した「野の僧」の遊び心に共鳴する。法の極みは無法なのだろう。著者は「円空仏は現地で見なければ本当に理解できない」と述べている。

ちくま学芸文庫(1200円+税)
2015年4月刊


香川昭子の推す2冊

谷川俊太郎編
『辻征夫詩集』

 〈三つばかり〉という詩のなかのこんな一節。
 ‖酒でしかふさげない‖ 隙間があるんだと‖詩人はいった‖ 部屋のすみは‖ 洗濯物の ‖こだかい丘であった‖酒でたりないぶんは‖ あれで隙間をふさぐのだろうか‖
はじめて知った詩人だけど、ひまひまにめくって楽しんでいる。

本の画象

岩波文庫(560円+税)
2015年2月刊
鷲田清一著
『老いの空白』

 〈老い〉について考える一冊。たとえばこんな文に出合う。「生産性とか効率性などを軸とする社会のなかでは、(無用)とかせいぜい(補完)(許容)の対象として位置づけられてきた人間の(営み)、つまりは(想像力、遊び、交わり、愛、夢想、ケア、英知、創造性、無為)がいま以上に豊穣で重層的な相貌をもって現れてくるような社会、それが〈老い〉をめぐる現実のなかで賭けられている。」
本の画象

岩波現代文庫(1020円+税)
2015年1月刊



2015年5月11日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊

松尾スズキ著
『現代、野蛮人入門』

 閉塞感に満ち溢れる今日、自意識をいかに扱うかという質問に対する松尾スズキ氏なりの回答。鍵は、想像力。想像力を最大限に駆使する演劇の世界からの現代日本人に対する助言と捉えられるだろうか。野蛮人という言葉がなんとも懐かしい。上手いが、ちっさく生きている人間が多くなっているような気がする今日、西原理恵子の本に通じる爆発力を感じさせる一冊である。

本の画象

角川SSC新書(780円+税)
2014年12月刊
内田 樹編
『日本の反知性主義』

 9人の論客による「反知性主義」をテーマにした論説、随想集である。執筆陣の何人かの方の書き出しに「なかなか書き出せなかった」といった一文が付されているところにこのテーマの扱いづらさが現れているのではないかと思う。今日の世相を言い表すために反知性主義というワードが掲げられたためか、突破口らしきものが見えず、だからどうしたらいいの的な読後感が残る文章が多かった。ただ、最後の鷲田清一氏の文章は読みやすく、読んで何か得をしたと感じさせてくれるものだった。

本の画象

晶文社(1600円+税)
2015年3月刊


鈴木ひさしの推す2冊

川西政明著
決定版 評伝 渡辺淳一』

 最近、女医第一号荻野吟子の生涯を描いた『花埋み』(1970年)を読み直した。重量感のある名作だと思う。風景描写、季節の移り変わり、歴史的背景などが丁寧に書かれ、吟子の生きるエネルギーと同時に、作家渡辺淳一の若い活力が感じられた。この本は、巻末に著作、原作テレビ番組、映画、舞台、ラジオドラマ、朗読の一覧、詳細な年譜を収録。各作品がどの位置にあるかを知る上で便利。

本の画象

集英社文庫(820円+税)
2015年3月刊
小長谷正明著
『医学探偵の歴史事件簿』
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 中臣鎌足の最期、ホーネッカ−の胆石とベルリンの壁崩壊、ルイ14世の心臓と風景画、奈良の大仏と『不思議の国のアリス』、大国指導者の病気のもたらす世界の破滅の危機。偏頭痛患者芥川龍之介の『歯車』、アメリカ軍兵士のALS(筋萎縮性側索硬化症)、等々。事実と文献、叙述に基づき、明快な文章で科学的推理を試みる。著者は神経内科学の医師。すべては生物である人間のやること。

本の画象

岩波新書(780円+税)
2015年1月刊



2015年5月4日号(e船団書評委員会)

宇都宮哲の推す2冊

塚谷裕一著
『スキマの植物の世界』

 都会のコンクリートやアスファルト、煉瓦などのスキマから顔を出している植物を約100種類、紹介したカラ―本。いずれも窮屈な環境のなか、わずかな光りを吸収しながら成長し、生を謳歌している。そこには蝶や小鳥たちなどの生き物も集まってくる。まさに、都会の中のヒトの管理を離れた自然そのもの。あまり名も知られないものも多いが、街に住まうヒトたちとスキマの植物たちとの間に小さくも素敵な出会いが生まれているのではないか。散歩が楽しみ。

本の画象

中央公論新社(1000円+税)
2015年3月刊
小林朋道著
『ヒトの脳にはクセがある』
動物行動学的人間論

 ヒトはなぜ、「宇宙の果てをイメージできないのか」、「火に惹きつけられるのか」、「涙を流すのか」など私たちが持つ素朴な疑問を一つ一つ科学的に解き明かしながら、ヒトの行動様式や脳の特性に迫っていく。解明のカギは、『狩猟採集生活時代から当座の生存・繁殖がうまくいくようにつくられている』というかなり偏った今も残るヒトの脳の持つ性質(クセ)。自分の体験などを交えながらの肩肘張らない論考であるが、なかなか興味深い人間論となっている。

本の画象

新潮社(1100円+税)
2015年1月刊


塩谷則子の推す2冊

正津 勉著
『詩人の死』

 透谷ら17名の「詩人の死。それはもっぱら詩をもって明らかにされなければならない。」という考えに基づいて、一編を選び、なぜその詩人が早世したかを述べる。例えば中原中也の一編は「一つのメルヘン」。蝶が飛び去ると、小石ばかりの川に水が流れはじめる、その蝶は冥界からの招待者だという。詩の言葉は死を予知してしまうのだろうか。

