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投句締切担当ドクター十句発表
    終了 えなみしんさ   1月18日
  1月15日山本たくや   1月25日
  1月22日内野聖子   2月 1日
  1月29日中居由美   2月 8日
  2月 5日久留島元   2月15日
  2月12日谷さやん   2月22日
  2月19日星野早苗   3月 1日
  2月26日須山つとむ   3月 8日
  3月 8日えなみしんさ   3月15日
  3月15日山本たくや   3月22日
  3月22日内野聖子   3月29日

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2017年1月11日

須山つとむドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 あけまして おめでとう ございます。
 自宅から歩いて能勢の妙見山に登り、初日の出に手を合わせてきました。赤く照らしだされた神域の梢や、見下ろした街の佇まいに、淑気(しゅくき)を感じました。

【十句選】

冬籠ボブ・ディランよりハトサブレー   伊藤五六歩
 古くは『春』『張る』の枕詞にも用いらた『冬籠』。防寒のため家の内に引き籠るのに、ボブ・ディランとハトサブレーで準備は万端。中七『より』で二物を比較するより、断定しては。

二人して落葉蹴りあふランドセル   太郎
 落葉を踏むふわふわ感や乾いた音で、男児にきざす高揚感。蹴ったり、騒いだりしているうち、少年ならではの 深刻な話題にも。肩寄せ合うと,背中のランドセルがぶつかりあった。

玄関に母の水仙受験の日   谷 ゆり
 寒い受験期の朝にいさぎよく、しかも清楚に咲く水仙。試験のことは一切口にしなかった母だったが、今朝もこの香とともに黙って送り出してくれた。それが 母。

さなちゃんのかわいくな〜れ初鏡   せいち
 雑煮椀の後片付けも一段落。やっと化粧台の前に座れたおばあちゃんの鏡に、さなちゃんの幼な姿が出たり、入ったり。化粧した前髪をこの鏡に映すのも、そんなに遠くないのかも。

正月やまごに教わるアッポーペン   たいぞう
 『ペンパイナッポー』で去年の大晦日は閉じた。お年玉を目当てに訪ね来た孫、孫たちの口々から、いきなり『アッポーペン』な挨拶が飛び出した。またかいなー。

かき揚げを汁に浸せり雪もよひ   幸久
 足元から冷え始めた雪もよいの昼。湯気の立ち上るうどん汁に、かき揚げをゆっくり浸す至福の刻。『じゅわ〜』などと、オノマトペの隠し味で、さらに美味そうな天ぷらうどんを。

コーヒーの澱で占う年始め   由帆
 ドリップで、ペーパーフィルターをすり抜けた不純物が澱。独特の香りや愛おしい風味に、普段は気にもかけてない。でも、年新た。カップの底のパターンから、今年の吉凶占いは?

むささびやグランドピアノ生ギター   酒井とも
 山裾にたつ森林のロッジ。グラスを手にハイカーたちが囲む薪ストーブに、ピアノ、ギターの生演奏が似合う。この星空で、今夜はムササビが飛びますよと、山の男が教えてくれた。

大敗のラガーの瞳空まさを   凉木文平
 ハプニング? 想定外の大敗にも、当のラガーメンの表情は意外にさばさばしていた。フィールドからは目を逸らし、天を仰いだどの顔にも、突き刺すような冬青空の青が映えた。

初日の出誰かが缶を捨てに来る   意思
 元旦の日の出を拝むことができるパワースポット。背筋を伸ばし、声をおとし、赤味を帯びた東の空を凝視して待つ。この静寂のなか、缶を捨てて立ち去る男の影法師がよぎった。

