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俳句クリニック 2006年10月前半分(ドクター:朝倉晴美) 「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。
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| 9月と10月の担当ドクターは朝倉晴美です。 | |
| <プロフィル> 「秋晴れを抱いているのだ大けやき」5年ほど前の自句。秋は空気が澄んでいて、体 中も澄み渡っている感覚。そんな気分を句にできるとうれしい。 目下ヤンチャ娘の子育て中ですが、今しかない感性を俳句に生かせたらなあ、と思っ ている日々です。よろしくお願い致します。 | |
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ドクター朝倉の診断 |
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2006年10月15日 太鼓台初恋のひと孫を抱き 藤節(50代,女) まさに秋たけなわ。素朴な田舎の祭りのドンドンです。 ドクター朝倉の診断と処方箋 上五は「太鼓台」でなく、もっと田舎のお祭りの良さを表すような言葉をお薦めいたします。そうしますと、初恋の人に孫がいることも、素敵な事実として伝わるのではないでしょうか。 (1)刳りぬきし柿に盛らるる向付 しんい(60代,女) (2)草堂やサフランの横向きに並べ よろしくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、とても秋らしく美味しそうな句なのですが、もう一歩、何かしらを読者の心に伝えてほしい気が致します。 (2)、摘んだサフランなのでしょうか、それとも、草堂、庵などのそばに並べて植えられているのでしょうか。サフランの状態に迷いました。ですが、素朴な「草堂」と、紀元前の大昔から利用されてきた「サフラン」は合っていて良いです。 (1)新月の針で棘ぬく薬指 穂波(30代,女) (2)三日月の針でとげ抜くお地蔵さん 東京の巣鴨にあるとげ抜き地蔵を念頭に作りましたが、関東以外では知られていないかもしれません。とげ抜き地蔵でなくても、道端のお地蔵さんを思い浮かべてもいいのではないかと思い、このまま投句します。 (3)夕月夜靴はどこまで飛んでいく (4)月の弓引き絞って闇見定める (5)ニライカナイにクリームソーダ月出づる 自分で調べた範囲では、「クリームソーダ」という季語は見当たりませんでした。しかし「アイスクリーム」と「ソーダ水」は夏なので、「クリームソーダ」も夏の季語と考えたほうがいいのでしょうか。そうだとすると、「月」と同じ句で使わないほうがいいのでしょうか。 (6)速達です梢に一枚秋便り 大分葉が色付いて、少し時期遅れになりそうですが、昨日出来た句なので、急いで投句させてください。以上6句、よろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 今回の六句、イメージ、イマジネーションの 世界が多いですね。ファンシーな雰囲気もあります。 (1)、「薬指」の「棘」が意味深長です。「新月の針」が個性的であり良いですが、どんな心情なのか、具体的な想像が難しく感じます。 (2)、巣鴨のとげ抜き地蔵は、全国レベルで周知されているでしょう。「三日月の針」が幻想的な世界を表現しています。 (3)、天気を占うために、靴を投げた光景を思います。夕月夜ですから、現実味もあるでしょう。その中で、「どこまで飛んでいく」が、未知の世界へのいざないのようで、句の魅力となっています。 (4)、月の弓は、moonbow、夜の虹のことでしょうか。それとも、上弦下弦の月に合わせた表現でしょうか。「闇見定める」が良い表現だけに、句意の取りづらいことが残念です。 (5)「ニライカナイ」は、沖縄の言葉の「遥か海の彼方、神々が住むとされる理想郷」と受け取りました。クリームソーダは夏の季語として許容されると思います。「ニライカナイに」の「に」が、句意をあいまいにしてしまっています。特殊な言葉の句は丁寧に作る方が良いでしょう。 (6)、「速達です」に評価が分かれそうです。「速達」は、郵便配達人が届ける印象が強いことと、「です」の効用があるかどうかですね。一方で、「梢に一枚秋便り」は良いです。コメントから考えますと、「梢にある秋便り」か「梢の一葉秋便り」などが伝わりやすいかもしれません。 (1)等外の稚鯉を放つ寒露の瀬 彩貴(40代,女) (2)捨てられし稚鯉の群るる蘆の花 よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、クールな感性を感じます。「等外」、「寒露の瀬」という言葉にも感じます。稚鯉に感傷的な言葉をかけないことが、その情景を際立たせているでしょう。 (2)、(1)とは違って、「蘆の花」が稚鯉への愛情に感じられます。しかしながら、決して華やかな花ではないところに、冷静な視点の良さがあります。 (1)朝冷えやメールで知らす手術の日 加護坊(70才以上,男) (2)雨の月胆管結石摘出す (3)同室の見舞客みな陽焼け顔 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)が良いです。病気を扱いますと、思った以上に心情が入ったりして難しいのですが、(2)は季語「雨の月」を上手に使われています。また、季語の他は、手術の結果だけ、という冷静な表現が成功しています。 (1)、「朝冷えや手術日告知メールにて」と考えてみました。「で知らす」は、散文的な表現の良さがないようにも思いましたので。 (2)、着眼は良いと思います。表現にインパクトを持たせると、句が読者に伝えるものが大きくなるでしょう。 カーンと秋晴れ瀬戸の花嫁子育て中 ねぎよしこ(70才以上,女) こちらは山と草原千里、生き様が見える海にあこがれててます(海よしばらくは真っ平らに凍れ)20年前の自作品。 ドクター朝倉の診断と処方箋 字余り、破調ですが、それが句の勢いとして良い効果を出しています。私も瀬戸内育ちですので(現在は関西に住んでおりますが)、とても気持ちよく、またうれしくもなる句でした。しかし、より公平な立場で評価しなくてはなりませんので、言い訳ですが、少し難しかったのです。「瀬戸の花嫁」を、瀬戸内で住んだ経験のない方はどう取るでしょうか。どうしても、歌謡曲を連想しそうです。しかしながら、「カーンと秋晴れ」という最高の晴天を思わせますから、良い印象として受け取れそうです。どちらにしましても、子育ての楽しさが感じられると判断しました。 *「海よしばらくは真っ平らに凍れ」、強い想いが感じられる、印象的な句ですね。 (1)秋空の少年野球声絶えず 雀子(60代,男) (2)秋高き赤きマンション大看板 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、気持ちが良く、若々しい句です。「声絶えず」に、少年の明るさ、元気さが出ていることでしょう。秋の句の情景としては、少々平凡ではありますが。 (2)、上五は「秋高し」の方が、「き」が無用に重ならず、「切れ」もありますから良いように思えます。「大看板」という表現が面白く、目を引きます。 2006年10月14日 冬来る前の山葵田からのノイズ うさぎ(60代,女) しみじみとした診断、有難う御座います。励みになります。よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 ありがとうございます。こちらこそ、このような言葉に励まされて、日々元気を頂き、デスクに向かっています。 「冬来る前の山葵田」、とても良い光景です。冬が来る前の気候の冷たさや、山葵が生育する沢の美しさなどを感じ、心まで透き通りそうです。残念なのは、「ノイズ」が理解しづらいことです。知識不足かもしれませんが、どうしても、「雑音」などとしか解釈できなかったのです。そうしますと、句意では、川や沢のせせらぎ、水の音と取ってしまいます。ノイズでは、良い音、という感覚はないので、違和感を覚えるのです。非常に美しい光景だと思います。それだけに、「ノイズ」に振り回されそうなのです。 (1)十六夜や天心何の憂ひある 豊田(70才以上,男) 昨夜煌々たる月光でした。いかがでしょう? (2)吾亦紅夜雨の中に立ち尽くす 十六夜の句、勘違いして十五夜の空を見て作ってしまいました。今夜が十六夜ですね。吾亦紅、これはその前に作ったものです。 ドクター朝倉の診断と処方箋 今年は、雨で望月が見れず、残念なお月見でした。 (1)、「天心」に迷います。天心に月がある状態でしたら、「十六夜や」の「や」切れはしんどいかもしれません。「十六夜月天心何の憂いある」でしたら、俳句の表現として妥当かと思います。「何の憂いある」は力強い表現で、月にも似合いとても良いです。 (2)、「夜雨の中に立ち尽くす」、擬人化の美しい風景かと思いました。ですが、吾亦紅はそのような様態の植物ではないと思いますので、上五で切れ、立ち尽くす誰かがいる、と読み直しました。そうしますと、吾亦紅が生きているかどうかが気になります。夜雨のなかの吾亦紅はどうでしょう。吾亦紅は色も枝ぶりもかわいらしいけれども地味です。夜の雨のなかでは厳しいと感じるのですが。 (1)三代の息を合はせて里神楽 学(50代,男) (2)鳥渡る旅にゐてなほ旅を恋ふ (3)いわし雲だんだん人がゐなくなる (4)霧立ちて山の形を現しぬ (5)秋桜薪割る音のありにけり (6)一滴の大河なりけり秋の夜 (7)しぐるるや踏みて音せぬ瑞巌寺 ご教示を。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、観ている方もうれしくなる良い光景ですね。 (2)、季語「鳥渡る」が中七以下とよく合っていて、良い効果を出しています。「旅にゐてなほ旅を恋ふ」という表現も美しいです。上五で軽く切れているのも、句にリズムがつき成功しています。 (3)、(2)と同じ作り方ですね。こちらも、「鰯雲」と中七以下がとても良く合っていて良いのです。秋の寂寥感を、出しすぎることなく感じさせ、鰯雲の親しみも句意の暗さをカバーしているでしょう。必要以上に深刻にさせないことが良いと思うのです。 (4)、霧が立つと、山がはっきり見えるのでしょうか。上手に思い浮かべれませんでした。 (5)、とても良いですね。秋桜のはかなさと、薪を割る強い音とがよい加減です。上五を「コスモスや」とすることもできますが、この点は読者の好みによるように思えます。 (6)、「一滴の大河」が「秋の夜」とどうつながるか、悩みました。 (7)、こちらも良いです。雨のせいで、足音がしない、落ち葉を踏む音がしない、そんな想像ができ、瑞厳寺に参ったことがなくとも、時雨の秋の参道を楽しめます。 (1)鰯雲猫と並んで見上げをり 墨童(60代,男) (2)秋晴れて富士山(やま)雲を寄せ付けず 晴美先生;この春から、ほんの時々、苦吟しながらなんとか作り上げた”駄句”を送信しております「京都の田舎・墨染に住まう童レベルの非力なる67歳、男」であります。根頃も、ご指導ヨロシク! ドクター朝倉の診断と処方箋 墨染、懐かしい地です。学生時代に通ったところです。こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します。 (2)の壮大な景色と気分がとても良いです。雲を寄せ付けない、という表現も良いですし、上五を「秋晴れ」ではなく、「秋晴れて」としたことも、「秋が晴れたから」とも感じられ、季語の良さが出ているでしょう。 (1)、「鰯」が、猫と付き過ぎてしまったでしょうか。猫と並んで見上げている光景は、面白いのですが。 (1)ひと雨にことさら乱る萩なりし えんや(70才以上,男) (2)秋曉や鏡に逆さ日本地図 (3)外つ国の一輪指しya月見草 いつも親切丁寧にご指導頂き心より感謝致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそでございます。 (2)が良いです。日本地図が秋という季節に似合っているのではないでしょうか。そして、鏡で逆さというユーモアで軽い気分も出ています。旅をしてみようかな、と楽しくなる句でしょう。 (1)、「ひと雨」と「萩」の取り合わせがきれいです。ですが、表現が単純になっていることが残念です。 (2)、「ya」の効果がどうか、ということも句の評価のポイントです。楽しくは感じますが、必然性は高くないかもしれません。句意は、外国の花器と月見草の取り合わせが粋に感じます。 (1)昼の秋隼らしく森騒ぐ さくら(女) (2)風の歌ちりぬるおわか紅葉山 (3)柿熟るるきょうのお話さるとかに 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 表現への挑戦が伺えました。特に、(3)が成功しているでしょう。 (1)、残念です、「隼」は冬の季語なのです。「森騒ぐ」という表現と「隼」がとても興味引かれたのですが。 (2)、「ちりぬるおわか」がどうでしょうか。いろは坂と紅葉山の連想に、読者がどう反応するかだと思うのです。 (3)、「きょうのお話」が、中七でとても効果的に存在しています。なぜなら、「きょうのお話」という背景をいろいろと楽しく想像できるからです。そして、むしろ、上五は柿でなくてもよいかもしれません。そのくらい、「きょうのお話」には意味があります。「さるとかに」という表記も、「猿蟹合戦」よりもやさしく日常会話のようで良いです。 2006年10月13日 自信作選ぶ人なく秋の行く 青戸の入り江(70才以上,男) 先生 こんばんは。 【作句意図】今日は秀逸が貰えるぞ!と句会に出るのですが、ああやっぱりだめだった・・・。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こんばんは、青の入り江さま。そうなんですよね、自信作ほど採っていただけないのです。そこが、句会で鍛えられるゆえんだと思います。 さて、投句ですが、「秋の行く」が効いています。どんなに、自分が、人間が、頑張っても、自然や世界は回っている、過ぎてゆく、と思えました。上五中七は、少々散文的ではありますが、このような作者の吐露の作品が、いくつかあっても良いと考えています。 (1)先のばし先のばしして雲は秋 藤太郎(50代,男) (2)露草やあの頃はと呼ぶ日がありて (3)二人して指差す先の羊雲 ドクター朝倉のお言葉に、すっかり舞い上がっております。今回の3句、甘いとご批評を受けそうなのですが・・・。よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 とんでもございません。私なりの回答でございますので。しかしながら、ありがとうございます。 今回の三句も、表現力を感じました。 (1)、「先のばし」の連続が、とても効果的です。「先のばし」という語意が、語を連続することによって、強まっています。そして、下五の「雲は秋」と、スコーンと抜けるように場面を転換させることの妙。おまけに、秋らしい良い気分も感じられる優れた一句です。 (2)、少し感傷的な句ではありますが、「露草」というさり気ない花と、「や」切れに救われているでしょう。 (3)、甘い句、とは思いません。爽やかさと幸せさが最高潮に達した気分の句です。二人の行為のみの句であることが、成功の要因です。感情を表現する言葉がないことが良いのです。「羊雲」も、あらゆる雲のなかでの選択、お見事です。 月の雨ダリの時計を捲きにけり 涼(70才以上,男) 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「ダリの時計を捲きにけり」が面白いです。「月の雨」という風情ある季語も、前衛的な「ダリの時計」との対比で興味を起こさせます。実際にダリの時計があるのではなくて、心象風景として読みました。『ダリ時計』として、ゆがんだ形状の時計も販売されていますが、その『ダリ時計』を知らなくても、そのように読める楽しさがあると感じます。また、そんな雨の月夜は、だれにでもあるような気さえします。ダリの時計を捲く気分に、そんなことを考えました。 (1)馴染みたる旨酒酌みし無月かな 小口 泰與(60代,男) (2)稲雀羽音定かや大うねり (3)長き夜のトリミングせし写真かな (4)束の間の無上の色や秋落暉 (5)曼珠沙華上毛三山けぶりけり よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (3)が一等良いです。「トリミング」が、秋の夜長を効果的に表現しています。縁取り、縁の切り落としの意味を持つ「トリミング」という言葉が、洒落た響きの音であることも、とても効いています。 (2)、以前も雀と「大うねり」の句を拝見した記憶があります。今回もやはり、「大うねり」が雄大な秋の情景を感じさせます。羽音に注目されたことも興味を引きます。 (5)、「上毛三山けぶりけり」、赤城、榛名、妙義の山々の様子が、気分良く伝わってくるのですが、曼珠沙華との取り合わせはどうでしょうか。もちろん悪くはないのですが、決め手には欠けるようにも感じます。 登山する 踏切の音 風の音 fuji(10代,男) 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 登山と「音」の取り合わせは興味深く思います。ただ、「踏み切りの音」はどうでしょうか。登山真っ最中ならば、踏み切りが近くにある光景は想像しにくいように思えます。登山口ならばありそうですが。踏み切りは面白くも感じますが、評価を難しく思いました。 あなたとの秋はワインとビターチョコ 藤節(50代,女) 甘いような、ほろ苦いような、秋の夜。 ドクター朝倉の診断と処方箋 少し、ストレート過ぎましたでしょうか。「ワインとビターチョコ」が、甘さと苦さを分かりすぎるほどに伝えてしまっています。しかしながら、甘いようなほろ苦いような秋の夜を伝えたい気持ちは良く分かります。例えばですが、「秋の夜君とワインとビターチョコ」などはいかがでしょうか。字余りを避け、「あなた」を「君」にしました。 流れ橋風のみ渡る星月夜 春雪(70才以上,男) 【作句意図】京都近郊の木津川に流れ橋が架かっています。 ドクター朝倉の診断と処方箋 美しい光景です。「風のみ渡る」が、心境を表す風景として良いと思います。誰もいない流れ橋、月と星と自分だけしか存在していないような気分。少し、映画のシーンのようではありますが、「風のみ渡る」の表現によって、句として良い仕上がりになっているでしょう。 (1)本性は暴かれていた路地みかん 北野元玄(60代,男) (2)理不尽と押しくら饅頭石榴の実 (3)俺リンゴ切られてやろうすっぱりと 透明人間を扱った俳句は面白いのですが、ユーモア句だけで終わる危険が大きいですね。自堕落な秋風はうまく表現できたかなと思っておりましたが、暖かいご支持をいただき嬉しく感じました。いよいよ秋の果物の季節です。上3句、単なるユーモア俳句にならないよう、こちらも頑張っているのですが・・・。ご講評をお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)、面白く読みました。「押しくら饅頭」と「石榴の実」の取り合わせが興味を引きます。石榴の実も粒がぎっりし詰まっていますから。一方、上五に悩みました。「と」は、『押しくら饅頭と一緒に』なのか、『理不尽と言いながら(思いながら)押しくら饅頭』なのか、です。後者が、押しくら饅頭の気持ちが分かり、句意も伝わりやすく、愉快です。 (3)も、面白く感じます。口語調の表現が愉快です。自分をリンゴに例えての句でしょうが、なぜリンゴなのでしょうか。すっぱりと切れる、身近な果物ではありますが。リンゴの必然性が高いほど、句の持つ力も大きくなるでしょう。 (1)、路地みかんの生産者、産地などが分かっている、ということでしょうか。それとも、中七で切れ、取り合わせとしての路地みかんでしょうか。「本性は暴かれていた」がユニークな表現だけに、読者に迷いがでるでしょう。こうしか読めない、という表現を作る力も大切だと思っています。 *細かいことばかりを述べたような気も致しますが、北野さまの、俳句を伝えたい気持ちを感じ、それにお答えしたつもりです。良い回答になっていればうれしく思います。 2006年10月12日 (1)団栗で作った指輪はめてくれ 穂波(30代,女) (2)団栗の指輪を撫でて靴洗う 意欲の湧くご指導をありがとうございます。今回もよろしくお願いいたします。「新月の針で湖畔をステッチす」中七下五を「彩る奥日光」から変えました。推敲する前も後も、無意識のうちに唱歌「もみじ」の歌詞に引っ張られてしまったようです。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「新月の針で湖畔をステッチす」、とても良いです。「ステッチす」が秀逸です。品のある言葉と作業、そして、ステッチをする人の心情も感じさせますから。団栗二句拝見。 (1)、面白い表現(「はめてくれ」)と内容です。「で作った」という表現は、少し推敲されると良いでしょう。折角の句意ですから。 (2)、こちらも面白く感じましたが、なぜ靴なんでしょう。その唐突さが愉快で、団栗の指輪との落差を楽しむ、ということも考えましたが。落差を楽しむにも理由がある方が良いですから、こちらも、是非ご再考をお薦め致します。 聖書読む和服の女秋ホテル 涼(70才以上,男) 何時も丁寧なご批評有難うございます。宜しくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ、いろいろと学ばせて頂いております。 「聖書読む和服の女」が、できすぎた光景のように感じました。また、秋のホテルというのも似合いすぎているだけに、実景であっても作られて光景に思えてしまえ、残念です。 雑炊の湯気もいつしか核家族 けんじ(70才以上,男) 老二人の夕食風景です。 ドクター朝倉の診断と処方箋 発想と「核家族」という言葉によって、印象深い句になっています。また、句にアクセントをつけて読み良くするために、「雑炊の湯気」で一度切られて、「いつの間に核家族」とすることもできるでしょう。老二人のことを強調するならば、核家族よりも「大人二人」、「二人分」、「二人前」などどされる方が良いと思います。核家族には、未婚の子女を含むようですので。それにしましても、美味しそうな雑炊に感じます。 (1)山粧ふ褄に青き葉残しゐて 文の子(60代,男) (2)霧深し三井の晩鐘くぐもれる 10/3にご診断頂いた「晩鐘の霧にくぐもり鳰の湖」を推敲しました。音と眺めとから音に絞りました。如何でしょか。 (3)大樹より食み出す一枝秋の風 10/4のご添削有難うございました。「「夜の園響く靴音秋惜しむ」、上五は「夜(よる)の園」ではいかがでしょうか。上五で切れもできますから、句にアクセントもつくと思います。」この場合の3段切れは良いということですね。宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「山粧ふ」に、「褄に」という言葉は良く似合っているようです。ですが、他の表現が平凡になっていて残念です。 (2)、きれいにまとまっていると思います。句の焦点もはっきりしています。「霧深し」にくぐもれる音がよく合っていて良いです。 (3)、「食み出す」という表現に、賛否が分かれそうです。しかしながら、豊かな秋の光景を彷彿とさせる句で良いと思います。どの枝も、幹から出ていて、その幹に守られてもいる、と感じました。 *「夜の園」で良いです。また、三段切れとまではいえないでしょう。「響く靴音が秋を惜しむ」とすんなり理解できますから。 (1)栗拾ふふるさと言葉ふと出でし 小口 泰與(60代,男) (2)榛名富士真向ひにして蕎麦咲けり (3)うとましき犬の遠吠え温め酒 (4)秋風に熟寝(うまい)に落ちし読書かな (5)青空や木犀の香に埋もれ住 よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「ふるさと言葉」が栗拾いに似合っています。