本の画象

東洋出版(1600円+税)
2015年4月刊
中村哮夫著
『久保田万太郎 』
その戯曲、俳句、小説

 たけのこ煮そらまめうでてさてそこで

 こんな明るい句も作り、「取り残されてゆくもののあわれ」を小説や戯曲に描いた万太郎(1889〜1963)が「生涯にただ一篇書いてしまった私小説」が、事実上の夫人の死を悼む十句と、その後の「湯豆腐やいのちのはてのうすあかり」を含む4句という。死の半年前のこと。

本の画象

慶應義塾大学出版会(2800円+税)
2015年4月刊



2015年4月27日号(e船団書評委員会)

武馬久仁裕の推す2冊

加部洋祐歌集
『亞天使』」

 実験歌集である。その中で唯一の長歌を紹介しよう。〈原爆と原爆と原爆とぼくとあなたとあなたたちと原爆〉から始まり〈のぼくと言ひ得る原爆の否定であるあなたとぼくと原/爆と「  」〉で終わる24字×21行の、急いで読むことを強いられる長歌だ。それはなぜか。頭上で原爆が炸裂した瞬間の「ぼくたち」と「あなたたち」の脳裏を駆け巡った言葉どもだからだ。歌人は昭和55年生まれである。

本の画象

北冬舎(2200円+税)
2015年4月刊
石川九楊著
『日本語とはどういう言語か』

 著者はいう。「書き言葉は話し言葉を書きつけたにすぎない」は誤りだと。むしろ、書き言葉が話し言葉を作り上げると。そこから当然のように、日本語が時にほかの国の言葉と何か違う特殊な言葉のように思えるは、日本語が三種の文字を持っているためであるという。実際、私たちが話している時も、「ぶっく」には「ブック」が、「しょせき」には「書籍」という文字がへばり付いてはいないだろうか。日本語は、文字を話しているのである。

本の画象

講談社学術文庫(1080円+税)
2015年1月刊


藤田 俊の推す2冊

天久 聖一篇
『書き出し小説』

 母さんの育てた花が初めて蠅を捕えた。  『雪国』は書き出しが有名だが、ネットに投稿された書き出しのみの傑作を集めたのが本書。自由部門と規定部門がある。規定部門はお題による縛りで入りやすいが、お題を知 らなくても面白いかどうか。短くて、放り込まれるようで、しかし深入りしていないよう なものが魅力的だ。似て非なるもの、俳句のことを考える。

本の画象

新潮社(1100円+税)
2014年12月刊
和田ラヂヲ作
和田ラジヲの 『一語一絵』

 すばらしくくだらないタイトル付き一コマ漫画。「扇風機収納の儀」では役目を終えた扇風機が、なぜか平安貴族によって分解され段ボール箱に戻されている。ご丁寧に雅楽の演奏までついている。TPOを無視した組み合わせ、風俗や流行の転用・誤用、単純化、誇大化、滑稽化…。非凡だが高尚を避ける発想と独特な画で「あるある」とは無縁な笑いを生んでいる。

本の画象

集英社グランドジャンプのウェブサイトで連載中
2015年3月刊

[e船団・週刊ブックレビュー]バックナンバー



2015年4月20日号(e船団書評委員会)

静 誠司の推す2冊

谷川俊太郎・申庚林著/吉川凪訳
『酔うために
飲むのではないから
マッコリはゆっくり味わう』


 日韓を代表する両詩人が「対詩」にチャレンジ。話す言葉は違うものの同世代、似たような背格好?の二人がまるで旧知の仲のように詩のキャッチボールをして、刺激を感じあっている様子が伝わってくる。こんな形で文学も国際交流できるんだよ、と提案されているかのようだ。俳句はどうか、そうする意味が必要があるか。しばし考えた。

本の画象

クオン(1500円+税)
2015年3月刊
金時鐘著
『朝鮮と日本に生きる』
―済州島から猪飼野へ

 「済州島四・三事件」をくぐり抜け日本に密航。在日詩人として生き続ける筆者の自伝。「事件」の生々しい描写に戦慄が走る。疑うことなく天皇を崇拝していた少年期の件も印象的。厳しい皇民化教育によってよりも、日本語の情感豊かな唱歌や短歌俳句によって、まだ見ぬ日本への憧れがかき立てられたとのこと。「うた」の魔力を思い複雑な思いに駆られた。
本の画象

岩波新書(860円+税)
2015年2月刊


太田靖子の推す1冊


井坂洋子著
『詩はあなたの隣にいる』

本の画象

 詩を通じて誰かと共振したいという詩人である著者の気持ちから書かれた書。著者の詩嚢が覗ける詩への入門書と言っても良い。主に日本の代表的な詩人の作品が穏やかに語られる。吉野弘の「仕事」は全部読んでみたくなった。「母の明滅」には年老いた母へのちょっぴり哀しい詩数編が紹介されている。優しい気持ちになれる詩が多く、本書を読んだ後、読みたい詩や詩人が増えているのに気づいた。また、「詩とは何か」と問いかけている人にも薦めたい。フランスの詩人シュペルヴィエルの「影像(イマージュ)は暗闇の中で詩人を照らす魔法のランプ」は言い得て妙。石原吉郎の「詩における言葉はいわば沈黙を語るための言葉」には考えさせられる。

筑摩書房(2200円+税)
2015年1月刊



2015年4月13日号(e船団書評委員会)

紀本直美の推す2冊

飯間 浩明著
『不採用語辞典』

 「三省堂国語辞典」に採用されなかった言葉の辞典。思いよがり、活気的、小確幸(しょうかっこう)、駅立ち、ポップコーン映画など、言い間違いや変換ミスと思うものも、みんなが間違えればそれが主流になるから面白い。自分の知らないところで、たくさんの言葉が生まれて消えていることを感じます。

