俳句クリニック 2006年9月前半分(ドクター:朝倉晴美)

「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。

9月と10月の担当ドクターは朝倉晴美です。
<プロフィル>
 「秋晴れを抱いているのだ大けやき」5年ほど前の自句。秋は空気が澄んでいて、体 中も澄み渡っている感覚。そんな気分を句にできるとうれしい。
 目下ヤンチャ娘の子育て中ですが、今しかない感性を俳句に生かせたらなあ、と思っ ている日々です。よろしくお願い致します。

ドクター朝倉の診断
2006年9月15日

鳳仙花 わが身弾きて いのち継ぐ  浅葉洋(70才以上,男)
 「木瓜の実の 暑さ閉じこむ その頑固」、診断有難うございました。成る程と感嘆いたしました。今回の句は、鳳仙花が時期が来ると一寸触れたり、風が吹いたりすると、自ら種を弾き飛ばし翌年の命の誕生となる様を詠みました。 ご講評を宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 きれいにまとまった句で良いです。「いのち継ぐ」が言いすぎている気も致しますが、「わが身は弾きて」という表現に付けるとぴったりくるようです。前回の「暑さ閉じこむ」、今回の「わが身弾きて」、どちらも作者のオリジナルな感性を感じます。

(1)六本木ヒルズの餐にきぬかつぎ  走(50代,男)
(2)雲晴れる待宵に磯へ来てみれば
(3)余りあるねぎらい夜勤者へ良夜

 お忙しい中を懇切極まるご講評をくださり、痛み入ります。今年の十五夜の月はあいにく雲の中でした。良夜は思い出から。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそ、良いお勉強をさせて頂いております。
(1)が面白いです。時事を詠むことは、川柳の方が俄然得意ですから難しいとこももあるのですが、このように詠めると成功ですね。「餐」「きぬかつぎ」と言葉の選択が良かったのでしょう。シンプルですが、そのシンプルさも良いです。
(2)、少し平凡な句でしょう。
(3)、気分はとても伝わってきますし、読者に共感も得る句ですが、表現の技法に工夫が要るようです。句を読んだ時に、少々読みづらさもありますから。発想も良いです。

(1)村雨や鳥追わぬ案山子揃ひ踏み  北野元玄(60代,男)
(2)案山子集ひて仁義なき禅問答
 やっと涼しくなりました。よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 案山子二句、ユーモアがあって面白い句です。
(1)は、季語と「や」の切れも良く合っています。「揃ひ踏み」は実際にしているわけではないけれども、そんな雰囲気も感じられるので楽しく読めますね。
(2)、禅問答が効いています。「仁義なき」は少し言いすぎかなあとも思いますが、一句として勢いも出ていますから良いと判断しました。
 どちらの句も力強いものを感じます。

飯盒のさらりこぼす香今年米  しんい(60代,女)
 いつもご丁寧な処方を頂き、有難うございます。どうぞよろしくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそでございます。
 さて、投句ですが、「さらりこぼす香」が少し難しい気が致します。工夫された表現だと思いますが、伝わりにくいかもしれません。ありきたりの表現ではつまらないですが、読者に伝わらない表現も良くない、作句は難しいですね。今年米に飯盒の取り合わせは良いです。秋の楽しく、軽い気分が伝わってきます。

(1)コスモスや風に撫でられゆらゆらと  豊純(70才以上)
(2)帰省待ち尽きぬおしゃべり夜の秋
(3)昼寝覚めあ逢いたき人の夢に来し
(4)軒下に鰻の香り立ち止まる

 朝倉先生先日のご診断有難う御座いました。もっともだと思いました。叉四句送ります。お返事楽しみにして待っています。宜しく、、、。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 いえいえ恐縮でございます。
 今回の四句は、情緒的な句ですね。(2)、(3)が特に感じます。少し、控えめに感情を表しても良いでしょう。読者が自由に感じる部分を残しておくということです。
(4)、情景と、気分の両方が良い加減で句になっていると思います。立ち止ま人物に、読者はいろいろと想像を膨らませて句を楽しむことができます。鰻の食べたい季節のちょっとしたいい光景ですね。
(1)は、情景描写のみの感じを受けました。

電線に絡む釣り糸夏が過ぐ  雀の子(60代,男)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 興味引く風景ですね。夏の終わりというのも似合っています。季語「夏が過ぐ」は「夏の過ぐ」「夏の果て」「夏終る」などを参考にされても良いでしょう。「絡む」と動詞がひとつありますから、名詞の「夏の果て」がお薦めではあります。でも、なぜ電線に釣り糸が絡んでいるのでしょうか。屁理屈ではなくて、無理のない風景かどうかということです。少し悩みますね。*追記「初秋刀魚〜」の句ですが、どの句も、年齢、性別、経歴などは考えずに句を受け取っていますので大丈夫でございます。ひとつの独立した作品の世界として句を見ています。また、この句の場合、誘われた人物を中年の男性として読んでも楽しいです。「初秋刀魚食いたい!」という気持ちが大いに出て来て愉快になります。

(1)朝顔やかはたれ星を拝みをり  小口 泰與(60代,男)
(2)柳散り川原の石の増ゆるかな
(3)噴煙の途中で消えし名残茄子

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)、「川原の石」という無機質な句材が、季語「柳散る」と合っていると思います。秋特有の情感が出ている感じです。石が増える理由は、と問われると難しいですが、秋がそういう気分にさせる、というところでしょうか。散った柳によって、石が増えて見える、とも考えましたが、少し無理がありそうです。
(1)、ユニークで情緒もあって良いですね。「かはたれ星」という古風な言葉がいきています。拝むという動作もオリジナりテイがあります。


2006年9月14日

晩夏光メールもネットもかわいてく  ねぎよしこ(70才以上、女)
 休んでました。下手で済みませんがよろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「かわいてく」は「乾いてく」が読みやすく分かりよいでしょう。晩夏の、少し乾いた秋の気配には合っている中七下五と思います。読者の好みはあるでしょうが。私は、角川春樹の「存在と時間とジンと晩夏光」が好きです。哲学を感じさせるものの押し付けがましくない作風に魅かれます。

公園にいつもの子らがいない秋  fuji(10代)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 秋になったから、いないのでしょうか。夏休みは毎日来ていた子どもたち。今はその歓声もない、秋の公園。秋の訪れを表現した句と読みました。少し申しますと、語順や季語に推敲の余地があるかもしれません。是非、ご自身で再考なさってみて下さい。もちろんその結果、もとの句のままが良いこともありますが、いろいろ試す中で、最高の一句が生まれる可能性もありますよ。

秋雷がパソコン壊し知らんぷり  春雪(70才以上,男)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 愉快な一句ですね。「知らんぷり」がなんとも楽しくさせています。秋雷の擬人化がこの句のポイントですね。しかしながら、雷は夏の季語、そして、春雷という季語はありますが、秋雷はないようです。よろしければ、「雷がパソコン壊し知らんぷり」とできます。「雷神様」などを使ってもおもしろそうです。