【注目した5句】

風花や増やす腸内善玉菌   幸久
 上五『や』で切らず、『風花が増やす』などと、直叙の方が、この句はきっと面白くなる。

雪嶺をぐい〜んと伸ばし新幹線   ∞
 雪国に向かって伸びていく新幹線。雪晴れの日の眩しい車窓を再現する、オノマトペの効果。

気が合ふてペンギンパンダゆきだるま   中 十七波
 とある絵本の表紙だろうか? ありえない景だが、雪だるまに仮想現実を楽しめた。

全員の餅数かぞえ年初め   草子
 三世代同泊での朝の雑煮餅。その数も重さも驚き。下五には『初茜』など、可視的な季語を。

ヴィーナスのエメラルドの髪白菜割る   紅緒
 ザックと、白菜を包丁でタテ切りした快感か。故宮博物院の翠玉白菜の映像が重なる。


2017年1月4日

星野早苗ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 2017年、明けましておめでとうございます。
 皆様のますますのご健吟をお祈りいたします。
 年末、話題の歌集『キリンの子』(鳥居)を読みました。帯文の「美しい花は泥の中に咲く」はちょっと通俗すぎると思いましたが、深刻な内容を詠みながらどこか明るい、静謐な歌集でした。いろいろな事情をかかえた作者が、自分の言葉を獲得しようとする中で短歌に惹かれ、表現手段として短歌形式を選んだことに、 強い必然性と、そこに働く韻文の力を感じました。誰にとっても生きていくだけで精一杯の毎日ですが、俳句や短歌は、とりわけ辺境に生きる一人のためにあるのかもしれませんね。
 さて、今回は145句の中から。

【十句選】

日向ぼこ二度目の話聞き流す   泰作
 旧知の間柄の二人なら、ああ、また始まった、と思いながらも、上手に聞き流すことができる「二度目の話」。その優しさは、長いつきあいの賜物なのでしょう。親子・夫婦・旧友など、さまざまな人間関係を想像して読むことのできる句です。

雪晴れの五箇山咫尺煙立つ   茂
雪が大気の塵を払い、よく晴れた五箇山(ごかやま)が間近に見えたのでしょう。五箇山の合掌造りの家々からは薪を焚く煙が真っ直ぐに上っています。「間近」を表す「咫尺(しせき)」という漢語を用い、険しい自然と対峙する村の風景を重厚に表現した句だと思いました。

火男や渋抜けきらぬ背戸の柿   素秋
 火の番をする手持ちぶさたに、口にする干し柿。渋柿の皮を剥き、戸外に吊して、甘みを充分に含んだはずの干し柿なのに、わずかな渋みが抜けきらずに残っています。その渋みはしかし、背戸(家の裏)の柿ならではの親しいものだったのかもしれません。

起き抜けの障子を洩るる雪明り   今村征一
 障子を開けるまでもなく雪明かりが感じ取れる朝。夜の間降り続いた雪も止み、今朝はまばゆい深雪晴れなのでしょう。障子を開けた途端に眼に飛び込んで来るだろう銀世界を、明るい障子越しに想像させる、雪国ならではの句だと思いました。

息白し思ひの丈といふ長さ   紅緒
 「思ひの丈」は通常「思いのありったけ」の意味で用いられますが、「丈」である以上、思いにも長さがあるはず、と、考えたユニークな句です。思いの丈を打ち明ける人の白息、或いは打ち明けることのできなかった人のため息の長さ。普段は見えない息というものが視覚化される冬にふさわしい句だと思いました。

「でかく書け」と先生の声筆はじめ   柏井青史
 子どものお習字は、大きく元気なことが一番です。「でかく書け」の先生の声も大きく元気に響いています。新年のスタートを切る号砲のような先生の声。それは、毎年繰り返される、懐かしい新年の教室風景だったのかもしれません。

木の葉髪肩に食ひ込むリュックサック   みなと
 木の葉髪の私も、肩にリュックサックを食い込ませ、山行にトライしています。衰えを自覚しつつ客観視する姿勢に、そこはかとないユーモアとペーソスを感じました。しかし、こうやって辿り着いた頂上は、この上ない達成感をもたらしてくれるのでしょう。

懐のわずかにぬくし冬の雨   ∞
 今日は懐がわずかにぬくい。そのことだけで、外は冷たい冬の雨なのですが、この人の心には安心や楽しさがあります。懐がわずかに温いことが、冬の雨の感じ方を180度変えてしまったのでしょう。人間にはそんな単純さ、かわいらしさがありますね。

遺されし私と残る薄氷と   汝火原
 遺された私と残る薄氷は、現時点ではほぼ等しい存在なのでしょう。大切な人に先立たれ、冷え切った心の状態は、いつまでも残る薄氷のようです。けれども、薄氷はいつかは解けるもの、悲しみもまた、と思える句です。

初雀の引き合ふ藁の時針ほど   紫
 刈田で落ち穂を拾う雀が藁を引っ張り合っている愛らしい新春の一コマです。その藁が時針(時計の短針)ほど、と言い留められたところに、寒中を生きる小さな命のめでたさが、より生き生きと際立ちました。

【その他の佳句】

寒卵霊歌流れる厨かな   茂

冬ざれや隣人のはや棲み替はり   中 十七波

冴ゆる日や遠くに山みる山男   勇平

亡妻忌炬燵出す日と決めており   をがはまなぶ