本の画象

PHP研究所(1300円+税)
2014年11月刊
パッツィ・スキャリー/さく
リチャード・スキャリー/え
木坂 涼/やく
『あかちゃんうさぎとパパ』

 あかちゃんうさぎと大家族。みんなそれぞれあかちゃんうさぎが大人になったらどんな職業につくのか、想像していきます。おまわりさん、カウボーイにパイロット…どれもかっこいい職業ばかり。でも、あかちゃんうさぎがなりたいものは、たったひとつ。優しく選びぬかれた言葉が耳に心地よい絵本です。
本の画象

好学社(1400円+税)
2014年12月刊


田中俊弥の推す1冊


勝木俊雄著
『桜』

本の画象

 先日から造幣局の通り抜けが始まっている。「普賢」「関山」「鬱金」など、八 重の桜は、実に見事である。「さまざまの事おもひだす桜かな」(芭蕉)の句を はじめとして、開花する桜にまつわる文学は、それこそ枚挙にいとまがない。筆 者もまた、近所の枝垂れ桜が花をつけ始めると、歳月の流れをひしと感じてしま う。とはいうものの、実のところ、桜そのもののことはよく知らないのが実情で ある。「純粋なオオシマザクラは伊豆諸島だけに見られると考えたほうがよい。 したがって、オオシマザクラは平安時代の都の人々の目には触れなかったと思わ れる。」といった指摘にはドキリとさせられる。本書を手がかりに、もっと桜そ のもののことを弁えて、この春を見送りたい。

岩波新書1534(929円・税込)
2015年2月刊



2015年4月6日号(e船団書評委員会)

舩井春奈の推す2冊

林望句集
『しのびねしふ』」
―宇虚人俳句集―

 イギリスでの随筆で知られるリンボウ先生に俳句集が出た!個人的なことだが、私がリンボウ先生の本を読んでいたのは十代の頃。それでリンボウ先生が国文学に造詣が深いことより異文化のお話の方が印象深い。リンボウ先生の俳句も気になるし、この句集を通して以前の著書も再読したくなった一冊。

本の画象

祥伝社(1800円+税)
2015年2月刊
黒鉄ヒロシ著
『本能寺の変の変』

 テスト頻出問題、本能寺の変。その出来事について映画のコマがポンポン切り替わっていくが如く、漫画のシーンが進んでいく。新しい研究や解釈も交えながらのシュールな展開。時には、本能寺大寶殿のショーケースに佇む三足の蛙が語り手となったりもしている。

本の画象

PHP研究所(1300円+税)
2015年3月刊


赤石 忍の推す2冊

ねじめ正一著
ねじめ正一の
『商店街本気グルメ』

 素材がおいしいだけではない。人間関係が「おいしい」のだ。商店街や旅先の人々、そして家族(有島一郎や左卜全なんかが出てきそうだ)。それらがユーモアとペーソスで結ばれている(ペーソスなんて言葉、久しぶりに使ったな)。つまりは本書、ねじめワールドが風の中、花満開である。ちなみに次月号の『船団・ねじめ特集』に送付した小生の句。「花吹雪く商店街はてんこ盛り」。おいしそうでしょうか。

本の画象

廣済堂新書(833円+税)
2015年3月刊
又吉直樹著
『火花』

 本著者の書下ろし原稿が載ることが分ると予約が殺到し、通常1万部前後の純文芸誌「文学界」が3、4万単位で2度の重版をしたことは画期的だった。レトリックは固いが、テーマの著者の漫才師論は読ませる。コンビを解消する主人公と、放蕩の末、整形乳房を付けてまで笑わせようとする先輩漫才師。では生き残っている漫才師は、どう位置づくのか。これは全ての表現者たちに通じる、普遍的なテーマのようにも思った。

本の画象

文藝春秋(1296円+税)
2015年3月刊



2015年3月30日号(e船団書評委員会)

香川昭子の推す1冊


井坂洋子著
『詩はあなたの隣にいる』

本の画象

 詩の案内書。まずは帯にもある認知症の母を歌った吉原幸子の詩の中のこんな一節。「あなたが三分で忘れることを/わたしだって三日で忘れるのだから/永遠のなかでは たいしてちがいはない」。また具体的な詩を通して、「ここはわかりにくいけど、こういうことかもしれない」とか、「こんなふうに解釈したらつまらないものになりそうなぎりぎりだけど」とか、鑑賞も面白い。「生活は退屈だし、生活は軽薄だ。だがその生活を気どりなく引き受けた時、生活とその生命の無意味さは少しだけ美しく光る。清水哲男がその詩で信じようとしていることは、たぶんこのことだと思うのだ」。この本ではじめて知った松下千里という詩人でも評論家でもあった人の文章。

筑摩書房(2200円+税)
2015年1月刊


千坂希妙の推す2冊

鈴木有美子著
『ホッパー大佐対真夜中の滝』

 地球賞を受賞した前作「水の地図」から11年、彼女の4冊目の詩集。変容していく詩人だが、奔放な想像力は変わらない。きわめて小説に近い散文詩と言える。死と再生をモチーフにシュールな詩想に触れたという充足感が残る。あとがきに「私は、私自身を守るために、詩を書かなくてはならなくなっていた。」と彼女は書いている。

本の画象

思潮社(2200円+税)
2014年11月刊
水上 勉著
『閑話一滴』

 若い頃、水上勉の講演を聞いた。内容はみな忘れたが一点だけ覚えている。自分で竹を伐り湯呑にする、それが文化というものだ、という話。本書でもう一度その謦咳に触れる思いがした。内容的にも語り口もやや陰性ながらどこか懐かしい気分にさせられる。少年期に禅寺で修行した人ならではの体験談や裏話なども書かれていて興味深い。
本の画象

