バックナンバー・2015前半
バックナンバー・2014前半 後半
バックナンバー・2013前半 後半
バックナンバー・2012前半 後半
バックナンバー・2011前半 後半
バックナンバー・2010前半 後半
バックナンバー・2009前半 後半
バックナンバー・2008前半 後半
バックナンバー・2007前半 後半
バックナンバー・2006後半



2015年12月28日号(e船団書評委員会)

太田靖子の推す1冊


川名 大著
『昭和俳句の検証』
俳壇史から俳句表現史へ

本の画象

 新興俳句や戦後俳句を検証した大著。著者のいう検証とは、俳壇的ヒエラルヒーや知名度を度外視して、作品と直に向き合い本質的な俳句を正当に復権させること。更に、定説を俳句表現史として裏付けたり、訂正したりもする。「新興俳句弾圧事件の新資料発見」に収められた資料はどれも特高のマル秘資料。検挙された秋元不死男の獄中手記や予審終結決定文書など、貴重な一次資料を読むことができる。「京大俳句会関係治安維持法違反事件検挙状況」では、容疑がかけられていた俳句も掲げられ、時代の困難さをまざまざと見せられる。埋もれていた俳誌にまで目を通した、著者の研究への真摯な姿勢に頭が下がる。長年の努力の積み重ねの一書である。

笠間書院(4500円+税)
2015年9月刊


静 誠司の推す2冊

春陽堂編集部編
こころザワつく放哉』
コトバと俳句

 300足らずの放哉の句と彼の随筆・書簡の断編数編を集めたモノ。本書より安価な「全句集」が文庫で手に入る中で、どのような読者を想定しているのか、謎。ちょっと小洒落た装丁から若者ウケを狙っているのかしら。いずれにせよ、本書のような本が企画出版されるほど、自由律俳句は未だにウケがよいということで。

本の画象

春陽堂(1200円+税)
2015年11月刊
川原一久著
『スター・ウォーズ論』

 いよいよ新作が公開となったスター・ウォーズ(SW)。このタイミングで続々と関連本が出ている中で、コスプレなんかしなくてもSWが大好きな大人たちが読むのに十分値する一冊。映画史における位置付けや各エピソード公開時の裏話に「フーン」。ディズニー買収以降の行く末に関して「ウーン」と、読者の「フォース」がくすぐられる。
本の画象

NHK出版新書(780円+税)
2015年11月刊



2015年12月21日号(e船団書評委員会)

舩井春奈の推す1冊


波戸辺のばら句集
『地図とコンパス』

本の画象

   大の字の太く短く昼寝かな
   ビーカーに入れたいものに秋夕焼け
 大らかだなぁと思う俳句の多いのばらさんの句集。スッキリしたくなるときに読みたくなる。
   雲の峰根拠はないが大丈夫
という仲間たちとの山歩きを通して詠まれたのであろう作品からも垣間見えるように、どこからともなく安心感もある。
   やさしさは君の歩幅か大花野
   晩秋の森の音してファゴットは
のように、相手や物事をよく見てよく感じられていて、優しさが伝わってくる俳句も多い。
 句集の章立てが八月にはじまり、新年・春で締めくくられるのも、これら特長の所以かもしれない。
   友情は地図とコンパス揚げ雲雀

北斗書房(1000円+税)
2015年10月刊


田中俊弥の推す1冊


柏原眠雨著
『風雲月露』
俳句の基本を大切に

本の画象

 本書『風雲月露』は、平成元年4月創刊の俳誌「きたごち」が平成26年3月号をもって300号となったことを記念し、主宰の柏原眠雨が毎号書き綴ってきたエッセー「風雲月露」を編集して1本としたもの。俳誌「きたごち」は、「有季定型、客観写生、即物具象、没小主観、説明省略、瞬間切断、韻律重視」などを俳句の基本として標榜する。曰く、「俳句らしさに欠けたつまらぬ句とは、(中略)主観や情緒に頼り過ぎているもの、言葉の面白さやこけおどしの表現だけで出来ているもの、観念や理屈に訴えて分かるもの、抽象的な曖昧な表現のもの」とあり、天の邪鬼の筆者は、ちょっと反発して、そういう俳句らしくない俳句をもっと追究してみたくもなる次第。

紅書房(2500円+税)
2015年8月刊



2015年12月14日号(e船団書評委員会)

原 ゆきの推す2冊

江國香織編
新装改訂版『活発な暗闇』

 詩のアンソロジー。カーヴァー「ぼくの船」は友をひたすら自分の船に誘う詩。“大きな果物かご”“いろんな味のソーダ水”等を羅列。“みんなで楽しく”と誘う、誘う。編者は「これを読むと、自分が笑いだしそうなのか、泣きだしそうなのか、わからなくなる」と。明るすぎて画像がぼやける「ハレーション」のような味わい。

本の画象

いそっぷ社(1600円+税)
2015年11月刊
コロナブックス編集部編
『作家の珈琲』

 コーヒーを愛した作家25人のエピソードと写真を集めた一冊。俳人永田耕衣は「キリマンジャロを飲むと後頭部頭蓋骨の裏側一重の組織一面に酸味が漂う」と随筆で述べたという。妙に実感を伴う不思議な文章だ。コーヒーは現実とは別の次元へ飛んでいくための作家の必需品でもあったか。
 コーヒ店永遠に在り秋の雨  耕衣

本の画象

平凡社コロナ・ブックス(1600円+税)
2015年6月刊


赤石 忍の推す2冊

坪内稔典句集
『ヤツとオレ』

 ヤツとオレとは何なのか、そしてどういう関係なのか。「基本的人権」に出てくる「ヤツとオレ蛸をば突いて七十年」。「定義あるいは疑義」の「夏めいて蛸めいてヤツそしてオレ」。う〜む。それにしても後半、やたら蛸が多い。河馬は内面に凶暴性があっても超越の象徴に思うが、蛸は不敵で不安を感ずる。ヤツは蛸なのか、オレもなのか、いや今の世界を表しているのか。もう一読、二読してみるか。

本の画象

角川俳句叢書(2700円+税)
2015年11月刊
野上 暁著
出版人に聞く 18
『小学館の学年誌と児童書』

 筆者は1943年生。小学館の児童書、文芸書編集者を経て、今はペンネームを野上暁とし、児童評論家、児童文学者として広く活躍している。本書は自分の生立ちから始め、戦後からの児童文化、児童書の歴史、そして現在のそれらを取巻く状況までを自らの体験を通して語っているが、一人の人間の事実に裏付けられた肉声であるがゆえに、さらに興味深く読める。

本の画象

論創社(1600円+税)
2015年8月刊



2014年12月7日号(e船団書評委員会)

今泉凡蔵の推す2冊

外村彰編
『高祖保集―詩歌句篇― 』

 秋のゆふべの卓上にして 独楽は廻り澄む…と始まる『独楽』(原文旧字)は詩人の魂をその回転に封じ込めたかのようだ。透徹しきった詩境は、読者の私にある種の痛みをおこさせる。独楽は永遠には回らない。1945年1月ビルマ(現ミャンマー)で戦病死。34歳。病床で託した詩稿は見つかっていない。句に、月明に石蹴りかへる人なりし

