俳句クリニック 2006年6月後半分(ドクター:早瀬淳一)

「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。

5月と6月の担当ドクターは早瀬淳一です。
<プロフィル>
たいとる:アゴラ
名前:早瀬淳一
出身:1958年6月佐賀県生まれ
現在:神戸市王子公園のあたりに在住
好き:徘徊、ビール、ネコ、句会
好きな俳人:大木あまり、高野ムツオ、阿部完一、池田澄子、坪内稔典
このクリニックで:季語の効いている句、気分のいい句、くすっと笑える句、切れのある句、意外性のある句、発見のある句に出会えたら、うれしいです。
(これらは、すべて私のめざす句)

ドクター早瀬の診断
2006年7月3日

(1)紫陽花をそっと手向けしひとゆきぬ  豊純(70才以上)
(2)昇段の夢破れゆく氷雨かな
(3)千里浜をシルバー一行初夏の旅

 と直してみました。シルバートレインの意味をお教えくださいませ。またまた出し てしまいました最後にご診断ください宜しく・・・。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 シルバー・トレイン、年配の方専用の旅行列車ではなかったでしょうか。
(1)手向けし、はお墓かどこかでしょうか。状況がわかりにくい。たった575のなかで、言葉がもったいない感じ。
(2)夢破れ、と氷雨はつきすぎ。氷雨ではなく、突拍子もない季語を持ってきたほうが、昇段できない事をおかしみに持っていけそう。
(3)報告になってしまった。
 これからも、俳句、ぜひ楽しんでください。お元気で。

繍線菊「しもつけ」と漢和辞典をひく夜半  れい(70才以上)
 本当に有難うございました。先生の一案を参考にして推敲してみたいと思っています。どうぞお元気で・・・
ドクター早瀬の診断と処方箋
 繍線菊、を調べて漢和辞典を引いているのであれば、ただの報告、季語もない。横にある繍線菊と一緒になって、漢和辞典を眺めている、という図ならおもしろい。季語も生きる。その辺りがもっとわかるようにした句のほうがよい。
 れいさん。途中、感心した句もいくつかあったように思います。次のドクターも、すばらしい方です。ぜひ、俳句を作り続けて、日々の楽しみとしてください。お元気で。

(1)芍薬の花びら散るや静止画像  郁子(60代)
(2)生と死の間「あわい」に飛び交う蛍かな
(3)裏窓にてっせん寄り添う鄙の街

 いろいろ有難うございました。どうぞお元気でご活躍くださいませ。又お目にかかれますことを楽しみにしております。
ドクター早瀬の診断と処方箋
こちらこそありがとうございました。お元気で。
(1)静止画像、という言葉は大胆でおもしろい。が、ここでは散る花びらの形容としてはありきたり。意外な静止画像を見つけたい。
(2)蛍は短い生であるのは、だれもが知っている。つまり、蛍の本意だけを詠んだことになる。本意以上にもう一歩突っ込んだ把握、発見がほしい。
(3)字余りを、「てっせん走る」としては。雛の街もインパクトが弱い。「〜街道」と実際の地名にされるのも一案。

(1)夏の蝶舞い立つ跡や白き花  由利子(70才以上)
(2)咲きそめし紫陽花小さし日の曇り
(3)杖持たず歩む幸せ鉄線花

 有難うございました、どうぞお元気で、またご指導いただける日を楽しみにしております。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 こちらこそありがとうございました。また、どこかで。
(1)きれいだが、舞い立ったあとにあるものが、あたりまえ。や、での切れが弱い。せっかく切っているのだから、場面の転換を図られては。
(2)小さし、が説明。紫陽花の花、か紫陽花二輪、あたりか。日の曇りも、短い俳句の中では言葉がもったいない。もう一工夫。
(3)実感の句。鉄線花が効いている。

(1)友いづこ夏みかん手に胸あつく  賀代子(70才以上)
(2)遠来の友と味合う初鰹
(3)しのびあし雀蜂の巣軒先に

 大変お世話になりました。有難うございました。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 こちらこそ、ありがとうございました。また、どこかで。
(1)胸あつく、は言わないほうがいい。「友いづこ夏みかん手に残りたる」
(2)江戸時代の雰囲気。「合ふ」とするともっと雰囲気が出る。
(3)情景が眼の前に見えるよう。私もバイクのヘルメットを被って叩き落したことがあります。お気をつけて。

(1)祖父と孫散髪椅子の梅雨晴れ間  千鶴(60代,女)
(2)藍浴衣白きうなじに決意ひめ
(3)少女らの大人びたるや初浴衣
(4)子の帰り白玉と待つ庭薄暮

 どうぞよろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)よくわかる、ほほえましい情景。いっそ、自分が祖父になって「初孫と散髪椅子に梅雨晴れ間」では。
(2)眉や瞳ならよくあるが、うなじにある決意とは、新しい表現。説得力がある。うっすらと色気もにおってくる。いいのでは。
(3)予定調和。初浴衣だから、大人びて見えると、理屈でつながってしまった。
(4)白玉と待っているのがおかしい。庭薄暑も効いている。

居酒屋の卯の花腐し新メニュー  泰(50代,男)
 「卯の花腐し」の季語の使い方がいまいち分からないのですが、これで成立しますか?
ドクター早瀬の診断と処方箋
 卯の花腐し、はご存知の通り、卯の花を腐らせるほどの、今頃の長雨。五月雨。それを押さえた上で、居酒屋のメニューのひとつにしてしまった。諧謔みのある、機知。おもしろいのでは。

(1)山つつじ白樺警護する如し  小口 泰與(60代,男)
(2)首かしげ郭公聞くや牧の牛
(3)郭公や牧に集ひしカメラマン
(4)夏雲雀忽と千丈落ちにけり
(5)日の匂ひ山の匂ひや夏帽子
(6)紫陽花や赤城晴れれば湖の青
(7)花薔薇の散り広がりて赤白黄

 よろしくご指導願います。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)警護する、のたとえがそう意外なものではない。
(2)牧の牛が首をかしげて聞いている姿も、ごくあたりまえのよう。
(3)カメラマンが何に集まったのかわからないのが、もどかしい感じがする。
(4)忽と千丈、が言葉の上だけの大げさな感じ。
(5)日の乾いた匂い、山の少し湿った蒼い匂い、少しもそれを説明していないので、かえって匂いを感じる。夏帽子もよく効いていてうまい。
(6)焦点がばらばらな感じ。視点が定まらない。
(7)これも多くの色を言い過ぎたことによって、印象が散漫になった。

(1)捩花や向かふ側より妻の顔  文の子(60代,男)
(2)長梅雨の頭垂れくる講義かな
(3)表札に名前残りて門火燃ゆ
(4)人を見ず車また見ず時計草

 早瀬ドクターに診ていただく最後の日となりました。2ヶ月間総ての句をご診断くださり心より御礼申しあげます。秀逸、佳句とご評価頂いたことは励みになりましたが、それ以上に、どこが×なのか教えて頂いたことが勉強になりました。これからも折に触れドクターのご診断を読み返し自選の糧と致します。懇切丁寧なご指導に重ねて御礼申しあげます。私の作句時間は朝夕会社との行き返りをそれに充てています。このため土日は作句モードにならず、ドクターへお送りする句数を4句にしてからは相当に厳しくなりました。みるみる貯金が減ってきて、危うく巨人のように借金生活になるところでした。巨人ファンとして使いたくない科白ですが(笑)。何とか4句纏まりました。有終の美を飾れると良いのですが。宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 懇切なお言葉、ありがとうございます。私自身も自分の批評、俳句についてたくさん考える機会を得ることができました。これからも、お互い、少しでも人の心に響く俳句が作れたらいいですね。それでは、また。
(1)少し離れたところから妻が歩いてきた、あるいは、近くの妻が顔をぬっと出したのか。いずれにせよ、捩花とあいまって、不思議な世界のことのような感じがする。
(2)梅雨時の、大学か会社の講義の感じがよく出ている。
(3)住人のいない家に、名前だけが残っている。門火の寂寥感が出ている。
(4)説明しようとして言葉がごたついている感じ。意味も取りにくい。

(1)実桜や齧って覗く種の色  石狼(40代,男)
(2)休刊日紫陽花の葉に雨の音
(3)蟷螂の卵に似たり十日月
(4)手を添えて蛍袋を鳴らす月
(5)傘閉じてつなぐ手に笑(えみ)青時雨

 初めまして。四十にして俳句を学び始めました。坪内捻典さんの御著書に、このく らいの歳から始める人の多いことが書かれていて意を強くしております。どうぞよろ しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 俳句を始められて、小さなしかし大きな宝を手に入れられたのではないでしょうか。
(1)齧って覗く、が自分の行為の説明になっている。動詞が2つ続くとくどくなる。
(2)休刊日の手持ち無沙汰勘がよく出ている。動詞の1つもない、物を放り出した句の強さ。
(3)似たり、はやや説明。ずばり、「蟷螂の卵になりぬ十日月」
(4)前半の叙景は、情緒もあって、ややいい世界。月、がわかりにくい。
(5)手に笑み、がすっと通らない表現。意味的にもよくある言い方。俳句を続けてください。きっといいことがあります。

(1)梅雨晴れや挨拶電気朝の駅  たけし(60代,男)
(2)鼓笛隊威風堂々梅雨晴れ間
(3)カーテンを引き梅雨景色閉めだしぬ
(4)肩車蜜柑の花に触れなむと

 早く梅雨が明けからっとした暑さになってほしいと願いながら・・・宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 わたしも、8月が一番好きな季節。あの開放感・・・。
(1)電気は、元気のうち間違い?しかし、電気のほうがよい。「挨拶が電気となって梅雨の晴れ」
(2)威風堂々、が既成の言葉の弱さ。鼓笛隊に対する視点の転回がほしい。
(3)しめ出さないで、梅雨景色そのものに突っ込んでほしかった。
(4)触れなむと、は肩車された子供ではなく、老いた母親のような感じになった。触れられそうで、触れられないのが切ない。

(1)遠山の雲は直立真菰かな  小口 泰與(60代,男)
(2)夏蝶よ利根の源流と言う所
(3)音たてて岩魚飛び出す沼真中
(4)濁流の洗ひ流すや五月忌
(5)ひねもすの雨にこぼるる杜鵑花かな

