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投句締切担当ドクター十句発表
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 10月 9日中居由美  10月19日
 10月16日久留島元  10月26日
 10月23日谷さやん  11月 2日
 10月30日星野早苗  11月 9日
 11月 6日須山つとむ  11月16日
 11月13日えなみしんさ  11月23日
 11月20日山本たくや  11月30日
 11月27日内野聖子  12月 7日

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2016年9月21日

須山つとむドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 八月の記録的な暑さと迷走する大型台風などで、今年は遠い山を断念。近くの六百メートルクラスの低い山を繰り返して歩く。源流を目指し谷川沿いを登ると、キツネノカミソリの黄赤色の花とであう。そのたたずまいの静けさが印象に残る、秋の季語の好きな花の一つ。

【十句選】

鉄条網越えてカンナに届く風   鸚儘
 独断かもしれないが、カンナには乾いた、熱い風が似合う。内戦の終えない乾いた、熱い国の悲劇を問いかける、報道写真のように重量級の一句。下五には『風届く』の選択肢も。

赤のまま母は叱らぬひとでした   たいぞう
 『赤まんま』の語のから浮かぶ映像には、ままごと、赤飯、メルヘンなど。これらのイメージがそのまま結晶し物語となったような一行詩。サトウ・ハチローを思い出させる。

彼岸花貯金年金後妻業   秋山三人水
 漢字だけの字面と語感、端正な五七五、老後への関心事、話題の映画作品。金が敵の世渡りに、曼珠沙華までが金のなる木に見えてくる。実験への意欲、挑戦状のごとき一句に快哉。

葡萄買う十五で逝きしおとうとへ   谷 ゆり
 往時、葡萄はまだたかねの果物。みずみずしい葡萄をと、あれほど欲しがっていた弟に、ついに望みを叶えてやることができなかった。デパ地下は、そんな弟との出会いの場。

茎吹いて咲かす妖怪桔梗に   紫
 下五を『きちこう』と読んだ。勢いを伴って五裂する桔梗には、此の句のように『花咲か妖怪』が茎に取り付き、生暖かい魔法の息を『プッ』と吹きかける様が、確かに見える。

アクセント可笑しいですか葉鶏頭   紅緒
 青い目の留学生か、地方出の苦学生? まじめ顔が正視して問いかけてくる。その後ろ、丁度目と同じなの高さには、握りしめたハンカチのように鶏頭花。くしゃくしゃ感が可笑しい。

上段の棚田のまぶし秋桜   茂
 緩やかな谷の頂部や窪地を縫うようにして、棚田が広がる。見上げる棚田には、ハーベストゴールドの稲穂とコスモスの彩色が光のパッチワーク。風はいま、バロックの管楽器。

けん玉の宇宙遊泳天高し   をがはまなぶ
 けん玉道競技に『宇宙遊泳』の種目があるらしい。でも此の句、拳と玉とが糸で結ばれて秋空を浮遊する様を、スペースシャトルと宇宙飛行士の中継画像に重ねた。そこにロマンを見た。

きちきちや膝の子パパとよく喋る   瑠璃
 手に掴めばステルス戦闘機のように不気味な形。だが、草はらや庭先を飛ぶ姿は可憐。バッタのそんな一面を、児と父親の会話に定着させた。とりわわけ『膝の子』の措辞が秀逸。

いわし雲子猫に負けぬ子のあくび   鷲津誠次
 『いわし雲、子猫、子の』と、同質の対象を並列させて景がはっきりと見え、音感も心地よい。でも、同質ゆえのまとまり過ぎや、予定調和に留意することも必要かもしれない。

【注目した五句 】

振り向けば振り向いてゐる遠案山子   伊藤五六歩
 懐かしい田園の景。『かがし』がさらにリアルな表情を見せると、句はより深い詩情を。

良宵や湯宿に聴ける紙芝居   みさ
 月光の窓辺に、紙芝居のシルエット。中七『聴ける』を、すっと読者に伝わる工夫を。

トムといふ守宮今宵も風呂の窓   素秋
 連夜の友に名前まで授けた男のユーモア。『今宵も』の句またがりも楽しが、やや冗長。

シベリアへ続く海原鰯雲   今村征一
 『シベリア』からは敗戦の史実など想起。海原と鰯雲は同類の広がりで、句の緊張を削ぐ。

天高しほろとこぼれり手巻寿司   中 十七波
 手巻寿司の親しみと、心もとなさが見事。中七『ほろ』に、多様なオノマトペへの挑戦も。


2016年9月14日

星野早苗ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 暑さもピークを過ぎ、朝夕涼しくなってきました。皆さんいかがお過ごしですか。
 イチジク、桃、葡萄、梨と、秋は果物のおいしい季節ですね。昔は旅先での水分補給にも果物は重宝されたようで、映画や小説には、旅中、果物を食べるシーンがよくあります。星野立子の〈桃食うて煙草を吸うて一人旅〉もきっと汽車の中でしょう。実りの秋、道中で食べた果物は、その土地の一番の思い出になりそうですね。
 さて、今回は150句の中から。(到着順)