(1)生(ァ)れ逝くにともに縁有りさくらんぼ  けんじ(70才以上,男)
(2)読み止(サ)しに心残して紫陽花忌
(3)句碑めぐるスリラー読むや夜長し

 上2句は逝去した娘を追悼したものです。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)が良いです。縁とさくらんぼが似合っているからです。上五が寂しい感じもしますが、さくらんぼで救われています。追悼句をして読ませて頂きますと、非常に昇華された感情の秀句と思います。
(2)、読み止しをした人物が誰であるのか揺れます。そのせいで、「心残して」も分かりにくくなっています。
(3)、「句碑めぐる」があまり面白く響いてきていませんね。読書と秋長しも定番の組み合わせですし。

(1)鍵盤を拭き秋冷の不協和音  泰(50代,男)
(2)驚きて一斉に止む虫時雨
 初めまして、よろしくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそはじめまして。お願い致します。
(1)が良いです。「秋冷の不協和音」、大変お上手に言葉を選ばれています。また、ピアノではなく、鍵盤とされたことで、その行為がダイレクトに伝わってきて、和音が聞こえそうです。秋冷には、そんな気分のことがありますもの。
(2)、虫時雨の特性ですね。しかし、もうひとつ、工夫か何かが欲しい気がします。

佇んでゐてとんぼうに囲まるる  彩貴(40代,女)
 宜しくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 良いと思います。蜻蛉ではなく「とんぼう」とされたことも成功です。句の人物は佇んでいますが、蜻蛉は飛んでいます。その静と動も効いています。また、佇むという行為には感情も付随するでしょう。秋の一瞬の風景を、情感豊かに句にされたと感じます。

(1)啄木鳥や老いて増えにしミスタイプ  文の子(60代,男)
(2)片陰を往きも帰りも外しけり
 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)が良いですね。片陰の持つ、独特なニュアンスを上手に使われていると感じます。また、片陰を求めるという句意の俳句が多いなか、大胆に「外しけり」とされたことも評価したいです。何かしら、句の人物の心の闇のようなものを感じてしまうのです。
(1)、面白さが、もうひとつ伝わりにくのではないでしょうか。

土が温いぞお母ちゃんと座る  うさぎ(60代,女)
 ご指導よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 無季の句と解釈してよろしいのでしょうか。「土恋し」や「ぬくし」、「水温む」は春の季語ですが。好意的に読ませて頂くと、春の句となるでしょう。そうしますと、「お母ちゃん」がいきてきて、雰囲気の良い句です。母というのは、春のイメージもありますし。

木犀の夜に別れの兆しあり  涼(70才以上,男)
 宜しくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 素敵な句です。言葉も洗練されているように思えます。「金木犀」や「銀木犀」を使わず、「木犀の夜」としたことが秀逸です。木犀の持つイメージを上手に俳句という作品に仕上げられたと感じます。しかしながら、木犀に頼りすぎす、付き過ぎず、絶妙なバランスです。

(1)ホロホロと浮世絵何時の蝉時雨  裸時(30代,男)
 「ホロホロと時雨浮き立つ蝉の殻」を推敲してみました。時雨は冬なのですね。勉強になりました。僕のすんでいるところは最近夕立が多いです。
(2)秋燕みんな見せてよ子供の目
 ぬるい気分です。
(3)秋思又冷暖房の中に浮く
 秋思で夜更かしです(^^;
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、具体的になり、浮世絵の存在も浮き立ってきましたね。
(2)、子供とは、燕の子供のことでしょうか。初夏の子育ての時期を過ぎていますので、燕の子供とするのは苦しいかもしれません。成鳥になっていますから。一方で、人間の子供の目としますと、「みんな見せてよ」の句意がわからなくなってしまいます。
(3)、なるほどですね。秋は、冷暖房どちらも必要な場合がありますし、物思いは、フワフワと浮遊している感じがあります。「又」が気にはなりますが、裸時さんらしい句と感じます。


2006年9月13日

(1)秋光に少女の筋肉透けており  しょうこ(女)
(2)水澄むや身中に溜まる灰汁ありて
(3)戦争を知らぬ親子や蜥蜴の尾
(4)億万年の孤独に絶えし星流る
(5)新涼や産みたて卵かけご飯

 お久し振りです。お嬢ちゃんヤンチャでおしゃまに成られたでしょうね。孫達もヤ ンチャ盛りです。お忙しいでしょうが宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 ありがとうございます。その通りですっかりおしゃまさんです。こちらこそお孫様 に親近感を感じております。
 五句拝見。どれも、きちんと整っていますし、発想、句意も良いです。オリジナリテ イがありますが、読者の共感も呼びます。
(1)が秀逸でしょう。少女期の一瞬を、秋光で見事に捉えた句です。(文語の表記 をなさるのでしたら「をり」です。)
(3)、「蜥蜴の尾」の特性が、句にスパイスを与え、クールな句意になっていま す。
(5)、中七下五を一気に読ませる勢いが、内容とぴったりです。

(1)唐辛子真つ赤な嘘を束ねをり  風葉(60代,男)
(2)網を結(す)く颱風沖に泊つる夜
 ご診断よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)のユーモラスさが良いです。唐辛子の形態と嘘がよく合っていると思います。
(2)、情景だけになっている感じがします。雰囲気はあるのですが。

(1)ちんどん屋鳴り物入りの残暑着る  せつ子(50代,女)
(2)はぐれ鵜の魚高々と朝の秋
 俳句を始めたばかりです。ご指導よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそお願い致します。俳句作りが楽しくなるよう処方できると良いのですが。
(1)、面白いです。ちんどん屋と残暑の組み合わせが、夏の終わりを上手に表しているでしょう。中七の「鳴り物入り」が、少しくどいかもしれません。推敲の余地がありそうです。推敲もまた楽しいものです。
(2)も、情景が活き活きとしていて良い感性を感じます。下五は、「今朝の秋」がベストでしょう。こちらは、初秋の爽やかさが出ています。

(1)遠足の拍手に孔雀また開く  えんや(70才以上,男)
(2)秋雨や傘を忘れし部活の子
(3)生まれつき我は右利き草むしり

 よろしくお願い申しあげます。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 三句とも、何でもない風景を、ちょっとした言葉の工夫で、印象的にしている句です。
(1)、「また」が良いです。その言葉によって、賑やかな園児や児童の姿が浮かびます。
(2)、「秋雨」が、句を平凡にせず、情感を呼ぶことでしょう。
(3)、「左利き」でない当り前さが、逆に意外性を生むのでしょうが、読者の好みは分かれそうです。

稲妻を浴びしカラダで帰りけり  fuji(10代,男)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「カラダ」のカタカナ表記が効いていると思いますが、賛否ありそうですね。それと、少し平凡かなあ。むしろ「カラダ」ではなくて、他のものに浴びせると、面白くなるかもしれません。面白い、というのは「おかしい」という意味ではなく、句のイメージが広がったり情感豊かになったりすることです。

(1)盂蘭盆会ふと星空を見上げをり  北野元玄(60代,男)
(2)蜩のまだ鳴きやまぬ日昏れ道
 朝倉ドクターはじめまして。俳句クリックには約半年間お世話になっております。改めて、ご指導をお願いいたします。
 すっかり忘れてしまっておりましたが、今日九月七日は旧暦の七月十五日で、お盆でした。それにちなんで少し頭をひねって上句ができました。ご批判いただければ幸いです。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそよろしくお願い致します。作者の気合を感じています。
(1)、ふと星空を見上げた心は何なのでしょうか。そのあたりが、しっかりと伝わってこないようです。盂蘭盆会で何を感じたかを、自身の中で消化させて言葉にし、作句をなさるのも良い方法です。
(2)「まだ鳴きやまぬ」の表現が、蜩によく合っています。が、下五の「日暮れ道」が残念でです。平凡にしてしまっています。例えば、具体的に、何かの帰り道であることにするなどが考えられます。
 二句とも、良い句材が揃っていると感じます。そこから、自分らしい句の世界ができると良いものです。