本の画象

龜鳴屋(2000円+税)
2015年8月刊
南條竹則著
『吾輩は猫画家である』
ルイス・ウェイン伝

 このところ猫好きが増えたようだ。岩合さんのせいかしら、とも思う。漱石がイギリスに留学していた頃、一世を風靡していた猫の絵を描く画家がいた。この画家の絵を漱石は目にしていたにちがいない。その猫たちは、人間の風刺そのもの、人間社会の戯画そのもので、シニカルに笑える。漱石の小説もここから生まれたのかもしれない。
本の画象

集英社新書ヴィジュアル版(1200円+税)
2015年6月刊


香川昭子の推す1冊


吉本隆明著
『詩はどこまできたか』

本の画象

 1957年から2009年までの12篇の講演集。「詩を書くことは人間が人間として生きるための固有の領域を開拓していくことになりうるのでは」とか、吉岡実の詩「僧侶」について「意味もないし何か言おうとしているわけではないが、何にも分からないことを書いたっていいんだ、それも詩なんだ、ということを初めて示した」とか、田村隆一の詩「四千の日と夜」は「ねばならない」「すべきである」という、いままで詩には使わない言葉を使って、日本の詩を拡大したなど、俳句についても考えさせられる言葉がたくさん。また、戦後詩の体験にふれ「永続的なものが多分価値ある詩の核だが、永続的なものを犠牲にしても現在的なものに固執せざるをえないのが詩を書く行為」と述べる。

筑摩書房(2200円+税)
2015年9月刊



2015年11月30日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの推す2冊

石川美子著
『ロラン・バルト』
言語を愛し恐れつづけた批評家

 『記号の国』を書いたバルトは、俳句に言及しているが、テクスト論は日本での俳句の読み方にも影響を与えた。何より、バルトは、多くの人々に、読書の創造的な楽しみを教えてくれた。1960年代、「作者の死」を語ったバルトの評伝、とは少し奇妙な感じだが、人間の思考と行動は、いかに客観的に見えても、個人の経験と不可分のものかもしれない。

本の画象

中公新書(800円+税)
2015年9月刊
亀井秀雄監修・蓼沼正美著
『超入門!
現代文学理論講座』


 わかりやすく書かれているが、決して『超入門!』ではない。理論は方法であり、道具でもある。使って初めてその当否が試される。ロシア・フォルマリズム、言語行為論、昔話形態学など、どれも、本の読み方にとどまらず、一つ一つの言葉を見直し、日常のできごとを整理し、生きていく上でも役に立つものばかりである。生活の様々な場面で、立ち止まって、使ってみたくなる。

本の画象

ちくまプリマ−新書(860円+税)
2015年10月刊


若林武史の推す2冊

福田 孝著
『古文を楽しく読むために』

 タイトル通り、古文をどう読んでいったらよいのかということを初歩から考える、古文読解の指南書。「シリーズ 日本語を知る・楽しむ」なので、入門・再入門を対象とした文体で書かれている。基本的なことだけど、知らなかったなんてこともあるかもしれません。

本の画象

ひつじ書房(1600円+税)
2015年10月刊
特集「ことばの未来」
『WIRED VOL.19』

 特集は「ことばの未来」。コンピュータとことばという視点から書かれた記事、他とは一線を画す視点の記事が多い。私的には、コンテンツ・モデレーションというSNSなどで有害なコンテンツを削除する仕事をする人が、扱う対象の酷さから病んでしまうという記事に衝撃を受けた。

本の画象

コンデナスト・ジャパン(500円+税)
2015年12月刊



2015年11月23日号(e船団書評委員会)

塩谷則子の推す2冊

岩阪恵子著
『わたしの木下杢太郎』

 「秋雨や、障子をあけて、衰ふるものの明るき。(略)遠波の如くにも奥歯いたむ。雨息みて落葉あかるく。と見かう見栗鼠走りゆく。痛みかすかにして。」(『奥の都』)衰えるものとは落葉。その明るさに歯の痛みが和らぐ。自然に身を寄せる杢太郎。『百花譜』の作者杢太郎は、ハンセン病者の隔離に反対した皮膚科医でもあった。

本の画象

講談社(1800円+税)
2015年9月刊
黒川 創著
『鴎外と漱石のあいだで』
日本語の文学が生まれる場所

 1895年台湾「割譲」、1910年日韓「併合」、清国末期に日本語を学んだ、あるいは学ばざるを得なかった人と作品と時代について書かれた本。東アジアの作家は魯迅と秋瑾以外、ほとんど知らなかった。彼らは鴎外や漱石から影響を受けた。面白かったのは森志げ(鴎外の妻)の小説への高い評価。はっきりとした物言いがいいという。

本の画象

河出書房新社(3000円+税)
2015年7月刊


宇都宮哲の推す2冊

中村 尚著
『日本の四季がなくなる日』
連鎖する異常気象

 近年の異常気象のメカニズムや地球温暖化が引き起こす気候変動、変化が日本に及ぼす影響などを気象学的にわかりやすく解説。すぐさま、タイトルのように「四季がなくなること」はなさそうだが、ただ、春一番が1月に吹いたり、梅雨が1か月も延びたり、温暖化の影響で四季の区切りがわかりにくくなってくるとか。これは俳句にとっていささか困ったことに。季節の実感が伴わない季語がますます多くなってくるのだから。

本の画象

小学館(760円+税)
2015年10月刊
佛光寺・編
『晴れてよし、降ってよし、いまを生きる』
〜京都佛光寺の八行標語〜

 落ちる/葉が/土を肥やす/ように/不要に/思えることも/心を/育てていく。京都のお寺が門前に掲げた八行標語が話題になっている。標語というと説教臭くて拒絶反応が出てしまうが、これはお経が与えてくれる生きるヒントを短い日常の言葉に置き換えており、すんなりと受け止めることができる。男女8人の僧侶が意見を出し合い作成しているそうだが、その思いを込めた言葉選びが好もしい。言葉は何かを他の人に伝えるためにあることがよくわかる一冊。

本の画象

学研パブリッシング(1400円+税)
2015年7月刊



2015年11月16日号(e船団書評委員会)

藤田 俊の推す2冊

「BRUTUS (ブルータス)」(2015・7・15)
松本隆特集


本の画象

マガジンハウス(680円・税込)
2015年7月刊
原島恵ほか(解説)
『長新太の脳内地図』


本の画象

東京美術(1800円+税)
2015年5月刊

 数々のヒット曲を生んだ作詞家・松本隆を特集した雑誌と、ナンセンスが持ち味の絵本作家・長新太を総括した本。都会的・大人的・洒脱な歌詞と原始的・子ども的・突飛な絵本とが好対照。
 松本隆では、情景と心、片仮名、詩情の座標軸、頻出語といった言葉のプロによる歌詞の解析や、本人インタビューでの「赤いスイートピー」の品種はない、無意識だが頭韻が多い、といった話が興味深かった。
 長新太の方は、ユーモラスなイカ・タコ、脈略のないものの提示、独特のオノマトペ、無意味で不真面目だが子どもが喜んで笑うなど、坪内さんやねじめさんを連想することしきり。
 「ひとりよがりのナンセンスを避け、普遍性を大切にするプロ意識」に自戒した。
 “夏なんです”の歌詞を長新太の絵付きで読んでみたいと楽しく想像した。