【十句選】

次次にかなかならしく鳴きにけり   太郎
 蜩が鳴き始めました。確かに、蜩は他の蝉のように一斉には鳴かず、一匹ずつリレーするかのような鳴きぶりです。透明感のある高い声は、カナカナカナカナとはっきり聞こえ、かなかなは蜩の別名でもありますね。かなかながかなかならしく鳴くのは当たり前のことなのですが、「次々に」に発見があり、ユーモラスな句だと思いました。

ほどほどの望遠鏡に月ひとつ   二百年
 望遠鏡の倍率は、高ければ高いほどいいのでしょう。遠くの星も大きく見えます。けれども、掲句はほどほどの倍率の望遠鏡。見えるのは月ばかりですが、秋の夜には名月が一つあれば充分なのです。

鳩吹くや曲がり癖ある人の足   阪野基道
 両手を合わせてほうほうと吹き鳴らす「鳩吹」は、子どもの頃の遊びだったのでしょう。「曲がり癖ある人の足」は、「鳩吹」に集中する人の強い個性と存在感を表しているように思いました。或いは、鳩を吹きながらついつい目的地をそれてしまう人の足なのでしょうか。

前略と書くよりうまる秋思かな   今村征一
 「前略」と書き始めた途端、秋思が生まれました。秋思は秋の寂しさに誘われる物思いですから、自ずと手紙の内容にも思いが至ります。目の前にある真っ白い便箋が、作者の秋思の色とも思える一句です。

不知火やわが先輩に原田医師   眞人
 八代海は不知火海とも呼ばれます。この美しい内海におこった水俣病を、医師としていち早く公にし、患者のためにたたかった原田正純氏が自分の先輩だというのです。原田医師を親しく思い起こす方が、地元には沢山おられるのではないかと思いました。

一階と二階にひとりゐる夜長   眞人
 あえて一階の人と二階の人との関係を書かずに、抽象的に述べたところがよいと思いました。秋の夜長、それぞれが「ひとり」になって自分の世界に生きています。そうでありながら、もう一人がどのように過ごしているのか、ふと気になる秋の夜長でもあるのでしょう。

黒揚羽あの教室にいたあなた   岡野直樹
 黒揚羽は艶やかな印象を残す蝶ですが、色彩が無く影のようでもあります。「あなた」もまた影のような存在だったのかもしれません。けれども、今、懐かしく思い出すのは、目立つことのなかったその人のこと。記憶の妖しさを感じさせる句ですね。

八十路来て色に惑はぬ花野かな   戯心
 「私はもう八十年も生きてきたのだから、今更女性の色香に惑わされたりはしませんよ」といいながら、結句「花野かな」でぱっと花が咲きました。視覚的にも鮮やかな句です。美への感受性鋭い翁ならではの句だと思いました。

初紅葉彩色を待つ干支の鳥   中 十七波
 来年の干支はトリですね。紅葉と鳥の取り合わせの句ですが、初紅葉にも、まだ彩色されない白いままの素焼きのトリにも、初々しい未完成の美があると思いました。お正月の準備は、もう着々と進められているのですね。

狩衣のバッタ気になる地鎮祭   スカーレット
 狩衣を着ているのは、地鎮祭に呼ばれた神主さんでしょう。祝詞をあげながら、神主さんが周囲を飛び交うバッタを気にしておられるのか、それとも、神主さんの狩衣に大きなバッタがとまっていて気になるのか、……厳粛な地鎮祭でのユーモラスな一場面です

【その他の佳句】

手のひらに愁思の顎が乗っている   せいち
石の声聞きて離れぬ秋思かな   游鬼
立ち止まる事も知りたり曼珠沙華   谷ゆり
雲の峰人間は皆うそをつき   ロミ
爽やかや英語コミック読む童   をがはまなぶ
蟋蟀の羽立ててをりグランドピアノ   紅緒