PHP文庫(720円+税)
2015年2月刊



2015年3月23日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの推す2冊

竹内康浩著
「謎とき『ハックルベリー・
フィンの冒険』」

―ある未解決殺人事件の深層―

 物語の最後に、ハックとジムがその後もさらに逃げるのはなぜか。細部の「小さな謎とき」から大きな謎に迫っていく。『ハック』の新潮文庫版(村岡花子訳)にはないが、角川文庫版(大久保博訳)にある「警告」−「発令者著者(トウエイン)、代筆者G・G兵器関係最高責任者」−には「プロットを見つけようとする者は、射殺される」とまで書いてある。この「謎」にも触れてほしかった。

本の画象

新潮選書(1400円+税)
2015年1月刊
西加奈子・せきしろ著
『ダイオウイカは
  知らないでしょう』


 「あの方が覚悟を決めた瞬間をダイオウイカは知らないでしょう」これは「お題の其の七十一ダイオウイカ」、西加奈子の短歌。終始弾んでいる西は今話題の直木賞作家。二人の短歌事始めからの「成長」の記録。穂村弘の評が、二人の自由な短歌をどこか落ち着く場所に誘う。「こんちわーと調子にのった挨拶が最期の声になる可能性 せきしろ」

本の画象

文春文庫(690円+税)
2015年2月刊


若林武史の推す2冊

石原千秋監修
『教科書で出会った
名句・名歌三〇〇』


 読み進めると、知っている、知っている、の中に、これ知らないという句がぽつんとあって面白い。全体的に写生っぽい句が多い気がした。和歌は収録数も多く、やはり王道といった感じだろうか。古典和歌と近代和歌に分けられている。知らない歌もたくさんあり、勉強になった。巻末の石原千秋の解説は、何となく、俳句寄りな気がする。最後に挙げられているのは、漱石の「菫程小さき人に生まれたし」であった。

本の画象

新潮文庫(464円・税込)
2015年2月刊
博報堂
「ケトル VOL.23 」
辞書と図鑑が大好き!

 よく『新明解国語辞典』だけが取り上げられがちだが、本書では比較的幅広く取られていて、よい。養老孟司やみうらじゅんなどのインタビュー記事もある。副作用としては、辞典・図鑑が無性に欲しくなる点。本選びに役立つというよりも、それらを愛する姿勢が育つという感じが強い。これとは関係がないが「テレビでみるあの舞台で行われるカメラリハーサルは、甲子園の強豪校の守備練習のようだった。」という文の添えられた「正田真弘写真劇場」の写真もよかった。

本の画象

太田出版(900円+税)
2015年2月23日刊



2015年3月16日号(e船団書評委員会)

塩谷則子の推す2冊

伊藤比呂美著
小栗判官・しんとく丸・山椒大夫
『新訳 説経節』

 実子を跡継ぎにするため継母に天王寺に追放されたしんとく丸(俊徳丸・身毒丸)。美女に化けた大蛇と契ったゆえに常陸に流され、そこで見初めた姫のもとに婿入り、怒った親に毒殺されたが閻魔大王に送り返され、熊野の湯に入り蘇生した小栗。「いたわしや」と主人公を助ける乙姫、照手姫の行動力に自らを引きつけ困難を乗り越えたという伊藤比呂美。おどろおどろしくて面白い。

本の画象

平凡社(1700円+税)
2015年2月刊
金坂清則著
『イザベラ・バードと
日本の旅』


 1887年(明治11年)東北から北海道の平取まで旅行し、『日本奥地紀行』を書いたイザベラ・バード。個人の物見遊山の旅ではなくて、当時の公使パークスによって企てられた、西洋化しながらも古来の文化がなぜ残っているか、実態と理由を調査する旅だったと筆者はいう。46歳の小柄な女性ゆえに選ばれたのだ。旅の目的が何であれ、当時の日本をイギリス人がどう見ていたか、バードの旅行記は貴重だ。完訳できちんと読みたい。

本の画象

平凡社新書(880円+税)
2014年10月刊


宇都宮哲の推す2冊

里中哲彦・遠山修司著
『ビートルズの真実』

 二十世紀最大の音楽グループ・ビートルズのすべてについて、ビートルズ研究の最高峰と熱烈な信奉者が縦横に語り合った対談集。その真実への迫り方は実に多彩で生々しくそして刺激的だ。また、彼らの数ある神話や伝説をきめ細かく検証するだけではなく、その魅力そのものにも光を当てている。まさにイギリスの港町・リヴァプールの若者四人が成し遂げた「必然的な奇跡」が目の前に甦ってくる。巻末には全公式録音の年代順曲名リストも添付されていて、ファンにとってはたまらない一冊。

本の画象

中央公論新社(1200円+税)
2014年12月刊
上野 誠著
『日本人にとって
聖なるものは何か』

神と自然の古代学

 古代より多神教と言われる日本、人々は聖なるものをどのように認識していたのか、その心性に迫ろうとする一冊。切り口は、古代の人々の《古代思考ないし古代的思考》。それは、木、森、山を始めあらゆる事物は崇拝の対象であり神とある、また、神々は人と同じように人格を持ち、恋もすれば、罪さえも犯すという、実に人間臭い独特の宗教観であり自然観である。著者自らの体験から得た“実感”をもとに『記紀万葉』の世界に分け入り、日本的思考の源流を探っていく手法が興味深い。

本の画象

中央公論新社(880円+税)
2015年1月刊



2015年3月9日号(e船団書評委員会)