「ふと」出るのもいいですね。 (2)、「真向ひにして」が秀逸です。蕎麦の花という素朴な花も成功です。また、「富士山」よりも「榛名富士」がいいですね。 (4)、「秋風」と「熟睡(うまい)」の取り合わせは興味を引きます。 (5)、「青空」と「木犀の香」が、平凡でなはないでしょうか。埋もれ住んでいるのは良い情景ですが。 朝寒を言える人あり島の宿 豊田ささお(70才以上,男) 友人のフォークグループ「凪の座」の持ち歌「島の宿屋」から採りました。「語り明かそう夜明けまで」が結びです。山口県祝い島いい島です。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「朝寒を言える人」という表現が良いです。「朝寒」というものは、ごく日常的におこりうることですが、言葉の通り「寒い」のです。その寒さ、微妙な寒さを言う人がいる、という日常に心惹かれました。ただ、「島の宿」はどうでしょうか。少し唐突な気も致しましたが、海辺の朝の情景としては、俳句として良いです。 2006年10月11日 青邨展構図の冴えや秋深む さくら(女) 宜しくご指導ください。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「構図の冴え」と「秋深む」の取り合わせが面白いです。「青邨」も、程よく周知の画家ですからちょうどよい固有名詞でしょう。芸術の秋ですから、目新しさはありませんが、しっとりとした句で良いです。中七の「冴えや」は「冴えに」、「冴えて」、「冴えし」などが考えられます。「や」切れは、句に切れとアクセント、意味の強調、詠嘆をつけます。そこまでの働きを必要としない場合は、呈示したものとなつるでしょう。 助手席の萩に触れればこぼれ落ち 青戸の入り江(70才以上,男) 【作句意図】女性を乗せて吟行に行ったときの想像句です。(*^_^*) ドクター朝倉の診断と処方箋 「助手席の萩に触れれば」が大変良いです。上品なときめきさえ感じる、素敵な表現です。その一方、残念なのが、「こぼれ落ち」です。平凡に落ち着いてしまっていると感じます。「作句意図」を読まずとも、「助手席の萩」は、何かの比喩だったり、想いの具象化であることも考えられますから、是非、下五のご再考を。 最上川舟歌山は粧へり 八島寛(70才以上,男) 最上川船下りの体験をしました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 川と山の対比が効いている句で良いです。また民謡である「舟歌」と「粧へり」の対比も見事です。計算されたように感じるほどです。感情を表す言葉は何もありませんが、気持ちの良さ、景色の美しさが十二分に伝わってくるでしょう。芭蕉の「五月雨をあつめて早し最上川」も思い出しました。 木犀の咲くも香るもただ一過 けんじ(70才以上,男) 庭の金木犀が咲いた、いい香りと思ったらあっという間に散っていた。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「咲くも香るもただ一過」、お見事です。木犀の、ともすれば平凡になる情景を、表現の巧みさで印象的な句にされています。凡句になりやすい木犀でも、まだまだ良い句は作れるのだ、と思いました。また、「木犀や」と切れ字を使った上五も可能です。 (1)日の残る峡の一隅秋あかね 彩貴(40代,女) (2)コスモスや主婦に戻れる橋渡る (3)奉納の踊飛び散る笠飾り よろしくお願いします。皆さんの句を拝見して勉強もさせて頂いています。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)が良いです。立場上、同感する、という評価ではありません。「主婦に戻れる」の「戻れる」を評価しました。「戻る」ではありきたりなのです。「れる」に、主婦の希望を見ることができるからです。主婦という、軽んじられることに反感を持ちがちな言葉を、しなやかに使われていると感じました。表現の持つ力を改めて実感する句です。「橋渡る」もとても効果的です。 (1)、「日の残る」と「秋あかね」が、良い取り合わせです。「一隅」という表現が秀でています。 (3)、「飛び散る」は、「踊り」と「笠飾り」の両方に掛けて読むことができますね。 (1)秋澄めり英語の案内聞き取りし 文の子(60代,男) (2)単線の地平へと伸ぶ秋の雲 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 どちらも、秋の気分が伝わってきて良いです。 (1)、英語の案内、という句材も効いています。夏ならば暑苦しく、冬ならば寒くてイライラかもしれません。秋は学びの季節であることも、無意識に影響しているかもしれませんね。また逆に、「聞き取れず」も面白い気がしました。 (2)、地平へ伸びたのは線路で、「秋の雲」の前で切れている、と取りました。そうですと、切れをはっきりさせた方が良いでしょう。「単線の地平へと伸び秋の雲」、もしくは「単線は地平へと伸ぶ秋の雲」ではいかがでしょうか。 (1)うつつなき小犬の貌や忍草 小口 泰與(60代,男) (2)赤城より風と舞ひ降る曼珠沙華 (3)赤城より日矢と舞ひ降る曼珠沙華 (4)秋陰や墨絵のやうな赤城山 (5)曼珠沙華八入の紅の疎ましき (6)せせらぎの香り奏でし秋茜 (7)七鉢の花有る事務所秋の空 (8)曇天にきりつと起つや曼珠沙華 (9)こすもすに日矢あたりをり露の玉 (10)秋の灯やかりつと崩る花林糖 ご親切な添削有難う御座います。「田代湖の風光りをり秋きやべつ」をもう一度推敲してみました。「田代湖の風奏でけり秋きやべつ」。よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 まず、田代湖のキャベツの句から。三句中では、「田代湖の光り沸きいし秋きやべつ」、良いですね。光によってキャベツも活き活きとしている様子が伺えます。いつも熱心な投句に、こちらこそうれしく思っております。 以下の十句拝見では、(10)にとても惹かれました。「秋の灯」と「花林糖」がとても良い感じです。「崩る」という状態も、ほんのりとやさしい気配が漂い、秋の灯によく合っています。 (7)、「七鉢の花」が良いです。事務所という無機質な場所が、花を対照的に際立たせています。春ではなく秋という季節もさり気なくて良いでしょう。 曼珠沙華の句では、(8)の表現が良いと思います。曇天と曼珠沙華の対比、そして、曼珠沙華の「きりつと起つ」さま、曼珠沙華を魅力的に描いておられます。こんな曼珠沙華っていいなあ、と思わせる句です。 また、(4)の、「墨絵」という表現を面白く感じます。ですが、「のやうな」が残念です。それによって、句が退屈になってしまいそうです。 2006年10月10日 青みかん幼さ残し声変わり れい(70才以上) よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 青蜜柑の持つ、独特のニュアンス、雰囲気を上手に捉えられ、良い句に仕上げられていると思います。〈老の眼の僅かにたのし青蜜柑 百合山羽公〉や、〈嫁がねば長き青春青蜜柑 大橋敦子〉の句に見られる、青蜜柑に投影されている『年少、齢若』といったものが、共通しています。また、中七は「幼さ残す」も考えましたが、好みによるかもしれません。 せみ時雨汗を拭きつつ衣替え 賀代子(70才以上) よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「蝉時雨」と「ころもがえ」、どちらも夏の季語ですね。俳句では、「更衣・衣更え」と書きます。この句での「衣替え」は、着替えること、とも考えました。そうしますと、真夏の暑さいっぱいの句になるしょう。蝉時雨の暑さが倍増するような声と、汗を拭く行為は、よく合っています。 塀の上猫立ち止まる今朝の秋 由利子(70才以上) よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「猫立ち止まる」が良いです。秋の朝によく似合っているでしょう。気候が暑すぎても、寒すぎても、そんな猫は見ないでしょうし、人間も猫を見る余裕はないでしょうから。そして、春よりは秋でしょう。春の猫はお相手探しに大忙しで、こんな句の材料にはなってくれません。言うなれば、「塀の上」が何か工夫できそうです。しかしながら、楽しめる一句です。 メローなる調べしみいる秋の宴 郁子(60代) よろしくご診断ください。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「メローなる」が、秋とぴったりで良いです。最近はあまり使われない表現だと思いますので、個性的に感じます。一言申せば、「しみいる」に推敲の余地があるでしょう。句意は「メローなる調べ」と「秋の宴」で伝わっています。より、情感や雰囲気を持たせる表現ができると読者の心を打つことでしょう。 (1)運動会勝つ気なき児の笑顔かな 泰(50代,男) (2)落蝉の天命全うしたりけり 宜しくご診断お願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、とても愉快ですね。「笑顔かな」が、この句の楽しさを充分に表現しているでしょう。そんな運動会の場面があってもいいなあって思わせる、幸せな気分にさせる句です。 (2)、少し言い過ぎましたでしょうか。「天命」と「全う」、どちらかの言葉で句作されると良いと思います。 抽象が銀杏の絵も止まります 裸時(30代,男) いろいろ試みたいです。よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 是非、どんどん試して下さいませ。 「止まる」のは、「抽象」でしょうか、「銀杏の絵」でしょうか。「抽象」でしたら「銀杏の絵に(も)」が良いですね。「銀杏の絵」でしたら「抽象や」でしょうか。抽象と銀杏の取り合わせは面白く感じます。止まる、という句意も興味をひきます。もう一歩、読者に通じやすくできると成功です。 (1)九月萩ゲノムとともに老いてゆく 北野元玄(60代,男) (2)ケイタイに秋はゲノムの住むという (3)月を背にドラキュラ遂に力失せ 里芋と駅の句、銀河のメイルの句とこれまでにない境地にたどり着いた気がしております。これもドクターの心のこもったご指導とご鞭撻のおかげです。今回は揚げ3句のご講評をお願いいたします。ゲノムは仕事上専門領域でしたので、これまで触れないできました。また、これからもあまり触れないつもりですが、今回は例外的に2句作句してみました。ドラキュラの句は苦心しました。興味深いテーマですので、今後だんだんと推敲していきたいと思っております。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ恐縮でございます。残りの担当の励みになります。 ゲノム二句、(1)がとても良いです。「九月萩」という言い方が適切かどうか迷うところでありますが、「萩」という花と「ゲノムとともに老いてゆく」は、実にぴったりです。過不足なくしっくりと合っていると感じました。「遺伝子」や「DNA」ではなく「ゲノム」という言葉が、感覚的に新しく、人の肉体へもう一歩踏み込んだ感じもあり、効いています。 (2)は、空想の世界ですね。読者の好みは分かれるでしょうが、そういうことも秋ならあるかも、と思わせられました。 (3)、説明だけの句になっているようです。あともう少し、情感、抒情などが組み込めたら、と感じます。 ドラキュラもゲノムも、とても興味を引く句材です。面白い(おかしい、という意味ではなく)句ができそうで、楽しみです。 (1)アダージョに替はれる歩み虫の声 文の子(60代,男) 10/2のご診断有難うございました。「アダージョに替はる雨音虫の声」は「雨音のアダージョになり虫の声」を元句に、因果律にならないようにしたのですが、今度は同時に2つの音に成ってしまいました。