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2月 9日  山本たくや       2月19日
2月16日  内野聖子       2月26日
2月23日  中居由美       3月 4日
3月 1日  久留島元       3月11日
3月 8日  谷さやん       3月18日
3月15日  星野早苗       3月25日
3月22日  須山つとむ       4月 1日
3月29日  秋月祐一       4月 8日

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2020年1月22日

谷さやんドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 今年の読初は、『井上ひさし ベスト・エッセイ』(ちくま文庫)でした。中に「意味より音を」というエッセイがあって、こんなことが書かれていました。
 「ぴちぴちしたコトバは意味よりも音の響きを大切にしたものであり、ぱさぱさしたコトバは、どちらかというと意味を重視したもの、といえるのではないか」と。そして「重厚な力作」とか「堂々たる大作」などと称えられる作物はたいていぱさぱさと乾燥した死んだコトバが羅列されている、と断じています。エッセイの最後は、コトバの音としての機能を意味と同じくらいは重んずることが、小説や戯曲の死語の氾濫を防ぐ有力な便法のひとつ、と締めくくっています。
 長い小説・戯曲で音を重視することが大切なら、十七文字しかない俳句は尚更、意味を追求する余地など無い事を再認識されられた気がしました。わかったつもりでも、油断するとにょきにょき顔を出そうする意味や思いを、解消しながら句作を続けたいと思った年頭でした。

【十句選】

二円切手ていねいに貼り春近し   まつだまゆ
 「二円切手」は、私のまわりの句会にもよく出てくる。この句は、意外にも素直な心で値上げを受け入れていることに意表を衝かれた。腹を立てていない。皮肉もない。私は、面倒くさいのとまたかと少し怒っているが、この人物は「ていねいに」貼っている上に、春が近いと感じている。のびのび育ったのでしょうか。少しの反省と感心しきり。

腕利きの猟師着そうな革コート   うさの
 革コートを探しているのだろうか。ブティックかあるいはネット通販の画面で行き当たった物に目が止まった。肩の怒った厚手のものを想像するが、ただ漁師ではなく「腕利きの」とまで言及したのが良かったのではないか。まさか買ってはないと思うが。

花びら餅自惚れさんにはクレラップ   短夜の月
 正月のお菓子、花びら餅。煮た牛蒡と白味噌餡が餅にくるまれている。四国・松山ではあまり身近でない。京都の名産らしい。写真を見て、是非食べてみたいと思った。可憐な花びら餅に「自惚れさん」とささやいて、クレラップをかけているさっぱり感が気持ちいい。

湯気の立つベビーカステラ初戎   たいぞう
 露店が出て入れば、必ず見かけるベビーカステラ。私は一度も買ったことがないが、湯気が立っていればきっと食べたくなる。「ベビーカステラ初戎」の響きとリズムも良い。

冬雲の窓鳥籠の青い鳥   古都ぎんう
 窓枠の中の冬の雲が今、青い鳥のように幸福の象徴のように浮かんでいる、という気分になっているのだろうか。窓の寒色と鳥の青さのきわどいバランスに惹かれた。

年新た如何にせんとは母のこと   藤井美琴
 「短夜や乳(ち)ぜり啼(な)く児(こ)を須可捨焉乎(すてつちまをか) 」を思い出した。竹下しづの女のこの句は、夜泣する子どもを持て余して思わず出たセリフのようだが、藤井さんのは、老人版。老いた母親のことで頭を悩まし始めている人物を描いている。新しい年の、身につまされる一句。

冬温しおんぶ抱っこの父登園す   北川
 大寒を前にようやくそれらしい寒さになってきたが、今年は暖かい冬だ。二人の子をそれぞれ、おんぶと抱っこで子どもを預けに行く父親。これから仕事に行くだろう父は大変だが、体はきっと子どものおかげで、温いはず。

凍蝶のゆくへシナプスがつながらぬ   いづみのあ
 「凍蝶のゆくへ」で切れている。シナプスは日本語大辞典(精選版)によると「ニューロン間の接合部。神経細胞の神経突起が他の神経細胞に接合する部位をいう。(中略)そこでは興奮は一方向にだけ伝達される。」とある。難しい。気になる凍蝶の行方と繋がらないシプナスを繋げた、混迷の一句。

湯豆腐はたぶん寒がりなのだろう   後藤
 湯豆腐が寒がりだといわれ困惑した後、可笑しくなった。私は、お湯の中で震える豆腐の姿を思い浮かべた。沸かすほどに揺れる豆腐。寒がりだからなかなか震えが止まらない?。呑気で意外な思いに目を丸くした。同じ作者の「冬なのにゆうれいがいて会釈する」も、会釈するのがちょっと変で、可笑しい。

