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10月21日  谷さやん       10月31日
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11月11日  秋月祐一       11月21日
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2018年9月19日

須山つとむドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 自然の猛威。台風(秋の季語)21号が追い打ちをかけるかのように、大阪の北西部を暴走。息を潜め、北に抜けてくれるのを待ちました。さて,今週も明るい季語との出会いが楽しみです。

【十句選】

竜胆や降りては晴るる峠道   太郎
 雨のあとの束の間の晴れ間。五裂する花冠に水滴がキラリ。藍色に冴えるリンドウはやはり,太陽の光が似合う花。峠の道を秋風が抜けていく。

回り道どんぐりの道けもの道   中 十七波
 一読して三段切れ。・・でも、繰り返し読むうちに、同じ一つの里道を歩いている秋の男に焦点が合って、さわやかな気分がただよう。豊かな秋の自然が見えてくる。

観音に一瞬の笑み稲光   たいぞう
 山裾の白い観音立像が黒雲に覆われた。突如襲うイナズマに、いつも見慣れた慈悲のお顔の上に,さらに 笑みまで現れた。思わず合掌。

生臭き風を束ねて落し水   伊奈川富真乃
 稲を刈る前、田に残る水を落とす。この時、田圃を守っていた水に、生臭ささを嗅ぎつけた。研ぎ澄ました感覚の句。 『束ねて』はやや常套、鮮明な描写の言葉の工夫したい。

虫の声ココナッツピーナッツアーモンド   けむり
 深い,でかいナッツ缶を開けたその時、俳人の耳にミックスナッツの輪唱がこぼれた。芳ばしい香りが鼻をくすぐった。虫すだく長夜。 『ナッツ』の促音は無用だろう。

うにゅーっと凸面鏡にネコじゃらし   干寝 区礼男
 拡大鏡(ルーペなど)を使って野原を観察すると,楽しみが倍増、異次元の発見がある。この句,ネコじゃらしがザウルスに変身! 凹面鏡の鏡像の方が、オノマトペにはまると思う。

子狐のパスタに混ぜる曼珠沙華   ∞
 秋の野は子ギツネ、仔ダヌキには格好の遊び場。ママゴト遊びの茹でパスタに,激辛の曼珠沙華を利かせるなんて、平ちゃら。メルヘンの連想が跳躍する、楽しい句。

青葉風特急やくも自由席   冨士原博美
 振子式電車がカーブの多いを列島を横断する『ゆったり やくも』 。青葉風のなか,伯耆大山も宍道湖も,窓をとびれ去って行く、おおらかな景色。

をみなへし口にくわへしけものの目   紅緒
 美しさ,優しさではなく、同じ季語の持つ、恨み、嘆きの陰の面に着目した句。下五『けものの目』は印象が強烈。『黒目がち』などと、婉曲に物語を始める手もあるだろう。

秋扇の緩まぬ要手のひらに   ぐずみ
 夏が過ぎても、毅然として在る秋扇。上五『秋扇の』の助詞『の』は、秋扇の自己主張だと理解する。また一方で、扇と要(かなめ)は重複して 説明過多だと断定もする。悩ましい。

【注目した5句】

追えど追えどかなかないつまでも遠く   銀雨
  秋初め。『いつまでも遠く』は冗長の感が。『終に姿なく』など、空間描写で言い切っては。

一年のまた巡りきし虚抜菜   みなと
 虚抜菜を、『うろぬきな』と音読できたとき,風のゆれる間引き大根(季語)が姿を見せた。

つるぽこのつるつるぽこりつるれいし   藤井美琴
 口誦性(くちずさみ)を遊ぶ句。季語は霊芝? 下五『つる』は、蔓、吊る・・で迷ったが。

墨付けの糸の緊張秋澄めり   彩楓
 大工道具の墨壺の美を見た。『緊張』を,モノや音の具体物で描写し,句の彩度を上げたい。

新宿の都庁浮き立つ稲光   眞人
 上五『新宿の』では単なる描写。『新宿に』に変えると、少しだが 物語は歩き始める。


2018年9月12日

星野早苗ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 西日本豪雨、大型台風に続いて、北海道の大地震。収穫前の緑の田畑になだれた生々しい土砂の写真に言葉もありませんでした。この自然と共存していく道を探す大きな課題が残されたと思います。被災地の一日も早い復旧をお祈りします。
 今回は165句の中から。