 早瀬先生 二ヶ月間があっという間に過ぎてしまいました。その間、未熟な私に適切なご指導をいただき、俳句に対する認識を、さらに一歩進める事が出来ました。本当に有難う御座いました。また、ご指導いただける日を楽しみに、俳句の勉強を続けてまいりたいと思います。時節柄、いっそうのご自愛をお祈り申し上げます。よろしくご指導願います。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 こちらこそありがとうございました。2ヶ月、短かったというか、長かったというか。
 俳句の「読み」に関して、自分自身、いろいろと思うことがありました。
(1)雲は直立、の大胆な把握がいい。マコモの直立、毅然とした景色とよく響いている。
(2)ここが源流といわれるところか、という感慨。中8が、冗漫になっている。
(3)岩魚が沼にいたとはやや意外。その感じを、音立てて、がよく表しているのでは。
(4)濁流がどこに見えているか、あいまい。
(5)景の把握がやや平凡。が、ひねもす、でこのまま癒されていたい、という気分は出ている。


2006年7月2日

(1)紫陽花の寺や人の頭ひしめきて  文の子(60代,男)
(2)立ちてなほ窪みゐる椅子梅雨深く
(3)梅雨晴れ間梢に透き間残りゐて
(4)梅雨寒や毛更りを終へし犬の貌

 明日28日最後に診ていただくのに相応しい句が残っていないのですが、推敲のできた順にお送り致します。宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)よくもこんなにたくさん人の頭が集まったもんだ。と、自分の頭もそのうちのひとつ。好事家達への共感と、少しの照れがある。いいのでは。
(2)なほ、が説明。「離れても窪みある椅子梅雨深し」椅子の窪みと、梅雨深しが絶妙。
(3)緑深い季節でもなお、梢に隙間が残っている。ちょっといい発見。
(4)犬の貌に焦点を絞ったところが少し成功。今回は肩の力が少し抜けた、いい句が散見したように。

枇杷そっと剥いて甘き果汁かな  蘭(女)
 枇杷の季節はあっという間に過ぎていきますね。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 枇杷の本意を正面から詠んだ句。どこかに、眼目、つまりはっとさせられる措辞、謎がほしい。「廃屋や枇杷の果汁の染みた爪」

(1)遠雷やつるりと剥けたゆで卵  裕子(70才以上,女)
 季語に苦労しました。何を持ってきても動きます。
(2)十薬にかげある白さありにけり
 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)遠雷との距離感、意味の解釈が難しい。拙句に「春愁やきれいにむけたゆで卵」がありますが、両句とも、類想感がありますね。
(2)読者にとって実際に見たリアリティはないが、想像させられるリアリティはある。それこそ、俳句のリアリティでは?

(1)山小屋に夏に月差す古希祝  せいち(60代,男)
(2)東屋に来て別れたり夏の蝶
(3)青嵐山頂までの九十九折

 早瀬ドクター。お世話になりました。これで最後かと思います、よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 独善的な診断に付き合っていただき、恐縮しています。ありがとうございました。
(1)「山小屋の」か。山小屋、と夏の月はいい関係。これだけで作りたい。「山小屋を15度過ぎる夏の月」
(2)来て別れたり、がうるさい。
(3)葉や枝の折れた青臭いにおいがしてきそう。このような道をゆっくり山頂までたどってみたい。

(1)次女ほどの舞妓と蛍別れけり  泰(50代,男)
(2)梅雨晴や雨の男の婚儀にて
 宜しくお願いします。よくある発想でしょうか。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)唐突に次女が出てくるところがおもしろい。いっそ「次女ほどの蛍と舞妓別れけり」とすれば、何か不思議な感じが。
(2)雨の男は、雨男のこと?にて、は説明的。いっそ「梅雨晴や雨の精との結婚式」では。

(1)末央柳水琴窟のひびきかな  小口 泰與(60代,男)
(2)花菖蒲雨に打たれて和紙のごと
(3)花菖蒲池に向かゐだれ咲き
(4)いただきしあやめ活ければふふみけり

 よろしくご指導願います。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)柳と、水琴窟の取り合わせは少しいいが、もう一歩が見えてこない。
(2)ごと、でなく、いっそ「和紙になる」では。雨に濡れた菖蒲の雰囲気がよく出ている。
(3)意味がよくわからない。
(4)いただきし、は余分。ふふむ、以上の把握、発見がほしい。

(1)もつれ合ふ夏蝶見遣る老二人  しんい(60代,女)
(2)不器用に生きて還暦走馬灯
 宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)もつれ合ふ夏蝶に、若き日の情熱的な恋を思う。のであれば、二人は、直接的過ぎになってしまう。老二人を、意味の離れた存在、たとえば、銀行員、警察官などとしたほうが、想像が広がる。もつれ合ふ夏蝶で、何かドラマが生まれそうな雰囲気で、いい。
(2)不器用に生きて還暦、は自分だけの感慨に止まる。共感を得にくい。走馬灯も、いかにも。

花を愛でるや蜘蛛の囲の髪飾り  ひでこ(女)
 宜しくお願いいたします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 蜘蛛の囲を髪飾りと見立てた。蜘蛛の囲はもつれてよじれることもあるので、そう見えることもある。が、ややありそうな発想。花を愛でる妻(恋人)の髪に本当に蜘蛛の囲が髪飾りになっていたら、ちょっとおもしろい。

谷川に沿ひし二軒家琵琶点る  裕子(70才以上,女)
 琵琶点るで迷いました。よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 楽器の琵琶が点灯するとは?琵琶に燭台でもあるのでしょうか。沿ひしのし、はどうか?過去になってしまう。俳句は目の前のもの。が、山間の2軒の家に琵琶がある図は、訪ねてみたくなる風景。

(1)飼猫のひねもす眠る夏座敷  風葉(60代,男)
(2)ふたりゐて恋にあらねど夏座敷
 ご指導よろしく。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)夏座敷は広々として、風が通っている。昼寝したいのはもちろん人間のほう。が、忙しくてできない。うちの猫を見ていても、輪廻したあとは、絶対猫に生まれ変わりたいものだと、いつも思っている。
(2)文語の語りが、少し古風な恋の雰囲気を出している。ならねど、の否定形が、ぎゃくに恋の予感を暗示している。大正ごろの初恋のよう。なかなかいいのでは。

冷奴毒だら毛虫金を飲む  裸時(30代,男)
 「初恋の外堀埋めて梅雨逃げる」は「・・・梅雨の中」にしました。ありがとうございます。害虫を詠んでみました、そういうのが俳句の幅かと思います。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 冷奴と毛虫を離すという意図はいい。毒だら毛虫とは?自分だけの符丁、造語であるなら問題外。金を飲む、とは?自分だけがわかる、独善の表現に見える。


2006年7月1日

(1)人魂が過ぎりしと思ふ芒種の夜  北野元玄(60代,男)
(2)引退を秘めて力士の芒種かな
(3)若き日は昔々の芒種の日

 この3ヶ月間、いろいろと本当に有り難うございました。今後ともよろしくお願いいたします。芒種シリーズです。ご講評をお願いいたします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 2ヶ月間、誤読の末の酷評、我慢して読んでいただき、ありがとうございました。冷汗三斗です。
(1)芒種の頃は、新しい命を蒔くとき。そこに、俺も忘れないでくれと、ふと人魂も来た。少しユーモラスで、納得できる句。
(2)これも芒種とうまく取り合わされた。新しい世代交代時であるが、それでももう一花、と塩をまく力士の心が伝わってくる。いいのでは。
(3)若き日は昔々、はややあたりまえか。が、今回は、素直な措辞ながら、よく考えるとおもしろさが立ち上ってくるような、いい句ではないでしょうか。

3拍目少しおくれて麦の笛  れい(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 1,2の、で吹き出すのをそろえているのが、とてもよく目に見える。自然なリズム、無理のない措辞、それでいてその場の雰囲気を過不足なく伝える力。季感も十分。とても気分のいい句。うまい。

(1)枇杷食べて出てきた種をどうしよう  詩音(40代,女)
(2)紫陽花やメニューの多い喫茶店
(3)かろやかに夫婦別姓青トマト
(4)梅雨の月夜風がまわす観覧車

 早瀬ドクター、二ヶ月間のご診断どうもありがとうございました。ひとりよがりから脱皮して詠み手と読み手が共に楽しめる句を作れたらいいなぁ〜!と思うようになりました。またご指導いただける機会を楽しみにしてをります(^_^)/
ドクター早瀬の診断と処方箋
 2ヶ月、本当にありがとうございました。詩音さんには、こちらの句作のヒントをたくさんいただきました。読んでいて、楽しかったです。また、いずこかで。
(1)どうしよう、とあわてるようなたいそうなことではない。それを、わざと少しあわてて、自分で楽しんでいる。その余裕が、とても俳句的。
(2)おかしい。喫茶店とは、本来、コーヒー、トースト、パフェ、ぐらいしかないはず。それを、客にこびるように、どうでもいいようなメニューを増やしていく。おかしさのあと、少し悲しくなる。
(3)夫婦別姓を詠みこんだのはいい着眼。が、夫婦別姓を実行しているのは、いかにも軽やかな夫婦。そこに意外性、新しさはない。
(4)何も説明していないのに、とても雄弁な抒情句。読後感がとてもいい。観覧車は、きっと自動制御で回っているのだろう。それを、夜風で回っている、といったことの視点がすてき。

蛍とぶ闇に獣らうごめけり  尼の久女(60代,女)
 丹波の奥に蛍を見に行きました。地元の方が、夜は「猪や鹿、マムシがいっぱいる」といわれたのを句にしました。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 蛍、と獣、の二つに焦点がぶれてしまった。闇と蛍も近いので苦しい。ふと聞いたことを俳句にするとおもしろいことがよくあるが、一度、句にするまでに、ワンクッション入れて、ある操作をすることが必要になってくる。

(1)輪の中を手の踊りたる車椅子  文の子(60代,男)
(2)門火焚く卒寿経る父母揃ひゐて
(3)紫陽花の褪せて海辺の白き町
(4)紫陽花や鎌倉の地図塗り替へて

 意味でのキレを重視されるドクターにお送りするのを躊躇っている面はありますが、「紫陽花や鎌倉の地図塗り替はり」では調子が整わず掲句としました。如何でしょうか。宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)盆踊りなのだろう、情景はわかる。が季語、季感がほしい。「盆踊り手の踊りたる車椅子」では?
(2)かどび。送り火、迎え火の総称で、秋の季語。卒寿の父母が、そのままあの世から還ってきたかのよう。何か、この世の風景でないような、不思議な雰囲気が漂う。
(3)紫陽花が褪せることと海辺の白い町は、色が近いが、とてもよく合う。ノスタルジーが漂ってくる、映画の一シーンのよう。そう、この句全体に上品な映画の雰囲気がある。何も説明しなかったことの賜物。
(4)「塗り替わり」では、自然に地図が変遷してきた、ということになり、「塗り替えて」では、今時分が書き換えた、ということになる。前者のほうが、おもしろいように思える。


