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俳句クリニック 2006年9月前半分(ドクター:朝倉晴美) 「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。
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| 9月と10月の担当ドクターは朝倉晴美です。 | |
| <プロフィル> 「秋晴れを抱いているのだ大けやき」5年ほど前の自句。秋は空気が澄んでいて、体 中も澄み渡っている感覚。そんな気分を句にできるとうれしい。 目下ヤンチャ娘の子育て中ですが、今しかない感性を俳句に生かせたらなあ、と思っ ている日々です。よろしくお願い致します。 | |
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ドクター朝倉の診断 |
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2006年9月30日 ニャーといい秋のとかげをぼくに見せ 汽白(40代,男) よろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「秋のとかげ」が良いです。猫が獲物を見せにくることには、新しさはありませんが、「ニャー」と「秋のとかげ」が、句を新鮮にしています。また、「ぼく」も、人物の年齢が限定されないので面白くなっています。 (1)秋晴や妻のキャディを兼ねてゐし 文の子(60代,男) (2)顔識らぬ祖父の忌日を曼殊沙華 中7を「を」としました。「や」でしょうか。宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)、客観的な視点と曼殊沙華が、とてもよく響いています。忌事は、もちろん悲しみの場であるのですが、一面で滑稽なことも結構あるものです。そんな浮世を上手に句にされています。「や」にせず、「を」にしますと、「そんな忌日のおかしさを、曼殊沙華が見ている」というように読め、曼殊沙華の存在が強調されます。「や」切れも悪くなく、収まりはいいですが、「を」よりは平凡になるでしょう。 (1)、奥様自慢、妻孝行自慢と読みそうなところを、「秋晴れ」という晴れやかな季語が救っています。 遠き人 忘れぬと咲く 曼珠沙華 浅葉洋(70才以上,男) 先生のご高評いつも大変勉強になります。決まってお彼岸に咲くこの花、不思議と思っています。何か宇宙の輪廻みたいなものを感じ、詠んでみました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ、皆様の投句によって、気づくことが多くあり、感謝しております。 投句は、曼珠沙華の仏教での意味、ー天上で咲くというー感じさせます。そうしますと、少し「 遠き人 忘れぬと咲く」がくどいでしょうか。「遠き」か「忘れぬ」どちらかで、句意は伝わりそうです。 (1)払ひしも払ひしもある蜘蛛の糸 雀子(60代,男) (2)FMのラ・クパルシータや秋桜 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)、ラ・クパルシータの曲を知っている読者には、気分の良い一句でしょう。固有名詞は、読者を選んでしまう面がありますね。 (1)、うっとうしさが出ています。もう少し、ユーモアがあると良いなあと感想を持ちました。 (1)葛の花餡この匂いとまた言うた 豊田ささお(70才以上,男) いま悩んでいるのは、口語表記にしようか?文語を習おうか?ということです。一回だけクズ花餡を作り、あまりの手間に辟易して、でも花見るたびにいい匂いが思い出されるということなんですが・・・ (2)谷越ゆる目線ヤンマを外さざり 今回、なんとなく、こんなになりました。一日20句作る人も居られるに、私は四苦八苦です。 ドクター朝倉の診断と処方箋 口語か文語かという選択は、やはりご本人次第だと思っています。文語ならではの語感や表現があると同じように、口語は口語の魅力があります。 二句拝見、どちらも、秋の気持ち良い情景ですが、少し言葉を整理いたしましょう。 (1)、「葛の花」で切れるのか、「葛の花餡」で切れるのか迷います。「言うた」のが誰なのか、はっきりすると句の魅力が伝わるでしょう。 (2)、ヤンマは谷のうちにいるのでしょうか。せっかくのヤンマの存在があいまいに思えてしまい残念です。 銀河には銀河の言い分メイル来る 北野元玄(60代,男) いつも懇切丁寧なご講評を感謝しております。秋は毎年少々うつ状態におちいるの ですが、大袈裟でなく、何か生きている張り合いがあります。有り難うございます。 里芋と駅の推敲を重ね、「里芋は無窮な駅で途中下車」としてみました。秋の鬱的な 気分が出ているのではないかと思います。揚句のご講評よろしくお願いいたします。 メイル来るが平凡すぎます。本当は大相撲のしころやま親方の名前を使って「・・銀 河の言い分錣山」としたいのですが。錣山親方は現役中は関脇まで上がった寺尾とい う、金星銀星を沢山上げた人気力士でした。 ドクター朝倉の診断と処方箋 たいへんうれしいお言葉、大切にさせて頂きます。こちらこそ、頑張る元気がでます。 「里芋〜」の句、面白さと不機嫌な気分が感じられて良いです。 「銀河には銀河の言い分メイル来る」は、言い分が何なのか、迷いますが、メールが夜空を飛んで来る様子が楽しいです。一方、「銀河には銀河の言い分錣山」は、面白く読める句です。こちらですと、言い訳が、錣山と繋がりますので迷いません。現役の寺尾時代から特徴ある力士でしたから、なお納得して読めそうです。私たちの世代でも力士寺尾は身近です。 (1)少年の宝のごとき鬼やんま 涼(70才以上,男) (2)出来秋や頬被りして佇つ男 (3)銀杏の鏤められし古窯かな 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、少年らしさが気持ちの良い句ですが、「ごとき」が安易な感じを受けました。 (2)、「佇つ男」に、ある種の雰囲気がありますが、平凡と思う読者もいるかもしれません。 (3)、「銀杏」と「古窯」が、渋いですが美しい光景です。少し、インパクトが弱い気もしますが、きれいにまとまっています。 赤稲穂一人異国にたたずみぬ 豊田ささお(70才以上,男) 緑米の中に「紅吉兆」という抜きんでて赤い穂が出ました。友人が「赤稲穂おまえはどこの家の子ぞ」というのを作りましたので、そのお返しです。こんな遊びをやっています。 ドクター朝倉の診断と処方箋 古代米の句で、赤稲穂の擬人化と取りました。古代米にある悠久さを感じながら読みました。インド辺りが発祥とされる米。中国を経て日本に来たようです。そんな雰囲気のある句です。 2006年9月29日 (1)それぞれの傘にリズムや秋の雨 藤太郎(50代,男) (2)実直に路上の白線十六夜 一句の中から、できる限りよいところを引き出して読み込んでくださるドクター朝倉の診断に感謝申し上げます。また、ご診断よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 過分なお言葉、恐縮ですが、うれしく頂戴致しました。私にとっても、大変勉強になるクリニックなのです。 どちらも良いです。それぞれに、違った良さがあります。 (1)、秋雨を楽しむような気分が、実に上手に表現できています。子供の傘であっても大人の傘であっても、「リズム」があるなんて、とても素敵です。 (2)、こちらは、十六夜らしい大人の気分です。精神的な老成も感じます。実直な白線に対し、満月から一日分欠けている月が、微妙な違いがありながらも取り合わせとしてぴったりなのです。 (1)踏切の待つ人なくて彼岸花 風葉(60代,男) (2)無精髭を丁寧に剃る秋の昼 ご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 どちらも心惹かれる情景です。自分自身をかえりみるような句です。 (1)、秀逸です。特に「待つ人なくて」です。もちろん、踏み切り(最近は高架が多くなりましたが)、彼岸花の取り合わせも妙です。 (2)、自ら剃る男性でも、その人を見る女性でも、秋の昼特有の静けさや澄んだ感覚にぴったりの句です。秋の「朝」でも「夕」でも、この句の良さは出ません。 猫じゃらしおいでおいでと散歩道 春雪(70才以上,男) 【作句意図】夕方に散歩していましたら、風に靡く猫じゃらしが、手招きしてる様に見えました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「猫じゃらしおいでおいで」が良いですし、楽しいです。それだけに、下五が少し残念です。風がある様子を表現する下五にされてはいかがでしょうか。 (1)秋晴を上目に首のコルセット 文の子(60代,男) (2)横からの木犀首にコルセット 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 どちらも、コルセットとつけるいまいましさのようなものを感じます。それでも、一方では秋を楽しもうとする気持ちも。「秋晴」は気持ちが良いですし、「木犀」も香が良いです。どちらも、心が優しくなれる季語であることが、成功でしょう。 (1)還暦のグラスは静かに酔芙蓉 三郎(60代,男) (2)条幅の文字の遊びやいわし雲 よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「静かに酔芙蓉」が良いです。言葉の流れもきれいです。還暦の静かな心持ち、そして、自ら楽しむ気配も感じられます。 (2)、条幅といわし雲の取り合わせが、とても良いです。秋の天の高さや、気持ちの大きさが充分に伝わってきます。「文字の遊びや」は「遊び」が、言いすぎてしまっている感も受けますが、いかがでしょうか。 (1)嬬恋に白き波あり蕎麦の花 小口 泰與(60代,男) (2)猫じやらし下校の子等の家遠し (3)コスモスや朝(あした)の風に逆らわず (4)コスモスや暮かかり来し竹の風 よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「嬬恋に白き波あり」と、言い切った表現が良いです。地名にしたことも、地名の選択も効果的です。素朴な蕎麦の花が似合う句です。 (2)、田舎のこどもたちの情景ですね。猫じゃらしよりも、もっと田舎らしい草花だと、インパクトが出ると思います。 (3)、少し観念的になっていないでしょうか。観念的な句が良くないわけではなりませんが、出過ぎるとしんどいです。 (4)、コスモスと竹、という植物の取り合わせは、どうでしょう。少々チグハグかもしれません。 不用意なひと言よりの愁思かな 彩貴(40代,女) 後でしまったと思う事がよくあります。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「不用意な一言」と「愁思」、ぴったり過不足なく合っています。難を言うならば、「よりの」と「かな」でしょうか。どちらも少々、安直な使い方に感じます。作者が安易に用いたとは思いませんが、読者がそう感じると損です。 2006年9月28日 赤蜻蛉吾も止まり木さがしをり 豊田ささお(70才以上,男) いつもこまやかなご指導、深く感謝です。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ、恐縮ですが、うれしく拝読いたしました。 深い人間の心や人生を感じます。しかしながら、まったく押し付けがましくない句で良いです。赤蜻蛉という季語も、孤独さのような負のイメージが弱く、句を必要以上に重たくしていません。句に深みがあります。 (1)天高し洗濯物の万国旗 穂波(30代,女) (2)屋根に月のせて車は我が家へと 子供の言葉を俳句にしました。子どもの口から飛び出してきた言葉は、新鮮で驚きと歓びに満ちていたのに、それをうまく活かしきれませんでした。よろしくご指導お願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 二句とも、とても良いと思います。非常に感性が優れていて、表現とよくあった句になっています。ただ、私も子育て中ということで、無意識の共感があるのかもしれません。賛辞を述べながら失礼かと思いましたが、句の読者は複数だと意識して頂きたく申しました。 しかしながら、(1)は、季語もまったく揺るぎません。ぴったりです。 (2)、「我が家へと」が、幸せな家族を想像させます。クリスマスや年末年始に家族を詠みますと、感情が濃くなりがちで読者はしんどいのですが、月夜の晩ですと、さりげない感じに好感がもてます。 (1)直列につなぐ電池や秋うらら 詩音(40代,女) (2)掌に乗らぬ小鳥の来てをりぬ (3)縁側に残す足あと秋彼岸 いつも丁寧にご診断いただきありがとうございます。20日に診ていただいた句、「はないちもんめこすもすと子どもたち」と推敲しました。今回もどうぞよろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ、熱心な姿勢に励まされております。 「はないちもんめ〜」シンプルですが、良い句でしょう。 (1)、良いです。「直列」という表現が、とても効いています。「秋うらら」、あまたある秋の時候を指す季語なかで、良い選択です。この二点が、のどかさの中に、きりりとした気持ちも感じることができる仕上がりになっています。 (2)、機知にとんでいています。その、クールな視点が句の魅力になっています。 (3)、「縁側に残す足あと」までは、平凡なのですが、「秋彼岸」で情景がふくらみます。物をいわない足あとから気持ちを感じます。 (1)紅天狗茸小人出てくるかもしれぬ せいち(60代,男) (2)パンプキンパイのやうなる茸かな (3)「乗らねかと」軽トラと止まる里の秋 前回の「長く声引いて遠くに鹿の声」、云われみると確かに少し想像性に欠けています。何時か推敲します。今回もハイキング中でのものです。よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、(2)ともに、メルヘンの世界を感じます。ストレートな口調の句ですが、茸狩り真っ盛りの今にはぴったりな句でしょう。 (3)、なんて素敵な光景なのでしょう。田舎育ちの私には、懐かしい限りです。まさに、「里の秋」の情緒で、気持ちも良い一句です。また、〈「乗らねか」と軽トラ止まる里の秋〉ではいかがでしょうか。 ポテトチップス来て仮面舞踏会 北野元玄(60代,男) 「里芋と駅」の句についてのご講評、ありがとうございました。「里芋の煮られて予定調和かな」「里芋の煮えて嬉しくなる根拠」などと推敲しておりますが、甘ったるくていけません。今日は、改めて揚句について、ご講評をお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 なんだか、愉快な句です。仮面舞踏会の妖しい魅力がありつつも、ポテトチップスの登場ですから、その落差も楽しめる句になっていると思います。句に不思議が漂っていて、それが魅力になっているようです。 また、「里芋」の句、楽しみにしております。 (1)秋あかね親友ひとり見送りぬ 加護坊(70才以上,男) (2)病室の窓を横切り鳥渡る ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「秋あかね」の持つ雰囲気が、親友の死を美しく伝えているように感じます。「秋あかね」とう言葉自体も、句を優しくしているでしょう。 (2)、「鳥渡る」が、気持ちを明るくさせます。「鳥渡る」を上五にしますと、句にアクセントやインパクトがでそうです。 (1)畑耕至着信待ちぬ秋の昼 光子(60代,女) (2)車椅子菊の香ききて笑みし母 (3)筆まめになれとゆるるや実紫 (4)雑踏の中すり抜けて竈馬 (5)夕化粧いろ咲き分けて匂い分け 朝倉先生はじめまして宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそはじめまして。よろしくお願い致します。五句拝見しました。 (3)、(5)に特に魅力を感じます。 (3)、実紫の擬人化がとても良いですし、筆不精を叱咤する面白さがあります。「ゆるる」も、効果的に働いています。 (5)、発想と表現、どちらも評価致します。 (4)、都市ならではの一句。実際はどうか、などということは問題ではないと思います。竈馬の生命力と現代社会との関係が面白く出ています。竈馬を、自分を含めた人間と見ることも可能で、句意も深くなります。 (2)、光景も、情緒も伝わってきますが、少々、感情が出すぎているように感じました。家族を詠むことは、なかなか難しいですね。 (1)、「着信待ちぬ」が、活かしきれているかどうか迷います。 (1)こすもすや味も豊かな佐久の鯉 小口 泰與(60代,男) (2)朝露に丸く映りし朝月夜 (3)ひねもすの雨に秋薔薇ふふみけり (4)記憶より短き道や運動会 (5)稲雀にわとり小屋へ大うねり よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 毎回ご熱心な投句、気持ちが引き締まります。今回の五句は、どれも秋の雰囲気がよく出ています。 (2)、表現も風景も、その気分とよく合っていて良いです。「ひねもす」、「ふふみけり」という古い言葉が、句の雰囲気をより伝えることに成功しています。 (5)、「大うねり」に秋雀の快活さがよく出ています。「にわとり小屋」が田舎の風景を表していてのどかです。 (4)、愉快なノスタルジーですね。 (2)、「朝露」と「朝月夜」の『朝』が重なることが気になります。 (1)、こすもすと鯉の取り合わせ、秋らしいような、少しくどいような、と感じました。 (1)萩の寺一叢の白たおやかに さくら(女) (2)曼殊沙華秘密の小箱開けてみよ (3)気がつけば古希過ぎており薄紅葉 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「たおやかに」がとても良いです。色にそのような表現を持ってこられたことが、萩の花を印象的なものにしています。萩寺は、よく使われる句材ですが、「一叢の白」と「たおやかに」の表現が、その萩寺を平凡にしていません。言葉の選択が素晴らしく、成功の要因です。 (2)、曼殊沙華から、「秘密の小箱開けてみよ」への転換が秀逸です。曼殊沙華独特のイメージ、雰囲気を、実に独創的に表現されています。しかしながら、独りよがりになることなく、読者を納得させる句でしょう。 (3)、きれいにまとまっていて、共感も呼ぶ句だと思いますが、「薄紅葉」が似合いすぎているかもしれません。 2006年9月27日 (1)酒気無くも受けし追突酔芙蓉 文の子(60代,男) (2)秋暑し首を固めむるコルセット 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 二句拝見しまして、ご災難であったこととお察しします。 (1)は、好き嫌いが分かれそうな句だと思います。「酔芙蓉」の評価も難しいですね。 (2)、ムチウチのうっとうしい感じが出ています。(1)と抱き合わせで読まないほうが、重たくならずに良い気が致しました。 芋をむくくるり地球の皮をむく 遅足(60代,男) 白露の診断ありがとうございます。上五を考えてみます。これは思いつきの句です。くるり、が、今ひとつと思います。やはり発想に無理があるでしょうか? ドクター朝倉の診断と処方箋 いえいえ、楽しく、機知に飛んだ良い句だと思います。とても秋らしくもあります。秋は、大地の恵みを感じることが多い季節ですから、地球という例えも、気分を盛り上げてくれるでしょう。上五で切れ、「くるり」という擬態語に続く語順も良いですし、「むく」と「く」の連続がリズムを生んでいて、より楽しくさせています。 