武馬久仁裕の推す2冊

矢上新八句集
『浪華』

 大阪弁を使った句集である。大阪弁を日常使っていない私にとって、異界の言葉に出会ったように感じる場合もある。「縄跳をこぐれば蒼き浜辺かな」。「こぐれば」とは、「漕ぐれば」か。いや「潜れば」だ。句中の人物は、回転する縄を潜って、「蒼き浜辺」即ち異界に入って行くのだ。切字か大阪弁か迷う句も面白い。多分両方なのだろう。「乾杯やおもろない夜は酔い潰れ」。巻末に「方言の索引」あり。

本の画象

書肆麒麟(私家版)
2015年10月刊
エマニュエル・トッド著/堀茂樹訳
『「ドイツ帝国」が
世界を破滅させる』

―日本人への警告―

 口絵の「ドイツ帝国」の勢力図を見て、かつてのドイツ帝国、神聖ローマ帝国を思い出した。ドイツは、EUを不平等な諸国家のシステムに作り替え、その支配者になっていたのだ。驚いたのは、現在の「ドイツ帝国」は既に人口、GDP共にアメリカを超えていることである。メルケルが何度も中国へ行き、ドイツへの自主的従属国フランスからは著者やピケティなど世界的な学者が出るはずである。
本の画象

文春新書(800円+税)
2015年5月刊



2015年11月9日号(e船団書評委員会)

静 誠司の推す2冊

オノ・ヨーコ著
『どんぐり』

 金切り声で絶叫するイメージだったヨーコ。ふと手にしたこの詩集(?)を読み、少しそのイメージが変わった。言葉だけを手がかりに彼女の世界を味わうと何故か自然と心にしみこむものが感じられた。それって、彼女が言葉の人であるということではなく、メロディーやリズムなどの音楽の「型」が彼女には不要だったということかも。

本の画象

河出書房新社(1600円+税)
2015年10月刊
西寺郷太著
『ウィ・アー・ザ・ワールド
の呪い』


 今年はこの曲がリリースされてから30年後に当たる。当時からあの曲が大嫌いだった私にとって、さぞかしケチョンケチョンにけなしてくれる本だろうと思って読んでみたがさにあらず。大絶賛の筆者である。しかしこの曲が一つの時代の区切りになっているという主旨には納得。そして30年後の定額制音楽配信の時代に繋がってくるわけだ。

本の画象

NHK出版新書(740円+税)
2015年8月刊


紀本直美の推す2冊

アン・ランド/文、オーレ・エクセル/絵
谷川俊太郎/訳

『エドワードとうま』

 エドワードはイヌ・ネコ禁止の高層マンションに住んでいるのに、ウマを飼いたくてしかたありません。そして、ミスティという自分でお金を稼ぐ馬の噂を聞きつけて…。「じぶんでかせぐ」という言葉が絵本に出てくるところが、日本の絵本と違った発見かも。あそび心あふれるイラストで大人が読んでも楽しい!

本の画象

岩波書店(1400円+税)
2015年9月刊
ダニエル ビーティー/文
ブライアン コリアー/絵
さくまゆみこ/訳

『ノックノック』 みらいをひらくドア

 ぼくとパパが毎朝していた「ノックノックゲーム」。大好きなパパと大好きな朝の幸福なひととき。しかし、ある日突然、それができなくなってしまい…。ぼくの喪失感を存在感のあるコラージュのイラストで表現しています。ぼくがどうなっていくのか、息を止めながらページをめくっていました。

本の画象

光村教育図書(1400円+税)
2015年7月刊



2015年11月2日号(e船団書評委員会)

田中俊弥の推す1冊


寺田良治句集
『こんせんと』

本の画象

 京都の寺田良治さんは、洒脱な句づくりの達人。第1句集『ぷらんくとん』につづく本句集のタイトルが、またひとひねり。収載の「守宮落つコンセントが抜けたらしい」によるのだろうが、タイトルは、ひらがな。集中力はconcentration、「こんせん」は混戦や混線に音が通うし、そもそもは電源プラグの差し込み口。
 「啄木鳥の木から取り出す木の言葉」、これぞ本句集の真髄ではないか。
 洒脱の俳人と言えば見立ての宝井其角。「会う前のトマトのような胸騒ぎ」「性格はぶっきらぼうで青大根」「たましいは冷えております心太」「諳んじてまた忘れては揚雲雀」。現代の其角ばりの寺田さんの句のなかで、小生は、「黒板と少し離れて百合の花」を本句集の秀逸とする。

編集工房ノア(2000円+税)
2015年10月刊


太田靖子の推す2冊

中村邦生著
『はじめての文学講義』
読む・書く・味わう

 中高生への講演記録ではあるが、侮るなかれ。深い文学の世界に続いている。同著者の『書き出しは誘惑する』『生の深みを覗く』も読みたくなった。シュルレアリスムの技法「デペイズマン」(「異郷の地へ送ること」という意味)、日常よく見慣れたものを意図的に見慣れぬものとして描く「異化作用」など、俳句創作のヒントも見つけられそうだ。

本の画象

岩波ジュニア新書(800円+税)
2015年7月刊
林完次監修・写真
『月とこよみの本』

 新月から三十日月までの月の写真、太陽・地球・月の配置図、月の説明があり、今日の月はこの位置だと、毎日実際の月と見比べながら眺めたい本。月の魅力を科学的・文化的に示す。十五夜と十三夜(後の月)との片方のみの月見は禁忌、二十三夜講について、江戸時代の農書には、穀物・果物は上り月の月夜に種を蒔くとあるなどと、月の話題が少しずつ広く満載。
本の画象

宝島社(1200円+税)
2015年10月刊



2015年10月26日号(e船団書評委員会)

赤石 忍の推す2冊

長谷川櫂著
『芭蕉の風雅』
あるいは虚と実について

 風雅とは「虚に居て実をおこなふ」ことであり、芭蕉が「非情」の視点をもって、終生追い求めたもの。だが芭蕉を取巻く連衆の多くは「実に居て虚をおこなふ」人々であり、これは現代の大衆化され劣化した俳句界にも通じる大きな問題であると言う。想いは理解できるが、では「虚」に居る現代俳人など存在するのか、著者の芭蕉も抽象化されたものに過ぎないのではないか、そんなことを考えながら一読した。

本の画象

筑摩選書(1500円+税)
2015年10月刊
竹内 洋著
『革新幻想の戦後史』(上・下)

 思想的「左」を標榜し仮装までしなければ生き残れない戦前・戦後の知識層の実態の様々な指標をもっての分析は痛快でさえある。さらには革新幻想が歯止めだった良き庶民と共に飛散し、劣化した「幻像としての大衆」が権力を握っているのが現在ではないかと喝破する。生活に根差さない大衆を意識して右往左往している保守指導層。ミネルバの梟は時が経てどのような裁断を「今」に下すのか、本書はそう提起している。

本の画象 本の画象

中公文庫(各880円+税)
2015年9月刊


舩井春奈の推す2冊

尾崎淳子句集
『只管ねむる』

 時に大胆な俳句がある。時に静かに語る俳句がある。フォーカスの仕方が楽しくて、新たな世界が見えてくる。
  全開の蛇口で洗う夏の朝
  夕焼を仕舞い忘れた遊園地
  カラヤンの指揮のひと振り銀杏散る
  青い鳥さがすの苦手銀杏散る
 この句集を読んでから、今秋は銀杏並木を通ることが更に楽しくなっている♪