2006年6月30日

(1)るぶ乱舞パラパラフレーズ牡丹燃ゆ  裸時(30代,男)
 「知悉」とは広く知るという意味ですか?はじめてみたかもしれません。
(2)酢だけよと姉妹展開雨蛙
 子どもは遊びすぎていたなと小学生を見てたら感じます。あの頃楽しかったです。
 読書感想文に「面白かった」と書く子ども。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)るぶ、がわからない。俳句は読者あってのもの。だれもがわかる言葉で書きましょう。乱舞、とパラパラ、は言葉遊びへのチャレンジで、いいと思う。乱舞を言い換え(パラフレーズ)したら牡丹、と読むとおもしろいかも。
(2)上5がわからない。姉妹展開、というフレーズは新しい感じがする。

遠き日は愛をポケットに水中花  ひでこ(女)
 若き日の片思いの句です。宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 水中花が、夏の季語。「は」、で追憶に止まってしまう。「遠き日の」とすると、「今」の句になる。中8が残念。「を」を取ってもいいかも。こういう句は、大事にとっておいてください。

(1)コーヒーカップ替えてみる梅雨籠  風葉(60代,男)
(2)家一軒解体されし梅雨晴間
 よろしくご診断ください。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)755と、おもしろいかたち。定型なら、「替えてみるコーヒーカップ梅雨籠」。もとのほうがいいか。梅雨篭りの感覚はよく出ている。
(2)家の解体途中の景色は、家族の歴史がぎっしり詰まっていそうで、見てはいけないものを見てしまったという気がする。今の季節の一断面。

合評会以下同文と冷ソーメン  れい(70才以上)
 ドクターの一案はトテモ参考になります。有難うございました。これからもよろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 あと少しですね。
 以下同文、なので、手紙か、メールの合評会か。諧謔みがある。冷ソーメンで、わざとつれない評と、季感もある。肩の力の抜け方がよい。

会いに行く桃子という名の赤い河馬  馬鈴(40代,女)
ドクター早瀬の診断と処方箋
 稔典さんになり代わったような句。やや散文的な感じがして、冗長感がある。季語がほしい。でも、楽しい方向へのチャレンジは、いいと思います。

蝸牛みっちゃんみちみちひとり言  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 利休禅師の童心の句のよう。みっちゃんと、みちみちが言葉遊びになっていて、よく子供が言う囃し言葉に聞こえる。素直で、いいのでは。

諍いをじっと風鈴聞いている  尼の久女(60代,女)
 子供がそばで、風鈴の鳴らないのを気にしている。鳴れば言い合いも終わるのに、早く風が出ると良いのですが。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 俳諧みもある、よくわかる句。じっと、が気になる。聞いているで、じっと、はわかるから。

(1)紫陽花の姿そのまま水鏡  西角悠(70才以上,女)
(2)紫陽花の雨厨にこもりてパンを焼く
(3)父の日やクラリネットの僧二人
(4)6月や日ごとに変わる棚田かな
(5)どの部屋も開け放されて青田風

 ありがとうございます。添削よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)姿そのまま、で説明そのまま、になってしまった。
(2)紫陽花の雨と、パンを焼くは、いい感じ。中がもたもた感。「紫陽花の色に雨ふりパンを焼く」
(3)一読、くすっと笑ったが、一抹の寂寥感も。この僧達にとっても父の日だが、手持ち無沙汰そう。
(4)日ごとに変わる、が報告。
(5)よくある景だが、爽快感はある。この夏、子供を連れて、徳島の田舎の廃校あとに泊まりに行きます。このような風景に出会いたい。

(1)ガレージの洞に成りけり梅雨もなか  文の子(60代,男)
(2)自転車の初心者マーク若葉風
(3)輪の外を影の連れ添ひ盆踊
(4)高僧の火もまた涼し門火焚く

 恵林寺の快川和尚なので上5は「快川の」の方が良いでしょうか。宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)ガレージが洞(ほら)になった、というのは、ややわかりにくい。読者に解釈を強いる感じがする。
(2)自動車でなく、自転車のところがいい。若葉マークとつきすぎだが、遊びで面白いかも。
(3)輪の外の暗闇を、中央から照らされた影が、2つ,3つそぞろ歩く。とても情緒のある、味わい深い句。佳句。
(4)高僧の火もまた涼し、が心頭滅却すれば、のもじり以外のものが見えてこない。つまり、実景がたち現れてこない。

(1)革靴の紳士がひとりゐて夏野  fuji(10代,男)
(2)青梅雨の紙飛行機になる秘密
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)紳士がひとりいることによって、夏野が出現した、というように読める。「頭の中が白い夏野になっている」のようなシュールな世界が構築できた。
(2)言葉の結びつきが、ふつうではなく(青梅雨の紙飛行機、飛行機になる秘密)、かといって無理な感じはなく、詩的な世界が出現した。今回は、なかなかおもしろい。


2006年6月29日

二つ目の嘘ついた日や髪洗う  れい(70才以上)
 なかなかはっとするような句が出来ません。よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 二つ目の嘘、がおかしい。くすっと笑える。「二つ目の嘘ついた日の髪洗う」とするのが、俳句の一つの手法。

老いらくの恋と笑うか梅雨の蝶  加護坊(70才以上,男)
 ふと頭を横切るものがあって。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 笑うか、に自嘲が見えるが、でも、これからの日常を背負っていくささやかな喜びもかいま見える。梅雨の蝶がかわいく、読後感をいいものにしている。恋は、いつまでもしていたいもの。

(1)足裏(あなうら)に床の存在梅雨の入  文の子(60代,男)
 「だれも言っていない情景を探したい。」とご注意いただき、掲句捻ってみまし た。如何でしょうか。
(2)守宮這ふ玻璃やダックスフント吠え
(3)ギリシャへの道遥かなり星月夜

 「星月夜ギリシャ神話を児に語る」を推敲しました。宜しくお願い致します。
(4)日英の混ざりし会話夏雀
  季節は夏として詠みたいのですが、「夏雀」は良いのでしょうか。宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)足の裏に床の存在があるのは当たり前。が、あえてそれを言ったおもしろさがここにはある。それは、梅雨の入りに、湿った、黒々とした床が、ありありと感じられるから。
(2)玻璃、と雅語で言う必要があるだろうか。単に「ガラス」とした方が、吠えるダックスフントが、現代的で生き生きとする。
(3)ギリシアへ、星の道がずーと続いているかのよう。きれいな句。
(4)日常のちょっとしたおもしろさをよくとらえた。いいのでは。

(1)幼子を団扇で招く媼かな  えんや(70才以上,男)
(2)病院の窓閉めきつて梅雨にいる
(3)白墨のざりがに踏んでしまひけり

 いつも有難う御座います。「ざりがに」は季語には無いのでしょうか?。今回も宜しくお願い申しあげます。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)昭和30年代の縁側を思い出しますね。特に最近、「ALWAYS 3丁目の夕日」を見たばかりですので。懐かしい風景。
(2)病院の窓閉めきつている状況が、梅雨にいる状況と、ほぼ同じイメージになっている。ということは、想像が広がっていかない。
(3)手持ちの簡易歳時記に載っていなく、分かりません。すみません。子供の一生懸命書いたザリガニを踏んだ後ろめたさが、「けり」でよく分かる。

(1)渓流に光零して杜鵑花かな  小口 泰與(60代,男)
(2)氷菓食ぶベースは草に沈みけり
(3)灰色の空を分けけり夏燕
(4)麦の穂の西をさしけり倒れをり
(5)父の日や母の形見の単帯

 よろしくご指導願います。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)光雫し、は常套。叙景で、これといった発見はないのでは。
(2)ベースは草に沈みけり、はとてもいい景。雑草の草深く、草野球ができる幸せ。懐かしさも感じる。上5は、もっと何気ない措辞の方が、この景色が生きる。
(3)よくある把握。
(4)境涯俳句っぽい、凄絶さを感じる。2度、切れがあるのはどうか。「麦の穂のそろって西に倒れけり」
(5)新喜劇のようになった。

(1)雨傘と紫陽花達が咲き比べ  豊純(70才以上)
(2)千里浜を走るシルバー初夏の旅
(3)ドクダミの花咲く空家多かりし
(4)ざぶんざぶ水かさ増せり梅雨の川

 先生二ヶ月間どうも有難うございました。叉お会いできました時は宜しくお願いいたします。お元気でご活躍下さいませ。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 こちらこそ、ありがとうございました。あともう少しですね。
(1)子供のような心の俳句。子供の傘の行列は、かわいい風物詩。
(2)走るシルバー、がわかりにくい。シルバートレインか何かですか。
(3)ドクダミの花と空家はいい取り合わせ。ドクダミの草いきれがにおってきそう。
(4)報告になってしまった。


2006年6月28日

(1)初物のチェリーになりたい三十路過ぎ  紫月雲(30代,女)
(2)君という塊を打ちゆすらうめ
(3)夏至の日だというのになぜ今日逢うの
(4)抗えぬ夏至の誘惑血が点々
(5)夏至抗えぬ夏至の誘惑血が点々
(6)髪を梳き奇襲上等夏至の夜
(7)背伸びして名曲喫茶の黴を嗅ぐ
(8)むき出しの欲望に今日黴が成る

 先日のご診断、ありがとうございました。励みになります。今回もよろしくお願いいたします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)、発想は面白いが、三十路過ぎ、はしゃべりすぎ、ネタばらし。「はつもののチェリーになっている私」
(2)君という塊、大胆な措辞。打ち、にドキッとする。生々しいが、ぎりぎりセーフ。ゆすらうめ、で救われているから。
(3)自由律。夏至の日に逢ったらだめ、というのは実はおかしい。だから、この問いかけは、実はおかしい問いかけ。気のふれた女の真剣な問いつめのようで、とても怖い。
(4)(5)(8)好きな方がおられるかもしれないが(笑)、生々しすぎる。与謝野晶子風俳句。
(6)これも、大人の遊びのような感じで、悩ましい。30代女性の方と知ると、余計。
(7)名曲喫茶を茶化した感じで、俳諧みがある。いやー、しかし、今回の句は、読んでいて、どきどきとしました。