2016年9月7日

谷さやんドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 私が住んでいる松山市に「Monk」というライブハウスがあります。ジャズ通の知り合いを持つ友だちが、時々声かけてくれてライブを楽しみます。今回はTReS/トレス+oneのライブを聴くことが出来ました。女性サックス奏者の草分けだという早坂紗知さんと息子Rioさんのバリトンサックスの競演。ベースはご主人の永田利樹さんというご家族のトリオです。それにパーカッションの益子高明さんを加えた南米の音楽に心酔した夜でした。
 初めての私も、打ち上げに加えてもらいましたが、ベテランの益子さんが何げなく言われた言葉が印象に残りました。「聴き手には<インテリ>と<感性>と二通り居る。インテリはすぐに分析する」。そこへ二十三歳のRioさんが、「若い人にインテリが多いんですよねえ。僕はそういう友だちをやっつけます」と、身を乗り出していました。
 今週も、いろんな言葉に触発されながら選句をしました。

【十句選】

けんかしてレモンをひょいと投げれません   高木じゅん
 最後の裏切り感が良かった。投げようとして、相手の表情に喧嘩中だったのを思い出したような。ひょいとは受け取ってくれなさそうな、険しい横顔が目に入ったのか。

おもむろに陛下語りぬ残暑の日   大川一馬
 「おもむろに」がまさに「陛下の語り」。残暑の、今年の忘れ得ぬ日。もちろん、陛下が側近に語られるある残暑の一場面でもいい。

落下蝉辞・辞・辞といいて身仕舞いす   阪野基道
 ことに「身仕舞す」が、いいと思った。蝉が最後に発するジジジは別れの言葉であり、その身仕舞は簡素な気配もする。最初の「落下蝉」が説明してしまって惜しいかなと思う。「辞・辞・辞といいて身仕舞いす」と言えばきっと落下することは想像できるので。

BOYS BE AMBITIOUS胡桃割る   幸久
 誰もが知っているフレーズに「胡桃割る」を付けただけの句。極めて堅い胡桃を割る行為と、大志を抱けという、今では懐かしくも心の傷のように残る言葉の取り合わせが面白い。あの皺しわの胡桃を手のひらに乗せてみたくなった。

油照り太陽の塔もお手上げ   岡野直樹
 「太陽の塔もお手上げ油照り」とすれば、五七五のリズムに収まるのを、あえてこの語順にして、成功している。「お手上げ」と読み終えた途端、太陽の塔の両手が少し上がったような気がして、可笑しい。そういえば私は、小学校六年の時に出来たこの「太陽の塔」を一度も見たことが無い。大阪に行くことがあればきっと会いに行こう、と思いついた。

格下に頭を下げて女郎花   酒井とも
 相手を「格下」と決めつけているところに一瞬引いてしまったが、偉そうな態度の人を格下なのだと自分に言い聞かせて、我慢の頭を下げたのかも知れない。やさしい女郎花が、案外効いているように思った。

言ふことを聞かぬズッキ−二が巨大   みなと
 手元の歳時記にはまだ「ズッキーニ」は載せられていない。夏が旬だが、まだ胡瓜ほど身近な野菜ではないかも知れない。言うことを聞かないこととズッキーニが巨大であることは関係ないが、「巨大」に立腹感ある。

書類書くつむじに月の上がりけり   紫
 書類を無心に書いている感じがするのは「月の上がりけり」の時間の経過からだろう。「つむじ」に上がったのが面白いと思った。ともに残業をしているか、あるいは履歴書を書いている家人を見守っている人が気付いた「月」。

満員の百円バスや稲の花   瑠璃
 百円バスは私も利用したことがある。愛媛県北宇和郡松野町の「森の国バス」で、 運賃は距離に関係なく、大人も子どもも「一回100円」。バス停以外でもフリーで乗り降り出来た。町へ買い物か、あるいは病院へ行くお年寄りを家の前で拾っていった。杉山垣に沿って田んぼが続いていた。この句、利用度の高そうな「満員」がいいと思う。

切株のリスと空缶きのこ狩   中 十七波
 切株に空缶とリスが並んで座っている。最初に空缶が鎮座していたはずだから、そこにリスも乗って来た。空缶を邪魔ともしないで。きのこ狩りでは、こんな素敵な光景にも出会えるらしい。
 リスは栗鼠(リッス)の変化した語だと辞書にあった。リッスの響きも可愛いなあ。