俳句クリニック 2007年1月後半分(ドクター:小倉喜郎)

「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。

1月と2月の担当ドクターは小倉喜郎です。
<プロフィル>
 1965年1月15日生まれ。兵庫県中部在住。リンゴが嫌い。好きな果実は夕張メロン。気まぐれにケーキを焼いてみたら、陶芸(私の趣味)の作業とよく似ていて楽しかった。道具もよく似ている。1日で完成するのも気に入った。現在、陶芸とお菓子の融合を考えている。更に俳句との融合も・・・。

ドクター小倉の診断
2007年1月31日

山茶花や犬に踏まれし影法師  多弁(60代,男)
 「チューリップ理論」ありがとうございました。わかり易い解説です。実作に応用できるよう訓練します。ついつい「チューリップ関係理論」になってしまい、手垢のついた関係を書いてしまいます。
ドクター小倉の診断と処方箋
 影法師がとても雰囲気のある言葉なので、句全体に大きな影響を与えます。そうなると、季語が見えなくなってしまいます。踏まれたものを他のものにしてみましょう。

冬晴のサインコサイン振られ役  せいち(60代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 サインコサインと振られ役の関係がわかりませんが、なんとなく面白いですね。

早春や壜に銀色ギリシャ文字  山太郎(60代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 良い感じなのですが何か多すぎる。銀色、ギリシャ文字のどちらかを隠してみるのも良いかもしれません。或いは、〈早春の壜に銀色ギリシャ文字〉として、強い切れのある句から、やさしい句にするのも良いかもしれません。一文字でもずいぶん雰囲気が変わるのです。

終章に入りしを閉じて菜飯炊く  れい(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 俳句としてとても良い場面設定ですね。中7の「入りしを閉じて」の表現がぎこちないですね。動詞を2つ重ねたことがその原因ですね。ひとつの句の中ではちょっと忙しい。どちらかをカットしましょう。

(1)ばあちゃんは苔そぐ鎌で根雪かな  汽白(40代,男)
(2)ゴム長の穴や雪つめ元どおり
(3)雪の夜でしたおっぱいもすくわし
(4)青い芽のグラス・オニオン摘むぽきん

 いつも、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 言葉の偶然は時々思わぬ面白さを生むことがありますよね。それを作者の視点で必然にするのが俳句だと思うのですね。その作者の視点が感じられない。つまり私にはこれらの句は言葉の羅列にしか思えない。別の言い方をすれば読者が楽しむ前に作者が面白がってしまっているように思えてならないのです。

春隣何か忘れているような  北野元玄(60代,男)
 軟弱な1句です。類想感がとれません。
ドクター小倉の診断と処方箋
 その何かが少しは想像できるような句にしなければなりません。「春隣」という季語そのものが曖昧なので句がぼやけてしまいます。そういう意味ではやはり弱い句といわなければなりませんね。

雪だるま朝の空気を腹いっぱい  ささ奴(50代,女)
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 まず感じたのは、なぜ朝なのかということです。それはやはり雪だるまのせいでしょう。昨日つくった雪だるまがあるのはわかるのですが、朝の空気とあまりつながりませんでした。私の中では。

(1)水仙や自衛隊機が五分ごと  穂波
(2)葱畑自衛隊機が低空に
(3)オリオンの背骨に光辿りおり

 前回は具体的なご指摘をありがとうございました。(1)は「虎落笛自衛隊機が五分毎」を、(2)は「鎌鼬自衛隊機が低く飛ぶ」を、「季語を冬の花などに」というご指導を受け、上五を換えました。(3)は新しい句です。よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 自衛隊をどうしても俳句にしたいようですね。あらゆるものは俳句にできるはずなのですが、自衛隊はなかなか難しい。なぜなら自衛隊と聞いただけで人々はいろんなことを思い、またそれに対する意見も持っている。非常にインパクトがあるので、短い句の中では目立ちすぎますねえ。輸送機くらいにしてみましょう。
(3)背骨はどの辺りをいうのでしょう。ちょっと雰囲気に流されているようです。思い切って、自分の背骨と取り合わせてみましょう。

冬薔薇のっぺらぼうの白湯かな  きなこ(50代,男)
 毎晩自宅の風呂で、各地の温泉を楽しんでいます。よろしくご診断下さい。
ドクター小倉の診断と処方箋
 のっぺらぼう、がわからないですね。良いのか悪いのかすらわからない。入浴剤の湯がのっぺらぼうというならそれは当たり前。

早春の土手で拾いし子犬かな  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 玉白石さんなかなか好調ですね。このなんでもない句ですが好きです。今目の前にその小犬がいてそれを暖かく見ている作者、といった感じです。早春がよく効いています。