藤田 俊の推す2冊

吉沢緑時著
『俳句トゥ ザ フューチャー』

 現代にタイムスリップした芭蕉が俳句で中学生の心を救うコメディーマンガ。現代の文明や語彙に戸惑う芭蕉が笑いを誘う。俳句(俳諧)や芭蕉の知識に裏付けられているようで勉強になる。芭蕉(風の人)が説明つきで詠むことで、よくわからないけど元気が出るという癒しが。句に対する生徒達の「…?」という反応がポイントかも。

本の画象

芳文社(637円・税込)
2014年12月刊
小松理虔著
『晴耕雨読のはなし』

 地域暮らしがテーマのウェブマガジンで連載されているコラム。昼間の本業を晴耕、余 暇での趣味を雨読と位置付け、時間がある地方生活における雨読のすすめが書かれている。 2回目では雨読を共有する場所作りに触れ、牛後ではなく鶏口として楽しむことが提唱さ れている。雨読的で鶏口的。まさに句会がそうではないだろうか。

本の画象

ウェブマガジン『雛形』で連載中
2014年12月刊


武馬久仁裕の推す2冊

高岡 修著
『高岡修句集』

 本句集に収録された高岡の批評「俳句における詩的言語論」は面白い。富沢赤黄男の「蝶墜ちて大音響の結氷期」の「蝶」は、「墜ちて」という言葉によって高さと質量を獲得し、これによって「蝶」は、「凍て蝶」とか「冬蝶」とかいった季語を超えた虚構度の高い「蝶」となるとの指摘は鋭い。巷に見られる、富沢のこの句を季語的世界の情景に還元しようとする試みなど無理な話なのである。

本の画象

ふらんす堂(1200円+税)
2014年12月刊
吉田きみ子句集
『桐一葉』

 この句集で私が一番面白かったのは、「全身の骨撮られをり終戦日」である。一体われわれはレントゲンで「全身の骨を撮られ」ることなどあるであろうか。通常ではない。しかし、被曝という形で撮られることはあるのである。この句の人物は、「終戦日」において、広島・長崎を思いレントゲン撮影に臨んでいる。作者は、大正15年生まれと言う。益々のご健吟を。

本の画象

私家版(頒価 2500円)
2015年1月刊



2015年3月2日号(e船団書評委員会)

静 誠司の推す2冊

伊藤伊那男著
『漂泊の俳人 井上井月』

 一茶と子規をつなぐ時代を漂泊した伊那の俳人井月の謎多き生涯を、残された数少ない資料をもとにたどる入門書。財産を持たず、何にも縛られることなく、俳句と酒の間を自由に漂っていたかのような人生。山頭火や芥川龍之介らも彼の生き方とその俳句に魅了されたという。死に様も諸説あるようだが、ある意味見事というしかない。
 よき酒のある噂なり冬の梅  井月

本の画象

KADOKAWA(1600円+税)
2014年12月刊
佐々木敦著
『ニッポンの音楽』

 今年のセンター試験に出題された著者の近刊。70年代以降の日本のポップミュージックの変遷を解く。今の若者のためのガイドブックのように歴史が綴られているかと思えば、「内」と「外」をキーワードにそれぞれの時代を語る。これからの「Jポップ」がどこに向かおうとしているのか。本書ではその答えは示されず、問題提起の形で終えられている。

本の画象

講談社現代新書(800円+税)
2014年12月刊


紀本直美の推す2冊

飯野和好/作
『へのかっぱ』

 月とすっぽん、馬があう、金魚のふん、など動物の名前がつく慣用句をユーモラスなイラストで表現した絵本。改めて読むと慣用句は語呂がよくてユーモアに溢れていることに気づかされます。ふと考えてみると、自分の会話に慣用句は全然入っていないなあと反省。この絵本を読んで会話に自然に出てきたら心も豊かになりそう。

本の画象

絵本館(1300円+税)
2014年12月刊
マーガリータ エンゲル/文
デイヴィッド ウォーカー/絵
福本友美子/訳
『おおきくなりたいの』

 おおきくなりたいちいさなウサギが、いろんな動物に出会っていくほのぼのストーリー。キリンやゾウをみて自分も同じように大きくなりたいと思う気持ちは、大人になって他人と自分とを比べてしまうのと同じかもしれません。ウサギはおおきくなりたいと思い続けて、最後に思わぬ結果になってしまいます。

本の画象

岩波書店(1100円+税)
2014年12月刊



2015年2月23日号(e船団書評委員会)

田中俊弥の推す1冊


巽 好幸著
『和食はなぜ美味しい』
日本列島の贈りもの

本の画象

 益田勝実の『火山列島の思想』に出会ったのが、かれこれ30年前の大学生のころである。その書名に、ハッとさせられた。たしかに日本文学は、その大地たる火山列島にこそ固有性の淵源がある。それから数年後、沖縄に行って、「琉球孤」の発想に触れたとき、ヤマトの地は周辺に位置することを理解した。いま、地球科学・プレート学・マントル学の権威である巽さんの本に出会って、日本列島がなぜいまのような形になったのか、そのメカニズムを解き明かされ、驚嘆することしきりである。旬の美食と美酒を味わいながらのレクチャーだからこそ、気品があって、お洒落でもある。真に和食を実践することは、地球や日本の悠久の歴史におもいを馳せることなのだ。

岩波書店(2000円+税)
2014年11月刊


太田靖子の推す2冊

太田尚樹著
暦の知恵と生きる悠久のアンダルシア
『コルドバ歳時記への旅』

 後ウマイヤ朝の首都スペインのコルドバで、961年に編纂された歳時記。星・月・太陽の運行の原理に基づき、農業、牧畜、日常生活及びキリスト教の催事などの予定のための、いわば知恵袋である。スペインへ旅行する人にも薦めたい。本書最後のアンダルシアに居住する、慶長遣欧使節団の子孫「ハポン」(日本という意味)姓の人たちの章も興味深い