本の画象

ふらんす堂(2800円+税)
2015年9月刊
深堀真由美・監修/ 最所綾子・イラスト
『ネコヨガ』

 ご覧のとおりネコがヨガを体で示してくれている本。その章立ては、ダルネコ・ヒエネコ・イラネコ・フニャネコとにゃんとも微笑ましい。中には猫背対策のヨガもあり、猫背なんて言わせにゃい!とも。食欲の秋。運動の秋。ゆるいネコのイラストにあわせて、ボチボチ動いてみませんか?(=ФωФ=)

本の画象

飛鳥新社(1000円+税)
2015年9月刊



2015年10月19日号(e船団書評委員会)

香川昭子の推す2冊

谷川俊太郎詩集
『詩に就いて』

 こんな詩をみつけた。 ≪まぐわい≫ 「私は何一つ言っていない/何も言いたいとは思わない/私は既知の言葉未知の言葉を/混ぜ合わせるだけだ/過去から途切れずに続いている言葉/まだ誰も気づいていない未来にひそむ言葉が/冥界のようなどこかで待っている/そんな言葉をまぐわいさせて生まれるのは/私が書いたとは思えないもの」
 〈でもそれが詩ですよと〉/誰が言うのか/

本の画象

思潮社(1500円+税)
2015年4月刊
作者未詳/蜂飼耳訳
『虫めづる姫君』
堤中納言物語

 虫めづる姫君など十編の物語と一編の断章から成る短編物語集。一編ごとに蜂飼さんのエッセイがある。訳も平明だけど、エッセイを読むことで話が立体的につかめる。虫めづる姫君は名前しかしらなかったけど、思った以上に面白かった。

本の画象

光文社・古典新訳文庫(860円+税)
2015年9月刊


原 ゆきの推す2冊

高階杞一著
『高階杞一詩集』

 撫でつけても「ぴょこ」となる寝癖のように、隠しきれず御しきれないものがある。例えば反抗心や自尊心、違和感、怯え、憧れ、妄想。「キリンの洗濯」という詩を読むとそのことを思い出す。こんな書き出し。「二日に一度/この部屋で/キリンの洗濯をする/キリンは首が長いので/隠しても/ついつい窓からはみでてしまう」

本の画象

角川春樹事務所 ハルキ文庫(680円+税)
2015年8月刊
高野文子著
『るきさん』(新装版)

 「るきさん」は年齢30才位。女性。一人暮らし。俳句を書かせたら、たぶん上手い。おせんべを齧りながら自転車に乗り、お腹が空いてスコーンと茶筒を蹴る。15コマ漫画で描かれるそんな彼女の日常は、幼児の好奇心とオバハンの自己中心とが、ほんわり混ざる、15コマの枠内での小さな破天荒。実に俳句にピッタリ。

本の画象

筑摩書房(1600円+税)
2015年6月刊



2015年10月12日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊

小野正弘著
『感じる言葉 オノマトペ』

 いらいら、うっかり、からから、かん、きりきり、さくさく、ぞっ、どきどき、のろのろ、ぱたぱた、ふわふわ、ほのぼの、むかむか、めろめろ、よよ、わくわく、とその派生関係にあるオノマトペの意味の史的変遷を辿っている。文学作品からの用例も豊富であり、そういう意味だったのかと学ぶものも多い。例えば中世の「ふわふわ」は「膨れてみっともない」というマイナス評価のイメージだったようだ。

本の画象

角川選書(1700円+税)
2015年8月刊
文藝春秋編
「文學界」  2015年10月号

 特集は「酒とつまみと小説と」である。酒を飲みながらの「小説」ってどんなだろう、という素朴な関心を誘う特集。また「名門校国語教師が芥川賞で試験問題を作ってみた」という特集もある。「まあ、そりゃできるでしょ」と思うが、何だか面白くしようとする意図が感じられてよかった。「酒とつまみと俳句と」ではインパクトがないかな。試験問題はちょっと無理だな。

本の画象

文藝春秋(970円・税込)
2015年10月刊


今泉凡蔵の推す2冊

吉野 弘著
『詩の一歩手前で』

 〜下唇をかんで/つらい気持で/美しい夕焼けも見ないで。(「夕焼け」)で知られる詩人の『遊動視点』後半部の文庫化。やさしさ故の哀しみ、怒り、やりきれなさ、生き辛さが語られる。ここが、書名通り詩人の詩の一歩手前であれば、どのように言葉を紡いで詩へと昇華したのか。改めて俳句の言葉と自分にとっての1歩手前を考える。

本の画象

河出文庫(620円+税)
2015年9月刊
大岡 玲著
『たすけて、おとうさん』

 本歌取が、元の歌を踏まえているが故に、新しい歌はあらたな重層的な詩の世界を獲得する。作者は名作に刺激され自分の文学世界を構築した。どれほど本歌を越えているかは読者の元の作品への思い入れ次第だろう。個人的嗜好は文学の評価にはならないが、元の世界に近い「負けるようには創られていない」(老人と海)がぼくは好きだ。

本の画象

平凡社(1800円+税)
2015年7月刊



2015年10月5日号(e船団書評委員会)

宇都宮哲の推す1冊


新海 均著
『司馬遼太郎と詩歌句を歩く』

本の画象

  司馬遼太郎の作品で、漢詩、和歌・短歌、俳句、俗曲などの詩歌句が挿入されて、作品を味わい深くするために効果を上げていたことを今まであまり意識しなかった。本著では、『燃えよ剣』『竜馬がゆく』『峠』など膨大な作品群のから引用された詩歌句が丹念に拾い上げられ、司馬文学の魅力のひとつなっていることが明らかされている。
 子規逝くや十七日の月明に
 近代日本の黎明期を描いた大作『坂の上の雲』に挿入されている虚子の句であるが、同作品のなかで最も美しくそして哀しい子規の臨終の場面を表現するのに、この一句は点を打つように劇的効果をもたらしている。著者は言う「司馬遼太郎は詩人になりたかったのかもしれない」と。そんな視点で司馬作品を今一度読み返しても面白いだろう。

潮出版社(2100円+税)
2015年2月刊


鈴木ひさしの推す2冊

アダム・カバット編
『江戸化物草紙』

 幼い頃、実家と同じ集落にある家で通夜があった。遅くなるからと、一人で帰らされ、闇の中の300メートルほどの農道を全速力で走った記憶。あの闇の中には、無数の得体の知れないものが確かにうごめいていた。筆者にとっての化物の記憶である。この本に出てくる化物たちには現実の「性」がある。宮崎駿のアニメで見たような絵もいくつかある。まず、化物たちが動き出すまで、絵を隅々まで見る。それから文章を読む。それが、草双紙の読み方だろう。

本の画象

角川ソフィア文庫(1000円+税)
2015年8月刊
森枝卓士著
『カレーライスと日本人』

 カレーではなくカレーライスである。いつ、どこで、だれと、どんなカレーライスを食べたのか、その記憶をたどるだけで、それぞれのなつかしい半生がよみがえる。それほどなじみ深いカレーライスを、日本人はなぜ好きなのか。最後にさらにカレーを知るための本の紹介がある。やはり、辛島昇と中島岳志の本がカレーから縦横に世界を広げてくれる。著者は漫画『華麗なる食卓』の監修者でもある。
本の画象