(1)初場所や河馬は仔馬に転がさる  えんや(70才以上,男)
(2)蜜柑剥く明日は爪を切らんバイ
(3)冬の虹おっかけ橋に来て消ゆる
(4)池涸て鯨飛ぶなり公園に
(5)初電話兄嫁笑ふホホホホと

 何時も有り難きご指導深謝いたします。何かインパクトのあるものをと考えております。初場所は季語ではないのでしょうか。宜しくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 インパクトも時には必要ですがそれよりも自分らしさが必要です。1句にもう少し執着し、集中しましょう。
(1)初場所は季語ですね。ただし、関取を河馬と仔馬に見立てたことになりますね。それでは平凡。
(2)蜜柑と爪を切るはあまり美しくないですね。

凍滝にたて一条の滲む青  桐子(60代,男)
 以前、袋田の滝(茨城県)が凍ったというニュースに、すぐ見に行きました。真っ白い氷の壁を想像していたのですが、ところどころ、うっすらと筋状に青くなっているのがとても印象的でした。
ドクター小倉の診断と処方箋
 その印象的な映像が読者には全く伝わっていないのです。作者は見て知っているのでこの句からその滝が甦るのですけれど・・・。例えば〈凍滝に青い光の届きけり〉として、滝の説明を避けましょう。

(1)鵯も笹子も鳴かぬ森に居り  豊田ささお(70才以上,男)
(2)飛行機の音遠去かり笹子鳴く
 昨日初句会でした。会友からはそこそこでしたが、主宰は、まったく相手にしてくれへん結果となりました。2番目の句は、「笹鳴きや爆音一つ空にあり」を直されたものです。「鳴く音に爆音、音を二つ取り上げるのはいけない」と言われました。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)笹子が鳴いても鳴かなくてもあまりかわらないのですね。つまり森に笹子がいる、と言うだけの句になっています。
(2)短い俳句で2種類の音はよくないですね。既に書いたのですが、せっかくの笹子の声は聞こえません。

藁ぶきの屋根のアンテナ日脚伸ぶ  加護坊(70才以上,男)
ドクター小倉の診断と処方箋
 藁ぶきという古風なものと、アンテナを取り合わせたのですが、意外にありそうですね。もう一歩踏み込まなければ独自性は出ないでしょう。或いは一歩退いてみるか。俳句は難しいですね。


2007年1月30日

ヘルペスや春風に乗りとんで行け  さくら(70才以上,女)
 いつもご指導有難う御座います。実感です。宜しくお願い致します。
ドクター小倉の診断と処方箋
 お気持ちはよくわかります。

(1)遠山の柿色に明け霜だたみ  小口泰與(60代,男)
(2)息白し初老の妻に借り多し
(3)高みより鴉大声ふところ手

 よろしくご指導願います。
ドクター小倉の診断と処方箋
 小口さんはいつも複数句送ってくださいますが、次は1句に絞ってみてください。たくさん作ることはいいことですがそうそういい句はできません。この句と思われる1句を送ってください。1句に集中です。

(1)春隣り卑弥呼はいずこにおわせしや  北野元玄(60代,男)
(2)立春の犬の首輪に見る五欲
 冬は想像力が働いて、結構好きに俳句ができましたが、いよいよ春ですね。春は作句にとってはかえってやりにくい季節のように思います。類想類句に陥りやすいのではないかと感じています。上二句はいかがでしょうか。
ドクター小倉の診断と処方箋
 俳句の特徴は短いことと、リズムですよね。それを生かすためにはあまり多くを語らないほうがよいとわたしは常々思っております。また一点に絞ること、それも具象表現によってその威力を発揮すると考えています。このような視点から俳句を読んでこのコーナーにコメントをしております。
(2)五欲があまりにも漠然としているのですね。立春の犬の首輪との取り合わせですが、私にとっては禅問答のように思えてしまいます。作者がある程度方向性をしめすことも大切です。もっとも私の句もよくそのように言われますが・・・。
(1)卑弥呼はいったいどこにいたのか?作者の中の卑弥呼の存在もはっきりとしない。そんな感覚を詠まれたのでしょうか。ただこの句も漠然としてつかみ所がない。私の好きな卑弥呼の句を紹介しておきましょう。〈天国と知らず卑弥呼と立泳ぎ  柿原金米〉「船団34号」

キャンバスの霊峰富士に初日さす  れい(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 お気持ちは大変よくわかるのですが、俳句としてはやや新鮮さに欠けますね。それがたとえキャンバスの上であっても。

(1)湯たんぽの袋オレンジひもは白  ポリ(50代,女)
(2)シンシハダギレシートの文字空っ風
 いつもていねいに教えていただきありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 こういう俳句の作り方は好きです。どうでもよいようなことと季語を組み合わせると思わぬ空間ができる。俳句の楽しさのひとつ。
(1)まじまじと湯たんぽを見ているだけの句。でもなんとなく寝る前の作者の様子が見えてきそう。
(2)レシートの項目は時々見ますが味気ないですね。ポケットから出てきたレシートを見たらダンナのために買った下着のレシート。愛情があるのかないのか。その答えが季語にありそうですね。面白い句です。

