俳句クリニック 2006年10月後半分(ドクター:朝倉晴美)

「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。

9月と10月の担当ドクターは朝倉晴美です。
<プロフィル>
 「秋晴れを抱いているのだ大けやき」5年ほど前の自句。秋は空気が澄んでいて、体 中も澄み渡っている感覚。そんな気分を句にできるとうれしい。
 目下ヤンチャ娘の子育て中ですが、今しかない感性を俳句に生かせたらなあ、と思っ ている日々です。よろしくお願い致します。

ドクター朝倉の診断
2006年11月4日

(1)力学の風船挟み鹿風船  裸時(30代,男)
(2)ごそごそとまっ黒いサメ移動する
(3)さやけしや気分のとうふ桃色に
(4)句会前やあの指から柿の種

 宝塚句会今日は伊丹の柿衞文庫でした。その挨拶句を家に帰って思いつきました。
(5)宵闇に真空の太刀現れる
 宝塚句会で「夜長には真空の太刀現れる」にSさんから1つ選をいただきました。Oさんから「夜長には」違和感があるといわれたので「宵闇に」に変えてみましたけれど「宵闇」か「夜長」かどっちがいいでしょうか?
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「挟み鹿風船」が難解です。「挟みしか」とも思いましたが。「力学の風船」はとても魅力的な表現です。
(2)、「ごそごそと」が冗長ではないでしょうか。「まっ黒いサメ」という句材は、興味をひきます。
(3)、なんとなく、メルヘンで、ロマンテイックな感じを受けました。「とうふの気分」でないところに、裸時さんの独創性を感じます。
(4)、「柿の種」が面白いですね。お菓子の商品名『柿の種』も想像しますから。「あの指」が意味深長です。
(5)、そうですね、私は「宵闇」が良いと感じます。「夜長」という言葉には、夜の長さを主張している意味合いがありますから、「真空の〜」の句意には、合わないように思えます。
 五句拝見しまして、裸時さんらしいオリジナリテイが伝わる表現と感じました。

(1)コンパネを張るや帰燕を促しぬ  智弘(30代,男)
(2)秋燕に亀はぷかぷかしておりぬ
(3)秋燕の糞ぞ至楽の新野川

 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)が良いです。上五は「秋燕や」ではいかがでしょうか。秋燕と亀、それぞれを引き立たせるようになると感じます。燕のシャープさと、亀の丸さ、ゆっくりさの対称が良い句です。
(1)、「コンパネを張って帰燕を促しぬ」も考えられます。「や」が少々きついかな、とも感じましたので。活動的な様子が魅力の句です。
(3)、ユーモア、面白さと取れるかどうか、読者が分かれそうです。

(1)採算の合はぬ田にして豊の秋  彩貴(40代,女)
 詩的な内容ではありませんが、生活句としていかがでしょうか?
(2)金婚のちちはは誘ひ照紅葉
 先生の丁寧なご指導が励みになり、この一ヶ月は今までになく俳句を作ることができ、とても勉強になりました。感謝しています。ありがとうございました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、生活句、もちろん良いです。むしろ、日常のそこにある感情から、情感あふれる句になることが多々あります。投句、良いです。「豊の秋」が、気分を沈ませずに、仕上がりよくしています。「豊の秋田んぼ採算合はぬけど」も考えられますが、好みによるでしょう。
(2)、心の一句ですね。読者を意識するならば、「金婚」を再考されると良いでしょう。あまりにも、作者の事情が出ますと、読者は疲れてしまうからです。
 *こちらこそ、うれしい時間でした。コメント、ありがたく頂戴致しました。いろいろと学ばせて頂きましたこと、感謝致します。

(1)淡い闇に秋明菊は灯を献ず  穂波(30代,女)
 「庭の隅秋明菊は灯を献ず」の上五を「淡い闇」に変えました。
(2)やわらかい光も影も貴船菊
 (1)と同じ景色でもう1句作りました。
(3)足元に星またたきぬ露一面
 「夜の庭露は黙って星になる」と同じ情景です。
(4)秋澄みて扉の花文研ぎ出せり
 「君にのみ扉が見せた菊花文」を推敲しました。
(5)小浜菊卒寿の祖母は道を掃く
 「小浜菊卒寿の祖母はひとり住む」の下五を、行動や特徴を表す言葉にしたほうが良いとのアドバイスに従って変えました。
(6)木犀の風たずさえて子連れ客
 「木犀の風たずさえて友来たる」の下五を変えました。前より具体的にはなったかと思いますが、限定されてしまうでしょうか。8月31日の小学生のように駆け込みの投句6句です。朝倉先生、2ヶ月間ありがとうございました。初めての俳句の先生が朝倉先生だった私は恵まれていました。先生が私のつたない句からも何かの種を探して拾い上げてくださったお陰で、「とにかく作ろう」「もっと作ろう」という気持ちを持てるようになりました。これから先、投句が難しくなることもあるかもしれませんが、そんな時もひとりでも俳句は続けて生きたいと思っています。どうもありがとうございました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、上五は、「淡い闇」もしくは「闇淡く」で良いでしょう。秋の宵の深遠な雰囲気がよく出ていて良いです。
(2)、ストレートな表現「やわらかい」に賛否はあるかもしれませんが、良いと思います。優しい雰囲気が出ていています。
(3)、例えの句ですね。露と星の関係は、「夜の庭〜」の方がよく伝わります。
(4)、「秋澄む」と「研ぎ出せり」の取り合わせが秀逸です。「扉の花文」によって古典世界へいざなわれそうです。
(5)、「の」、「は」、「を」と助詞の連続が気になりますが、祖母に対する静かな思いがあり良いです。
(6)、限定されましても、子どもを連れている明るさがあります。句意に明るさがあることは大きな魅力です。
 *とてもうれしくなるコメント、もったいない気持ちで頂戴致しました。俳句を作っておられる方に、「俳句を好きで、俳句の魅力や力を感じてもらえたら」という気持ちで、処方箋を綴っておりました。拙いなかにも、多少は伝わったようで、大変光栄です。最近、私は、「句作は途絶えさせないけれども、俳句とはゆっくり長く付き合ってゆくのも良い」と思えるようになりました。穂波さまのご健吟を心よりお祈り致します。

(1)消しゴムの消し屑払う夜長かな  苺(女)
(2)鰯雲恋芽生えたる後部席
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、発想が良いですね。読者の共感を得るでしょう。表現を変えてみますと、「夜長し消しゴムのカス払いおり」、「夜長し消しゴムの消し屑払う」などが考えられます。ご参考までに。
(2)、「後部座席」が良いですね。下五で、一気に展開し、それが新鮮でとても効果的です。ときめきを感じさせます。

大津絵の傘さす女初もみじ  涼(70才以上,男)
 朝倉ドクター、ご指導を頂き本当にありがとうございました。心より再会をお待ち致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 どんな大津絵なのでしょう。動物絵などかわいいですね。「大津絵」という固有名詞が成功していると思いますが、「女」が少ししんどい気も致します。「初もみじ」ですから、子供や少年といった、中世的な人物が効果的かもしれません。また、雨降りの句ですから、登場人物はあっさりされると、読者の気持ちが重くならないでしょう。
 *こちらこそありがとうございました。次回もまた、いろいろ学べますことを楽しみにしております。ご健吟をお祈り致します。

(1)初鴨よ迷わずにゆけ大師池  豊田ささお(70才以上,男)
 「初鴨のただ浮かび居る大師池」推敲です。多分これが朝倉先生のご指導最後でしょう(今回の)本当にありがとうございました。
(2)葉は黄に根はたっぷりのヤマノイモ
 「黄落し根はたっぷりのヤマノイモ」を推敲しましたが、・・・葉が黄になるのも秋ですなあ・・。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「迷わずにゆけ」に、作者も読者も自分を投影でき、気持ちがすっきりする句です。そんな力のある句を、私は評価します。
(2)、ヤマノイモの葉が黄色になり、根が成長している、という風に取れました。楽しい句になっていると思います。何より「たっぷりの」が、秋らしく、ヤマノイモらしく、良い句です。
 *最後まで投句してくださり、うれしく思います。ありがとうございました。

(1)主語のなき堂々巡りや鉦叩  春雪(70才以上,男)
 【作句意図】最近、妻と会話をしていましても、「あれあれ」と言った調子で話が進まなくなりました。(笑)
(2)秋日和浪速をつむぎ平野まで
 【作句意図】昨日、天満から平野まで歩きました。熊野街道の歴史を訪ねたのです。知らないことだらけで勉強になりました。
 朝倉先生 こんばんは。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 春雪さま、こんばんは。
(1)、「主語のなき堂々巡り」が、少し悩みます。句意は、「鉦叩」が効果的で良いのですが、会話であることをはっきりさせたい気持ちがあるのです。 投句ですと、文章とも取れます。それも悪くなないのですが、やはり「鉦叩」ですから、会話が一等似合います。「主語のなき会話巡りて鉦叩」と考えてみました。いかがでしょうか。
(2)、きれいな表現に惹かれましたが、句意があやふやになっているでしょうか。熊野街道の歴史という句材も魅力的です。「知る」という動詞も、句意が膨らむ可能性があるでしょう。実体験からの句は、佳句になる可能性が大きいです。是非、ご再考なさってくださいませ。

大輪のこの一徹の菊の丈  尼の久女(60代,女)
 菊花展での見事に揃った高さに感動。「金輪際丈そろいたる菊花展」とも作ってみました。お願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 上五を「大輪や」か「菊大輪」とされるのはいかがでしょうか。「の」の連続よりも、「や」切れや体言で切れるほうが、菊花の華やかさを強めることができます。「菊大輪」ですと、下五も再考しなければなりませんが、上五の印象強さは捨てがたく感じました。
 「金輪際〜」の句は、「金輪際」という言葉が、刺激的です。菊花展そのものは、菊に興味がないものには退屈なものであるようですが、読者の興味を引く句になっています。それも、句の力のひとつです。

(1)冷やかに湖を打つ如くなり  学(50代,男)
(2)風の虫に化す家路となりにけり
(3)舟唄の口をついてや月見草
(4)空の色変へてぶりこの押し寄せり
(5)天高し錠剤口に放り込む
(6)蜂が来る常長公の御前ぞ
(7)夕立にわが田見回るよろこびよ

 ご教示を。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(5)が一等良く思います。口調に勢いとリズムがある点も良いですし、薬と秋天の取り合わせが効果的です。楽しくも読めるところも良いです。
(1)、「冷やかに」と「如く」で、少し言い過ぎているでしょう。
(2)、発想が良いです。
(3)、「舟唄」と「月見草」の取り合わせが、情緒を感じさせます。
(4)、「空の色変へて」の表現が良いです。句意は、取りづらい読者もいるかもしれません。
(6)、面白みのある句です。
(7)、ストレートすぎる気も致しますが、情景が印象的なので気持ちがよく伝わってきます。

(1)吟行の人も見かけし紅葉狩  小口 泰與(60代,男)
(2)紅葉の奏でし風や細波
(3)種茄子や忘れさられし猫車
(4)曙の湖水に映ゆる紅葉かな
(5)黄葉の光り放てる浅間かな

 朝倉先生、二ヶ月間ご親切なご指導、また、的確なご指示に深く感謝申し上げます。また、ご指導頂ける事をせつにお願い申し上げますと共に、時節柄、いっそうのご自愛をお祈り申し上げます。有難う御座いました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、挨拶句ではないでしょうが、粋な挨拶句としても取れそうです。
(2)、「紅葉の奏でし風」が良いです。紅葉真っ盛りの秋風を、繊細に美しく表現されています。
(3)、とても良いです。「種茄子」と「猫車」の取り合わせが面白いです。どちらも、役立つものです。また、一方で「忘れさられし」が、情感を効果的に出しています。
(4)、「曙」という時間が、湖水の紅葉を生かしています。
(5)、黄葉の浅間が、魅力的に感じられます。
 * 小口さま、コメントありがとうございました。とてもうれしく拝読致しました。また、小口さまのご熱心な投句に、感激と感謝でございます。こちらこそ、ご健吟を心よりお祈り致しますと同時に、再会をお待ち申し上げます。


2006年11月3日

(1)古書店もブックオフとや銀杏散る  れい(70才以上)
(2)終電を待ちて文書く虫の秋
 良くあることかなと思いましたが。
(3)最敬礼する電話口星月夜
 大変お世話になりました。またご指導いただける日を楽しみにしています。どうぞお元気で・・・。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「銀杏散る」の季語が、良い選択でしょう。昨今の古書店の事情と合っています。また、世情を詠みながらも、そこに風情もあることが、成功です。
(2)、そうですね。それと、意味の強い句材が揃っていますから、少し絞られると良いと思います。また、「終電を待つ」のは、乗るためでしょうか。乗ってくる人を待っているのでしょうか。この点も、はっきりしている方が読みやすいでしょう。
(3)「星月夜」によって、夜の電話が素敵なものになっています。窓から見える夜空と解釈しましたが、「星月夜」は、戸外で満天の星空というイメージなので、難を指摘されることもあるでしょう。しかしながら、最敬礼してしまう電話との取り合わせが興味を誘います。(戸外で携帯電話の場合は、「ケイタイ」などと表記される方が伝わります。)
 *こちらこそでございます。楽しみにお待ちしております。ご健吟をお祈り致します。

秋深し風頬にしみ木の葉舞う  賀代子(70才以上)
 本当にありがとうございました。はげみになりました。またよろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「秋深し」、「風」、「木の葉」と句材が揃いすぎたようです。また、「木の葉」は冬の季語ですから。しかしながら、秋の静かな雰囲気はよく伝わってきました。下五を再考されると、秋の情景に深みがでることでしょう。
 *こちらこそでございます。再会を楽しみにしております。ご健吟をお祈りいたします。

秋霖を楽しみ過ごす二・三日  由利子(70才以上)
 お世話になりました。ありがとうございました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 上五は、「秋霖や」でいかがでしょうか。「数日を楽しみ過ごす秋黴雨」も考えました。とても良い情景です。秋の雨を楽しむという心の余裕が、句を魅力的にしています。二、三日という時間と言葉もよく合っています。読者は、今度の秋霖を楽しもう!と思うに違いありません。
 *こちらこそ、ありがとうございました。

公園の 菊もハーとで 明日を待つ  菊美(60代,女)
 朝倉先生有難う御座いましたm(__)m。未熟者で、でも一言変えていただくだけで、本当に名句? 学ぶことができます。今後とも宜しくおねがいします。長居植物園の花の植えこみも菊の飾りに変わり、ハート型にされたり、開花が楽しみです。寒くなりますが、くれぐれもご自愛くださいませ。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 長居公園、すばらしい植物園だそうですね。家人が行き、感激していました。良い句材です。そんな、見事な花壇の様子が、読者に伝わると良いですね。「明日を待つハートのかたち菊花壇」などを考えてみました。ハート型の植え込みであることが、はっきり伝わると良いな、と感じましたので。
 *こちらこそ、拙い処方であったと思いますが、そのように仰って下さりうれしく思います。再会を楽しみにし、ご健吟をお祈り致します。

(1)カーナビに逆らひ右折紅葉狩  えんや(70才以上,男)
(2)川石を抱へ初鴨動かざる
(3)どんぐりを拾ひて妻に追い越され
(4)秋晴れやタイヤに空気入れる朝

 有難う御座いました。次回お会いする日を楽しみにしております。今回も駄作ですが宜しくお願い申しあげます。お元気で。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 四句拝見し、「なんて気持ちの良い秋なのだろう!」と感じました。
(1)、現代の用品、カーナビを気軽に、そして有益に使われています。下五の「紅葉狩」への展開もお見事です。「右折」という言葉の選択も、表現の巧みさを感じます。秀逸です。
(2)、きれいな情景で整っています。
(3)、妻に追い越される自分を、可愛く思っているように受け取れまし。それは、どんぐりの効果でしょう。
(4)、自転車のタイヤですね。これから、サイクリングか、単なるお遣いか、どちらであっても、乗る人の心は秋晴れそのものです。それが、読者に充分伝わっています。「朝」がとても効果的で、優れた句です。
 *こちらこそありがとうございました。再会を心待ちに、ご健吟をお祈り致します。