書初の手本の銘酒ラベルかな   紫
 さまざまな字体で、酒の個性や旨さを演出する銘酒ラベル。書初めの手本だというのがいい。書き上げた後の一杯も楽しみ。

【気になる句】

ベジタブルスープのやうな初音かな   せいち

女正月メンズスタッフ清掃中   酒井とも
 季語の「女正月」と「メンズスタッフ」の意図が見えすぎるかもしれません。リズムはいいと思いました。

一月のタオルを嗅いで大人です   さわいかの
 一月のタオルがどんな匂いなのか、どうして大人なのか。わからないけど、とても変な句で気になりました。

直帰日の吹雪と君を抱き寄せる   うさの
 「直帰日の吹雪」がいいですね。ただ「と」の繋がりが分かりにくくないでしょうか。

母、叔母とショートHOPEや女正月   鷲津誠次
 「、」で繋げても悪いことはないですが、「母と叔母と」と字余りでゆったり読んでもかまわないと思いました。


2020年1月15日

久留島元ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 松の内も過ぎ、平常モードになってきました。
 こちらのクリニックも6月の「船団」解散まで半年弱ですが、よろしくお願いいたします。
 正月をはさんだ今回は167句の投稿がありました。
 やはり日本人にとっては年末年始が大きなイベントとなっているせいでしょうか、「めでたさ」や「にぎやかさ」がメインになりがちで、意外性を出すのが難しいかもしれません。今回の投稿も、同世代との新年会、孫の言葉、おせち料理、年末年始のニュース報道など、それぞれの人にとっての「お正月」を説明しただけ、という句が多かった印象です。そのなかでいくつか目にとまったのは、お正月でも直面せざるをえない、重さをかかえた句でした。
 さて、オリンピックイヤーで盛り上がる(予定の)今年は、どんな一年になるでしょうか。

【十句選】

褒められてふふっと白菜真っ二つ   百合乃
 これは気分のよい句。ふふっ、のはにかみから、真っ二つ、の潔さもいいですね。

冬夜割るごとくぷちゅりとがんもどき   藤井美琴
 「がんもどき」をおでんの傍題で季語ととなると季重ねになりますが、がんもどきのあの感触をいうのに「ぷちゅりと」、なかから「冬夜割る」と言い止めたのはなるほど。

コロコロとロとロとゾロ目寒昴   あさふろ
 双六あそびの一場面でしょうか、あえて正月のめでたさではなく、寒風ふきすさぶ賭場のような趣もあります。

ぬばたまのプルトニウムのねむる冬   樋口滑瓢
 ぬばたまの、は闇にかかる枕詞ですが、電力や戦力の基底に原子力を抱えた日本の、そして世界の冬を思うに、実にうまいと思います。

どんどいま闇に炎をぬりたくる   大塚好雄
 性急な上五から、口語で散文調子の中七下五で、どんど焼の勢いが伝わります。

数へ日や外の薬舗にない薬   菊池洋勝
 年末の少ない日を数えながら、薬に頼らざるを得ない生活を思い返したり、思いやったりしている。この薬がどういう薬かわかりませんが、しんみりと作者の環境が思われます。

赤丸で祝日にする女正月   紅緒
 女性に休みを。大事です。

枯木かな炎の時代なのだから   干寝区礼男
 燃えていく、という危機感、焦燥感でしょうか、それとも自分自身が燃やされるのか。荒涼として、しかもこれから激しい変化のあることを予感させる、不気味さを感じます。

嘘も熟れ食べごろとなる冬苺   瀬紀
 やや説明的な語調ながら、惚けたお茶目な味わいもある一句。

銀の目で八方睨む田作りや   まるめ
 実景が浮かびますね。同じ作者の「田作りや付かず離れず年を越す」も、付かず離れずの描写が、ごまめにも合い、またおせちを食べている家族の空気にも合い、よい句と思いましたが、年を越す、は季語の重複かもしれません。

【選外佳作】

金箔のきらりほらりと雑煮椀   茂
 「〜の、○○と」という構文は、やや説明的になりがちです。「きらきらほろり」など思い切ってオノマトペだけにしても充分伝わります。

兵馬俑廃線に立ち枯野星   酒井とも
 かっこいい句ですが、五七五がややバラバラという印象です。廃線に兵馬俑が立つことってあるでしょうか。

雪兎株式会社足跡課   干寝区礼男
 いったい何をしている会社なのか、不思議で、楽しい。

おでん酒あれは本音だったのか   彩楓
 よくあるお酒の風景ですが、舌足らずな破調で貫いたところにやや切迫感出ています。

晦日雨演歌ながるるビルの底   中 十七波
 こちらもありそうな、まさに「演歌」調の句ですが、「ビルの底」という表現がいかにも寂れたスナックの感じ。

メンソール煙草の匂い雪女郎   マチ ワラタ
 こちらも寂れたスナックが似合いそうな、かっこいい雪女郎。


2020年1月8日

中居由美ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 お正月気分も抜けて、世の中はどんどん動き始めています。今年は、東京オリンピックがあり、今から期待でワクワクしています。子どもの頃、東京オリンピックの映像を白黒テレビで見た記憶がかすかにあります。自国での開催を二度見ることができる幸せを感じています。
 今回もたくさんのご投句を頂きました。ありがとうございます。

