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2019年8月21日

須山つとむドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 北アルプスの鹿島槍ヶ岳に登ってきました。その秀麗な山の姿、ウサギギクや雷鳥との再会も果たしました。でも、山の上でも気づいた高温化が、とても気がかりです。
 さあ、新しい俳句・あたらしい季語を読んで、暑さを乗り切りましょう。

【十句選】

癌かもしれんアジサイにカタツムリ   遊飛
 検診の後に聞かされた医師の告知の言葉のリアルさ。アジサイの葉を這うカタツムリの姿が、これもまたリアルで、緊張感を醸す句に。上五の最後を『しれんな 』と読んだ。

呼ぶ声に手花火の球落ちにけり   藤井美琴
 身内だけで始めた夜の花火、家の庭には煙硝が煙る。『手花火の球』からは、闇に浮かんだ白い手や、火花の放つ放物線の軌跡など、その細部が見事に見えてくる。

宇宙より見つける完熟トマトかな   ちづ
 宇宙船内。監視カメラの 4Kスクリーン が、我が家の家庭菜園の完熟したトマトをキャッチした。その瞬時、妻へのラブ コールの文案が閃いた。

蟻地獄ぬっと大きな足が立つ   せいち
 蟻地獄の牢獄の明主、ウスバカゲロウの幼虫へと視点が跳んだ。なんとなく爽快感。後退りして身を潜め、じゃまする敵の立ち去るのを、じっと待つとするか。

新涼やアイロン掛けのすべりよく   百合乃
 キッチンの床のベタつきも、吹き出すスチームの音も、何かが変わった。これって新涼? シーツを滑るアイロンの動きも、腕の動きによく馴染んできた。

経理部に一時保管のカブトムシ   短夜の月
 出勤時、正門の下で拾ったカブトムシ。底光りする翅は黄金色を放ち、首と脚からは強靭なバリキが指に伝わる。タイムスリップする事務所の面々。経理部の金庫に一時預かりで始業。

カフェオレや昨日と同じ今朝の秋   伊藤順女
 音の響きを楽しみながら読んだ句。上五を『カフェオーレ』として切れ字を削り、さらに澄んだ音の響きを見つけるのも、一考か。

風灼けて廃棄タイヤの堆し   みさ
 『堆(うずたか)し』の読みを教えられた。太陽光線の熱射を<風灼けて>としたのにも、工夫の跡がうかがえる。単純・明快な景が、こうした<工夫>を支えたのだと思う。

夏野来て少年母の背丈かな   ∞
 みどり深く、草いきれのする夏野は少年の成長に深く関わるのだと納得がいく。成長の過程を『母の背丈』の端的な一語で描写したことで、秀句となった。

両頬を夏の星座に引っ掻かれ   干寝 区礼男
 白鳥座とサソリ座。主星デネブとアンタレスの、鋭く?を引っ掻くような青と赤の光を見た。地球温暖化(?)のせいで、星空を見上げる機会まで遠ざかる、悲しい現実のなか。