(1)椋鳥並ぶ電線真下避けて行く  雀子(60代,男)
(2)一日の感謝や椋鳥のマスゲーム
 朝倉先生、拙い俳句にお付き合いいただき、かつ懇切丁寧なご指導を賜り有難うございました。先生のお幸せとご活躍をお祈りしております。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 椋鳥二句、良いですね。特に(2)は、豊かな気持ちを感じさせます。椋鳥の習性を上手に使われた句です。読者の好みはあるでしょうが、良い句です。
(1)、「避けて行く」に、面白味があるかどうかですね。少し微妙です。句材は良いので、ご再考の価値はあると思います。
 *コメント、有難く頂戴致しました。こちらこそ、投句に感謝致しております。雀子さまのご健吟をお祈り致します。

(1)秋高しジェット機も鳥ものびのびと  栗太郎(60代,男)
(2)枯れ葉一枚ビルの廊下に舞ひ込めり
 前回は大変素敵な添削をいただきありがつございました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 どちらも句意、情景がとても良いです。鋭敏な感性も感じます。惜しいことは、字余りです。字余りを否定しているのではなく、せっかくの、おおらかなやさしい情景です。表現も読みやすいものにしたいのです。推敲の結果の字余りでしたら、それは充分構わないと考えています。
 *お言葉、とてもうれしく頂戴致しました。こちらこそありがとうございました。

(1)稲架終へし夕空をゆく鴉かな  豊田ささお(70才以上,男)
 稲架のことを私ほうでは「はぜ」といいます。「はざ」というところもありま す。それにしましても、あっという間の2ヶ月でした。次に替わられると一年 も・・・ですか、大変名残惜しいです。初投句が朝倉先生からですので、とて も・・・
(2)小さい手が上手に刈るよ古代米
 さっき、ふと思いつきました。ああ、言いたかったのは、これだわい。・・と。で、性懲りも無くそのままお送りします。
(3)小農夫手馴れの鎌が稲を刈る
 少し視点を変えました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)、良いですね。「小さい手が」の「が」は省略しても良いでしょう。「刈るよ」という言葉遣いと、「古代米」が、幼子のかわいさを伝えることに成功しています。
(1)、「稲架終へし」の表現が良いです。「鴉」が平凡でしょうか。
(3)、視点の変化は感じますが、情景が当たり前すぎているようです。この場合は、表現の工夫があると良いです。
 *コメント、嬉しく頂戴致しました。こちらこそ、名残惜しい気持ちでいっぱいでございます。しかしながら、豊田さまとのやりとりは、とても良い経験と思い出でございます。再会を楽しみにお待ちしております。ご健吟をお祈り致します。

百舌一羽猛り鳴くなり公園樹  豊田ささお(70才以上,男)
 「ひと気なき公園に来る百舌一羽」を推敲してみました。ご教授を・・。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「一羽」と「猛り鳴く」によって、百舌の様子が目立ってきました。公園での百舌の高鳴きの様子がよく伝わっています。百舌に焦点を合わしたことが成功の要因です。

(1)へそくりの行くへ不明や馬肥ゆる  春雪(70才以上,男)
 【作句意図】銀行の通帳とカードを妻に隠していたら、何処に置いたか思い出せない・・・・(笑)
(2)美しき言葉もむなし秋の行く
 【作句意図】昨今の某国の首相の言葉も空々しいですね。(笑)
 朝倉先生 こんばんは。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こんばんは、春雪さま。
(1)、ユーモアの句として、とても良いですね。口調も整い、「馬肥ゆる」が秀逸です。
(2)、作句意図をききますと、川柳のようです。無理のない季語のおかげで、俳句としても充分読めますが、作者の意図を読み取るには難しいかもしれません。

(1)ありったけ翼に賭けて鳥渡る  穂波
(2)一息に描いた軌跡鳥渡る
(3)まよいなく雲切りさいて鳥渡る
(4)鳥渡るこの一団でロシアから

 前回も分かりやすいご指導ありがとうございました。教室や句会に通わず全くの自己流ですので、またとんちかんなお尋ねをするかもしれません。「知りたい」という気持ちに免じてお許しいただければうれしいです。「新月の針で棘ぬき息をつく」「新月の針で棘ぬき目を瞑る」「新月の針で抜く棘もう抜かねば」「新月の針で棘ぬく薬指」だと心情が想像しにくいとのことでしたので、下五を変えました。先生の担当期間が終わってしまいそうなので、これも案を絞りきれないまま投句いたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「鳥渡る」四句、拝見しました。作者の渡り鳥への思いがあふれています。ただ、感情を出しすぎても、俳句としては良くない、というところが難しいところです。直接語らずに、その意味を出す表現、と考えています。しかしながら、句意と個々の言葉は、とても良いですので、あと一歩の工夫、推敲をお薦めしたいと思います。
(1)、「ありったけ」が、言い過ぎているようです。
(2)、「一息に軌跡描いて鳥渡る」ではいかがでしょうか。「鳥が描く」という動作がはっきりすると思います。
(3)、「まよいなく」が、直接過ぎると感じます。鳥の動作で、まよいない様子が表現できると最高です。
(4)、少々散文的な感を受けますが、個性的な表現で良いでしょう。中七は、「この一団は」はいかがでしょうか。
・「新月の針で棘ぬき息をつく」が良いでしょう。「息をつく」で、背景はわからなくとも、読者に心情が伝わります。
 *とんでもございません。ご熱心な姿勢にこちらも身が引き締まる思いでした。「教室や句会に通わず・・・」というくだりと拝読し、それもまたe船団のならではのクリニックと感じ、うれしくなりました。

(1)五十歩は百歩よりまし木の葉髪  文の子(60代,男)
(2)燈籠の仄かな明かり朝時雨
(3)椎の実に落ちたての艶ありにけり
(4)小春日や野良猫庭をほしいまま
(5)長き夜や五尺の床(とこ)に膝を折り

 ドクターに診て頂くのも残り僅かになりました。土日はパソコンを開けないこともありますので、本日ご挨拶致します。2ヶ月間の心温まるご指導に心より感謝申しあげます。有難うございました。お陰さまで、これまで知らなかったことを多々学ぶことができました。来年又登場されるとのこと、句を診て頂ける日を楽しみするとともに、それまでに、教えていただいたことを実現できればと願っております。ドクターのご健勝、ご多幸を祈念申しあげます。掲句宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、ユーモアの句ですね。「木の葉髪」を面白く読めます。
(2)、「朝時雨」の季語が、よく生きていると思います。
(3)、良いです。「落ちたての艶」がとても良いです。椎の実に限らず、秋の木の実にある艶、色、質感を彷彿とさせます。自然の素晴らしさを上手に句にされています。
(4)、前回述べさせて頂きました。
(5)、小さくなって寝ている様子と取りました。少し、定石でしょうか。
 *ご丁寧なコメント、とてもうれしく読ませて頂きました。拙い処方をそのように思って頂けて、もったいないくらいです。二ヶ月間、「心を込めてしよう」と続けました。お言葉、感激です。こちらこそ、学ぶことが多くありました。ありがとうございました。文の子さまのご健吟を心よりお祈りいたします。


2006年11月2日

ぶた草の 波に抗う すすきかな  清水 進(70才以上,男)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 表現が優れていています。「波に抗う」が秀逸です。特別な風景ではないすすきを見事に表現しています。すすきに感情移入してしまいそうな魅力があります。

(1)柿の木へいつもトラとの待ち合わせ  汽白(40代,男)
(2)本当はもみじエレベーターホール
 よろしくです。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)に不思議なムードを感じました。エレベーターホールが、一瞬、紅葉山になったような錯覚を受けます。賛否はあるでしょうが、このような一瞬の幻想を与える句も、魅力的だと思います。
(1)、「トラ」、想像が多様ですね。柿の木とトラに繋がりがあると、面白く、読みやすいように感じます。

(1)春嫁ぐ娘と嵯峨野紅葉踏む  墨童(60代,男)
(2)サッちゃんにバナナ一本七五三
 少々気が早いですが、11月を意識して二句造りました。ヨロシク!
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、とても気持ちが伝わってきます。心の一句として良いと思います。「嵯峨野紅葉踏む」もきれいな表現です。あえて、読者を意識しますと、「春嫁ぐ」が惜しいですね。俗にいう、「言い過ぎ」になっているからです。
(2)、千歳飴ではなく「バナナ」ですか。サッちゃんだからですね。軽い笑い、可笑しみの句と取りました。七五三の微笑ましさが感じられます。

吾亦紅またまた詐欺に合いましたの  ねぎよしこ(70才以上,女)
 もうお別れですね。少ない句にも分かりやすく優しい御指導有難うございました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそ、名残惜しい気持ちです。投句、ありがとうございました。
 俳句拝見しました。「吾亦紅」に、詐欺に合った気持ちを託しているのでしょうか。昨今の詐欺事件を思いますと、少し悲しい気分も感じられます。難しい句材ですね。「合いましたの」という言葉遣いへの挑戦は良いと思いました。

(1)錦秋やロ−プウエイに杖も乗り  さくら(女)
(2)赤城山忠治の声か秋深し
(3)紅葉山綺麗連発いつか宿

 いつも心のこもったご指導有難うございます。バス旅行にいってきたのですが・・・。よろしくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)が良いです。「錦秋」という季語も、とても良いです。華やかさを感じさせる秋の風景によって、「杖」までが幸せそうに見えます。「ロープウエイ」も、気分が軽く効果的です。
(2)、「忠治」が、やはり付きすぎてしまったでしょうか。
(3)、旅行の気分満載の句ですね。表現は、工夫の余地がありそうです。「いつか宿」という発想は良いです。
 *回答遅くなりまして失礼致しました。コメント、うれしく拝読致しました。こちらこそでございます。また、バス旅行が、よい吟行になっているように感じました。


2006年11月1日

茸狩の媼の腰に鎌光る  尼の久女(60代,女)
 ご無沙汰していました。 俳句を離れていた訳ではないのですが、本を読む事と、旧街道を歩いていました。また始めてみます。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「鎌光る」にドキッとします。「媼」ですから余計です。茸狩に、アクセントが付いて良いと感じました。
 *旧街道、読書とともに、心の潤いですね。是非、俳句になさって下さいませ。ご健吟をお祈り致します。

吹き抜ける色無き風や園の昼  しんい(60代,女)
 先生、この二ヶ月拙い句をご丁寧にご指導頂き、心よりお礼申し上げます。又お目 にかかりたく、よろしくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「園の昼」に想像が膨らみます。幼稚園や老人の方の施設に、動物園など。それが楽しめます。楽しめる理由は、「吹き抜ける」によって気持ち良さがあるからです。気分の良いことは、読者の想像も楽しくなりますから。
 *お言葉、うれしく、ありがとうございました。こちらこそ、再会を心待ちに致しております。ご健吟の日々をお祈り致します。

(1)残像の鮮やかにあり穴惑ひ  まりあ(40代,女)
(2)「右向け右」泡立ち草がザワザワす
 ありがとうございました。迷いのあるところで、「絵の中の曲線いつか秋の水」の「いつか」は、また考えてみたいと思います。今回の投句は先生のご診断でしょうか。途中参加でしたが、丁寧に見ていただいてありがとうございました。またよろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、とても良いです。「穴惑い」を的確に捉えられ、また印象的な句意、表現です。〈穴に入る蛇あかあかとかがやけり 沢木欣一〉を思い出させます。
(2)、「右向け右」という掛け声が聞こえるのでしょうか、それとも泡立ち草の様子でしょうか、情景に迷いはありますが、泡立ち草とその号令は、似合っているようです。泡立ち草の姿がそう思わせるのでしょう。「ザワザワす」という擬音語も、効果的です。
 *コメントありがとうございました。最後に処方できてうれしく思っております。こちらこそ、またよろしくお願い致します。

踏まれずに 野菊咲く径 また帰る  浅葉洋(70才以上,男)
 晩秋の田舎道を歩いていた時、健気に咲いている野菊を見つけ詠んだ句です。宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「踏まれずに」が少々残念です。「野菊咲く径 また帰る」がとても情感あふれていますから。上五で、野菊のけなげさを出せると最高です。

(1)幻を追いて目を上ぐ草紅葉  郁子(60代)
(2)二度咲きの金木犀に幸予感
(3)とんぼ飛ぶ碧き流れの沈下橋

 ご診断楽しみにしております。いろいろありがとうございました。どうぞお元気で・・・
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、何の幻なのでしょうか。「目を上ぐ草紅葉」が素敵なだけに、少し残念でした。抽象的で難しい句の印象がありますから。
(2)、句意が良いですね。読んだ人がみな幸せになれそうな句です。
(3)、清流の様子が伝わってきます。「沈下橋」という句材を上手に使われていますが、「碧き流れ」が言い過ぎているかもしれません。
 *コメント、ありがとうございました。楽しんで下さり、うれしく思います。ご健吟をお祈りいたします。

(1)栗ご飯みんなの笑顔目に浮かべ  賀代子(70才以上)
(2)木犀の花のじゅうたん目が覚める
(3)木犀の酸っぱい香り秋の雲
(4)スケッチに出かける夫朝寒し

 トテモ励みになります。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 うれしいお言葉ありがとうございます。
(4)が良いです。朝が寒くなってきたこの時期、夫は構わず、戸外へとスケッチに出かける。それを、冷静に見、句にされている妻の様子が見えます。夫と対照的に感じられることも楽しく読みました。同じ秋の朝でも、「朝露」ですと、また違った雰囲気の句となるでしょう。
(1)、美味しさ満載の句ですが、表現が冗長ですね。
(2)、「目の覚めて外は木犀花じゅうたん」ではいかがでしょうか。
(3)、「酸っぱい香り」、刺激的な表現ですね。「木犀」と「秋の雲」の季重なりが残念です。

(1)児の心はかり難くて昼の月  由利子(70才以上)
(2)大き葉の落ちて転がる秋の音
(3)わづらひの心たち切る秋澄みて
(4)秋の陽は項に受けて一人行く

 ご無沙汰いたしました。いつもありがとうございます。楽しみにしております。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそでございます。
(1)、子育て中の親などには、身につまされる句ですね。「昼の月」で、救われてはいますが、こんなせつない句も良いです。
(2)、「大き葉」を、具体的な植物にされても良いかもしれません。光景もはっきりしますし、より秋らしくなるでしょう。
(3)、「わづらひの心たち切る」が、少し冗長ですね。
(4)、良いです。上五は、「秋の陽を」ではだめでしょうか。「一人行く」に、秋の気持ちの良さと、すがすがしい人物を想像できます。読者も前向きな気持ちになれる良い句です。

(1)野分あとロシア民謡口ずさみ  れい(70才以上)
(2)風の音祈りにも似て秋桜
(3)ざわめきははるかに遠く流れ星
(4)そぞろ寒遊び帰りのユリカモメ

 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「ロシア民謡」が何とも個性的で良いです。独特の音楽性を持つ民謡。ある世代の方々はお得意とも聞きます。そんな歌と野分のあとは合っているでしょう。楽しさや面白さもあるます。寂しい雰囲気は感じられませんでした。
(2)、「祈りにも似て」が、常套の手法かなと感じました。風と秋桜も付いていますね。
(3)、雰囲気は伝わってきました。
(4)、良いです。「遊び帰りの」が特に良いです。ユリカモメの暢気さまで感じます。「そぞろ寒」の季語とも合っているでしょう。まだ、そんなに寒くない季節の良さが出ていて、楽しい気分になります。

(1)花薄靡きてせつな輝けり  千鶴(60代,女)
(2)金木犀こぼれし道を訪ねゆく
(3)秋天に鳥の舞見ゆ丘の上
(4)スーニカー笑いて誘う秋日和

 お久しぶりでございます。またよろしくどうぞよろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそよろしくお願い致します。
(1)「靡きてせつな」に表現の良さがあります。
(2)、こちらも「こぼれし」が、よくある情景に情緒を加えています。「訪ねゆく」という展開も、気分の良さを出しています。
(3)、言葉も情景もきれいなのですが、何か伝えるものが少ないようです。
(4)、「スーニカー」はスニーカーと受け取りました。とてもとても気持ちの良い秋日和を感じます。スニーカーの擬人化が個性的で、秋の外出を誘うのが良いです。

(1)秋の雲別れ別れに流れをり  小口 泰與(60代,男)
(2)雀等の群がりもせぬ苅田かな
(3)あさぼらけ目に飛び込みし烏瓜
(4)掛稲や畦行く風の通り道
(5)秋薔薇の闇ゆるがして散りにけり
(6)瀬の音を包みて響く秋の風
(7)曙を黒く染めたる雁二陣
(8)電柱の影の長さや刈田道