贈られし近江の柿は円らなり 涼(70才以上,男) 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「円らなり」がなんとも良いです。改めて辞書を引きますと、「まるいこと。まるくふくらかなこと。(広辞苑)」とありました。柿は、とても多く詠まれていますが、投句は、まったく使い古された感じが致しません。それは、「円らなり」の言葉が持つ力ゆえでしょう。「贈られし近江の柿は」が、単純すぎるという意見もあると思いますが、私はむしろ、「円らなり」を引き立てることに有効だと感じました。 (1)川風にうすづく頃の稲穂かな 小口 泰與(60代,男) (2)弔問の帰りの空や夜会草 (3)百選の棚田や秋の風さやか (4)忽然と聞こえし汽笛秋の朝 よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)が魅力的です。夜顔、夕顔とせず、夜会草としたことが効いています。投句ですと、視点が「空」になります。夜会草は香気が強いですから、それでも良いと思いますが、焦点をより絞るなら、「空」でないものの方が良いかもしれません。 (3)、「百選の棚田」という言い方が、俳句では新鮮に感じます。一方で「秋の風やさか」への繋がりが気になります。少々、口調が悪いような感じです。例えば、「百選の棚田さやかな秋の風」ではいかがでしょうか。私朝倉風になっているかもしれませんが。 (4)、汽笛は忽然と聞こえるものだと思いますから、ちょっと当たり前過ぎるでしょうか。しかしながら、秋の朝が良いです。 (1)、きれいな風景です。川風と稲穂の取り合わせも良いです。ただ、少しきれい過ぎて、それだけに終っているかもしれません。 (1)釣果あり敗戦の日の川辺 豊田ささお(70才以上,男) 今年8月15日から、ずっとひきずっていました。俳句で敗戦記念を今詠まねばと、小学4年の私が耳元で言い募るのですが、・・未だ納得いく句ができません。 (2)敗戦忌小川に釣り糸垂れてをり (1)の直しです。子どものころ釣りを楽しんだ小川に魚は少なくなりました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)の方が断然良いと思います。私などは、本当に戦争から遠い世代で、その知識としてもお恥ずかしい限りなのですが。「釣果あり」が、先の戦争への思いを間接的に表しているように思えます。悲しい結果ではあったけれども、その後の世界には希望がありつづけている、というような。感情を表す言葉は詠み込んでいませんが、深く感じさせるものがあります。 (1)旅ふたり夜明けの葡萄薫りたる 穂波(30代,女) (2)彼岸花あの日の言葉違えたり (3)雨なれど恋歌止めず秋の蝉 ご指導いただける貴重な機会を十二分に生かそうと思い、また投句いたしました。よろしくお願いいたします。「朝顔の花ひらく音深く吸う」 下五を「子らと聞く」から変えてみました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 ご熱心な推敲、ご熱心な投句、うれしく思います。 「朝顔〜」の句、とても情緒的になりました。子どもの存在も捨てがたいものがありますが、「深く吸う」も、音を聞いた人の心持ちが充分に感じられる表現でしょう。 (1)、とても気持ちの良い旅を想像しています。口調も整っていて良いです。 (2)、「彼岸花」と「あの日の言葉違えたり」が、実によく合っています。感情を表現しすぎることなく、情感豊かに詠まれています。大成功です。 (3)、「雨」「恋歌」「秋の蝉」、こちらは、付き過ぎましたね。少々くどくなっています。 2006年9月26日 (1)アダルトのメールの多さや夏の果て 春雪(70才以上,男) (2)三陸の秋刀魚届けり勝手口 (3)歌劇団秋の踊りのフイナーレ ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)が良いです。夏の終わりの気だるさが、迷惑メールのうとましさと相まって、強調されています。 (2)、勝手口ですと、あまりにも当たり前すぎて、秋刀魚の良さを発揮することができません。秋刀魚の美味しさや秋らしやが沢山伝わってくる下五が良いです。 (3)、「秋の踊り」が残念です。歌劇団という句材は興味を引きますから。 (1)耐えてきしことの幸せ秋の月 悠(70才以上,女) (2)曼株沙華そろい踏みして休耕田 よろしくおねがいします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)、曼珠沙華を、こんな風に幸せそうに詠めるとは、驚きです。どうしても、独特の形容や仏教上の意味から、明るく詠んでもらえない花ですから。休耕田という優しさを感じる季語も成功しています。 (1)、気持ちは共感を得ると思うのですが、少しストレート過ぎるのではないでしょうか。そこを工夫することが、俳句という文芸の価値だと思うのです。 (1)ぼた(ボタ)山に立ち迷いをり朝の霧 北野元玄(60代,男) ボタ山かぼた山かで迷っております。ただし、ありふれた句か? (2)お互いが確かな孤独赤とんぼ 少し手ごたえのある・・? 17日のご講評有り難うございました。「一連の紐帯としての鰯雲」は空一面の鰯雲を一本の紐帯で繋がっていると詠んでみました。「昨日が今日また生るる子規忌かな」は子規忌が日々新たなりとの意味でしたが、両方とも、意味が取り難い感じですね。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、ありふれた句ではないと思います。そんな、霧の朝もあるだろうな、と読めます。「ぼた山」は、辞書では平仮名表記ですが、通俗的には「ボタ山」でしょうか。秋の朝の愁いを感じます。 (2)、良いです。赤とんぼが孤独なのか、人間同士が孤独なのか、どちらにも読めて良いです。赤とんぼも人間も、群れてはいるけれども、やはりみな孤独で、と思いを馳せることのできる句です。 月のこと醤油薄めでまっ平ら 裸時(30代,男) 「月のこと醤油薄めで内面に」を考えてみました。前の逆みたいな形です。どっちが良いのでしょうか? ドクター朝倉の診断と処方箋 「まっ平ら」の方を支持します。「まっ平ら」が「内面に」よりも具体的かと思いますので。月がまっ平らなのか、醤油を入れてある皿の様子なのか、この両方であるのか、少々揺れますが、「月のこと」の「こと」を重視して、月の様子と解釈しました。 (1)旅ふたり夜明けの葡萄薫りたる 穂波(30代,女) (2)彼岸花あの日の言葉違えたり (3)雨なれど恋歌止めず秋の蝉 ご指導いただける貴重な機会を十二分に生かそうと思い、また投句いたしました。よろしくお願いいたします。「朝顔の花ひらく音深く吸う」 下五を「子らと聞く」から変えてみました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 熱心な推敲、うれしく思います。「朝顔〜」の句、とても情緒的になりました。子どもの存在も捨てがたいものがありますが、「深く吸う」も、音を聞いた人の心持ちが充分に感じられる表現でしょう。 (1)、とても気持ちの良い旅を想像しています。口調も整っていて良いです。 (2)、「彼岸花」と「あの日の言葉違えたり」が、実によく合っています。感情を表現しすぎることなく、情感豊かに詠まれています。大成功です。 (3)、「雨」「恋歌」「秋の蝉」、こちらは、付き過ぎましたね。少々くどくなっています。 2006年9月25日 (1)湖の島影深し晩夏かな (初秋かな?) 文月(60代,男) (2)夏終る白地に清しW文字 わが家が居場所になったか毬息子(毬息子とは放蕩息子と秋の意。) ふるさとの友は連泊秋の院(「院」は病院のこと。むりですか?) ドクター朝倉の診断と処方箋 四句拝見しました。 (1)が良いです。初秋よりも晩夏の方をお薦めします。なぜなら、夏の終わり特有の寂しさが「影深し」で伝わってくるからです。湖という、夏の楽しみの場であることが、成功の要因でしょう。 (2)、何の「白地」なのか、具体的な方が句意がはっきりするでしょう。「ふるさと〜」の院は、奥の院などの建物と解釈されてしまいそうです。「我が家〜」、鞠息子が難しいのではないでしょうか。 (1)秋澄むや五十二階の午餐会 彩貴(40代,女) (2)旧友と逢う日の明くる牽牛花 二十年ぶりの友人と逢い楽しい時を過ごしました。よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)、「逢ふ日の明くる」と「牽牛花」が、とても合っています。「牽牛花」が策略的過ぎる、という見方もあるでしょうが、私は、「朝顔」という、とても身近で気取らない日常の花であるので支持します。蔓植物で朝に咲くということが、大変効果的です。 なお、(1)は前回述べさせて頂きました。 (1)千振の五弁の花をいぶかしむ 小口 泰與(60代,男) (2)紫苑咲く八入の紺の五百重山 (3)太陽の香り豊かや稲穂波 適切なご指導感謝申し上げます。「醜草の生ひ茂りたる稲田かな」を「醜草の忽と生ひ出ず稲田かな」に推敲してみました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (3)が良いです。オリジナルな稲穂波になっています。収穫期の稲特有の香りが馥郁と感じられます。 (1)、「いぶかしむ」が面白いです。確かに、少し変わった花弁であるセンブリらしい句です。 (2)、情感が薄い感じが致しました。 「醜草〜」の句、「忽と生ひ出ず(出づ)」によって、情景にも句の調子にもインパクトが出てきて良いです。 水澄むや首相争い跡もなく まさし(60代,男) これは俳句になっているのでしょうか。 ドクター朝倉の診断と処方箋 十二分に俳句です。それに、滑稽さのある良い句でしょう。季語の「水澄むや」が効いています。さっぱりと言い切った表現が良い結果となりました。 