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投句締切担当ドクター十句発表
  終了   秋月祐一       6月 3日
5月31日  山本たくや       6月10日
6月 7日  内野聖子       6月17日
6月14日  中居由美       6月24日(最終)

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2020年5月27日

須山つとむドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 ついにこの時がやって来ました。糶(せり)台で跳ね回っているような、新鮮な句々や季語との出会いを、毎回楽しませていただきました。思い返せば、わたくし自身の俳句を振り返る機会でもありました。
 いくつもの大切な思い出を ありがとうございました。

【十句選】

声のしてきそうな空き家若楓   日根美惠
 土地の暮らしを知り尽くした古民家が、また空き家に。幼や、お婆ちゃんの声が聞こえて来そうな佇まいを守るように、楓の新樹が取り囲んでいるのに。時の流れが美味しそうな景。

地図を見て初夏と二人で話したい   干寝区礼男
 擬人化した季語との会話は大胆、詩になった。スーパー歌舞伎のシーンを見ているような、トキメキが伝わる。下五『話したい』はダメ。言い切って、俳句らしい啖呵を切ってみては。

ヤマボウシ法螺貝の音谿渡る   板垣直美
 純白の4枚の苞(蕾を包む葉)が人目を惹き、新樹の山法師はイケメン。『法螺貝、谿』など伝統の用語は確かに俳句になる。コロナ、初音ミクなど『新造語』との取り合わせにも挑戦を。

ハンドルを肩の高さに黄砂降る   善吉
 コロナ禍。煩わしくも、愚直に黄砂はやってくる。その一番の解決策はこれ。イージー・ライダーの高ハンドルで街中を疾駆するのだ。理屈より、体と五感がサッと了解させる。

鰊群来父の遺影を窓に置く   みなと
  鰊群来を「ニシンクキ」と読む。産卵で大群のニシンが北の日本海岸に押し寄せるさま。春の季語。モノクロの記録映画でしか知らない往時の事実を、この句は思い出させてくれる。

さあおいで包んであげる枇杷のごと   瀬紀
 近くの小公園で遊ぶ幼なの姿を、今年はよく見かける。あどけない所作を眺めていると、皮を剥く前、茂木ビワを手のひらに包んで、軟毛に包まれた果実を愛でたことを思いだす。

憲法記念日佐世保バーガー食んでをり   伊奈川富真乃
 テレビ番組で見たきりだが、朝鮮戦争の特需でこの街に誕生した。作り置きしない手作りのバーガー。美味しくて、質実剛健。日本国憲法の性格に、どこかが似てる。守らなければ。

青葉風ジャングルジムのはらわたへ   あさふろ
 自宅前の公園にはジャングルジムが。少女たちが傘で屋根を噴いて「ホームドラマ」を演じていると、青葉風が様子を覗きに顔を出した。その胴体に膓(はらわた)を発見した俳人がいた。

筍のちよんちよりんこの見え隠れ   中 十七波
 中七は『ちょんちょこりん』をパロディー化して楽しんでいると解した(あるいは 誤字?)。春筍のあの食感が待ちきれずに、店先をはしごし、竹林の柵の辺りに出没する作者の姿が。

校章のくっきり光る花水木   紅緒
 伝統と革新で名を馳せる学舎の新学期。真っ直ぐの広い通学路に、白色で統一された花水木が一斉に咲きだすと、時計塔のモダンな学章はシンボルカラーの金と青色が冴えを放つ。