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(5)が一等良いです。「秋薔薇の」は「秋薔薇(あきそうび)」とすることも考えられます。秋の夜、闇ですからすっかり更けた夜を想像します。そんな夜に散る薔薇を、情感充分に描かれています。「けり」と言い切っている点も、句に強さを感じます。
(6)は、海辺であろう地の秋を、気持ちよく感じさせます。「包みて響く」が豊かな情緒を表現しています。
(7)(8)、きれいな表現でまとまっていますが、少し定番な情景、表現かもしれません。
(3)の「目に飛び込みし烏瓜」は、とても愉快に読みました。秋の楽しさが出ていて良いです。

(1)すれ違ふは彼の人ならむか霧の朝  穂波(30代,女)
(2)すれ違ったのはあの人だろうか霧の朝
(3)夕霧や思ひ止むとも止まずとも
(4)夕霧や思い止むとも止まずとも
(5)来ぬ人を来むとは待たじ霧の夜
(6)来ない人待つのはやめたい霧の夜
(7)糸車廻す手止めて霧を吐く

 前回もうれしくなるようなお言葉をありがとうございました。今回は万葉集の本を 拾い読みしていて出来た句をお送りします。句の内容と表記の関係が良く分からない ので、旧かな・古語のものと、現代語のものを併せて投句します。
 「秋の寺扉は招く天平へ」を、「秋伽藍扉は招く天平へ」「十月の扉を開けて天平 へ」「十月の扉は招く天平へ」「十月の扉は開く天平へ」と推敲しました。案が絞り きれない段階で申し訳ありませんが、十月が終わってしまいそうですので、四句お送 りします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 旧かな表記と古語文法ですが、私は、作者自身が選択したものを、原則、一貫するほうが良いと思っています。ただ、題材が古典になりますと、新かな、現代文法では、難しい点がでてくることもあるでしょう。しかしながら、その場その時で、ベストの方法を選ぶということで、許容されることもあるようです。
 俳句拝見しました。基本的に、表記や文法は作者個人が決められると良いと考えます。私は、現代の言葉のリズムや感性、言葉の力を俳句で表現したいので、新かな表記、現代文法です。しかしながら、旧かな、古語がとてもいいなあ、と思う句もたくさんあります。結局は、自分の選択を信じるしかないのでしょうね。肯定否定ではなく、スタンス、立場の違いとして解釈しています。
 勝手申しますが、(1)から(6)は処方に迷いますので、表記、文法を選んで下さると助かります。
(7)の句ですが、「霧を吐く」のは、例えだと解釈します。そうしますと、季語としての「霧」の力が弱くなってしまいそうです。
 「〜天平へ」の句、「秋伽藍扉は招く天平へ」にとても惹かれます。ただ、「秋伽藍」という表現の是非はありそうです。造語と判断されるからです。「秋の寺」よりも雰囲気が出ますので推したい気持ちなのですが。表現の工夫を感じる句です。

(1)今生のものと想えぬ秋落暉  小口 泰與(60代,男)
(2)蔦紅葉志賀高原の朝日かな
(3)主亡き畑に咲き継ぐ秋桜
(4)榛名富士襞顕はなり秋の朝
(5)畑へ行く風の道々虫の声
(6)紅葉や竜頭ノ滝の風さやか
(7)丸沼や霧とかけつこ九十九折
(8)朝日うけ紅に燃え立つ秋の木々

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 さまざまな土地の秋の光景が伝わってくる八句です。その中で、(3)に特徴がありました。景色だけではなく、人間の感情が色濃く表現されていることです。そして、無常観がありながらも、自然だけは変わらない、という悠久さも感じさせることが優れています。
(2)、文字の羅列を面白く感じました。それも、俳句の魅力のひとつです。
(7)、「霧とかけつこ」、そして「九十九折」が、とても愉快です。取り合わせによって、「霧とかけつこ」が十二分に生かされています。「霧とかけつこ九十九折」の、言葉の音(カ行音の多さと促音)も楽しいものになっています。


2006年10月31日

(1)秋の暮停車の度に増すネオン  文の子(60代,男)
(2)今朝の冬鬢に白髪を認めけり
 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、着眼が良いです。残念なのは、「停車の度に増す」が冗長な表現になっていることです。
(2)、こちらも着眼が良いのですが、そのままでは少し平凡な光景で、心に響くものも少ないと感じます。例えば、白髪を発見したのであるから、染めてみる冬の朝などがあっても良いと思いました。動きや積極的な意思のある句になり、魅力も出てくるのではないでしょうか。

急カーブゆるり廻って野菊かな  月子(50代,女)
 先日はご批評ありがとうございました。誉めていただけて励みになります。今回は郊外をドライブしていて出来た句です。「ゆるり廻って」に「ハンドル切れば」にするか迷ってしまいましたが、ゆるり・・・にいたしました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「ハンドル切れば」は、どちらかというと定石だと思います。ただ、定石には定石の良さ、この場合ですと言葉のつながりがしっくりくる、ということが言えます。カーブにはハンドル、という組み合わせですね。「ゆるり廻って」ですと、そのカーブの切り方や、運転者の気持ちまでが伝わってきそうです。難点は、自動車に限らず読めてしまうことです。しかし、自動車以外であっても、「野菊かな」の良さは失われないと思いますので、私は、こちらを評価したいです。、私のこのような評価には批判があるかもしれませんが、「ゆるり廻って」の気分の良さが、難点をカバーできると考えました。また、下五の転換も良いでしょう。ゆるり廻るからこそ、野菊への視点があるのだと解釈しました。

晴れ晴れと秋ふところに大師池  豊田ささお(70才以上,男)
 「たゆたゆと秋を抱けり大師池」を推敲してみました。(大会で拾われなかった句)大して違わないかもしれませんが・・
ドクター朝倉の診断と処方箋
 晴れ晴れとした気分で、秋をふところに抱いている人が前面にでてきますね。この点が、前回の句と違う魅力があるところです。そんな、おおらかな気分になれる人物と大師池。この秋の情景が、とても豊かな感じがします。秋らしい豊かな気持ちになって良いです。また、大会で選にもれましても、それはそれ、です。その大会だけが、評価の場ではありません。

(1)長き夜や妻とは違ふ音を立て  春雪(70才以上,男)
 【作句意図】静かな夜、私はパソコンのキーを叩く音、妻は裁縫のミシンの音。更 けていきます。
(2)ハローウイン思い思いの創作展
 【作句意図】去年の今頃カナダに行ったときの思い出です。
 朝倉先生 こんばんは。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、とても良いです。「長き夜」がとてもぴったりです。この季語ならではの句です。「妻とは違ふ音を立て」によって、妻も自分も、それぞれが自分のことに熱中、もちろん良い意味で、していることが伝わってくるのです。その二人の関係が、年齢は不詳であっても、深い絆でつながっているようにさえ思えるのです。派手な愛情の句ではありませんが、その以上の情感を感じました。
(2)、ハロウインの楽しさの句ですね。折角のカナダでの思い出ですから、カナダやモントリオールなどという地名を使われると、生き生きとした華やかな句になりそうです。

何となく葱の香のする厨かな  ひさこ(50代,女)
 思い着いたままの句なのでよろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 正直申しますと、賛否はあると思うのです。しかしながら、私は、作者の自分らしい句として良いのでは、と思います。追求しますと、葱はきざんでこそ匂いますから、厨で誰か調理中なのか。「何となく」というのですから、一人で台所にいるのか。どのような状況で、この葱の香りを感じている人はいるのか、があいまいなのですが。 何となく、不思議な個性がある句でした。

鵙日和八十路の坂の険しくて  加護坊(70才以上,男)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「鵙日和」によって、八十路の険しさが、少し和らいで読者に伝わると思います。「険しさ」を否定するのではなく、読者に受けいられやすい形になったという意味です。季語ひとつによって変わってくることも、俳句の魅力でしょう。

分水嶺花野をわけて日本海  春雪(70才以上,男)
 朝倉先生 こんばんは。
 【作句意図】丹後の生野銀山に行って来ました。円山川の源流がありました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こんばんは、春雪さま。とても良い句で、うっとりしてしまいました。決して、特殊な風景ではありません。しかしながら、巧みな表現、抒情をかもし出す言葉によって、情緒ある句となっているでしょう。「分水嶺」という適切かつ個性的な言葉、「花野」という美しくも哀愁ある秋の季語、そして下五で大きく広がる「日本海」。秋は、太平洋よりも日本海が似合います。眼前に風景が浮かび、その世界を楽しむことができる豊かな句です。

(1)虚妄から名刺が出てくる秋の昼  北野元玄(60代,男)
(2)脳ミソが遠心分離で飛ぶ秋だ
 ドラキュラ以下の3句、過分のお褒めを頂戴いたしました。励みになります。朝倉ドクターにはこれが最後の投稿になろうかと思っておりますが、上2句よろしくご批判ください。「元素片手に」の句と「命懸けのお世辞」の句は推敲を続けます。いつかご批判をいただけるまでの宿題にしておいてください。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)を面白く読みました。遠心分離機で飛ぶ脳は、秋ならばありえそうかも。夏は茹だるでしょうし、春はお気楽気分、冬は寝ていそうですから。秋の自然を満喫しながら、木の葉舞う中で、起こり得そうですね。
(1)、少しシニカルな句、なのでしょうか。「虚妄」からそう感じました。秋の昼ですから、白昼夢のような感じかしら、とも。
 *どちらの句も、作者の挑戦的な意図にどきどきします。挑戦には、成功も失敗もあると思いますが、北野さまらしい挑戦は、句の個性、作者らしさとなるはずです。俳句にとって「らしさ」とは、大切な要素です。ご健吟をお祈りいたします。こちらこそ、新鮮な挑戦に、言葉の魅力を感じる二ヶ月でした。ありがとうございました。


2006年10月30日

(1)小春日や野良猫庭をほしいまま  文の子(60代,男)
(2)時雨るるや傘と自転車擦れ違ふ
(3)改札の出口間違へ夕時雨
(4)鐘の音のかそけきゆふべ秋黴雨

 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、良いですね。江戸時代の俳諧のような雰囲気もあります。それが個性となって魅力を感じます。
(2)、情景は、よく伝わります。ですが、分かりすぎる点とありふれた感じであることが、逆に魅力を乏しくしているようです。
(3)、惜しいですね。「夕時雨」が予定調和な感じを受けます。「改札の出口間違へ」は、下五を期待する良い情景ですから、是非、何か、心に響くような展開を期待したいのです。
(4)、こちらも、江戸時代、藤沢周平などの世界を思います。季語も充分に生きているでしょう。

水澄むや鯉の姿態の閃きて  涼(男)
 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「鯉の姿態の閃きて」が良いです。特に、「姿態」という言葉が、冷静な視点を感じさせます。「閃く」という表現、良い意味で驚きました。今までには感じなかった、新しい鯉の姿を教えてくれる句でしょう。新しく美しい発見を教えてくれる魅力があります。

秋空より一滴落ちて蜆蝶  藤太郎(50代,男)
 前回もまた、ごていねいなご診断ありがとうございました。「説明になっている」とご指摘を受けました次の句を、推敲してみました。「理髪して秋の深まる盆の窪」→ 「理髪店出でて秋寂ぶ盆の窪」「店を出ると何々だった」というのは、よく見かけるようにも思うのですが、いかかがでしょうか、よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「理髪店出でて秋寂ぶ盆の窪」ですが、「店を出ると何々だった」という定石には感じませんでした。それは、「秋寂ぶ盆の窪」にそれを払拭する力があるからです。その力は、「秋の深まる盆の窪」にもあります。「理髪して」が、あまりにも盆の窪に直接過ぎる感じを受けましたので、前回述べさせて頂きました。今回の「理髪店出でて」は、その点は解消されていて良いでしょう。
 「秋空より一滴落ちて蜆蝶」、一滴とは雨粒でしょうか。「秋の空雨一雫蜆蝶」も考えましたが、朝倉風になっているきらいがありますので、ご参考までに。「一滴」が気になりますが、きれいな秋の情景です。

(1)稲刈りや小さき手に大き手重ね笑い合ふ  豊田ささお(70才以上,男)
 子どもの一生懸命さをだそうとしましたが、ストレートにいけなくて、横のほうに なりました。昨日地元の俳句大会、自信作が全滅で落ち込んでいます。
(2)小さき手に余る稲株刈りにけり
 いいかげんでこの句材はあきらめましょうか?
ドクター朝倉の診断と処方箋
 (1)、「稲刈りや大き手の添ふ小さき手」
 (2)、「小さき手めいいつぱいの株稲を刈る」
と、考えてみましたが、ご参考までに。
 稲刈り、稲株、良い句材だと思います。句より察しますところ、実景を目にしていらしゃるかと。せっかくの情景です。作りたいという前向きな気持ちがある限り、作られると良いと考えています。
 また、自信句ほど、評価されないのも句会のセオリーです。笑っちゃいますが、本当です。案外、自分では時間切れや、どうでも良い句が人気だったりします。だからこそ、句会に参加したり、大会などに投句する大切さがあるのです。また、自分自身の俳句生活も波があります。駄句ばかりつづく月日もあるものです。若輩が偉そうに申しましたが、俳句の先輩方も似たようなことを仰っています。

(1)この道は水仙の道波静か  豊純(70才以上)
(2)水仙や早一輪が灯台に
(3)故郷の香り漂う冬の夜
(4)水仙は私の出番と顔を出す
(5)水仙が一年越しでコンニチワ

 朝倉先生コンバンは。沢山の俳句のご診断どうも有難うございました。叉五句お願 い致します。四と五番目の句は孫が作りました合わせてご批判下さいませ。2ヶ月間 どうも色々とご指導頂きまして本当に有難う御座いましたお返事を待つのがとても楽 しい毎日でした。叉ご指導頂ける日までお元気でご活躍くださいではヤンチャ娘様に 宜しく。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「この道は水仙の道」が、とても良いですね。抒情詩のようです。一方で、「波」とは、近くが海なのでしょうか。海は句材にせず、水仙の道にしぼられる方が、水仙もより生きてくるでしょう。静かさを出されていることは成功です。
(2)、灯台と水仙の早咲き、それも一輪、良い取り合わせです。うっとりするような情景、少し昔の日本映画のようです。
(3)、少し、感傷的過ぎましたか。冬の夜の気分はよく分かるのですが。では、お孫様の句を。
(4)、「私の出番」、とても良いです。この感性は、やはり若年ならではでしょう。
(5)、「一年越しでコンニチワ」、何よりカタカナの「コンニチワ」。水仙を喜ぶ気持ちが一気に伝わります。アドバイスとしては、「水仙や」としますと、水仙以外のもの、例えば友達などとの一年ぶりの再会も想像可能です。お幾つのお孫様か存じませんから、切れ字の指導は迷いますが、子供ならではの「や」の使い方があっても良いかなと考え、述べました。また、中七は「一年越しの」だと響きがきれいになります。
 *コメント、とてもうれしく頂戴致しました。これからの、大いなる活力になります。こちらこそありがとうございました。娘も、私の「俳句の仕事」を理解できつつある年になり、豊純さまのメッセージを楽しんでいます。こちらも、お孫様のご成長、ご健吟を楽しみにさせていただきます。感性鋭敏な時期の経験は得がたいものと感じます。最後になりましたが、豊純さまのご健勝、ご健吟を心よりお祈りいたします。

(1)ビニル傘コックピットにして野分  文の子(60代,男)
 「台風へコックピットのビニル傘」を推敲しました。
(2)鶴来るや雲の上にも空のある
 「運動会雲の奥にも空見ゆる」を推敲しました。
(3)乗せられて泣く乳母車うそ寒し
 「乗せられて泣く乳母車冬隣」を推敲しました。「乗せられて泣く乳母車今朝の冬」も考えましたが、元句通り晩秋にしました。如何でしょうか。
 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、ビニル傘、コックピット、野分の取り合わせの良さが伝わるようになりました。
(2)、広く深い空を感じさせます。秋、とくに晩秋の空らしさがあります。
(3)、「乗せられて泣く乳母車うそ寒し」、良いです。「今朝の冬」よりも「うそ寒し」の方が、泣く赤ちゃんやその母親などの様子が身近に感じられます。

蔓草や男やもめの独り言  加護坊
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「蔓草」は「葛」などではだめでしょうか。それにしますと季語が入りますから。蔓植物と「男やもめの独り言」はよく合っていて良いです。それでいて、その男性にも少しだけ余裕がありそうなところが、句を軽くし、読者が共感しやすいでしょう。男ではない私にも、伝わってくるもがありました。