【注目した五句】

反り返る校歌反り返るラムネかな   うさの
 アルプス席から高校校歌の斉唱。通路ではラムネの立飲み。ピタリと重なる上体の反り。

レグホンの校庭あゆむ夏休   たいぞう
 夏休みの自由登校。卵のことなど忘れ、レグホンを連れて、校庭を自由に駆け巡ろう。

蝉しぐれ虫歯の治療終了す   二百年
  治療中の歯の疼きと蝉の鳴き声。身につまされる取合わせ。『完治』など、強い結語も一案。

宿直の広き校庭蝉時雨   じゃすみん
 宿直の先生を悪友たちと訪ねた、良き時代もあった。時刻の設定(宵)にやや疑問が。

手ぬぐいがぴしぴし鳴つて秋に居る   意思
 日本手ぬぐを干しに出た、初秋の一刻。下五を『入る』と用言で止めると、句が活性化。


2019年8月14日

星野早苗ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 皆様お元気でお過ごしですか。
 暑さの最中、庭のコスモスが咲き始めました。朝から圧倒されるような蝉時雨です。その空蝉がコスモスの茎にも付いていてびっくりしました。立派なクマゼミの空蝉です。
 ベランダでは蜂の巣騒ぎもありました。使わなくなった盥とポリバケツの隙間に、アシナガバチが扇形の巣をつくっていたのです。業者を頼んで取って貰ったのですが、暑いのでしばらくベランダに出なかったのが失敗でした。
 さて、今回は175句の中から。。

【十句選】

陽に透ける海猫の羽梅雨明ける   短夜の月
 独特の鳴き声を交わしながら海猫が飛んでいます。見上げたその翼が陽に透けているところまで見届けたところに梅雨明けの心情が重なりました。明るい夏空の下で、頭上の真っ白い羽根を見上げる爽快感が伝わります。

食堂のほどよき闇や糸蜻蛉   日根美恵
 「食堂」を〈じきどう〉と読んでいただきました。大寺の広くて殺風景な食堂の中は薄闇で満たされています。そこからは明るい窓外の景色は一幅の絵のように見えるでしょう。時々空中に静止する糸蜻蛉が光溢れる戸外の景色を体現していて、「ほどよき闇」がいいなぁと思いました。

炎昼や影を選びて獣道   宮武桜子
 夏山をトレッキングしておられるのでしょうか。早朝に出発しても、昼からは厳しい暑さに影の濃い道を選ぶうち、気がつけば獣道を歩いているらしい。その展開が面白いと思いました。普段なら通らない藪の中の道が、真夏には一番涼しい道だったのです。獣たちもまたこの涼しさを選んでいたのかも知れません。

閂の軽き菩提寺百日紅   百合乃
 門に渡した閂の横木が、軋むことなく軽く抜けたのでしょう。蒸し暑い日だったかもしれませんが、すっと抜ける閂に涼しさを感じました。真夏に咲く百日紅も軽やかな小さな花をはらはらと咲き零します。親しみやすく涼しげな菩提寺に清々しさを感じました。

無言館の黙深くして日の盛   みさ
 無言館は長野県上田にある戦没学生の遺した絵画を集めた美術館です。遺された絵画は無言ですが、様々なことを語りかけてきます。訪れた人たちも作品に見入るうちに次第に無口になるのでしょう。言葉で語ることのできない感情として「黙深くして」が納得できました。

向日葵や首の水筒飲み干して   菊池洋勝
 あまりの暑さに早々と水筒の水を飲み干してしまいました。水筒が空っぽになれば、この先が心許なくなりますね。向日葵や、と切れているので、向日葵は元気に咲き誇っているのでしょう。けれども、「首の水筒」が、首をうなだれた向日葵も連想させて巧みです。

巻尺で測るみどりごへちま咲く   中 十七波
 巻き尺で測っているのは、赤ん坊の胸囲でしょうか、身長でしょうか。手際よく巻き尺で測る看護師さんの手捌きが印象的です。窓外の糸瓜には黄色い花が咲いているのでしょう。「みどりご」と「へちま」は、溌剌としたよい取り合わせですね。

骨痩せて涼しき風の恐竜展   伊藤順女
 恐竜展には恐竜の大きな骨格標本があります。骨だけになった恐竜は確かにスマートですがそれを「骨痩せて」とうまく表現しました。激しい生存競争を繰り返した恐竜も、今は煩悩が抜けて涼しい風情です。冷房の効いた館内は、避暑に最適の場所だったかも知れませんね。

脱げそうなサンダル夜の喫煙所   たっか
 ちょっとサンダルを引っかけて出てきたという風情がいいと思いました。自分のではなく、居酒屋などでは、店のサンダルだったかも知れません。「サンダル」は長く季語とは認められていなかったのですが、角川の『俳句歳時記・夏・第五版』(2018年)に季語として見出しにとられています。掲句も夏の夜の一コマとしていただきました。