病室を仕切るカーテン街は夏  れい(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 病室を仕切るカーテン、いい着眼。詠まれていそうで、まだ見たことはない。ただのカーテンではなく、悲喜こもごもがこもっていそう。説明しなかったのがよかった。

(1)枯葉散りかさりと霜露の静けさよ  風音(20代,男)
(2)もう春霞歩く足留め朝月夜
 この2句はある俳句コンクールに送ったものですが、入賞することのなかった作品です。ふと自分の俳句は人から見ればどう思われるのだろうと気になり打ちました。季節外れの作品ですが、どうか診断をお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)言葉の重なりが気にかかる。枯葉−散り、枯葉−かさり、かさり−静けさ。同じことの繰り返しになっていて、読んで、冗長感につながる。全体としても、秋の静けさの本意以外には出てこない。
(2)春霞、月夜の季の分散が気になる。そのため、焦点がぼけた感じ。春霞に足を留める、抒情はよく出ている。

短夜や義眼を捨てて就寝す  泰(50代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 フィクションであっても、少しホラーっぽくて、面白い。「洗いて」ぐらいのほうが、さらりとして、短夜が効いてくるのでは。

(1)鰹節香りは黴の天才子  三郎(60代,男)
(2)乗り越えし後悔ありよ栗の花
(3)ふりむけば凸凹道や栗の花

 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)香りは黴の天才子、が理屈。天才子、も言葉として苦しい。
(2)ありよ、が舌足らず。乗り越えたのが苦労でなかったのがまだよかった。後悔を振り捨てた先に、栗の花がある、というのはわるくない。
(3)もう一歩、発見がほしい。

(1)雨のつぶ青葉欲しくて早いよう  裸時(30代,男)
 もういっかい見つめなおすのも必要かもしれません。俳句は難しいですね。
(2)雨のつぶ青葉若葉が早いよう
 推敲してみました。
(3)ホトトギス驚天動地影を待つ
 ネタ切れの危機です(;;もっと俳句を読まないと・・。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)(2)青葉若葉と、同じようなものを2つも入れるのは、字数がもったいない。早いよう、の意味がよくわからない。雨のつぶ、と若葉、で素直に大胆に詠めば、面白くなるかもしれない。
(3)驚天動地、とは何をいいたいのかわからない。既成の言葉を当てはめただけの感。

(1)尻重な烏の歩み著莪の花  文の子(60代,男)
 面白さの決まったお句「K1のドーム上空鳥交る」を見せていただき有難うございました。作者はドーム内にいて、ドームの上空を想像していると読んだのですが如何でしょうか。実景だと作者がドームの外で私には面白くないのですが。
(2)同源の滝の幾筋一川へ
(3)吾が庭の十薬高みより愛でし

 宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 ありがとうございます。作者は、ドームの中との想定です。そう決まっていないかも。
(1)烏と、著莪の花の取り合わせが、もうひとつわからない。烏の形容としては、あたっているような気がしますが。
(2)同じ山にある滝は、同じ水源であるのが、自然。上5は言い過ぎてしまった。
(3)高みより愛でし、がややわかりにくい。十薬を愛すのも、特に変わったことではない。十薬の高さほど、〜する、ともっていったら面白いのでは。

育ち行く鉢の西瓜よ幼稚園  尼の久女(60代,女)
 早朝の散歩コースに幼稚園があります。 園児の名をつけた西瓜の日々の変化が楽しみです。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 発見はないが、穏やかな日常がある。俳句としては平凡だが、優しい気持ちにはなる。

(1)ひとひらは肩に散りけり柚子の花  小口 泰與(60代,男)
(2)パナマ帽ごつき体の男かな
(3)額の花湖は太初の青さかな
(4)灰色の空衝きぬけよ矢車草
(5)走り根の岩を覆ふや雲の峰
(6)郭公や赤城南面開発中

 よろしくご指導願います。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)少しつくりものっぽい。
(2)パナマ帽にごつき男はつきすぎだが、四角い顔の男が見えてきて、わるくない。
(3)湖は太初の青さかな、がとてもありそうなフレーズ。
(4)矢だからか。ネタがすぐばれる。矢車草にそう言っても、矢車草は困りそう。
(5)雲が一群の岩を覆った。なかなかいい、景の切り取り方。なかなかいいのでは。
(6)下5で、意外な展開。郭公の困惑顔がみえて、おかしい。おもしろい。

額の花待ちたる人のメールくる  東風(70才以上,女)
拙句をご診断ください。(目下無所属)
ドクター早瀬の診断と処方箋
 回答が遅くなってしまい、大変申し訳ありません。
 待ちたる人のメールくる、はよく見るフレーズ。が、額の花と合わされると、そのメールの内容が、とても清楚で、さりげない好意に満ちているようで、読後さわやかな句。すこしいい感じ。


2006年6月27日

水鳥に水の重たく透きとおる  遅足(60代,男)
 山のなかの池に一羽の水鳥。鳥が水と一体化して静寂そのものでした。なんとか、あの印象をと思ったのですが。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 水鳥と、水、という言葉をあえて用いたところは大胆でいいが、重たく透き通る、はやはり無理があるのでは。どのような様子なのか、わかりにくい。一案「水鳥が水になりゆく」として、下五を考えられては。

(1)花色のリックが駆けるあげはちょう  三郎(60代,男)
(2)心太一気に喉を走りけり
(3)ふもとまで連なる傘や菖蒲園

 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)リック、はリュックでしょうか?蝶を、リュックに見立てた。ややありきたり。
(2)心太を飲むとき、これ以外の言い方はないほど、直裁。当たり前すぎて、逆におもしろいかも。
(3)やや平凡だが、ほほえましい風景がよく見えて、好感は持てる。

(1)浜名湖や羅漢の里の新樹光  光子(60代,女)
(2)浜名湖や沖に鰹か鳥騒ぎ
(3)牡蠣棚を廻る漁師に梅雨の雨
(4)植田せし長靴のあと夕暮色

 せし、せり、の使い分けがよく解かりません。教えて下さい。梅雨晴れ間、暑くなりました。先日浜名湖に連れていってもらいました。豊橋から40分 程の所です。目に入ったものを詠んでみました。宜しくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 吟行にいいところですね。うらやましい。
(1)浜名湖と羅漢の里は両方場所を表す言葉なので、ほぼ同じもの。言い換えになっている。作者の言葉が、新樹光だけでは苦しい。
(2)沖に鰹がいるかもしれないから、鳥が騒いでいる、というのは理屈。陥りやすい。
(3)理屈、説明、も無い。ややもの足らないが、素朴な風景で、嫌みがない。
(4)植田の後の長靴の穴は、とてもいい風景。夕景色、が平凡。

箱庭やわが胸にあり遠近法  れい(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 箱庭、遠近法、胸、おもしろくなりそうな予感があるが、掲句では、表現が、解釈を難しくしている。や、で切れているので、箱庭が胸にあるわけではない。では、遠近法が胸にあるのか。抽象的で、ついて行きにくい。

(1)ナイターや南瓜の種を噛み砕き  小口 泰與(60代,男)
(2)風鈴や秩父連山浮び立つ
(3)夏雲へ赤城の裾野伸びにけり
(4)白妙に黄緑ほのか月見草

 よろしくご指導願います。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)「を」はいらない。巨人ファンでしょうか(笑)。説明していないが、気持ちがとてもわかる。季節感もあって、おもしろい。
(2)風鈴の小さな音で、大きな秩父連山が浮かびたった、という対比が少しおもしろい。
(3)平凡。
(4)報告に止まっている。

(1)梅雨晴れ間読経のなほも続きゐて  文の子(60代,男)
 今朝は梅雨に戻りましたが、昨日までは梅雨明けの感がありました。
(2)梅雨晴れ間回送電車風運び
(3)良薬は苦し十薬花美(は)しき
(4)言ひ分を九割聞くや濃紫陽花

 「面白い(変わった)方向」とは「もちろん褒め言葉」と伺い嬉しく思いますとともに、これもご懇篤なご指導のお陰と感謝しております。私の入っている句会は平均年齢が略80歳、最若手の私の上は10歳離れているという高齢化社会で、私以外はベテラン(句歴50年以上がごろごろしています)の会です。最初は彼等の合評が勉強になりましたが、最近は食い足らなく感じていました。ドクターのご診断のお陰で一皮剥けたと思います。尤も彼等との距離ができたのも事実で、これまでは上位の成績だったのが、この2ヶ月は平均並、主宰(比較的弾力的な俳人ですが、かなり高齢です)の評も低下傾向です(笑)。宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 成績の低下、申し訳ありません(笑)。句会、結社によって、俳句のとらえ方は当然違いますので、一方でいい(だめ)とされた句が、他方ではだめ(いい)、とされるのは、むしろ当然でしょうね。
(1)梅雨晴れのむしむしする中、いつまでも終わらない読経。わかりすぎるが、実感のもてる句。
(2)梅雨から、発想が飛んだ先が、回送電車。いい展開。電車が通りすぎる、がらがらという音も聞こえてきそう。いいのでは。
(3)良薬は苦し、はなんと言っても常套句。17字の中には、もったいない。
(4)聞けない1割がどんな部分か、少しおもしろい。


2006年6月26日

朝顔市いなせな声に引かされて  しんい(60代,女)
 今年も又、7月6日〜朝顔市が。毎年楽しんでいます。先日、ご指導頂いた[浮葉]の句ですが、下五に梅雨晴間にしますと、「季重なり」に・・・。「雨上り」では変でしょうか。浮葉→「蓮の浮葉」の傍題にあったのですが、浮葉でなく、蓮の葉にした方が明快でしょうか。初心でまごまごしております。重ねて宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 浮葉で「蓮の浮葉」ですか。寡聞にして存じませず、失礼をしました。雨上がり、でいいと思います。
 掲句。いなせなお兄さんについ買ってしまった。朝顔もいなせな感じがして少しおもしろい。買うことを、引かされて、といったところがうまい。

寺町の衣干す寺梅雨晴間  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 寺が寺町にあるのは当たり前だが、それをわざとさらっと言うことによって、おもしろい効果が出た。人を食ったような感じがして、くすっと笑える。ささやかな街角も見える。

(1)蛇苺心の闇の底知れず  しょうこ(女)
(2)噴水を支える水輪ティアラめき
(3)逆断層マグマの色みせ青嵐
(4)極楽の隣地獄や蓮の咲く
(5)白魚の指たて蟻を潰しをリ