2006年10月29日

(1)日のあたる向ふ岸へと秋の蝶  彩貴(40代,女)
(2)鶏頭の横つら弾き種を採る
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、秋の蝶の良さがでていると感じます。「日のあたる向ふ岸」という表現がとても良いです。
(2)、こちらも「横つら」という表現が効果的です。多少、読者の好みは別れそうですが。種を取るという行為が希望を感じさせます。

(1)青みかん熱き小説読み終えて  れい(70才以上)
(2)夜が来て葬りの帰途の菊膾
 いつもありがとうございます。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「青みかん」がとても良いです。「青みかん闇の深まる一人の夜 高橋喜代子」という句にもあるような、青みかん特有のイメージが生きています。
(2)、句材は良いのですが、情景がはっきり伝わりません。「夜が来て」の表現によって、ぶれてしまうのです。是非、「葬り」と「菊膾」でご再考下さいませ。

散る木の葉あつめて地球浮かびけり  遅足(60代,男)
 いつも丁寧な診断をありがとうございます。雑木林を散歩していた時の思いつきです。木の葉が散っていく大地も宇宙に浮かんでいる。でもちょっと、飛躍しすぎでしょうか?あつめて、が、いけないかなとも思っています。診断をお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 飛躍なんてしていません。その壮大な想像が俳句を魅力的にします。秋や冬は、わりと地球を詠む句をみます。季節の巡りが、人をそういう気持ちにさせるのでしょうか。投句、良いと思います。加藤楸邨の「木の葉ふりやまずいそぐないそぐなよ」を思い出しました。どちらも、木の葉がたくさん、たくさん、あってこその句ですね。

(1)栗をむく雨かと見やるジャズドラム  穂波(30代,女)
(2)流星に硝子の鈴の谺して
(3)宇宙からきた人月のことば聴く
(4)眠る森クラリネットの霧流れ

 今回もうれしいお言葉ありがとうございました。ご自身がお子さんを題材にして俳句にどのように向かわれてこられたのか、とても参考になりました。「天狗から梢に一葉秋便り」上五を「速達です」から変えました。俳句では秋の季節は立冬までなのでしょうか。そうだとしたら秋の句は早目に投句しないといけませんね。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそ、思いがけず、このようなお話ができましたことうれしく思っております。「天狗から梢に一葉秋便り」、とても良いですね。句意もクリアになりましたし、何より「天狗」が小気味良いです。このような感性も、日常の自然をお子様と楽しまれているからかしら、と思いました。また、秋の季語ですが、立冬を少し過ぎた頃でしたら使えると考えています。句会でもそれが許されているでしょう。(厳しく制限している句会もあるでしょうが。)気分も景色も「冬」になってきましたら、俳句も冬ですよね。
 四句拝見、どれも自然の豊かさを感じました。
(1)、「見やる」ですから、ドラムと栗剥きが同じ場所でしょうか。実景であっても、句にした時、読者は「あれっ?」と思います。とても良い発想、着眼です。是非、ご再考下さいませ。ジャズドラムはCDの音楽とも思いましたが。
(2)、「流星や」で切ってみるのはいかがでしょうか。夜空が、ぐんと広がるような気が致します。また「谺して」が、秋の夜の良さを伝えています。
(3)、面白さのある句でしょう。突拍子のないことですが、「月のことば」という表現が、それを緩和して、やわらかい印象の句になっています。
(4)、「クラリネットの霧」、クラリネットの音の比喩ですね。確かに、クラリネットの音でしたら、そのように感じるかもしれません。木管楽器ですから、音自体優しく、「眠る森」に合っています。

(1)秋思とも初老鬱とも目玉焼  満山(50代,男)
(2)黄落期孤独を覗く監視カメラ
(3)放射能分析棟や秋灯し
(4)鰯雲ひろがる私はどこへゆく

 よろしくお願いしまする。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、独自の表現、世界が句から伺えます。良いです。「目玉焼」で深刻さを消し、日常を出したことも成功です。
(2)、少し、理屈のようでしょうか。
(3)、「放射能分析棟」が、意味深長で、「秋灯し」の雰囲気と相まって、現代社会の一面を感じました。句材として前例が殆どない言葉でしょうが、その挑戦は成功しているでしょう。
(4)、気分は伝わりますが、表現に、もうひとつ工夫ができるように思えます。

秋深むナプキンたたむ午餐かな  涼(70才以上,男)
 宜しくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「午餐」が、ポイントであり、要でしょう。あえて古く格式ばった表現を用いたことが、句を引き締め、情景を豊かにしています。「秋深む」時候の静けさにも似合っています。晩秋の静かな時間の流れを感じさせ、良いです。

(1)残る日を惜しむがごとく秋の蝶  雀子(60代,男)
(2)翡翠や水上一尺一直線
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 どちらも、感性の豊かさと表現の力を感じました。
(1)、「〜ごとく」という表現は、俳句では難しいこともよくあります。説明で終ってしまうからです。しかしながら、投句は、秋の蝶の気持ちが、素直に伝わってきて、良いです。一句を読み通して、口調の良さも魅力です。
(2)、「翡翠や」の「や」切れが大成功です。切ることによって「水上一尺一直線」が、生きてきます。漢字ばかりの表現を狙うこともありますが、投句は、その狙いのわざとらしさは感じません。字面も翡翠の様子に効果的です。

(1)吹き寄せに零余子を散らす織部皿  彩貴(40代,女)
(2)隣より届いてゐたり栗ごはん
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)、「届いてゐたり」の「ゐたり」が良いですね。栗ご飯のおすそ分けは、特に珍しいこともないのですが、表現の効果によって句が引き立ちました。日常とは、常に同じ、平凡なことなのですが、その平凡な日常を、素敵なものにされていると感じました。帰宅するとすでに届いていた、その意外な喜びが句の魅力となっています。
(1)、きれいな情景で、工夫も感じられますが、情緒が少ない気が致します。


2006年10月28日

十月や雷がはじけてあとは雨  暮春(50代,男)
 ときどき拝見させていただいてをります。宜しくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「雷」が夏の季語ですから、今回の季重なりはちょっとしんどいですね。「雷はじけてあとは雨」の表現が個性的で良いですし、上五を変えられてはいかがでしょうか。「稲妻」や「稲光」は秋の季語となり、轟きや雨を伴う「雷」は夏とされています。

(1)柿半分賞味期限か老眼鏡  藤節(50代,女)
(2)池に月、龍のさしみでほろ酔いに
 初心者にいつも暖かいお言葉ありがとうございます。満濃池に浮かぶ月、池に棲むという伝説の龍を肴に一献・・・ちょっと無理がありますね。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「賞味期限か老眼鏡」がとても面白く、ユーモアがあって良いです。上五は、やはり「柿」がお好みでしょうか。賞味期限が明記されるようなものの方がダイレクトに伝わり良い気も致しました。しかしながら、「柿半分」にも情景の広がり、その柿は誰の残したものか、などがあって良いです。迷う箇所でした。
(2)、「池」と「龍」は、さまざまは伝説がありますから、句意は、想像の句として読めると思います。このような、幻想を楽しめる句も良いと考えています。「池に月、」も効果的です。

(1)時間軸遠ざかり行く夜長かな  泰(50代,男)
 秋の観望会で。
(2)脱北の民の顔して雁の群
 このような時事が絡んだものはどうなんでしょう?
 よろしくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「軸」が遠ざかる、ということを厳密に考えますと、悩ましいのですが、句にある気分はとても良く伝わってきます。伝える力がある表現ではあります。
(2)、時事の俳句、構わないと考えています。もちろん、川柳のほうがお得意ではあると思いますが。季語を使って時事を詠み、評判になることもあります。ただ、「今、現在」過ぎる時事ですと、時代を超えて読まれることは難しくなる可能性がありますね。投句は、寂しい句ですが、季語「雁」が活きていて良いです。

(1)秋晴の朝や熱々茹で卵  せいち(60代,男)
(2)秋に灯に圧力鍋の歌いだす
(3)長鳴いて呼び交う遠き鹿の声

 (3)は以前の「長く声引いて遠くに鹿の声」を改作したものです。よろしくお願い します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「秋晴れや朝に熱々茹で卵」も考えられます。切れを意識しました。いかがでしょうか。とても楽しく、今日の秋の一日が、素晴らしくなりそうで、ワクワクする句です。読者を楽しい気分にさせる句を、私は評価しています。
(2)、 「圧力鍋の歌いだす」がとても良いです。圧力鍋は、圧力がかかってくると音がします。その情景でしょう。上五は「秋の灯に」ですと、表現が少しもたもたしているようです。「秋灯(秋燈)や」 という季語も使えます。「秋に灯に」でしたら、作者の強い思いと思いますので、そのままで良いと思います。また、秋の「燈」と「灯」は、その違いを厳密にする場合もあります。
(3)、「長鳴いて呼び交う」によって、鹿の放たれている原が広々として気分良いことが伝わってきました。

(1)定刻の前に開宴年忘  文の子(60代,男)
(2)薬喰神の使に遇ふてより
(3)休日の目覚め運動会の声
(4)秋の暮車灯に遅れ星点る
(5)単線の降るるばかりや暮の秋

 10/21のご診断有難うございました。「台風へコックピットのビニル傘」と「運動会雲の奥にも空見ゆる」はもう少し考えます。宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(5)がとても良いです。「単線」が見事に活きています。無人の駅や単線はよく見ますが、「降るるばかりや」の着眼と表現が非常に良いのです。「暮れの秋」は、ぴったり過ぎるかとも思いますが、全体のバランスが取れていますので良いでしょう。
(4)、逆に、星に遅れて車灯をつける、ということも考えました。どうでしょうか。また、「星」という強い句材がありますから、「秋の暮」よりも、「秋の星」などとされる方がすっきりとクリアな情景になるでしょう。秋は、「流星」、「星月夜」なども季語ですから、より豊かな世界を描ける可能性があります。
(1)、(3)、少し平凡でしょうか。表現を工夫されると、面白さが出てくるでしょう。
(2)、こちらは、ウイットに富んでいますね。ただ、その面白さを感じる読者とそうでない読者がいるのでは、と思いました。


2006年10月27日

(1)誘ふごと庭に2本の秋桜  豊田ささお(70才以上,男)
 いつも変わらず暖かいご指導で救われています。私の場合、ともすれば擬人法になってしまうようです。
(2)千の秋千年の池魚影なし
 おっかなびっくりの満濃池3句へのご診断、誠にありがとうございました。中讃に縁ある先生ということ無性に嬉しく存じます。その池がいま、国営公園の護岸工事で危機に見舞われています。この歴史アル池をまもらないかん・・でムリムリ作りましたが無理でしょうね。下五でピシッと〆たいのですが・・・。
(3)黄落し根はたっぷりのヤマノイモ
 さっきは無理な句を送りまして、お心を煩わせてしまいました。で、少し気楽な作をと・・いかがでしょう?
(4)初鴨のただ浮かび居る大師池
 さっきの黄落も、ヤマノイモも秋でしたね、季重なりをやってしまいました。で、またしても池の句です。
(5)初鴨の目指す池心の輝きぬ
 (4)の句を推敲してみました。最近安易に作りすぎるようで自戒です。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、擬人化が良い効果を出していると思います。秋桜の風情を「誘ふごと」とされたことは良いです。「庭に」が、少し安易でしょうか。「二本」も合っています。
(2)、「千の秋千年の池」が秀逸です。千秋に、もうひとつ永遠さを足したように感じます。「魚影なし」は、読者の好みはあるでしょうが、良いと思います。〆たいお気持ち、反映されているでしょう。「なし」という無機質な雰囲気は、永劫を感じさせますから。
(3)、主役は、ヤマノイモでしょう。「たっぷり」という形容が良いですね。その分、黄落が主張しすぎて余計な季語になっているでしょう。
(4)、(5)、どちらも整ってはいるのですが、特徴、インパクト、オリジナリテイといったものに欠けているようにも思えます。
 *満濃池、そんなことになっているとは、残念です。こちらこそ、讃岐の様子をうれしく拝見いたしました。

(1)さやけしや缶ドロップの音色なり  小口 泰與(60代,男)
(2)弔問の蜀のけぶれる秋の雨
(3)をちこちに声上がりをり茸狩
(4)身にしむや思はぬ恵み夜の虹
(5)薄墨のふと筆書きや秋浅間

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、とても良いです!お見事!
(2)、「けぶれる」が良い表現ですが、「弔問」と「秋の雨」が付きすぎました。
(4)、「思はぬ恵み」と感じる夜の虹が良いですね。
(5)、「薄墨」が惜しいです。秋浅間と筆書きは良い取り合わせですが。

(1)パソコンのメモリー消して秋刀魚焼く  れい(70才以上)
 ご診断トテモ楽しみです。
(2)馬鈴薯の箱に女の署名あり
 いつもありがとうございます。
(3)寺の子のひとり遊びや一位の実
 幼いころを思い出しております。遊び「や」で切るべきか、「の」にするべきかで大いに悩みました、ご教示を・・・。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、とても現代的な行為「パソコンのメモリー消して」と「秋刀魚焼く」。意識的な取り合わせにインパクトがあり、良いです。
(2)、ドキッとする句です。「馬鈴薯」という、まったくおしゃれなものでないところが、逆に句を深めているでしょう。表現が少し散文的なので、句中の言葉を入れ替えたりして、工夫されると良いでしょう。
(3)、「寺の子のひとり遊びや」が、少し冗長な感じをうけますが、一位の実がとても効果的で、句が栄えています。また、「や」か「の」ですが、「の」にした場合、「の」の連続の良さはないように思えます。もちろん、意識的に使って、音の連続が効果を出す句もありますが、今回は感じませんでした。「や」切れの方が、句の世界が広くなります。「ひとり遊び」と「一位の美」をつなげて読まなくても良いからです。それぞれ独立させた読みも可能です。句意のあいまいさではなく、様々に取れて情景が広がる句は、とても素晴らしいです。

(1)ピラカンサ一粒毎に秋深め  浅葉洋(70才以上,男)
(2)ピラカンサ運動会ももう間近
(3)秋更けて夕日と競うピラカンサ

 真っ赤に色着いたピラカンサが青空に映えています。秋の見事な風物詩と思い詠んでみました。ご高評をお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「一粒毎に秋深め」が、定石かな、とも思いましたが、あまりにもピラカンサらしく、良い秋の一句と判断します。
(2)、良いです。取り合わせの妙です。「運動会も」ではなく「運動会は」をお薦めします。ピラカンサと関係のない運動会ですが、似合っています。どちらも、元気な秋のものですから。
(3)、ちょっと冗長ですね。夕陽と赤い秋の実も定番です。

石礫のなかに横たふ枯葉かな  涼(70才以上,男)
 宜しくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「横たふ枯葉」が、ただの落ち葉とは違って、小粋に感じます。「石礫のなかに」が、少々単純にも思えますが、「横たふ枯葉」とは、良いバランスと感じます。静謐な秋を表現されています。

(1)それなりに鶏頭並ぶ捨鉢に  仁(50代,男)
 「いきいきと鶏頭並ぶ捨鉢に」の推敲です。
(2)アルバイトの巫女にメールや秋を行く
 「巫女の子のメールを待ちし夜長かな」の推敲です。
(3)廃線や鶏頭の種子まかれある
 「廃線の線路の輪切り枯鶏頭」の推敲です。
(4)さびしさや休耕田の草の花
 「さびしさは空の暗さや萩の花」の推敲です。
(5)鉛筆の尖りすばやく鶏頭描く
(6)しばらくは野人となりて秋茱萸食ぶ

 前々回と三回診断していただきまして誠に有難う御座いました。 毎日が楽しみで新聞を見るより、先ずクリニックを一読してから始まる一日でした。「なるほど」「なるほど」と思う事ばかりで勉強になりました。最後の診断をと思い急いで拙句を並べました。又よろしくご指導の程お願い致します。この後、晴美先生は一年後の担当ドクターでしょうか、長く間が空きますね・・・ 淋しい限りです。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「それなりに」と「捨鉢」で、ユーモラスな句になっていて良いでしょう。「鶏頭」という深刻にならない植物が成功です。
(2)、少年の句のように、若い心情を感じます。句意もはっきりしています。
(3)、「鶏頭の種子」がお見事です。廃線のマイナスから、「種子まかれある」のプラスの情景。「鶏頭」という植物もまた、句にムードを与えています。古い映画のようです。
(4)、「さびしさや休耕田の草の花」、秋の物寂しさがよく出ています。「草の花」は具体的な植物が良いでしょう。休耕田がおおまかな感じがしますので、下五は絞ると句に締まりが出ます。
(5)、「鉛筆の尖り」で、切れていることが、句を印象的にし、アクセントを付けています。また、描く「すばやさ」も強調されそうです。良いです。
(6)、「なりて」が、惜しいですね。美味しさがとても伝わってきますので、表現によって、より楽しさを出しましょう。「しばらくはみんなで野人秋茱萸食ぶ」などとできますが、是非、仁さまの表現を!
 *余談ですが、瀬戸内のあたりでは、茱萸、グミを「しゃしゃぶ」と呼ぶ地方があります。本当に懐かしいです。また、暖かいコメント、とてもうれしく頂戴致しました。断定はできませんが、また来年のいつかの月にさせて頂くことになりそうです。こちらこそ再会を楽しみにしております。一日の活力に少しでも貢献できたことは、喜び一杯でございます。お言葉を心に、日々励みたいと思います。お元気で、ご健吟をお祈り致します。