【注目した5句】

夏来る持ち重りする歳時記「夏」   樋口滑瓢
 確かに厚い、殊に植物の章が。この発見を「持ち重り」と、斜に構えて表記した俳味。

小動脈瘤脳内発覚青嵐   まるめ
 字画の横列が脳内の毛細血管に見え、着眼の妙。青嵐がくも膜下出血を抑えこんでくる。

ポストまで今日の外出風五月   まこと
 句のテンポが心地よくて、このコロナ鬱を「コロナ晴」へと変えてくれそうだ。

北北西指せり青葉の風向計   比々き
 サトーハチローの歌曲を思い出させる。もう少し時を待てば、薫風が吹いてくれそう。

芍薬を香るキャベツと言ふ娘   奈未
  初夏の空に向かって花を開く芍薬にキャベツの香りを見た。もう、進路は料理研究家。


2020年5月20日

星野早苗ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 皆さま、お元気でお過ごしですか。
 「今週の十句」担当も、今回が最後になりました。前身の「俳句クリニック」から14年間、本当に長い間ご投句ありがとうございました。今回の投句と一緒にコメントを寄せて下さった方もあり、ありがたく読ませていただきました。全国からお寄せ下さる皆さんの句には、風土や季節感、めずらしい行事や風習なども詠まれ、たくさんのことを学ばせていただきました。これからもどうぞお健やかに、俳句生活をお続けください。ご清吟をお祈りしています。
 最終回は、173句の中から。

【十句選】

バイク便浜焼きの鯖届きけり   日根美惠
 今が旬の「浜焼きの鯖」がいかにもおいしそうです。「バイク便」にも勢いがあります。浜できびきび働く人の姿も見え、コロナ下での苦肉の策の宅配だったとしても、初夏の魅力の溢れた作品だと思いました。

幟立つ父の名入りの道具箱   たいぞう
 「父の名入り」に時代と風格が感じられます。父は昔、手仕事をする職人だったのかもしれません。名入りの道具箱には父の人生が凝縮されています。鯉幟を立てるという作業をきっかけに、さまざまな思いが広がっていったのでしょう。

ポン菓子のこぼれたままの街薄暑   せいち
 公園や空き地にやって来たポン菓子屋。大きな爆発音がして金属の籠にポン菓子があふれました。掲句は、大勢の見物人を集めていたポン菓子屋が去った後の風景でしょう。その一抹の寂しさを、街薄暑という季語がうまく受け止めていると思いました。

ここだけの話と言いて日永かな   冨士原博美
 気の置けない友人とのおしゃべりは「ここだけの話」になってからが本番かも知れませんね。話は弾んで、話題も尽きず「ここだけの話」で過ごす日永なのです。

麦の秋湯宿ぽつりと現るる   ちづ
 一面の麦畑の中にぽつりと現われた湯の宿は、鄙びた温泉旅館なのだと思います。出で湯の熱さは、麦の熟れる頃の熱っぽさ、麦秋の季感によく合うと思いました。

母の日の母通せんぼ小さな手   酒井とも
 母の日はお母さんに感謝をする日なのに、通せんぼする小さな手。いつも忙しくしているお母さんに、母の日のプレゼントを渡したくてのことだったのかもしれません。思いがけない子どもの行動に胸をつかれる、可愛らしさの詰まった一句だと思いました。

緑蔭を出て緑蔭に入る雀   スカーレット
 緑陰から日向に出て来た雀がまた緑陰に入りました。辺りには緑陰しかないのでしょう。雀と緑陰しか詠まれていませんが、その背後には眩しい日差しと輝く緑が控えています。シンプルな作りながら、自然の旺盛な生命力の感じられる句だと思いました。

桜蕊降る肘ついてばかりの子   あさふろ
 コロナで休校の長引く中、こういう子は多いのではないでしょうか。「肘ついてばかりの子」を叱ったりたしなめたりも、今年ばかりはできません。「外で遊んで来なさい」とも言えず、子どもの様子を見守るしかないのでしょう。「桜蕊降る」が時間の経過をうまく表現しています。

素足には透明すぎる渚かな   紅緒
 渚の波に足を浸すと、透明な水を通して自分の素足がはっきりと見えました。透明な海を素直に喜べばいいのに「透明すぎる」の措辞に屈折のある句です。きっと足で触れるにはもったいないほどの美しい渚だったのでしょう。けれども、素足だったからこそ触れられた海でもあるのだと思います。

目の端の片陰を山羊くるような   抹茶金魚
 目の端にある片影に注目した句です。賢い山羊ならきっと片影を来るはず、と作者は経験的に知っているのかも知れません。けれども、実際には、炎天下の片影の中は真っ暗で、そこに何が居ようが遠くからは見えません。真っ黒な片影の存在感を山羊に託して詠まれたのではないでしょうか。

