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<これからの予定>
投句締切担当ドクター十句発表
     終了 久留島元   8月 2日
   7月30日谷さやん   8月 9日
   8月 6日星野早苗   8月16日
   8月13日須山つとむ   8月23日
   8月20日秋月祐一   8月30日
   8月27日山本たくや   9月 6日
   9月 3日内野聖子   9月13日
   9月10日中居由美   9月20日
   9月17日久留島元   9月27日
   9月24日谷さやん  10月 4日
  10月 1日星野早苗  10月11日

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2017年7月26日

中居由美ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 もくもくと入道雲が湧く空を見上げては、夏本番を感じています。目下の楽しみは「夏野菜」を食べること。夏野菜は素材のままが美味しく料理も簡単です。季語の宝庫でもあります。暑いことは暑いけれど、夏ならではの楽しみを見つけてこの暑さを乗り切りたいと思います。今週も沢山の御投句、ありがとうございました。夏の俳句を詠むことを夏の楽しみに加えて頂けるとうれしいです。

【十句選】

金魚鉢抱えしままの立ち話   けむり
 金魚の世話をしている時に、心安い人が傍に来て立ち話に及んだのだろう。鉢は小さく軽く中の金魚も数匹。抱えられたまま平然と泳ぐ金魚は、見方によってはホラー的だ。

炎天のコンクリ食べるパワーショベル   岡野直樹
 じりじりと照りつける日中もパワーショベルは働き続ける。ぐわっと開いた口がコンクリートを壊す。その凄まじさ。下五のパワーショベルの字余りがいいと思う。

緑蔭にデモ隊いちじ休みをり   眞人
 激しい主張を繰り広げるデモ隊の束の間の休息。緑陰に憩うデモ隊員の表情が和らぎ素朴な素顔をのぞかせる。

葬列の地を這ふてゆく雲の峰   戯心
 白く濃く湧く雲に夏の盛りを感じる季節。湧きのぼる雲は普段よりも空の高さを強調する。黒い葬列はあるいは蟻の行列のように見えたのかもしれない。白と黒、天と地の対比が鮮明だ。

一本の樹と成るここち滝の前   紫
 滝の前に立つと、水の直線の迫力に圧倒されて背筋が伸びる気がする。そんな気分を「一本の樹となるここち」と詠んだ。

川底の真白き石や薄暑光   瑠璃
  川底の白い石がとてもきれいだ。水面も柔らかく輝いている。夏目漱石に「秋の川真白な石を拾いけり」という句がある。川の白い石は俳人の琴線に触れるみたいだ。

尺蠖の空へ空へと伸びてをり   瑠璃
 「空へ空へ」がいいなと思う。体中を使って這う尺蠖には、確かに空に向かって伸びる瞬間がある。

向日葵千本魚眼レンズを埋めつくす   直木葉子
 向日葵畑に立つと、空間が歪んで見えるような錯覚にとらわれる事がある。この不思議な感覚を「魚眼レンズを埋めつくす」と捉えた。

短夜や砂に埋めたる砂時計   幸久
 砂時計の砂は砂に埋められても、砂に戻ることはできない。ガラスの中で永遠に刻が止まってしまうのだろうか。短編小説の一場面のような句。短夜の斡旋がいいと思う。

壁にあるけふの格言蝿叩   中 十七波
 格言を載せた日めくりを、商店街でもらったりするとつい壁に掛けてしまう。なかなかいいことを書いているのだ。しかし、この「いい言葉」も蠅がたかると蠅叩きでバチバチとたたかれる。有り難い格言も形無しである。なんとも可笑しい。


2017年7月19日

内野聖子ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 先々週から先週はじめにかけては毎日のようにスコールのような雨が降り、雷も鳴って天気がとても不安定でした。私の住む地方でも大雨により避難勧告が出され心細い思いをしました。
 この度の九州北部の豪雨災害では多くの方が亡くなられ、未だ連絡の取れない方も多数いらっしゃいます。それらの報道を目にするたびにとても心が痛みます。これ以上の被害が出ないことを切に願うと共に亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げます。

【十句選】

噴水の高さに合わせ談笑す   茂
 噴水が噴き出す高さと声のトーンが上がったり下がったりするのがシンクロしているんでしょうね。噴水に合わせて声のトーンを変えているようで面白いです。