(1)なだらかに伸ぶるふじやま秋晴れて  文の子(60代,男)
(2)半月の色付き初めて街路灯
 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)の情景が良いですね。ただ、投句では、半月そのものに色が付き初めた、とも取れてしまいます。街路灯の色のことだと思いますので、そちらに重点を置いた表現が良いのではないでしょうか。
(1)、気分は良いですし、伝わってきますが、少しありふれた句になってしまっている感がします。

落武者の魂しずむ秋野かな  涼(70才以上,男)
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 風情のある情景ですね。ただ、落武者、魂、秋野、と少し付き過ぎましたか。そうなると、当たり前の風景になって感動が薄くなります。きれいな表現ですが。

(1)鴫の群川面広げし夕べかな  小口 泰與(60代,男)
(2)網を振る子等より逃げし赤とんぼ
(3)走り根の巌を掴むや萩の声
(4)虫の音の鳴き竜の音に似たりけり
(5)虫すだくけふの赤城の裾長き

 ご親切にご指導をいただき感謝申し上げます。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 今回の五句は、情景描写だけの印象があります。感情の言葉を入れることをお勧めしているのではなく、情景になにかしらの情感が欲しいところです。その中で、(1)には、「川面広げし」によって、気持ちの広がるような感じを受けましたが、句意がはっきりしないと思います。鴨の大群によって、川面が大きく見えるいうことでしょうか。「広げし」があいまいだからです。「川面狭めし」だと、意味ははっきりしますが、面白いかどうかは別問題になりますね。

どちらも痛し薔薇の棘茄子の棘  きんぎょ(女)
 薔薇はきれいだし・・・茄子は美味しいし・・・季重なりだし・・・微妙・・・?
ドクター朝倉の診断と処方箋
 いえいえ、その二つの棘の着眼は面白いです。その独創性を上手に句にできるとベストですね。(皆、これが難しくて四苦八苦なんですが。)「どちらも痛し」に推敲の余地がありそうです。読者は、「棘」=「痛い」という連想がすぐに働きますから。


2006年9月12日

(1)秋灯や片手に軽ろき旅鞄  風葉(60代,男)
(2)行間に侏儒の声聞く夜の秋
 よろしくご指導ください。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)が良いです。秋灯に、よく似合う中七下五です。秋灯で、少ししんみりとするところに、軽い鞄。旅人の心の軽さを感じます。それは、秋の旅の良さでもあるんだなあと感じる一句です。また、蛇足かもしれませんが、「秋灯」と「秋燈」の違いをいうこともあります。
(2)、「行間」が、句意を難解にはしていないでしょうか。「侏儒の声聞く夜の秋」で、充分思いは伝わってくると思います。とても面白い発想ですし。
 二句とも、風葉さん独特の世界を感じました。

蓑虫のかかる高さを決めてをり  fuji(10代,男)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 これまた、愉快な発想で、「決めてをり」という意思の断定表現も相まって良いです。個人的に私でしたら、「蓑虫は」とすることでしょう。蓑虫の意思、ということを強調したいからです。これから、蓑虫を見るたびにこの句を思い出すことでしょう。蓑虫に親近感がわきました。

(1)露草しかない一握り手向ける  せいち(60代,男)
 17音ではありますが破調、無理でしょうか?
(2)秋風に旅人の消ゆ峠かな
 朝倉先生、今回もまたよろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそ、よろしくお願い致します。
(1)、破調、お答えすることも難しい課題です。破調による効果があることが最大の理由になるのですが、その効果を見極めることもまた難しいですから。投句は、どうでしょうか。同じ破調でも、読みやすい調子にしてみると、例えば「手向けしは露草しかない一握り」となります。破調であっても、読者が受け取りやすい句であることも大切でしょう。
(2)、秋風、旅人、峠、ちょっと付き過ぎてはいないでしょうか。お互い似合いすぎて感動が薄くなっている感じがしますね。

(1)植えた杉伸びて秋空突き上げる  三郎(60代,男)
(2)遠来の友と交わすや酔芙蓉
(3)ドックは明日台風通るしらせあり

 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(3)が良いです。ドックと台風の取り合わせが、なんとも日常的で、ちょっとシニカルで面白く仕上がっています。「明日」が「ドック」と「台風通る」の両方にかかっているのも効果的です。
(1)、秋空を突き上げるなんて、とても勢いがあってよい表現です。残念なのは上五です。動詞(植えた、伸びて、突き上げる)も多くなっていますから、「植えた杉」を推敲なさると良いでしょう。
(2)、ご友人への挨拶句ですね。

(1)秋の蝉せわしく暮れを惜しむかに  悠(70才以上,女)
(2)力いっぱい暮れ惜しむかに秋の蝉
 よろしくおねがいします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 どちらの「暮れ」も、日暮れか、夏の終わりを指していると思いますが、前者であれば「日暮れ」とした方が良いように思えます。
 どうしても、「暮れ」というと、歳暮、年の暮れのイメージが強くて、せっかくの秋の蝉の句を邪魔すると思うのです。
 また、夏を惜しむという句意であるならば、秋の蝉という季語自体に、夏を惜しむ季感がありますから、「惜しむ」という言葉は不要でしょう。
 ちょっと乱暴なのですが、(1)(2)を合わせて、「せわしく力いっぱい秋の蝉」では失礼でしょうか。

(1)天(あめ)の音に地の音重なる九月かな  文の子(60代,男)
(2)子規真似て素手の野球や天高し
 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)が良いですね。発想も表現も季語もバランスよくまとまっています。それにとても気持ちの良い一句です。子規をこんな風に活き活きと詠めるなんて、ナイスボール!
(1)、少し句意が取りにくいです。抽象的だからでしょう。しかし、折角の表現ですからご再考下さいませ。

(1)陽は落ちて全山灯す虫の声  詩音(40代,女)
(2)やさしさはもういらないの秋桜
(3)風鈴を畳む音色の残りけり

 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、(3)ともに表現の創意工夫がみられる点が良いです。
(1)、虫の声が明かりを灯すようであるという例え、感じのよい情景ですね。
(3)、「畳む」と「残りけり」で、平凡な日常の行為に情感がこもりました。
(2)、少し、俗っぽくなっているきらいが感じられます。秋桜の雰囲気とは合っていますが。

(1)虫すだく欅の森の水清き  小口 泰與(60代,男)
(2)松籟と語り合ふよな薄かな
(3)畦道の露光りをり竹の風
(4)朝露に濡れし小犬や雲迅し
(5)引き抜きし花穂重たき薄かな

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(4)が良いです。小犬と朝露は良い意味でよく似合っています。迅い雲も、朝露の清涼感や小犬の活発さを助長していて溌剌とした句に仕上がってます。実家に人懐っこい犬がいるせいか、好きな一句です。
(5)も工夫が良いです。思わず重たかった薄の穂に、秋の豊かさが感じられますから。