講談社学術文庫(900円+税)
2015年8月刊



2015年9月28日号(e船団書評委員会)

武馬久仁裕の推す2冊

星野昌彦著
『陽鬼集』

 おびただしい、おぞましい言葉が、著者83歳の第17句集には満ちている。「汚染」「オスプレイ」「集団的自衛」「徴兵」……。この世界では、平和な日常をおぞましい日常が包み込む。「焼芋をつつむ昨日の新聞紙」。多くの物は「曖昧に鯰は生きる甕の底」である。そして、「広辞苑隣りは大言海真冬」。二大日本語辞典は「海真冬」と、真冬の海の中に隣り合わせに漂うのである。

本の画象

春夏秋冬叢書(3000円・税込)
2015年7月刊
波田野節子著
『李光洙(イ・グァンス)』
―韓国近代文学の祖と「親日」の烙印―

 本書は、日本の植民地下朝鮮で最初の近代的小説を書いた李光洙(1892−1950?)が、「親日反民族行為者」にならなければならなかった過程を分析し、彼の名誉を、回復しようとしたものである。本書を読んで思うことは、もし自分が、宗主国の学問・言語を身に着けた植民地の民であったとしたら、一人の人間としてどのように生きることが可能であろうか、ということである。

本の画象

中公新書(820円+税)
2015年6月刊


塩谷則子の推す2冊

星永文夫著
『山頭火私記』

 山頭火の遺児の種田健氏は「あれはぐうたらに生きたというだけ。世間はかいかぶっている。」と話したという。「自ら捨てておきながら、寂しさに耐えきれずまた(熊本の家族に)頼ってしまう」ぐうたらさが「人間としておもしろい」。その甘えや愚が句と文章に表現されていると筆者はいう。
 捨てきれない荷物のおもさまえうしろ  山頭火

本の画象

文學の森(2800円+税)
2015年7月刊
笹公人・矢吹申彦・俵万智・和田誠著
『連句日和』

 石垣島在住の俵万智を途中から加えたファックスでの歌仙と解説が七つ。四人の文章。「超入門書として、おすすめしたい。」の言葉どおりの本。

見上げれば視界果てなく鰯雲  和田誠
  焼き網洗ふ独居老人  矢吹申彦
皿の上のヤクルトの蓋きらめけり  笹公人
  なんでもオモチャにできたあの頃  俵万智


本の画象

自由国民社(1800円+税)
2015年9月刊



2015年9月21日号(e船団書評委員会)

藤田 俊の推す1冊


柴田元幸責任編集
「MONKEY」Vol.6
―音楽の聞こえる話―

本の画象

 音楽の聞こえてきそうな外国文学の翻訳、書き下ろしの小説、エッセイ、短歌等を所収。たまたま発生した音、人の手が入った音楽、固有名を持つ商品化された音楽、間隙の静寂、音楽にまつわるあれこれ等様々な形で音楽にアプローチ。穂村弘の短歌は音楽室に充満している音楽の気配や、十二支によるオーケストラ等を提示。手書きの前書き、各作品の紹介コメント、後記等随所に編集側の楽しさが出ている。外国の作家「ウォルター・デ・ラ・メア」、「スチュアート・ダイベック」は名前自体が音楽的。大瀧詠一さんが無人島に持っていくCDを訊かれて音ではなく本(60年代のヒットチャートとアーティストのカタログ)を挙げたという話を読んだことがあるが、この本もいいかもしれない。

スイッチパブリッシング(1000円+税)
2015年6月刊


舩井春奈の推す1冊


安福 望著
『食器と食パンとペン』
私の好きな短歌

本の画象

 Twitterで眺めていた画が一冊にまとめられた。ある一人の画家の感性によって優しいペン画で表現されたのは、三十一文字で織りなす短歌の世界。鑑賞文はよくあるも、鑑賞画となればそう多くはない。作者の手から離れた作品は、それぞれの読み手に鑑賞を委ねられているという誰かサンの理論を視覚的に垣間見ている感じ。

    毛布にはちいさな熊が住んでいて春はまだだと伝えたりする

    縦書きの国に生まれて雨降りは物語だと存じています

    ひとまわりおおきなカバが現れておいしいとこをもっていきます

 自分の読みと共感したり、こうきたかと感心したり。そしてほんわか優しい気持ちになる。
 え?もう言葉はよい?
 はい、それではページをめくって画をご覧ください。

キノブックス(1600円+税)
2015年7月刊



2015年9月14日号(e船団書評委員会)

太田靖子の推す2冊

松尾あつゆき著
『原爆句抄』

 著者は昭和20年8月9日長崎で被爆、妻と三児を失った。さらに、日夜生死をさまよう長女を看護するなかで職を解雇される。被爆当日から日記を書き始め、それが俳句を作る原点となったようだ。「あわれ七ケ月のいのちの、はなびらのような骨かな」「後にのこって生きているゆえに墓の草をぬく」。日本人なら是非手にしてほしい本。

本の画象

書肆侃侃房(1300円+税)
2015年3月刊
小野恵美子著
『水原秋櫻子 一句の風景』

 『馬醉木』同人の著者。新しい秋櫻子を見せたいとの思いから、今まで世に出ることの少なかった句を中心に取り上げ執筆。句の解説から、著者の秋櫻子に対する造詣の深さが伺え、句の背景に見え隠れする秋櫻子の人生まで読める。「影ならぶむかしながらの月の下」は、家族を詠むことを潔しとしなかった秋櫻子の珍しい句などと。

本の画象

ふらんす堂(1800円+税)
2015年5月刊


静 誠司の推す2冊

尹東柱詩集/上野都・翻訳
『空と風と星と詩』

 日本に留学後わずか28歳で獄死し、その後祖国韓国で民族詩人と称されるようになった尹東柱(ユンドンジュン)。没後刊行され彼が世に知られるきっかけとなった詩集が今回新訳で再刊された。悲劇的な経歴とは全くつながりのない、純粋で叙情的な作品の数々が逆に彼の悲劇を際立たせる。中でも「序詩」という作品は韓国で愛唱詩の1位に選ばれた詩だそうです。

本の画象

コールサック社(1500円+税)
2015年7月刊
株式会社伊藤園・マガジンハウス編集部編
『お〜い俳句』
 伊藤園おーいお茶
 新俳句大賞傑作選


 街中で売られるペットボトルに詩が印刷されている国って世界で他にあるのでしょうか。ちょっと誇りに思っていいのでは。がんばれ伊藤園! 今回、過去の入賞作107句がほのぼのイラスト付きで一冊にまとめられました。いつかどこかでお目にかかった作品と再会できることでしょう。
  山眠るひいばあちゃんの黒電話
  (祝しずく・10歳)

本の画象

マガジンハウス(1000円+税)
2015年7月刊



2015年9月7日号(e船団書評委員会)