誰がつまづく天の鳴子やかなかなかな   紅緒
 カナカナカナと蜩が鳴き始めました。高く澄んだその鳴き声は、鳥威しの鳴子の音に似ています。それを天の誰かが鳴子の糸に躓いたと見立てました。天上にも透明な糸が張り渡され、鳴子が仕掛けられていたのです。実際、かなかなの声は「天」からの声を思わせますね。

【その他の佳句】

ボンネットに提灯揺れる踊かな   赤橋渡

古窯に竹の皮散る陶の郷   日根美恵

涼しさや母の手縫ひの絣着て   たいぞう

水羊羹東京知らぬ母であり   百合乃

ベランダに蛍族いる遠花火   酒井とも

曲がり角よりソースの匂夏祭り   スカーレット

蛍袋空き部屋有と電柱に   スカーレット

目に見えぬ制服を着て夏期講座   比々き

吾子逝きて二十年なり遠花火   鷲津誠次

誰も居ない卓を光らす巴旦杏   みなと

海の日の赤い鼻緒の島ぞうり   紅緒


2019年8月7日

谷さやんドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 住まいのマンションの大規模修繕工事がすすんでいて、黒い囲いにすっぽり覆われているので文字通り暗い毎日です。休みの日などカーテンを開けていると、上階の足場から降りてくる作業員の方と目が合ったりするので、うかうか開けられません。
 それで、7月からは予定のない休日は、図書館に逃避することにしました。今更ながら、図書館はすばらしく心の広い場所だと思い知りました。まず入場料・使用料が要らない(税金で払っているにしても)、身分証明なしで自由に通過できる。図書館司書が自らの態度で示しているように、声をあげたり大きな音をたてるのを慎んでさえいれば、何時間居ても「もうそろ・・・」なんて促されることもありません。眠くなって机にうっぷしていても、肩を叩かれて起こされることもなし。そして本という壁のあたたかさ。頂いた今回の句稿も、図書館の歳時記を開きながら拝読しました。

【十句選】

写真集開けばヌード今朝の秋   まつだまゆ
 おそらく男性の持ち物で、彼女とか妹とかお母さん、あるいは妻がなんとなくそうかなと思って開いてみると、やっぱり…。眉をひそめるところだが、女性からみてもきれいだったのだろう。「今朝の秋」の空気が、そのことを伝えている。

長梅雨や首都は大蛇の腕の中   短夜の月
 季語「長梅雨」において似たような発想はあるかもれない。けど、大蛇の腕の中という生臭さには共鳴した。「首都」という硬い言葉を置いたことが成功している。大蛇の腕のなかに沈んでいる一国の中心都市。同じ作者の「宇宙ごみ収集論議ビヤホール」も良かった。宇宙にビヤホールが浮かんでいるみたい。

ハンモック君が熟成されている   うさの
 ハンモックに横たわっている「君」は、本を読んでいる、イヤホンで音楽聞いている、瞑想にふけっている、寝ている。いずれにしても「君」が充足した表情に変わっているのだろう。「熟成」が面白かった。ちなみに『新日本大歳時記』(2000年版)には「ハンモック」の例句として、次の句がある。の<ハンモックわが庭になし吊る気なし 星野麥丘人>がある。

幸せはこんな色かもソーダ水   素秋
 そうかも!。ソーダ水のきれいなブルーが目の前に現れた。見つめられてソーダ水も、泡を立ち昇らせながらもっともっと澄んでいく気がする。

オープンカー水平線へ届く橋   銀雨
 季語がないが、風景は夏の海を思わせる。「届く」がとてもいいと思う。長い長い橋の上を走っているのだが、オープンカーとともに橋がずんずん水平線に伸びて行く感じがした。