初天神京都検定受く人も  慈英(50代,男)
 ご指導宜しくお願い申上げます。
ドクター小倉の診断と処方箋
 検定が流行っていますね。初天神と京都はちょっと近すぎますね。句に広がりをもたせるためにも下5を工夫したいです。でもやはり近い。

(1)頭(ず)からまず歩む土鳩や雪浅間  鴻之助(50代,男)
(2)やわらかき少女のサッカー冬温し
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)頭から歩む鳥はよくあるパターンで平凡ですね。ただ浅間でかろうじて救われた感はあります。
(2)「やわらかき」「少女」「冬温し」とどれも同じ温度であるところが気になります。ただ別の言葉に換えるこの雰囲気がこわれそうでもありますね。このままで句会に出してみましょう。

(1)しぐるるや指にかすかな藍のしぼ  学(50代,男)
(2)寒夜明け地球平たくなりにけり
(3)中年や乗換駅の雪だるま
(4)みちのくや薪ストーブの純喫茶

 ご教示を。
ドクター小倉の診断と処方箋
(2)(3)はなかなか味わい深いですね。とくに(3)乗換駅の雪だるまとの取り合わせは唐突だと思ったのですが、何度か繰り返すと実は現実なのかなとも思ってきました。

庭に来て福良雀のドミソミド  藤野雅彦(70才以上,男)
 「毎日が日曜日」になり、この1月から俳句を始めんと、俳句教室に行くことにしました。
ドクター小倉の診断と処方箋
 ドミソドミが楽しい雰囲気を出していますね。これをスタートにして少し工夫をしましょう。例えば福良雀はふつう庭にいますから「庭に来て」が必要ありませんね。実際にピアノの練習をしているところへ冬の雀が来たというような句でも面白いでしょう。

マフラーにくわれた首をもちあるく  とも(10代,女)
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 マフラーを巻いているのだけれど巻かれている感じですね。ちょっとシュールでもありますね。

(1)核家族みどり児抱いて松も過ぎ  由紀子(40代,女)
(2)みどり児のあくび伸びゆく初御空
 初めまして。初子を授かり夜中の授乳中などに五七五を考えるのを支えとしています。宜しくご指導願います。
ドクター小倉の診断と処方箋
 幸せいっぱいといった感じですね。(2)がいいですね。

しみじみと寿命とおもう寒の月  ねぎよしこ(70才以上,女)
 葬式の多い月でした。よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 寒の月を別の季語にして少し前向きな句にしましょう。

笹鳴きや空に爆音ひとつあり  豊田ささお(70才以上,男)
 以前ご診断頂いた「蒼天や笹子囀るときを待つ」を変えてみました。よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 せっかくの笹鳴きが爆音で消えてしまいます。飛行機雲くらいでよいのではないでしょうか。

冬日和猫も主役の漁師町  雀子(60代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 「も主役」に作者の気持ちがドッと出すぎています。言いたいことを言わずに表現しましょう。冬日和の漁師町に猫がいればだいたいは主役になります。その猫の特徴や行動をひとつ書くくらいで十分でしょう。


2007年1月29日

(1)あえかなる萌やしの芽生え山眠る  小口泰與(60代,男)
(2)高みよりこちら見ている寒烏
(3)眼間に紫紺の赤城息白し

 よろしくご指導願います。
ドクター小倉の診断と処方箋
(2)寒烏は確かにこのようなものかもしれません。ただこれは寒烏そのもので、ここからのスタートです。
(1)あえかなる、は言わないでおきましょう。

葉牡丹の花壇お絵描き2007  菊美(60代,女)
 m(__)m宜しくお願いします。長居公園色々問題ありですが、マラソン、世界陸上競技大会(1/28、8月)向けて、整備されてます。
ドクター小倉の診断と処方箋
 ちょっと皮肉っぽいですね、「お絵描き」あたりが。どちらかというと川柳っぽいですね。

節分や「おにたのぼうし」読み聞かす  玉白石(50代,男)
 「おにたのぼうし」は節分になると思い出すお話です。(知らない人にはわかりませんが……。)付きすぎかも知れませんが、好きなので。よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 「節分」は別のものにしましょう。「おにたのぼうし」を知っている人が読者だとすると季節はわかりますから。

(1)黄水仙笑顔の女医の傍らに  れい(70才以上)
(2)五歳児の照れ知りはじむ二月かな
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)傍らに、が不必要。黄水仙と女医の取り合わせにしましょう。
(2)季語が効いているか。いろんな季語を試してください。五歳児も他の言い方を考えてみましょう。