秋光の一隅にあり堅き椅子  涼(70才以上,男)
 よろしくお願いします。教会の聖堂で・・・。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「秋光」「一隅」「硬き椅子」、見事なバランスの取り合わせです。教会の聖堂と気づかなくても、いろいろな思いで読める一句です。シンプルですが、含んでいる情感が豊かでとても良いです。


2006年9月11日

(1)誘惑の使者かグラスのさくらんぼ  風葉(60代,男)
(2)シャム猫のひげやはらかし今朝の秋
 DR.朝倉はじめまして、よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそはじめまして。
 早速二句拝見。(1)が魅力的です。さくらんぼの持つ魅力が上手に表現されています。何の誘惑なのかは分かりませんが、「グラスのさくらんぼ」と具体的なので、読者はそれぞれに想像できて良いと思います。
(2)、下五の表記は「柔らかし」の方が読みやすく感じます。秋になるとそういう感じがするのでしょうか。分かるような気も致しますが、読者の共感は分かれるかもしれません。

鰯雲延長戦になるみたい  fuji(10代,男)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 鰯雲と延長戦の取り合わせが、とても良いですね。秋の気持ちよさがダイレクトに伝わってきます。難を言えば、下五の「なるみたい」。このような表現は俳句に使えない、ということではありません。この句の上五中七に本当に一番ふさわしい表現であるか、ということです。私は、まだまだたくさんの言葉の候補があるように思えます。今以上に、爽やかさがでてくる可能性も大ですよ。是非ご一考下さいませ。

(1)秋講座河馬の話で終わりけり  春雪(70才以上,男)
 坪内稔典さんの話を聴きました。俳句の話を期待したのですが、河馬の話でした。(笑)
(2)合歓の花妻のダンスは木曜日
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、楽しくて秋らしい一句で良いです。秋は読書や勉学の季節。いさんで講座にでかけたもの、内容は河馬。そのアンバランスな愉快さで、とても楽しい一句になっています。(稔典さん、河馬のお話はお得意ですもの)
(2)、愛妻句でうらやましい限りです。「合歓の花」が、落ち着いた年齢のご夫婦を表しているようです。木曜日という、平凡な曜日も良いですね。

(1)胡瓜とは黄瓜なりけり夏終わる  希岳(50代,男)
(2)土蜘蛛と水蜘蛛永遠に遇はぬべし
(3)星ほどに静かなるもの無かるべし
(4)落蝉を雀がつつく、旅に出む
(5)禅僧の頭は青し秋の寺

 よろしくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、(5)が良いと感じます。(4)の意識的な句読点の使い方も興味を引きます。落蝉も効果的でしょう。
(1)、夏の終るけだるさのようなものが、胡瓜と黄瓜の発想で伝わってきます。
(5)、秋の寺らしくて良いです。秋が一番似合う情景のようですね。
(2)は、蜘蛛に詳しくないせいか、面白い句なのですがピンと来ませんでした。
(3)も、オリジナルな発想ですが、少し説明だけになっていると感じます。

(1)月光や女は今は夏休み  汽白(40代,男)
(2)食パンを一斤ふうせんかずらゆれ
(3)ぽっぽして涼むベンチに尻妻に

 星野ドクターありがとうございました。朝倉ドクター、またよろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそよろしくお願い致します。
(2)が良いです。食パンという、特に特別ではないものが効いています。ふうせんかずらというかわいらしく素朴な蔓植物とあっていますね。「食パン一斤」は、その様態も言葉も角ばっていますから。句、後半の平仮名表記も成功です。
(1)、(3)、面白さなどが伝わってきづらいです。もう一歩、読者に伝わると、魅力も出てくるように感じます。

(1)縄文の乳房はゆたか稲の花  満山(50代,男)
(2)夕かなかな目を合わさずに襁褓あて
(3)昨日から無口な母へ無花果煮る

 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 三句とも、魅力感じる句です。どれも日常のことですが、その一瞬をドキッとするような視点で捉えられています。まるで、写真展をみているような感も受けます。
(1)、土偶の乳房であると取りました。稲の花との取り合わせ、一句全体が豊かで悠久さも感じさせます。
(2)、「襁褓」が少し難しいかとも思いましたが、上五、中七の易しい表現、言葉に助けられていることでしょう。
(3)、なんといっても「無花果煮る」が効果的です。無花果は、その独特さからいろんな意味を持たせがちですが、投句は、重たくなり過ぎず奇をてらい過ぎずにちょうど良い具合ではないでしょうか。また、読者が自由に感じる余白もあります。


2006年9月10日

(1)日の蔭のありて並木を秋の風  文の子(60代,男)
(2)野分中セールの幟放置され
 未だ2回ですが、「良い」とご診断頂いた句が昨年より多いように思います。このペースが続くと良いのですが・・・。掲句宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 いえいえ、何を仰います。丁寧に読んで下さりありがとうございます。
 今回は、(2)が良いです。野分と現代社会を上手に取り合わされて詠まれています。とても成功している一句です。台風ではなく、風流な語感を持つ「野分」だからこその成功です。幟という表現も効いています。「放置され」と言い放ってしまうのも、句に作者が出てこず良い点ですね。
(1)は、情景描写のみになっていそうです。

渋滞の車列流れる今朝の秋  田中(40代,女)
 宜しくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 気分はとてもよく分かります。しかし、表現がちょっとおしいですね。上五中七がもったいないです。もっと、今朝の秋の気持ち良さを全面に出すと良いと思います。それと、「渋滞」は滞っている状態ですから、渋滞という語を使うならば、「渋滞解消」ですね。もしくは「流れ始める」がベストでしょう。秋は、通勤の車中も気分がいいものです。

秋の空ひとを殺めし色をもつ  遅足(60代,男)
 きれいな秋の空を見ていたら、ひょっとして青空が人を殺すこともあったかも、と思ってしまいました。ちょっと共感を呼ばないかも知れません。そんな時はどう推敲していったら良いでしょうか?よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 そうですね、できるだけ具体的な表現を試みることでしょうか。
 投句の場合でしたら、「殺めし色を持つ」ではなく、秋空が人を殺めてしまった、と。ストレートですが、そのくらい大胆な表現の方が伝わりやすいですし、インパクトがあります。架空の出来事は、ストレートかつ大胆が好ましいと思います。インパクトも、俳句の魅力のひとつですから。独創的な内容が興味ひく一句です。

痩せ猫のするり潜りて秋暑し  涼(70才以上,男)
 先日は過分なご批評を頂き有難うございました。宜しくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 いえいえ恐縮でございます。
 今回の句も良いと思います。句姿、表現も洗練されていますし、「秋暑し」の本意を上手に、痩せ猫で一句に仕上げておられます。「痩せ」と「するり」が、句にユーモラスや柔らかさをも加えています。眼前に情景が浮かんできて楽しくなります。

きつねのかみそりヒューと声帯をなくす  うさぎ(女)
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「きつねのかみそり」、季語としては定着していないかもしれませんが、晩夏、初秋の花と受け取りました。声帯をなくすというのは、花を擬人化した表現でしょうか。句に勢いはあるのですが、句意を取ることができませんでした。残念です。

