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2016年6月27日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの押す2冊

川村二郎著
国語学者 大野晋の生涯
『孤高』

 日本語の起源を探求し続けた著名な国語学者大野晋が、日本語のタミル語起源説を唱え始めたのは60歳。当時、唐突の感があったが、この本を読むと、様々な意味で大野晋だからできたことだと思う。なりふり構わず、本気で日本語に対峙した一人の国語学者の生涯である。名が語り継がれるだけでなく、その研究は引き継がれていくのだろうか。

本の画象

集英社文庫(740円+税)
2015年10月刊
古橋信孝著
『文学はなぜ必要か』

 著者が一番言いたいことは、「文学はおもしろい」ということなのだろう。文学のおもしろさと必要性を力説しなければならないほど今日の状況は深刻だ。「時代、社会の関心で読む」という著者の文学史の見方に基づいて、『古事記』から伊藤計劃まで登場する。この本の近代はほとんど推理小説史である。「私」がしばしば登場し、エッセーとしても楽しめる本である。

本の画象

笠間書院(2400円+税)
2015年11月刊


若林武史の推す2冊

最果タヒ詩集
『夜空はいつでも
最高密度の青色だ』


 以前、図書館で『死んでしまう系のぼくらに』という詩集を読んだ。今回、本屋でその作者の最新作を手にした。前作同様、若い言葉で溢れている。今の自分には書けないな(以前の自分にも書けないけど)と思う。縦書きと横書きの詩が交錯する詩集だ。愛と死と生の匂いでいっぱいだ。

本の画象

リトルモア(1200円+税)
2016年5月刊
後藤正文著
『何度でも
オールライトと歌え』


 ASIAN KANG-FU GENERATIONというロックバンドで活躍している筆者の身辺雑記をまとめた一冊。原発や震災や身近で遭遇した老人たちに関する文章も多い。日常感覚での思索。国分功一郎と硬度は異なるが、社会に向き合う一人の人間の意見という点でつながる点があるなと思った。

本の画象

ミシマ社(1500円+税)
2016年5月刊



2016年6月20日号(e船団書評委員会)

塩谷則子の推す2冊

捨女を読む会(小林孔・坪内稔典・田彰子)編著
『捨女句集 』

 名前だけ知っていた田捨女(1633〜1698)の句を読むことができた。うれしい。明るい句が多い。自筆句集の242句を翻刻。掛詞などのことばの遊び(機智)・典拠を丁寧に説明した注解がついていて、読解を助けてくれる。「なけやなけいまはいつなん時の鳥」の注は「時鳥」と書いてほととぎす。7名の捨女についての文もそれぞれ味わい深い。

本の画象

和泉書院(1500円+税)
2016年5月刊
神山睦美著
『日々、フェイスブック』

 月額400円で160誌読み放題のアプリがあるスマホ。マガジンはなくなる?と思う時代の変わり目。3年間日々フェイスブックに投稿し、いいね!の文を選びテーマ別に並べた本。短くて読み易い。『風の又三郎』の「どっどど どどうど どどうど どどう」は坂上田村麻呂に滅ぼされた蝦夷のアルタイのリズムだなど。やっぱりいいね!
本の画象

澪標(1800円+税)
2016年4月刊


宇都宮哲の推す1冊


吉増剛造著

『我が詩的自伝』
素手で焔をつかみとれ!
本の画象

 『宇宙は女ギツネの肛門にある』という刺激的な1節のある詩・「出発」を学生の頃に読んで以来、その過激さと難解さに、憧れと嫌悪の入り交じった複雑な眼で見つめてきた詩人・吉増剛造。そのgozoが幼い頃の体験や交友関係など疾走する自身の詩人精神の軌跡を、自作の詩を交えてまるで詩を朗読するがごとく赤裸々に語った。常に先鋭的であり続ける詩人の“遙かな夜の底の方から聞こえてくる“ような生々しい肉声が強烈で、詩が生み出されていく臨場感が伝わってくる。全章いずれも興味深いテーマばかりだが、気になったのが、芭蕉評の短い一文。『翁は獣(けもの)性を背負っている。蝉、猿、馬、鴨、蛙などの句が生動を放っており、隔世の太古の息吹が感じられる』と。そして『軽みは獣性だ』とまで。ちなみにgozoの卒論のテーマは芭蕉だったそうだが、現代の俳人にも影響を与えているように思うが、どうだろうか……。

講談社現代新書(900円+税)
2016年4月刊



2016年6月13日号(e船団書評委員会)

藤田 俊の押す2冊

TV Bros.編集部編
『イナカ川柳』
農作業 しなくてよいは ウソだった

 国滅びてイオンあり。テレビ雑誌に投稿された、空洞化と少子高齢化が進む田舎のリアルを400句所収。バイパスや嫁、家畜といったテーマごとに集められた、身の丈と振る舞いのズレ、都会的に振る舞おうとした時に入る田舎的雑音、都会と似て大いに非なるもの、といった田舎のあるあるが悲哀混じりの苦笑いをもたらす。

本の画象

文藝春秋(1200円+税)
2016年4月刊
岸本佐知子、三浦しをん、吉田篤弘、吉田浩美著
「『罪と罰』を読まない」

 なんとなく知っている名作で、わずか数ページを頼りに内容を推測する未読読書会。「読む」とはどういうことか、いつ始まりいつ終わるのか、笑わせつつ考えさせる。本筋と関係ないが美しい絵として印象に残る、黒髪でないのに「黒山の人だかり」という訳語が気になる、といった指摘に唸る。ロシアの人名に苦しみながらも盛り上がるメンバー。句集『ペンギンと桜』が話題の芳野さんに「ポチンコフ」をお題に作ってもらいたい。

本の画象

文藝春秋(1550円+税)
2015年12月刊


武馬久仁裕の推す2冊

高岡修句集
『水の蝶』

 「波がしら幾億の蝶翔びたたせ」限りなく寄せ来る白い波がしらが空中に散る時、それらは蝶となって飛び立つ。美しい光景であると同時に凄まじい光景である。限りない人の思いが凝って蝶となり天上へと去って行くかのようである。「死者の胸の春愁を翔つ水の蝶」もまたそうである。蝶は死の影を纏っている。3・11への鎮魂の句集である。

本の画象

ジャプラン(1700円+税)
2015年12月刊
吉野孝雄著
『外骨戦中日記』

 硬骨のジャーナリスト宮武外骨の昭和19年から21年にかけての日記を読み解いた本であるが、日記自体も興味深い。例えば、昭和20年8月の「十四日 火 降伏 ツリ二」「十五日 水    ツリ」。これだけだ。14日は降伏とあるが、15日に放送はない。空白に放送の2字があれば、放送を聞き、釣に出かけたことになる。だが、空白だ。ではなぜか。そこが外骨の批評性であろう。

本の画象

河出書房新社(2000円+税)
2016年5月刊



2016年6月6日号(e船団書評委員会)

静 誠司の押す2冊

田辺聖子著
『おくのほそ道を旅しよう』

 1989年に刊行されたものの再文庫化。筆者の熱心な読者ではない私であるが、芭蕉の原文の世界と、筆者が旅する現実部分との融合ぐあいが絶妙であることに感心しきりである。行く先々で色紙を頼まれると即興の和歌で応えるあたりのセンスにも脱帽。欲を言えば芭蕉の旅だけに一句で応えて欲しかったな、何て言ったら、嫌がられるだろうな。