2006年10月26日

(1)切り岸にきっぱりと白小浜菊  穂波(30代,女)
(2)小浜菊卒寿の祖母はひとり住む
 毎回のご指導ありがとうございます。「海はソーダ月のアイスが顔を出す」「特大のクリームソーダ海夕月」 「ニライカナイにクリームソーダ月出づる」を推敲しました。推敲の前の後も、「季語一つ」「五七五」からはみ出してしまいました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「特大のクリームソーダ海夕月」が良いです。クリームソーダで切れますから、本物のクリームソーダとも読めます。両方の意味に取れるクリムソーダが、句に余裕を持たせて良いです。ただし、「海夕月」で、季語とすることは厳しいでしょう。
(1)、良いでしょう。「白小浜菊」が成功です。
(2)、「ひとり住む」が蛇足でしょうか。祖母を説明しきってしまって退屈になるようです。何か、祖母の特徴や行動などではどうでしょうか。菊もおばあちゃまも、より素敵になることでしょう。

夕映えに光るすすきは瀬戸の海  藤節(50代,女)
 キラキラと輝く瀬戸の海はまるで宝石箱のようでした。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「光るすすきは瀬戸の海」ですと、すすきが光る海の形容、例えにとれます。もちろん、それが悪いわけではありませんが、季語のすすきとしては取れなくなります。私も瀬戸内育ちですので、穏やかで、かつ美しい海は良く知っています。折角、「宝石箱」と仰っているのですから、それを使われると良いと感じます。素晴らしき瀬戸内海の句を期待いたします。

(1)鈴虫の鳴きやむリズム父の家  れい(70才以上)
(2)わが町は橋多き町星今宵
 いつもありがとうございます。それがどうしたの?というような、何の意味もないと思いつつ。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、良いと思います。なんでもない情景のようで、その瞬間の感情があると感じます。「父の家」には、すでに実家を離れていることを想像し、その実家で、秋の虫が鳴いている。聞いていると、鳴く止むリズムに気づく。わいわいと宴会になっているなら気づきません。静かな、父の家での時間。そこに、情感があります。
(2)、「わが町」でない方が良いでしょう。「わが」は、句の「私(作者)」が強くなり、注意して使いたい語です。今回は、下五が情緒的ですから、「町」は自分から離したもの、例えば「あの町」、「かの町」が良いと思うのです。「橋多き」と「星の夜」は、美しく情感ある風景です。

(1)名月や大天空を独り占め  栗太郎(60代,男)
(2)見上げれば名月我を見つめをり
 今年の中秋の名月は、真夜中に我が家の庭で見ました。明るくてまぶしいくらいのすばらしいお月さんでした。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「大天空独り占めする今日の月」
(2)、「名月や見つめ合ふ時あるやうな」
と、二句直させていただきましたが、栗太郎さんの本意とは違ってきてはいませんでしょうか。(1)は「大天空」と使いたく、(2)は、満月の存在感を強めたく、上記のように致しました。

(1)強風をものともせずや秋の虹  小口 泰與(60代,男)
(2)朝寒や雲を侍らす朝月夜
(3)湯煙の目に沁みにけり野分あと
(4)遠山の彫り深まりし野分あと
(5)霧迅し硫黄を包む九十九折
(6)かき曇り夜のやうなり秋の志賀
(7)せんべいをかりつと割るや秋の宵
(8)雲迅し志賀高原の蔦紅葉
(9)綿菓子のやうな雲あり朝の露

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、強風にびくともしない秋の虹、虹の遠さと力強さを感じさせる点が優れています。
(2)、「雲を侍らす」が、朝寒の朝月夜とぴったり合っていて良いです。句中での「朝」の連続が、少し気になりました。「冷やか」も候補として考えられるでしょう。
(4)、野分の後の様子、見事に表現されています。自然を十二分に感じます。

(1)立待や杯を重ねし台場の黙  しんい(60代,女)
 いつもお世話様でございます、[立待」の句、ご指導頂き推敲には程遠いのですが、よろしくお願い致します。今回は台場の[静]を。前回は、月に夜景はとも思いつつ、月の美しさもネオンに霞んでしまいそうな事を言いたくて…
(2)秋夕焼け対岸のビル黒々と
(3)蚤の市甕に活けたる柿たわわ
(4)指編みを習ひ合ひたる秋うらら

 よろしくご指導お願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(4)、四句のなかで一等良いと感じました。「指編み」は、男性には理解されにくいでしょうが、それを勝る「ゆったり感」が句にあります。棒編みではない指編みの素朴さと気軽さ、そして、秋うらら。単純な情景ですが、そこにあるゆったりとした時間は、誰もが好きなのもです。習い合いながらの会話もまた、その時間の楽しみであるのですから。
(3)、秋の一日の豊かな様子、その空気を感じさせます。「甕」と「柿たわわ」がその効果を出しました。
(1)、「台場の黙」に、評価は分かれるかもしれませんが、良い雰囲気の句になっています。熱心な推敲に感激致しております。こちらこそ、拙い処方ですが、何か伝わっていることをうれしく思います。
(2)、「対岸のビル黒々と」が個性的な表現です。

(1)質問が質問誘ひ長き夜  文の子(60代,男)
 10/18のご診断有難うございました。「美女の頭に合はせし教師長き夜」を推敲しました。
(2)運動会園児に白髪引きずられ
 10/18のご教示を踏まえ、「対をなす園児と白髪運動会」を推敲しました。如何でしょうか。
(3)広角なコの字の講義夜長し
 「夜の講義というものが、とても良い句材」と承り、もう一つ作りました。講義の間はカラー(首のコルセット)を外していたので、大分だるくなりました。
(4)水墨を掛くるや窓に冬の鳥
(5)片時雨東郷神社波立ちぬ

 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、いろいろな情景を想像でき、「長き夜」が雰囲気を出していて良いです。広がりのある句です。
(2)、ユーモアですね。園児の運動会でなければ、「白髪引きずられ」が怖いですが、その点は誤解ないよう表現されています。
(3)、良いですね。「広角なコの字」は、コの字型に机が並んでいる様子と取りました。とても、「夜長し」と合っていて、講義の良い雰囲気が伝わってきます。
(4)、水墨と冬の鳥が付きすぎてしまったでしょうか。
(5)、漢字の字面が句の魅力のひとつとなっているでしょう。「東郷神社」という、実存の人物を祀る神社が、句の情景とよく合っています。

(1)ほろほろと小春こぼるゝ雄島かな  学(50代,男)
(2)松島の翁の声の落し文
(3)ほのぼのと立ち上がる湯気翁の忌
(4)翁の忌俵積み舟合ひ通ふ
(5)歩みゐて水の匂ひや秋の滝
(6)夕靄の崖に牡鹿や波の音
(7)安土桃山華やかに月昇る

 ご教示を。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、評価を難しく思いました。「小春」は冬、十一月ごろの、ふと春のように暖かいことを指しますから、「春」ではありません。その季語に、「ほろほろと」という形容はどうでしょうか。春のイメージが強く、迷うところです。
(4)、翁、芭蕉の句では、(4)が一等良いと感じます。俵を積む舟は、豊かな感じを受けます。そして、合い通うのですから、そこに親しみや暖かさを感じます。それらが、忌日である季語、翁の忌、松尾芭蕉に良く似合っていると思うのです。句の表現も整っています。
(5)、水の匂いと秋の滝が良いですね。秋ならではの爽やかさを感じさせます。一方、「歩みゐて」は推敲の余地があるでしょう。「水匂ふ秋の滝まで○○○○○」という方法もありますが、朝倉風かもしれませんので、ご参考まで。

(1)騒音をかき消す如く秋の虫  光子(60代,女)
(2)病み人障りはせぬかと鈴虫に
(3)竈馬はねて見つめる猫いてし
(4)歳時記をとじて灯を消す虫の闇

 ご無沙汰しております。秋の虫ばかりです。句をいれる時は、「句意」を書き添えた方が良いのでしょうか。 宜しくご指導下さい。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 処方箋、大変遅くなり失礼致しました。 四句拝見しました。また、「句意」についてですが、なくてもおおいに結構でございます。俳句という独立した作品の世界として、拝見しておりますから。
(3)をとても楽しく読みました。竈馬と猫の取りあわせが愉快です。猫が見つめているだけという情景が、秋の静けさを感じさせ、良いです。
(4)、「虫の闇」の本意を、美しく句に仕上げられています。
(1)、「騒音をかき消す如く」が、冗長な表現でしょうか。虫の声が、ボニューム一杯という情景は良く伝わるのですが。
(2)、「病み人」と「鈴虫」の取り合わせが、秋らしくて惹かれます。「障りはせぬか」に推敲の余地がありそうです。


2006年10月25日

今もなお上司に呼ばれる秋の夢  春雪(70才以上,男)
 朝倉先生 こんばんは 春雪です。
 【作句意図】退職して8年余になりますが、今も時々上司に叱責されてる夢を見るのです。(笑)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こんばんは、春雪さま、つい笑ってしまい、失礼致しました。ですが、この笑いこそ俳句の大きな魅力になるのです。投句ですと、その可笑しさが、もう一つ上手に伝わってきません。「今もなお」ではなく、ダイレクトに「退職後」ではいかがでしょうか。直接的すぎるかもしれませんが、面白さは伝わるでしょう。

(1)吾亦紅うなづき合うよ土手の上  豊田ささお(70才以上,男)
 いつもありがとうございます。「吾亦紅夜雨の中に立ち尽くす」を諦めて別物をめざしました。
(2)ひと気無き公園に来る百舌一羽
 アオイトトンボの句への添削ありがとうございました。イトトンボのままでは青空にとけるが、言えないのではと、こだわったのと、この種のトンボは、どんどん居なくなっているので愛着があるのです。またよろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 愛着のあるものを句材にすることは、上達への方法のひとつです。魅力ある句は、句が愛情に満ちていることも多いです。
(1)、うなずき合うのは、吾亦紅同士か、自分と吾亦紅か、迷いがありますが、どちらにも読める句としても良いでしょう。吾亦紅のような、素朴で控えめな植物であることが、成功です。また一つ、吾亦紅の魅力が表現されました。
(2)、「百舌一羽」が良いですし、誰もいない公園も良いです。表現が冗長な感じがしますので、推敲の余地はあるでしょう。

夏日和 今宵も花に 水をやり  今田 誠之(70才以上,男)
 朝夕は冷え 夜は光合成をしない植物に 夕方水をやることは根腐れの原因となりかねませんが このところ毎日夏日が続き乾燥して花が可愛そうなので つい水をやってしまいます。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 コメントの情景がとても興味深いです。それを、そのまま句にされてはいかがでしょうか。投句では、コメントの面白さがあまり出ていないようです。
 朝夕の冷えなども、花とともに良い句材です。「朝冷え」、「夕冷え」や「秋冷」なども使えるでしょう。独自の発想は、素晴らしい句になる可能性大ですから。

(1)野紺菊靴とか川も山とか星  汽白(40代,男)
(2)月だって遠くでGパンはいている
 いつもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそでございます。
(1)、挑戦を感じます。靴、川、山、星と、順に視線が上がるところが良いと思いましたが、やはり「とか」と「も」の評価は割れるでしょう。しかしながら、星空に野紺菊、可憐で、澄んだ風景を感じさせます。
(2)、こちらも表現への挑戦ですが、大胆なようで、月の擬人化ですから読むことには苦労しません。そんな気持ちになる月、三日月でしょうか、もあるような気がします。

(1)朝寒や犬の仕種をして起きぬ  えんや(70才以上,男)
(2)着膨れは往時ままなる部下来たる
(3)駐車場斜めによぎる秋旱

 いつも優しくそして丁寧にご指導頂き深謝いたします。前回の「外つ国の一輪指ya 月見草」のyaは、や、の変換間違えでした。大変失礼致しました。今回も宜しくお願 い申しあげます。何もかも初心者にて御免下さい。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 恐縮至極でございます。しなしながら、とてもうれしく、残りの任期へ力が湧いてまいります。
(1)、実家に大きな犬がおり、確かに母もそんなことを言っておりました。犬好きに好評違いありませんね。「仕草」よりも「まね」、「かっこ(格好)」などが、実景を感じさせる気が致します。例えば、「朝寒や起きる時だけ犬のまね」、「朝寒や犬のかっこし起きる日も」など。
(2)、「往時のままなる」が、少々懐古趣味を強調してしまっているように思いましたが、着膨れの部下、とても面白く、いろいろ想像でき、楽しく読める句です。
(3)、抽象の句ですが、秋旱の感じが出ているように思えます。確かに暑いのですが、真夏の炎暑とは、また違った暑さ、空気が伝わりそうです。大胆さが、マイナスではなく、印象づける効果となっています。

(1)と見こう見して秋の声探してる  北野元玄(60代,男)
(2)秋が来た逆説的な秋である
 「命を懸けたお世辞」は紳助(伸介は誤り)さんのギャグでした。小生の名月とはの句では、このギャグが生きていませんね。少し考えさせてください。上2句は少し鬱的な秋を詠んでみました。シリアスすぎないで、かつ少し笑えるくらいを目指してみました。(1)については、右顧左眄も考えましたが、と見こう見の方がユーモアが感じられるのでは?。ご批判をお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 そうですね、(1)は「と見こう見して」で成功でしょう。ユーモアが、この言葉によって出ているでしょう。「秋の声」という見えないものであることも、効果的でしょう。
(2)、具体的に、「逆説的な秋」とはどういうものでしょうか。まったく、分からないものですと、読者もしんどいですね。自分にとって逆説的であるならば、具体的にそれを伝える方が面白くなりそうですが、いかがでしょうか。

大根の青葉しげるよ遊びたし  うさぎ(60代,女)
 幾つになっても遊びたいものですね。先生の担当の時にお世話になりたいと頑張って作っていますが・・・よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 もったいないお言葉、恐縮ですが、励みにさせていただきます。
 投句、大根の青葉がとてもいきいきと感じられます。「遊びたし」がその効果を出しているのでしょう。「遊びたし大根青葉茂ったよ」も考えられるでしょう。「遊びたし」が強調されます。ただ、「大根青葉」の言い方がお好みでなければ不可ですね。

(1)九度山の 柿もたべごろ 足軽く  菊美(60代,女)
 昨日、〜ネンテン先生との真田の里〜、参加しましたが、とても楽しいお話でし た。投句は難しく、ほかに作りの句です。宜しく診断お願い致しますm(__)m
(2)ドライアイ 少し涙の 寒露かな
 診断有難うございます。悲しすぎますね。ドライアイで涙が出ず、目が痛い!時がありましたが、今は改善(ヒアルロ酸入り目薬)眼科で。思いきり涙流し、すっきりするのも良いですね?
ドクター朝倉の診断と処方箋
 坪内先生のお話は、内容もそうですが、リズムもあってとても楽しいですね。
(1)、どちらかといえば、定型の韻文には不似合いなような「たべごろ」、しかしながら、その率直性、大胆さが、九度山を素朴に称えているようにも取れます。下五の「足軽く」は、具体的な動作が良いでしょう。
(2)、涙の寒露への例えが良いですし、「ドライアイ」で新しい雰囲気の句になっています。季語の寒露を生かすならば、「寒露かな少し涙のドライアイ」となさると、涙の例えとともに、本物の寒露を句中で表すことができます。季語が二回美味しく味わえます。