悩みなきレタスを睨むキャベツかな   大塚好雄
 可笑しい。思わず笑った。二つを並べてみると、先がレースっぽい葉を持つレタスは、なんとなくシャレているように見えなくもない。それにレタスは一枚一枚葉を外していくが、キャベツはいきなり真っ二つにされることが多い。キャベツはそのことを今、悩んでいるのかもしれない。澄ました余裕のレタスの隣で。

みんみんやオレンジ色の昼休   じゃすみん
 みんみん蝉の鳴く木の下での昼休み。みんみんの声と太陽の光線の交差。それがオレンジ色を成しているという感覚に強く共感する。

絶対のひとつラムネは外で飲む   二百年
 「絶対のひとつ」が、まさかの「ラムネを外で飲む」ことだとは・・・。炭酸がこぼれるにしても、そんな宣言するほどでもないだろ、と思わず突っ込みを入れたくなる落差が楽しかった。

網戸から風来る夜の七並べ   たっか
 言葉を巧く繋いだ一句。夏の夜の電灯の下で、トランプゲームに頭を突き合わて興じる家族あるいは友だち同士の姿がくっきり浮かぶ。それにしても、七並べは長く続いている遊びなのだなあと思った。

まだ明るい祭の終わり夜の蝉   干寝 区礼男
 いい情景だなあと思った。祭の後は、明るさがしばらく残る。夜空の明るさとか、街灯とか。仕舞い途中の露店の明かりとか。夜の蝉も明るさとともにだんだん静まっていくのだろう。

【気になる句】

雲の峰どのレジ台を選びても   太郎
 「雲の峰」は、レジ台の近くの自動ドアの向こうに見えているのでしょう。どのレジ台も長い列であるとか、女性ばかりが並んでいるなど、レジ台の様子を描いた方がより鮮明な句になるかと思います。

読経からつかず離れず蝉時雨   木崎善夫
 周波のようにくる蝉の鳴き声が、「つかず離れず」によく出ていると思う。鳴き声が近づいてはまた遠のく、遠のいては近づいてくる。ただ「読経」つまり寺院と蝉時雨の句はあるとは思う。

八月のひかりごと焼くフライパン   マチ ワラタ
 何を焼いているのでしょう。「八月のひかりごと焼く」にとても惹かれました。

紫陽花やこんもりサーティワンダブル   青海也緒
 紫陽花でいいのかなあと、迷いました。以下のフレーズのリズムが良いだけに、もっと鮮やかな季語がある気がします。ダブルのアイスの嬉しさがよく出ています。

香水やおとこは眼鏡拭くばかり   茂
 おとこのしがない姿が出ていて面白かったです。最近は男性も香水にこだわっていますね。


2019年7月31日

久留島元ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 遅い梅雨が明けたと思ったら、急に暑くなってきました。
 今週は201句の投稿がありました。しかし、説明的、あるいは散文的な句が多かったという印象です。「AだからBなのでCと思った」という構文は、散文としては明快ですが、韻文としては驚きがありません。
 さすがに投句のなかで「と思った」まで書いた句はありませんでしたが、五・七ときて下五が結論や感想、オチになっている句は散見されました。
 ときにおおげさなズームアップや、強引なカット、あるいは語順を変えてみるだけでも、すこし詩的な飛躍が生まれることがあります。お試しください。

【十句選】

見えますかそこから晩夏見えますか   ∞
 今回、一番句として変な、驚きのあった句。晩夏ってしっかり見えるものではないと思うのですが、リポーターへ呼びかけるような流れだと、実況中継してくれそうな期待があります。同じ作者の「ありました!これがそうです、晩夏です」は、その答えか。

向日葵の協調性の黄色かな   百合乃
 向日葵のあざやかな黄色を「協調性」と捉えたのが作者の手柄。こう捉えると、やや押しつけがましい統一感があるようにも思えて、その視点の皮肉さも新しい。