 何時も有難う御座います。とても参考になります。又宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)心の闇の底知れず、が深い表現のように見えて、実は当たり前。蛇苺、とは何となく合っている。
(2)これもそのまま。特に発見はない。
(3)逆断層マグマの色、が実際はどんな色かわからないが、大胆でおもしろい。見せ、が説明。「逆断層マグマの色の青嵐」
(4)極楽の隣地獄や、は天国地獄は紙一重、などと一緒の既成の表現。蓮、も地獄とつきすぎ。
(5)最後の下5で、あっといわされた。何か鬼気迫るものがあり、怖い。ホラー俳句で、おもしろい。

炎暑かな車とビルと人波と  れい(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 登場するものが多すぎるので、散漫になりそうだが、と、で洪水のように次々と出てくるので、炎暑のうだるような感じがよく出ている。かえって効果的。突き放したように詠んだことが成功した。

潦おちこち残し梅雨晴間  裕子(70才以上,女)
 (にわたずみ)も(おちこち)も句会で知りました。 この句の背景は見たままなのですが、あまりにも気取った俳句のようであり、又俳句ってそんなものかと思ったり、初心者の私は迷ってます
ドクター早瀬の診断と処方箋
 潦、もおちこち、もやや特殊な言葉、雅語なので、2つ並べると、作者だけが悦に入っている感じがどうしてもしてしまう。それと、残し、の主体がわからない。「残り」か。言葉が雅なだけで、風景が迫ってこない。自分の言葉で、平明に、新鮮な風景を詠まれた方がいいのでは。

(1)肩寄せて焼鳥を食ふクールビズ  せいち(60代,男)
(2)ラーメン屋の角を曲がれば梅雨夕焼
(3)雨男でも良いヤツよかたつむり

 クールビズは季語でないでしょうが、よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)クールビズは、新しい風俗として、季語に準ずるぐらいでいいのでは、と思います。少し滑稽感があって、一つの現代の風景。
(2)昭和40年代のにおいが少しする。が、やや踏み込み不足。
(3)雨男でも良いヤツよ、がありきたり。雨男は、たいていいいやつでは?

(1)深梅雨や駐車場への長き列  文の子(60代,男)
 「深梅雨や満車を知らぬ長き列」は「満車は察するのでは?」次の「梅雨の列曲がらば満車知ることに」は「梅雨の列、がよくわからない語。譲って車の列としても、それほど、なるほど!と思う景色ではない。」と承りました。掲句は如何でしょうか。
(2)梅雨晴れのひかり仰角ゼロにして
 「梅雨晴れの街中視野の狭まりし」を「説明」とご診断頂きました。掲句ポイントを置き換えました。宜しくお願い致します。
(3)友逝くとクールビズの上(へ)正装す
 無季語ですが如何でしょうか。
(4)ネクタイを締めぬ身となり梅雨の葬
 クールビズとは作者が違ってしまいますが、如何でしょうか。
(5)南風の街手紙ポストを通り過ぎ
 「鳥曇り手紙ポストを素通りし」を「一瞬おもしろいが、よく読むと、手紙がポストを素通りするとは?手紙がいったんポストに入って出てしまったのか、我が家のポストに来ずにいってしまったのか。ややわかりにくい。」とご指摘頂き推敲しました。宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)梅雨の長雨の感と、倦怠感はよく出ている。
(2)仰角ゼロを、理屈で考えると、よくわからなくなるが、強烈な夏の光の感覚はよくでている。感覚的な句作りで、いいのでは。
(3)上(へ)という表記を見ただけで、何か俳句が苦しく感じてしまう。友逝く、という重い事柄と、クールビズ、の軽快さの取り合わせはいい。
(4)ネクタイを締めぬ身となり、というのは、季節の推移というよりは、定年して久しい、と読んだ方が余韻がでそう。
(5)基本的には、前回のコメントと、状況は変わっていない。

(1)杜鵑花咲く思いのほかに蘂長き  小口 泰與(60代,男)
(2)聳え立つ奇岩の妙義昇り藤
(3)活けてより色つや増せり唐菖蒲
(4)柚子の花香り川面に広げたり

 よろしくご指導願います。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)思いのほかに、を、別の表現で表すのが、俳句。この部分は不要。
(2)奇岩と、昇り藤の、2つに焦点が分かれてしまった。
(3)活けてより色つや増せり、が典型的な説明。見たものだけを投げ出したい。
(4)花、で切れているので、何の香りかわからなくなっている。「花柚の」。柚を浮かべたのは、静かな川面。清らかな水が見えてきて、読んで快い。


2006年6月25日

初恋の外堀埋めて梅雨逃げる  裸時(30代,男)
 最近思うことです。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 初恋は、不器用なもの。で、外堀から、少しずつ埋める、というのはわかるし、面白い。梅雨逃げる、がわからない。梅雨が飛んでいってしまうのか。「梅雨の中」、ぐらいが、情けなく、おかしい。

梅雨合間染みる朝焼けもう一杯  風音(20代,男)
 若輩者ですが、俳句が大好きで7年ほど嗜んでおります。まだまだとは思います が、是非ともご診断を頂けましたなら幸いです。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 俳句好きの20代の青年からの投句。うれしいですね。
 梅雨合間は、梅雨晴れ間。朝焼けの赤い色がよく見える。もう一杯、が、何の一杯なのかわかったほうがよい。梅雨合間、染みる朝焼け、もう一杯、と切って読むと、三段切れになってしまい、俳 句としては弱い。が、朝焼けを飲み物と捉えて、朝焼けをもう一杯飲もう、と読むと、面白くなる。素直な感じでいい。

(1)身を撚って泣きじゃくりする子無き蛇  北野元玄(60代,男)
(2)端座して黙して睨む孕み蛇
(3)迷妄な深淵あとに蛇穴を
(4)蛇穴を出て魍魎の世を呪いける

 入梅と梅雨の句のご講評有り難うございました。もう一度蛇シリーズをよろしくお願いいたします。まじめに取り組むのですが、川柳もどきになっているのではと、われながら少し心配しています。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)「撚って」は「撚り」。上5、中7がくどすぎる感。泣きじゃくりする、という表現も不自然。ただ、子無き蛇、という存在が変わっていて、不気味というか、少し面白い。
(2)これも、上5、中7が描写過多。孕み蛇は、子供を持つので、睨むのもあたりまえ。
(3)蛇の穴を、迷妄な深淵と捉えた。やや、蛇に気の毒か。
(4)一案「蛇穴を出れば魍魎ばかりなる」。蛇でさえも、この世に出てみたら、魍魎だらけであった。おかしい。単純に、軽く詠まれたほうが、余韻が残ると思います。

神様よスロウな夏を下さいな  涼(70才以上,男)
ドクター早瀬の診断と処方箋
 前半は少し面白いが、下5でがくっとなった。俗っぽい感じ。神様、とスローな夏、で別の句を考えて見られたら。

モノトーンに明け行く空や新茶かな  れい(70才以上)
 「や」で切りさらに「かな」ではどうなのでしょうか?お教えくださいませ。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 草田男の、「降る雪や明治は遠くなりにけり」のような名句は例外として、「や、けり」は禁じ手とされています。意図的な切れを、2ヶ所も入れると、句がぶつぶつになって、散漫になるからでしょう。掲句。言葉の違うくっつけ方をすると面白い。一案「モノトーンに沈む湯呑みや明け易し」

(1)白南風や友は笑顔を遺しける  文の子(60代,男)
(2)皐月とて遅延の表示運休に
(3)梅雨最中小道の真中車来て
(4)ジーパンにスカート重ね額の花

 宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)亡き人を詠むのは、それだけで雰囲気が出てしまうので、わざとらしくなって、かえって難しい。
(2)とて、の意味が取りにくい。中7と、下5、で同じことを言っていることの、意図がよくわからない。
(3)最中、と真中、の重なりの効果があるように思う。じとじと雨の中に、よりによって、小道に車が来る、その情けなさ、苛立ちがよく出ていて、笑える。いいのでは。
(4)私も中年なので、あの姿は、よくわからない。どちらか一方にしたら?と思ってしまう。ともかく、現代の風景をさりげなく切り取った句で、いいのでは。額の花とよくあっている。


2006年6月24日

(1)深緑のグラデーションや木下闇  泰(50代,男)
(2)空蝉の縋るる姿残しをり
 特に新発見というべきものはないと思いますが、宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)だれもが思いそうな、景の把握の仕方。言い尽くされたことを俳句で言っても、感興はよばない。
(2)縋る、の連体形は、五段活用なので、縋る、だと思います。空蝉の姿を縋る、という言い方が、少し新しい。

(1)雲の峰平城京は真つ平ら  風葉(60代,男)
(2)炎昼や几帳の陰の単衣
 よろしくご診断ください。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)平城京は平らなのだが、改めてそう言い切られると、大胆な表現にはっとさせられる。迫力がある。そこに一本の雲の峰が屹立している。単純化された、力強い景。佳句。
(2)季重なり。几帳の陰が、ひんやりした感じが出ているが、想像が広がっていかない。

(1)母の忌の早き目覚めや梅雨晴間  小口 泰與(60代,男)
(2)雨打つや葉に隠れをる青蛙
(3)雨含み薔薇のふたひら散りにけり
(4)夏薊赤城の水に影落とし

 よろしくご指導願います。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)母の何回忌かの日。母が、頭のどこかにあって、早く目覚めた。外は、梅雨晴れ間で、暑くなりつつある。実感のこもった句。
(2)よくわかるが、よくある景。
(3)雨に打たれ、ではなく、雨を含んだ薔薇、というところに少し新しみがある。
(4)赤城に地名が、生きていない。

内庭の睡蓮は君僕は蓮  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 発想は新しい。大胆な言い切りで、はっとさせられる。が、考えると、解釈が難しい。蓮は、仏教の悟りを象徴する花で、句の対比は何を意味するのか。君、僕、を意識的に使っているので、単なる、意味のない、並置ではないとおもわされる。

鮎を愛ず夫単線の旅終えて  れい(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 愛ず、がやや硬い。鮎好きの、ぐらいでは。単線で少し雰囲気は出ているが、全体が散文的。鮎、夫、単線、と焦点がぶれた。一案「お土産の鮎単線の旅終えて」

(1)草刈りに驚く虫におどろきぬ  詩音(40代,女)
(2)父の日の草蜉蝣を追ってきた
(3)いきいきとマスカルポーネ黴ゆきぬ
(4)紫陽花やかゆいところはないですか