【その他の佳句】

ががんぼの己の一肢見失ふ   みさ

青無花果恋しき人は親友で   古都ぎんう

ママチャリを飛ばす少年風青し   短夜の月

靴裏を消毒液に昭和の日   藤井美琴

正午なりA定食で燕来る   いづみのあ

風入れやお隣仔犬を飼う様子   まるめ

靴洗う在宅勤務夏隣   酒井とも



2020年5月13日

谷さやんドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 今回で、私の「十句選」は最後となりました。ご投句の際に多くの励ましの言葉を頂いたり、また淡々といつものようにご投句下さった方々にも、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。「余り拾ってもらえなかったけど」「いつも恐る恐る投句していました」「船団の俳句は難しい」など、心に染みました。「ひらめきのない時はどうされていますか」という質問も。「ひらめく」とは、いい言葉だなあと感じながら、そういう直球の質問にいつもあたふたしてしまいます。
 俳句とは関係のない本ですが『負けない力』(橋本治)の中に「重要なのは『問題』を発見することで『答』を発見することではありません。」という言葉がありました。コンピュータは答は出してくれますが問題は発見できない。今はやりのAiだってそうです。まずは問題を発見して自分にとって必要なものを探し当てる能力が「負けない力」であるようです。この場に投句していただいた方にとって必要なものを、私が少しでも発信出来ていたならば良いのですが。
 今回は175句から選句させていただきました。お互いにしつこく俳句を続けて、どこかで名前を見つけ合いたいです。

【十句選】

柏餅の餅を自由にしてあげる   短夜の月
 この句からは、池田澄子さんの「ピーマン切って中を明るくしてあげた」を思い出した。短夜の月さんのは、厚い緑の柏の葉から全容を見せたピカピカの白い餅が、大きく深呼吸してそう。投稿の際書かれていた句が出来たいきさつは深刻であったようですが、むしろ心まで開放される明るい風景。想いとはかけ離れた思いがけない着地が、俳句を創る魅力の一つであるように思います。

しゃぼん玉は不要不急になりますか   うさの
 不要不急なる用を、自分の生活から取り除いてみたら、なんだかほそぼそとした自分が残っている気がしました。私の生活にとっては、不要不急のものこそがとても大切なようです。俳句もその一つです。
 日が暮れかけて散歩に出ると、まだ帰りたがらない子どもがシャボン玉を大きく吹かしています。吹いた方とは逆に流れていくシャボン玉。うさのさんの問いに、しゃぼん玉は不要不急なんかじゃないぞ!って思わず叫びたくなりました。

鳥雲に入る人類は雨の中   藤井美琴
 「人類は雨の中」は、今世界中がそんな天候の中で暮している気がします。帰るべき時季に鳥は帰り、でも人の世界はずっと雨が降り続いているような心細い日々。空の世界と地上の対比が浮かび上がります。

絮の丘うつつをぬかす神父かな   干寝区礼男
 絮は蒲公英の絮のこと。白い冠毛となった蒲公英が、あちこちに立っている丘。神父さんがその丘で、絮を飛ばすのにうつつを抜かしている。絮に囲まれて、絮の気分になっているのかも知れない。きっといい神父さんです。

ドラムスティック腋に挟みてソーダ水   ふわり子
 ドラムスティックとソーダ水の取り合わせの句。ソーダ水は、夏の人気の季語です。どんな場面に置いたら、今までにないような更に素敵な言葉になるか工夫のしどころです。私も、この夏挑戦したいです。ドラムを叩く合間に、手を伸ばしてい場面。汗の顔が、ぐいぐいソーダ水の泡を飲んでいく様子が見えます。「腋に挟みて」が、いいです。またすぐドラム演奏に入るために。

もうちょっと長生きしたろ葱の花   せいち
 「長生きしたろ」が、好きです。何か生きていくたくらみを見つけたような気配で。葱の花は、葱坊主という言い方で親しまれていますが、そうするとかえって「したろ」が生きてこなかったかもしれません。「葱の花」を選んだのが良かったのだと思います。

ちょっといいプリンを買って春惜む   マチ ワラタ
 「ちょっといいプリン」がいいなあ、と思いました。いつもだったら手を出さないちょっとだけ高いプリンで、行く春を惜しむ。そういう季節の見送り方もあるなあと、とても共感しました。