「アダージョのテンポの雨や虫の声」は説明っぽいので、景を替えてみました。如何でしょうか。 (2)菜園のか細き支柱野分めく (3)山国の小春や猫のくつろげる 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、アダージョ、四句拝見しまして、「雨音のアダージョになり虫の声」が、読みやすく多くの読者に分かりよいと感じました。上五は「雨音は」でも良いでしょう。他の三句よりも良いと思いましたのは、シンプルであることが大きいです。雨音と虫の声、どちらも意味深い言葉ですから、お互いにケンカをしないような表現、句意がいいと思うのです。表現も句意もシンプルで、読者の心に響いてくるのが、「雨音のアダージョになり虫の声」でしょう。 (2)、「か細き」が、説明しすぎているでしょう。発想は良いです。「野分めく」も句意と合っている表現です。 (3)、「くつろげる」を、猫の具体的な動作にすると、よりくつろいだ気分が出るでしょう。直接的な言葉より、動作・行為を表現する方が共感を得ることも多いですから。 片恋の忘れしころに花木槿 風葉(60代,男) 推敲を重ねて掲句を選びました。「片恋も思い出となり花木槿」「片恋の古りたる日記や花木槿」「片恋の時の古りけり花木槿」などが推敲の例です。句の内容自体が平凡かも知れません。ご指導ください。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「片恋の忘れしころに花木槿」が一等良いです。他の句より断然良い感じを受けました。内容が平凡、と仰っていますが、その平凡さを上手に表現され、読者の共感を呼んでいます。「片恋」という古風な言葉と花木槿が良く似合っていますし、「忘れしころに」が成功の要因です。推敲に推敲を重ねられて、出てきた表現ではないでしょうか。 (1)廃線や園児の写生秋うらら さくら(女) (2)秋澄むや水車の回る峠道 いつも有難う御座います。宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそでございます。 どちらもとても良い光景です。秋の風情、雰囲気が気分良く伝わってきます。 (1)、「秋うらら」が上五の方が良いと感じます。「廃線」という語感よりも、ずっと明るいですから、句が引き立つのではないでしょうか。しかしながら、そうしますと、下五が難しくなりますね。もちろん、このままでも良い句です。 (2)、「水車の回る」がもう少し工夫できそうにも思えますが、良い句です。 2006年10月9日 (1)ハモニカでスワニー川を吹く良夜 まりあ(40代,女) (2)稲を刈る軌跡躊躇ひなく続く はじめまして。いつも楽しく読ませいただいています。よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそはじめまして。感想をうれしく思います。初回ですが、大胆にさせて頂きました。 (1)、良夜かなスワニー川をハモニカで (2)、躊躇(ちゅうちょ)なく続く稲刈る軌跡かな いかがでしょうか。とても良い感性を感じましたので、その感性をできるだけ活かしたく思います。それには、句のリズムや口調も考えました。 また、どちらの「かな」も、口語調にこだわる場合、「です」を使われる方もいます。「かな」が句と合わないと感じるときは、(1)の上五を「秋の夜」などとします。(2)は、ご自身の投句の形になりますね。 発想と着眼、どちらも優れていると感じました。 (1)朝寒や水際の樹影あざやかに 豊田ささお(70才以上,男) 口語俳句へのご助言ありがとうございました。あまり硬く考えずにしなやかに作れたらと思いますが・・いま3日にある句会の兼題「朝寒」に悩んでいます。 (2)溝蕎麦のなだれるような谷津田かな 谷戸田 とか谷津田というのは、西日本ではあまりいわんので、「ミゾソバがなだれるように咲いてくる」などとも作りましたが、・・今日NHKの俳句手帳で坪内先生の「帰るのはそこ晩秋の大きな木」拝見、感動でした。「帰るのはそこ・・・」はるかな高みにおられる感じですね。 (3)葛の花触れば餡の匂いたつ 「葛の花餡この匂いとまた言うた」を推敲してみました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 そうでうね、理論より実践!というところもあります。 (1)、朝寒の気配が感じられて良いですが、もう少し具体的な光景に致しましょう。「あざやかに」というストレート過ぎる表現を避けて、水際の樹の様子を具体的に表現することをお薦めします。 (2)、そうですね、馴染みのない言葉ですが、句としてはきれいに整っていて良いと思います。「かな」で谷地である特徴ある場所が強調されているでしょう。 (3)、こちらも、きれいに仕上がっている句です。「触れば」の仮定の条件が効果的です。☆「帰るのはそこ晩秋の大きな木」は、私も好きな句です。晩秋ですが、胸に暖かいものが流れ込んでくる感覚を覚えます。そして、こんな晩秋を過ごしたくなるのです。 (1)秋の海波先白く墓参り 豊純(70才以上) (2)運動会テルテル坊主雨にぬれ (3)虫の声ひとしきり鳴きいずくかに (4)とだえがち虫の声姫く秋の夜 いつも有難う御座います。先日の四句推敲してみました。ご診断ください。 「昼寝覚めあ逢いたき人の夢に来し」→「昼目覚め去り行き人や夢の中」 「帰省待ち尽きぬおしゃべり夜の秋」→「帰省待ちつもる想いを夜の秋」 「朧月涼風もらう初秋かな」→「朧月そよ風もらい浜を行く」 「秋の旅吸い込まれゆく熱海の灯」→「秋の旅熱海の夜景引き込まる」 又厚かましく四句送りますご批判下さい。お返事おまちしています。娘さんのお世話があるのにこんなにいっぺんに沢山送りましてごめんなさい。 ドクター朝倉の診断と処方箋 お気遣いありがとう存じます。でも大丈夫です。投句者の熱心な姿勢にパワーもでますから。 まず、前回の四句です。 ・「昼目覚め去り行き人や夢の中」、すっきりとして良いと思います。「去り行き人」が成功の理由ですね。「昼目」は「昼寝」のままで良いでしょう。 ・「帰省待ちつもる想いを夜の秋」、「つもる想い」を思い切って、何かの行動にされてはいかがでしょうか。行動で、待ちどおしい気持ちを表現することに、俳句という文芸の面白さがあると考えます。 ・「朧月そよ風もらい浜を行く」、「そよ風」と「浜」をひとつにして「浜風」はいかがでしょうか。 ・「秋の旅熱海の夜景引き込まる」、夜景に引き込まれる、という感覚が良いですね。熱海で、すでにそこは旅先と分かるので、「秋の熱海」でも良いでしょう。 今回の四句では、(1)が良いです。秋の海の様子と墓参がよく合っているでしょう。ただ、「墓参り」も秋の季語ですので、「海」だけでも伝わると思います。「海○○○波先白く墓参り」などとして、「秋の」の三音分、情景がより豊かに詠める可能性があります。 (2)、(3)、気持ちはよく分かるのですが、分かりすぎてつまらなく感じます。言い過ぎに注意して、表現を工夫されると良いでしょう。 (4)、「とだえがち」という着眼に興味が持てました。「夜ひとり途絶えがちなる虫の声」としてみました。「秋の夜」と「虫の声」で季語が複数になっていましたので。また、秋の夜にひとりでいると、自ずから耳を澄ますことになるとも考えた結果です。 (1)草の花あの角曲がりバスは行く れい(70才以上) (2)長き夜や点滴の手の冷たくて またご指導いただけることうれしゅうございます。よろしくおねがいします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそでございます。うれしいお言葉ありがとうございます。 (1)が良いです。「草の花」が実に良く使えています。秋の野草の花の可憐さ、素朴さ、そして心に響く何か、それが、「『あの』角を曲がるバス」に投影されているようです。「行く」という突き放した表現も、句を過剰な感傷的なものにせず良いです。 (2)、実際に入院して点滴の経験があったり、そのような身内がいらしたりすると、実感として胸に響くと思います。一言申せば、(1)の句にくらべ、感傷的です。自分自身の一句としては充分に良いと思いますが、読者を意識した場合は推敲できると思うのです。 (1)初秋刀魚夕餉に載せて子を思う 賀代子(70才以上) (2)天高くつつじの中に彼岸花 よろしくおねがいします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 どちらも、日常の中での感性ですね。丁寧に日々を過ごしておられると感じました。 (1)、子を思う気持ちは、初秋刀魚を夕餉に出すことで表現できています。下五を有意義に使いましょう。 (2)、つつじが春の季語ですから、避けてみましょう。また、天高くと彼岸花の二つの秋の季語も、できれば一つにしたいところです。しかし、天に届かんばかりに咲く彼岸花の様子が良く出ていますから、それを大切に致しましょう。「彼岸花どの花よりも天近し」ではいかがでしょうか。 (1)心地よき水温となり秋深む 由利子(70才以上) (2)薄月や心のうさをはらい得ず ご診断お待ちしています。 ドクター朝倉の診断と処方箋 どちらの句も、鋭い感性を感じます。折角の感性です。句としての口調を良くしますと、もっと生きてくると思うのです。 (1)、「秋深む心地よき水掬う時」 (2)、「薄月や我憂鬱を追いやれず」 随分と手を入れてしまった感がありますが、ほんの一例として述べました。口調を整える時の方法です。まず、語順を変えること。そして、言葉を熟語に変えてみたり、名詞を動詞にしてみたり、また動詞を名詞にしてみたり、など。ただ、どうしても使いたい言葉がある時は例外ですが。 (1)お迎えのほおずき灯る飾り棚 郁子(60代) (2)こおろぎの語るが如く鳴く夜深 よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)が良いと思います。「語るが如く」が成功しています。じっくりと聞く虫の音でありますし、夜深ならではの句でしょう。句の後半の口調が、少し良くない気がしますので、その点は推敲の余地があるでしょう。 (1)、情緒は感じられるのですが、説明っぽい感じを受けます。どの語も似合いすぎていることが原因かもしれません。 赤松の皮がりがりと秋彼岸 涼(70才以上,男) 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 赤松の皮をがりがりとするのはなぜなのでしょうか。盆栽の手入れかとも想像しました。そうであれば、秋彼岸とはよく合っていて良いと思いますが、多くの読者の共感は難しいかもしれません。日本間の柱とも考えました。赤松からの連想でしたら、盆栽より松茸なのかもしれないなあ、とも思いました。 街角や 一人カラオケ リンゴ歌 菊美(60代,女) 始めまして、宜しくお願いしますm(__)m。天高く、、季語を入れるか?リンゴで季語になりますか?添削、宜しくおねがいします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそよろしくお願い致します。 リンゴは秋の季語ですが、「リンゴ歌」では少し厳しいでしょう。仰るように、「天高く一人カラオケリンゴ歌」とされてはいかがでしょう。カラオケで高らかに唄っている様子が、「天高く」と合いますし、カラッっとした秋晴れの様子が出ることでしょう。 秋の暮すべり台しかない公園 fuji(10代,男) お久しぶりです。リズムは悪いですが、気持ちを詠み込んだつもりです。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「秋の暮公園にあるすべり台」ですと、投句とは少し意味合いが変わってきます ね。fujiさんは「しかない」と強調したいのだと思いますので、悩みます。破調(五七五の定型から外れていること)がいけないわけではありませんが、破調の良さがない場合には、できるだけ定型にしてみましょう。しかしながら、投句は印象的な光景が良いです。