 (4)はあまりにもぎっしりと咲いているものだから・・
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)当たり前の景のようで、なかなか詠めない句。一瞬の心の動きが、生き生きと写生されている。ぬ、で終わっているところも、切れの効果が出ている。うまい。
(2)草蜻蛉を追っていると、父の日だったと気がついた。何か、不思議な雰囲気が漂う。亡くなった、とは言っていないが、亡父が蜻蛉になって漂ってきた、とも読め、余韻の残る句。
(3)辞書を引かないとわからないが、洒落た名前のチーズと、うさんくさいカビが、取り合わされると、なにかおかしい。
(4)紫陽花のかゆいところ、とは初めて聞いた。次に紫陽花を見ると、自分までかゆくなってきそう。今回も含めて、詩音さんは、視点がユニーク。

さっきまで鏡のなかに夕化粧  遅足(60代,男)
 診断ありがとうございました。少し手直ししてみました。なぜか、今いた空間に、次の瞬間にはいないのが不思議で、そんな感じを表現するのは難しいです。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 鏡の中に見えていた夕化粧が、今は見えないという。鏡の覆いが下げられたか、ガラス戸が閉められたか。少し不思議な感じはする。さっきまで、がやや説明。


2006年6月23日

入梅に昼がうごめくある小豆  裸時(30代,男)
 今日は雨でびしょびしょになりました。梅雨ですね。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 小豆に、入梅の昼が入っている、という発想は新鮮味、実感がある。言葉がややごたごた感。
  「入梅の昼うごめいている小豆」

五月雨や待合室にゐる私  fuji(10代,男)
ドクター早瀬の診断と処方箋
 何の待合室かわからないので、情景、鑑賞が安定させにくい。五月雨とあいまっても、ただ待合室にいることが、俳句的面白さをよばない。10代らしく、思い切った、発想の飛躍、転回を。

病癒え心も癒えて踊子草  れい(60代)
 当たり前なのですが・・・。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 気持ちはわかる。病癒え、まではいいので、心が癒えたことを暗示する措辞がほしい。
 一案「病癒え急に増えたる踊子草」

炭酸水あやまってみる顔文字で  珠(50代,女)
 前回のオットセイの句ご診断ありがとうございました。ドクターの句はやはり体脂肪もとれすっきりとまとまっていて自分の句は何か重い感じがしていたのがこうもまとまるのかと感心しました。引き続き宜しくお願いいたします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 ありがとうございます。
 顔文字で謝る、というのは、いかにも現代性を切り取った、面白さがある。炭酸水と取り合わせたことで、その謝りも、軽い感じになった。が、この手の俳句は、新鮮味を失うのも、炭酸水のガスが抜けるぐらい速い。

(1)炎昼や舎人は築地の影となる  風葉(60代,男)
(2)薫風や垂衣(たれぎぬ)あぐる市女笠
 なかなかひねりが効きません。よろしく。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)時代俳句。舎人、という言葉しか現代には残っていないが、貴族の世話のために理不尽な目にもあったろう舎人たちの、悲しみが、影となってしみこんでいる。いいのでは。
(2)時代俳句とわかるだけで、特にひっかかる部分はない。

(1)五月闇信長兵を休めしか  文の子(60代,男)
 ドクターにご診断いただくのも残り僅かとなりました。この間のご懇篤なるご指導に心より御礼申しあげます。今日から投句数を増やしますがどうぞ宜しくお願い致します。
(2)新聞とバッグを小脇梅雨の入
(3)原宿の髪を飾りしサングラス
(4)母にある絶対音感西瓜買ふ

 「西瓜買ふ絶対音感持たずして」を「西瓜買ふ絶対音感響かせて」と添削頂きありがとうございましたました。掲句は如何でしょうか。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 いよいよラストスパートになりました。
(1)休めしか、だとここに休めたんだろうな、という感慨の報告にとどまる。例「信長の色になりたる五月闇」のように、謎を残しつつ、大胆に詠みたい。
(2)梅雨の入りを思わせる、ピタッとくるが、だれも言っていない情景を探したい。
(3)原宿の髪、という省略が効いている。軽快なスケッチ。
(4)幼少からピアノを習った、ハイカラな母が見えてくる。取り合わせとしては、いい感じ。

(1)機の間に母が咳する明易し  翔吾(50代,男)
(2)駅のベンチに吟遊詩人明易し
 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)鶴の恩返しのような世界。中年以後の誰しもが抱く、郷愁が感じられる。
(2)ヨーロッパの寓話のようで面白いが、上7が重い。明け易し、が唐突に感じるが、明け方の駅に、ファンタジーの吟遊詩人は、いそうな感じもする。

昼顔の笑顔ぱっちり覚めますよ  裸時(30代,男)
 今度の北摂句会のゲストに出られるそうでぜひ行かねばと思っております。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 覚めますよ、と誰に言っているのかわからないが、逆に、相手をいろいろ考えられる楽しみがあるので、いいのかもしれない。句会行かねば、ということで、ありがとうございます。

カーテンの向こうの夜の濃紫陽花  れい(70才以上)
 いつも励みになります、有難うございます。よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 巧まない、自然な詠み方で、雰囲気は出ている。が、もう一つ物足りない。読者が、はっとして、引き込まれる焦点が欲しい。


2006年6月22日

梅雨晴間鬼の子十を数え終え  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 やっと出た晴れ間に、遊ぶ子供たちが、かわいく、いとおしい。本当の鬼の子のような気も少しして、おもしろい。いいのでは。

(1)桑の実や少年たちのイナバウアー  さくらんぼ(60代,女)
(2)郭公や不意にしゃっくり出で来たる
 よろしくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 よくわからないのですが、桑の実は、苦いのですか。それだと、のけぞっているということで、理屈になっておもしろくない。イナバウアーは、とっくに賞味期限切れ。少年、桑の実、はいい感じなので、この二つで、作ってみたい。

紫陽花を撮りて火星にメールする  泰(50代,男)
 水星や金星ではなくて、やはり火星かなと。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 火星の、あの赤茶けたカナルに、水があふれ、紫陽花があったらな、という気がしてくる。遊び心がいいのでは。

(1)片陰を石垣占めて水の音  文の子(60代,男)
 「片陰を石垣占めて江戸の町」は「もっと意外な町に連れて行ってほしい。」とご診断頂きました。掲句も想定内でしょうか。
(2)石垣の占むる片陰天安門
 この片陰は思いが違いますが如何でしょうか。4半世紀前のことで、石垣は不確かですが、片陰に入れなかった記憶があります。
(3)西瓜割り出歯の生まれを親に謝し
 時点をずらしたのですが、これも因果律でしょうか。
(4)星月夜安土に天守閣の無く
 宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)片影、石垣、水の音、は同じイメージでつながるので、飛躍はないが、山村地帯の、人影のない、ひなびた村を想像でき、行ってみたくなった。
(2)中国ですか?あの広大な天安門広場と、片影の小さい感じが結びつかない。
(3)言いたいことを全部言ってしまった。立派な川柳。
(4)安土に天守閣の無く、は誰もが知っていること。改めて言うことで成功するときもあるが、この場合は、あまり成功していない。

(1)梅雨晴や黒土の湯気の斜め立つ  小口 泰與(60代,男)
(2)新緑に車もろとも吸い込まれ
(3)夕暮れの川原に下りて素足かな
(4)山霧を分けて現る躑躅かな

 よろしくご指導願います。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)黒土は、くろつち、ではなく、こくどだろうか。こくど、の方が、大ロシアの黒土地帯のようで、大地の熱が伝わってきて、おもしろい。斜め立つ、が発見。いいのでは。
(2)いい切り方。が、もろともが、しゃべりすぎ。一案「新緑に車一台吸いとられ」
(3)素足かな、のかなが効いていない。
(4)やや平凡だが、躑躅の赤が鮮やか。

(1)ぺチュにアの苗の密集理容店  チャヒロ(女)
 いつも有難うございます。これは本当の事ですが、理容師がお客のいないまに種ま きして物凄い勢いで伸びていく。元気をもらうようです。
(2)鰹節かんかん楽器になりにけり
 鰹節を乾燥するとあまり良くないのでしょうが、外地でも貴重品です。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)いい取り合わせ。密集に焦点を合わせた、説明になっていないところがいい。理容室の主人の人柄、暇さ加減が彷彿として、いい感じ。
(2)連想が直截すぎる。青のかんかんしたところから、何か別の変なものに発想を飛ばしたい。

滝を見て子供こぼれて晴れユカイ  裸時(30代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 新しい表現に、挑戦している気配はある。意味は拒絶している世界。だから、状況を正確に把握しようとしても無駄なのだろう。ただ、破格に向かう前に、基本フォームは、知悉すべき。


2006年6月21日

新樹光眼下に白き広瀬川  れい(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 新樹光で、十分光りに溢れている感じはしているので、白き、は重なりすぎ。眼下に、も説明。川の中の、今まで言われていないものを、何とか探しましょう。

小授鶏に呼ばれて目覚む日曜日  けいこ(50代,女)
 動物とか生き物の句が好きです。池田澄子さん風に詠みたいのですが「小授鶏に呼ばれて森に来てみたわ」澄子さん憧れです。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 小授鶏に呼ばれて、まで言ってしまうと、類句、模倣になってしまう。池田さんの、句の気分だけを真似て、まったく別の情景で作ってみましょう。

(1)梅雨の入歩行者道に拡がりて  文の子(60代,男)
 6/15のご診断に「最近かなり面白い(変わった)方向へ行きつつある」とありました。早瀬ドクターの「面白い」は肯定と理解していますが、「変わった」も肯定でしょうか。掲句「人々に梅雨の間隔交差点」を推敲しました。
(2)十薬の百本千の花つけて
 6/15のご添削「西瓜買ふ絶対音感響かせて」有難うございました。「うそでも」と言っていただきましたので、自分なりの嘘も考えてみたいと思います。掲句言葉遊びに終っていますでしょうか。
(3)梅雨真中東京都心丸之内
 漢字だけにしました。
(4)濃紫陽花ジーパンの腿褪せにけり
 退を重ねました。宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 面白い、変わった方、はもちろん褒め言葉です。
(1)梅雨の入り、だから傘を皆さしている、から、道いっぱいであると、三段論法になってはだめ。
(2)一読、ぷっと吹き出した。江戸時代の遊びを髣髴とさせる。時には、このような言葉遊びは、大いにやるべき。面白い。
(3)東京都心丸之内、が字数はぴったりだが、面白さがきまった感じはない。参考「K1のドーム上空鳥交る」(淳一)
(4)物をよく見ている印象。紫陽花の色も、空梅雨で褪せている感じがして、少し面白い。