(1)水引草どこかで車洗ふ音  まりあ(40代,女)
(2)絵の中の曲線いつか秋の水
 朝倉先生ありがとうございました。「終演の楽器庫を閉ず夜半の秋」へのご指摘、やっぱりという感じです。オーケストラの大音響の後の静けさを言いたかったのですが、迷いがありました。今回も2番目あえて曖昧にしました。絵の中からいつか流れ出したという、感じをつくってみました。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそ、熱心に読んでくださりうれしく思います。
(1)、意外で、関係のない取り合わせを興味深く思います。ただ、「どこかで」と見えていない状態で、洗うものが「車」と断定できるかという疑問があります。上手に嘘をつくことも作句の力ですが、やはり「上手」につかなくては、句が残念な結果になってしまいます。
(2)、「絵の中の曲線」と「いつか秋の水」の間で切れて読め、曲線が水を連想させますから、自由には読めるけれどもあいまいではないと考えます。一言申せば、「いつか」が受け取りにくいですね。
 *どちらの句も、新鮮な取り合わせを感じます。表現は、その取り合わせを生かしもし、だめにもします。是非、磨いて下さいませ。


2006年10月24日

紺碧の空に半月秋気澄む  月子(50代,女)
 はじめて投句いたします。どうぞ宜しくお願いいたします。空の代わりに宙を使って「そら」と読みたいのですがいかがでしょうか?
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそよろしくお願い致します。
 「宙」で「そら」は、許容されると考えます。宝塚歌劇団の「宙」組発足以来、周知されていると思いますので。(場合によっては、振り仮名付きが良いかもしれませんが。)それに、投句の情景は「宙」がよく合っていますね。秋の空を、情緒的に詠まれていて良いです。

(1)一人居に長き間おきてちちろなく  悠(70才以上,女)
(2)終電車過ぎてひときわ虫時雨
(3)乱れ咲くコスモス束ね通学路

 よろしくおねがいします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、一人居の時間の流れ方を表現されていると感じました。良い発見だと思います。表現が、少し冗長なようですので、「一人居のちちろの鳴くは○○○○○」、「一人居のちちろは鳴きて○○○○○」なども考えられます。一句の調子を考えると良くなると思います。折角の発見ですので、ぜひご推敲さなって下さいませ。
(2)、こちらも、虫の音と夜の静けさの発想が良いです。上五を「虫時雨」にして作られても良いでしょう。
(3)、コスモスを束ねたのは、誰でしょうか。その迷いがあります。通学路の情景ですから、誰なのかはっきりされる方が、読みやすくなります。

(1)烏瓜 枯れ木に紅く 二つ三つ  清水 進(70才以上,男)
(2)十六夜に 病の後の ためし飲み
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「枯れ木に紅く」が印象的な表現となっています。しかし、下五が残念です。「二つ三つ」では、安易な感じをぬぐえません。
(2)、病後を十六夜と取り合わせたことが良いです。こちらも、下五の「ためし飲み」が説明しすぎているようです。いろいろと言葉を置き換えて、試してみると良いと思います。

(1)秋落暉古刹の堂の扉映え  穂波
 どなたかの投句で知った「秋落暉」という言葉を使わせていただきました。
(2)君にのみ扉が見せた菊花文
(3)秋の寺扉は招く天平へ

 前回も色々なヒントをありがとうございました。「夜の虹引き絞って闇見定める」上五を「月の弓」から変えました。「月の弓」という言葉に、「夜の虹」という意味もあることを、教えていただいて初めて知りました。今回もご指導よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそでございます。「夜の虹」を使って下さいましてうれしく思います。「夜の虹」と「闇」が互いに響き合っていて効果を出しています。 今回の三句では、(1)を評価したいと思います。言葉の選択がとても良いです。情景は特別なものではないですが、古風なもの言いの言葉によって、情景に雰囲気を伝える力を持たせています。また、「扉映え」の視点も良いです。
(2)、少し甘いでしょうか。
(3)、発想はとても良いですが、表現にもう一歩工夫ができると思います。

(1)翳る道落葉は背を丸めゐし  文の子(60代,男)
(2)乗せられて泣く乳母車冬隣
(3)秋深し良き隣人を装ひゐて
(4)小春日や甲羅干しせる貸しボート

 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(3)が良いですね。独特の雰囲気、少し怖いような句意を感じます。「秋深し」でなければ、軽く読めるところですが、逆にその怖さが句の魅力となっているでしょう。
(2)、「乳母車」と「冬隣」、似合い過ぎていて、逆に難しい取り合わせではないでしょうか。〈子の頭うすらと匂ふ冬隣 宇多喜代子〉などもありますので。「乗せられて泣く」は面白いので残念です。
(4)、小春日ならば、ボートは貸し出し中でも良いのに、あえて「甲羅干し」。その情景を、心憎いと感じるか、平凡と感じるかは、読者によりそうです。こんな情景も、静かさが小春日の良さを強め、良いと感じました。
(1)、落ち葉がくるりと丸まっている状態のことでしょうか。面白さが足りない気が致しました。

(1)星今宵しずかに静かに住まう家  れい(70才以上)
(2)星の位置少し移りて虫の秋
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)が良いです。季節の移り変わりを、敏感に感じられ表現されています。下五の秋の季語も、とても良いものを選ばれたと思います。自然を感じる一句です。
(1)、星が住んでいるように読めます。もちろん、そのように読めることも良いのですが、それならば、はっきりとそのことを表現されるほうが良いです。迷ってしまう読みは損ですから。一方、例えば、「星月夜しずかに静かに住まう家」だすと、上五ではっきりと切れ、住むのは人間となりますね。

(1)馴染みたる出湯の街や夕紅葉  小口 泰與(60代,男)
(2)山よりの便りもあらむ暮の秋
(3)山風に向かひて歩む秋の霜
(4)ひねもすの雨も厭はぬ稲雀
(5)晩菊の揺れるあたりや日の光り
(6)色変へぬ松や叢雲紅に染め
(7)石階に屈みて響くちちろかな
(8)湯煙の消えて薄の露天風呂
(9)望月を乗せて川面の奏でをり

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(4)が良いです。稲雀の様子がいきいきと感じられます。「ひねもす」というやわらかい古語、「厭はぬ」という語の響き、それらが稲雀と良く合い、雰囲気を作っています。
(1)、「馴染みたる出湯の街」が新鮮に感じました。「夕紅葉」は、ちょっと付きすぎましたね。
(3)、前へ前へ、と進んでいく「山風に向かひて歩む」から、「秋の霜」への繋がりが、しっくりと感じません。
(6)、常緑の松と、紅の叢雲のコントラストが印象的な風景です。
(7)、石段とちちろ虫は風情があります。「屈みて響く」が少々あいまいで残念です。

(1)秋晴に腹がへったぞよいとまけ  学(50代,男)
(2)秋晴やいちめん田んぼ何もなし
(3)肩ほどに卵産みたりいぼむしり
(4)峠路に秋風里は夕靄に
(5)人知れず分け入りたるや茸狩
(6)全山に紅葉なす音ありにけり
(7)ほのぼのと立ち上がる秋椀の中
(8)小春日の午後の位置なる雄島かな
(9)老いるほど若々しきや芭蕉祭
(10)みちのくを駆けくる紅葉萌える音
(11)鷹の目になって海図を広げたり
(12)露草や朝餉の早き湯治宿

 ご教示を。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 (1)、(4)が良いです。つぎに、(7)、(8)、(11)も惹かれました。
(1)、なんといっても「よいとまけ」が良いですね。大胆な口語、「腹がへったぞ」と良く合っていて、効果を出しています。良い試みで成功した句でしょう。
(4)、二句一章が見事です。「峠路」と「里」、「風」と「靄」の対比も生きています。寂しさは感じず、乾いた静かな情緒をかもし出しています。
(7)、秋の椀物の表現が優れています。それに、誰しも経験があり納得する点も、多くの読者を得、句の魅力です。
(8)、「小春日の午後の位置なる」が良いです。このような「○○の位置なる」という表現に賛否はありますが、雄島ならば良い気が致します。
(11)、鳥瞰図、を連想しますので、少し理屈も感じますが、どちらにしろ気持ちの良さがはっきりと出ています。魅力ある句と判断しました。


2006年10月23日

(1)柿の葉は喰ひ尽くされて実の多し  希妙(50代,男)
(2)蓑虫の鳴く声昔は聞いたよな
(3)菊持ちて礼する尼の細き首

 前回は過分の評価を頂き恐縮です。とても励みになります。もちろん叱正もまた有難く滋養と致したく、再び投句致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 もったいないお言葉、うれしく思っております。こちらこそ、残りの任期、よろしくお願いします。
(1)、愉快な句ですね。実りある秋のお宅を想像しました。
(2)、「父よ父よ」と鳴く俗説と、その背景となる昔話もあり、少し寂しい気持ちで読みました。
(3)、若い僧や、尼僧の句は、どうしても定番なものになってしまいがちです。「細き首」を、大胆な表現にするくらいの気持ちで良いでしょう。自分だけの尼さまの句にするには、そういう思い切りも効果があります。

明日ありと今は思へり金木犀  豊田ささお(70才以上,男)
 ご指導を・・・
ドクター朝倉の診断と処方箋
 金木犀と、その心情が合っているかどうか、少し微妙ですが、良い香りに自分自身が救われている、という風に受け取りました。

(1)折り入って相談したいとキリギリス  北野元玄(60代,男)
(2)礼服で玄関に立つイナゴの子
 いつも心のこもったコメントを頂戴しております。本当に有り難うございます。上記の虫の二句、ご診断ください。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 うれしいコメント、こちらこそでございます。
(1)、「キリギリス」がやってきた様子でしょうか。それとも誰かの投影でしょうか。ただ、「相談」と「キリギリス」の取り合わせがどこまで、読者の共感を得るかは、少し難しいところでしょう。発想は楽しく創造性があります。
(2)、ウイットにとんだ句ですね。(1)より突拍子のないだけに、想像の句だと分かります。そんなイナゴを見た、という面白さがある句です。

秋たけて花一匁鳥遊ぶ  れい(70才以上)
 そのように見えました。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 鳥の遊ぶ様子を「花一匁」と見られたのでしょうか。そうでしたら、「鳥遊ぶ花一匁秋たける」の方が句意に迷いがでません。もちろん、投句のままでも、秋の童話の世界を感じさせ良いのですが、「花一匁」で切れて読めてしまいます。つまり、、子どもたちが遊んでいることと取れるのです。それはそれで良い光景ですので、どちらかは好みによるでしょう。

コスモスやゆらゆら生きし吾もあり  雀子(60代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 コスモスに自分を投影させて、きれいにまとめられている句です。コスモスは、か弱いようで何か訴えるものがありそうな植物です。それと合っています。また、「秋桜」よりも「コスモス」の表記で成功でしょう。

行く秋や台場の落暉切々と  しんい(60代,女)
 いつもお世話様でございます。前回の「草堂やサフランの横向きに並べ」、咲いていたのを詠んだつもりでしたが、曖昧になって・・・。「草堂やサフランの一列に咲き」では報告でしょうか?
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「草堂やサフランの一列に咲き」が良いですが、サフランが主役ですから、「サフランや草堂沿いに(草堂の横)一列に」などが良いのではないでしょうか。句意が違って感じられましたら、お許し下さい。
 今回の句は、台場という土地柄にあっているように感じました。昨今は、おしゃれな場所でもあるようですが、歴史的には意味深い地ですから、「落暉」が活きているでしょう。「切々と」は「行く秋」がありますから、言いすぎてしまっているでしょう。句材、言葉の巧みさのある句です。

(1)理髪して秋の深まる盆の窪  藤太郎(50代,男)
(2)鉄塔の後姿や秋の暮
(3)秋晴れや電流迅き送電線

 いつも励ましていただいています。俳句診断、毎日のことで大変かと存じますが、また、よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそ、励ましのお言葉うれしく、残りの任期に弾みがつきます。
(2)が良いです。「鉄塔の後姿」という句材が優れています。それを、「秋の暮」と取り合わせたことも良いです。後姿というものは、寂しいものですが、鉄塔という無機質なものを持ってこられたことで、必要以上に感傷的にならず、文明の現代を象徴します。そして、そこにも、何百年前と同じように、秋の暮がやってくる、そんな風に広がりをもって読めるのです。
(3)、(2)と少し似た感じを受けますが、こちらは爽快な雰囲気ですね。
(1)、「秋の深まる盆の窪」が秀逸です。ただ、「理髪して」が説明、理由になっている点が惜しく感じます。

(1)叉今年思い出咲きぬ曼珠沙華  豊純(70才以上)
(2)赤い羽根着け新総理晴れやかに
(3)赤い羽根付けし総理や一年生
(4)老いのたびイヤリングさし若返る
(5)海渡る風の音にも秋の声
(6)さつま芋ふかしてみるや秋深し

 朝倉先生毎回丁寧なるご指導有難う御座います。また六句送らせていただきます。 宜しく。それに叉三句なおしまでご診断下さい。
(7)「秋の海波先白く墓参り」→「秋の熱海夜景まぶしや引き込まる」、「海青く 波先白く墓参り」
(8)「運動会テルテル坊主雨にぬれ」→「運動会テルテル坊主に願いかけ」
 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「叉」と「思い出咲きぬ」が良いです。
 総理の句は、(3)が良いでしょう。少々シニカルな意味もありそうで、読者は楽し いです。
(4)、とても若々しい年配の素敵なご夫人を想像します。「イヤリンググさし」よ りも「イヤリング買い」が、積極的な行動で、より若々しくなると思うのですが。
(5)、どの風にも、どの音にも、すべてが秋なのだ、という心境を感じます。
(6)、「ふかしてみるや」の言い回しが面白いですね。ただ、「さつま芋」も秋の 季語ですし、秋に似合いすぎている点は賛否あるでしょう。
(7)、「秋の」の句、上五の字余りが気になります。
(7)、「海青く〜」の句、良いでしょう。青と白の対比が良いです。
(8)、「願いかけ」が報告になっていて残念です。


2006年10月22日

便箋に秋を重ねて山遠き  藤節(50代,女)
 ありがとうございます。私の中で秋の夜のイメージを描いておりましたのでうれしいです。ぴったりです。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそでございます。
 「秋を重ねて」が秀逸です。「山遠き」も、机上から世界を十二分に広げられ、句に深みと広がりを持たせています。何でもない日常の行為と景色、しかしながら、表現ひとつで豊かな世界へ飛翔させています。大成功です。

(1)秋の空火の見櫓も高くなり  春雪(70才以上,男)
 朝倉先生 こんばんは 春雪です。
 【作句意図】京都の路地裏を散策していました。各家庭の軒先に色々な花を咲かせて通る人を楽しませてくれています。
(2)軒々に秋花咲かす京町家
 【作句意図】先日山辺の道を散策しました。とある部落で青空を背景に火の見櫓がくっきりと立っていました。なんだか背伸びした様に見えました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こんばんは、春雪さま。
 二句拝見、どちらも秋の気分が伝わってきます。
(1)、火の見櫓を句材に持ってこられたことが成功しています。秋の空が、一層高く感じられます。季語をより季語らしく、より季感を表現した句でしょう。
(2)、少々、平凡さがありますが、「京町家」と、秋の花の素朴さに助けられています。

返信の来ぬ便り書く夜長かな  いろは(60代,男)
 朝倉先生に、救われております。どうか、お付き合いください。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 いえこちらこそ、多くのことを学ばせてもらっています。
 「夜長」と「便り」が付きすぎてしまったのではないでしょうか。季語は「夜長」ではなく、返信の来ない手紙を書く気持ちを表現できる季語だと、とても良いと思います。その気持ちが、「しかたない」なのか「それでも満足」なのか「悲しい」のか、それが伝わると読者の共感も得るでしょう。

(1)法要の燭吹き消して萩の風  彩貴(40代,女)
(2)法要の墓前のうなじ秋日濃し
 隣家のおじいさんの一周忌に参列しました。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)、「墓前のうなじ」を、よくある表現と思いましたが、「秋日濃し」に助けられているでしょう。「の」の連続が少し気になりますから、その辺りを推敲されると良いでしょう。
(1)、「吹き消して萩の風」が良いでしょう。ふと気づく、秋の風を表現されたのだと思いました。法要の静かさや、しっとりとした雰囲気が伝わるでしょう。

瓢箪の重なり合ひし丸さかな  涼(70才以上,男)
 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 重なり合うのは、丸いからのでしょうか。少し、疑問でした。情景は、生っている状態を想像しますが、「丸さ」との関係が分かりにくく感じました。

朝露や八十路の坂の険しくて  加護坊(70才以上,男)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 八十路の坂が険しいとは、何だか厳しい話ですね。朝露という美しく清らかなものに救われてはいますが。「険しくて」を何か他の言葉にされて、ぼかした表現の方が、読者も救われるように思えます。