曲げ物をさっと洗ふや水の秋 涼(70才以上,男) 宜しくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「曲げ物」、良いですね。秋は、木の製品への手触りが敏感になるような気が致します。そんな秋の、鋭敏な感性の句です。「さっと洗ふや」のそっけない言い方も成功しています。また、あえて「秋の水」ではなく「水の秋」とされたことも、句を引き締めているでしょう。 銀河への一本道を漁舟 風葉(60代,男) ご指導ください。 ドクター朝倉の診断と処方箋 良いです。なんとも良い取り合わせです。「 銀河への一本道」という夜空の形容もさることながら、古風な「漁舟」を持ってこられたこと。ロケットや、銀河鉄道ではなくて、漁舟で行くのもオツだなあ、とうっとりしてしまう句です。 旧友の死は山に沿う一本道 うさぎ(60代,女) ドクター朝倉の診断と処方箋 とても、独創的な喩えですね。句としても良いです。旧友の死は辛いもの、それを無機質な「山に沿う一本道」と表現されたことが、感傷的になりすぎず、客観的な視線でもあり、読者をひきつけます。 2006年9月24日 (1)産土の梁のしかかる秋の暮 満山(50代,男) (2)陰という器官へ襁褓夕かなかな (3)等高線に引っ掛かっている瓜と婆 よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「産土の」の「の」の意味に迷います。良い句材をもってこられたので残念です。「秋の暮」という時候も合っています。 (2)、「襁褓」と「夕かなかな」は良く合っていると感じますが、前半の「陰という器官」という表現はどうでしょうか。間接的に表現されていますが、逆に生々しくも感じ、「襁褓」という言葉の優しさと合わない気がしました。 (3)、不思議な句です。イメージ、虚構と取りました。とてもユニークです。 (1)柿の実に背中打たれる寒接心 バカボンの弟子(50代,男) (2)月夜坐亡に一睡の影法師かな 参禅会での体験を思い出しつつ。 ドクター朝倉の診断と処方箋 私の実家は臨済宗ですので、禅には馴染みがあります。二句とも、その禅宗のもつ雰囲気が出ています。多少、専門用語が難しくはありますが、参禅会での様子が伝わってきます。(2)は、「影法師月夜の坐亡一睡に」としますと定型になります。ご参考までですが。 (1)長袖や折り目正しく九月立つ 穂波(30代,女) (2)白い雨スリッパを替え九月立つ (3)九月立つ猫もミルクも温かく 過分な評価をありがとうございました。大人になってから人にほめてもらうことが少ないだけに、本当にうれしく思いました。 「空晴れて青きアゲハの翅の裏」 ご指摘どおり「雨はれて」を「空晴れて」に直しました。朝顔の句の方は推敲がまだまとまりません。以上、よろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 とんでもございません。こちらこそ、穂波さんの感性、言葉の選び方に触発されております。 三句拝見。 (1)が抜群に良いです。九月しかない気分を、非常に的確に表現されています。また、「長袖や」と切る必要はないと思います。「長袖の」で良いかと。日常の、ちょっとした行為にある気持ちを句にされていて、共感を得ます。 (2)、スリッパを替える行為は、「折り目正しく」に通じる、気持ちのある行為だと思います。それだけに、「白い雨」は余計ではないでしょうか。意味を持たせすぎになって、句がぶれてしまいます。 (3)、実家に三匹も猫がいますので、とっても気分は分かります。しかし、ちょっと分かりすぎる句になっているようです。例えば、「九月立つ猫ぬくくなりミルク沸く」ですと、「ミルク沸く」により多少客観的になります。 (1)虫の音を聞きて思い出たぐり寄す 豊純(70才以上) (2)秋の旅吸い込まれゆく熱海の灯 (3)朧月涼風もらう初秋かな (4)帰省待つペールカラーの空眺め (5)帰省待つ日暮れ色した空眺め 先生、先日はどうも有難う御座いました。またまた駄句をおくりました。宜しくご診断くださいませ後の二句どちらが良いでしようか?教えてください。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそでございます。 まず、(4)、(5)ですが、個人的には、「ペールカラー」を用いた(4)を評価したいのですが、その「ペールカラー」の認知度はどうでしょうか。色の淡さが帰省を待つ気持ちと合っていますが、万人周知ではないように思えます。このような意味でも言葉の選択は難しいですね。 (3)、情景は良いですが、言葉を少し整理いたしましょう。「朧月」は春の季語、「涼風」は夏の季語です。「初秋」を止められて、「月夜」などとし、「涼風」はただの「風」ででそうでしょうか。充分伝わると思います。「もらう」という表現は、優れています。 (2)、「すいこまれていく」が、分かりにくい感じです。 (1)、「虫の音」と「思い出」の取り合わせは、共感できます。「たぐり寄す」が余分でしょう。是非、ご再考を。 どの句も、人々に愛されるべき情景を詠んでいらっしゃいます。読者の共感を得るということは大切なことです。 (1)殺生石色無き風の香を阻み しんい(60代,女) 那須温泉の近くで、硫黄の匂いがとてもきつく… (2)鳳仙花バスの歌声はじけしも ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「殺生石」と「色無き風」が良いです。「香を阻み」は、殺生石が阻んだのでしょうか。その理由が分かりませんが、雰囲気のある情景が良いです。 (2)、鳳仙花と歌声が「はじけ」で共通しているのは工夫ですね。ですが、鳳仙花はどこにあるのでしょうか。バス車中だと無理がありますから、道路端と考え、バスから見たのか、バスからの声を道路端で聞いたのか、どちらかと読みました。 (1)金波銀波いざよう月の茅ヶ崎は 走(50代,男) (2)身をたたみ薄闇に底紅は散る (3)秋風に空き缶からころところぐ (4)まぎれなく秋雨の来る草の揺れ (5)白頭翁ヒンドゥー僧も山篭る ご講評ありがとうございました。またよろしくお願いします。十六夜の句は茅ヶ崎を思いつつ、「霧いかに深くとも嵐強くとも」、「汽笛吹けば霧笛答える別れかな」とニつの句碑が建つ燈台下で。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ、良いお勉強をさせていただいております。 (1)、「金波銀波」、とても良い表現をもってこられました。まさに月の茅ヶ崎です。残念なのは、「いざよう」が過剰な説明になっている点です。是非、ご再考を。 (3)、同じく、「からころところぐ」が過剰です。「からころ」か、「ころぐ」どちらかで充分だと感じます。秋風に舞う空き缶に、読者が自由な思いをはせられる方が、俳句として魅力的だと思うからです。 (2)、表現力がすばらしいです。しかし、槿の花の場合、「散る」よりも「落ちる」「落つる」がベターかもしれません。「散る」は『離れ離れになって落ちる。断片となって方々に飛ぶ。ちらばる。(広辞苑)』とありますし。 (4)も、着眼が良いです。雨の来る前の様子を上手に表現されています。「まぎれなく」が蛇足か、強調か、少し私も迷います。 (5)、読者に面白さが伝わるかどうか、意見が分かれそうです。 2006年9月23日 雨上がるモアイ像めく案山子かな 豊田ささお(70才以上,男) なんどもミス送信をしまして申し訳ありません。雨上がる、雨上がり、どちらか迷っております。ボランティアしている公園の小さな田んぼの案山子群です。 ドクター朝倉の診断と処方箋 ユニークな発想で面白い句になっています。雨あがりの秋の楽しさも出ていて良いでしょう。「雨上がり」より「雨上がる」をお薦めします。上五で一度切れ、句にアクセントが付きますから。それにしましても、「モアイ像」とは参りました。 精悍な全身震ふ鬼やんま 涼(70才以上,男) よろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 鬼やんまが「精悍」とう表現には脱帽です。確かにそうです。あの肉付き、眼、飛び方、まさに精悍です。一方、「震ふ」はちょっと蛇足的でしょうか。鬼やんまの様子がよく分かるという利点はあります。 癒されし朝薔薇の棘茄子の棘 きんぎょ(女) 〈どちらも痛し薔薇の棘茄子の棘〉のどちらも痛しを推敲してみました。〈癒されしもの〉とも考えましたが・・・ ドクター朝倉の診断と処方箋 「癒されし」と「棘」の、対称的な取り合わせが興味を引きます。反対のものの組み合わせの力が出ていると思います。「朝」「薔薇」「茄子」という三つの句材も良いです。読者は、いろんな「癒し」と「痛み」を想像することでしょう。 コスモス達今日は揺れない約束す ねぎよしこ(70才以上,女) メールもネットも乾いてく。有難うございました。又よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 揺れることが当然のコスモスを、「揺れない約束」としたところが、とても優れています。意外な発想と、「約束」という言葉が良いです。コスモスの擬人化も句をフレッシュにしています。 (1)水澄むや竈の炎定かなり 小口 泰與(60代,男) (2)露草や八入の紺の赤城山 (3)松籟を受けてカンナのふふみけり (4)我が下駄を覆ひかくせり一葉かな (5)己が影えのころ草にからかはれ よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)が良いです。季語の良さが出ていると思います。改めて述べますと、「水澄む」の水は、河川をはじめ、池、沼、に限らず、井戸や台所の器の水まで指します。それが、「竈」とよく似合っているのではないでしょうか。「炎定かなり」は、台所にいる人の心を表しているようで、魅力があります。 (4)、発想が面白いです。ただ、一葉で隠すのは難しいかも、と思いました。子供の靴だと可能ですね。 (2)(3)(5)、句の焦点、表現したいものが弱い感じを受けました。 (1)紺碧の空に毛槍や曼珠沙華 泰(50代,男) (2)丑三の雷光凄く残暑かな (2)は「季またがり」になり避けるべきでしょうか? ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)、そうですね、雷(雷鳴、雷雨など)は夏の季語ですが、稲妻、稲光は秋の季語として扱われています。「残暑」という言葉を使いたい、という意思が強ければ、「稲妻、稲光」と一緒に使うという方法もあります。季の違う季語を一句のなかで使うことが、必ずしもいけないわけではありません。また同じ季の季語を複数使うことも否定しません。ただ、そのイレギュラー(変則)であるだけの理由がいります。つまり、それは、その句が反則を容認するだけの意味があり、魅力的であれば良いのです。さて、投句は、「牛三」という表現に魅力がりますので、秋の句として、季語を二つで作られると良いと判断しました。 (1)、時代行列でしょうか。紺碧の空と曼珠沙華で、秋の気持ちよい光景が見えてきます。難を言えば、「毛槍」が分かりにくいかもしれません。 2006年9月22日 落蝉のつと飛び立てり杜の風 しんい(60代,女) 先日「ちぎれ雲落ち蝉急に飛び立ちぬ」に、視線がめまぐるしい感じなので、「上五」推敲と、ご指導頂いたので、作り直したのですが、よろしくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 すっきりとした気持ちの良い情景になっています。「杜の風」が秀逸です。視点が定まるだけではなく、広い視界を感じさせます。「つと」という表現も、「杜」に合っています。 (1)秋澄むや五十二階の午餐会 彩貴(40代,女) (2)藤の実に石斬る音の止む夕べ 御影石の産地に住んでいます。よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、気分の良い食事会の様子が伝わってきます。なぜ、五十二階?という意見もあるでしょうが、高さを象徴しているということで良いでしょう。「午餐会」という少し古風な表現がアクセントとなっています。 (2)、石の切り出しをしている人が、藤の実を見つけ手を休めた、という風に具体的に読みました。上五の「に」と「音」が、少々読みを迷わしますので、「藤の実や」とされることも一案です。そうすると、藤の実を見ている自分と、石を切っている人が同じ場所にいなくてもおかしくありません。 漆黒の無人の駅や遠花火 加護坊(70才以上,男) ???・ ドクター朝倉の診断と処方箋 無人駅ですから、鄙びた様子なのでしょうか。遠花火と合ってますね。一方で、「漆黒」とは、建物のことでしょうか。花火は夜ですから、周囲も暗いはず。そうしますと、駅舎が漆黒色というのは、ちょっと無理があるような気が致します。闇に紛れる様子でしたら、そこをはっきり表現されるほうが良いでしょう。「漆黒」「無人駅」「遠花火」と、句材の選択には感性を感じます。 (1)山並みに抱かれて秋の神戸港 栗太郎(60代,男) (2)秋日和今は基地なき神戸港 (3)秋風や波止場にのこる地震の痕 久しぶりに神戸の港に行ってきました。子供のころの神戸港にはアメリカ軍の航空母艦などが停泊していました。平和な日本を再認識。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)(3)ともに、とても気分は伝わってきます。どちらも、句意と季語が合っていると感じます。ですが、少々平凡な仕上がりのように思えます。表現に工夫があると、また違った印象になるでしょう。 (1)前回述べさせて頂きました。 熟し柿 烏とともに 待ちわびて 浅葉洋(70才以上,男) 渋柿も熟す頃になりました。烏も狙っていますので、油断ができません。秋日和の一つの風物詩と思いましたので、ご高評をお願い申しあげます。 ドクター朝倉の診断と処方箋 なんとも滑稽ですが、とても良い具合に句になっていると感じます。ただの柿ではなくて「熟し柿」、鳥ではなくて「烏」、「待ちわびて」がストレート過ぎるかとも思いますが、逆に滑稽さを際立たせているようで、良しと致しました。もし、再考するならば、下五の表現でしょう。仰るとおり、秋日和の一風景で、なんだか、ほっこりした気分になりました。 (1)マップ手に秋の絞りの里めぐり さくら(女) (2)さわやかや町は小路と橋あまた (3)秋の山車夢空間のひとときや (4)秋高し文字人形の筆捌き 朝倉ドクタ−の優しさと愛いっぱいのご診断と処方箋いつも楽しみに勉強させてもらっています。有難うございます。今回は報告のみに終わったような気も致しますが。 ドクター朝倉の診断と処方箋 大変恐縮でございます。とてもうれしく拝読いたしました。元気がたくさんでました。 さて、投句ですが、報告のみに終っている、とは感じません。どれも情緒が感じられますから。一点、(1)(2)(3)の句に共通していえますことは、表現のせいでしょうか、冗漫な感じを受けるのです。言葉の使い方に再考の余地があると思えます。 (1)、「の」の連続が、その理由(冗漫さ)でしょうか。 (2)、「小路」「橋」「町」は良い句材です。これらを使って言い換えられるでしょう。 (3)、「夢空間」と「ひととき」は、同じ要素の言葉と取れます。どちらかの使用がベターです。くどくなりません。 (4)は、きれいにまとまっていると思います。上五で切れているのが効いているのでしょう。 (1)口ずさむ歌に漂う秋の嘘 北野元玄(60代,男) (2)孤独より稲光するフライパン 案山子の2句について、過大な評価をいただきました。古語は実は大好きなのですが、稔典先生の言に従って、現代語と口語を使うよう心がけます。 ドクター朝倉の診断と処方箋 二句ともオリジナルな表現が活きています。 (1)、「歌に漂う秋の嘘」が良いです、秋の嘘らしい感じが出ています。「口ずさむ」は少し平凡です。 (2)、こちらも中七下五の発想と、表現が良いです。一方「孤独より」は、稲光するフライパンに効果的でしょう。フライパンに読者の気持ちを重ねやすくする力があるのでは、と思います。 CDの目玉で睨む案山子かな 雀子(60代,男) ご指導有難うございました。動詞の使い方、季語の使い方等気をつけてまいりたいと思います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 良いです。愉快な情景を上手に句にされています。また、成功の要因は「睨む」でしょう。この言葉で案山子が俄然、活きてきましたし、平凡な情景のみの句にしていません。切れ字「かな」も、ベストな使い方でしょう。秋の稲田の光景が生き生きと表現されています。 秋更くる生命線など嘘っぱち 涼(70才以上,男) いつも有難うございます。宜しくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「生命線など嘘っぱち」が、良いです。感情も表現も勢いがあって惹かれます。季語「秋更くる」はどうでしょうか。少しだけ、付きすぎた感を受けました。もちろん、似合っていて良いのですが。 2006年9月21日 箱開く切れ縫う午後の葉鶏頭 はね(40代,女) 初心者です。よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ、よろしくお願いします。 気持ちの豊かさが感じられる一句です。また、「切れ」は「裂」と表記するほうが読みやすいかもしれません。一言申せば、「箱」「切れ」「午後」「葉鶏頭」と、少し句材が多いようにも感じます。また、季語「葉鶏頭」に良く合っている情景です。 (1)寝返って猫の鼻先秋日向 藤太郎(50代,男) (2)肩車して子に聞かす秋の声 よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、とても良いです。寝返りという動きも楽しいですし、そこに猫の鼻があったという、句意の展開も面白いです。そして、ただ、愉快なだけの句に終っていないことは、「秋日和」とあるからです。晴れわたった秋空の気持ちよさや、秋日特有の静かさなども感じさせ、情感に深みが出ています。 (2)、少し甘くなってしまっているでしょう。良い光景なのですが。表現が変えられると思います。 (1)木道の続く限りや秋の空 小口 泰與(60代,男) (2)忽として草に沈みし稲田かな (3)切り取りし菊活けたればふふみけり (4)朝冷えや外に出づれば犬吠ゆる よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)が一等良いと思います。秋の空の広がり、悠久さがしっかりと出ています。「木道」という句材をとても上手に使われています。 (3)、句意は美しくてはんなりとした感じもあり良いですが、少し説明の散文になっているようです。表現が工夫できそうです。 (2)、(4)、情景に、あまり共感を覚えませんでした。 (1)干天の束の間の慈雨蒸せる峡 文の子(60代,男) 「旱天の慈雨去り峡の蒸せる道」を「因果関係を解き明かした句」とご指摘頂き推敲しました。如何でしょうか。 (2)啄木鳥の直立貴人おはすれば 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、今回の投句は、「旱天の〜」の句よりも、説明くささがなくなっていて良いでしょう。それは、慈雨を説明するのに、「去り」という言葉でなくて「束の間」という言葉にしたからです。中七で軽く切れているのも句をすっきりさせています。 (2)、とてもユーモラスで楽しい句です。着眼、発想も個性的で優れているでしょう。句意が前半と後半で、ころっと展開するのもの印象強いです。 毬栗を荒拾ひせり関ケ原 涼(70才以上,男) 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 いつも、取り合わせの妙に感じ入ります。今回は、「毬栗」「荒拾い」「関ヶ原」の取り合わせですね。