(1)猪独活の咲く山道や秋の雲  小口 泰與(60代,男)
(2)コスモスやきらり銀鱗魚野川
(3)朝露のきらり光るや松の風
(4)虫すだく欅の森の自然園

 朝倉先生、適切なご指導感謝申し上げます。
 「朝日うけ炎立ちたるカンナかな」を「朝日あび炎立ちたるカンナかな」に推敲してみました。よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそでございます。
 まず、カンナの句ですが、「あび」の方が良いでしょう。また表記は、「浴び」でいかがでしょうか。朝日を思いきり受けている様子が強まりますね。
 今回の四句では、(4)が良いと思います。平凡なようでそうではありません。「欅の森の自然園」という表現が、具体的で軽くリズムもあってイメージが膨らむからです。虫すだく様子がよく伝わってきます。言葉ひとつの違いで一句の世界が広がるのです。
 他の三句は、句材が少し多いように感じます。最も強く表現したいもに絞って作ってみられるのも良いかと思います。

(1)コスモスは風のワルツと遊びます  さくら(女)
(2)秋の風少し遅れて嬰の背に
 初めまして、宜しくご教示お願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそはじめまして。
 二句拝見。繊細な感性に驚きました。その繊細さが伝わる句の表現も優れています。妙に懲りすぎない言葉を選んでおられることも、句を素直な良いものにしているでしょう。
(1)、「風のワルツ」という例え、「遊びます」という口語での言い切りの文体、どちらも成功しています。
(2)、「少し遅れて」が秀逸。平凡になりがちな赤ちゃん俳句を、さらりと特徴付けています。


2006年9月9日

武士道を父と語らふ良夜かな  fuji(10代,男)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「良夜かな」が上手に使えています。別の語順を考えてみますと「良夜かな父と語らふ武士の道」となります。「武士道」という言葉にこだわりがあるのでしたら、投句のままが良いですね。父子の、月の明るい夜に似合う話題で、好感が持てます。

諍いはいつも子のこと虫すだく  彩貴(40代,女)
 宜しくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 ちょっと寂しいような、それとも、ご夫婦の日常のユーモラスなのか、迷いました。それは、「虫すだく」だからでしょう。秋の虫たちの鳴き声は、たとえ大勢であっても、どこかしら寂寥を感じるものだからです。投句の「虫すだく」を否定しているのではありません。心情をはっきりとさせたい場合には、下五を変えられると良いです。より共感を呼ぶでしょう。

(1)鴨来る夕べの鐘を聴いてより  走(男)
(2)川の上と下に初鴨の群二つ
(3)初鴨の一羽よく啼く群を違(たが)え
(4)初鴨の降りてほどなく夕月夜
(5)初鴨のけさは飛びたつ町の川
(6)初鴨の数羽は残る濁り川

 よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 初鴨六句ですね。私は、「鴨渡る明らかにまた明らかに(高野素十)」が好きです。一つの季題で、沢山つくってみることは、とても良い勉強になります。
 六句では(1)が一等良いです。それは、鴨の来る夕方に、「鐘」という音があるからです。鴨の来るころの秋は、静かな季節になってきているころ。そこに、鐘が鳴り、鴨が飛来する。映画のワンシーンのようで抒情を感じます。表現もまとまっていて、「夕べ」と「より」が効いています。
(3)(6)も、良い着眼です。他の句もきれいに仕上がっているでしょう。

(1)秋の水きらりと受胎したるかな  藤太郎(50代,男)
(2)片恋にうるうるうるむ次郎柿
(3)梨食んできみが喉(のみと)を浸す音
(4)新涼や電車来るまで五十分

 先月は星野先生ありがとうございました。坪内稔典先生の著作に惹かれ「船団」を知り、このHPにたどり着きました。今月から朝倉先生よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそ、よろしくお願い致します。
 独自の感覚を持っていらっしゃるとお見受けしました。言葉の使い方もこだわりを感じます。
(3)が、甘すぎることなく良いと思います。一方で、(2)は少し甘すぎるようですね。「うるうるうるむ」も、あまり効果的ではないように思えます。片恋と次郎柿の取り合わせは興味引かれますが。
(4)、五十分という微妙な時間を、私は評価します。新涼だからです。新涼の季節ではなければ、五十分なんて待てませんもの。この五十分は待てる最大の時間ではないでしょうか。
(1)、面白い発想ですが、句意に迷います。もう少し具体的にされると良いと感じます。

初秋刀魚友が勧めるエアロビクス  雀の子
 初めまして。まだ(若葉マーク)ですがよろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそ、拙い処方ですが、よろしくお願い致します。
 取り合わせ(言葉と言葉の組み合わせ)が愉快な一句で良いですね。「初秋刀魚」と「友に勧められたエアロビクズ」。「エアロビクス」が俄然、庶民的になり、生活の匂いがして、読者はおかしいです。きっと、友も作者も一家の主婦なんだなあ、とか想像してしまいますから。あまりにも、生活に密着した内容をそのまま句にしますと、読者はしらけてしまいますが、今回は成功しています。

スズメバチ勘亭流書体妖し  うさぎ(女)
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 面白い一句で良いですね。スズメバチの必然性が問題かもしれませんが、ユニークな取り合わせは失敗ではないと思います。勘亭流の文字の独特さと合っているようですし。ただ、少し好みが分かれる句かもしれません。

(1)虫鳴くや己が影伸ぶ散歩道  小口 泰與(60代,男)
(2)新しきカメラに収むカンナかな
(3)朝露やぶり返したる神経痛
(4)竜胆や駒子の街をのぞみをり

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)が良いですね。カンナの持つ強いイメージが、上手に使われています。普通ならば収まりきらない花、カンナを、新しいカメラは収めてしまえた、そんな情景が伝わってきます。
(2)は、少し平凡。神経痛という句材も使いにくいようです。
(1)(4)、きれいにまとまっていますが、読者への印象は弱いかもしれません。

(1)パノラマやアルプスの風爽やかに  しんい(60代,女)
(2)秋日濃しふいと余生を透かし見る
(3)糸瓜水在りし日の母思ひをり

 「在りし日の母の面影糸瓜水」は言い過ぎ・・・とご指導頂き、作り直してみたのですが。よろしくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 処方を読んで下さりありがとうございます。
 早速、(3)ですが、少し軽さも出て来て良いと思います。「糸瓜水」を上五に持ってこられたことも句をすっきりさせているようです。
(2)、優れた感性を感じます。「ふいと」が良いですし、秋日の持つニュアンスを良く捉えられています。夏の暑さも残ってはいるけれども、秋らしい澄んだ、静かな気配のある秋日。秋日ごしに「透かし見る」余生なのか、余生そのものを「透かし見る」と例えた表現なのか、読者を悩ます点であると思いますが、どちらでも句意の本質は変わらないと受け取りました。
(1)きれいにまとまっていています。


2006年9月8日

ホロホロと時雨浮き立つ蝉の殻  裸時(30代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「時雨」とは、雨の時雨(季は冬)なのでしょうか、それとも蝉時雨のことでしょうか。季節を考えますと、蝉時雨ですが、句の内容を取りにくい感じがします。印象としては、とても気になる俳句です。是非、読者が読み取れる表現を試みて頂けたら、と思います。