田中俊弥の推す1冊


又吉直樹著
『火花』

本の画象

 「神谷さんの頭上には泰然と三日月がある。その美しさは平凡な奇跡だ。」は、第153回芥川賞を受賞した作品『火花』末尾の一節。「『師匠、この楓だけ葉が緑です。』と僕が言うと、『新人のおっちゃんが塗り忘れたんやろな』と神谷さんが即答した。『神様にそういう部署あるんですか?』と僕が言うと、『違う。作業着のおっちゃん。片方の靴下に穴開いたままの、前歯が欠けてるおっちゃんや』と神谷さんが言った。」とは、まさに俳諧の呼吸。「僕は蠅きみはコオロギあれは海」「母親のお土産メロン蠅だらけ」は、あほんだらの神谷さんが泣き止 まない赤子に披露した「蠅川柳」。スパークする火花と放列する花火。芸人・又吉直樹は、平成の俳諧師なのだ。

文藝春秋(1600円+税)
2015年3月刊


紀本直美の推す2冊

五味太郎作
『ことばのいたずら』

 その1〜その24までのことばのいたずら。「てんどん かつどん よーいどん」など、口に出して楽しいいたずらや、大人が「うーん」と唸るいたずらも。力が抜けていて、くだらなくておもしろいことばがたくさん。そもそも、いたずらができることばってなんだろう?? 理屈ではなく感覚で楽しむ絵本。

本の画象

絵本館(1300円+税)
2015年4月刊
近藤 史恵著
『ヴァン・ショーをあなたに』

 下町の小さなフレンチレストラン、「ビストロ・パ・マル」を舞台にした、ミステリ連作短編集。ちょっと偏屈でぶっきらぼうな三舟シェフが、おいしい料理を作りながら謎を解いていきます。お酒が飲めない私が、ヴァン・ショーを飲んでみたくなりました! 第一作の『タルト・タタンの夢』もおすすめです。

本の画象

創元推理文庫(700円+税)
2015年2月刊



2015年8月24日号(e船団書評委員会)

原 ゆきの推す2冊

『関西俳句なう』

 思いきりかぶりついてはみたものの、このハンバーガーの具沢山なこと! レタスはみ出す、おー顎はずれる。大体人間の咀嚼能力超えてるだろ、26名の若手俳人の50句(!)と往復書簡。エッセイ。迷惑だなー食後の顎の疲れよ。しかし何だ?この充足感。感想の一句をすぐ作っちゃった。「門とばかり思っていたら虹だった」。

本の画象

本阿弥書店(1600円+税)
2015年3月刊
石井桃子著
石井桃子コレクションX
『エッセイ集』

 1977年のエッセイにある “子どもの心を打つお話には「形容詞」と「情景描写」が少ない”に驚いた。ラフカディオ・ハーンも北欧伝説について同様のことを述べているという。この二人の言葉は、文章に対する私の思い込みを強く揺らす。「あれ? 文章って、そもそも、どういうものだっけ?」と困りはじめて、楽しい。

本の画象

岩波現代文庫(1220円+税)
2015年5月刊


赤石 忍の推す2冊

吉本隆明著
『吉本隆明全集』
(全38巻+別巻1)

 40数年ほど前、多くの学生の本棚には、勁草書房版の何冊かが並んでいた。理解の度合いはともあれ、それが当時のステータスだった。昨年3月から晶文社より、未収録の作品、講演録、書簡等を含めて、「擬制の終焉」等から成る第6巻を端緒に、38巻という膨大な全集の刊行が開始されている。若い人ほど、隆明を再検討して欲しいと思う。

本の画象

晶文社(第4巻6400円+税)
2015年3月〜刊
田中淑恵著
『本の夢
 小さな夢の本』


 著者は宇野千代をはじめ、著名な作家、詩人のブックデザインを生業とする装丁家。それとともに、素敵なミニチュア・ブックを作る豆本作家でもある。豆本なら版元の希望に惑わされずに、好きな紙や皮を自由に使って本を作ることができる。本書はその豆本の作り方を含めて、様々な著者との関わり合いを綴った素敵なエッセイ集に仕上がっている。

本の画象

芸術新聞社(2200円+税)
2015年6月刊



2015年8月24日号(e船団書評委員会)

今泉凡蔵の推す2冊

鶴見俊輔・文/佐々木マキ・絵
『わたしが外人だったころ』

 外人って? 戦時交換船で帰国した自分自身が故国日本では外人である、と感じたという。『鶴見俊輔全詩集』(編集グループSURE)に心惹かれる。同時代的な感覚では、ベ平連は都会的な軟弱さを売り物にしていたように感じていた。が、重要なことは今、見えてきている。持続する意志が大切なのだ。この詩集は耄碌とは程遠い意志の地平に立っている。

本の画象

福音館書店(2000円+税)
2015年5月刊
古川緑波著
『ロッパ日記代わり
 手当り次第』


 気持ちよいほどに、言い切る。斬り捨て御免の言い回しだ。映画、舞台、俳優、歌手、食、なんでもござれ。短い物言いのなかに語り尽くしている見事な文体。もちろん読まれることは前提にしているので、純然たる日記ではない。それぞれの短文の最後の1行に愉快な俳句的世界を見つけて、ぼくは喜ぶ。曰く、〜宿屋のミソ汁よ、薄なさけであるなかれ。

本の画象

河出書房新社(2500円+税)
2015年4月刊


香川昭子の推す2冊

北村恭久子・西村亜紀子・室展子著
合同句集『三光鳥』

 同じ年三人による合同句集。読みおえて三人の俳句の違いと船団に入るまでの句歴との関係を考えた。面白い試みの句集。

 爽やかにハイタッチして別れけり 恭久子
 大男総身に吹くひょんの笛   亜紀子
 秋日和名字の同じ家つづき   展 子

本の画象

北斗書房(頒価1000円)
2015年5月刊
ミラン・クンデラ著/西永良成訳
『無意味の祝祭』

 軽い文体。流れているのはクールというか虚無にちかい笑い。たとえば「無意味は人生の本質だ。」「輝かしいことの無益さ」「この世界をひっくり返すことも作り直すこともできない。可能な抵抗はこの世界を真面目にうけとらないということ」。帯文はこんな。「徹頭徹尾、不真面目に歴史、政治、社会風俗を笑いのめす」。

本の画象

河出書房新社(1800円+税)
2015年4月刊



2015年8月17日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊

谷川俊太郎詩集
『あたしとあなた』

 名久井直子という方の装丁による詩集。薄いブルーの紙に印刷された一つ一つの詩が美しい。そもそも本というのは、こういうものだったんだろうという思いを強くした。手もとに置いておきたいなと思える本の一つのあり方がこうなんだろう。詩にたち現れる「あたし」と「あなた」もその輝きの中にあるような気がした。

本の画象

ナナロク社(2000円+税)
2015年7月刊
夏井いつき句集
『伊月集 龍』

 夏井いつきさんの第一句集が、「伊月集」という全体の中に置き直され、今回再出版された。ほとんど正方形の本の中に作者の三十代までの句が収められている。ずっと以前に読んだ時と今では、自分も歳をとった分だけ、読後感が違った。その時その時の句があるな、という自分の思いの率直さにちょっと驚いた。