(1)こめかみに夏草の触れて蛇穴を  北野元玄(60代,男)
(2)悪意の片鱗もなく蛇穴を出る
(3)蛇穴を憎悪と苦悩の坩堝あり
(4)瀆神を知悉してなお蛇穴を

 早瀬ドクターに栗花シリーズ4句とも取り上げていただき、感謝と敬意を表します。俳句のありようについて、改めて考えさせられております。小生の俳句では言い回しに重複が多いことにはご指摘があって初めて気がつきます。まさに仰るとおり
 言葉過剰です。今後ともご指導ご指摘をお願いいたします。今回は蛇穴を出るシリーズです・・・。変なものばかりをお願いして、恐縮しております。マイルドなものからシリアスなものへ順番に配列しております。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 好き勝手なコメントに対して、丁重なお言葉をいただき、恐縮しております。
(1)何かに突き動かされて、夏原を歩いていることが想像される。なぜなら、こめかみに夏草が触れているから。蛇穴を、だけでは、出づ(春)、か、入る(秋)かわからない。単に、「こめかみに夏草触れて蛇の穴」。面白い。
(2)片鱗と、蛇がかけてあり、少し面白い。が、主観が強すぎるか。 (3)蛇だから、憎悪、苦悩、と理屈になってしまう。この2つは、やはり、詰め込みすぎ。
(4)瀆神、知悉、と言葉が硬いし、難しすぎる。蛇穴を、が出るか、入るかはっきりしていないし。解釈ができにくい。俳句は、平易で、単純なほうがいい。

(1)蓮浮葉水を被りてぬめりけり  小口 泰與(60代,男)
(2)御点前のフランス人や吊忍
(3)老犬の病篤しや五月闇
(4)雲の峰山刻々と色を変へ
(5)九十九折り過ぎるや牧の山躑躅

 よろしくご指導願います。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)水を被ったら、ぬめるのはあたりまえ。
(2)一幅の絵にはなっている。フランス人と、釣忍はいい取り合わせ。涼感がある。いいのでは。
(3)老、病、闇、と同じ色が重なりすぎた。
(4)新しい景色の切り口がない。
(5)九十九折り、山躑躅、などの言葉が、既成感が強く、ありきたりになっている。


2006年6月20日

先輩の母と語らうプチトマト  fuji(10代,男)
ドクター早瀬の診断と処方箋
 先輩の母ということは、自分の母よりも年配そう。語らう状況が想像しにくい。プチトマトも、よくわからない。人事句は、情景を単純にして、くすっと笑えるほうが成功の確率は高い。

梅雨に入る三塁ベース踏み忘れ  遊飛(50代,男)
 梅雨に入る の後、何とでも書けそうですが、句になっていますか?
ドクター早瀬の診断と処方箋
 梅雨に入る、と響きあわないとだめでしょうね。掲句はどうか。梅雨に入って、雨がやんだあとも、地面はぬかるんでいそう。いかにも靴が取られそう。足を引っ張られる感じと、梅雨の湿りが合っている。ぎりぎりセーフ。

冷房の音聞いてをり偏頭痛  菜月子
 偏頭痛の予兆を感じながら、古くて、音がする仕事場のクーラーを聞いていました。よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 季語はあるが、季感による、驚き、感動がない。自分の事情だけでなく、読者が読んだとき、詩情がたち現れる俳句を目指したい。

(1)水玉のたゆたふ浮葉雨上り  しんい(60代,女)
(2)色深き花蕾ほどけり額の花
 花蕾を「からい」と読むには無理が有りますか、「蕾」とした方がなどと迷いました。宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)季語は浮葉?浮草は夏の季語だが。情景はよく見える。下5は、「梅雨晴れ間」ぐらいでは。
(2)からい、は苦しいのでは。平易な言葉のほうが、ふくらみが出る。ともあれ、全部言ってしまった感じ。

(1)はしり梅雨鯉が空見る橋の上  三郎(60代,男)
(2)じりじりと蟻におされる子猫かな
(3)道二つ行く道探す蟻の道

 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)空見る、まではごく平凡だが、橋の上、に視点を絞ったのが良かった。空間の余韻が残った。
(2)大きな動物が、小さいものに押されるのはよくある句。
(3)蟻の列が、二股で行く先を迷っているのだろうか。表現にやや硬さがある。それと、何とか説明しようとする意図が見える。

(1)梅雨の列曲がらば満車知ることに  文の子(60代,男)
 「深梅雨や満車を知らぬ長き列」を「満車は察するのでは?」とご指摘頂き直しま した。
(2)神話より後の新星ほしづくよ
 「星月夜ギリシャ神話を児に語る」は「星月夜から、ギリシア神話は、やはり連想 が単純。」とご診断頂き、攻め口を変えました。理屈っぽいでしょうか。
(3)梅雨晴れの街中視野の狭まりし
(4)五月雨の晴れて軽けき木々の色

 宜しくお願い致します。平凡或いは当たり前とのご診断を予想しつつ。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)梅雨の列、がよくわからない語。譲って車の列としても、それほど、なるほど!と思う景色ではない。
(2)神話よりあとにできた新星でいっぱいの月夜だな。という句か。神話ができたのは、高々人間の歴史上だから、少し無理があるよう。
(3)説明。視野が狭まった感じを、何かのもので表したい。
(4)平凡だが、実感がる。好感は持てる。


2006年6月19日

盗人の影となりけり月見草  風葉(60代,男)
 よろしくご診断ください。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 この盗人が、なんともロマンチックに見える。私の、ハートを盗んで去っていった人のよう。浮かんでくるイメージも鮮明で、読後も、印象が長く尾を引く。かなり、秀逸と思います。

(1)師の説諭腑に行きわたり梅雨曇  北野元玄(60代,男)
(2)本質を問ふ議論なく梅雨に入る
(3)夏かぜやまたかぜを引く梅雨の空

    勝手な且つ無鉄砲な意見を申し上げましたことを反省しております。聞き流していただければ幸いです。再び梅雨シリーズです。3句とも、極く最近の作で十分な推敲ができておりませんが、どうかよろしくお願いいたします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)説諭は硬い。ことば、ぐらいでいいのでは。私も、4,5年前の、大先輩の言葉に、ふと膝を叩き、自分の未熟さに歯噛みすることがたまにあります。
(2)気持ちはよくわかる。が、不満を、そのまま出しすぎた。
(3)風邪の上に、また風邪を引くとは!ここまで読んで、吹き出してしまった。「引き」のほうがいい。

(1)やり水や鳥は梢に休みをり  小口 泰與(60代,男)
(2)やり水や梢を揺する鳥のをり
(3)ぬめりたる水を抱きをる未草
(4)群咲くもひとつの百合を見てをりぬ

 よろしくご指導願います。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)(2)虚子の只事俳句のよう(笑)。(2)のほうがいい。
(3)草が水を抱く、という描写は、少し無理がある。
(4)一つの百合を見る、作者の心に思いがはせられる。が、やや類想感。

梅雨暗き民芸館の太き梁  玉白石(50代,男)
 東京駒場の日本民芸館に行ってきました。特に発見というわけではないですが・・・。
 よろしくお願いいたします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 発見というのは、大げさなものではなく、見過ごされやすい、小さなもののほうがいい。俳句は、見たものにかぎらないけど、この句の場合は、やはり見た強さを感じる。佳句。

(1)昨夜の酒少し残りて朝曇り  しょうこ(女)
(2)葉桜の磴凛として猫のぼる
(3)白絹を纏ひて天突く今年竹
(4)胸元の黒子ちらりと街薄暑
(5)花沙羅の幹美しく陽を返す

ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)私がとても実感できる俳句(笑)。いかんと思いながら、ついつい飲みすぎ、最近は。一案「昨晩の酒身のうちに朝曇」
(2)登る猫は、野良?少し不思議な感じ。
(3)若竹の表面は、そんな感じですか。残念ながら、よく知らないので。
(4)その胸元とは、だれだろう。若い女性、男の子、大人の素敵な女性、いろいろと想像して楽しめる俳句。
(5)美しく、は不要。他の部分だけで、十分美しい。


2006年6月18日

水辺のベンチあめんぼの話でも  fuji(10代,男)
ドクター早瀬の診断と処方箋
 これまでの句を読んでいないと、仮定して。肩の力の抜けた、妙に寂寞感の漂う、中年の俳句のよう。現代の山頭火のように読める。少し、いいのでは。

(1)弔ひに無人の駅や墜栗花  学(50代,男)
(2)ざくざくとばかでっかくや春キャベツ
(3)目をやりてひとつ入れたる蜜柑かな
(4)その後はみなゐなくなる秋の暮

 ご指導を。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)弔ひ、無人の駅、墜、と同じ種類の言葉が連なりすぎ。読んでイメージが広がっていかない。
(2)春キャベツそのものを、思いっきり詠んだ。その試みはいいのでは。
(3)ひとつ入れたる、がわかりにくい。作者の思いの空回りになっている。説明も気になる。
(4)秋の暮れの本意に、堂々と挑んだ句。その意気や、尊し。が、その後、が、思わせぶりだけに終わっている。

(1)出会い系ばかりのメール梅雨に入る  せいち(60代,男)
(2)時鳥鳴いててんぺんかけるかける
(3)たおやかな地のどこまでもぶな若葉

 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)前半が、情けなくおかしい。が、後まで残る俳句かというと、そうは思われない。
(2)「てっぺんかけたか」をもじった句。鳴いて、で切ると読むと、意味不明になる。もじり以上のものは出てこない。
(3)ぶな,は個人的には、とても癒しの響きがある。ぶな若葉、となればいっそう。好感を持って読める一句。

(1)釣り上げし鮎三日月のやう輝けり  小口 泰與(60代,男)
(2)庭芝の夏草採りや絆創膏
(3)入相の事務所に対の胡蝶蘭
(4)漢方の煮えたぎりしやはたた神

 早瀬先生、素敵な添削有難う御座います。俳句を始めて二年九ヶ月の未熟者ですが、早瀬先生の適切なご指摘に大変に勉強になります。今後ともよろしくご指導願います。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 こちらこそ、ありがとうございます。私も、単なる俳句愛好者。参考意見としてのみ、聞き置いてください。
(1)説明過多。三日月のよう、もありきたり。中9は、7に要推敲。
(2)情景がよく見える。報告のように見えて、単なる報告ではない。それは、絆創膏に焦点が当たっているから。おかしさが出ている。
(3)入相が効いている。村一番の事務所だけれど、都会から見れば、みすぼらしい事務所。そこに、不似合いの立派な胡蝶蘭がある。おかしい。佳句。
(4)中7が硬い。一案「漢方の鍋煮えたぎりはたた神」。はたた神とよく響きあっている。今回は、力作が多く、楽しめました。