そこに情感もあるでしょう。推敲の結果、破調であるのならば良いと考えています。 (1)稲光太平洋の見ゆるまで 学(50代,男) (2)月の弓山深くにと還りゆく (3)門も戸も開けっ放しや稲穂風 (4)林檎掌に学友の見つめる山河かな (5)いわし雲人はだんだん消えてゆく ご教示を。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (5)に惹かれました。「人はだんだん消えてゆく」がとても印象的です。そこは、人は必ず亡くなる、ということを暗示していると取りました。それに、「いわし雲」は合っているでしょう。秋の空は、美しくもどこか寂しく、来たるべき冬の気配さえ感じられるものですから。 (3)、気持ち良さがとても出ていて良いです。窓ではなくて、門、戸というところが、開放的な気分を生んでいます。田舎の秋のおおらかさと豊かさを感じる句です。 (4)、意味深長ですね。その思いが過ぎるかもしれません。 (1)、(2)、句意に迷う読者がいるかもしれませんが、きれいな情景です。 2006年10月8日 能面の語りかけ来る秋の暮れ 春雪(70才以上,男) 朝倉先生、先日の拙句、「猫じゃらしおいでおいでと散歩道」で下5に推敲の余地在り、とのご指導、「猫じゃらしおいでおいでと風の音」では如何でしょうか? 【作句意図】能面の作品展を見てきました。不思議と引き込まれる感じでした。 ドクター朝倉の診断と処方箋 猫じゃらしの句ですが、散歩道よりも風情がでてきて良いと思います。風という要素が、句の情景をふくらませました。 能面の句、良いです。秋の暮れもよく合っているでしょう。「能面の語りかけ来る」をすっきりと「能面に語りかけらる」でも良いかもしれません。しかしながら、語りかけられて来る、という能面の強い意志を感じるのは、前者ですね。 (1)膝小僧並べて足湯秋うらら 悠(70才以上,女) (2)秋の蝉力限りの一声か (3)露天湯の程よき加減秋あかね 何時もありがとうございます。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、なんて楽しい句なのでしょう。どんな年齢の膝小僧かはわかりませんが、かわいさまで感じます。そして、「秋うらら」で、楽しさ倍増です。足湯、温泉の句としては、意外な面白さがあり良いです。 (2)、きれいにまとまっています。蝉の最後の力強さも感じさせる口調です。少々、説明っぽくはありますが。 (3)、平凡でしょうか。「程よき加減」が言いすぎなのかもしれません。 (1)吾よりも高く美し木槿咲く 由利子(70才以上) (2)秋冷を知る玄関を出でし時 お久しぶりでございます、またお世話になります。よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ、拙い処方箋ですが、よろしくお願い致します。 (1)、良いです。あえて、「高く美し」と言い表している点が、成功していると思います。言い過ぎると、句としては魅力に欠けるのですが、今回は、「我よりも」と比較して言い切ることで、木槿の様子と「吾」の気持ちがでています。「吾よりも」がなければ、この句の良さはないでしょう。 (2)玄関を出た時、秋冷を知る、ということは良い感受性でしょう。句としては、少し説明っぽくなっています。表現が推敲できるのではないでしょうか。 (1)悠久の時をはらみて大賀蓮 郁子(60代) (2)嵐去り切り継ぎ模様秋の雲 またお目にかかれてうれしゅうございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそうれしく思っております。 どちらも句も、言葉を上手に選ばれて、それが句の雰囲気を出しています。 (1)、「悠久」と「はらみて」が良いです。大賀蓮ならではの表現であり、句でしょう。 (2)、「嵐」と「切り継ぎ」が、秋の雲という季語を十二分に表現しています。また、「切り継ぎ」が独創的でもあります。 (1)炎天下干された梅の香り満ち 賀代子(70才以上) (2)五目飯秋を知らせるきのこの香 はじめまして、まだ日が浅いのですが、よろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 はじめまして。 俳句に係わってからの時間の短い方からは、新鮮なものを頂くことがあります。こちらこそよろしくお願い致します。 香りの二句、拝見しまして、どちらもやさしい日常を感じました。日々を丁寧に送られている気配も。 句の表現について申します。 (1)、「満ち」が、少々単純な言葉でしょう。香りがいっぱいでたまらない、ということを表すならば、「満ち満ちて」という言葉もあります。また、香りがぐっと胸に迫ってくる様子でしたら、「香立ち上る」という表現も。「炎天下」も夏の季語になりますので、例えば、「干されゐ(い)る梅の香りは満ち満ちて」などとできます。 (2)、とても幸せな良い気分ですね。その気分を読者に、より伝える句に致しましょう。「五目飯」と「きのこ」、ひとつにして字数を節約することができます。「きのこ飯」です。「きのこ飯秋を知らせるお膳の香」なども一例です。 (1)きのふまで蝉の山なりけふは霧 希妙(50代,男) (2)蜘蛛の巣もティアラと成りぬ萩の露 よろしくご教示を。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、下五の「けふは霧」への転換が優れています。中七で「山なり」と終止形(言い切りの形)切れていることも、転換への衝撃があって良いです。「きのふ」「けふ」の平かな表記も効果があると思います。蝉という賑やかなものから、一転、霧という無声、無音のもの、その対称も効いています。 (2)、前回、「蜘蛛の巣もティアラとなりぬ萩の露」を述べさせて頂きましたので、「成りぬ」の表記について。「なりぬ」の方がやわらかい印象もあって良いでしょう。 秋海裳恋の傷などなぐさめ合い ねぎよしこ(70才以上,女) 1句だけですみません。よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 何句でも結構です。回答の差異はございません。 「秋海棠」と「恋の傷」がとてもよく合っていると思います。もしかすると、これは女性だけの感覚かも知れませんが。「なぐさめ合い」も言いすぎている気も致しますが、秋海棠という花に助けられていて、良いと思いました。「など」も効いています。 (1)数珠玉の温もりやさし日暮みち しんい(60代,女) (2)数珠玉やクラス仲間の結びつき よろしくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 数珠玉二句拝見、(1)がとても良いです。数珠玉にぬくもりを感じる鋭い感性を上手に句にされています。植物だからぬくもりがあるのですよね、人工的な数珠だとそれはありませんから。それをやさしいと感じる心。日暮道もかなしくありません。明日への希望させ感じさせるでしょう。 (2)、同窓会などの挨拶句としては、温か味のある句で良いでしょう。ただ、「数珠玉」と「結びつき」が付きすぎと感じます。また「クラス仲間」ということで、郷愁が強い句になっています。 (1)木犀の風たずさえて見舞客 穂波(30代,女) (2)起きなさいほら朝顔が咲きそうよ (3)咲きたての朝顔わらう子もわらう 今回も温かいお言葉ありがとうございました。朝顔の句から子どもが消えてしまったのが自分としても残念だったので、作り足してみました。「フエルトのスリッパに替え九月立つ」上五が「白い雨」だとぶれるとのご指摘を受けて換えました。九月は終わってしまいますが、出来事や気持ちが句になるまで、入門者は時間がとてもかかります。お許し下さい。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「フエルトの〜」の句、良いですね。フエルトのスリッパという句材の勝利でしょう。フエルトは昔からある、やさしい素材の生地ですから。そして、安価。九月がごく日常的に、しかし優しい気持ちで始まる、そんな光景の句です。 (1)、「木犀の風たずさえて」という表現が秀逸です。匂う木犀だからこその表現ですし、風をたずさえるという感性が良いです。私は、見舞客より普通の客がいいですね。あまり意味を持たせない客の方が、さりげない日常での素敵さが出てくると思うからです。 (2)、(3)、とても気持ちは伝わってきます。が、少々表現しすぎかもしれません。私自身も、家族(特に子供)を詠むとそうなりがちで、困ってしまうのです。ですが、是非、朝顔と子供の句は大切になさって下さいませ。 また、ご自分のペースを大切になさって句作を続けて下さい。俳句は、心に響く文芸作品だと思っています。ひとつひとつ大切に作ることは良いことです。 畦道の撫で切りされし彼岸花 雀子(60代,男) 信長の時代のような気がしますが。よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 彼岸花ならではの表現です。インパクトもあります。現実にそんな風景は目にしますし、「撫で切り」という表現によって、作品となっています。 (1)栗が落つここは国道坂の上 さくら(女) (2)秋の朝広場に急ぐ爺と孫 なんとなく物足りなく感じますが---よろしくご指導下さい。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)が良いです。「ここは○○△△の□□」という言い方は、他にもなくはないですが、「国道坂の上」はオリジナリテイがあります。「栗」という落ちて楽しい実も成功です。 (2)、こちらが物足りないですね。朝の広場に行くことと、爺と孫、どちらも平凡です。実景に、いかに情感を持たせるか、感動や面白さを持たせるか、句の情景を退屈にさせないことが必要だと思います。 2006年10月7日 (1)木守柿伐られて空を蒼くせり 遅足(60代,男) (2)柿木は残りて家の絶ゆるなり 芋の句の診断、とてもうれしく読みました。ありがとうございます。柿といえば、もう無くなって久しい父の里の柿、もうすぐ絶えるかも、という母の里を思い出すのですが。どちらが良いでしょうか? ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ、うれしく拝読しました。 二句とも、充分に、季語「柿」を生かしきった句と感じます。それに、どちらも少しだけ救いのある句だと思うのです。そこが、また句として気分の良いものになっているのではないでしょうか。(1)の「空を蒼くせり」、(2)の「残りて」。この世といいますか、自然には、全てを無にはしてしまわない流れがあるのでは、などと、深く感じたりしました。 秋の田の妊婦の提げし手弁当 風葉(60代,男) ご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 豊かさいっぱいの句ですね。秋の田んぼは、実りそのものですし。妊婦さんも新たな命を生み出します。そして、手弁当も。おかずの内容より、手作りをするという気持ちの豊かさです。最近のように、どこでもコンビニなどでお弁当が買える時代だと余計に感じます。表現では、「の」の連続が少し気になりますから、上五で切られても良いでしょう。とても、気持ちがゆったりとする句です。 (1)かわたれに苅田くっきり縞模様 俊(50代,女) (2)彼岸花積み上げて坂上りきり ご指導宜しくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 二句拝見、どちらも、表現に個性と工夫を感じました。 (1)、「苅田くっきり縞模様」、口調もよく、はっきりと光景が見えます。「かたわれに」というのは、片側に、ということでしょうか。そこが少し分かりにくく残念ですが、秋の田の気持ちよさがでていて良いです。 (2)、「彼岸花積み上げて」が良いです。彼岸花ならではの、豪奢といいますか、大胆といいますか、そんな情景が感じられます。坂を上るという行為も、元気さ、明るさがあって合っています。