本の画象

角川ソフィア文庫(740円+税)
2016年4月刊
三宮貞雄著
『コンビニ店長の残酷日記』

 実際にコンビニのオーナーである筆者(仮名)による、日記形式で綴る24時間営業の実状。日記形式であるがゆえに、季節感を体現するというコンビニの役割が図らずも浮き彫りにされている。コンビニ大好きな私ではあるが、これを読むと、決してレジの向こう側には立たない方がいいなと、せめて良い客でありたいな、と決意を新たにした。

本の画象

小学館新書(740円+税)
2016年4月刊


紀本直美の推す2冊

神永 曉/著
『悩ましい国語辞典』
辞書編集者だけが知っていることばの深層

 言葉にまつわる「へー」を知るのが好きなので、つい手に取ってしまいました。「あばよ」が幼児語から生まれたとか、「人一倍」は、ひとよりちょっとという意味で1.1倍ぐらいでいい…などなど。読みだしだらへーが止まりません。言葉って人を介して進化する。言葉に操られている不思議。

本の画象

時事通信出版局(1600円+税)
2015年12月刊
飯野和好/絵
『ざしきわらしのおとちゃん』

 ざしきわらしのおとちゃんが、新しく引っ越してきた一家に出会います。 先日、取引先を訪問したら、天井から「ささささ…」という音が聞こえました。ねずみかなと少し気味悪かったのですが、この本を読んでから、ざしきわらしのおとちゃんかなと思うようになりました!

本の画象

小学館(1300円+税)
2016年2月刊



2016年5月30日号(e船団書評委員会)

田中俊弥の推す1冊


稔典百句製作委員会編
『坪内稔典百句』

本の画象

 ネンテン先生は詩人である。このたびの稔典百句を拝見しながら、その思いを強くした。おそらく、百句選句もそのあたりに編集方針があったのではないかと推察した次第。執筆者の一人として、ネンテン俳句に真剣に向き合ったとき、ネンテン俳句は輝き磨きを増した。読み手の力量に応じて、その俳句の値打ちが読まれるように仕掛けられているのかもしれない。そこがひしと怖い。その一方で、限りなく軽やかなのが、ネンテン俳句の真骨頂であると思い知らされ、すべては修士論文「萩原朔太郎論」に尽きているのではないかと観じた。また季語の重みとその豊かさをいかに活かすか、そこにこそネンテン俳句の本領があると思い知らされた一書である。

創風社出版(800円+税)
2016年5月刊


太田靖子の推す1冊


復本一郎著
『去来抄』〈先師評〉を読む 『芭蕉の言葉』


本の画象

 芭蕉は、自身の俳諧観を書き残していないので、弟子が書きとめた『去来抄』などを読む他ない。著者は、数多の書物を駆使し、芭蕉の言説に関する去来の解釈を再評価する。芭蕉と弟子がいかに一句の推敲を重ねたか、彼らの人間関係や胸のうちまでを忖度しながら鑑賞しているので、我々はその場に臨んだ気分にさえなる。『去来抄』が物語に仕立て直されたと言ってもいい。「去来の『恋すてふおもへば年の敵かな』に、芭蕉は凡兆の上五『大どしを』を採用し、凡兆の句とした。芭蕉没後去来は、『旅寝論』にその句を『恋をして』の句形で自句として納めた」。このエピソードでは、筆者は去来に好感を抱いた。芭蕉の俳句観を水先人復本と読んでみよう。

講談社学術文庫(1102円・税込)
2016年3月刊



2016年5月23日号(e船団書評委員会)

赤石 忍の推す2冊

芳野ヒロユキ句集
『ペンギンと桜 』

 芳野さんの句、というと、すぐさま2句はあげられる。好きなのは皆知っている「カタバミは山崎自転車屋のおやじ」。「ちゃんちゃんこアルゼンチンチン共和国」も面白い。考えてみると、名前から句が連想でき、間を置かず唱えられるというのは、すごいことではないか。俳句は他者の口誦を得て初めて句と成り得るというと言い過ぎか。最近の句「クラス替えなんだかみんなチンアナゴ」も、もうすっかり覚えてしまった。

本の画象

南方社(1000円+税)
2016年4月刊
十川信介編
『漱石追想』

 解説にある「『漱石言行録』との重複を避け、たとえ一度しか対面したことがない人物でも、彼の一面を捉えている文章を掲載することにした」という主旨のもとに収集した回想四十九編。時代ごとに関わった漱石のエッセイに登場する人々が主であるが、いろいろな像に出会えて楽しい。特に遠ざかる漱石に対し、「いつまでも私と共に時間を空費する人でありたかった」と願う虚子の心情は美しいと思った。
本の画象

岩波文庫(900円+税)
2016年3月刊


舩井春奈の推す1冊


塩見恵介監修

写真で読み解く 『俳句・短歌・歳時記大辞典』

本の画象

 私事だが、最近小さなお友達から大きなお友達まで、私と会う時に俳句を作って持ってきてくれたり、その場で詠んでくれたりすることが多くなっている。小さなお友達からは、どんな季語があるの?と声があがったところ。せっかくなので私も用意してみたのがこの本。

 題名からは歳時記のようだが、頁を開ければ、古典から現代における俳句や短歌について知ることができる。そういえば昔、小学生でも読むことのできる『百人一首』の解説本を尋ねられたことがあったっけ。今ならきっとこの本をご案内するだろう。

 小さなお友達には難しいところもあるけれど、大きなお友達も一緒になって夢中になっている風景が印象的だった。

あかね書房(5000円+税)
2015年12月刊



2016年5月16日号(e船団書評委員会)

香川昭子の押す2冊

大岡 信詩集
自選 『大岡信詩集』

 〈詩を書くぞ。/なにがなんでも詩だ。/それ見ろ見ろ。/言葉がだんだんせりあがってくる。/いっぽんいっぽん毛が見える。/言葉の毛/それは地球の草だった。/浮きあがってくる/《やっとの思ひ》を、/のせている言葉の、ばんざいしている手。/逃げ去った《やっとの思ひ》を、/追っかける言葉の逃げ水。〉「詩府」からの一節です。

本の画象

岩波文庫(740円+税)
2016年4月刊
鴻巣友季子著
『翻訳問答2』
創作のヒミツ

  「吾輩は猫である」を英訳すると「I am a cat」 である。けど、この英語を翻訳すると「あ、猫です。」となったり、「わたし、猫なんですよ。」だったり。村上春樹訳「キャッチャー・イン・ザ・ライ」風文体で翻訳もできる。翻訳って、創作って、なに? 日本語の幅を拡げるって? 「英語という異国語が日本語を照らし出す。」こんな言葉もあった。

本の画象

左右社(1700円+税)
2016年2月刊


原 ゆきの推す2冊

黒瀬珂瀾編
大人になるまでに読みたい
『15歳の短歌・俳句・川柳』
@愛と恋

 ナイフで瞬間、切り出されたような、短歌、俳句、川柳の言葉、面白いな!目が眩んで、いい気持ちだ。
 〈あのひとをめくれば雨だれがきれい 畑美樹〉〈お別れに光の缶詰を開ける 松岡瑞枝〉〈君はいま大粒の雹、君を抱く 坪内稔典〉〈渡り鳥わたしひとりの晩ごはん 澤好摩〉〈非常口の緑の人と森へゆく なかはられいこ〉