大寒や川藻ひとすじ揺れてをり  多弁(60代,男)
 季語の使い方が難しいです。その時見たもの、感じたものからなかなか離れられません。よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 悪くはないのですが、物足りないのは事実の報告になってしまっているのかもしれませんね。見たものを俳句にするのはいいことです。その中に自分の目が入っていればなお良いのですが。

教室と異な味耐ゆる小正月  煙(60代,男)
 今晩は。亭主の手始めの料理ということで外観は平穏ですが。よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 説明がなければ何の教室か、何の味かがわからないでしょう。〈オムレツを初めてつくる小正月〉のようにしても、ちょっと疑わしいオムレツかもしれません。もっと怪しい意季語にすればその雰囲気も出るかもしれません。

山頂にある大いなる初茜  月舟(70才以上,男)
 色々迷いながら、楽しく、苦しく俳句するのみ。
ドクター小倉の診断と処方箋
 そうなんですよね。趣味になぜこんなに苦しまなければならないのか。やはり良い句ができた時の喜びが大きいからですよね。山頂には大いなる初茜があるのは当たり前。〈山頂に○○○ある初茜〉とし、○○○にいろんなものを入れてみましょう。

古棚に招き猫座す餅の花  煙
 餅の花は遠き思い出、近くでは残業帰りの居酒屋の思い出があります。
ドクター小倉の診断と処方箋
 煙さんの思いがさほど伝わってこないのはなぜでしょう。そんな風景を見たことがないからかもしれません。あえて言うならば、餅の花が霞んでしまっている。

(1)声あげしムンクの叫び虎落笛  しんい(女)
(2)霾天や東京タワーピンぼけぞ
 的を得ない句ばかりですが、よろしくお願い致します。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)ムンクの叫びと虎落笛は近いものがありますね。このような傑作を俳句にするのは本当に難しい。というのはその傑作を凌駕するものがなければならないのです。
(2)霾天にピンぼけは必要なし。東京タワーとの取り合わせは面白いですから、推敲してください。

怒らせて直ぐに泣かせて雪だるま  慈英(50代,男)
 ご指導宜しくお願い申上げます。
ドクター小倉の診断と処方箋
 小さな子供さんとのことでしょうか。もう少し具体的な何かが欲しいですね。

(1)寒星の滅びる音を聞いている  遅足(60代,男)
 象の鼻がピンクだったのは、さきっぽの色でした。象全部がピンクみたいに聞こえ ますね。注意します。
(2)寒星の滅びる音を枕元
 と、どちらが良いでしょうか?どちらも?かな。診断をよろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 何万年、何億年前の光を今見ているわけで、もうその星は滅びているかもしれない。そんな気分で見ているとその音も聞こえてくということでしょうね。でもそのようなことも寒星に含まれているように思います。一番言いたい「滅びる音」を言わないで、それを利用するのです。〈荒星や毛布にくるむサキソフォン 攝津幸彦〉こんな句も読みようによっては、その星の滅びる音が聞こえるような気になってきませんか。

寒林やスコンと晴れて鉈の音  豊田ささお(70才以上,男)
 小倉ドクターお早うございます。宿題をためるばかりですが、よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 スコン、がありきたりですね。オノマトペを普通に使うと面白くない。中7を考えましょう。


2007年1月28日

冬の星定規で測る子供かな  玉白石(50代,男)
 理科の宿題で……。よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 冬の星の間隔を定規で測っているのでしょうか。〈冬星を定規で測る子供かな〉のほうがわかりやすいですね。切れ字「かな」を使う場合は1句が最後まで流れることが大切です。「冬の星」とすればここで切れがあるのだと錯覚する人があり、子供が測るのは別のものだと感じられるかもしれません。私はそのほうが好きなのですが。〈冬の星定規で測る花林糖〉のように。

(1)月つれて美術館を出でにけり  笹泉(50代,女)
(2)小劇場小さき椅子のひしめける
(3)蘭の鉢抱えて友の画廊訪う

 はじめまして。俳句を始めて3ヶ月です。よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 それぞれ俳句的な一場面ですね。ただちょっと「作った」感じがします。「月つれて」「ひしめける」は一見うまい表現に思えて実はよくあるパターンかもしれません。俳句には素敵な季語がたくさんありますから歳時記でイメージの合う季語を選んでみてください。
(1)〈夕月夜美術館を出でにけり〉からスタートして、後半を推敲しましょう。
(2)この句にも季語を入れましょう。〈劇場の小さな椅子よ十三夜〉のようにね。
(3)実際に蘭であったかもしれませんが普通の話になってしまいますから、ちょっと違った花にすると面白いかもしれません。俳句はフィクションでもOKです。