曼陀羅華すべて私がやりました   銀雨
 「まんじゆしやげ昔おいらん泣きました 渡辺白泉」のように、彼岸花にはどこか罪を思い出させる花なのかも。

もっと降れニセアカシアの花の雨   とよこ
 もっと降れ、の呼びかけが気持ちいい。花の雨はふつう桜ですが、ニセなどという名前にかかわらず、力強く花の雨を降らせた作者が気持ちいい。

片蔭にゐてみな知恵のある如く   たいぞう
 ちょっと日陰にいるだけで、えらそうに。難しげな顔をして、実はビールが飲みたいとか考えているだけかも。

繰り言をゆっくり混ぜるアイスティー   宮武桜子
 愚痴をこぼしながら、あるいはこぼされながら、ティースプーンでゆっくりと掻き混ぜる映像、動きが見える。映画のワンシーンのよう。

ででむしの子のつぶつぶの命かな   本田英夫
 蝸牛の子どもは、たしかに、つぶつぶ、だと思いました。

片笑窪どうしの夫婦浮いて来い   まどん
 仲の良い夫婦。老夫婦のようでもあり、意外と若い新婚夫婦を見守る「浮き人形」の視点のようでもあり。

凌霄花線状降水帯に今真っ赤   瀬紀
 真っ赤な降水帯のなか「に今」いる、あるいは、降水帯に「今」真っ赤な凌霄花が咲いている、ということでしょうか。やや言葉足らずですが、天気予報のテレビ画面と花との取り合わせが面白い。

揚羽蝶ほどけば零るペルシャの詩   あさふろ
 揚羽蝶をほどく、と、詩が零れる、という幻想的な、しかしなぜペルシャなのか。不思議な句。

【選外佳作】

 一句として新しさや、詩的な面白さは「もう一歩」だったものの、着眼や表現に俳句を感じたもの。

ささやかな投票餌をさがす蟻   干寝 区礼男
 ささやかな投票、という人間社会の、倫理というか社会システムと、まったく関係のない本能で動く昆虫の姿。

線香花火爪の形が親譲り   紅緒
 細かい遺伝が目にとまる、線香花火から爪へ目が移る、その動きをとらえる表現が、とても俳句的。

ラムネ飲む君が他校の子らといる   たっか
 他校の子、は、学校に行っている最中か、その保護者でなければ、あまり考えない分類ですね。

ガムついたままの仮歯や梅雨曇   茜

雨蛙赤城全山支配せり   太郎

昔からオロナインなり登山小屋   まつだまゆ



2019年7月24日

中居由美ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 夏生まれのせいか、夏野菜や夏の果物が大好きです。胡瓜、茄子、トマト、インゲン、オクラ、南瓜、スイカ、サクランボ、桃・・・。季語としては秋のものもありますが、概ね、今が出盛りです。キッチンには、ころごろスイカが転がっていたり、南瓜が居座っていたり・・・。昔の土間の台所さながらに、野菜が幅をきかせています。鷹揚な心持ちで過ごせるのも夏のいいところだと思います。みなさんも夏野菜で一句、いかがですか?
 今週もたくさんのご投句ありがとうございました。

【十句選】

暑き日の暑き事のみ思ひ出す   宮武桜子
 梅雨の今も蒸し暑いが、梅雨が明けると本格的な暑さとなる。人の記憶と気候はどうやら結びつきやすいようだ。雨の日は雨の記憶を、暑い日は暑い日の記憶が蘇る。

炎天の真つ只中の力瘤   せいち
 炎天の下で力瘤を出しているのは、スポーツ選手だろうか。想像しただけでも目が眩みそう。大真面目になればなるほど、ある種のおかしみを伴う。そこをうまく捉えている。

ヒメジョオン始発列車に乗せられて   うさの
 田舎の無人駅を連想した。ヒメジョオンが列車に乗せられた、とも取れるし、ヒメジョオンの咲く駅で列車に乗せられた、とも取れる。始発列車に乗る心細さがヒメジョオンの花に託されている。