本の画象

朝日出版社(2500円+税)
2015年7月刊


鈴木ひさしの推す2冊

岡本太郎著
『日本再発見』
芸術風土記

 1957年の文章、写真の文庫化。「角巻きの女」の目、なまはげの目、浦上天主堂の唐獅子の目。生身の人間であれ、人形であれ、撮影する著者の凝視する視線と、反射する被写体の感情と意思と生活を、その目から見る者に読みとらせる。文章は荒削りで力強い。今、エキスポ跡地に大きな建造物が出来つつある。「太陽の塔」が小さくなっていく。

本の画象

角川ソフィア文庫(1000円+税)
2015年7月刊
保坂渉・池谷孝司著
『子どもの貧困連鎖』

 「格差」は、「格差」を全く感じなくて済む人々と、日々身にしみて感じている人々との「格差」でもある。この本は、「子どもの貧困」とその連鎖を断ち切ろうとしている人々の記録だが、現実はもっと生々しく厳しいだろう。この問題は、これからの日本の文化を含めた全てにかかわることである。いつもけれん味のない津村記久子さんの解説もいい。

本の画象

新潮文庫(550円+税)
2015年6月刊



2015年8月10日号(e船団書評委員会)

宇都宮哲の推す2冊

筒井康隆著
『世界はゴ冗談』

 奇妙キテレツで前衛・挑戦的な筒井ワールド炸裂の短編集。なかでも『ペニスに命中は』は、認知症らしき老人のハチャメチャな言動を一人称で書きすすめたもので、脳みそが掻き回されそうで読解不能に。でも、ぶっ飛んだ感性と展開に圧倒されながら読みつないでしまい、読後には、なぜかもの悲しいおかしさがこみあげてくる。どの作品も、荒唐無稽な発想とストーリーが相変わらず刺激的だが、その根底にあるのは御歳80にして痛烈は批判精神かも。

本の画象

新潮社(1500円+税)
2015年4月刊
隅垣 健著
『八月のサーカス』

 新聞の投稿欄の一文を素材にして生まれた短編小説。一人の少年が終戦の夏に体験した辛く悲しい想い出を綴ったものであるが、著者は淡々としたわかりやすい文章で物語を紡いでおり、往時の光景が目に浮かぶとともに胸に迫ってくる。また、素朴なタッチの挿画(著者作)がふんだんに使われていて絵本としても読める。ぜひ、子供たちに読んでもらって語り継いでほしい。その悲惨な現実と、そして希望とは何かを……。

本の画象

京都新聞出版センター(1200円+税)
2015年6月刊


塩谷則子の推す2冊

福島泰樹著
『歌人の死』

 62年、19歳から短歌を作り始めた筆者の回顧録。ほとんど同時代人の29名が登場。歌との出会いは、塚本邦雄の「少女死するまで炎天の縄跳びみづからの圓駆け抜けられぬ」。だから前衛短歌やその作者の話が中心となる。しかし、面白いのは河野裕子の生・死と蝉の声の関係論。忌日を「かなかな忌」と名づけたくなる。

本の画象

東洋出版(1800円+税)
2015年6月刊
四元康祐著
『現代ニッポン詩(うた)日記』

 「俺がここにいるってことに/誰一人気づいてくれない/男は呟いた/私たちは答えて云った/「一万円からで/よろしかったですか?」/そして深々と頭をさげた」秋葉原無差別連続殺傷事件のニュースは筆者のいたルーマニアの国際詩祭にも届く。人が消費者として扱われる時代になったとの意見に参加者全員黙り込む、など慷慨の詩文。

本の画象

澪標(1600円+税)
2015年8月刊

[e船団・週刊ブックレビュー]バックナンバー



2015年8月3日号(e船団書評委員会)

武馬久仁裕の推す2冊

井辻朱美責任編集
「北冬」No.16
特集・[現在]から抜け出る方法と〈詩の力〉

 多くの論者が取り上げているのは井辻の昨年の歌集『クラウド』である。ファンタジー文学の研究者である井辻の「翼竜のたまごをのせて回りつづけるギアナ高地の風のテーブル」「海の泡 風を削ぐ枝 かずかぎりないものに疲れたこの世の夕焼け」などが論じられている。しかし、私は、誰も取り上げていない「しゅぱしゅぱとひれ打つような音を立て波打ちぎわのビーチサンダル」といった歌の、不可思議な音の源が明かされた後でも残る不可解さに心惹かれるのである。

本の画象

北冬舎(864円・税込)
2015年6月刊
川田 稔著
『昭和陸軍全史3』
太平洋戦争

 日米開戦は英国を巡ってなされた。大東亜共栄圏建設は、英国がアジアに持つ植民地を奪うことであった。ドイツと戦争中の英国はそれを失えば破滅である。英国を守ろうとする米国との衝突は必然であった。それに対して、米国に譲歩し戦争を回避しようとした武藤軍務局長であるが、陸軍が獲得した中国での特殊権益の放棄、全面撤兵までは遂に譲歩できなかった。それで大勢は決した。おびただしい内外の死者を生んだ戦争の始まりであった。

本の画象

講談社現代新書(1200円+税)
2015年6月刊


藤田 俊の推す2冊

cero
『Obscure Ride』(CDの歌詞)

 「終日(ひねもす) 霧雨の薄明かりが包む 白夜の火曜」、「開けっ放した窓から次の季節の夜が入ってくる」、「LEDの雪が降る」といった歌詞や、“夜去”(ようさり)という曲名が興味深い。「終日」は「しゅうじつ」ではなく「ひねもす」が音として合う。都会的で粋なブラックミュージック寄りの音に乗る「そんで」、「すなわち…」といった言葉の気持ち良さ。

本の画象

カクバリズム(2900円・税込)
2015年5月刊
柴崎友香著
『虹色と幸運』

 外にあるものを写生的に記述したほうが具体的で個性的になる。この人がまさにそう。「空の薄い水色を春の色だと思った」、「欅並木の細長い影が、かおりと珠子を通り過ぎていった」など。「た」で文を終えることが多いが、次々と捉える外部を言葉にする時の遅れの表れか。よく出てくる「やかんに水を入れてコンロにかけた」という文がくつろぎをもたらす。

本の画象

ちくま文庫(821円・税込)
2015年4月刊



2015年7月27日号(e船団書評委員会)

紀本直美の推す2冊

あまんきみこ/作・垂石眞子/絵
『わたしのかさはそらのいろ』

 「わたしの かさは そらの いろ あめの なかでも あったかい」一度読んだら、そのまますとんと心に入るフレーズ。雨の中、子どもと一緒に口ずさみながら歩いたら、しとしとあめが、じわっとあたたかくなりそう。イラストから、行間から、文節から、言葉ひとつひとつから、あたたかさが伝わってくる絵本。

本の画象

福音館書店(2300円+税)
2015年4月刊
いまもりみつひこ/きりえ・ぶん
『とんだとんだ』

 大津在住の今森光彦氏は、里山や昆虫を撮る写真家でペーパークラフト作家。ページをめくる度に、色とりどりのちょうちょがとんできます。私が見ているつもりになっているちょうちょは本物と全然違うんだよ、と、いまもりさんの切り絵のちょうちょが教えてくれます。いつまでもずーっとじーっと見つめていたいです。