本の画象

ゆまに書房(1500円+税)
2016年1月刊
ウィリアム・サローヤン著/柴田元幸訳
『僕の名はアラム』

 9歳の少年アラムを語り手とする14篇の物語。ある夏の日、アラムは言う。車は運転できる、やったことはないけど。イカれた(?)インディアン青年が言う。そこらへんで車買ってきたら運転してくれるか? さあ、どうなる、この話。サローヤンの魅力は「物語っぽくない」こと。拙いまでに自然。縫い目がほどけるように笑える。

本の画象

新潮社(村上柴田翻訳堂)(520円+税)
2016年4月刊



2016年5月9日号(e船団書評委員会)

若林武史の押す2冊

穂村弘著/陣崎草子イラスト
『短歌ください』
君の抜け殻篇

 雑誌『ダヴィンチ』の連載「短歌ください」の単行本化第三弾である。これまで同様、一般歌人がテーマと自由題の中で詠んだ傑作の数々が収めてある。帯にある「抜け殻の君など見たくないけれど君の抜け殻なら見てみたい」から、この篇名となっている。俳句の世界ではこうはならないが、何とかならないかな。

本の画象

KADOKAWA(1400円+税)
2016年1月刊
國分功一郎著
『民主主義を直感するために』

 冒頭にある、デモに関する指摘が面白かった。デモの本質は、シュプレヒコールを大声で唱えることではなく、みんなが思い思いに好きに街路を歩くことにある。民主主義的行動の何かお約束的な息苦しさはそこにはない。ここだけでも読む価値はあると思う。改めて、日常の政治を考える機会を得たいと思った一冊である。

本の画象

晶文社(1500円+税)
2016年5月刊


今泉凡蔵の推す2冊

蜂飼 耳詩集
『顔をあらう水』

 言葉は必然的に意味をもつ。単語そのものが、個人的な差はあれ、ある種の共通な印象を与える。しかし詩を書くことには、言葉のもつ共同幻想を拭い去ってしまう力がある。この詩集は、曲り角の多い町で指差し確認しているような発見とひやひやする日常を綱渡りする感覚の両方に身を置く気分を味わわせてくれる。進むか迂回か?

本の画象

思潮社(2200円+税)
2015年10月刊
ヤマザキマリ著
ヤマザキマリの
『偏愛ルネサンス美術論』

 『テルマエ・ロマエ』作者の美術観面白し。偏愛と題するが、誰も美術鑑賞の折は偏っている。文学の場合も同じだろう。古典に根ざした復興の機運は宗教的な檻があったからこそ。花は檻の破壊された土壌から咲き誇った。何時間も待ってジョコンダやジャクチュウに逢う日の本の民を見てビンチ村のお爺さんはなんと言うだろうか?

本の画象

集英社新書(760円+税)
2015年12月刊



2016年5月2日号(e船団書評委員会)

宇都宮哲の推す1冊


神永 曉著
『悩ましい国語辞典』
辞書編集者だけが知っていることばの真相

本の画象

 日本最大の辞書『日本国語大辞典』の編集者が、意味や用法が変化したり、読み方が紛らわしい言葉など約200語を解説。言葉が“悩ましく揺れている”過程がよくわかり興味深いが、誤用、思い込みが多いことに驚かされる。ただ、誤用も多くの人が長く使っていれば正しくなり辞書に載る。
 「蛇に“にらまれた”蛙」は、“見込まれた”が正解だが、今では圧倒的に“にらまれた”が使われている。また、本書のタイトルの“悩ましい”という言葉、意味は苦悩か、官能か。そのいずれか悩ましく揺れている。でも、それでいいのではないか。言葉は今を生きている私たちが創り、時代ととも生きている。だから揺れるのだ。言葉や辞書の規範性も大切だか、今の時代を生き生きと表現する新語にもっと自由にチャレンジしてみてはどうだろうか……。

時事通信社(1600円+税)
2015年12月刊


鈴木ひさしの推す2冊

河合祥一郎著
「謎解き『ハムレット』」
名作のあかし

 本格的な研究書でありながら、親切な本である。人物相関図、あらすじ、主要場面・独白解説があり、読む前に、または、読み進みながら、確認できる。書かれた時代に置き直し、テクストをていねいに読むと、「ハムレット」という一人の魅力的な男が立ち上がる。これまでの代表的なハムレット群像の総括を経て、謎解きが始まる。狂言師野村萬斎の解説もいい。

本の画象

ちくま学芸文庫(1100円+税)
2016年3月刊
益田勝実著
『火山列島の思想』

 「天の下作らしし大神」大国主は「オオナモチの神」で、オオナモチは「大穴持」、「穴」は噴火口である。つまり、火山列島固有の神である、と著者は書いている。道後温泉と別府温泉のつながり、など興味深い。火山列島に住む人々は、火山に畏れと生命の源泉を感じて生きてきた。火山列島は地震列島でもある。「これから」を考えるうえでも一つのヒントになる本。初版は1968年。読まれ方は変わる。
本の画象

講談社学術文庫(1020円+税)
2015年11月刊



2016年4月25日号(e船団書評委員会)

武馬久仁裕の押す2冊

平賀節代句集
『たんぽぽ』

 句集には風が吹いている。「風つれて風船売りのやつてきし」「コスモスを風の中から剪りにけり」。風と風船売り、コスモスと風はそれぞれであってそれぞれではない。だから風船売りは風をつれてくるのであるし、コスモスを風の中から剪るのである。ここには、爽やかな安定した世界がある。だが、句集は、その世界の外の世界もまた発見する。「桐一葉大きな影の外へ落つ」。

本の画象

菜の花会(頒価:2500円)
2016年1月刊
エマニュエル・トッド著/堀 茂樹訳
『シャルリとは誰か?』
―人種差別と没落する西欧―

 この本で惹かれたのは、昨年1月にフランス全土で行われた反テロデモの分析の手法である。著者は、このデモ参加者の人数を地域ごとに集計し、それと各地域のカトリシズムの信仰の浸透度を重ね併せ、デモ参加者の歴史的、思想的背景を読み取ったのである。捨てたカトリシズムの神を、イスラム恐怖症で埋め合わせようとする身勝手なフランス人の存在があぶり出された。

本の画象

文春新書(920円+税)
2016年1月刊


塩谷則子の推す2冊

坪内稔典著
『漱石くまもとの句 200選』

 「熊本で作ったが、実は熊本を超えている」句として読む、という新しい読み方を貫いた本。漱石は熊本での4年3ヶ月に全句作の4割、900句余を作った。「来熊120年没後100年生誕150年」記念行事の一つ、「お帰りなさい漱石祭」が行われた4月13日の翌日と翌々日、熊本に大きな地震。記念年が復興への希望のきっかけになることを願う。そしてこの本を読んでほしい。