共学となりたる母校夕立来   ちづ
 母校が共学となったことへの感慨。母校のようで母校でないような奇妙な感じが伝わってくる。しかし、季語は夕立だ。さっと降ってさっと止む。空はたちまち明るくなり、雨に洗われた景色は、より生き生きとしている。

信金を出て夕焼けの中帰る   をがはまなぶ
 信金がいいな、と思う。これがメガバンクだと詩は生まれない。一日の労働を終え、信金に立ち寄り、ATMで用事を済ませ家路につく。あかね色の夕焼けに影が長く伸びている。明日も晴れるだろう。

食堂の電気を消して夏休み   たっか
 寮生活の夏休み。親元に帰らず部活や勉強に励んでいる。明かりの灯った食堂は、心の拠り所かもしれない。多少の夜更かしも許されるのが夏休みである。自ら電気を消す具体性が良いと思った。

古書売るやビルの谷間の夏の雲   ロミ
 古書を売る人、あるいは売りに来た人、どちらにも取れる。夏の捉え方が現代的な句。ビル群の窓に映った雲を「谷間の雲」に見立てている。古書との取り合わせが上手い。

水打てば羽キラキラとやって来る   紅緒
 水を打つのは夏の楽しみのひとつ。涼風を呼ぶために水を打つのだが、一番涼しいのは、打っている人かもしれない。ホースの先に虹が生まれることもある。キラキラの羽が現れても不思議ではない。

夜濯ぎをはたいて星を瞬かす   紅緒
 「夜濯ぎ」という言葉、使わなくなったし、聞かなくなった。洗濯機にすべてお任せの昨今である。涼しさを感じながら、汗の衣類を手洗いする作業は、今はほとんどない。かろうじて干す作業がある。ぱんと叩いて洗濯物を干す時、星が瞬く。

七夕の短冊に今日はゴメンね   スカーレット
 この短冊は、子供が書いたものではなく、大人が書いたものだろう。誰かとケンカして、自分に非があったけれど謝りたくても謝れなかった・・・。短冊になら素直になれた。若い人の心情が、けなげで愛おしい。


2019年7月17日

内野聖子ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 お声がけ頂いたので、来月小学生対象の俳句の授業を行う予定です。私自身初めての試みなので、何をしようかとか、どんな感じになるのかなど、今からドキドキしています。高校生や大人の作る俳句とはまた違った楽しい句に出会えることを楽しみにしています。
 さて、今週もたくさんの投句をありがとうございました。私も皆さんの句を読ませて頂くことで励みになっています。

【十句選】

ニューロンを横目青蔦のびやかに   赤橋渡
 蔦の自由に伸びる様子からニューロンの構造を連想されたのでしょうね。着眼点が面白いです。

スラローム木立を抜ける揚羽蝶   宮武桜子
 蝶がひらひらとうまく物にぶつからずに軽やかに飛んでいる様子をスキー競技やカヌー競技のスラロームに例えています。そういえば動きが似ているなと納得です。

夏の川少女驕りの足ひたす   大塚好雄
 この句は「驕り」がポイントだと思います。「若さ」という驕りなのでしょうか。夏ならではの光景ですね。

短夜や字足らずの句のような父   マチ ワラタ
 「字足らずの句のような」が何とも言えない味を出しています。明け易い夏の短い夜と字足らずの句、そしてお父さん。共通点があるような気がします。

夏蝶がとまるペッパー君の背に   たっか
 感情認識ヒューマノイドロボットのペッパー君は蝶に止まられてどう対応するんでしょうか。淡々と目にした光景を詠んでいますが、なぜか面白い。

昼顔や出払ひてゐる駐車場   まこと
 平日の昼下がり、一台も車の停まっていない白っぽい光のさす駐車場と映画「昼顔」が妙にリンクして想像が広がります。

目を閉じた入道雲が飛べとゆう   干寝 区礼男
 「ゆう」が「いう」ではないかと気になりましたが、スケールの大きさに惹かれました。「目を閉じた」で切った場合の読みもダイナミックですが、入道雲が目を閉じていると取っても魅力的です。