本の画象

福音館書店(800円+税)
2015年4月刊


静 誠司の推す2冊

串田久治・諸田龍美著
『漢詩酔談』

 酒にまつわる漢詩について、二人の著者(お二人とも大のお酒好き)が最大の愛を傾けて語り尽くす、とても愉快でわかりやすい対談集。取り上げられるのは、陶淵明、李白、杜甫……といった名だたる詩人たち。酒というチャンネルを通してこれらの詩人の作品を改めて読むと、作品がより身近なものとなっていくのが楽しい。

本の画象

大修館書店(1800円+税)
2015年6月刊
山口謡司著
『ディストピアとユートピア』

 とても漢詩の本とは思えないポップなデザインの表紙。帯コピーの大げさな文句。漱石や杜甫ら五人の漢詩について語られる脈絡がないような展開。それらに戸惑いながら、しかしたどり着いたのは、どこかさわやかな読後感。ユートピアとしての漢詩、いや文学を語ろうという筆者の一途な思いが伝わってくる。不思議な魅力のある書である。

本の画象

dZERO(1900円+税)
2015年6月刊



2015年7月20日号(e船団書評委員会)

太田靖子の推す2冊

鈴木康史編
『和合亮一が語る福島』

 奈良女子大学文学部が東日本大震災後、何かできることをとの思いから生まれた本。同大での福島の詩人和合の講演会、和合への同大生のインタヴューと福島訪問からなる。震災直後の和合の詩誕生の経緯、詩とは何か、2014年の福島の状況について知れる。福島に、和合の詩を掲げた74本の街路樹があるという。見たくなった。

本の画象

かもがわ出版(1600円+税)
2015年4月刊
幸田露伴著
『芭蕉入門』

 露伴は、俳諧が単に花鳥月露を扱うものではなく、小説的・戯曲的な要素を多分に持つものだと力説する。芭蕉の句を解説する際には、誉めもするが「悪句である。観念浅露の句、嫌いな句」などと言い切りもする。果たしてどうなのか、露伴の意見も参考にしながら、自分の俳句鑑賞眼をじっくり養う手引きにしたい本。

本の画象

講談社文芸文庫(1350円+税)
2015年4月刊


田中俊弥の推す2冊

皆川明絵・谷川俊太郎文
『はいくないきもの』

 過日、NHKに出演していた谷川俊太郎によると、皆川明から届けられたある不可 思議な生きものの絵に、谷川俊太郎がことばを添えて絵本をつくるということで 本書は生まれた。皆川明の絵にぴったりな言語表現、それは五七五だった。「ん ぱぶさな/けしきひろびろ/あっぺくも」、表紙絵の作品。詳細は、実際をご覧 あれ。

本の画象

クレヨンハウス(1200円+税)
2015年4月刊
澤田瞳子著
小学館の図鑑・NEO
新版『魚』DVDつき

 図鑑は、多様性の宝庫である。整然とカテゴライズされた配列は、体系的な思考 を培うのに実は大いに役立っているのではないか。図鑑づくりは、途方もなく経 費と労力のかかる仕事でありながら、こういうものが更新されつづけられるから こそ、文化は厚みをもって豊穣になるのではないか。いまこそ図鑑の時代なのだ。

本の画象

小学館(2000円+税)
2015年6月刊



2015年7月13日号(e船団書評委員会)

舩井春奈の推す1冊

   

『芸人と俳人』

本の画象

 今日の文壇を賑わせているお笑い芸人ピースの又吉さん。小説では芥川賞の候補になったことも記憶に新しい。もともと又吉さんは自由律俳句集『カキフライが無ければ来なかった』他を出版しており、次に手を広げてみたのが定型俳句。俳句の手ほどきを堀本氏から会話形式で受け、実作もしているのがこの本。
 俳句をお笑い芸人が挑戦してみる意外性に加え、堅苦しい対談ではなく軽い口調で、堀本氏より俳句の何たるやをしっかり教えてくれている入門書。それでいて新旧入り混じった俳句も取り上げられていることもあり、比較的幅広い人に読んでもらいやすい一冊なのでは?

   投扇のごとく蟷螂飛びにけり   堀本裕樹
   石鹸玉飲んだから多分死ぬ   又吉直樹

集英社(1300円+税)
2015年5月刊


赤石 忍の推す2冊

渡辺 利夫著
『放哉と山頭火』
死を生きる

 現世からの逃避、過去への執着からの解放。それらの願望を意識に潜ませながら、しかし、決して叶えることができない業とともに生きていくのが人であり、その極地で、死に向かって直線的に疾走していったのが放哉であり山頭火だったと言う。著者は開発経済を専門とする学者。その時代に根ざす専門性と「時空の一瞬を切り取って写し取るのが単律句の極み」という見方とは、確かに通じるところがあるように思う。

本の画象

ちくま文庫(800円+税)
2015年6月刊
三島由紀夫著
『命売ります』

 「読んだ人が見事と唸る三島由紀夫の極上エンタメ小説」と手書きっぽい帶に巻かれて山と積まれていては買わない訳にはいかない。没後45年か。舞台の函館での高校生時、「夏子、やっぱり修道院に入る」で終わる『夏子の冒険』を読んで以来、三島のエンタメ小説も悪くないなと思っている私だが本書はどうも。しかしこれが「豊饒の海四部作」の最中に書かれたなんて。硬軟併せ持つ、その天才性を改めて感じる。
本の画象

ちくま文庫(680円+税)
1998年2月刊(重版出来)



2015年7月6日号(e船団書評委員会)

香川昭子の推す1冊


荒川洋治著
『文学の空気のあるところ』

本の画象

 小説や詩歌にまつわる講演を収めたもの。面白い、楽しい。こんな箇所に付箋。「山之口貘の詩に生活はあっても、詩人にとっての生活は何かという答えはない。詩とはなにかに答がないように。ただ、いろいろな描き方をしていくなかで、生活することの面白さ、楽しさ、あるいは悲しさ、そういったものを感じていくという、それが詩です。」「小説とちがって詩は、どんないいものが現れても絶対にほめないという世界なんですよ。(笑) そこがいい。ああいい詩がかけたなとおもうでしょう、そんなものはすぐへし折られちゃう。ことばを尽くして批判されるんです。そのために、努力する、―〈中略〉―ちがう手法でやってみようかなどと、いろいろ考える。」

中央公論新社(2000円+税)
2015年6月刊


千坂希妙の推す2冊

わたなべじゅんこ著
『歩けば俳人』

 文人、詩人、画人など、俳句を本業としないが俳句を好んだ十四人の句を取り上げた。俳句というジャンルをより明確に把握しようとする著者の探究心が伝わってくる。果たして俳人の俳句とは異なるのか否か。内田百閧ヘ「文壇人の俳句は殆ど駄目だといって差し支えない」と書いているという。小説、随筆へ発展する発句だったのだろうか。

本の画象

巴書林(2000円+税)
2015年4月刊
多田 将著
『宇宙のはじまり』

 どんなに権威ある科学者の宇宙論でもそのまま鵜呑みにするのはアブナイ。と思っているのだが、本書は素粒子の研究から分かりやすく宇宙を説く。今世紀に入ってヒッグス粒子の存在が証明されたが極大の宇宙と極小の素粒子の共通性がより明白になってきた。今後この両方にさらに新しい発見があるだろう。それが今から待ち遠しい。
本の画象

イースト新書Q(760円+税)
2015年5月刊


トップへ戻る