【十句選】

目薬の素直に落ちて夜の秋   まゆみ
 目薬がいつも素直に目の中に入ってくれないのでしょう。何度も差し直すのが常なのに、今日は「素直に落ちて」一回で上手く差せました。そのちょっとした嬉しさが、ほのかに涼しい夜の秋と合っているように思いました。目薬は、いつも引力に素直に落ちてはいるのですが。

枝豆やをりをり黙る口八丁   伊奈川富真乃
 「をりをり黙る」のは普通何か考え事があってのこと。けれども、食べているときだけ静かな人もいるのですね。果たしてこういう人を口八丁と言えるのかどうか、枝豆を食べながらおしゃべりの止まらない秋の夜だったのでしょう。

秋の蝶水の匂いのする方へ   せいち
 秋の蝶は、蜜の匂いより水の匂いに、秋の水辺の明るさに惹かれていくのではないでしょうか。蝶の吸水活動は、実際には夏に盛んでよく見られます。吸水の必要のあまりない秋の蝶ですが、「水の匂いのする方へ」に説得力を感じていただきました。

見えぬ風見せて花野の黄昏るる   今村征一
 繊細に揺れる花野の草花によって、実際には見えるはずのない風がそこにあるかのように見えたのです。夕方になって風の出てきた花野。夕映えの花野のあちこちが揺れる、有るか無きかの優しい風だったのではないかと思いました。

夕顔や紅を落として歯医者まで   短夜の月
 歯科に行くときは口紅は塗りません。掲句の主人公は、普段きちんと化粧をしてルージュをひいている女性なのでしょう。夕刻、歯科に行くために紅を落とした女性の白い顔と夕顔の花は、親和性のある良い取り合わせだと思いました。

袋菓子ゴム輪でくくり草の花   百合乃
 最近は個包装も多くなりましたが、大きな袋菓子の残りは輪ゴムで括ってとっておきます。煎餅やポン菓子などの素朴な駄菓子と草の花の取り合わせが郷愁を誘います。湿気を防ぐために輪ゴムでしっかり括るという生活感もいいですね。

奥久慈の山むらさきに蕎麦の花   みさ
 茨城県の奥久慈でしょうか。一面に白い花をつけた蕎麦畑の向こうに渓谷の山々がくっきりと見えます。「山紫水明」は山と水の美しい景色の形容句ですが、澄んだ秋の大気の中、奥久慈渓谷の景色はまさに山紫水明だったのだろうと思います。

秋灯や胎膜に透く牛の脚   雪子
 胎膜に包まれたままの仔牛の誕生。牛舎の秋灯の下での牛のお産ですが、そのシーン全体が淡い光の膜に包まれているように感じられます。仔牛の脚の具体性が良いと思いました。

陰干しの黒服軽し晩夏光   紅緒
 黒服は礼服でしょうか。喪服か、或いはリクルートスーツかも知れませんが、片付けようと陰干しをした時に、その軽さに気付きました。夏服のスーツは軽く仕立ててあるのです。重苦しい印象の黒服の、仕舞い際の発見ですね。

コスモスを揺らしてゆけり新学期   中 十七波
 新学期、学校へ行く子どもがコスモスの花をちょっと揺らして行きました。子どもと自然とのふれあいがこれ以上無いほどさりげなく描かれ、好感の持てる句です。新学期に向かう子どもの心をコスモスが過不足無く受け止めています。

【その他の佳句】

月白し缶ドロップの薄荷の香   素秋

人のなか人を遁れて秋のこゑ   たいぞう

かなかなや石を枕に露天の湯   眞人

泥掬ふ物に塵取り台風過   雪子

秋分や夜へ夜へと走るペン   紫

懐かしきもの引き寄せて雷兆す   瀬紀

白粉花寝つき良き夜となりにけり   をがはまなぶ

秋の風洗車の夫のなで肩よ   鷲津誠次

道草も余生も嫌い蓼の花   ぐずみ



2018年9月5日

谷さやんドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 先日訪ねた北宇和郡松野町の「芝不器男記念館」の庭には、青い柿の実が転がっていました。記念館には冷暖房はありませんが、裏庭の縁側に座っていると涼しい風が惜しみなく吹いてくれます。その日は急な雨が降り出して、軒先の雨だれが木の緑を映しながら、慌ただしくもきらきらと落ちるのを眺めました。待ち人は、何処かで雨宿りをしていたらしく遅れて来ました。着くなり「俳句出来た?」と聞かれましたので「今はまだ」と答えておきました。ぼーっとしていたのです。暑すぎた夏が終わったので、いい句を作りたい秋です。