サングラスかけて座席をゆずりけり  fuji(10代,男)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 面白い一句ですね。興味を誘います。作者がサングラスの人を見ているのか、サングラスは作者がかけているのか、それはどちらでも良いでしょう。夏の季語であることが、句を軽くしており、良い効果を生んでいると思います。ひとつ言えば、「譲る」という漢字の方がベターでしょうね。

(1)ホームでの別れ惜しみて夏行きぬ  豊純(70才以上)
(2)子等送るコスモス揺れる別れ道
(3)婆さんもラジオ体操夏休み
(4)水打ちて一息つきぬ夕端居

 星野先生どうも有難う御座いました叉お会い出来る日までお元気でご活躍ください良い勉強になりました。“アリガトウ”
ドクター朝倉の診断と処方箋
 (1)が良いです。「夏行きぬ」が効いている一句です。ホームという場所もいきています。よくある情景かもしれませんが、すっきりと良い句に仕上がっていると感じます。
(2)こちらも、同じように、ごく普通の日常の一場面ですが、コスモスの可憐さが句を引き立てているようです。(1)同様、気持ちの良い俳句です。私は、読者の気分を良くさせる、ということを、俳句の持つ大切な力と考えています。
(3)、面白さが見えすぎていて、読者には逆につまらなく感じます。
(4)、ちょっとありふれすぎました。残念です。

猪垣を築かねばならぬこととなる  彩貴(40代,女)
 この2、3年猪の害がひどく、あちらこちらの田や畑がトタンなどで囲われるようになりなした。我が家でも丹精したかぼちゃが一晩で食べられてしまいました。その無念を表すことが出来ればと思います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「〜ねばならぬこととなる」という表現、面白く読みました。「猪垣の用なさぬほど荒れてをり(五十嵐櫻)」という句もあり、はなはだ迷惑な害獣でありますが、猪と人間の関係はユーモラスでもあります。そのあたりの、季語の本意を上手に句にされていると思います。少し散文のような文体が気にはなりますが、このような句が自身の作品にいくつかあっても良いと思います。


2006年9月7日

(1)千切れ雲落ち蝉急に飛び立てり  しんい(60代,女)
(2)図書館の渡り廊下や虫の声
 よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 どちらの句も、美しい情景が目に浮かびます。読者に句の風景を伝えることができるのは、大切なことだと思っています。
(1)は、雲=空、落ち蝉=地上、飛び立てり=空、と視線がめまぐるしい感じもするので、上五を推敲なさっても良いかもしれません。
(2)は、中七を「渡り廊下に」にされてはいかがでしょうか。「や」切れを用いるほど、強く切る必要もない気が致します。もちろん、「や」を使用することが間違いということではありませんが、ここでは、「虫の声」が主役ですから、虫が鳴く場所を指定する「に」が良いと思います。

(1)東京は村の子多し昭和の日  学(50代,男)
(2)湯たんぽを足蹴にしてや写楽の絵
(3)山国を干してさくさく芋茎かな
(4)なぞなぞの解けて母子のしぐれかな
(5)風花や肉体いまだ日の匂ひ
(6)うまかりや雪の下なる雪の下
(7)寒立馬落武者たちの墓標かな

 ご教示を。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(3)(4)が良いですね。
(3)は、芋茎を干す様子が、まるで山国を干しているようであるほどの、沢山の芋茎、と読みたいところですが、「さくさく」とありますので、今食しているようにも思えて迷います。しかし、秋の山里の雄大さが好ましい一句です。そこで「山国に」とすると読みやすくなるのですが、作者の真意ではないでしょうか。
(4)、一句のリズムも良いですし、母子の日常がとても良い感じです。「母子の」の「の」のような使い方を嫌う場合もありますが、句意を邪魔しないので許容されると判断しました。
(2)、「写楽の絵」と中七の「や」の必然性が疑問です。
(5)、冬になりましたら、読者も実感できる句でしょう。
(7)、興味引く取り合わせで、個人的には好きすが、(6)同様、読者に読み取ってもらえないこともあるかもしれません。
(1)、川柳っぽい感じですね。

(1)かなかなや母の籠りし書斎室  fuji(10代,男)
(2)朝涼の隣の町へゆく支度
(3)風鈴のやんで恩師の書斎室

ドクター朝倉の診断と処方箋
 不思議な感性をお持ちですね。もちろん、良いことです。
(1)、とても良いですね。一句の姿(言葉の選択、つなぎ方など)もきれいですし、季語が活かされています。そして、情感も静かに込められています。蜩の声しか聞こえない静謐な情景を感じます。その情景は読者の心に美しく響くことでしょう。
(2)、こちらは、ちょっと楽しい愉快な気分。朝涼が、句の気分を軽快にしていますね。少々言葉の練り具合が少ない気もしますので、下五を変えられてみるのも良いかもしれません。
(3)、平凡な感じを受けます。きれいな情景ですが。

秋の日の子を守る夫の膝温し  かえるちゃん(30代,女)
 こんにちは。朝倉ドクターの診断は懇切丁寧なので、とても楽しみです。今回は子ども(3ヶ月)と夫を登場させてみました。句中の「夫」は「つま」と読ませます。
 お願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 恐縮です。ご期待に添えるようがんばりたいです。
 さて、投句ですが、一句として完成していると思います。が、少々言わせて頂くと、ちょっとオノロケを感じるのですね。お子様とご主人様への思いが、句から溢れているのです。それはそれで良い俳句なのですが、一歩感情から引いて作る俳句も良いものです。読者を意識することにつながると思いますね。


2006年9月6日

(1)囮出来て声のあふれる水曜日  裸時(30代,男)
(2)梅もどき猫ちゃん通るMRI
 「船団」が届きました。朝から待ってたって暇そうかなぁ。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「船団」はいかがでしたでしょうか。楽しみにして下さってうれしい限りです。
(1)、上五は、「囮出来」(もしくは「囮でき」)で良いと思います。また、なぜ、水曜日なのか、という問題もありますが、それはそれで、構わないのではないでしょうか。あえてウイークデイの真ん中の日、ということで。
(2)、「猫ちゃん通るMRI」が、ちょっと厳しいですね。どうしても、「MRI」に「猫ちゃん通る」がかかってしまいますから、検査室に猫がいるような情景になってしまうからです。一方で、「猫ちゃん通りMRI」としますと、猫とMRIの検査が、「通る」より自然に繋がります。しかしながら、梅もどき、猫、MRIの取り合わせは面白いです。

九月来るジャズと小雨とチョコレート  穂波(30代,女)
 初めまして。穂波と申します。俳句は暫らく前からぽつぽつ作り始めました。「季語」と「五七五」しか知らない、全くの自己流です。教えていただける場を探していて、このサイトを知りました。基礎・基本など分かりません。よろしくご指導お願いいたします。私の住む東京近辺では、昨日8月31日は晴れて真夏日、今日9月1日は肌寒い小雨でした。それで上の句ができました。体調があまり優れないため、ご指導いただいてもすぐに再投稿できるとは限りません。その旨ご理解いただければありがたく存じます。ではよろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 初めまして、DR.の朝倉です。e船団をお知り下さり、投句して頂けるのは喜びです。歓迎致します。投句のペース、有無は全くの自由です。処方がつまんなくて・・・という場合もありえますしね。(^^;)
 さて、投句ですが、やはり感性がお若くて良いです。また、意識的か無意識か、一句のリズム(簡単にいうと、言葉の流れ)もありますよ。「ジャズ」「小雨」「チョコレート」の音数が、順に2音、3音、5音となっているからです。(*ジャ=1音と考えます。)情景も、秋の9月らしいと思います。ちょっと、初回から理屈を言ってしまいましたが、俳句は感性あってこそのものです。
 是非、自分らしい句をお作り下さいませ。技術はいくらでも学べますもの。