本の画象

熊本日日新聞社社(1200円+税)
2016年3月刊
江國香織・松家仁之・湯川豊著
『新しい須賀敦子』

 漱石が小説家だったのはわずか11年。須賀敦子はわずか8年、エッセイ集を5冊残して98年に69歳で亡くなった。須賀のエッセイは「長く重く暗い」物語を思い起こさせると江國香織。「主観でベタベタ説明しない。対象をエピソードとか描写によって立ちあがらせる」文章は物語的な書き方だと湯川豊。物語について考えさせられる本。

本の画象

集英社(1600円+税)
2015年12月刊



2016年4月18日号(e船団書評委員会)

紀本直美の押す2冊

はせがわせつこ/文
さいとうとしゆき/絵

『おじょらぽん』

 「おじょらぽん」という不思議な言葉が、くり返しくり返しでてくる、子守唄の絵本。寝る前にこの絵本を読んでもらえたら、ぐずっている子どもも、すとんと眠りに落ちてしまいそう。さいとうとしゆきさんのあたたかいイラストも素敵です。

本の画象

福音館書店(800円+税)
2016年1月刊
エイミー・デ・ラ・ヘイ/文
エミリー・サットン/絵
たかおゆうこ/訳
『おしゃれなクララと
おばあちゃんのぼうし』


 ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館を舞台にした、とってもおしゃれな絵本です。おしゃれな帽子が博物館にたくさんというのは、ヨーロッパならではですね。私が好きなのは最後の博物館のカフェのシーン。ロンドンに旅行して美術館で一日中過ごしたくなってしまいました!

本の画象

徳間書店(1500円+税)
2015年12月刊


藤田 俊の推す2冊

山田 航編著
『桜前線開架宣言』
Born after 1970 現代短歌日本代表

 穂村弘以降の歌人のアンソロジー。タイトルが秀逸。単なるカタログにとどまらない、編者のカラーが前面に出たものとなっている。各歌人の代表歌を編者が選んでおり、代表歌の前に編者による紹介文がある。 音楽が一番好きで文学は苦手だが短歌のリズムにハマった、小説の9割は歌集よりつまらない、21世紀は短歌が勝つ、と言う編者による現代短歌の外部への発信。

本の画象

左右社(2200円+税)
2015年12月刊
川上未映子×穂村弘対談集
『たましいのふたりごと』

 様々な対談のお題を通じて、言葉によって分節化され、言葉を彩る2人の世界とその交わりの豊かさが味わえる。ここでの対談を発展させて独自の辞典を作ったらとても刺激的だろう。例えば「生活感」の定義なら「最新鋭のシステムキッチンにママレモンがある感じ」。「ホスピタリティ」の定義なら「スプリンクラーのように安定した親切」。

本の画象

筑摩書房(1300円+税)
2015年12月刊



2016年4月11日号(e船団書評委員会)

太田靖子の押す2冊

池澤夏樹著
『詩のなぐさめ』

 古今東西の詩に関する本。「楽な時の俳句、辛い時の俳句」の、東日本大震災を体験した照井翠の句と蕪村の句を交互に読む試みは新鮮。詩の鑑賞本というより、詩をめぐる作者の周辺のエッセイ。話題はミショーからボードレールへ、母中篠あき子へ、父福永武彦へなどとどんどん展開する。「戦闘的な詩人」では、チリのネルーダも登場。

本の画象

岩波書店(2400円+税)
2015年11月刊
ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉
『フリーダ・カーロ』

 メキシコの20世紀を代表する画家の伝記。夫はディエゴ・リベラ。一直線に繋がった眉の自画像が有名。「私の作品とは、二度と描かれようのない、もっとも完全な自伝」と彼女の言う作品が本書でより深く理解できる。高校時代の交通事故以来、30回以上の手術。夫にも苦しんだ。47歳で逝った彼女の痛みが伝わってくる。

本の画象

筑摩書房(1200円+税)
2015年10月刊


静 誠司の推す2冊

櫻井美知彦歌集
『半夏生』

 91歳の作者が、死別した妻への思いを綴った歌集。ファッションモデルである孫娘がツイッターで紹介し、話題になった(らしい)。妻の闘病、臨終の床、残された悲しみを歌う手書きの短歌が並ぶ。と、これはまさに『智恵子抄』の世界。全くもってベタなテーマですが、心に切なく染みてくるのは仕方ない。ああ、私は妻より先に逝きたいな。

本の画象

KADOKAWA(1000円+税)
2016年3月刊
海部陽介著
『日本人はどこから来たのか?』

 約10万年前にアフリカを出たホモ・サピエンスが3万8000年前に日本列島にたどり着くまでの「偉大な旅」を、DNA分析などによる新たな科学的な根拠を示しながら浮かび上がらせていく。そこには良質な推理小説を読んでいるようなスリルと興奮が感じられ、純粋に面白かった。分析技術の進歩により、全てが解明される日も意外と近いのかも。

本の画象

文藝春秋(1300円+税)
2016年2月刊



2016年4月4日号(e船団書評委員会)

舩井春奈の押す2冊

石井頼子著
『言霊の人 棟方志功』

 版画家棟方志功は文学に拠る作品も多く製作している。その作品ありきで、原作や作者について調べまとめたのがこの本。例えば俳句では、前田普羅、永田耕衣、石田波郷他が取り上げられている。画と俳句による作品に加え、展覧会ではあまり見かけない版画巻物が取り上げられているのもおもしろい。

本の画象

里文出版(2300円+税)
2015年11月刊
篠原資明著
『まず美にたずねよ』

 日本の美、西洋の美、現代の美、古の美。美はどこの世界でも見る者を惹きつけられるもの。幅広い世界の美について手広く交通整理をしながら、こうした見方もできるよと教えてくれている本。昔習った哲学を思い出しながら読んでいると、キティちゃんやロリータまで出てくるところがなんとも斬新。

本の画象

岩波書店(2300円+税)
2015年10月刊


田中俊弥の推す2冊

佐藤文香編
(コ・ト・バ・を・ア・ソ・ベ! Vol.1)
『俳句を遊べ!』

 著者は、第五回俳句甲子園において、「夕立の一粒源氏物語」で最優秀句に選ばれた才媛。異色なふたり(アニメーション作家・ひらのりょうとアイドルでマンガ家・水野しず)に俳句のイロハや本質を実践的に伝授する俳句塾の模様がポップに再現されている。ちょっと盛り込みすぎだが、なかなかに骨のある俳句入門書。

本の画象

小学館(1400円+税)
2016年3月刊
ロムインターナショナル編
『大阪を古地図で歩く本』

 「あさが来た」で、大阪が脚光を浴びている。大同生命、ヴォーリズ、五代友厚、みんな大阪検定の問題に出ていたので、すでに親しみをもっていた。二度の受験を通して痛感したのは、実際に自分の足で歩いてみなければ大阪の知識は身につかないということ。簡にして要を得た本書をいつもポケットに入れておきたい。

本の画象

KAWADE夢文庫(680円+税)
2016年3月刊



2016年3月28日号(e船団書評委員会)

原 ゆきの押す2冊

澤 好摩著
『高柳重信の
一〇〇句を読む』


 高柳の希求したという「書かれるに先立って、もう大部分が決定済みの世界ではなく、言葉に書かれることによって、ただ一度だけ、はじめて出現する世界」……安易な季感や取り合わせを指摘されたようで、ギクリ。俳句とは、と自問し、その変革を愉しんだ彼に圧倒される。一〇〇句より一句。「友よ我は片腕すでに鬼となりぬ」

本の画象

飯塚書店(1500円+税)
2015年12月刊
獅子文六著
『悦ちゃん』

 “碌さん”と“指物師久蔵”の出会いの場面、「どうも酒ッてやつは、一人で飲むと、うまくねえンでね」。楽しいなァこの書きっぷり。小説の舞台は昭和初期の東京。小気味良いテンポ。こうなったらいいナ、と思った通りに話は進み、10才の少女悦ちゃんと頼りないその父碌さんは幸福を掴むのだ。断然安っぽく、断然満足!