コンビニが真っ黒になる冬の薔薇  裸時(30代,男)
 読者を意識するのは難しいですが、なるべく意識します(^^;
ドクター小倉の診断と処方箋
 この句だと助詞などの文法の違和感はありませんね。やはり基本は文法を正しく使うことが大切ですね。その範囲の中で不思議さ、裸時さんらしさを出せばよいのだと思いますよ。俳句は言葉であるのだから。この句でも十分裸時さんらしさが出ていますね。「真っ黒になる」が私には感じられないけれど・・・。

春を待つ頬骨の影五彩あり  きなこ(50代,男)
 よろしくご診断のほどを。
ドクター小倉の診断と処方箋
 頬骨の影に五彩がある、わかるようでわからない。春を待つ、という季語を少し飾った言葉で説明してしまったようですね。例えば〈春隣り頬骨に風あたりけり〉としても句意は変わらない。むしろ読者がいろんなふうに頬骨を解釈してくれるでしょう。

(1) 鳥の影一月の畑蠢けり  まりあ(40代,女)
(2)身の内を濾過されてゆく枯野原
 ありがとうございました。「ありそうでなさそうな光景」を作ってはいけない、と自戒はしているのですが。宜しくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 ありそうでなさそうな、というのは漠然として雰囲気だけの句ということです。言い換えれば観念的ともいえるでしょう。どちらの句もやはりそうなっていますね。
(1)もっと具体的に鳥の動きを書きましょう。この句だと一月の鳥のイメージを言っただけに終わっています。
(2)枯野原にいるとこういう気分になりますね。句会でこのような句を出すと、ある程度点が入るかもしれません。ただ、それで安心してはいけない。これは「枯野原」をうまく説明してしまっています。俳句は季語を説明するのではなく、使う、利用するのです。例えば〈背広着て枯野原を横切れり〉とすると、「ああ、濾過される気分だ」という感想が句会で出れば成功です。出なければ失敗。

恵方なるでこぼこ道や夢明り  しんい(60代,女)
 よろしくお願い致します。
ドクター小倉の診断と処方箋
 恵方、でこぼこ、夢明り、漠然としたものばかりなので句全体が雰囲気だけのものとなってしまっています。

(1)晴天の塔を目指して初詣  三郎(60代,男)
(2)一筆の太文字〆る寒椿
(3)廃校の庭に一輪福寿草

 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)悪くはないのですが、物足りなさを感じます。「塔」が特定されてないからではないでしょうか。
(3)この句もシンプルなのですが、いかにもありそうなところに福寿草があるので、やはり物足りない。
(2)状況がわかりませんでした。

湯豆腐が好きで金閣寺が好きで  慈英(50代,男)
 ご指導宜しくお願い申上げます。
ドクター小倉の診断と処方箋
 京都つながりではありますが、面白い句ですね。京都を満喫している感じがいいです。

(1)氷壁と連想ゲームしてる妹  月虎
(2)花の兄きのうの箱の蓋あけて
 こんにちわ。小倉ドクターのわけ解らない句の頃があったのですか?じゃ、その頃の扉を叩いてみたいです。汽白さんの雪の句2句とも、好きです。裸時さん、がんばってね。楽しみにしています。
ドクター小倉の診断と処方箋
 わからないには何種類かあるのですね。例えば、@表現としてはわかるのだけれど、共感できない。A表現そのものがわからない。@についてはコメントできないですね。ただ、リズムとか、雰囲気がイイ場合はありますが。
(1)表現には問題ないですね。あとは氷壁と連想ゲームする、がイメージでき、共感できるかということです。私は共感できないけれど、これには共感できそうな人がいると思います。
(2)花の兄、に無理があるように思います。つまりAになりますね。

青き空白梅映えて尚青し  浅葉洋(70才以上,男)
 当地でも待望の梅が開花しました。澄んだ冬空に、くっきりと咲いた梅を詠みました。ご高評をお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 青き、映えて、尚青し、どちらも直接形容されていますね。当たり前の形容は短い俳句では禁物。

耳も目も河馬のものなり冬の水  彩貴(40代,女)
 大人になった娘と動物園に行って来ました。宜しくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 水に潜っている河馬のことですよね。悪い句ではないのですが、「冬の水」がちょっと面白くない。水の中を作者が面白がっているようです。趣味の問題かもしれませんが、私なら〈耳も目も河馬のものなり雪催〉〈耳も目も河馬のものなり牡丹雪〉などとしますね。水から少し離れるのです。それでも河馬は水の中だとわかるでしょう。

(1)水仙の厠にたんと越の国  えんや(70才以上,男)
(2)長梯子支へくれしか雪女郎
(3)図書館へどさつと返す五日かな

 やや厳しい句評有り難く思っております。いろんな角度より、よく見たり考える事 の必要性を深く感じました。宜しくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
(2)支えてくれる、でどうでしょうか。雪女郎との交流ですね。
(3)正月にたくさん借りて読んだ、という説明の裏返しですからあまり面白くありませんね。どんな本を借りたのか。どのように返したのか。などを書いてみましょう。