桃を置く異質でもしも給料日  裸時(30代,男)
 絵画の抽象画のようなものと言われました。内面を表現したいなと思っております。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 給料日と桃の取り合わせが面白いですね。桃はいろんな意味を含む果物ですし、その様も艶があります。それと、とても現実的な給料日。しかしながら、現代は、給料がなければ桃を置くこともできない、そんな風に少しシニカルに読みました。

(1)庭の隅秋明菊は灯を献ず  穂波(30代,女)
(2)夜の庭露は黙って星になる
 いつも温かいご指導ありがとうございます。朝顔と子どもの句へのコメントを頂く前に、団栗の句を送りましたので、子どもの句をまた投句するかたちになってしまいました。おっしゃるとおり、子どもを題材にした句は、気持ちが強すぎて17音に収め切れません。朝顔の句と団栗の句は、無理をしてこの秋に作らないで、もう少し時間をかけて考えたいと思います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 私も、なんといいますか、今読み直すと恥ずかしいくらいの、子供や出産の句を出していました。ホント、大笑いものなのですが。しかしながら、今、それを推敲することができます。当時の正直な気持ち、感覚を、今、新たに句にすることが可能です。よく、年長の方から、「今の句を作っとくといいわよ」と言われたおかげです。赤面の俳句の数々ですが、作っておいて良かったと実感しています。
(1)、「灯を献ず」の表現が優れています。秋明菊ならではの発想でもあります。一言申せば、「庭の隅」に推敲の余地がありそうです。
(2)、「露は黙って星になる」、秀逸です。特に「黙って」という擬人化と、「なる」の断定が効いています。「夜の庭」もさっぱりとした情景描写で良いでしょう。お見事です。
 *団栗、子供は大好きですよね。子供が好きなことで、大人も好きになるきっかけがうれしいですね。


2006年10月21日

秋団扇逆転ねらい煽ぎけり  春雪(70才以上,男)
 朝倉先生 こんばんは。
 【作句意図】今日は先輩と囲碁を楽しみました。形勢が悪くなり焦燥感で扇子を使いました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こんばんは。私ごとですが、叔父が囲碁好きなので、いつか教えてもらいたいと思っているのです。
 句意から、囲碁か将棋の場面であることはすぐに分かります。「秋」の団扇にしたことが、戦局を面白くしています。また、「煽ぎけり」は「団扇」で想像できますから、下五の五音がもったいないです。勢いのある言葉などにしますと、より面白い場面になるかもしれません。

(1)南無大師この大池に小鳥来る  豊田ささお(70才以上,男)
 今日は空海の満濃池にこだわって3句試みました。
(2)たゆたゆと秋を抱けり大師池
 「・・・抱くや・・」も考えましたが・・。
(3)大志もて木の実は落ちぬ大師池
 語呂合わせに堕す感もあります。
(4)ガマ綿の旅立ち無数休耕田
 十六夜と、吾亦紅の句への懇切なご指摘身に沁みました。もう一度考えて見ます。今回はいかがでしょう?
ドクター朝倉の診断と処方箋
 コメントありがとう存じます。とても励みになります。
 また、 私ごとですが、讃岐の中部(中讃といいます)は、とても縁のある地なのです。今回の三句は、どうしても感情移入してしまっている気が致します。失礼な処方となりましたら、お許しください。
(1)、大師と小鳥の取り合わせが良いです。小さきものへの慈愛を感じました。
(2)、「抱けり」と言い切った表現の方が、引き締まっていて大師池と似合う気が致します。「たゆたゆと」の擬態語も、たっぷりとした感じを与えます。
(3)、語呂合わせの無理さは感じません。「木の実は落ちぬ」の理屈付けに賛否がありそうです。しかしながら、弘法大師の「大志」を思わせる句で良いでしょう。
(4)、ガマの穂綿が、とても魅力的に描かれています。「旅立ち無数」と「休耕田」が、その様子をよく出しています。

朝寒やフランス窓を開け放ち  涼(70才以上,男)
 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 とても素敵な、まるで映画のような場面です。しかしながら、それが逆にできすぎた光景になっていると感じるのです。「朝寒」も、大きく窓を開けられる「フランス窓」にとても合っているのですが、やはり、決まりすぎている感をぬぐえませんでした。

(1)未来図をひそかに描く野分晴れ  れい(70才以上,女)
(2)暮れてなお雨やむを待つ稲の秋
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「未来図」と「野分晴れ」が抜群の取り合わせです。また、「ひそかに」というスパイスになる言葉もとても効果的です。秀句です。
(2)、情景から深い心情を感じました。実りの秋、雨の暮れ、何を思って待っているのでしょう。空も外も暗いはずですが、「稲の秋」に助けられて、重い雰囲気は不思議にありません。表現によって情景も句意も深くなった句です。

(1)山粧ふ汀の褄を返しゐて  文の子(60代,男)
 「山粧ふ褄に青き葉残しゐて」を推敲しました。
(2)台風へコックピットのビニル傘
(3)運動会雲の奥にも空見ゆる

 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「汀の褄」がとても良いです。下五は「残しゐて」の方が伝わりやすそうです。色づいた山が、より魅力的になりました。
(2)、なぜ、ビニル傘があるのでしょうか。台風の地へ向うからでしょうか。ヘリコプターかセスナなのでしょうか。句意を上手に読み取れませんでした。
(3)、「雲の奥にも空見ゆる」とは、雲間に見える青空とは、また違うのでしょうか。「奥にも」に迷いました。

(1)越えてきた坂道いくつ曼珠沙華  三郎(60代,男)
(2)秋晴れに一直線ひく飛行雲
(3)みちのくの山は色変え誘う秋

 よろしくおねがいします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「超えてきた坂道」は、人生を表現していると取りました。幾つと数えながら、曼珠沙華の花を見る、その心境を思い描くことができました。まだ若い読者であっても、「曼珠沙華」という花の持つ雰囲気で、いろいろと想像できると思うのです。幅広い読者を得ると感じました。
(2)、とても気持ちの良い情景ですが、少々平凡で、表現もそれを助けられなかったようです。
(3)、「みちのくや」ではいかがでしょうか。句意も表現も良いです。秋の素敵な雰囲気を全面に出し、読者を誘う一句です。

(1)三日月を砥石にドラキュラ牙を研ぎ  北野元玄(60代,男)
(2)天の川切符を持ったか一人ずつ
(3)秋空にジェット機肉の割引日

 「本性は暴かれていた路地みかん」のご診断有り難うございました。この句は実は苦労しました。あとで、青みかんなる語句を思い出しましたが、こっちの方が数段良かったなと思っていました。「俺リンゴ切られてやろうすっぱりと」はほかの果物でも良いようなものの、切るときに感じるリンゴの抵抗感や緊張感からリンゴでなきゃと感じていますがいかがでしょうか。「月を背にドラキュラ遂に力失せ」を(1) のように推敲してみました。(2)(3)合わせて、ご批判をお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、発想がとても良いですね。月とドラキュラの光景を楽しく読める句です。
(2)、こちらは、想像力とともに表現もとても優れています。大胆な句意ですが、分かりやすい表現になっていて、その点も良いです。どの読者もワクワクする句です。問いかけに自分も参加している気持ちになるからです。
(3)、取り合わせの妙です。とても愉快に、そして日常を上手に表現していて良いです。秋空のジェット機でとても爽快な気分、そんな気分に肉の割引日であったという現実。おかしいけれども、そこに人々の生活があり、成功している句です。
 *今回の三句は、どれも句意が読者にしっかりと伝わっています。とても大切な点です。

(1)赤城より風響きけり稲穂波  小口 泰與(60代,男)
(2)白樺に靄の奏でし蔦紅葉
(3)末枯れや歩みもならず老いし犬
(4)カーテンの風と遊ぶや秋桜
(5)曇天に華やかなりし黄菊かな

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「風が響いて稲穂波」、という表現が独創的で評価できます。赤城に住んでいるような気にさせる力があるでしょう。
(2)、白樺、靄、蔦紅葉、と少し句材が多いようです。
(3)、寂しい句ですが、不思議と悲しさがあまり感じませんでした。それは、枯れることは次の春を連想させ、老いた犬もまた、可愛がられてきたことが伺えるからでしょう。
(4)、花瓶の秋桜でしょうか。倒れないかと心配ではありますが、発想が良く、整った句です。
(5)、表現が良いです。「曇天」と「黄菊」のコントラストがとても効いています。「華やかなりし」が安易でしょうか。


2006年10月20日

(1)すくったの楽譜の中から秋の風  すみお(10代,男)
(2)入学試験ペンだこにおもい馳せ
 いつも楽しく読ませて頂いています。少し勇気を出して初めて投稿させていただきました。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 勇気を持っての投句、とてもうれしく思います。どうぞ、楽しく気楽に始めて下さい。
(1)、「楽譜の中から秋の風」、とても良い感性です。また、「すくったの」ですが、例えば「奏で出す」などが考えられます。しかしながら、「すくったの」という独特の表現にも魅力を感じますので、自身が納得のいく言葉でしたら、あとは読者の評価に任せましょう。
(2)、「ペンだこにおもい馳せ」が、良いです。着眼が優れています。こちらは、語順をかえて口調をよくしてみましょう。「ペンだこにおもいを馳せて入学試験」ではいかがでしょうか。

メールでは 送れぬ香り 金木犀  今田 誠之(70才以上,男)
 北海道に娘が住んでおります 季節は相当違い金木犀は咲くのでしょうか 我が家の庭の懐かしい金木犀の香りを届けてやりたいです。これでも俳句でしょうか よろしく御指導ください。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 充分に俳句です。メール先の誰に送りたいのか、想像が膨らみます。メールと香りの着眼点が新鮮です。また、「金木犀」は上五に持ってきて推敲することも可能でしょう。上五の方が、金木犀の香りも姿も印象強くなるでしょうから。

朝市の客よせ千本しめじかな  涼(70才以上,男)
 宜しくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「千本しめじ」が、とても良いです。秋の豊かさを感じ得るからです。「朝市」という句材は、少々平凡ではありますが、「千本しめじ」に助けられ、秋の朝市の賑々しさが伝わってきます。

落日の影絵を醸す秋思かな  しんい(60代,女)
 お願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「醸す」に迷いました。「醸し」ですと、「秋思」の前で切れ、「秋思」を離して読むことができ、迷いません。「落日の影絵」という句材は、「秋思」を上手に詠むことができると思います。

(1)鮭小屋の歴史を語るアイヌびと  春雪(70才以上,男)
 朝倉先生 こんばんは。
 【作句意図】北海道をドライブしたときの一コマです。
(2)鮭むすび123で解き放つ
 【作句意図】兼題「鮭」でした。コンビニで売ってる「鮭おにぎり」を上手に123の表示順で美味しく食べられました。(*^_^*)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こんばんは。北海道は本当に旅の醍醐味のあるところですね。私もいい思い出がたくさんあります。
(2)がとても面白く良いですね。ただ、「123」でだけでは、せっかくの面白さが伝わらないかもしれません。「解き放つ」という表現も大胆なので使いたいですから、「鮭むすび手順通りに解き放つ」と考えましたが、「123」が入れ込めず悩みました。
(1)、アイヌの地への挨拶句ですね。

まず妻の金木犀と言ひてより  遅足(60代,男)
 二人で歩いていると、まず妻が金木犀と言います。それから香りがして、金木犀が目に入ります。そのままなんです。これ俳句といえるのでしょうか?
ドクター朝倉の診断と処方箋
 とても情感があって良いと思います。もちろん、充分に俳句です。夫婦のおノロケでもなく、自慢でもなく、さりげなく表現されている行為が美しいですし、金木犀とも合っているでしょう。「言ひてより」の「より」が、ご夫婦の続きを想像させ、句に広がりを持たせています。

万感を 朱色に籠めた からすうり  浅葉洋(70才以上,男)
 何時もながら適切なご高評ありがとう御座います。秋も深まった道端で、枯れた葉と茎の中に、朱に染まった烏瓜を見つけ、思わず詠んだ句です。ご高評を宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 着眼がとても良い句です。「万感」に評価の差はあるかもしれまんが、「からすうり」の形態には合っていると思います。秋の愁思なども感じる句でしょう。


2006年10月19日

(1)あおぞらに溶け入りしアオイトトンボ  豊田ささお(70才以上,男)
 消化不良ですが、・・固有名詞の場合字余りはいいのでしょうか?「溶け入りしまま・・」といいたいのですが・・
(2)朝寒や耳をくすぐる猫の声
 しばらく朝寒にこだわってみましたが、どうにも平凡を抜けられません。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、字余りは、やはり極力ないほうが良いでしょうが、表現上の効果や、どうしても収まらない理由がある場合は良いと考えています。投句の「アオイトトンボ」は七音ですの、中七に持ってくることが可能です。「あおぞらにアオイトトンボ溶けてゆく」ではいかがでしょうか。
(2)、「耳をくすぐる」が興味を引きます。それに、確かにそんな猫の声がありますし。表現も着眼も良く、平凡でない朝寒の光景が印象的です。

(1)大菊の日暮れても黄失はず  小口 泰與(60代,男)
(2)さやけしや出湯に毀つ我が髪膚
(3)雨の月箸と杯との響きかな
(4)新蕎麦や信濃に抜ける峠道
(5)金木犀入相の風吹きにけり
(6)松風やひとつひとつの柿の色
(7)鳥兜けふの赤城は紫紺かな
(8)曙の金木犀の奏でをり

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)が良いです。菊、特に観賞用の菊を詠んだ句はわりとありますが、「黄失はず」にオリジナリテイがあります。
(6)にも惹かれました。鈴生りに生ることの多い柿、どれも同じに見てしまいがちですが、改めていわれると、確かに一個づつ違うものですね。松風の「松」が「柿」との兼ね合いで気になりましたが、松風の吹く土地と解釈し、許容されると判断しました。
(4)、情景は良いですが、表現が平凡になっているでしょう。
(5)、「入相の風」を興味深く思いました。
(8)、「曙や」で、情緒ある句になるのではないでしょうか。

古時計の長針はずれちちろ鳴く  涼(70才以上,男)
 宜しくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 長針がはずれたことと、「ちちろ鳴く」の季語は新鮮な取り合わせですし、印象的で良いです。ただ、「古時計」と「はずれ」が付き過ぎているように思えます。

露草のブーケを胸に嫁ぎゆく  藤節(50代,女)
 よろしくお願いします。さっき送信間違いしました。すみません。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「○○○して嫁ぎゆく」という句は、月並みに落ちやすいのですが、投句は、「露草」が平凡なイメージを消しています。露草の葉と花の色。細いようでしっかりとした草。これらを思い、少しりりしい花嫁を想像しました。フレッシュな気分にもなる句です。

(1)向かい風何のこれしき赤とんぼ  穂波(30代,女)
(2)神の旅ニッポン晴れが置きみやげ
 毎回丁寧なご指導ありがとうございます。(2)「日本晴れ」で「にっぽんばれ」と読んでいただけるなら、自分としては漢字表記のほうが自然に思えます。「木犀の風たずさえて友来たる」さりげなさが出るとのお言葉を受け、下五を「見舞客」から変えました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「あかとんぼ」に自分を投影させていると取りました。情景が目に浮かびます。「何のこれしき」の表現が成功しています。
(2)、「ニッポン晴れ」の表記で良いと思います。カタカナも効果的ですし。神無月を上手に気持ちよく詠んだ句でしょう。
 *「 木犀の風たずさえて友来たる」、良いです。友の想像がいろいろ浮かび、楽しく読める句になっています。

秋の夜にひとりモデルハウス前  fuji(10代,男)
 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 季語と合った句意で良いです。上五は「秋の夜(よる)」がすっきりするでしょう。字足らずが気になりますので、「秋の夜モデルハウスに僕ひとり」と考えましたがいかかでしょうか。確かに「モデルハウス前」のほうが、立ち尽くす感じはよくでているでしょう。迷うところです。

(1)雄島より波の音して月昇る  学(50代,男)
(2)奥能登に咲きてさびしき波の花
(3)みどり児の手に手に渡す島しぐれ
(4)旅立や月を仰ぎて樅一樹
(5)虫見つむ我且つ月や虫見つむ
(6)けふもまた門閉めてをり花石榴