本の画象

ちくま文庫(880円+税)
2015年12月刊


赤石 忍の推す2冊

新美南吉作/野見山暁治画
新美南吉絵童話集
『でんでんむしのかなしみ』

 画家野見山暁治氏の絵本である。元東京芸大教授でエッセイストで文化功労者で抽象画壇の巨匠…である氏は95歳。「悲しみとはこう描くもの」、その年齢でこのような震えのくる絵本を描き下ろすのだから。この南吉シリーズは『正坊とクロ』(あきびんご画)、『ついていったちょうちょう』(山中現画)という、絵本、日本画、版画の世界で著名な、野見山氏を取り巻くメンバーの絵で構成されている。

本の画象

星の環会(1800円+税)
2016年3月刊
ねじめ正一作/武田美穂画
『ぼくらのウソテレビ』

 ねじめ正一氏の書下ろし児童書。時は昭和30年代初期。高価なテレビがあるはずないのにウソをつき、茶ダンスをテレビに仕立てごまかそうとする。その嘘を仲間が理解し庇ってくれる話だが、民俗学者柳田國男を例に取り、「少年・少女期の嘘こそ表現の原点」という坪内氏の講演を思い出した。悪質は除外だが、たわいのない嘘を許容する世界が表現力を育てるのかも。嘘のつけない私は、だから俳句が下手なのか。

本の画象

くもん出版(1200円+税)
2016年3月刊



2016年3月21日号(e船団書評委員会)

今泉凡蔵の押す2冊

ジュンパ・ラヒリ著/中嶋浩郎訳
『べつの言葉で』

 作者の母語はベンガル語と英語。アメリカの作家として高く評価されるが、イタリア語に魅され伊国へ移住。この作品を伊語で書く。言葉とは何か、という問い、俳句のもつ言葉について考えさせられた。曰く、「イタリア語で書くとき、わたしには不完全であるという自由がある。〜中略〜創造という観点からは、安全ほど危険なものはない。」

本の画象

新潮社(1600円+税)
2015年9月刊
本谷有希子著
『異類婚姻譚』

 昔話で定番の恋人は姫と蛙や美女と野獣だが、この物語では人と人だ。だからこそ異類なのだとは、怪奇小説を読むようだ。妻の顔は夫に似てゆき、夫は顔の造作を失いつつある。日常の中の非日常が描かれる。人は他者と言葉を介して理解を得ようとする。が結局、平和的な誤解の中で生きてゆくしかないのかもしれない。結末は記さない。

本の画象

講談社(1300円+税)
2016年1月発売


香川昭子の推す2冊

伊藤比呂美編
『石垣りん詩集』

 120篇の詩。例えばこんな。〈待つものはこないだろう/こないものを誰が待とう/と言いながら/こないゆえに待っている、/あなたと呼ぶには遠すぎる/もう後姿も見せてはいない人が/水平線のむこうから/潮のようによせてくる/よせてきても/けっして私をぬらさない/はるか下の方の波 打際に/もどかしくたゆたうばかり〉(風景)より。

本の画象

岩波文庫(700円+税)
2015年11月刊
高橋源一郎/SEALDs著
『民主主義ってなんだ?』

 民主主義や政治運動について話し合った8時間を再録したもの。読みやすいけど、民主主義ってこれだなんて、決めているわけではない。どんなこともそうだけど、自分で勉強して考えて、ずっと考え続けることが大事だと改めて思った。SEALDsも、とても魅力的な学生たちだ。素敵なことばに出会えます。ぜひ読んで下さい。

本の画象

河出書房新社(1200円+税)
2015年9月刊



2016年3月14日号(e船団書評委員会)

鈴木ひさしの押す2冊

安藤 宏著
『「私」をつくる』
近代小説の試み

 一作ごとの小説の魅力を発見するためのヒントがたくさん詰まった本である。「名作」は、なぜ「名作」なのか。夏目漱石、芥川龍之介、太宰治、志賀直哉、川端康成などの具体的な作品、表現の苦闘のプロセスをたどりながら、「近代の小説表現に共通して表れる興味深い法則」が示されている。文学研究の存在意義をていねいに広く知らせる本がもっと書かれて欲しい。

本の画象

岩波新書(760円+税)
2015年11月刊
辻 惟雄著
『 若冲』

 豪華な文庫本である。ページを開くたびに、鶏や象、花や果実の絵になぜか心が動く。まさに官能的。この本では触れられていないが、伊藤若冲と画家・俳人与謝蕪村は同年の生まれである。四条烏丸に住む蕪村と錦小路の青物問屋「桝屋」四代目主人若冲は、ご近所であった。蕪村の絵のほんの近くに、こんな絵があったことに驚く。文化は多彩である。

本の画象

講談社学術文庫(1500円+税)
2015年10月発売


若林武史の推す2冊

茨木のり子・長谷川宏著
『思索の淵にて』
詩と哲学のデュオ

 2006年に刊行された本の文庫化。茨木のり子の詩に哲学者の長谷川宏の短文が添えられるという体裁の本。普通の詩の紹介ではない。詩から生み出された思索の数々が読みどころ。寄りかかったり寄りかからなかったりしているところがおもしろい。

本の画象

河出文庫(740円+税)
2016年2月刊
森健次朗著
机に向かって
すぐに集中する技術

 タイトルに惹かれた。集中しなければならない時、集中できない。そんな時にどうするか。楽しくない仕事の時、どうすれば集中できるのか。なんてお悩みの方にはお勧め。すぐに読めます。

本の画象

フォレスト出版(1400円+税)
2016年3月刊



2016年3月7日号(e船団書評委員会)

塩谷則子の押す2冊

松下カロ著
『女神たち 神馬たち 少女たち』

 津沢マサ子などの女性俳人論、少女の句の中村苑子論の間の男性俳人論が面白い。白眉は坪内稔典論。「坪内とウォホールは、(略)反復という強さを手に入れ」共に「自らの弱さそのもの」を発信する。弱さの肯定は「もう一人の弱者である他者を受容する」。見事な論だ。
 桜散るあなたも河馬になりなさい 稔典

本の画象

深夜叢書社(3200円+税)
2015年11月刊
西加奈子著
『 まく子』

 まわりに合わせ透明人間として生きている小説の語り手、小さな温泉宿の息子慧の成長物語。慧は11歳、5年生。「せいきょういく」の「せいつう」に至る男の子の第二次性徴への不安と受容を描いたありそうでなかった小説。慧に勇気を与える転校生コズエは小石を、水を撒く子だった。秘密を持つコズエはあるものを撒い(与え)て去る。