【十句選】

落葉してさよならはわたしが決める   短夜の月
 はらはらと舞う美しい落葉。春の芽吹きから生命力漲る夏、秋の紅葉までのドラマは、最終章を迎えようとしている。転じて、中七、下五で、人間の生身の声が生きている。

冬ぬくしパン屋のならぶ京の街   古都ぎんう
 古都、京都にならぶパン屋さんの賑わいが見えるようだ。パンの焼ける匂いは、行き交う人たちを幸せにしてくれる。季語「冬ぬくし」が効いている。

数え日を使い切るためある手足   藤井美琴
 年も押し迫ると、切迫感が募り、あれもこれもとジタバタするのは毎度のこと。安堵のもとで新年を迎えたいのは、誰しも同じだろう。そのために手足があるという発見が面白い。

夜学の師ジャージの袖のチョーク跡   ふわり子
 夜学の先生について、多くを語らなくても、「ジャージの袖のチョーク跡」という情報だけでいろいろなことが想像できる。たとえば、山田洋次監督の映画「学校」。西田敏行さん演じる黒井先生のような教師の姿を連想した。

日脚伸ぶまだ世に紙がありし頃   幸久
 これは、未来を詠んだものだろうか。未来には、紙などなくなってしまうのか、と思うとなんだかわびしくなる。未来の世界にも「日脚伸ぶ」という季語が残っていますように。

サボテンに名前を付けて冬麗   ちづ
 サボテンの種類はさまざま。さぞや名前をつけるのは楽しいことだろう。奇想天外な名前が似合うかも。小さなものと交信する心に、詩は生まれるのだと思う。

冬銀河アラビアンナイトの長さとも   中 十七波
 冬の星々の光の鋭さは、果てしなく遠い宇宙へと、想像を誘う。その遠さをアラビアンナイトの長さと捉えたところが面白い。アラビアンナイトの数々の物語が句の背景を彩っている。

待たされて読む極月の週刊誌   中 十七波
 「極月の週刊誌」がいいと思った。読みたくて読んでいるのではない。心ここにあらず。待たされているいらだちが、よく伝わってくる。

姉走り妹走る奴凧   伊藤順女
 姉妹の仲の良さ、すぐに姉の真似をする妹の可愛らしさ。リフレインが俳句のリズムを生み、生き生きとした一句となった。

大きめの楽器の切手クリスマス   紅緒
 「大きめ」がやや曖昧なので、言い切ったほうがいいかもしれない。楽器のデザインの切手とクリスマスの取り合わせ、いいと思う。


2020年1月1日

内野聖子ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 みなさま明けましておめでとうございます。
 昨年は多くの投句を本当にありがとうございました。とても励みになりました。  今年も最後までどうぞよろしくお願いいたします。

【十句選】

極月の街に人待つ人と人   二百年
 「人」という漢字が三つ入っているだけで年の瀬の人出の多さが目に浮かびます。どこで切るかで意味がそれぞれ変わってきて面白いと思いました。

風邪気味の君のLINEの誤変換   まつだまゆ
 普段はあり得ないような変換ミスをしていて変だなと思ったら体調不良だったということでしょうか。ふとした日常生活の中の発見ですね。

冬の月齧ればブルームチョコの味   短夜の月
 ブルームチョコレートとは、表面が変質して白く固まったチョコレートのこと。月の味がブルームチョコの味だという発想が新鮮でした。冬の月はどちらかというと白っぽく見えることがあるのでそこからのつながりかもしれませんね。

鮟鱇の負けを認めぬ面構へ   たいぞう
 鮟鱇の強面な感じがよく表されていると思います。グロテスクな見た目に似合わず鮟鱇はいい味出しますよね。

公園の三角四角冬の空   古都ぎんう
 公園が三角で冬の空が四角なのか、公園が三角で四角なのか。円形のものがないのが冬の寒空をいっそう際立たせています。

一晩に一粒冬の星甘し   あさふろ
 絵本の世界のようです。冬の星が甘いという意外性が面白いかなと思いました。

黄昏の齢にきらり冬銀河   茂
 歳を重ねると色々不都合も出てくるけれど見方を変えると良いこともたくさんありますよね。冬銀河の美しいけれど、少し明るさが弱いところが「黄昏の齢」にマッチしていると思います。

冬北斗スタートライン蹴り上げる   干寝 区礼男
 冬の澄んだ空に輝いている北斗七星は星空の案内役の役割も果たしているそう。躍動感のある言葉との取り合わせが意外でもあり、合ってもいるような魅力的な句です。

枇杷咲けり付かず離れず祖母の家   中 十七波
 「付かず離れず」というこの程よい距離感が心地良いのかもしれません。実感としてもわかりやすく、祖母宅に咲いているのであろう枇杷も然り。

風花やできそこないの世界でも   幸久
 「風花」というはかなくも美しい光景から一転して「できそこない」というネガティブな世界が待っています。ただ救いようのない感じではなく雪はひらひらと何処にでも平等に美しく舞うのです。