本の画象

東海教育研究所(1600円+税)
2014年9月刊
ドナルド・キーン、河路由佳著
ドナルド・キーン
『わたしの日本語修業』

 キーンの日本語との関わりを読むことは、彼の人生を読むことであり、なぜ日本語や日本文学に興味を抱くようになったのか、なぜ、日本人となり、終の棲家として日本を選んだのかなどがわかる。対談での彼自身の言葉を通して、語学を学ぶ達人、理想的な研究者、後進を育てる教育者などの様々なキーンの顔を知るのは楽しい。
本の画象

白水社(1800円+税)
2014年9月刊



2015年2月16日号(e船団書評委員会)

赤石 忍の推す2冊

吉田 類著
『酒場詩人の流儀』

 中・高年飲酒愛好家の星、吉田類である。俳人でもあり、本書は文末に俳句を配した俳文でもある。しかし、名酒場でひたすら飲むテレビの著者は余計なことも言わず、すこぶる俳句的だが、肩に力が入りすぎているのか、滑稽味が足らず、上品なエッセイ集となってしまった。酒を飲むように文を書けば良いのに。でも、これが難しいんだな。

本の画象

中公新書(780円+税)
2014年10月刊
植村和紀著
洋楽日本盤の
『レコード・デザイン』

 1950年代から70年代の洋楽レコードジャケットと、LP盤の帶をひたすら羅列したもの。800枚にも上るデザインの数々に圧倒されるとともに、よくもここまでと、コレクターの収集癖にため息も出る。ジャケットと帶を一つひとつ見ていくと、中の曲が勝手に想起されてきて、これって何か、俳句的ではないかと思い、久々に充実した一冊であった。

本の画象

グラフィック社(2800円+税)
2015年2月刊


舩井春奈の推す2冊

谷川俊太郎詩集
『悼む詩』

 詩人の交友関係にあり、先に旅立たれてしまわれたおひとりおひとりへ向けた哀悼詩集。詩人寺山修二、女優岸田今日子はじめ幅広い交友関係を結ばれ、また影響を受けていたのだと知る。驚くのが、ジェームスディーン、マリリンモンローへの詩で始まること。

本の画象

東洋出版(1200円+税)
2014年11月刊
大久保京著
『猫本屋始めました』

 ちょうど2年前のこと、猫の日(2月22日)に本屋さんがオープンした。なんと日本初の猫だけを集めた本屋さん。猫本屋さんをオープンするにあたって世界中から猫にまつわる本を収集してきた話から猫にまつわる本情報等を読める。店員は猫にゃんたち( Φ ω Φ )今、私が最も行ってみたい本屋さん♪

本の画象

洋泉社(1500円+税)
2014年12月刊



2015年2月9日号(e船団書評委員会)

千坂希妙の推す1冊


栗原 敦監修/杉田淳子編
『宮沢賢治のオノマトペ集』

本の画象

 独創的なオノマトペを創出することは容易ではないが、賢治は岩手の風土に根ざした天性の資質を発揮した。
 「どっどどどどうど どどうど どどう、青いくるみも吹きとばせ」有名な「風の又三郎」の出だしだが、賢治のオノマトペは単なる表現技法ではなく、その童話の世界を象徴してもいる。
 「グララアガア、グララアガア」(オッペルと象)。「どってこどってこどってこ」(どんぐりと山猫)。「にかにかにかにか」(イーハトーボ農学校の春)。すっこすっこ(葡萄水)。どれもこれも実にユニークで楽しいと同時に作品全体とマッチした使われ方なのだ。
 啄木を髣髴とさせる彼の短歌にも同様のことが言えよう。
 蜘蛛の糸ながれてきらとひかるかな源太ヶ森の碧き山のは

ちくま文庫(880円+税)
2014年12月刊


香川昭子の推す2冊

高橋源一郎著
『「あの戦争」から
「この戦争」へ』


 あちこち付箋だらけ。たとえば、「見たことも、聞いたこともないものの組み合わせ、遠く、かけ離れているようなことばの繋がりを、文学っていうのではないか。」「思考は、無理に思考させるもの、思考に暴力をふるう何かがなければ、成立しない。思考より重要なことは、《思考させる》ものがあるということである。哲学者よりも詩人が重要である」引用した箇所よりこの本全体の文章は、ずっと読みやすく、文学の新しい見方にあふれてます。

本の画象

文藝春秋(1850円+税)
2014年12月刊
小田嶋隆・岡田憲治著
『「踊り場」日本論』

 なあなあでもなく、勝ち負けを決めるための議論でもない。「人は何のために議論するのか 僕たちはどこまで同じ道を歩んでいて、どこから分かれてしまったのか、その分かれたY字路を確認するために議論するんじゃないか。」多分、そのとおりだけど、実際にはなかなかだよね。

本の画象

晶文社(1400円+税)
2014年9月刊



2015年2月2日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊

夏井いつき著
超辛口先生の
『赤ペン俳句教室』

 バラエティ番組「プレバト!!」の俳句コーナーで出された芸能人の俳句を添削し、俳句のコツを伝授しようという一冊。芸能人の俳句にもいろいろあり、月並みな感じのものもあれば、ちょっとユニークな切り口のものもあったりする。夏井いつきの解説、添削もさすがにしっかりしたもので、自分もこんな俳句をしょっちゅう作っているような気がして、身が引き締まる思いがする、ような気がする。そんな気分を味わいたい方は、ご一読ください。