(1)いなびかり神の手足の詳らか  詩音(40代,女)
(2)缶蹴りの缶はどこかへ赤蜻蛉
(3)星月夜金貨を敷いて眠ろうか
  
 星野ドクター、2ケ月間のご診断ありがとうございました。朝倉ドクターはじめまして!どうぞよろしくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそはじめまして!よろしくお願い致します。
 三句拝見。(2)が優れていると思います。赤蜻蛉が良く効いている内容です。単なる郷愁に仕上げず、缶蹴りの缶の行方と取り合わせたことが秀逸でしょう。下五に赤蜻蛉を持ってくることにで、より空間的時間的広がりを生んでいます。赤蜻蛉の特性を上手に使っておられます。
(1)、「神」に迷いました。教会のキリスト像なども想像しましたが、厳密にいうと「キリスト」=「神」ではないのですよね。抽象的な「神」として読むべきかとも考えましたが、「詳らか」ですから、それも苦しいような気もします。発想は独特で興味深いのですが、読者が迷う句ではないでしょうか。
(3)面白く感じました。より具体的に考えると、読みも意見も分かれるところだと思いますが、星月夜なのでイメージで読むのも許されるかな、と思ったりしています。

蜩や傘寿の耳に心地よく  加護坊(70才以上,男)
 秋です。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「傘寿の耳」が面白いですね。オリジナリテイがあります。初秋のムードが良く出ています。傘寿という年齢に合っているかどうかは、賛否があるかもしれませんが、俳句として良いと思います。下五の「心地よく」が少し言い過ぎている感がありますので、推敲の余地があるでしょう。

台風過夏澄みわたる富士見坂  棋鶴(50代,男)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 澄み渡る空と空気の富士見坂。気分はとても分かります。が、台風は秋の季語なので(野分なども秋)、是非、その気分を秋として一句にさなって下さいませ。

八月やわたしにセルロイドの嘴  うさぎ(女)
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 セルロイドの嘴とは、何の嘴なのでしょうか。何か鳥の模型でしょうか。暑い最中、挑戦的に自分に向かってくるもの、という風に受け取りました。少し、独断すぎる読みかもしれません。暑さの厳しさを、向けられた嘴で強調させているとも取れるのですが、もう少々、具体的な方が読者が読みやすいのでないでしょうか。

(1)月の道ネオンの街を後にして  文の子(60代,男)
(2)屋上の小さき庭園野分中
 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)の着眼が良いです。屋上の小さな庭園の可愛さが伝わってきます。野分の中だからこそ、そのいじらしさのようなものが際立つのでしょう。一方、(1)は、抽象的な表現に賛否がありそうです。月明かりそそぐ月夜の道と受け取りましたが・・・。ネオンの街との取り合わせも、好みが分かれると感じます。しかしながら、どちらも一句として整っているでしょう。

(1)嬰洗ふごとてのひらの黒葡萄  しんい(60代,女)
(2)ひたすらに無花果煮詰む夕厨
 よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 二句とも素敵な句ですね。素敵、という言葉は、たやすく使わないよう気にしているつもりですが、やはり素敵な句と感じました。それは、情景も良いのですが、言葉の選択に感性を感じるからだと思います。
(1)、古臭くなりがちな「嬰」ですが、ここでは成功しているでしょう。「黒葡萄」も、良い具合にクラシカルで洒落ています。「てのひら」が平仮名表記なのも適当ですね。あえて、申しますと、「てのひらの黒葡萄嬰洗ふごと」とも出来ます。
(2)も、無花果と夕厨がぴったり合っています。「厨」も古い言葉ですが、無花果を煮込む料理(ジャムやあま煮などを想像します。)には、不思議とマッチしていると感じます。眼前に、ありありとそのお台所の様子が浮かびます。一種の憧憬も感じながら。

(1)今年はや商談会や稲の花  小口 泰與(60代,男)
(2)蕎麦の花浅間の水の澄みにけり
(3)曙の稲穂の風を身のうちに
(4)せせらぎと語らふやうや蘆の花

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(3)の情景と心情のマッチングが良いと感じます。「身のうちに」という表現は、俳句にままありますが、「稲穂の風」という爽やかなものを持ってこられたことで、平凡にならずに済んでいます。曙のいう限定した時間も良い作用を生んでいるのではないでしょうか。上五は「曙や」としても良いかもしれませんね。
(1)、なぜ「はや」なのでしょうか。
(2)、蕎麦の花咲く情景が美しいです。「浅間の水も」とされるのも、軽い強調が含まれて良いと思います。
(4)、少し、言いすぎでしょうか。内容が、メルヘン、抒情的ですから、あまり説明してしまわない表現の方がさっぱり読めるでしょう。


2006年9月5日

(1)駐禁のコーン続くや秋暑し  文の子(60代,男)
(2)雨用を日傘となせる男かな
 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、とても良いですね!残暑を見事に表現されています。それも、オリジナリテイ溢れる表現です。句の調べもゴタゴタもたつかず良いでしょう。昨今は、駐車禁止の取り締まり強化でいろいろ話題がありますが、こんな風に詠まれたら脱帽ですね。
(2)、こちらも、面白みがあって良いです。きもち、川柳のような感じも受けますが・・・。でも、正しく俳句であります。

(1)炎昼の宙に飛び立つ遊撃手  学(50代,男)
(2)しゃぼん玉人を押し出す断崖のビル
(3)新緑や先ずは神輿をかつぐ役
(4)月影の波打つ島の座頭かな
(5)一礼の別れ蕎麦挽く水車かな

 ご教示を。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)(4)がとても良いですね。(1)は、「炎昼の宙に飛び立つ」という表現がとても良いです。遊撃手、ショートの選手の様子が活き活きと伝わってきます。
(4)、少し、センチメンタルといいますが、抒情に流されてしまいそうな一句ですが、「座頭」という言葉が句を締めているようです。良い情景ですね。
(5)、「別れの一礼水車蕎麦を挽く」ではいかがでしょうか。「一礼」と「水車の動き」をより対比させて際立たせたつもりです。
(2)、しゃぼん玉が句の中で生きているか・・・難しいところです。「断崖のビル」も句を難解にしそうです。
(3)、少し平凡と感じました。

写楽の眼ブォーブォーと牛蛙  うさぎ(女)
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 牛蛙の眼が写楽の眼のようだ、ということでしょうか。この表現では、少し意味が取りづらいと感じます。発想は、とても面白くて良いですから、是非ご再考をなさって下さいませ。例えば、「写楽の眼をして」とすると、はっきり伝わりますね。田舎で毎晩鳴いていた牛蛙を楽しく思い出しました。