本の画象

福音館書店(1500円+税)
2016年2月発売


宇都宮哲の推す2冊

福岡伸一著
『芸術と科学のあいだ』

 分子生物学者が、古今東西の“芸術的作品?”を芸術と科学の共通性という視点から縦横に読み解いた72のコラム集。葛飾北斎の「男波女波怒涛図」では、“らせん状の波渦図は血流が血管の隅々まで行渡っていくエネルギーを表しており生命の本質を描いている”と。ほかにもDNA、縄文、ハベルの塔、アンモナイトなど「らせん或いは渦巻き」の項が多く、芸術と科学の間を解くカギになりそう。

本の画象

木楽舎(1500円+税)
2015年11月刊
小林丈弘、高木博志、三枝曉子著
『京都の歴史を歩く』

 京都ブームのなか案内本が大人気だが、本書は歴史学者3人による、研究に裏付けられた京都歴史散策の一冊。各章とも最新のフィールドワークのもと、歴史背景とともに京都の現代の姿が浮き彫りに。詳細な現地地図と史料(中でも現存・非現存の祇園祭山鉾分布図は興味深い)の添付もわかりやすい。京名所のほとんどを網羅しており、辛口の京都観光やじっくりと巡る吟行におススメ。

本の画象

岩波新書(900円+税)
2016年1月刊



2016年2月29日号(e船団書評委員会)

藤田 俊の推す2冊

劇団ひとりMC
『共感百景』
〜痛いほど気持ちがわかる あるある〜

 お題に添った「あるある」を詠んだ共感詩で笑いや切なさなどその出来を競い合う番組。芸人や作家、ミュージシャンなど言葉のプロが集結。選者である歌人の東直子から、言葉が動かない、「あるある」は微妙なラインを突くことが大事、言葉の力で何かを変える、といった解説が。演者は皆、感性も喋り(自解)も魅力的。
 「許そう貴様も誰かの家族だ」(西加奈子、お題:家族)

本の画象

テレビ東京
2016年1月放送
トリプルファイヤー
『 エピタフ』(CDの歌詞)

 『共感百景』で「先生の話で絶対に笑わない美学」(お題:中学校)等話題作を発表していたボーカリストのバンド。"シンプルな家具で揃えていた"の直後に"トラックに轢かれた"、"職人こだわりの塩で天プラ食べる"の後に"十把一絡げの俺/掃いて捨てられる俺が"。生活感溢れる言葉が、置かれる文脈やだらしない歌声によって独特の意味合いや不穏さを帯びる。

本の画象

アクティブの会(1300円+税)
2015年9月発売


武馬久仁裕の推す2冊

久保純夫句集
『日本文化私観』

 古今東西の絵画、彫刻を見て書かれた稀有な句集である。例えば、酒井抱一の「美人螢狩図」。句集では「妙齢の逆手に持ちし団扇かな」である。この句を「美人螢狩図」に還元することは不可能である。句中に「螢」がいない。しかし、うら若い古典的な美女が、小粋に団扇を逆手に持って立っている艶やかな姿を彷彿させる。「妙齢」という言葉が効いている。全篇言葉の妙に酔い痴れた。

本の画象

飯塚書店(3000円+税)
2015年10月刊
楊 海英著
『日本陸軍とモンゴル』
―興安軍官学校の知られざる戦い―

 中国革命を担った国民党軍の士官養成学校は黄埔軍官学校といった。満州国軍政部が作った興安軍官学校は、蒙古軍を満州国防衛の一翼としようとする日本と、内モンゴルの中国からの独立を達成するために蒙古軍の士官を養成しようとするモンゴル人との同床異夢の中に生まれた。その矛盾を抱えながらも近代的な文武両道の人材を育成したが、独立は叶わぬ夢と消えたのであった。

本の画象

中公新書(840円+税)
2015年11月刊



2016年2月22日号(e船団書評委員会)

静 誠司の推す2冊

飯塚書店編集部編
『俳句技法入門 新版』

 1992年に刊行された俳句入門書の改訂版。豊富な例句とともに、初心者にとって必要十分な俳句技法を解説してくれる。でも必要十分過ぎて、本当の初心者なら俳句を作るのが怖くなってしまいそう。こういう本はある程度キャリアを積んだ人が、自分の句が凝り固まってきたなと思った時に読むといいのでは、と自分もそういう一人として思う。

本の画象

飯塚書店(1600円+税)
2016年1月刊
長谷川博一著
新日本プロレス V字回復
の秘密


 一時期、人気低迷で消滅しかかったプロレスがいかにして復活したか。プロレスはリングの外でもプロレスであることにわくわくさせられる。「自分がリング上でやりたいことを、規制や制限された環境の中で行いつつも、いかに自分が感動できるかが大事なんだ。」人気レスラー中邑真輔氏のこの言葉、そっくり俳句にもあてはまると思いません?

本の画象

KADOKAWA(1300円+税)
2015年11月刊


紀本直美の推す2冊

土方明司、江尻潔/監修
『画家の詩、詩人の絵』

 青木繁、竹久夢二、中原中也、まど・みちおなど、明治から現代まで64人の、画家の書いた詩、詩人の描いた絵の画文集です。どの作家もタイプは違えど何か迫ってくるものがあり、密度の濃い詩と絵にたっぷり浸ることができます。絵心や詩心はどこでどんな風につながっているのでしょうか。

本の画象

青幻舎(3000円+税)
2015年10月刊
さかなクン/著・絵
『ギョギョギョ! おしえて!
さかなクン』


 さかなクンが出会ったすてきなお魚たちについての、知識やイラストがたくさん! 「サンマ」などの身近な魚から、聞いたことないものまでさかなクンのイラストで面白く解説されています。さかなクンが初めてお魚大好きになったエピソードがスゴイ! 座右の銘はフィッシュ!フレッシュ!リフレッシュ!

本の画象

朝日学生新聞社(950円+税)
2015年8月刊



2016年2月15日号(e船団書評委員会)

田中俊弥の推す2冊

齋藤 孝著
声に出して使いたい
『大和言葉』

 『声に出して読みたい日本語』(2001)で世間の脚光を浴びて一躍時代の寵児となった齋藤孝さんは、小生と同じ1960年のお生まれ。『声に出して読みたい方言』(2004)のときも、時代のトレンドを一歩先に進んでいた。本当に嗅覚の鋭い人だ。そして、こたびの本、「大和言葉」で押してくるとは。これまた時代のトレンドだ。つぎは沈黙かそれとも動植物や菌類の声か。今後の展開を期待したい。

本の画象

扶桑社(1400円+税)
2015年12月刊
「サライ」編集部編
「サライ」2016年3月号/別冊付
―みんな漫画で大きくなった―

 スマホやタブレットで、雑誌も容易に読めるような時代。雑誌は、喫茶店や美容院や飛行機などで読むもので、電車のなかで目を通している人は、めっきり少なくなってしまった。雑誌のアラカルトというか、バイキングというか、豊富なメニューは実に楽しい。巻頭企画は、いわゆる今回の一押し。たしかに小生も「漫画」文化と成長してきた。この手の雑誌文化は、中高年の癒やしなのかもしれない。