(1)五月雨の烏わめきつ道渡る  文の子(60代,男)
 「梅雨兆す烏思考を停止して」を「何となく雰囲気はわかるのですが、説明のしすぎ。言い方が堅い。烏の不思議な行動を、ポンと投げ出して、提示するにとどめたい。その方が、不気味さも出る。」とご教示頂きました。別の日に見たカラスの行動を詠みました。
(2)合戦は源氏の勝利濃紫陽花
 「合戦は白が優勢濃紫陽花」を「合戦が見えてこない。運動会か、テレビの時代劇か。景が結びにくい。」とご診断頂き、又一つ学びました。有難うございました。
(3)急行に抜かれし電車梅雨真中
 梅雨の句は大分できました。推敲し、自選の上ご指導頂こうと思います。掲句最中より真中と思いました。如何でしょうか。
(4)佇めば風わたりけり登山道
 宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)わめきつ、が硬い。わめきて、騒ぎて、か。五月雨の中、人間もわめきたくなる。なんとなく、不穏な感じの烏が不気味で、面白い。
(2)合戦は源氏の勝利、の裏には、平氏の悲哀がにじむ。それと、濃紫陽花は合う。が、そのフレーズが、歴史事実そのものなので、読んではっとはしない。
(3)特にこれといったことはいっていない。それがいい。急行待ちの電車は、急行に抜かれることが、大げさに言えば、宿命。それが、悲しいというか、おかしい。
(4)平凡。

星凉しふと望郷のバラードなど  れい(70才以上)
 朝一番の楽しみになりました。よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 涼し、で夏の季語。星と、バラードは、近いのは近いが、いい関係。郷里を持つものだけでなく、持たないものも、望郷してみたくなる。その気分はとても素敵。

影写る万年杉と昼間には  裸時(30代,男)
 渋いかも。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 万年杉は、夏の季語か。寡聞ながら。何の影か。万年杉と、の、と、は、何を意味するか。昼間には、は何なのか。残念ながら、独りよがりの域を出ていない。

(1)陽のシャワー滝のしぶきを遠見して  文の子(60代,男)
 「日差し浴ぶ向かふ岸には滝しぶき」は「報告に止まっている」と承りました。掲句は説明でしょうか。
(2)ケ−タイの電波届かず風死せり
 「ケータイの電波届かず風死して」は「電波が届かないのは、風が死してだから、のように読めてしまう。」とご診断頂きました。因果律が無いので、こう詠んでみたのですが、掲句に改めました。
(3)雲の峰松島海に浮かびゐて
 「雲の峰松島区々に浮かびゐて」は「区々に、が難しい。読者に、印象鮮明ではない。」とご指摘頂きました。掲句は如何でしょうか。
(4)入り口に着けば終点登山バス
(5)梅雨に入る両国駅を過ぎてより

 宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)滝を遠くに見て、陽のシャワーを浴びている、という以外の新鮮な景が立ち現れない。
(2)風死す、の季感はあるが、風死す、と、電波届かず、の間に因果関係のにおいがするので、それほど面白くはなっていない。
(3)松島の、新しい切り方がない。
(4)入り口は、登山口ですか。終点、が効いていて、なかなか楽しい、いい句ですね。
(5)両国駅を過ぎると、徐々に梅雨の領域の中に入っていくようで、少しおもしろい。両国駅、が両方の國にまたがっているようで、おかしい。


2006年6月17日

梔子の香りいずこに通夜の門  裕子(70才以上,女)
 このお宅に梔子があると知りませんでした。宜しくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 いずこに、は俳句では不要。香りは、どこからかやってくるもの。通夜の門、に焦点を絞ったところは成功した。

論文の前置詞直し梅雨に入る  菜月子
 先だって、早瀬先生に添削していただいた「論文の横たわりたる聖五月」を句会に出したところ、句会の先生から巻頭句に選んでいただきました。ご指導ありがとうございました。だからまたというわけではなく、今は、心はいつもこの論文のことでいっぱいなのです。よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 そうですか!自分の句が最高点になったよりも、うれしいです。掲句。前置詞、ということは、英語の論文。難しそうな英語の論文を眺めていたら、いつの間にか梅雨になっていた。悪くない。ただ、自作の模倣にはなる。

(1)くちなしの花も色変え夏を呼ぶ  三郎(60代,男)
(2)水かれて蛍は天に移りけり
 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)色が変わったので、夏を呼んでいるよう、と理屈になっている。擬人は成功しにくい。
(2)水が枯れて、蛍がいなくなったのを、美しい言い方でいった句。粋な感じで、いいのでは。

(1)雨やみて紫陽花の花清清し  豊純(70才以上)
(2)風薫り開きたしかむ旅鞄
(3)旅鞄開きて見たり風薫
(4)水やりをおえて朝食もりもりと
(5)虎が雨明日は天気と知らせおり

 先生毎回有難う御座います。叉三句ご診断ください。(4)は「水やりを終えて朝食タイムかな」、(5)は「蛙泣き明日は雨と知らせをり」を推敲してみました。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)景は、とてもわかる。が、誰もが見て、誰もが思う情景。俳句にはなりにくい。
(2)開きたしかむ、が一瞬わかりにくい。確かむ、とした方がいい。風が薫ると、確かに、旅鞄を何回も開きたくなる。とても共感できる句。
(4)報告。
(5)虎が雨を、擬人ととらえるのは、陳腐になる。このパターンは、捨てられた方が。

(1)気弱な人が大胆にすするトコロテン  テンテン(女)
(2)ガラス器を奥から前へ初夏の客
 いつもありがとうございます。又よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)散文的。つまり説明になっている。一案「町薄暑大音響のところてん」
(2)ガラス器を奥から前へ、は何となくいい雰囲気。下五は、夏座敷、ぐらいでいいのでは。

(1)語らひて腰伸ばす婆昇り藤  小口 泰與(60代,男)
(2)曇天に其処のみ眩し花南瓜
(3)亡き母の買い物袋走り梅雨
(4)妻の友同じ麦わら帽子かな
(5)土瓶より漢方匂ひ吊忍
(6)風含みうな垂れたるや昇り藤

 よろしくご指導願います。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)腰を伸ばしている婆が、登っている藤のようで、おかしい。いいのでは。
(2)説明。
(3)亡き母は、情に落ちる。難しいところ。
(4)ささやかな発見。俳句らしい情景。妻の友への、かすかな好意が読める。
(5)これも俳句らしい情景。吊忍が効いている。
(6)平凡。

夕化粧さっき見ていた我は居ず  遅足(60代,男)
 夕化粧は待宵草、オシロイバナのことだそうです。花の名の面白さでつくってみました。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 作者の視点が一定していない。今はどこから見ているんだろう?夕化粧の、言葉の面白さが生かされていない。

捩花のすなおにねじれ夕日いま  れい(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 季語の本意を詠んだ。ひねろう、ひねろうとしたときに、ふっと、何の作意もなく、俳句ができるもの。当たり前のことを言ったまでだが、なるほどな、と素直に納得したくなる。下5の流し方もいい。うまいと思う。


2006年6月16日

硝子這ふ蜥蜴の腹の白さかな  泰(50代,男)
 前から気になってるのですが、この「ご希望は?」って、どういう意味なんでしょうか。俳壇の符牒ですか?いずれにいたしましても、よろしくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 申し訳ありませんが、この項目を作ったのは、私ではありませんので、わかりかねます。
 よく見える景。が、もう一歩、踏み込んだ写生が足りない。詠みたかったけど、先に詠まれた!という切り方をしたい。

(1)村長がぴょこぴょこお辞儀枇杷熟れる  翔吾(50代,男)
(2)濃紫陽花峡の一族黒目勝ち
 よろしくお願いします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)枇杷が熟れて、村長は、うれしそう。その感じがよく出ている。のどかな感じで、楽しい。
(2)日本の中でも、今でもそのような一族が残っていそう。この夏休みに、辺境の山間の村に無性に行ってみたくなった。

(1)片陰を石垣占めて江戸の町  文の子(60代,男)
(2)絶妙なバランス棚の金魚玉
 宜しくお願い致します。
ドクター早瀬の診断と処方箋
(1)片陰を石垣が占めている町、というのは、魅力のある町。江戸の町というのは、はまりすぎのよう。なにか、もっと意外な町に連れて行ってほしい。
(2)全部をいってしまった。

うみねこや言の葉届け久慈港  チャヒロ(女)
 失語症になった若き友へ、脳腫瘍の手術の結果が悪かったのか?悔しい事でしょう。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 下5が、惜しい。作者しか知らない地名のようで、読者は、シャットアウトされたよう。ウミネコが、言葉を届けるイメージは素敵。俳句は、読者が詠んだ事情をまったく知らないで、読むもの。

(1)香水に女ごころを起こされる  詩音(40代,女)
(2)サルビアやジャズを聴く日の厚化粧
(3)蜥蜴見て石室ほどのしめやかさ
(4)なめくぢは四分休符の長さです

 前回ドクターにご指摘いただいたとおり、どうしても綺麗な言葉ばかり使いたくなるので、あえて優美でない季題を詠んでみようと思いました。すると苦手だった「蜥蜴」や「なめくじ」がいとおしく感じてくるから不思議ですね。目下、「黴」を詠んでみたくて何に黴をはやそうかと思案中です(笑)
ドクター早瀬の診断と処方箋
 蜥蜴、なめくじ、蜘蛛、蛇、ミミズ、げじげじ、百足などが嫌いでは、俳句を詠む資格はありません。
(1)香水が、女心を呼び起こすのは、当然では。香水に、起こされる、とんでもないものを詠んだら面白い。
(2)なぜジャズを聴くのに厚化粧なのか、おかしい。不思議に、ジャズ、サルビア、厚化粧が、合っている。
(3)石室は、乾いた感じ。蜥蜴はぬめった感じ。石室のしめやかさというたとえは面白いが、ここでは少し、無理があるか。
(4)ナメクジは、なんとなく、そんな長さか、と思わされる。です、という口語の楽しさは出ている。

雲の峰ファーブルさんに聞いてみよ  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター早瀬の診断と処方箋
 雲の峰のもとで、何かわからないけど、親しみの持てる昆虫と遊んでいる。ファーブルさんという言い方に、ほほえましいものを感じる。子供に戻って、無心に遊ぶ中年がそこにいるよう。