入梅やゴボリと止まる洗濯機   たいぞう
 洗濯が終了したから止まったのか壊れて止まったのか。いずれにせよ「ゴボリ」がきいていると思います。

白南風のぬける紺屋の通り庭   清子
 実際はどちらも目に見えるわけではないけれど、「白」と「紺」の色のコントラストがくっきりと目に浮かぶようで爽やかな句です。

ボール蹴る少女の背中草いきれ   大川一馬
 ボールを蹴るのが少年ではないところがいいですね。蒸れるような夏の熱気の中でボールを蹴る少女は何を思っているのでしょうか。

飛行機に入道雲のアッパーカット   干寝 区礼男
 青空を行く飛行機に大きな入道雲。勢いがあって夏らしい元気な句です。

秘密ならヘクソカズラの花の奥   瀬紀
  「ヘクソカズラ(屁糞葛)」が強烈すぎて、秘密なんてもうどうでもいい気がします。でも秘密の隠し場所としてはぴったりかも知れませんね。この花、見た目はとても可愛いのに、においが残念なのでこの名前がついたようです。この名前ではあんまりだと思われたのか、季語としては「灸花(やいとばな)」で詠まれる事が多いようです。

ビール空け蛍光ペンで描く土星   比々き
 夏の夜のほろよい気分が伝わってきます。「蛍光ペン」が宇宙っぽくていいですね。

さくらんぼ幾つになっても甘えんぼ   紅緒
 リズムがいいですね。単純なんだけど、後に残ります。「幾つになっても」でちょっとクスッと笑えたり。

七夕の願いの重さ笹撓る   スカーレット
 人間って欲張りですねぇ。どれだけいっぱいお願いしているんでしょうか。笹が撓るということは重いということなので、「重さ」を他の表現に変えてみてもいいかもしれませんね。

夕焼の出口はどこも塞がれて   まどん
 夕焼に出口があるという発想がおもしろいです。そしてどこにも逃げられない閉塞感のようなものも夕焼けの赤と相まって強調されています。


2017年7月12日

山本たくやドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 先週の月曜日に29歳になりました。心機一転、今後ともよろしくお願いいたします。

【十句選】

ラブホから6月の風静かだなぁ   黴太
 景はよく分かりません。何故「ラブホ」から「6月」の風がくるのでしょうか。しかし、「ラブホ」の言葉の力か、何となくの気だるさや倦怠感が表現されていると感じました。

ため息を泡にしている金魚かな   ともぞう
 詩的な美しい俳句だと思います。金魚に対する見方も変わりそうです。

汗香る女子の勝者のインタビュー   大川一馬
 「香る」は狙いすぎに感じました。何となく官能的なニュアンスが出てしまうので、「光る」に返るのはどうでしょうか。

夏痩せて赤い鼻緒とライオンと   さわいかの
 下五の「ライオンと」が、いきなりの飛躍ですが、その飛躍の仕方が思い切りがよくて好印象でした。

黴っぽい頭の中の常套句   せいち
 自分にとって得意な表現ってあると思うんですが、使い古した感ってあると思います。そこを「黴っぽい」としたのは面白い。

「あああああ!」万緑の中速度増す   干寝 区礼男
 新幹線や電車の景でしょうか。もしくはバイクか自転車か。どれにしても、「あああああ」に、かぎかっこは不要かと思います。

五月雨地球のおヘソまで流す   岡野直樹
 「おヘソ」が効果的。最近は雨が多く、気分的に憂うつですが、こういう俳句をみると、楽しくなりますね。

水を打つ女将きりりと貝の口   中 十七波
 景がはっきりしていて良いのですが、「きりりと」の「と」が説明っぽくて勿体ないので一考を。

これほどの世話してなほも病むトマト   椋本望生
 「トマト」をそのままに捉えても良いし、擬人化させても良いと思います。どちらにしても、この「トマト」への深い愛情を感じられます。

糠漬けの茄子かと思ふ余生かな   椋本望生
 哀愁の中にも、充実した気持ちが良く表現されています。


2017年7月5日

秋月祐一ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 はじめまして。今週からドクターを務める、秋月祐一と申します。
 短歌を20年くらい書いてきましたが、おととしのお正月に、突然、俳句を書こうと思い立ち、今日にいたります。2015年に第7回「船団賞」を受賞。著書に歌集『迷子のカピバラ』(風媒社)があります。
 季語とその他の物や事象の組合せを、俳句では「取り合わせ」と言いますが、取り合わせによって、季語もその他の要素も、それぞれ新鮮に感じられるような句が好きです。数年前のぼくがそうであったように、短歌その他の、ジャンル外の方からの投稿句も歓迎いたします。お若い俳人のみなさまも、ぜひ。
 今回は191句の中からの十句選です(掲載は投稿順で、順不同)
 プロフィールも掲載されていなかった新米ドクターの担当週に、たくさんのご投稿をありがとうございました。次回以降も、よろしくお願いいたします。