本の画象

小学館(780円・税込)
2016年3月刊


太田靖子の推す2冊

小池 光著
『石川啄木の百首』

 解説つきの詩の本にある一長一短。著者の造詣の深さから「いたく錆びしピストル出でぬ砂山の砂を指もて掘りてありしに」から石原裕次郎の曲「錆びたナイフ」が生まれたことを知る。知らなくてもいいことを知る事も。「たはむれに母を背負ひてそのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず」に、妹の光子が「これは嘘だ」と呟いたなど。これも長と言えば長。

本の画象

ふらんす堂(1700円+税)
2015年10月刊
筑摩書房編集部著
ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉
『小泉八雲』
―日本を見つめる西洋の眼差し

 中高生向きの評伝シリーズ。だからこそお薦め。文章が非常に滑らかである。特に、ハーンが来日した際の件は、彼の文章を交えて語られ、胸の高鳴りまでが伝わってくる。まさしく伝記の追体験。時折ハーンのたどたどしい日本語が登場し彼への親しみが増す。妻セツに叶えられたともいえる再話文学にさらに触れてみたくなるような伝記。

本の画象

筑摩書房(1200円+税)
2015年12月刊



2016年2月8日号(e船団書評委員会)

赤石 忍の推す2冊

オリヴィエ・タレック作
あさのあつこ訳

『ひつじの王さま』

 偶然に拾った冠をかぶり王になった羊。「王とはこうあるべき」と ばかり次々と理不尽な命令を発布し、挙句には美醜で羊を差別するヒトラー並の独裁者へと変貌する。しかし、この王様を作ったのは一陣の風。昭和10年代のように、いつの世も何気ない偶然が強大な権力を生み出し恐ろしい社会を作っていくが、何かその兆候が今の日本にも感じられないか。食い止めるのは本当に、「今」だけかもしれない。

本の画象

くもん出版(1500円+税)
2015年12月刊
あきびんご著
『ねこだらけ』

 一方、こちらには400匹の猫が並んでいるだけ。15枚の見開きページにただただ猫がいるだけだ。初めは猫の種類を紹介した図鑑っぽいが、民族衣装を着せ、国別の猫の紹介あたりから「なんだ?」となり、最後は「狛犬」ならぬ「狛猫」、忍者の恰好をした忍者猫まで現れる。こういうのは罪はないよなあ。区別も差別もなく、ただただ平等に存在する。左の本と併せて、そこから読者の子どもたちは何を感じてくれるか。

本の画象

くもん出版(1300円+税)
2015年12月刊


舩井春奈の推す2冊

秋山泰句集
『流星に刺青』

 プロローグは一篇の現代詩。

  さあ、ジャックナイフを買おう
  流星に刺青を、今夜、
    この無言の闇に、生の刹那に……

 その「無言の闇」に浮かびあがるのが続く本編。ものすごく難しいのかな?と思いきや、すぐに肩の力が抜けてくる。癒し系・笑い系・知的系・パロディー……(他略)。著者による文学に対する長年の模索も伝わってもくる。

本の画象

ふらんす堂(2700円+税)
2016年1月刊
斎藤英喜編
『神話・伝承学への招待』

 題名から想起させられるのは記紀。いざ頁を繰れば、桃太郎や一寸法師といった昔話を皮切りに動物報恩譚や河童伝承学ほか多角度から迫られている。つまりは昔々のお話だが、学術世界では、神話は神話、伝承は伝承、昔話は昔話とそれぞれの本に目を通すことになる。それを一冊で足を踏み出させられる画期的な入門書。

本の画象

思文閣出版(2300円+税)
2015年9月刊



2016年2月1日号(e船団書評委員会)

香川昭子の推す2冊

長田 弘著
『ことばの果実 』

 詩人のエッセイ集。例えばこんな文。「一人、黙々と、人の視線に妨げられず、無我に口にできてこその、きれいな味。孤独というのは本当は明るいのだ。甘夏を欲する時、人は甘夏のくれる明るい孤独を欲している。」また、「探しあぐねし蕗の薹かも己かも」(野沢節子)など俳句も引用し、ささやかな悦びの食卓をいくつも描いている。

本の画象

潮出版社(1700円+税)
2015年10月刊
池澤夏樹著
『池澤夏樹の世界文学リミックス』

 古代からの教養としてでなく現代を読み解くものとして選ばれた世界文学の案内書。聞いたこともない作家や作品もたくさん。だけど、どんどん読んでいける。初めて知る土地、歴史、ひとの心など、今の世界のごちゃごちゃを友達に教えてもらってるような気になる、そんな文体。
 世界の文学を読んでみたくなる。
本の画象

河出文庫(920円+税)
2015年10月刊


原 ゆきの推す1冊


坪内稔典著
『四季の名言』

本の画象

 古今東西の文学作品などから112の言葉を集めた一冊。「わ、シビれたー」、「ぐー」、意味不明の声を発しつつ読む。「五月の朝の新緑と薫風は私の生活を貴族にする」(萩原朔太郎)。「貴族」ですよ、格好良すぎるなあ。「小鳥ノヤウニ幸福デス」(芥川龍之介)。これは芥川の恋文。「こころよ では いつておいで」(八木重吉)と言われると、何故だかわんわん泣きたくなる。話の内容を実際よりも誇張する事を「話を盛る」と言ったりするが、引用した文はどれも現実をどこか「盛っている」感じ。言葉は少し嘘を混ぜると、途端に面白く煌めいてしまうのか。その嘘に薄々感づいていながら「騙されるのも素敵だ」なんて思うのも、あーあ厄介だ。

平凡社新書(800円+税)
2015年12月刊



2016年1月25日号(e船団書評委員会)

若林武史の推す2冊

2016 1/1・15合併号
「BRUTUS」 夢中の小説

 「役に立つかは気にせずに、とにかく楽しい小説特集」と銘打った特集記事。様々な著名人や書店店員のおすすめの小説が紹介されている。個人的には、気鋭の小説家による日本の古典文学の翻訳や漫画や海外文学の翻訳を紹介するページが面白かった。

本の画象

マガジンハウス(650円・税込)
2015年12月刊
加藤典洋著
『村上春樹は、むずかしい』

 長年、村上春樹を論じてきた著者による新しい村上春樹論。作品論ではなく作家論。時間軸を設定し、今日の日本の文壇とは一線を画す孤高の立ち位置がどのようにして形成されてきたのか、またどこへ向かおうとしているのか、そんな興味を持つ人はご一読ください。

本の画象

岩波新書(800円+税)
2015年12月刊


今泉凡蔵の推す2冊

坪内稔典著
『モーロクのすすめ 10の指南

 モーロクって、なんで爺にくっついて、婆にはくっつかないのかな、不思議。モーロクってなんか楽しい。そんな風に居直れば、耄碌そのもの。縁側に陽溜りがあったり、おまけに猫がいたりすれば、モーロクはもっと嬉しい。小春みたいなヒザがあれば尚言う事無し、これは内緒。ガクモンではなく、モーロクをススメて下さって感謝!
 転がしておけ冬瓜とこのオレと  稔典

本の画象

岩波書店(1900円+税)
2015年11月刊
吉上恭太著
『ときには積ん読の日々』

 雑誌や子どもの本の編集、翻訳者の顔を持つ作者は、本来はミュージシャン、ギターの名手。彼の弾くボサノバはジョアンのそれに似て何物にも囲い込まれない精神の響きを届けてくれる。この日録的エッセイからは、独特のリズムとメロディーが感じられる。そして、彼の獲得したゆるぎないやさしさがハーモニーとなって伝わる。