2007年1月27日

腹の虫おさまりました歌会始  澄(50代,女)
 よろしくお願いします。歌会始は7音ですが、こういう使い方はいけませんか?
ドクター小倉の診断と処方箋
 基本的には下5に字余りはよくないとされていますね。俳句の一番たいせつなリズムを崩してしまいますから。しかし俳句のセオリーを越えた句であれば稀に成功する場合があります。この句は唐突な上5中7ですからちょっと面白いですね。滑稽さが少し感じられます。

大寒の蔵で目覚める玉手箱  玉白石(50代,男)
 辛口の批評、楽しみです。よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 なんだかよくわからない句ながら笑ってしまいましたよ。わが家の蔵に玉手箱があるような気がしてきました。それにしても、玉白石さん、作風が変わりましたね。

葉牡丹や門に見送る人の居て  豊田ささお(70才以上,男)
 小倉ドクター今晩は。「誤伐・・」の句やはりむりでしたか・・今度のは、どうでしょう?
ドクター小倉の診断と処方箋
 この句はまずまずですね。わが家にも葉牡丹が玄関に置いてあります。それを思い出しました。

(1)冬麗の有刺鉄線総督府  菜月子(女)
(2)真贋は問わず碧玉買う五日
(3)答案に満点つける冬灯
(4)寒紅や掌にある人事権

 ひさしぶりの投句ですが、どうぞよろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 どの句も言い過ぎずうまくまとまっていますね。
(1)実際にこういう風景が今でもあるのかなと思いますが、雰囲気がよく出ていますね。
(2)真贋は問わず、が言いすぎとも言われそうですね。店とか買った状況を書いてみるのもいいかもしれません。
(3)(4)はお仕事の句で、ちょっと特殊ですが気分がよく出ています。季語がうまく効いているようです。

通り過ぐ竹馬の子の眉けわし  千鶴(60代,女)
 どうぞよろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 「眉けわし」を考えましょう。俳句は一番言いたいことを書かないでおきましょう。「眉けわし」=「がんばっている」なのですから。

(1)立ち退きは法廷闘争冬田螺  北野元玄(60代,男)
(2)心臓のお代わりをする冬の朝
 すねてる眼鏡は眼鏡をかけている小倉さんにはわかってもらえると思ったのですが・・。気候や体調の加減でなんとなく度が合わないことがよくあるのですが、それを取り上げてみました。冬場はよくレンズがくもりますね。上句(1)は俳句になじまないと思われている語句を使ってみました。苦心作です。いまどき田螺はほとんど動きません。時事俳句ととられると少しつらいような・・・。(2)健康な人には分かってもらえない俳句か? ご心配とご迷惑をおかけしました。今後、本歌取りはやめます。しかし、「急がねば」の影響は大きく残りそうです。
ドクター小倉の診断と処方箋
 「拗ねてる眼鏡」でなんとなくはわかりますが、俳句は詩です。意味を伝えるのではなく、俳句で新鮮な空間を読者に与えることだと思います。北野さんの句はご自分の思いをなんとか伝えようとされていますが、そうなると俳句としてはどうしてもぎこちなくなったり、理屈っぽくなります。私は俳句で自分も知らなかった世界を作り出すようにしています。
(1)まずまずですね。ただこの季語を「動かない」という意味で使ったら、それは理屈で詩ではありません。

(1)冬空に醤油の焼けてゐたりけり  学(50代,男)
(2)隠れ家のやうな酒場にポインセチア
(3)雪仏鯖缶味噌煮酒無尽
(4)仏来て水に流るる昼寝かな
(5)ビートルズ新宿喫茶シーダ水

 ご教示を。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)冬空を眺めていたら醤油の焼ける匂いがしてきたのでしょうか。出店が餅でも焼いているのでしょうか。「に」をそのままとると、冬空が醤油の焼けたように見えるともとれますね。もしかしたら句意はそうかもしれませんが「冬の空」と切るほうがよいでしょう。
(2)この句もまずまず。小さな店のカウンターに赤いポインセチアがおいてある感じですね。

水底に三角定規冬の池  玉白石(50代,男)
 「水底に」は説明でしょうか。悩んでいます。よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 そんなことがあるのでしょうか。この場合「水底」を言わなければわかりません。むしろ「冬の池」は水底と重なってしまっていますね。冬の花などにすると句が広がります。

魚籠の中独活一本や雲走る  きなこ(男)
 渓流釣りが趣味です。よろしくご診断下さい。
ドクター小倉の診断と処方箋
 渓流釣りをしながら独活をとったということですね。その魚籠の中にはイワナ、ヤマメ、が入っているのでしょうか。この夜が楽しみですね。表現がぎこちないので推敲しなければなりません。「の中」「一本や」あたりが特に気になりますね。「山独活のある渓流で釣をしている」という句にするだけで十分でしょう。