(1)新涼や素足に下駄の快き  小口 泰與(60代,男)
(2)秋の田の雀の羽音響きけり
(3)朝日うけ炎立ちたるカンナかな
(4)大文字草思ひのほかに蘂長き

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(4)が良いですね!大文字草を的確にとらえられ、なおかつ中七の「思ひのほかに」が効いています。「大文字草滝音に揺れ花こまか」(久住野臥丘)という句もあります。着眼点の違いはあるものの、どちらも大文字草の可憐さが感じられる句です。
(1)、気分はとても分かるのですが、「素足」は夏の季語で、「素足に下駄」という感覚も夏のものと浸透していると思います。残念!
(2)、少し平凡。私などは田舎育ちなので、郷愁を感じますが、表現も平凡でしょう。
(3)、カンナの燃えるような様がよく表現されています。「朝日うけ」の「うけ」が少し気になります。「朝日(朝陽)」は良いので、推敲の余地があるかもしれません。

動脈のタクシー来てるほおずきの  裸時(30代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「動脈のタクシー」というのは、タクシー乗り場の様子でしょうか。つぎつぎとお客を乗せては去り、また空車が来る様を動脈に例えられたと受け取りました。そして、そこにほおずきの実がなっていた、と。しかし、ちょっと意味が取りにくいですね。
 動脈、静脈などの発想はとても個性的で良いのですが、やはり俳句はより多くの読者に共感されてこそだと思います。そういう意味で、今回は読み手にとって少し厳しかったですね。表現に推敲の余地があるでしょう。


2006年9月4日

(1)アルバムのセピア八月十五日  文の子(60代,男)
(2)残暑かな燭消えなんとして炎
 朝倉ドクター昨年はご懇篤なるご指導を賜り有難うございました。「「女子高生薔薇は七分を見頃とす」は、なかなか鋭い感性と表現の一句です。」と褒めて頂き、俳句について一皮剥けたと思いました。今回もどうぞ宜しくお願い申しあげます。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 いえいえ、こちらこそでございます。熱心な投句のおかげで、とてもお勉強させて頂きました。よろしくお願い致します。
(1)、良いと思います。中七の真ん中で切れていることも、八月十五日を詠むということと合っていることでしょう。あえて、何も感情を具体的に表現しないことが、句を読者に委ね、結果として豊かな読みを可能にしていると感じます。
(2)は、「燭消えなんとして炎」が、少し説明くさいでしょうか。残暑の情景としては良いと思いますが、もうひとつ表現の工夫があるとより良くなりそうです。

木瓜の実の 暑さ閉じこむ その頑固  浅葉洋(70才以上,男)
 灼熱の夏の暑さに負けじとの、ぼけの実の姿に感嘆して、思わず口に上りました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 ユニークな面白い着眼、発想ですね。難といえば、少し句の調べ(言葉の流れ)が固い感じです。
 例えば、「頑固さや暑さ閉じこむ木瓜の実よ」としてみることもできます。上五で一度切れますので、句にアクセントができます。もちろん、投句のように、「の」の音の連続を楽しむ方法もありますが、今回はあまり生きていないようです。「頑固さや〜」は、あくまで一例ですので、浅葉洋さんのご再考を是非。

(1)粒あんと濃い目のお茶と九月かな  ナッチ(女)
 俳句になっていますか・・?
(2)バス停で目と目がさよならカンナ燃ゆ
ドクター朝倉の診断と処方箋
 ナッチさん、こんにちわ。
 俳句になっていますか・・?とお尋ねですが、作者が俳句として詠めばそれは俳句です。でも、少しでも読者の共感を得るような句にしたいですよね。そこで、より良い俳句へと、みな努力しているのではないかしら。
 さて、(1)ですが、素直で楽しい句ですが、少し整理しましょう。例えば「九月かな濃い目のお茶に粒あんと」。ちょっとすっきりした形になってはいませんか。これが、推敲で、ひとつのテクニックですね。
 (2)、「カンナ燃ゆ」が印象的に使われていて良いですね。こちらは、中七を「目と目のさよなら」にすると意味は変わら ず、「が」よりも優しい印象になります。いかがでしょうか。どちらもナッチさん固有の感性を感じます。

キッチンに灯を入れをんな家となる  遅足(60代,男)
 星野先生、ありがとうございました。朝倉先生よろしくおねがいします。「キッチンに灯を入れ秋の家となる」とも考えてみましたが、どちらが良いでしょうか?
ドクター朝倉の診断と処方箋
 遅足さん、お久しぶりです。よろしくお願い致します。
 投句ですが、「秋の家」が、ベターではないでしょうか。少し抽象的ですが、それが句の魅力になると思います。「秋」という愁う季節だから成功するのでしょう。読者が、それぞれの「秋の家」を想像する、そんな句になるのでは。「キッチン」という明るい軽さの言葉も、句を必要以上に重たくせず、成功の要因です。逆に、「をんな」ですと、少し俗っぽくなると感じますね。

白桃を供す赤絵のえくぼ皿  涼(70才以上,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそよろしくお願い致します。
 良い句だと思います。そして、素敵ですね。感性に感激しました。「白」と「赤」の対比が狙いすぎて嫌味になりそうなところを、「えくぼ皿」が上手にフォローしています。子どものいる家庭を想像したり、静かなご夫婦の日常を想像したりと、思いの膨らむ秀句です。落ち着いた明るさのある句です。
 「供す」という言葉は、供物とは限らずに読みました。美しい日本語が、句に生きています。

野分過ぐあれこれ思ふ夜となれり  いろは(60代,男)
 「あれこれ思ふ」…は、変でしょうか?
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「あれこれ思う」という言葉は変ではありませんし、俳句に使えないこともありません。句の中で、上手に生かすことができれば良いのですから。
 投句は、「夜となれり」と続きますから、少し散文的すぎるのではないでしょうか。「野分過ぐあれこれ思う夜ひとり」などとするのもひとつです。また、下五を思い切って変えてみても、野分の生きる魅力的な句が生まれる可能性がありますね。

(1)榛名湖を吹き渡りしや花芒  小口 泰與(60代,男)
(2)山分けて坂東太郎秋の雲
(3)雨止みて黄昏時の花野かな
(4)鈴虫の鳴き初めし音や夕間暮れ

 朝倉先生、二ヶ月間よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそ、再会うれしく思っております。より良い回答ができるよう努力致します。
 僭越ながら、前回よりも随分、句にリズムを感じます。切れ字にも工夫見られます。
(2)が愉快で、秋の気分がよくでていて良いと思います。「山」「坂東太郎(川)」「雲」と、少し材料が多い気もしますが、句の気分の良さに助けられていることでしょう。勢いも感じ、好きな句です。
(1)は、花芒が吹き渡ったのでしょうか。それとも風でしょうか。ちょっと句意に迷います。
(3)(4)、良い情景ですね。語順に工夫の余地があるかもしれませんが、素直に仕上がっていると思います。

在りし日の母の面影糸瓜水  しんい(60代,女)
 朝倉ドクター初めまして、よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそはじめまして。よろしくお願い致します。
 俳句拝見しました。少し言い過ぎてしまっているでしょうか。母と糸瓜水の組み合わせは美しいのですが、作者の思いが出すぎている感がします。句として表現し過ぎることは、句をつまらなくしてしまいます。特に、季語「糸瓜水」は、子規の句「をととひの糸瓜の水も取らざりき」などもあり、強い言葉ですから。同じく強い言葉「面影」をやめられて、「在りし日の母」と「糸瓜水」で作ってみられてはいかがでしょうか。