 ご教示を。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(6)がとても良いです。門を固く閉ざしている雰囲気を、花石榴が上手に盛り上げています。秋の実石榴ではなく、夏の花石榴という点も効果があります。明るい風景と閉ざされた門の対比がなんとも魅力的なのです。
(2)、「咲きてさびしき波の花」が印象的です。
(3)、「みどり児の手」と「島しぐれ」の取り合わせに興味を持ちました。
(5)、「虫を見つめる我」と「月」の取り合わせがとても良いです。残念なのは、句意が一読では伝わりにくいように感じることです。読めば読むほど深まる句は良いのですが、熟読しないとつかめない、という句はあまり評価できないと思うのです。生意気なことを申しましたが、やはり俳句は伝わってこそ、と考えています。


2006年10月18日

ざくろうの 紅色映えて 秋の空  今田 誠之(70才以上,男)
 友達の俳句に感心してばかりでした。今回 自分で作ってみました。初めてです。よろしく御指導ください。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそ、よろしくお願い致します。初めての投句、うれしく思います。ざくろの色に注目したことと、「映えて秋の空」という表現が良いです。一方で、ざくろと秋の空で季重なりなのです。季重なりが全ていけないわけではありませんが、今回は直せそうです。秋を取り、「空」だけで充分に表現可能でしょう。

月光に照らされてより無口かな  涼(70才以上,男)
 いつも適切なご批評を頂き有難うございます。宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそでございます。そう思って下さること、もったいないくらいです。月夜にある独特の雰囲気が十二分に出ているでしょう。月に煌々と照らされると何だかやましいような、また気味の悪いような気持ちにもなります。そのあたりの、微妙さが出ていると感じました。

(1)山国の小春や猫はごろっとし  文の子(60代,男)
(2)美女の頭に合はせし教師長き夜
 友人の依頼で一晩大学院で講義をしました。学生により理解の度合いが違うので、止むを得なかったのですが、優秀な学生は多分こう見ていただろうという句です。
(3)対をなす園児と白髪運動会
 10/10のご診断有難うございました。「山国の小春や猫のくつろげる」を、「『くつろげる』を、猫の具体的な動作にすると、よりくつろいだ気分が出るでしょう。」と教えて頂き大変勉強になりました。掲句宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「ごろっとし」、とても良いです。擬態語を使われたことが大成功です。猫も自分もくつろぎ、読者までもくつろぐ一句です。
(2)、おしいです。投句の「美女の頭に」では、背の高さなどに受け取られがちです。夜の講義というものが、とても良い句材だと思うのです。そちらをクローズアップされても、秀句の可能性があるのではないでしょうか。
(3)、ちょっと分かりすぎて狙いも見えそうな気が致します。句材が面白いと思いますので、大胆な表現をされてみると、成功するきっかけになりそうです。

(1)秋高し水尾引き交わす遊覧船  しんい(60代,女)
(2)立待や台場の夜景煌々と
 よろしくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「秋高し」と「遊覧船」が付きすぎたように感じました。
(2)、「台場」という土地が効果的です。月を詠むことにも程よく合っています。「立待」という表現も良いのですが、「煌々と」はあからさまな感じがしますので、推敲の余地があるでしょう。

(1)秋うらら野良猫ニャーとご挨拶  栗太郎(60代,男)
(2)帰り花ぽつりと枝に点りけり
(3)運動会ビリの子供に大声援

 いつも温かいお言葉を頂き、うれしく思っております。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、「ご挨拶」が良いですね。この一言で句が楽しく愉快なものとなりました。なんでもない秋の光景を、特別なものとすることに成功しています。「挨拶す」では、まったくこの良さは出ません。「ご挨拶」がなんとも愛嬌を呼ぶのですから。
(2)、「ぽつりと」「点り」が、帰り花を表現しきっています。優れた表現力、そして感覚の鋭さを感じます。
(3)、微笑ましい、運動会の挨拶句になりそうです。

(1)シニックな気分の日にはイナゴ食う  北野元玄(60代,男)
(2)射手座から元素片手に婿が来る
 九月萩のご講評有り難うございました。九月と萩は季重ねですが、どうしても重ねて使いたい心境でした。今回は射手座です。十二月生れの星座です。星座名は季語として認められていませんが、そろそろ認めましょうと提案したいところです。ドラキュラの句はいろいろと推敲を試みています。三日月にドラキュラ牙を研ぎにだし蒼い月狼男座禅組む などなど。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、シニックな気分とイナゴが、何とも愉快で楽しいです。「日には」との限定も面白いです。シニックは「シニカル」の方が、私は馴染みがあるのですが、世代差であるかもしれませんね。
(2)、「元素片手に」が迷います。いろいろ想像はできるのですが、どれも決定打に欠けるのです。句材も表現も魅力的ですので、是非、読者に伝わりやすい句でお目にかかりたいです。
 *オリオン座や、冬北斗、春北斗などは季語としてありますが、あとは、あまり見ません。天の川が秋の季語であるくらいでしょうか。日本人にとって馴染みがある星座ゆえでしょう。射手座は、十二月生まれの星座ですが、よく見える時期は10月前後だそうで、そういうズレも関係しているのかもしれません。

竹取の姫も乗せてか神輿渡御  藤節(50代,女)
 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 実景でしょうか。かぐや姫を「竹取の姫」と表現されたことが良いでしょう。「乗せてか」ですから、想像した姫とも考えました。お祭りに幻想的な雰囲気や古色が出ています。

止まってる抽象吸い込む銀杏が  裸時(30代,男)
「抽象が銀杏の絵も止まります」を推敲してみました。575にすると推敲で景色が変わってみることも。それが楽しいです。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 情景が見えてきました。「止まっている抽象を銀杏が吸い込む」と取りました。銀杏の表現が個性的です。特徴ある植物の銀杏に合っていて良いと感じました。秋の雰囲気にも合っている句でしょう。


2006年10月17日

草虱奈良から京へついてくる  春雪(70才以上,男)
 朝倉先生 こんばんは 昨晩は年齢を入れる前に送信されました。失礼しました。
 【作句意図】今日は天理から奈良までの山辺の道を23キロ歩きました。自宅に帰ったら草虱がズボンについていました。(笑)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 つい先日、義母も山辺の道を歩きました。とても良い田舎が残っていて感激していました。
 投句、良いです。奈良という地から、京という都へ、がとても良いです。草虱ならではの句を上手に表現されています。

朝寒や水際の樹影揺れ止みぬ  豊田(70才以上,男)
 朝寒の句下五を直してみましたが、いかがでしょう?
ドクター朝倉の診断と処方箋
 良いでしょう。「揺れ止みぬ」が情景をぴたりと決めています。樹影の良さがよく伝わってきました。朝寒だけに、「揺れ止みぬ」がとても合っています。

(1)関節のやはらかくなり水の澄む  まりあ(40代,女)
(2)終演の楽器庫を閉ず夜半の秋
(3)秋風を裂くやふに布裂ひてをり

 アドバイス・添削ありがとうございました。自分の俳句のリズム感に疑問を持っているときでしたので、直していただくとスッと入ると思いました。3句よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 コメントありがとうごさいます。このように言っていただけるなんてDR.冥利に尽きます。
(1)、(3)、とても良いです。
(1)、関節が柔らかくなることと、「水澄む」の取り合わせが、絶妙です。「やはらかく」の平かな表記も活きています。涼しくなると、関節が痛むことも多いのですが、そうではない句意に新鮮さを感じます。
(3)、こちらも、「秋風」というよりは、「木枯らし」「寒風」のイメージなのですが、その取り合わせが上手に句として活きていると感じます。秋風の吹く、これから寒くなっていく今、布をためらいなく裂く、その人物の心境はどうなのでしょう。何か、心にありそうです。秋風を持ってこられたことによる、微妙さが効果を生んでいます。
(2)、「終演の楽器庫」の「の」が気になりました。楽器庫に「終演の」は、不正確に感じました。あとの表現はとても良いです。細かいことのようですが、表現の正確さも、句を伝える大切な要素と考えています。

(1)追われてすぐ一団となる稲すずめ  悠(70才以上,女)
(2)軽トラの荷台で商う秋刀魚かな
(3)灯を消せば膝にのり来る秋の月

 とても綺麗な十六夜の月でした。何時もありがとうございます。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)も(2)も良いです。そして、(3)が一等良いです。
(1)、稲すずめのいる情景を気持ちよく感じます。稲すずめの楽しくかわいらしい姿も印象的です。
(2)、「軽トラの荷台で商う」、とても良い表現です。「秋刀魚」のほかにも、京野菜や丹波の黒豆などでも可能かなとも思いますが、「秋刀魚」で充分成功しています。
(3)、表現も情景も、そして作者の発見も、すべて素晴らしいです。特に「のり来る」が表現の妙と感じます。

降る雨や伊勢には伊勢の彼岸花  玉白石(50代,男)
 久しぶりに投句します。出張で伊勢に行ってきました。その時の句です。よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 おひさしぶりでございます。
 投句、良いと思います。一言申しますと、「○○には○○の〜」という表現は、時に見かけます。しかしながら、上五の「降る雨や」がそれを助けています。伊勢という地にも似合いますし、彼岸花との情景も情感が豊かです。「や」切れも、あとに続く表現を活かしています。素晴らしい情景と表現力です。

胸痛み 少し涙の 寒露かな  菊美(60代,女)
 添削有難う御座いましたm(__)m 犬の子供の虐待、一緒にはいけませんが、トラの夢もたたれ?なんか悲しい夜でした。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「胸痛み」、「涙」、「寒露」、この三つがすべて似ているのですね。もちろん、似た言葉の列挙で楽しい句もできたりしますが、今回はどうでしょうか。少し、冗長した表現のようです。私は、「寒露」と「少しの涙」がよく似合っていて美しい情景が感じられます。涙が出るといことは、心が悲しいということ、つまり胸が痛むことは伝わっているでしょう。是非、ご再考下さいませ。

(1)竜胆や嶺を結びし雲の帯  小口 泰與(60代,男)
(2)チェンバロの音色響きし秋薔薇
(3)ほろほろと香り零せし金木犀
(4)鮎落ちて出湯の街の灯も褪せし
(5)散歩道暁月を道連れに
(6)靄の中時々浮ぶ野菊かな
(7)光りをる羽音確かや稲雀
(8)己が影吹かれて伸びし稲田かな
(9)秋薔薇の散るをうながす風吹けり

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 今回は、動詞の選び方に惹かれました。特に(3)と(9)です。(1)の「結びし」もそうです。
(3)、「香り零せし」です。金木犀の香り方は、まさにそのような、ほろほろと零すようなのです。その感覚、感性に感激しました。
(9)、「散るをうながす」です。確かに、薔薇という花の多くは、萎れていても花弁が多く残っているようです。そんな薔薇の様子、また、秋という季節も、「散るをうながす」という行為と「風吹けり」という状況に良く合っています。

(1)漣の光の中の落葉かな  学(50代,男)
(2)空蝉の緑の光見つけたり
(3)露の玉はじめて声をあげにけり
(4)赤い羽根胸に議員の無策かな
(5)足に来て背に木枯らしの来たりけり

 ご教示を。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、とても良い落ち葉の句ですね。漣の光とのコントラスも素晴らしいく、落葉の行方に未来を感じます。地に落ち次世代への肥料になるというような。落葉を輝かしく思える句です。
(2)、空蝉の殻にある独特の色合いのことでしょうか。情景はとても良いと思いますが、読みの迷いが出ることが残念です。いっそ「空蝉や」として、緑の光を抽象化する方法もあると思いますが、読者に読みを託してしまう点を、作者がどう思われるか、という問題があります。
(3)、初めて声を上げたものが何なのだろう、と想像が膨らむ句です。露の玉の瑞々しく、新鮮なイメージから、赤ん坊などを思いました。
(4)、良い出来栄えの川柳のように感じました。
(5)、自分自身への憐憫の情でしょうか。良いのですが、少しでも明るさや救いがある方が読者が気持ちよく読め、そこに俳句の力があるとも思えます。


2006年10月16日

(1)もみじ手に大き鉈振る山の子よ  豊田ささお(70才以上,男)
 紅葉と紅葉のような手を引っ掛けましたが、・・無理がありそうですか?(句と関係ないですがエンターを押すとすぐ送信になるので弱っています)。
(2)この上に何を望むやムカゴ汁
 ムカゴ飯は、よく食べますが今日は山でムカゴ汁でした。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)、そうでうすね、「もみじ手」は季語として取るこは難しいでしょう。それと、「もみじ手」という言葉の意味は取れますが、その言葉は辞書にはないようです。(*文楽の女人形の手を指す言葉としてはあります。)それに、「もみじ(を)手に」とも読めてしまう危険があります。情景は素朴な秋の様子がよく出ていますから、是非ご再考なさって下さいませ。「もみじの手」ですと誤解はないでしょう。
(2)、むかご汁は、トロロ状にしたものでしょうか。おつゆの具にもできるようですから、どちらかな、と思いました。ムカゴ汁礼賛の一句ですね。

赤とんぼつがいのままに飛び去りぬ  青戸の入り江(70才以上,男)
 朝倉先生 こんばんは。
【作句意図】今日はゴルフに行って来ました。不出来なスコアに関係なくグリーンの上を赤とんぼが群舞していました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こんばんは。せっかくのゴルフ、その気持ちも句に致しましょう。それによって、赤蜻蛉の世界も広がるでしょう。例えば、「ゴルフ散々群舞する赤蜻蛉」、破調ですが十七音にはできました。是非、青戸の入り江さまのゴルフと赤蜻蛉の句を。

(1)さびしさは空の暗さや萩の花  仁
(2)秋風やとうさん指とぼくの指
(3)巫女の子のメールを待ちし夜長かな
(4)日当たるは嫁に食はすな秋の茄子
(5)10月は人間らしく星座見る

 先日は、的確な診断ありがとうございました。今回もよろしくご指導の程お願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 いえいえ恐縮でございます。今回は、(2)、(5)に惹かれました。
(2)、「とうさん指」、「ぼくの指」ですから、親指と兄さん指、もしくは赤ちゃん指を考えました。少し無理があるかな、とも思いながら、「とうさんの指」とは読めないと判断しましたので。自身の指を見ながらの秋風、という情景に情緒を感じます。
(5)、「人間らしく」に賛否はあるでしょうが、いわゆる「人らしく、人間っぽく」という解釈が妥当でしょう。10月は空気も澄んでいて、夕暮れも早くなり、夜の暗さも濃くなっているような月です。夜空をゆったりとした気分で眺める季節ともいえるでしょう。なお、10月の表記は「十月」をお薦めいたします。
(1)、「空の暗さ」が言い過ぎてしまってはないでしょうか。
(3)、「巫女の子からのメール」でしょうか、「巫女の子が待っているメール」でしょうか。情景としては、後者が好みではありますが、句意をはっきりさせた句を拝見したい気持ちです。
(4)、「日当たる」の解釈に迷いました。

秋の田の真中の鉄路電車来る  加護坊(70才以上,男)
 添削句を是非お願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「の」の連続ですが、いかがでしょうか。句の中で効果を出していれば、使う理由、価値があります。私としましては、上五か中七で「切れ」を作り、句にリズム、アクセントを付けると良いと思います。そうしますと、情景にある情緒がよく伝わるでしょう。例えばですが、「鉄路あり稲田の真ん中電車来る」などが考えられますが、これらは朝倉風になっているかもしれませんので、ご再考下さると幸いです。

(1)飯だけでいいから付き合え蟋蟀  北野元玄(60代,男)
(2)名月とは命を懸けたお世辞です
 自堕落な秋風、少し手応えのある表現ではないかと自負していましたが、評価していただき嬉しく思いました。ありがとうございました。一昨夜の中秋の名月、昨夜の十六夜の月、当地ではまことにすばらしいものがありました。(2)は精一杯のお世辞とするつもりでしたが、テレビで伸介さんが命がけのお世辞と言って笑いを取っていましたので、即、パクリました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)が良いです。お一人の食事、生活を想像しますが、そこに深刻な気配はありません。蟋蟀を誘う心の余裕を感じるからです。「飯だけでいいから付き合え」という表現も、大胆さが成功しています。
(2)、「名月」そのものがお世辞なのか、「今日は名月だ」と言うことがお世辞なのか迷いました。状況をはっきりさせる方が、「命がけのお世辞」という表現も生きてくるでしょう。

柔らかき月天心へのぼりけり  涼(70才以上,男)
 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「柔らかき月」が良いです。優しい月、柔らかい月光、などは時に目にする表現ですが。「天心」という言葉も効いています。こんな月を見ている人などんな人なんだろう、その人の気持ちはどうなんだろう、とやさしい気分で想像が膨らみます。