一点、気になりますのは、積み上げながら上るのでしょうか、それとも積み上げ終わって上がるのでしょうか。はっきりさせた方が、句があいまいにならず良いと思います。 (1)白萩の暮れ残りたる雨の庭 千鶴子(60代,女) (2)それぞれの部屋に秋灯消えやらず どうぞよろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)が良いです。秋灯をとても上手に、美しく、そして情感を持たせて詠まれています。「それぞれ」と「消えやらず」という表現が、成功の要因でしょう。 (1)、きれいな情景で、うっとりしますが、少し平凡な表現になっているでしょう。 (1)秋惜しむ塗りの剥げにし引き出物 文の子(60代,男) 9/29のご診断有難うございました。また、首のコルセットばかりで申し訳ありませんでした。 (2)冬田駆く込みし国道眺めつつ こんなことをしていると、又ぶつけられるかもしれませんが。 (3)ゑのこ草傘を斜めの擦れ違ひ 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 いえいえ、こちらも楽しく読みました。ひとつの句材でいくつも作ってみることは、良い修練になります。 (1)、剥げた塗りに、「秋惜しむ」ですから、少しわびしい感じを受けました。引き出物は以前に頂いたものでしょうか。時の流れの寂しさを表現されていると感じました。 (2)、愉快で良いですね。冬田が句に雰囲気を持たせています。 (3)、ゑのこ草と秋雨の一句ですね。さりげない情景が良いです。秋の雨の日に、ただ擦れ違うだけのこと、そこに猫じゃらしがあっただけのこと。けれども、そこには秋の静かな情感があるのです。 (1)畦道を占めたる雀露の玉 小口 泰與(60代,男) (2)洗はれし木々の耀き温め酒 (3)ひねもすの雨に栗の実笑み割れし (4)雲流れ稲田に伸びし己が影 (5)悠久の利根の流れや秋桜 よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (3)、(5)が良いです。(2)も惹かれましたが、「洗はれし木々の耀き」が、 どうしても初夏のイメージなので次点とさせて頂きました。 (3)、「笑み割れし」が「ひねもす」の語感と合っています。栗が熟れて毬が割れ るのは、珍しくない光景ですが、その二語で鑑賞に値する情景になっています。 (5)、利根川に「悠久」は、特に個性的な発想ではないと思いますが、「秋桜」が その悠久さを助けていると感じます。「や」切れも効いています。 2006年10月6日 赤ん坊ダリの足足イノシシの 裸時(30代,男) よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 赤ん坊は、ダリの絵の足のようで、それはイノシシの足に似ている、ということでしょうか。「足足」は強調と取りました。大変ユニークで独創的なのですが、それゆえ、難解になっています。 朝寒や郵便受けをいつ覗く 豊田ささお(70才以上,男) 暖かきご指導身にしみて元気が出ます。さて、この句、あほらしいですが、実感です。 ドクター朝倉の診断と処方箋 うれしいお言葉ありがとうございます。こちらこそ、投句に励まされております。「朝寒」ということは、朝刊を待っているのでしょうか。郵便を待つ情景も考えました。どちらも、待ち遠しさ、日常のちょっとした楽しみ、そんな気分が出ています。ただし、「朝寒」が情景をあいまいにしているのではないでしょうか。楽しい句だけに、はっきりした方が良いと感じます。 風そよと萩群揺するためにだけ 槻亭(60代,男) 一年ぶりぐらいの投稿です。 ドクター朝倉の診断と処方箋 一年ぶりの投句、うれしく思います。 「萩群揺するためにだけ」という表現が、印象的で良いです。口語の言い方を上手に利用されているでしょう。萩の特徴も出ています。一方で、「風そよと」が少し単純な感じを受けました。 (1)撫子や花背峠に別れ行く せいち(60代,男) (2)追分の地蔵堂より花野道 (3)秋鯖と憩ふ峠や山毛欅の巨樹 すべて「鯖街道」二日の山旅のものです。(3)は、「鯖街道」の「根来坂峠」にて、と前書きが必要かもしれません? よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (3)、前書きがなくとも、峠の茶屋で鯖寿司でも食したのかなあと、思えたりはします。「秋鯖」が唐突ではありますので、前書きとつけるとそれが軽減されるでしょう。どちらにしましても、何となく楽しい気分のある句で良いでしょう。 (1)、撫子が効果的です。「別れ行く」もすっきりと言い切って良いです。 (2)、旅の一句、ご挨拶ですね。 (1)コスモスを手折り高層ビル昇る 風葉(60代,男) (2)留袖のゆびたおやかに衣被 「留袖」と「振袖」で少し迷いました。ご指導よろしく。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「コスモスを手折り」から「高層ビル昇る」への転換が見事です。また、さりげなく現代社会も表現しています。皮肉っているわけではなく、「コスモス」に救いが感じられ、穏やかな良い句になっていると思います。 (2)、振袖ですと、若々しくフレッシュな現代風になり、留袖ですと、しっとりとした少し古風な雰囲気の句になるでしょう。判断は好みによるところも大きいでしょうが、私は振袖を推します。若々しいのだけど、衣被を触る指はどこか大人っぽくて、とそのアンバランスさに惹かれるからです。 (1)波のやう打ちなびきゐる荻の声 小口 泰與(60代,) (2)下冷にひねもす腰の疼きけり (3)秋の雲八入の紅の映えにけり (4)芋の露ほの見ゆけふの浅間かな (5)温め酒出湯に集ふうからかな (6)白菊やかはたれ星の耀(かがよ)へる 朝倉先生、「百選の棚田や秋の風さやか」を「百選の棚田さやかな秋の風」に添削いただき感謝申し上げます。 今後ともよろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ、熱心に読んでくださり光栄です。「百選の棚田」は本当に良い句材でした。 六句拝見し、(1)が一等良いと思いました。比喩が見事です。〈荻の穂のそよぐおとこそ秋風の人に知らるる始めなりけり(紀貫之)〉を思い出すほどに。「波」という言葉が、荻の声に量感を持たせている点も、句を豊かにしているでしょう。 (2)、「ひねもす」が良いですね。 (3)、雲と虹の両方は、少し重たいです。 (4)、芋の露の雰囲気が出ています。 (5)、「うから」が効いています。 (6)、以前、述べさせて頂いたと記憶しています。 2006年10月5日 秋涼や小紅の渡し幻か 涼(70才以上) 長良川にあった渡し舟です。宜しくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 大胆かつ幻想的で良いと思います。季語も合ってるでしょう。映画のシーンのように決まりすぎているようにも感じますが、それは好みによるかもしれません。「幻か」の表現に、大胆さと個性を感じます。 (1)ひっぱって降ろす日の丸鰯雲 詩音(40代,女) (2)風光るきりきり締めるピアノ線 (3)林檎にも心音ありぬテロリスト いつもありがとうございます。(3)は20日にご診断いただいた「林檎にも心音ありぬ寝台車」の推敲です。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)が良いです。感性の鋭敏さはもちろんですが、それに合う表現になっています。それに、良い個性を感じます。 (1)、国旗掲揚の後の様子でしょうか。「鰯雲」だけに、上五にあるほうが落ち着くようにも思えます。何かと話題の国旗掲揚ですが、やはり掲揚のあとの気分は、悪くないのではないでしょうか。そんな気持ちになる句です。 (3)、少しミステリアスな句になり、個性を感じます。 (1)粟の穂の干しある筵風ゆたか しんい(60代,女) 下五「日の匂ひ」だったんですが…。 (2)尺寸の田に稲架ひとつ里の暮 (3)語り部の部屋開け放ち秋の声 (3)は季語の「秋の声」より「萩の風」が・・・ 昨日も「風ゆたか」で迷ったのですが、後から季語を探して決めることに問題がございますか。よろしくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 後から季語を探して決めること、私はタブーではないと思っています。作者が感動した情景を俳句にする時、ぴったり合う季語を探すことは、自然ではないでしょうか。たとえ、それが現実に感じた季語でなくとも、出来た句が、より読者を感動させることもありうるわけですから。 三句拝見、(3)の感性に惹かれました。私は、「萩の風」が良いとおもいます。語り部で、「声」を連想させますから、下五は「風」にする方が、くどくならないでしょう。 (1)、秋の田舎であろう情景がとても良い感じです。ただ、表現がやや冗長過ぎる点が残念です。私ならば、「粟の穂の干しある筵風と陽と」としたいところです。 (2)、「尺寸の田」、「稲架」、「里の暮」と、少し句材が多いでしょう。 松茸の傘をかしげてすれちがう 汽白(40代,男) よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 ユニークで面白く読みました。同時に、雨傘を差す様子も想像できました。「松茸や」とすることも考えられますが、句意が変わってきますので、お勧めは致しません。「すれちがう」というさり気ない動作も、句に情感を持たせていて良いと思います。 (1)新生姜あがりし雨に香る畑 彩貴(40代,女) (2)菜を間引く西より暮れていく畑に いつも丁寧なご指導ありがとうございます。とても励みになります。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ、毎日の励みでございます。 (1)、新生姜と雨が良いです。投句ですと、句材、要素が多いと感じます。新生姜と雨上がることの取り合わせが、新鮮ですっきりとした気分がありますから、「香る畑」を省かれても良いのはないでしょうか。 (2)、「菜を間引く」という、雰囲気のある古風な言い方と、「西より暮れていく畑に」の表現が見事だと思います。「菜」という言葉に、古風というだけではない、ほんわりとした優しさを感じさせます。そして、句にある、のどかさにつながっていきます。それは、「間引き菜」では出てこない語感でしょう。 紫蘇の実を煮て伏す友を訪へり 彩貴(40代,女) ドクター朝倉の診断と処方箋 伏せっておられる友人への訪問、それを、「紫蘇の実を煮る」という作業ひとつで、見事に言い表しているのではないでしょうか。山椒の実でないところが、秀逸と感じました。句に性別による判断はありませんが、女性ならではの感性と思えます。 水引き草胸突き八丁下を見る 豊田ささお(70才以上,男) いろいろどうにもまとまらないとき、感動のありかがはっきりしないときですよね? ドクター朝倉の診断と処方箋 そうですね、感動のありか、感動の種類、感動の理由がはっきりしない時は、句作もしんどい時でしょう。また、その感動を表現するぴったりの言葉が見つからない時も、しんどいでしょう。 投句ですが、水引草という句材に合った表現と感じました。しかし、句意に分かりにくさがあります。「胸突き」、「八丁」、「下を見る」、どれも、水引草の雰囲気を合っているだけに、はっきりと句を理解したいと思いました。 2006年10月4日 (1)夜の園の響く靴音秋惜しむ 文の子(60代,男) 夜の園に、夜の園を、と迷いました。 (2)大橋の沈みゆきけり霧の湖 (3)運動会鳩に進路を阻まれし 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、「夜の園響く靴音秋惜しむ」、上五は「夜(よる)の園」ではいかがでしょうか。上五で切れもできますから、句にアクセントもつくと思います。また、下五は、「惜しむ秋」も考えられます。感性が光る一句です。 (2)、美しくも、壮大な景色をきれいに表現されていて良いです。 (3)、ユニーク賞ですね。運動会のほほえましさなどが出ています。 (1)墨磨りて匂い香わし金木犀 真鍋(70才以上,男) (2)葉隠れの鬼灯の実の愛らしく 初心投稿2回目です添削よろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、墨の匂いに、あえて金木犀、どちらも特徴ある香りですから、くどさは否めません。しかし、匂いには匂いをもって制す、ではありませんが、どちらの香りも譲らない一句として良いのではないでしょうか。「匂い香わし」も、墨と金木犀の両方にかかって読めます。 (2)、とても惜しいです。「愛らしく」が全てを語ってしまっているのです。そうしてしまいますと、読者が自由に句の中で遊ぶことができなくなってしまいます。読者の想像の余地、というのでしょうか、感情を表現しきってしまわないのが俳句だと思っています。よく、短歌との違いとして、この点を示したりします。「葉隠れの鬼灯の実」は、鬼灯らしさを上手に表現なさっているだけに、下五をもったいなく思いました。 (1)晴がまし賞を賜り稲穂かな 小口 泰與(60代,男) 経済産業省関東経済産業局長賞を受賞して (2)秋薔薇の散り広がりて赤白黄 (3)宵闇や見舞い帰りの駐車場 (4)白菊やかはたれ星の耀へる よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 おめでとうございます!句も、「稲穂かな」を上手に持ってこられています。気分の良さが出ています。 あとの三句では、(3)が良いです。「宵闇」、「見舞い帰り」、「駐車場」と少し付きすぎている感も受けますが、感情を表現する言葉を使わず、見舞い帰りの気持ちが出ているでしょう。その言外にある感情が評価に値する、と私は思っています。 (2)、着眼は良いです。表現に推敲の余地があるでしょう。 (4)、白菊に惹かれました。 大鎧朱の直垂や野分立つ 涼(70才以上,男) 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「朱の直垂」が、「野分立つ」と響き合っていると感じました。「立つ」という強い語意と言い切りも、「朱の直垂」の強さに合っています。鎧のある家、それも大鎧ですから、古く大きな日本家屋などを想像します。また、台風でなく野分ですから、古風な雰囲気も漂います。そんな、情景を楽しみました。逆に、都心のマンションであっても、台風の日の鎧兜のあるマンションの一室には、情趣があると感じます。 (1)炎天下透明人間日焼け止め 北野元玄(60代,男) 7月末に作句しました。大変な暑さを表現したつもりです。ただのユーモア句ととられそう?(2)秋風もたまには自堕落です。 (2)自堕落な秋風の居るポーチかな ボタ山の霧と孤独な赤とんぼについて過大のお褒めをいただき嬉しく思います。上句2句よろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、ユーモアの在りどころを、読者が理解してくれるかどうか、少々微妙かもしれませんが、面白く読めました。 (2)、つい、笑ってしまいました。確かに、ポーチにたまっている空気は、そんな秋風かもしれません。発想と表現への姿勢に意欲を感じます。 (1)大輪の菊に添え木の隠れをり 小口 泰與(60代,男) (2)風さやか薄の似合ふ浅間山 (3)曼珠沙華池に向かひてなだれ咲き (4)まんまんと利根を満たせし野分かな よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (4)が良いです。「まんまんと」の表現が、利根川と野分の様子を伝えています。野分の後の、残した恩恵を感じることができます。 (1)、(3)ともに、着眼は良いです。表現にもうひと工夫できそうです。 (2)、「薄の似合ふ浅間山」が良いです。その分、上五の表現が残念です。大胆かな、と思うくらいの表現が、浅間山とも似合うでしょう。 (1)どの窓も人影ゆるる良夜かな 風葉(60代,男) (2)月天心すこし焦げ目の秋刀魚焼く 二句目は二重季語になりました。ご指導ください。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、とても情緒的な句ですね。「良夜」という言葉によく合っている情景でしょう。窓の人影が揺れるという発想も印象的です。 (2)、判断の仕方はいろいろあるのですが、同季の季語が複数であっても、句に無理がなければ許容されることもあると思います。複数必要な、強い理由や表現上の工夫がない場合は、できるだけひとつが良いでしょう。句の情景ですが、家の外で秋刀魚を焼いているのでしょうか。台所の窓から見える月、とも取れます。屋外で秋刀魚を焼くときの、月の素晴らしさを言うのであれば、それも強調させた表現が良いでしょう。そうすると、複数の季語の意味がでてくるのではないでしょうか。 (1)台風の夜の白髪ざんまいさ 裸時(30代,男) (2)野菊声縄のようだな脚の跡 (3)鈴虫の迷走音はジャーの音 今日は宝塚句会でした。楽しめました(^^ ドクター朝倉の診断と処方箋 句会で得られることは、他では得られないものがあります。楽しめることもまた、収穫でしょう。 (1)、ざんばら髪の白髪なのでしょうか。台風の風に吹かれているのか、それとも、部屋でひとり悩んでいるのでしょうか。いろいろな情景を想像してみました。 (3)、面白い発想ですね。とても独創的です。「ジャー」は、擬音語ではなく、炊飯器ジャーやポットを想像しました。いろいろな機種があることも、句を楽しくさせているでしょう。 (2)、知識不足かもしれませんが、分かりにくく思いました。 2006年10月3日 (1)鹿の絵の看板霧のハイウエー 文の子(60代,男) (2)晩鐘の霧にくぐもり鳰の湖 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、面白いですね。愉快さもあります。奈良の高速道路の看板かしら、と考えました。奈良は盆地ですから霧も似合いますし、小旅行の気分を感じる、雰囲気の良い句です。 (2)、少し、出来すぎた情景のように感じてしまいました。それは、晩鐘、霧、鳰の湖と、付きすぎているからではないでしょうか。 (1)蛇穴に入りて風音水の音 青戸入江(70才以上,男) (2)眞葛なる鯖街道に通り雨 (3)引き寄せてこのあやしさの葛の花 ご指導をお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)(2)ともに、とても良いです。繊細な感性と巧みな表現が、ぴったり合って句になっています。 (1)、秋特有の静かさが、季語を上手に使われて表現されています。ふたつの音も効果的です。 (2)、「眞葛」「鯖街道」「通り雨」、バランス良く使われていて落ち着いた表現の句ですが、情緒豊かなものになっています。 (3)、「このあやしさ」に評価が分かれる気が致します。 (1)塩振りし秋刀魚焼くまで五分待て 栗太郎(60代,男) (2)焼きたての秋刀魚にジューと酢だち振る (3)焼き秋刀魚まずはらわたを賞味せむ 何だか料理番組みたいになってしまいました。昨日スーパーでみつけた見事に肥えた秋刀魚を家内と二人で賞味しました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 秋刀魚三句、楽しく読ませて頂きました。 (1)が、愉快な句で良いとおもいます。また、語順を変えてみますと、「五分待て秋刀魚塩振り焼けるまで」となり、アクセントとリズムが感じられると思います。 (2)、(3)も、語順の工夫で、より美味しい秋刀魚の句になる可能性があると感じました。 (1)子午線を藪から棒に秋の風 泰(70才以上,男) (2)野分去り色付き初むる落柿かな 的確のご指導ありがとうございます。よろしくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、独創的な発想で面白く読みました。「藪から棒に」にも、秋風の不意な様子が伝わってきます。 (2)、野分のあとの柿、という発想も、とても興味深く、情緒があります。是非、その柿の様子が生き生きと伝わるように表現されることをお薦め致します。「色付き初むる」は、普通すぎる柿の表現で残念です。 (1)水蜜桃がぶり思いを断ち切れず 藤太郎(50代,男) (2)朝顔や円陣つくりて社宅妻 (3)褐色に地球傷むは桃のごと よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、良いです。水蜜桃から中七下五への転換が印象的です。「がぶり」という大胆な表現も、句を平凡にせず、アクセントを付けています。水蜜桃という甘美なイメージのものに、シビアな「断ち切れず」が、なんともこの句の魅力になっていることでしょう。 (2)、「社宅妻」、ちょっと独特なムードが出てくる表現ですね。最近は、社宅のマイナス面ばかりが話題に上りますから。しかし、そんな昨今の事情を、上手に句にされていると思います。「朝顔」という花が、深刻さを排除していますし。「円陣つくりて」、意味深長でゾクゾクワクワクします。 (3)、地球の桃への見立てが見事です。表現もきれいにまとまっています。三句拝見して、表現の巧みさを感じました。 (1)炭俵編む体験や秋の昼 しんい(60代,女) (2)束ね干す胡麻に日の翳日の匂ひ やさしくご指導有難うございます。拙い句ばかりでお手数お掛け致しますが、よろしくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)、良いです。「日の翳日の匂ひ」の表現が、秋の豊かさとリズムを生んでいます。胡麻という句材も、派手ではない良さが、句の魅力になっているでしょう。 (1)、秋の昼に似合う体験ですが、似合うだけに表現が平凡だと魅力に欠けてしまいます。 ことごとく台風そらすや男富士 ねぎよしこ(70才以上,女) コスモス達、のご指導有難うございました富士の裾野に暮らし台風過もなく恙無い暮らし、有難い事です。 ドクター朝倉の診断と処方箋 素敵なところにお住まいなのですね。私は、もともと瀬戸内の田舎育ちなので、自然が恋しい日々です。 「ことごとく」「そらす」という、あえて散文のような言い回しが、富士の地のおおらかさに似合っていて良いと思います。 秋空の蒼さ静けさ地に疲れ いろは(60代,男) 18日の駄句に、ずばりの評をいただき、ありがとうございました。今回の句…澄み切った秋の空を見つめていて、少し落ち込んでしまいました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 秋空の、あまりの爽やかさに、逆に悲しくなったり寂しくなったりする経験は、どの大人にもあることだと思います。そんな胸中を、句にされていると取りました。「地に疲れ」が、感覚的に分かる読者と難しい読者がいるのではないでしょうか。私は、地上にいる俗世の私たちを指しているように感じました。 2006年10月2日 九月尽シェクスピアを再読す 涼(70才以上,男) 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「再読」が、大変効果的に句を仕上げています。そして、「九月尽」と「シェイクスピア」も、厭味なく似合っています。再読ということで、以前も読んだことがある、その時間の流れも感じさせて句に広がりがでます。シンプルですが、言葉のひとつひとつが精選されたものと感じました。 (1)蜘蛛の巣もティアラとなりぬ萩の露 希妙(50代) (2)蝶追はず蛾を払はずの野宿かな よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、表現、発想、句意、どれも良く、互いのバランスも良いです。そして、誰しもそんな経験があるところが、読者をひきつける大きな要素でもあります。しかしながら、決して凡庸な句にはならず、大成功です。 (2)、「蝶追はず蛾を払はず」、表現が効果的に働いている句です。野宿という素朴な句材も合っているでしょう。 (1)新月の針で鯨を釣り上げる 穂波(30代,女) (2)新月の針で彩る奥日光 (3)新月の針でかがった穴一つ 今回も温かいご指導ありがとうございました。独学・自己流の入門者のため、失礼があったようで申し訳ありませんでした。ご指摘いただければ改めます。その点も含めて、よろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 失礼などと、とんでもございません。そのようなことを感じたことはありませんので、どうぞ、楽しく自由に投句なさって下さいませ。 新月三句ですね。満月はもちろん良いのですが、新月や半月も、それぞれの風情、雰囲気があって良いものですね。 (1)、(3)が良いです。 (1)、発想の大きさに読者はひきつけられるでしょう。気分もゆったりと大きく、深呼吸をしたくなる豊かさのある句です。 (2)、繊細な感性が素晴らしいです。穴をかがるという行為いは、優しさと前向きさがあると思うのです。そんなムードのある、優しい気持ちになれる句です。 (3)、「彩る」、どうでしょうか。奥日光の秋は、とても素敵ですが。 (1)吾亦紅 孤高に立ちて 着てゆかし 浅葉洋(70才以上,男) 何時も感性豊かな適切なご高評感謝しております。真っ青な秋空に、孤高の如く すっと立ち、渋い臙脂色の花を着けた吾亦紅に、侘び寂の情緒を感じ詠みました。 (2)赤き実を 烏と共に 秋を喰う 「熟し柿 烏と共に 待ちわびて」の続編です。待ちに待った熟し柿の味は格別です。 ドクター朝倉の診断と処方箋 とてもうれしいお言葉をありがとう存じます。仰って下さるほど出来ているか、恐縮です。 二句とも、とても良い着眼と発想だと思います。ただ、どちらも、表現が発想の豊かさほど伝わってこない点が、残念です。 (1)、「着てゆかし」が、とても良いのですから、読者にその発想をより伝えれるように致しましょう。「吾亦紅孤高の色を着てゆかし」などともできると思います。 (2)、「鳥と共に」が、上五、下五の両方に掛けて読むこともできるでしょうが、「秋を喰う烏と赤き実食うとき」とすることもできるでしょう。 (1)霧深し日の出て昏き峡の村 文の子(60代,男) (2)アダージョに替はる雨音虫の声 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)が良いです。やはり「アダージョ」が成功の要因ですね。「雨音」と「虫の声」、二つの音の組み合わせが、少々しんどいかもしれませんが、「アダージョ」の印象の強さに助けられている気が致します。 (1)、「霧」「日の出」「峡」「村」と、意味の強い材料ばかりで、句意が負けそうです。 (1)身をよじり細き息してツルリンドウ 豊田ささお(70才以上,男) いま里山は、この花が咲いていて、ときどき、無神経なハイカーにけとばされています。 (2)百日紅音ひとつなき池に出で 季節遅れですが、まだ咲いていました。で、去年の作品を思い出して少しいじってみましたが・・。去年のは「音ひとつなき径をゆく・・」だったか、ノートが行方不明で判然としませんが・・ ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)、ツルリンドウの姿が、それを見ている人の姿として読める句で良いです。ツルリンドウという句材が充分に活きているのではないでしょうか。 (2)、心惹かれる情景です。「池に出で」という表現が、少し推敲できるかもしれません。百日紅の咲いている辺りは、確かにそんな気分、音のない世界のように感じことがあります。池との取り合わせが、必要不可欠かどうかは難しいところですので、いっそ「百日紅」「音ひとつない」で再考されるのも良いかもしれません。池も魅力的ではありますが。 ひつじ田に月さし笑わぬ男かな うさぎ(60代,女) よろしくご指導お願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 とても不思議な句です。その不思議が、読者の興味を引くと思います。ひつじ田という句材を、上手に使われています。「月さし」の「さし」ですが、少し気になります。「笑わぬ男」の前で切れた方がすっきりしますから、「ひつじ田に月光笑わぬ男かな」と考えてみましたが、いかがでしょうか。 (1)なみのねのよせてはかえすあきのくれ 学(50代,男) (2)湧き立ちて雲が雲呼ぶ雲の峰 (3)ひと山のブロッコリーの大家族 (4)秋蠅のままをこぼすやつぶすやら (5)秋雨の濡れて濃くなり岩の割 (6)稲光太平洋の見えるまで (7)秋の海砂にしみゆく波の音 (8)島に松浮かべて垂れし稲穂かな (9)崖えぐる庵ありたり秋の寺 (10)引き出しのコオロギ鳴いて候文 (11)秋立つて地図に記したる風車かな ご教示を。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)(3)(11)が良いです。特に(11)の爽やかな気分がよく伝わってきます。口調を良くするのでしたら、「秋立つや地図に風車の記号あり」も考えられます。句材に地図記号の風車とは、参りました! (2)、「湧き立ちて」と始まり、「雲が雲呼ぶ雲の峰」と雲の連続。その勢いが入道雲とぴったりです。 (3)、ブロッコリーを大家族としたことが成功です。「ひと山」が、少々安易な感じが致しますので、上五を変えられてもよいかもしれません。 (10)、「コオロギ鳴いて候文」がとても良いです。秋の夜の雰囲気が、たっぷりと表現されています。「引き出しの」が気になります。引き出しで飼っているのでしょうか。それとも偶然そこにいるのでしょうか。どちらにしても、コオロギが不憫かもしれません。 (7)、「砂にしみゆく波の音」が良いです。 2006年10月1日 フルートを奏す麦秋の窓開けて 風葉(60代,男) 「奏す」か「吹く」かで迷いました。字余りになることを承知で「奏す」を採用したのですが。よろしくご診断願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「フルート吹く麦秋の窓全開に」とさせて頂きましたがいかがでしょうか。私は、「フルート吹く」という力強い口調が好きです。そして、窓を大きくあけることの気持ち良さと、中七下五を定型にするために、このようにしました。フルートと麦秋の窓、ピカ一。(こんな言い方ですいません。)の取り合わせですこれ以上ないくらいの気持ち良さです。 (1)稲の香や雲に隠るる那須五峰 しんい(60代,女) (2)硫黄噴く殺生石や地蔵盆 (3)みちのくの稲穂を渡る風あふる 「風あふれ」と、でも句に切れが無いかと…終止形に。よろしくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (3)、「みちのくや稲穂を渡る風あふれ」ではいかがでしょうか。みちのくの稲穂風が、今ここに吹いたように感じられる句です。 (1)、美しい光景で、美しい句です。那須の人々がうれしくなる句です。 (2)、殺生石と地蔵盆の取り合わせが、少々しんどいでしょうか。 (1)浅間より雲沸き出でし蕎麦の花 小口(60代,男) (2)田代湖の風光りをり秋きやべつ (3)噴煙の垂直に落ち花芒 (4)こすもすに水玉付きし朝ぼらけ (5)突然の雨に飛び起つ稲雀 よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)、田代湖とキャベツが新鮮な気分にさせてよいのですが、「風光り」が、春の 季語「風光る」にあたってしまいます。是非、ご再考を。 (1)、浅間と蕎麦の花が、どちらも素朴で似合っています。 (5)、「突然の雨」が冗長な感じがすますので、「すわ雨と飛び起つ」などはいか がでしょうか。 (3)、「噴煙の垂直に落ち」の光景が分かりにくいと思いました。 (4)、美しい風景ですが、もう一味欲しいところでしょう。 (1)秋の河馬聖者のごとき顔をして しょうこ(女) (2)逆断層噴出すごとく曼珠沙華 (3)隣家との間合い微妙に秋簾 (4)秋遍路願懸け意地かけ大わらじ (5)長すぎる駱駝の睫毛秋の暮れ (6)灯火下親し孫と競ひて指狐 (7)真っ赤な嘘世にはびこりて烏瓜 前回はご丁寧な添削有難うございました。一辺に7句にもにもなってしまい申し訳有りませんが、又宜しくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそでございます。 七句、様々な情景、表現の句で、挑戦している姿勢を感じました。その中で、 (1)、(5)が、特に良いです。また、(2)、(3)は着眼が良いです。 (1)、河馬の持つ独特の風貌、雰囲気に、よく似合っている句です。「秋の河馬」も良いです。秋は、愁いの季節ですが、河馬にとっては、秋だから、という気持ちはない。いつだって河馬は河馬の平常心、という気分で読めて楽しいです。 (5)、こちらも駱駝の持つ特徴を、良く捉えられた句です。秋の暮れもよく合っています。「長すぎる」というストレートな表現が効果的です。 (2)、(3)、ともに表現に、推敲の余地がありそうです。 (2)、読者が、情景を想像しやすい表現が良いのではないでしょうか。 (3)、愉快さを、全て言葉で表現してしまっていて、残念です。 (4)、(5)、こちらも少し言い過ぎているようです。退屈になってしまします。 (7)、読者に、句意の皮肉が面白く伝わってきません。俳句ですから、ユーモアや表現の工夫が欲しいと思います。 (1)いきいきと鶏頭並ぶ捨鉢に 仁(50代,男) (2)民宿に一景加はり鶏頭花 (3)少年は鶏頭花を持つてゆく (4)廃線の線路の輪切り枯鶏頭 (5)運動会亀になる子もをりにけり (6)完全防備いらむしのコンチキショウ (7)いらむしとなかようしようがしようがない 初めてです。 俳句の奥の深さをしみじみと痛感しております今日このごろです。厚かましくも7句も拙句ばかり並べてみましたどうかよろしくご指導賜りますようお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそよろしくお願い致します。句作は楽しんで頂きたい思いですが、仰るような俳句への思いも、とても大切です。 七句拝見いたしました。鶏頭の句では、(3)、いらむしの句では(6)を評価したいと思います。 (3)、単純な光景のようですが、過不足なく鶏頭花の持つ情緒を表していると思います。少年でなければ、鶏頭花は活きてきませんし、あえて「持ってゆく」と冗長な表現が、少年の姿をあらわにしています。 (6)、「完全防備」という四字熟語がいらむしにぴったりですし、「コンチキチョウ」も、(7)の言葉使いほど作為がなく良いです。 (1)、捨鉢の元気な様子が見えますが、「いきいきと」が言いすぎでしょうか。 (4)、心引かれる句ですが、「線路の輪切り」は推敲の余地があると感じます。廃線と鶏頭だけで充分に句になりますから。また、無理に枯れた鶏頭にせず、鶏頭の明るさがある方が良いかも知れません。 (1)こすもすや味も豊かな佐久の鯉 小口 泰與(60代,男) (2)朝露に丸く映りし朝月夜 (3)ひねもすの雨に秋薔薇ふふみけり (4)記憶より短き道や運動会 (5)稲雀にわとり小屋へ大うねり よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 毎回ご熱心な投句、こちらも気持ちが引き締まります。今回の五句は、どれも秋の雰囲気がよく出ています。 (3)、表現も風景も、その気分とよく合っていて良いです。「ひねもす」、「ふふみけり」という古い言葉が、句の雰囲気をより伝えることに成功しています。 (5)、「大うねり」に秋雀の快活さがよく出ています。「にわとり小屋」が田舎の風景を表していてのどかです。 (4)、愉快なノスタルジーですね。 (2)、「朝露」と「朝月夜」の『朝』が重なることが気になります。 (1)、こすもすと鯉の取り合わせ、秋らしいような、少しくどいような、と感じました。 |