本の画象

朝日出版社(1300円+税)
2014年12月刊
2015年1月1・15日合併号
「BRUTUS」
読書入門。

 雑誌BRUTUSは、時折、こういう感じの特集を組む。その度に買って読んでみて、いろんな人がいろんな本を読んでいるのだなと感心してしまう。入門と冠してあるが、多くの刺激を受ける。そんなわけで、今、岩波文庫の『イスラーム文化』(井筒俊彦)を少しずつ読み進めている。

本の画象

マガジンハウス(650円・税込)
2015年1月刊


鈴木ひさしの推す2冊

瀬川裕司著
『「サウンド・オブ・
ミュージック」の秘密』


 だれもが「知っている」不滅の名作。ザルツブルクのロケ地ツアーは、今でも年間7万人が訪れるという。カメラワーク、音楽、小道具、ロケ地、ストーリーの秘密など、映画の導入部から丁寧に分析されている。『ウエストサイド物語』『北北西に進路を取れ』『マイ・フェア・レディー』『天使にラブソングを』『メリー・ポピンズ』『アナと雪の女王』など他の多くの映画との比較が興味深い。

本の画象

平凡社新書(780円+税)
2014年12月刊
松尾義之著
『日本語の科学が
世界を変える』


 日本語で科学ができることに深く感謝し、評価し、伝統を保持していくことが、「日本語で科学することの意義であり責務である」と、科学ジャーナリストの著者は言う。日本語で学問ができることが、知の世界の裾野を広げてきた。これも先人の努力の賜物。英語のシャワーを止めて、日本語で深く静かに考える時間がもっと必要だ。

本の画象

筑摩書房(1500円+税)
2015年1月刊



2015年1月26日号(e船団書評委員会)

宇都宮哲の推す2冊

野呂希一写真・文
―今が旅ごろ―
『旬の景色』

 『旬』とは、1カ月を10日ずつに分けた「上旬」「中旬」「下旬」のことだが、食物などでは、その食物が最も良いおいしい盛りの時期の十日間を意味する。本書は、まさにそんな日本全国の最も美しい旬の時期の『景色』を美しい写真と季節の言葉や自然情報で、167か所紹介したもの。また、いい景色に出会うには光の具合が大切と、各地の各月の日の出入り時間を一覧表にしてあるのがにくい。さて、今年は、日本のどこに旅しようか、正月から夢がふくらむ!!

本の画象

青菁社(1800円+税)
2015年1月刊
高橋こうじ文
『日本の大和言葉を
美しく話す』

―こころが通じる和の表現―

 日本人自身が育んできた数ある大和言葉の中から日常の暮らしに即して144の言葉を選び、わかりやすく解説した一冊。そのいずれも一音一音の響きが明瞭で美しく心に沁みてくる。改めて大和言葉の魅力を教えてくれるが、私たち日本人の祖先たちの想いが込められているからだろう。唱歌「♪うさぎ追いし彼の山・・・・忘れがたきふるさと♪」はすべて大和言葉である。日本の詩歌の原点とも言えよう。もう一度、その素晴らしさに想いを致したい。

本の画象

東邦出版(1400円+税)
2014年12月刊


塩谷則子の推す2冊

矢崎泰久著
『句々快々』
「話の特集句会」交遊録

 思い出は煮凝ってなお小骨あり  郭公(下重暁子)
 和田誠・故小沢昭一たちと雑誌『話の特集』編集長だった筆者が、1969年1月29日から現在に至るまで45年間続けている句会の記録。参加した人物は80数名。俳人として有名な常連の富士真奈美の他に、故岸田今日子・故渥美清・故岩城宏之をはじめ吉永小百合、中山千夏、黒柳徹子、俵万智、小室等など個性派揃い。69年1月19日朝、東大安田講堂落城(封鎖解除)の10日後、すでに言葉で遊んでいた人々がいた。これが歴史。

本の画象

本阿弥書店(1800円+税)
2014年12月刊
アゴタ・クリストフ著/堀 茂樹訳
『文盲』
アゴタ・クリストフ自伝

 1956年ハンガリー動乱の時、21歳のアゴタは、生後4ヶ月の乳飲み子を抱いてスイスに亡命した。娘の小学校入学と同時にフランス語を学び、86年、フランス語で書いた『悪童日記』は40以上の言語に訳され大ベストセラーになった。『悪童日記』三部作は何度読んでもおもしろい。『文盲』は政治によって母語を断ち切られたアゴタのブラックユーモア。ハンガリー語なら4歳から自在に読めた。
 言葉はコミュニケーションツール以上のものを持っている。だから時々軽く使いたくなるのかも。

本の画象

白水社・白水Uブックス(950円+税)
2014年9月刊



2015年1月19日号(e船団書評委員会)

武馬久仁裕の推す2冊

俳句・山ア十生句/鑑賞・神野紗希
山ア十生セレクト100
『自句自戒』

  神野紗希は、十生の「遂げられし恋など邪道青き踏む」を鑑賞して「こうした世間の常識に対抗する天邪鬼的態度が、十生俳句の基本姿勢だ」というが、私には、これこそが俳句の王道であると思えてならない。そう、俳人は総じて天邪鬼であり、十生は俳句の王道を行く俳人なのだ。だから「閨房と仏間兼ねたり春隣」のような焦点が二つある楕円的世界を好むのだ。

本の画象

破殻出版(1300円・税込み)
2014年11月刊
川田 稔著
『昭和陸軍全史2』
日中戦争

 日中戦争不拡大派の石原莞爾作戦部長と拡大派の武藤章作戦課長の攻防に息が詰まる。両者の違いは、中国の時の民族主義を評価するかしないかにあった。石原は評価し、屈服させることはできず泥沼化するとした。武藤は評価せず、一撃で屈服するとした。結局石原は破れるが、本書は拡大不拡大においては、実は両者の中国認識の違いは二次的なものであり、根底には、総力戦体制の構想そのものの違いがあったとする。7月の第3巻が待たれる。