切口の清しき面や夏料理   比々き
 四季を通じて切口は変わらないのかもしれませんが、特に夏野菜はシャキッとした感じが瑞々しいですね。暑さを一瞬忘れる瞬間です。

おほかたを若返らせて夏帽子   中 十七波
 若返ることができるなら率先して被りたい夏帽子(笑)。「おほかた」というざっくりとした表現がユーモラスです。

からころり確執落とす瓶ラムネ   紅緒
 「からころり」はラムネ瓶の中に入っているビー玉が転がる音でしょうか。ラムネと確執という一見異質なものを「落とす」という言葉でうまくまとめていると思います。

【ひとこと】

ハンカチの花のハミング雨意の風   素秋
 「ハミング」より「つぶやき」「うそぶき」の方が?、というご質問がありました。私はこのままで良いと思います。「ハンカチ」「はな」「ハミング」と「ハ」音で揃えた方がリズム感が出るのと、「ハミング」の方が明るいかなと。
 もう一句「ねずみ花火ゆくりなきこと連鎖して」の方のご質問に関しては「連鎖して」より「つぎつぎと」の方が私は好きです。


2019年7月10日

山本たくやドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 ちょうど先週、31歳の誕生日を迎えました。バンドメンバーから、うまい棒を(31本)もらい、居酒屋の常連仲間からはド派手なピンクのアロハシャツをもらいました。ほんとうに感謝ですね。
 人生100年、残りの約70年で、どんな俳句に出会えるのか。たのしみです。

【十句選】

ゆつくりと不在に慣れて端居かな   まつだまゆ
 「ゆつくりと」というところに、人間味のある哀愁を感じます。旧かなも良いチョイスだったと思います。

おしみなく冷房つけて愚痴ひとつ    まつだまゆ
 蒸し暑くなってきました。それだけでも「愚痴」をこぼしたくなります。冷静になるためにも「おしみなく」クーラーをつけて涼みましょう。

夏のほう向いて三角座りして   銀雨
 拙句に「春愁は三角座り、君が好き」があるのですが、そうか、夏になっても「三角座り」を続けていたのか。いつで三角座りを続けてるんだ?っと、優しく叱られたいですね。

なめていやがるんだゴキブリも妻も   せいち
 「なめていやがるんだ」。そうですね、「妻」も子どもも上司も部下も。でも、そんな風に考えると悪い考えばかりに陥りますよね。そんな時は少し落ち着いて、冷静になりましょう。そっと「妻」を抱き寄せましょう。「ゴキブリ」はさっと殺しましょう。

蟻の巣を覗けば蟻がのぞいてゐる   大塚好雄
 上から「蟻の巣」を見る構図と「蟻」がこちらを見上げる構図。この二つの対比が面白いですね。

ボディシャンプー冷夏の泡の崩れゆく   じゃすみん
 涼しさを感じる一句。「泡が崩れ」るという表現が良かったです。

キャンパスをすいすい進む夏帽子   たっか
 キャンパスは人が多く、なかなか歩きにくいイメージですが、掲句は他を寄せ付けず、颯爽と歩いていく様子が感じられます。森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』に出てくる主人公の女の子を思い出しました。

「みきさん」を祝うひまわり歌舞伎町   たっか
 オチのある一句ですね。「みきさん」って誰だろう?どんな関係の人だろう?と考えさせられて、下五の「歌舞伎町」で、なるほどと理解できる。理解できた途端、この「ひまわり」の本来の美しさが色褪せて感じられる。

白玉の不気味なまでの丸さかな   ケビン
 一般的には可愛いものとして見られがちな「白玉」の「丸さ」を「不気味」と捉えたところが良い。作者の着眼点のセンスが感じられます。