毬栗、とくると和気あいあいとした情景をすぐさま浮かべるところですが、「荒拾い」と、超現実的な栗拾いに転換します。そして「関ヶ原」と、悠久の時をも感じさせされるのです。私は、秋を深く味わえる句として評価致します。 (1)二本目の人生の風呂白葡萄 裸時(30代,男) 風呂の中でもう一個人生があるかなと思いました。 (2)秋燕みんなに見せる僕は髭 旧紙幣の夏目漱石の髭が好きです(^^ (3)秋ですよ虹と蝶とがヘアカドア 季語がちょっと混乱です。(^^; ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、コメントにある気持ちがダイレクトに句になると良いのでは、と思います。例えば、「白葡萄人生二本目湯船中」など。ただ、風呂場とのつながりを考えると、「白葡萄」に賛否があるかもしれません。 (2)、僕の髭の様子や、僕の髭自慢である感じが伝わってきて愉快ですね。 (3)、季語がそれぞれ、秋(秋)、虹(夏)、蝶(春)となると、やはり厳しいですね。ご再考を望みます。ちなみに、「揚羽蝶」は夏の季語、「秋の蝶」は秋の季語です。 2006年9月20日 里芋の途絶えし駅を駆け下る 北野元玄(60代,男) 「盂蘭盆会ふと星空を見上げをり」のご講評有り難うございました。以下のように推敲してみたのですが、類想感が拭えません。(1)盂蘭盆会諍ふ父母のよぎりいく(2)抗いし母も逝きたり盂蘭盆会。 改めて掲句のご講評をお願いいたします。深層心理を衝いてみたのですが、はたして・・。 ドクター朝倉の診断と処方箋 まず、「盂蘭盆会〜」の句ですが、(1)は、子供連れの両親の姿でしょうか。作者本人の親、とは読めないのは、「よぎりいく」だからです。第三者の視点で描かれているので。こんな光景もお盆にはありそうです。 (2)、盂蘭盆会とよく合っている上五中七ですが、少し似合いすぎでしょうか。盂蘭盆会一句としては良いですね。「抗いし(抗ひし)」を変えて見られると、読みがより広がる可能性があります。 どちらも盂蘭盆会らしい句ですし、最初の「盂蘭盆会ふと星空を見上げをり」よりも、気持ちの実感が伴っている点が良いです。 「里芋の〜」、秋は本当に里芋の季節ですね。句も、そんな里芋の様態の可愛さ、美味しさなどが出てきそうですが、ちょっと出づらい感じでしょうか。「途絶えし」と「駆け下る」の主語や対象が曖昧になっているからでしょう。「里芋」と「駅」で何か起こりそうな気配が楽しみな句なのですが。 (1)杉伸びて山は秋空突き上げる 三郎(60代,男) (2)秋日向かもめ休める舫い綱 (3)ゆれている萩とすすきと女郎花 上五の植えた杉を杉伸びてに推敲してみました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、良いです。杉も山も上へ上へ、、という視点が秋空に似合います。秋天の高さを感じ、気持ちが最高に良いことが伝ってきます。 (2)、「秋日向」「かもめ」「舫い綱」、この三つがきれいに作用し合っているでしょう。秋の港が、素敵な光景として伝わってきます。これもまた、気分の良くなる句です。 (3)、三つの草花の組み合わせがどうでしょうか。秋らしい句ではありますが、三種、必要かどうかですね。 (1)菜園は農地の小分け野分来る 文の子(60代,男) 座5は、野分を隠し「台風来」とするものか迷いました。宜しくお願い致します。 (2)半月や色付き初めて街路灯 9/13のご診断有難うございました。「半月の色付き初めて街路灯」を推敲しました。口調が良いと思いました。如何でしょうか。 (3)実物の富士はなだらか秋晴れぬ 9/13にご診断頂きました「なだらかに伸ぶるふじやま秋晴れて」を推敲しました。元句は「鋭角は絵の中富士に秋の晴れ」なのですが、掲句は如何でしょうか。宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)、(3)と、とても伝わりやすく、共感を得る句になったと感じます。 (2)は「や」切れも効果的です。それが口調の良さとなっているでしょう。リズムにアクセントがつくからです。 (3)はユーモアと「秋晴れぬ」という爽やかな季語がよく合っています。元句も合わせ、三句のうちで、断然こちらが優れているでしょう。 (1)、愉快なような、寂しいような、気持ちが充分伝わらない気が致します。どんな気分なのかが、読者に分かると良くなると思います。「台風来」を使う場合も同じでしょう。 (1)鈴虫や坂東太郎水清き 小口 泰與(60代,男) (2)久々に友垣集ふ温め酒 (3)職人と植木の話し秋の空 (4)木道の木の香も光るまつむし草 毎回適切なご指導感謝申し上げます。よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ、とても良いお勉強になっております。 (4)が良いです。「木道」は、迷わず、尾瀬の湿原などに備えられたものと取りました。高原を好む「まつむし草」の働きです。光景は、最高に澄み切った秋の空気ですね。とても気持ちよく、その場の空気に触れたようにさえなりました。松虫草の素朴な可憐さ、その色も、秋の空気の良さを増長させています。結果として、「光る」の比喩が良かったのだと思います。 (1)、鈴虫、坂東太郎、水清き、少しくどいです。 (2)、会の挨拶句として、温か味のある句です。 (3)、植木職人と秋空の取り合わせが良いです。実感もあります。表現に工夫の余地があるかもしれません。 子の恋愛親が壊して月割れる 裸時(30代,男) ドクター朝倉の診断と処方箋 ちょっとシュールレアリスム的な恐ろしさがありますね。「反対」ではなく「壊して」ですし、「月割れる」が決定的な結果を暗示しているようです。表現が強いですから、報告のみにはならず、俳句として成り立っているでしょう。独特の感性と表現、裸時さんワールドです。 (1)鋼鉄の摩天楼まで鰯雲 詩音(40代,女) (2)林檎にも心音ありぬ寝台車 (3)はないちもんめコスモスの子供たち よろしくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、良いです。秋の空の高さが、とてもとても出ています。「鋼鉄」という文明的なものも、逆に「鰯雲」の素朴さ、自然を際立たせています。「秋高し」を改めて感じた一句です。 (2)、「林檎にも心音ありぬ」が秀逸です。確かにそんな気になりますし、納得できます。ただ、寝台車はどうでしょか。「ありぬ」で一度切れるせいか、ちょっと唐突過ぎて?になっているように感じますが、寝台車での光景と思えば無理はないです。 (3)、子供がコスモスに紛れて、コスモスなのかこどもなのか、という比喩として受け取りました。そうであれば、少々大胆な表現ではありますが、「はないちもんめ」という言葉が、句を幻想的な童心の世界にしていますから、許される気が致します。一方で、小さいコスモス、コスモスの種などのことですと、あまり魅力のない世界になってしまいそうです。 故郷の月光に手を入れてみし fuji(10代,男) ドクター朝倉の診断と処方箋 発想が独創的ですね。「手をいれてみし」は、気分は伝わってきますが、読者によっては難解かもしれません。「故郷の月光」という句材の勝利ですね。 2006年9月19日 (1)梢よりそして草より秋の声 文の子(60代,男) 9/12のご診断有難うございました。「天の音に地の音重なる九月かな」を推敲しました。3段切れなのか、切れが無いのか良く判りません。 (2)秋黴雨歩道に煉瓦敷かれゐて 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、具体的になり良いと思います。「そして」も情景に広がりを持たせています。どこかしこからも秋の気配の雰囲気がよく伝わってきます。なお、三段切れではありませんし、切れなしの句で成功しています。 (2)、歩道の煉瓦を打つ秋雨の様子が出ています。なんとなく、気だるいような、でも憂鬱を感じるほどではなくて、そんな秋黴雨の気分が、シンプルに伝わってきます。 どちらも、秋のいい気分を頂きました。 蟷螂や病んで悟りし心技体 加護坊(70才以上,男) 入院中。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「病んで悟りし」が、少ししんどいでしょうか。読者に重たいと申しますか、読者が句を感じることのできる余裕が欲しいのです。句意が重いのを否定しているのではありません。充分過ぎるほどに語られてしまうと、読者はしんどいですし、つまらなくなるのです。私は、句で表現したい思いは、ある程度昇華させる方が良いと考えています。もちろん、個人個人の主義がありますので、押し付けではありませんが、句に余裕がある方が、読者の共感を得られるという喜びがあります。 秋澄むや漁舟の男たち 涼(70才以上,男) 宜しくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 秋特有の気持ちよさ、空気の澄んだ様子などが、漁舟の男たちによって力強く伝わってきています。「や」切れも効いているでしょう。「いさりぶね」という読みも気分を増徴させますね。いかにも秋らしく、逆に侘びて詠まれないことが成功しています。 (1)白い尻揃つて跳ねて夫婦鹿 せいち(60代,男) (2)長く声引いて遠くに鹿の鳴く よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、夫婦鹿の溌剌とした様子がありありと浮かびます。「白い尻」は美しさを、「揃って跳ねて」はリズムを出し、良い句になっているでしょう。 (2)、当たり前の光景のみの句になっているようです。 山並みに抱かれて秋の神戸港 栗太郎(60代,男) 60の手習いで、俳句入門の講座に通っております。とみに感性の鈍化を感じています。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「秋の神戸港」、素敵な感性です。