風薫るゼッケンすこし大きくて   たっか
 素直に気持ちいい句でした。体に少し大きいゼッケンが風に膨らんで、走るのにはちょっと具合が悪い。その気分を補うに余りある青葉の季節の風が、背中を押してくれている。同じ作者の<ネアンデルタールのことば夜の薔薇>にも惹かれました。夜の薔薇は化石人類に通じるのか、と。<マンションに風とおりぬけ冷奴>など、創り急いでなくて、言葉と言葉の風通しがいい。ゆったりと読めるのは、表記への工夫もあるかと思いました。

鉄棒やざらつく味のチューリップ   あさふろ
 鉄棒の手の感触が後を引いて「ざらつく味のチューリップ」へと繋がっていったのでしょう。鉄棒がざらつくだと珍しくないですが、チューリップのしかも味が、読者に戸惑いを残しました。

天の川モルタルを山羊舐めて去る   抹茶金魚
 抹茶金魚さんの作品は、私にはなかなか難しく複雑でした。この句にも大変惹かれましたが「去る」が必要なのかなと思いました。天の川のもとで山羊がモルタルを舐めている風景は、それでけっこう不思議で魅力的ではないでしょうか。「去る」ことで、天の川の効果が薄くなった気がしました。

【気になる句】

春熟るる二倍に膨らむ非常食   ちづ
 「二倍に膨らむ非常食」は、面白いです。「春熟るる」は意味は勿論わかりますが、あまり馴染みのない言葉に感じます。「春深む」、「春の暮」などの方が、面白いレーズが際立つと思いました。

ヨガポーズ決めて糠床ととのえて   まるめ
 ヨガの句は沢山見かけますので、新鮮な句を作るのが難しくなってきましたが、糠床への展開は良かったと思います。

切り抜きの新聞の穴梅雨に入る   じゃすみん
 切り抜きの新聞の句も、よくあります。この句は、穴から梅雨の雨が見えるようで面白かったです。

春逝くやテイクアウトの夜も五日   鷲津誠次
 季語が惜しいかと。「夜も五日」という言葉に引っ張られているようで。

独活の香に飲むしかないな独りでも   瀬紀
 「飲むしかないな独りでも」に、わかるわかる!と頷きました。

バラの門潜り漁師の厨口   善吉
 バラの門と漁師の厨口には大いに惹かれました。「潜り」にもう一工夫欲しいです。

すれ違ふ日傘ソウシャルディスタンス   中 十七波
石鹸玉飛ばすソーシャルディスタンス   菊池洋勝

 今の言葉に挑戦した果敢な二句。それぞれ日傘は「すれ違ふ」ものですし、石鹸玉は「飛ばす」ものなので、そこが惜しいと思いました。私も、「距離」に挑戦します。


2020年5月6日

久留島元ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 今回が私の担当回は最後です。
 最初の掲載は2012年9月12日。8年近く担当させていただいたことになります。ありがとうございました。
 第一回めからずっと目にしている投稿者のお名前もあり、何人かの方からは最後のメッセージもいただきました。お目に掛かったこと、直接のやりとりはほぼなかったにもかかわらず、長い間お世話になりました。ありがたいです。現在は思いがけず日本中が外出自粛、自宅巣ごもりの日々となり、俳句の世界でもインターネットの利用が一気に普及しました。
 「e船団」クリニックは解散となりますが、ネットを先駆けて活用しつつ、俳句の可能性を広げるお手伝いができたとすれば幸いです。

【十句選】

「十人死亡」残りの蟻は元気です   茜
 今回の新型コロナウィルス流行にかけての連作でしたが、この句は、その文脈を外して人の死と関係なく元気な蟻の動きが見えて、無情ですがユーモアもある句です。蟻にとっての死はもっと身近なものかもしれず、十人死亡、で騒ぐ人の情と、蟻の対比がいい。

大変なことになってる傘の骨   遊飛
 こちらも、あるいはコロナ騒ぎをきっかけに作られた句かもしれませんが、単純にこわれた傘(ビニール傘を想起しました)を大げさにとぼけて詠んだ句でもあります。無季。