【十句選】

夏風邪や死後も宅急便は来る   伊藤五六歩
 二通りの読みがありうると思います。ひとつは、私が死んだ後にも、注文済みの商品がこの家に届く、というリアル路線。もうひとつは、死後の世界にまで、宅急便は届くシステムになっている、という空想路線。個人的には、後者により魅力を感じました。(季語・夏風邪)

湖の色忽と変はりし夏座敷   太郎
 日差しの変化によって、湖(うみ)の色がさっと変わる瞬間を捉えた句。湖の見える眺めのいい夏座敷には、心ひかれるものがあります。デジタル大辞泉によると、「忽(こつ)」は「数の単位で、1の10万分の1」。「忽と」は「にわかであるさま。突然」の意になります(季語・夏座敷)

楊梅の枝裂けやすしな登りそ   泰作
 楊梅(やまもも)の枝は裂けやすいから登っちゃだめだぞ、と木の上の子どもに呼びかけています。「な登りそ」という古文調なフレーズと「楊梅」の取合わせが、古代から人間はこういう営みをくり返してきたのだろうな、とはるかな時間を想像させてくれます。(季語・楊梅)

冬瓜に産毛 小さく鳴いてみよ   紅緒
 収穫後の冬瓜には、針のような産毛がびっしりと生えているそうです。手袋をしなくては痛くて触れないほどだとか。その野生的なすがたに、植物ではなく動物のような生命力を感じ、思わず「小さく鳴いてみよ」と呼びかけたのでしょう。一字空けは無くてもよいような気がしました。(季語・冬瓜)

ふんにゃりと皮を残して夏の雲   さわいかの
 たとえば、シュークリームのようなモコっとした夏雲が、風に流さるうちに、くずれて、皮だけのような形になってしまった。そんな場面を想像しました。「ふんにゃりと皮を残して」に手ざわり、実感のようなものがあり、そこからシュークリームを連想した次第です。(季語・夏の雲)

万緑の虫歯凸凹させちゃうぞ   さわいかの
 中村草田男の名句「萬緑の中や吾子の歯生え初むる」の吾子が成長して、虫歯になってしまったのでしょうか。「凸凹させちゃうぞ」は、誰が? 何を? が不明ですが、おそらく、作者が虫歯菌の気持ちになったときに生まれたフレーズではないかと。楽しいパロディの一句。(季語・万緑)

かんたんな形の都市のかたつむり   ∞
 抽象化された、直方体の組合せでできた「かんたんな形の都市」(なんとはなしに無人のイメージ)。そこに、美しいらせんの殻を持ち、ぬめぬめと肉感的なかたつむりが、ぽつんと1匹、粘液の跡をのこしながら這ってゆきます。シンプルなことばで、現代的なさびしさを表現。(季語・かたつむり)

出戻りの原因不明トマト食ぶ   ヤチ代
 下五の「トマト食ぶ」で、一気に景が浮かんできました。出戻りの女性が、昼の電気を消したままのうす暗いキッチンで(あるいは、流し場の明かりだけがついた夜のキッチンで)丸のままのトマトにかじりついています。トマトも自宅の畑でとれた青臭くて、味の濃いやつと想像しました。(季語・トマト)

夏痩せて防犯灯に照らさるる   眞人
 防犯灯とは、お役所の定義としては、街路灯のない暗い住宅街などの電柱に設置されたライトのことですが、玄関先などに置かれた、人感センサーに反応して点灯する防犯ライトと取ったほうが、句として面白くなるような気がしました。カッと照らされたときに、夏痩せの思いが募ります。(季語・夏痩)

トムヤムクンスープこぼるる夕焼かな   まどん
 夕焼けの比喩として、トムヤムクンが登場するのを、新鮮に感じました。ココナッツミルクが加わって、ちょっと混沌とした、でも辛そうな赤。そのニュアンスが伝わってきます。「〜のような」「ごとく」などの直喩ではなく、大胆な暗喩の表現が、日没の臨場感を生みました。(季語・夕焼)