2007年1月26日

しめなわの取り残されし姥の門(かど)  春雪(70才以上,男)
 小倉先生、我が家の向かいに独り暮らしの老母がおられます。
ドクター小倉の診断と処方箋
 姥の門、を言わなくても、注連縄が残っておれば何か事情があるのだろうと思いますよね。全て言ってしまわず、最後のところをちょっと我慢しましょう。

医務官の呷れるウォッカ寒北斗  智弘(30代,男)
 宜しくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 北の国に派遣された医務官でしょうか。仕事の大変さと寒さが感じられますね。

大寒の闇にクルスの朱のネオン  慈英(50代,男)
 ご指導宜しくお願い申上げます。
ドクター小倉の診断と処方箋
 大寒と十字架の取り合わせはよくわかります。「闇」「朱」は書かなくてもわかりますね。うまく表現すれば「ネオン」も必要ないかもしれません。

生まれたて素焼きの湯のみや薄紅葉  ねぎよしこ
 よく分かる指摘有難う御座いました。又懲りずに。
ドクター小倉の診断と処方箋
 陶芸をやっている私としては、ちょっと細かいですが、素焼きではなく焼き締めなのですね。素焼きとは生土を釉薬を塗り易くするために800度前後で焼いたもので、植木鉢のような感じ。焼き締めは釉薬をかけずにそのまま焼いたもので、土味が勝負の器です。そうなるとこの湯呑みはまだ出来上がっていないものになってしまいますね。出も雰囲気はよく出ています。素焼き状態の器もきれいですから。

(1)薄氷やボクはぼくしかいないよね  月虎
(2)春のひとみまだ眠そうにうるんでる
 たぶん。。。こんなかんじかもしれません。やっぱり、弱いですね。まだ、春のはじめです。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)「薄氷」がボクを想像させてくれますね。口語調もいいですね。
(2)これは当たり前かな。

電飾はかりそめなりし冬木立  多弁(60代,男)
 陶芸がご趣味だと蕎麦打ちも楽しいと思いますよ。
ドクター小倉の診断と処方箋
 陶芸をやっている人はけっこう蕎麦打ちをやっていますね。土を練ることとそば粉を練ることとが同じなのですね。ちょっと違うことをやってみたい私は、お菓子をやったり、ピザもイイかなと考えています。
 句ですが、「かりそめ」を言ってしまいましたね。それはみんな心の中に持っていることなのですね。
 ここで私の「チューリップ理論」を紹介しましょう。「チューリップがきれい」といってもわかるけれど誰も感動はしない。ところが「チューリップが下駄箱の横にある」というと、人は自分の経験から下駄箱を想像し、なぜそこにチューリップがあるのか想像し、色を想像し、ストーリーを作ってゆくのです。そして「このチューリップは赤と黄で、鉢に植わっていて、作者が友達へのプレゼントだ。その日はきっと晴れていて・・・」と読んでくれるわけです。読みが広がるのですね。

(1)身の内のどこか突っ張る寒の内  彩貴(40代,女)
(2)藪柑子日の班は円く円く揺る
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)どこか突っ張る、のはどこかが問題です。「どこか突っ張る」という感じを具体的に表現すべきです。例えば〈フライパンが少し重くて寒の内〉とすると、寒の内はちょっとフライパンが重く感じたわけです。ただこれでは「寒の内は寒いから体も鈍いからフライパンも重く感じるのね。」と思われてしまう可能性がある。それで良しとする人が多いけれど、俳句は理屈で言ってしまえば面白くありません。まだ〈フライパンが少し軽くて寒の内〉のほうがイイかも知れませんが、今度は「わけがわからん」と言われるでしょう。結論としては「わかる」と「わからん」の境界線あたりが面白いのではないかと私は思っています。

着ぶくれて足の爪切る指の爪  きなこ(50代,男)
 ご診断、よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 足の爪切って次に指の爪を切ると言うことですよね。表現として座5が不自然ですね。たった17音に不自然さがあると俳句としては致命的です。内容は単純でいいのですが、着膨れと爪を切ることは近いと言えるでしょう。

水仙や固くタオルを絞る朝  涼(70才以上,男)
 宜しくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 イイ句ですね、涼さん。水仙は冬の花であっても、明るくて気持ちがいいですよね。そんな水仙の咲く中で、朝タオルを絞っている。タオルですから人を拭くためと思われます。自分のどこか、或いは誰かの世話かもしれない。そのあたり想像できる読者がいそうですね。

節分のお面にふたつLOVEにO  汽白(40代,男)
 こんにちは。よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 汽白さんは変わった句を書かれますね。LOVEにOがわかりませんでした。