いーあーさん噴水前の点呼かな   まどん
  「いーあーさん」とは、中国語の1、2、3の事だそうです。海外からの観光客が増えてきた昨今、よく見かける光景です。ただ、掲句だと、点呼をしているのが中国人だとは分かりにくい。表記の仕方を工夫してみましょう。


2019年7月3日

秋月祐一ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 梅雨時ですね。家にこもる日が多いので、蔵書の整理をしようと思うのですが、あまりの多さに、どこから手を付けたらいいものやら、途方に暮れています。これはいい本だという価値判断と、その本を所有していたいという欲望を切り離さなければ、と理解はしているのですが……。
 さて、今回は198句の中から。

【十句選】

採血後の薄暑をふらりロック座へ   短夜の月
 ロック座は、浅草のストリップ劇場〔ロック座〕のことだろうか。作者は40代の女性である。近頃ではストリップ鑑賞を好む女性も増えてきたという。中七は薄暑で切って「薄暑ふらりと」とする手もあるかも。

二日前ちょうどよかった胡瓜かな   うさの
 夏場の野菜の成長は、おどろくほど速い。食べきれないので収穫を遅らせていたら、二日のうちに大きくなりすぎてしまったのだろう。「二日前ちょうどよかった」というシンプルな表現が、ぴたっとはまった一句。

熔けゆけるターミネーター夏の夜   銀雨
 アーノルド・シュワルツェネッガー主演の映画『ターミネーター2』で、溶鉱炉にアンドロイドが溶けてゆくラストシーンを題材にした句である。山口誓子の句「七月の青嶺まぢかく熔鑛爐」が、遠く響いているような気がした。

東男少し勇気の日傘かな   宮武桜子
 「東男」は無骨な荒くれ者のニュアンスか。近頃では、暑さ対策や紫外線カットのため、日傘をさす男性も増えてきたが、日傘をさすことに抵抗を感じる人も多いはず。「少し勇気の」という中七の言いまわしに工夫を感じた。

古代蓮化けさうな傘貸しまひょか   素秋
 「古代蓮」「化けそうな傘」「貸しまひょか」と強めの言葉を三つ連打したことで、おもしろみが生じた句。中でも「貸しまひょか」という口調が強烈で、語り手そのものが、すでに妖怪めいて感じられる。

しっぽじゃない導火線だよ夏隣   木崎善夫
 まず、動物のしっぽのイメージを提示してから、「しっぽじゃない導火線だよ」と展開する話法が面白い。しかも、その導火線は、夏への導火線なのだ。その発想にポエジーを感じた。「夏隣」は「夏近し」の傍題で、春の季語。

汽水域いったりきたり夏の風邪   マチ ワラタ
 「夏の風邪」で熱に浮かされて、夢とうつつを「いったりきたり」する様を、感覚的に「汽水域」と表現した句として読んだ。汽水域は、河口付近の、淡水と海水が入り混じるところ。まさに夢うつつな感じが伝わってくる。

うす暗き縄文住居蚊に刺さる   まこと
 たとえば博物館などにある、実物大の「縄文住居」の模型を思い浮かべた。縄文人の暮らしを眺めているうちに、ふと蚊に刺されていたことに気づくおかしみ。下五は受身の「る」を「刺され」と連用形止めにしてみてはいかが?

ハムスターの遊具の音や月涼し   紫
  青白い月の光が涼しさを感じさせる深夜、ふと目がさめると、静まりかえった部屋に、ハムスターが回し車をまわす音が響いている。作者はその音を聴きながら、ふたたび眠りにつくのだろう。ペットへの愛着を感じさせる一句。

短夜や早口言葉教え合う   たっか
 夏の短夜に、誰かと早口言葉を教え合っている情景を、素直に表現している。これがたとえば、「子に教え」ではなく、「教え合う」なのがよいと感じた。ちょっとした表現の差で、そこに流れる時間や空間の質が変わってくる。