本の画象

トマソン社(1500円+税)
2015年10月刊



2016年1月18日号(e船団書評委員会)

宇都宮 哲の推す2冊

百田尚樹著
『至高の音楽』
クラシック「永遠の名曲」の愉しみ方

 クラシック音楽から俳句の想を得るときがあるが、まさにそんなひらめきを与えてくれる感動の名曲25曲の魅力をきめ細かに案内。人気作家らしい饒舌すぎる解説が気になるが、評者のような“お気軽”クラシックファンには分りやすくてうれしい。各曲の名演奏の紹介もあり、YouTubeで検索して拝聴するのも一考。おすすめは、ハスキルのモーツアルト「ピアノ協奏曲20番」。

本の画象

PHP新書(780円+税)
2015年12月刊
吉野裕子著
『カミナリさまは、
なぜヘソをねらうのか?』

暮らしに息づく「陰陽五行」の秘密

 表題をはじめ「だるまさんはなぜ赤い」「節分に豆をまくのはなぜか」などなど、なんで?と思う日本の年中行事や言い伝えの謎を、古代中国の哲学『陰陽五行』の法則によって解き明かしていく。やや強引な論理展開もあるが、古来よりの日本人の暮らしぶりに、その思想や宇宙観が深い影響を与えてきたことがよくわかる。在野の民俗学者である著者の語り言葉的な文章が読み易くていい。

本の画象

サンマーク出版(600円+税)
2015年11月刊


鈴木ひさしの推す2冊

山折哲雄著
『「歌」の精神史』

 単純な「論理」は、利と情を絡めて大きな流れになりがちである。深みのある知性が、嘆きからさらに力を持つには、著者の言う「身もだえ」「心情の奥底から噴き上げる喜怒哀楽」「短歌の叙情性」のようなものを伝える「表現力」「方法」も必要なのではないか、そんなことをこの本を読んで考えた。一面的な「論理」の本があふれてきた。たまにはこんなことも考えてみたい。

本の画象

中央公論新社(820円+税)
2015年11月刊
渡辺 靖著
『〈文化〉を捉え直す』
カルチュラル・セキュリティの発想

 「文化」の視点からグローバリゼーションを再考し、「人間の安全保障」の観点から文化の問題や対処策を考える。世界各地の事例が豊富に取り上げられ、今、確認しておきたいことが書かれている。実用性や実利性のみが強調され、表面の情報だけで大きな動きになる今日の状況への警鐘の書でもある。人間はなぜ生きられるのか、と言う問いかけが感じられる本である。

本の画象

岩波新書(780円+税)
2015年11月刊



2016年1月11日号(e船団書評委員会)

武馬久仁裕の推す2冊

早川三千代句集
『風の詩U』

 この句集は穏やかさの中に不安があり、不安の中に穏やかさがある。
 たかんなを踏みたる時の不安かな
 穏やかな歩みと足下からの不安。そして、「ネパールの話などして屠蘇の膳」。外から見れば穏やかな正月の光景である。しかし、一句には、自分達の住む国に対して抱く不安を一時払うべく、かけ離れた世界の話をしながら新年のおめでたい屠蘇の膳を前にしている人々がいる。

本の画象

文學の森(2667円+税)
2015年12月刊
金沢百枝著
『ロマネスク美術革命』

 ヨーロッパ中世は、11〜12世紀のロマネスク美術において独自の形を生み出した。すべて教会がらみだが、その造形は、遠近法や写実からは自由でまるで現代美術のようだと著者は言う。本当にその通りで、掲載された柱の彫刻の写真を見ていると、ジャコメッティあり、シャガールありでとても楽しい。中世の人達が新しい空間意識を獲得したのだと思わずにおれない。

本の画象

新潮社(1400円+税)
2015年8月刊


塩谷則子の推す2冊

くどうなおこ著・佐野洋子絵・広瀬弦彩色
『おんなのこ1』

 40年前に故佐野洋子が描いたおんなのこの絵に80歳の筆者が「子どもの感覚」で詩をつけた。孤独、退屈を感じることもあるけれど好奇心いっぱい、夢の中で「喜怒哀楽感傷哄笑鼻水」を見つける。(感傷哄笑と韻を踏み、鼻水でまとめる。上手だなあ。)「ひとりでこの世にきたのだもの/ひとりでむこうに往かなくては」。元気づけられる。

本の画象

幻戯書房(1800円+税)
2015年11月刊
内田聖子著
『森崎和江』

 著作を引用して森崎和江の人生と思想を描く。
 31歳の時、4歳と1歳の連れ子と、谷川雁と筑豊の炭鉱に住む。雁が始めたサークル村でのレイプ殺人事件。強引に決着をつけた雁に納得できず筑豊に残る。からゆきさんや炭鉱の女性たちへの聞き書き、植民地韓国で育った居心地の悪さへの原因追及によって、他者も自由でなければ自らの自由もないことに思いいたる。

本の画象

言視舎(3000円+税)
2015年12月刊



2016年1月4日号(e船団書評委員会)

紀本直美の推す2冊

井上洋介/えとぶん
『つきよのふたり』

 ある月の夜の出来事。ページをめくるたびに、月夜の風景がダイナミックに描かれています。月夜とふたつのモチーフ。なぜそのふたり? ふたりはどんな関係? 俳句の取り合わせのような不思議な気持ちになります。あなたにはどんな物語が浮かびますか? 読み手の感覚を問う絵本です。

本の画象

小峰書店(1400円+税)
2015年10月刊
バーナデット・ワッツ作/福本友美子訳
『金のおさら』

 「他人のことがうらやましい」と思うようになったのは、何歳のころからでしょうか? 親友のおもちゃをほしくなってしまったイザベル。自分でもなにがなんだかわからないうちにポケットにおもちゃを入れてしまいます… 誰にでもある、魔がさす瞬間。子どもの気持ちに優しく寄りそった絵と物語です。

本の画象

BL出版(1300円+税)
2015年10月刊


藤田 俊の推す2冊

有間しのぶ原作・奥山直作画
『あかぼし俳句帖 1』

 俳人として読んでどうかより、サラリーマン向けのマンガ誌でオヤジを主人公に俳句を扱うと、王道マンガになるという点に注目。帯に夏井いつきの推薦文。俳句の入口にもってこい。主人公が恋心を抱く俳人に句帳を見せる小料理屋のカウンターが共同の創造の場になっている。眼鏡フレームの上側を敢えて描かず眉毛で表情をよく出している。

本の画象

小学館(500円+税)
2015年7月刊
渋谷直角著
『奥田民生になりたいボーイ
出会う男すべて狂わせるガール』


 自分を無理して変えずに相手の受ける印象を変える。自然体に見えて、実はそんな自己プロデュースに長けた奥田民生に憧れながらも、恋愛に狂わされる。民生の「なんでもいい」ような在り方、「こだわることの不自由さ」を知っている感じは、俳句と相性がいい気がする。また、民生のブレない意志(地声)や主人公(著者)のような理解者は俳句においても大事だろう。

本の画象

扶桑社(1000円+税)
2015年7月刊

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