また、「抱かれて」という表現もフレッシュな感じを受けます。神戸特有の地形、山と海を上手に詠まれた一句です。気分もとても良くなりました。神戸の街へ出掛けたくなります。 (1)雨雲の退けよ退けたし運動会 しんい(60代,女) (2)稲の香や車中カラオケ賑々し (3)白河の関跡昏し秋の声 よろしくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「退けよ退けたし」が、運動会への気合を十二分に表しています。このような表現も、句に勢いが出てよいです。難を申せば、少し単純な句意かもしれません。 (2)、「稲の香や」で、気分の良いものに仕上がっています。道中の光景もよく分かります。 (3)、「白河の関跡」と「秋の声」が合いすぎるほどに合っています。「都をばかすみとともに立ちしかど秋風ぞふく白河の関」という和歌を思い出しました。暮れ方という時間も良いですね。 2006年9月18日 薄紙を隔てし妻の憂き秋ぞ いろは(60代,男) 少し独りよがりでしょうか? ドクター朝倉の診断と処方箋 独りよがりとは感じません。奥様を気遣う様子が受け取れます。「薄紙を隔てし」は、物質的(例えば障子など)ではなく、感覚的なもの、気持ちの上でのもの、と解釈しました。ちょっとご夫婦のムードも感じられます。 汁椀にドバと飛び込む秋驟雨 豊田ささお(70才以上,男) 日曜日雑木林で間伐の昼時、いきなり大夕立でした。朝倉先生、説明に終わっているでしょうか? ドクター朝倉の診断と処方箋 いえ、そんなことないと思います。「ドバと飛び込む」という表現に力がありますし、「汁椀」という気取らない日用品も良いですね。屋外での食事時の素朴な雰囲気が出ていて、読者もほほえましい気分になるでしょう。なお、「秋驟雨」という季語自体はないようですが、「秋雨」がありますし、良しと致しました。 (1)醜草の生ひ茂りたる稲田かな 小口 泰與(60代,男) (2)朝顔や出湯の街のゆるゆると (3)嶺嶺の雲の燃えゐるカンナかな (4)秋茄子や雨に打たれし猫車 朝倉先生、ご親切なご指導感謝申し上げます。今後ともよろしくご指導お願い申し上げます。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ、熱心な投句に気持ちが引き締まります。 今回は、取り合わせがとても興味深く感じます。特に、(2)の朝顔と出湯の街、(4)の秋茄子と猫車。(3)も雄雄しさが出る取り合わせですね。 (1)、稲田の良さが出切ってないようです。「醜草」との取り合わせが成功しているかどうか、ちょっと疑問です。 (2)、「ゆるゆると」に、読者の読みは分かれると思いますが、雰囲気で読める句でしょう。 (3)、「燃えゐる」は「燃えゐて」が良いのでは。「燃える」状態が直接カンナにかかってくると、表現上苦しいですから。 (4)、雨の光景も面白いですね。どういう秋茄子なんだろう、猫車に積んであるのかな、などと楽しい想像が膨らみます。 月のこと醤油薄めで内面に 裸時(30代,男) 急に醤油が薄めになりました。明日親に聞いてみようかと思っています。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「月」と「醤油薄め」はとても面白いです。難を申しますと「のこと」と「内面に」で句意が取りにくくなっています。是非、ご再考をお願いたいものです。「醤油薄め」、上手に使えると、印象深い一句になるはずですから。 (1)良夜かな途中下車して街抜ける 風葉(60代,男) (2)生き方はそれぞれなれど芋嵐 ご診断願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)が良いです。ユーモアもあり人生訓もあり、とても有意義に読めます。その要因は「芋嵐」です。「野分」ではこのように感じることはできないでしょう。言葉の持つ力を上手に用いていると感じます。 (1)、「良夜」と「途中下車」がつきすぎました。下五で大きく転換すれば良いのですが、今回は残念でした。 身籠りて白露かも知れぬと思ふ 遅足(60代,男) あまり考えずに出来た句なので、核が明確でなく、推敲の方向が分かりません。自分で推敲する場合、なにを手がかりにしたらよいでしょうか?時間をおくのがよいでしょうか? ドクター朝倉の診断と処方箋 推敲、これは誰しも終わりのないものかもしれません。悩んで悩んで、結局時間切れで提出する、ということも多々あります。もちろん、時間を置いたり、一晩寝かしたり、句会で批評されたことをもとに作り直す、など、いろいろです。使っている季語や単語を辞典などで調べ尽すのも、時には有効です。 さて、投句ですが、感覚の一句ですね。白露がわりに気分を大切にする季語だと思いますので、このような句もありかな、などと私は思いました。が、やはり「身籠りて」は意見が分かれそうです。もちろん、隠れることも指しますが、どうしても懐妊を思ってしまいますから。読者の意見の分かれそうな部分や、読みが曖昧になりそうな部分の語や表現を考え直すことも推敲です。 (1)教え子が我に近づく初秋かな 文月(60代,男) (2)教え子の願容崩れる思秋かな 50才前の教え子に呼ばれてクラス会に行きました。歳の差も感じない仲間になっていました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「初秋かな」が良いでしょう。歳の差のなくなっている、さびしいようなうれしいような、そんな微妙な気分が上手にでていると思います。 (2)、ちょっと感想だけのようになってしまった感を受けます。クラス会の充実した思い故でしょう。良い経験をしたとき、その感情をもとに、表現を工夫できると秀句が生まれるのだと思うのです。 (1)政宗の絵馬の押し出す雲の峰 学(50代,男) (2)夕闇に軍靴の音蟻の列 (3)行秋の鐘の音にぞおどろきぬ (4)秋立つや鐘の韻の白かりき (5)秋蠅のままをこぼすやつぶすやら ご教示を。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、絵馬と雲の峰の取り合わせは良いですね。具体的に光景が見えてこないことがとても残念。 (4)、『白秋』という言葉を感じさせます。鐘の韻を色に例えたことが良い結果になっていると思います。 (3)、表現が平凡になっているようです。 (5)、ユーモアと取るかどうか、読者次第ですね。写実的な蠅だけに。 (2)、前回述べさせて頂きました。 2006年9月17日 (1)母の待つ病院を訪う萩の坂 彩貴(40代,女) 平凡でしょうか? (2)捨て田今蝶の群れゐる大花野 蝶は秋の蝶ととっていただけますか? いつも丁寧なご指導、ありがとうございます。宜しくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、平凡と申しますより、表現を工夫できると思います。「待つ」と「訪ふ」がなくとも句ができるでしょう。「萩の坂」がとても素敵ですから、是非それが最大限にいきてくる句を期待しています。 (2)、この句ですと、あきらかに「大花野」が季語ですから、蝶は大丈夫です。魅力的な風景です。「捨て田」が効いています。ただ「田今蝶」と漢字の羅列が読みにくさをおこしていそうです。その辺りを推敲できるとより良いでしょう。 (1)滝壺に飛沫光りて星月夜 たけし(60代,男) (2)水を汲む手元明るし星月夜 (3)星月夜沖行く船の水脈白し 先日奥能登を旅行した時に詠んでみました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 星月夜三句ですね。どれも、素晴らしい星月夜だったことが伺えます。 (1)が良いです。風景の美しさに強さをも感じます。飛沫が見えるほど明るいですし、そんな夜の滝壺に水の落ちる様は荘厳でもあるでしょう。情景と雰囲気が良く伝わってきました。 (2)、「水を汲む」という動作は惹かれますが、中七下五がやや平凡でしょうか。 (3)、この句も美しい光景です。沖に向かう船、としたことで雄大さも出て来ています。 (1)森昏く空暮れ泥む九月かな 文の子(60代,男) (2)啄木鳥は森のカルメン木を叩く 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「森昏く空暮れ泥む」という表現がとても個性的で印象強いです。読者の好みはありそうですが、「昏く」「暮れ」「沈む」と、用言(動詞、形容詞、形容動詞)の羅列がリズミカルで、「九月かな」で落ち着く調子が面白く感じます。 (2)、「森のカルメン」が面白いですね。啄木鳥の姿からの発想でしょうか。独創的ですが、無理のない表現だと思います。 強烈に仁丹におう陛下の夏 うさぎ(60代,女) いろいろ試行錯誤しています。よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「陛下の夏」といいますのは、言葉の通り、陛下の来られた夏、というような意味でよいのでしょうか。他の意味がありましたら、私の勉強不足で失礼致しました。なぜ、仁丹が匂うのかも、分かりづらい気がします。陛下を一目拝見しようと、集まった人々からの匂いでしょうか。お年がいかれている方々を想像をしながら。読みに自信が持てないのは、読み手の勉強不足ももちろんありますが、読者に正しく読んでもらえるということも必要と感じます。 友人の本当を知る九月かな fuji(10代,男) やや抽象的でしょうか? ドクター朝倉の診断と処方箋 抽象的な表現ですが、句意ははっきりと伝わると思います。いうなれば、表現が単純かもしれませんね。例えば、「本当」を「真実」にすると、また句の趣きが違ってくるでしょう。同じように、「友人」と「九月」も、意味を変えることなく、言葉を変えることができますので、いろいろ試されるのも良いと思いますよ。 (1)一連の紐帯としての鰯雲 北野元玄(60代,男) (2)昨日が今日また生るる子規忌かな 16日の子規記念館(資料館?)