【十句選】

質問に質問返すまだ残暑   まつだまゆ
 よく意味が飲み込めない質問でもされたのだろうか。「どういうことですか?」と質問を返している場面か。じれったいというか要領得ない質問への苛立ちが「まだ残暑」に現れている。

枝豆や隣家の灯りともりける   太郎
 隣の家の窓が珍しく灯った、ということであろうか。それとも、隣も灯る時間になったと気づいた一瞬なのだろうか。ともあれ「枝豆」がいいと思った。枝豆だから隣家に向ける視線が見えて来る。

向日葵の地平ロケット飛び立てり   銀雨
 「向日葵の地平」がいい。私は広がる向日葵畑を想像した。そのずっと向こうに、真っすぐ発つロケットの姿が現れて鮮やかだ。

珈琲碗今朝は二客の夏邸   茂
 最後「夏邸」と置いて、コーヒーカップの辺りの景色が涼しく広がる。家族が出払って、二人きりの珈琲椀がなお涼しい。

トムといふ守宮夜な夜な風呂の窓   素秋
 作者の注に「トム=ピーピングトム」とあった。調べてもよくわからなかった、というかやっぱりわからない。注が無くても「トムという守宮」は十分面白いと思う。私は守宮がとっても苦手だが「トム」と名付けるとにわかに親しみが湧いてくる。

恙なく一役終へてすててこに   たいぞう
 現在では「ズボン下」とか「ロンパン」といって「ステテコ」とは呼ばなくなったようだ。今思い出しても、父が履いていたステテコはほんとうに涼しそうだった。風通しが良さそうで。ちなみに「すててこ」の名の由来は「一八八〇年頃、すててこ踊りを始めた三遊亭円遊がはいたところから」だという。
 この句、一役終えた開放感がその白いステテコに出ている。

子ら顔を並べ熟れたる柿を食む   青海也緒
 なんとも可愛らしい光景。「顔」を並べたところがいい。机のすぐ上に並ぶ顔。すなわちまだ小さい子ども。そして他でもない「柿」を剥いてあげるお母さんがいいなあと思った。柔らかくなった柿を美味しそうに頬張る子どもたち。

夜行バス発車の窓へ土用餅   日根美恵
 土用「鰻」はもちろん知っていたが「餅」があるとは知らなかった。広辞苑には「夏の土用についた餅。食べると力が出るといい、多くは餡餅」とある。インターネットで見ると、とても美味しそう。帰省する子へ持たせるのかもしれない。「発車の窓」だから、ぎりぎり間に合ったのだろう。

炎天でなければ思ひ出さぬこと   けむり
 「思ひ出さぬこと」って何だろう。でも「炎天」の下だからこそ思い出すことがある、のは何となくわかる。

君と会う助走のような驟雨来る   藤井美琴
 「驟雨」は「夕立」と同じ。「助走」には「驟雨」が合っている気がする。驟雨を恨まないで君と会うための助走、と感じることに共感した。雨を見上げる、きりっとした横顔が目に浮かぶ。

【他にも気になった句】

貝殻を戻して去りぬ秋の浜   せいち
 案外「戻して」が曖昧になっている気がしました。今拾って戻したのか、浜に返しに来たのか。

濡れる手に朝日をもぎしトマトかな   じゃすみん
 いい感じです。「もぎし」の「し」が気になります。

蟷螂のあたま土偶に似てをかし   比々き
 「似て」から後の展開に期待したいです。

エクセルの技の長けたる生身魂   鷲津誠次

半島のニューステレビに白木槿   ぐずみ

 「ニュース」で切れると思いますが「ニューステレビ」と読まれそうです。