本の画象

講談社現代新書(1000円+税)
2014年11月刊


藤田 俊の推す2冊

津村記久子著
『まぬけなこよみ』

 作家がつづるエッセイによる歳時記。ウェブマガジン内で定期的に更新されている。直近の2回では個人的な体験を通してこたつやかるたの魅力が浮かび上がってくる。特にこたつに関しては「そうそう」とうなずくことしきり。「こたつアゲイン」っていい言葉だ。こういう普通の日常の中で季語の意味は更新されていくのだろう。

本の画象

平凡社ウェブマガジン
『ウェブ平凡』で連載中
座二郎著
『RAPID COMMUTER
UNDERGROUND』


 ほぼ全てが通勤の地下鉄内で描かれた全ページカラーのマンガ。下地、紙面を覆う砂や土を思わせる茶色、西洋建築や心象の挿入、擬人化した動物の登場により異世界に迷い込んだような感覚を覚える。話は作者の創作環境の紹介と思われる前半から作者や作品をフィクションとして入れ子にしたような後半へと一気に進む。本当と嘘の境目がどんどんぼやけていく(ネットで読めます)。

本の画象

小学館(815円+税、ネットで読めます)
2014年7月刊



2015年1月12日号(e船団書評委員会)

紀本直美の推す2冊

クリス ホートン作/木坂 涼訳
『しーっ!』
ひみつのさくせん

  アイルランドの作家・クリスホートンのシンプルで味わいのあるイラストが素敵。深い森の奥に不思議な四人組。それぞれ動き出しそうな魅力あふれるキャラクターが、そーっとそーっとなにかをたくらんでいます。「そーっと そーっと しーっ!」子どもと静かにくりかえしながら読むと楽しくなりそう!

本の画象

BL出版(1500円+税)
2014年6月刊
ロバート・F・ヤング著/山田順子訳
『宰相の二番目の娘』

 「たんぽぽ娘」のロバート・F・ヤングの未邦訳作品。歴史上の重要人物を拉致するはずが、間違えてその妹を拉致してしまった、自動マネキン社の契約社員のタイムトラベルファンタジー。タイムマシンが壊れてトラブルに見舞われる可哀そうな契約社員と、アラビアの少女のかけあいが面白いです。

本の画象

東京創元社(840円+税)
2014年10月刊


静 誠司の推す2冊

永田和宏著
『現代秀歌』

 前著『近代短歌』の続編。前著同様、収録された短歌のみならず、編者である永田さんの解説する文章が素晴らしい。今作では特に、最終章「病と死」、続く「おわりに」で語られる夫人河野裕子さんとの死別譚、各章の扉に故人となる歌人だけ顔写真が並んでいる、という辺りからも、「死」について多くが語られているような印象を持った。

本の画象

岩波新書(840円+税)
2014年8月刊
キース・リチャーズ著/奥田民生訳
『Gas & Me』
ガス・アンド・ミー ガスじいさんとはじめてのギターの物語

 世界的ロックバンド、ローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズが大好きだった祖父ガスと、彼からもらった一本のギターについて語る絵本。絵を実の娘が担当し、巻末には孫たちと写るキースの写真があるというまさにリチャーズ家によるリチャーズ家のための絵本なのだが、誰もが温かい家族愛に満たされる素敵な絵本。

本の画象

ポプラ社(2000円+税)
2014年9月刊



2015年1月5日号(e船団書評委員会)

舩井春奈の推す2冊

甲斐一敏句集
『忘憂目録』

 お酒でも飲んじゃって嫌なことなんてプハ〜〜!って忘れちゃいたい!そんな思いの数々を綴った目録集。数多ある忘憂という品目を俳句で表現している。たった17音から無限に広がる世界。俳句も目録になりえることに気づかされる本。

 語るな歌え歩むな踊れ去年今年
 初春やマルちゃん正麺買い足しに
 囀りやパパパパパパパパパゲーノ

本の画象

ふらんす堂(2000円+税)
2014年11月刊
誠文堂新光社編
『世界のホットドリンクレシピ』

 寒い日々。おうちでホッとあったまりたいな。カフェのようなドリンクが作れたら。そんな時にはこの世界中のホットドリンクレシピ集がおススメ。たった3ステップでお手軽に作れちゃうし、この飲み物はこの国から来たのか!こういうシーンで飲むのね♪など各国でのホットドリンク事情を読むだけでも楽しい1冊。
本の画象

誠文堂新光社(1500円+税)
2014年12月刊


田中俊弥の推す1冊


小菅丈治(こすげ・じょうじ)著
『カニのつぶやき』
海で見つけた共生の物語

本の画象

 お正月、家族旅行で小豆島を訪れ、寒霞渓をめざした。その途中、道のあちこち に野生のサルが座しているのには驚いた。ふと、木下順二の『かにむかし』のこ とを思い出し、サルもカニも、そして柿も、いにしえの日本になじみ深い存在で あって、遠くは神話時代の「海幸」と「山幸」にも遡ることができるのだと気が ついた。『かにむかし』のカニは陸のものの助けを借りて復讐劇を果たしたが、 なぜかもの悲しい。それは、「山幸」に成功の果実を横取りされた「海幸」一族 の悲しみかもしれず、「山幸」一族たる人間は、いまも「海幸」一族を食い物に している。本書には、「ヒトを必要としない野生生物」たる「海幸」一族の「進 化史的時間」の秘奥が物語られている。

岩波書店(2600円+税)
2014年12月刊




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