分岐点にきっと佇む花菖蒲   紅緒
 分岐点、実際の道なのか、それとも人生に迷っているのか。花菖蒲のおちついた存在感。紅緒さんはコーナーでも古参。お世話になりました。

訥々と驢馬登りゆく蜃気楼   抹茶金魚
 日本の蜃気楼ではない、どこか異国のイメージでしょうか。坂道を登っていく驢馬の「訥々」とした感じがいいですね。

ぐりとぐら道草摘草春の虹   中 十七波
 口ずさみたくなるリズムのよさ。ぐりぐら、ぐりぐら。この場合、功績の半ばは絵本に帰すかも知れませんが、こういう口誦性の良さは大切です。

はるはるはるこんなに長い春もなき   吉野利美子
 今年の実感。長き春は「永き日」もあり常套句なので類想がありえますが、上六破調の勢いがいいです。

ガリレオはふらここ漕いで地動説   瀬紀
 ぶらんこで遊ぶガリレオを想像すると楽しいですし、未来のガリレオ出現を夢想するのも楽しい。語順は入れ替え可能かも知れません。「ふらここを漕いでガリレオ地動説」のほうが、より展開が鮮やかになります。

根暗っぽい壺に夕焼けみせてやる  うさの
 ネアカな壺はあまりイメージできませんが、これは親切、なのだろうか。「夕焼け」は夏の季語として認める人と認めない人がいます。この季語は動くかも。

おたまじゃくしに眉間があった   あさふろ
 自由律。目が、わかるほど成長したのか、というあざやかな驚き。

ゴールデンウィークあまびえを呼びに   まどん
 アマビエ、すっかりこの数ヶ月で有名になってしまいました。もともとは疫病を予言する存在だったようですが、あの、人魚か鳥かわからない見た目がうけ、今はすっかり疫病除けのお守りと信じられています。この句は、妖怪アマビエを、海底に呼びに行っているような楽しさがあって、時事とは関係なく面白さが伝わります。

【選外佳作】

 飛躍しそこねて失敗してしまった挑戦者に触れていきます。

読点がはぢけてをりぬ揚雲雀   二百年
 わかるようで、わかりにくい句。ほかの記号でも代替可能だったか、垂直に飛ぶ姿となにか関係があるのか。

フルートの音と佐保姫の羞恥心   干寝区礼男
 単純な対比、取り合わせですが、実態としてはわかるようでわかりにくい句。佐保姫のイメージに共感できれば、人気句になる可能性も。

三色菫ケロヨンの首は動かず   ふわり子
 「ケロヨンの首は動かず」は、わかる人にはよくわかる。「三色菫」も、すこし懐かしい薬局の風景には似合うか。語呂の悪さが難しいところ、一度くちずさんでみてください。

天使のころ美形でしたよ春きのこ   いづみのあ
 かつて天使だったころは美形だった、今はどうなのだろう、と会話を想像して笑ってしまいましたが、これがお子さんに向けた言葉だと考えるととたんに理屈で説明がつくので面白くない。ファンタジックな景のほうが面白いですね。

囀りに返事をしてもいいのかな   スカーレット
 いいんです。むしろ、返事をしてしまうのが俳人、囀りを邪魔するほどに話しかける、そんなくらいのほうがいい。まだまだ常識が邪魔してます。

裏窓から逃げる隣人飛花落花   古都ぎんう
 上五の字余りからの、ドタバタ喜劇のようなリズムの悪さが、下五と噛み合っていません。すっきりおさめたいなら「裏庭へ逃げる隣人飛花落花」これなら、まあ間男でしょうか、笑ってはいられない状況ですがリズム感で笑えるのでは。

くっくっとコロナの主犯春の闇   冨士原博美
 コロナ騒ぎの主犯(実行犯)ならわかりますが、ウィルスの主犯という言葉遣いは読み取れません。ただ、春の闇の中、くっくっと笑う謎の黒幕の存在感、は面白い。

川岸の風のかたちの柳かな   太郎
 「風のかたちの柳」はなかなか面白い見立てですが、柳が川岸にあるのは当たり前。やわらかな風なのか突風なのか、もう一歩の描写がほしい。