でのNHKの公開録画の入場券が手に入りました。一晩泊まりで、出かけてみるつもりです。俳句の方はなかなか思い通りに行きません。 ドクター朝倉の診断と処方箋 私も何度か、NHK俳句王国の公開録画に参りましたが、勉強になる経験でした。 (1)、何の一連の紐帯なのでしょうか。鰯雲との関係が分かるようで分かりませんでした。表現にこだわっておられるようなので残念ですが。 (2)、日々は刻々と過ぎてゆく、という意味での上五中七と理解しました。子規は早世でしたから合うと思いますが、句意が取りづらいと感じる読者もいるかもしれません。 (1)陶器市路上に並べ秋暑し 悠(70才以上,女) (2)秋暑し信号を待つ盲導犬 (3)秋の雨採血針にさぐらるる 何時もお世話になります。よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 作者独特の物の見方を感じます。 (1)(2)ともに、「秋暑し」が、句の情景を冷静にみている作者を感じます。否定的な意味ではなくて、現実を美化することなく、また卑下することなく、句の世界にしているのではないでしょうか。 (3)、上記のような作者独自の感覚と、表現(「さぐらるる」)がぴったり合った良い句だと思います。秋の雨の冷たさが効いています。 (1)秋冷やピアスの穴の小さき闇 藤太郎(50代,男) (2)子は母と遊んでやって秋の暮 (3)たっぷりとO2吐きて稲の花 前回は、ご診断ありがとうございました。初めて他人に見せた俳句であり、批評 というものを初めていただいた句でした。俳句作りにはずみがつきました。ありがと うございました。また、よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 いえいえお恥ずかしい限りですが、うれしいお言葉です。 今回の三句、良いですね。 (1)、「秋冷」と「ピアスの穴の小さき闇」がぴったり合っています。「小さき闇」という発想も素晴らしい。どのような人物か分からないけれども、その小さな穴に感じる闇は、誰しもが抱えているものかもしれない、などと読ませて頂きました。 (2)「遊んでやって」がとても効いています。「秋の暮」という時候もぴったりかと。春ですと甘すぎる句になりそうですし。 (3)、「稲の花」というなんとも地味な植物によって、句が成功しています。「O2」という表記は、賛否あるでしょうが、私はこの句でしたら充分に許容さされるべきだと思います。「たっぷりと」もよい効果を出しているしょう。 (1)日溜りになお光り増す草紅葉 加護坊(60代,男) (2)秋晴れや無暗に厚き病歴簿 入院して思う。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「なお光り増す草紅葉」が良いです。「なお」と素朴な「草紅葉」が、日溜りの暖かさをより暖かいものにしています。 (2)、「秋晴れや」が、中七下五の深刻さを軽くしていますし、「無暗に」が突き放したような冷静さも感じさせ、句として成功していると思います。私は、『入院して』などの前書き(句の前に、例えば詠んだ地を「スペインにて」などと付けること)はない方が良いと感じます。限定されない読みの自由さや気楽さがあるからです。 2006年9月16日 虫の夜の母にパソコン教へけり fuji(10代,男) 古語(けり)、旧かな(へ)と外来語(パソコン)の組み合わせが若干、不調和な印象を受けるのですが、いかがでしょうか?やはり古典的に統一した方が宜しいのでしょうか? ドクター朝倉の診断と処方箋 俳句の仮名遣いや、外来語の使用などに関しては、それぞれ意見があります。私は、節操があれば良いと考えています。その節操とは、簡単に申しますと、古典文法(古語)で、旧かなで、外来語のカタカナでもOKですが、一句の中で、古典文法と現代文法が混じってはいけませんし、旧かなと新かなが混じってもいけません。できれば、一作者の作品群でも混じらないことがベストです。外来語は、現代を詠む以上避けられないことですし、むしろ必要でしょう。ただし、外来語に頼りすぎないほうが良いこともあります。その点を注意したいものです。分かりにくい説明になっているかもしれませんが、俳句は、やはりその人らしい作品が生まれてこそです。それを生かすように決まりごとを使えると良いですね。 さて、投句ですが、良いと思いますよ。どんな年齢の母子であっても、微笑ましい(実はけんかしつつ?)母子の日常が見えます。「虫の夜」が、秋宵や夜長ほどに感傷的になっていないので成功しています。10代の男性だからこそ詠める句だと思います。 (1)流星や生国違ふ二人づれ 風葉(60代,男) 「生国の違うふたりの流れ星」とも詠んでみましたが、俳句としてはどちらが上位でしょうか。 (2)流星や後半生の設計図 よろしくご診断ください。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「流星や〜」が良いでしょう。「生国の〜」よりも、句にメリハリが付くことによって、リズムが出ていますから。旅の良さが厭味なくでていて、雰囲気も良い句です。読者に、こんな旅っていいなあ、と思わせる力があります。 (2)、ちょっと感傷的過ぎているかもしれません。流星、後半生、ですから。 (1)朝顔の花ひらく音子らと聞く 穂波(30代,女) (2)虹を待つ二階の窓を開け放ち (3)電話しよう花火に来てるの聞こえると (4)雨はれて青きアゲハの翅の裏 先日は温かいご指導、ありがとうございました。お言葉に励まされ、また投句いたしました。前に作った夏の句が中心です。時期はずれかもしれませんが、お許し下さい。よろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ暖かい励ましをありがとうございます。うれしく読ませて頂きました。 (1)(2)(4)が良いです。特に、(2)ですね。わくわくする心持ちが充分に伝わってきます。シンプルですが平凡ではなく、そのすっきり感が句の気分を盛り上げています。 (1)、つい「音子」とつなげて読んでしまいそうでもありますし、工夫の余地のある下五をご再考されると良いでしょう。繊細な感性が活きています。 (4)、「翅の裏」が秀逸です。青い揚羽蝶も良いです。ただ、「雨はれて」よりは「雨上がって(上がり)」か「空(天)晴れて」の方が日本語としてベターでしょう。魅力的な句です。 (1)お開きのメロン残して宵の悔 学(50代,男) (2)水澄むや紫多し野辺の花 (3)夕闇に軍靴の音蟻の列 (4)己がため薔薇剪る世とぞなりにけり (5)秋風や黄泉からだれも戻らない (6)みちのくや一村昏るゝ稗畠 ご教示を。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (6)、柳田國男の遠野物語の世界を思います。少し幻想的なムードもあります。評価は分かれるかもしれませんが、古い映画のワンシーンのようで雰囲気があり良いと思いました。 (1)、メロンが面白いような、平凡なような。「悔」にいろんな意味を持たせられますが、どうでしょうか。 (3)、ちょっと怖い気がします。ホラーではないでしょうが、戦争などを連想していました。「蟻の列」も印象的です。 (5)、こちらも、少々怖い句ですが、寂しさなども感じさせる仕上がりです。 (4)、諧謔(ユーモア)か滑稽、皮肉、それとも純粋に薔薇を楽しむ句でしょうか。句の本意に迷いました。 (2)、きれいな情景の句です。 (1)邯鄲の鳴き声途絶ゆ影法師 たけし(60代,男) (2)邯鄲の音に気づかさる高き星 (3)邯鄲の音色途絶えて闇深し 朝夕涼しくなり少し過ごしやすくなりました。宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 邯鄲三句ですね。どれも、邯鄲のなんとなくはかない雰囲気がでている点が良いでしょう。 (3)が良いです。「闇深し」が、邯鄲の音色と対比されて効果を出しています。聴覚と視覚の句です。作者の心象風景が良く表現されていると感じます。 (1)、影法師の存在がどう作用しているでしょうか。雰囲気はあるのですが、句意に深みがないように思えます。 (2)、「音に気づかさる高き星」とは具体的にどういう感じなのでしょう。どのようなことで、高き星に気づいたのか。理屈臭いことと言っているのではなくて、句の光景が伝わるようにしたいからです。「高き星」は価値ある句材だと思います。 空蝉やしっかとつかむ母のむね 豊田ささお(70才以上,男) はじめまして、朝倉先生よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそはじめまして。お願い致します。 投句、良いです。切れも良いですし、ことばも美しく整っています。母と子の句と読みました。こんな母子俳句なんて、とうらやましくなります。句に子供を詠むのは、簡単そうにみえて実はとても難しいことだと思っています。感情があり余り、適度な情感に仕上げることが出来ないからです。投句は、「空蝉」が非常に良い効果をもたらしています。どんな蝉よりも、断然、空蝉です。 全宇宙丸いくぼみが月の意図 裸時(30代,男) 月以外星も見えない夜空でした。わりと幻想的でした。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「全宇宙」で切って読みました。丸いくぼみは月のクレーターのことですね。そのクレーターは、外的作用からではなく、月が自ずから作ったものである、と。確かに、月のきれいな季節にはそんな気持ちになってみても、という気分にさせる句です。また、「くぼみが」は「くぼみは」とすることも出来ます。 羅や片手あずけて何言はむ きみこ(60代,女) ドクター朝倉の診断と処方箋 ロマンテイックな句ですね。映画のシーンのようです。言外に作者の大きな思いを感じるのですが、どんな思いなのかが伝わってきません。それが残念です。せっかくの情緒ある風景ですから。 |