目覚めては猫とながめる冬の月  豊田ささお(70才以上,男)
 小倉ドクターのお家では4臼も餅を搗かれた由、いいですねえ。昔はともかく、私なんか公園でボランティアで搗くけど我が家ではナシ、もっとも私以外は猫1匹しかいませんが・・
ドクター小倉の診断と処方箋
 私は年に数回餅を搗きますよ。イベントとかで餅つきをしているのを見ると「ぎこちないなあ」などと思うことがあります。この句は作者と猫の関係が少し出ていますね。縁側で日向ぼっこをする関係より、いっしょに冬の月を眺める関係の方がずっといいですね。

(1)職退かば農を起こさむ春の雨  文の子(60代,男)
(2)工事場の白き切株春の雨
(3)先づ雪を集めてからの雪達磨

 宜しくお願い致します。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)気合入ってますね。ちょっと入りすぎかもしれません。俳句では。
(2)白き切り株がよくわかりません。工事現場にはあるかもしれませんが、私には感じられませんでした。
(3)それほど雪が多くないから雪を集めているのでしょうね。そうなんだろうなあと思うだけでした。


2007年1月25日

五円玉のみの蟇口初鴉  智弘(30代,男)
 宜しくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 ご縁があるようにでしょうか。お賽銭専用の財布かな。それとも正月早々金が無いのか?まさかね。

サイフォンのコーヒふつふつ雪催い  千鶴(60代,女)
 お久しぶりでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 サイフォンのコーヒーはふつふつが当たり前。当たり前の擬音はあまり俳句では効果的ではありません。予想通りの音ですから。

(1)にさんこの予感が点る冬いちご  とし(60代,男)
(2)風花やうすいガラスの窓を拭く
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)にさんこ、がわからない。ここにその予感の一端が欲しい。
(2)風花もうすいガラスは近いイメージですね。ちょっと重なってしまいました。

(1)冬満月記憶の扉開けに来る  郁子(60代)
(2)六花舞う今宵切り紙遊びせん
 どうぞよろしくご指導くださいませ。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)何の記憶かが問題なのですね。作者はいったい冬の満月を見て何を思い出したのか。それを知った読者は、「ああ、冬の満月ってそんなことを思い出させてくれるのか」と思うわけです。
(2)まずまずですね。それでも気分が出すぎているかもしれません。雪降るを「六花舞う」と言い、「今宵〜遊びせん」と言ったところ。感情を出さず、客観的に伝える方が効果的なことがあります。例えば、怪談の話をするときに、冷静に感情を込めずに話す方がコワイときがありますよね。それと同じです。話し手が興奮しすぎてはいけない。

(1)初日記始発電車の通るころ  れい(70才以上)
(2)ビルの影群青色に初夜明け
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)ちょっと面白いですね。正月早々徹夜なのか、早起きなのかどちらでしょう。元旦の朝、初詣に出かける前に、今年の抱負を書いたのかもしれませんね。

頻繁に独楽を燃やして硬直  裸時(30代,男)
 akb48のウェブサイトに「豆もやし」というのがありましたのでついつくってしまいました(^^;
ドクター小倉の診断と処方箋
 裸時さんはどうやら直感で俳句を作っておられるようで、それが独善に陥ることがよくあります。ただ独善の中から衝撃的な句が出てくるかもしれません。出ないかもしれません。この句も読者としてはついて行けませんねえ。

赤ゲラのドラム合戦雪晴れる  せいち(60代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 キツツキのドラム合戦はありふれた表現かもしれません。ここは素直に表現した方が雪晴れの気持ちよさが出そうです。

(1)膝掛を渡されて歯の治療台  彩貴(40代,女)
(2)そっぽむく顔の笑える初写真
 はじめまして。よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)イイ句ですね。歯の治療台に上るときの緊張の中でのちょっとした気遣いに作者がホッとした、というところでしょうか。季節感も出ていますし。
(2)「の」の曖昧性が出ていますね。主格と所有格で意味が全く違ってきます。主格ととりたいですね。そっぽを向いているのだけれどその顔が笑っている。幼い子かもしれませんね。

(1)老松のあはひに初日昇りけり  しんい(60代,女)
(2)鐘の音の耳に残れり初詣
(3)真っ新なランドセル撫では春待つ子

 よろしくお願い致します。
ドクター小倉の診断と処方箋
 3句ともよくわかる句なのですが、わかりすぎるところがありますね。

(1)藤色のセーター着た手かしこまる  ポリ(50代,女)
(2)黄花の黄老いたる目には糞に見え
 いつもアドバイスありがとうございます。今回は勇気を出して「送信」します。よろしくどうぞ。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)藤色はやはり「藤の花」を意識してしまうので使うのは勇気がいりますね。それが成功するかどうかはどう取り合わせるかの問題です。「手がかしこまる」ことで成功しているとは思えないのです。なぜ、どういう状況でかしこまっているのかが見えません。そのあたりからもこの句はとても難しいすね。一度句会に出して多くの人の意見を聞いてみてください。
(2)俳句は美しくなければならないことはないのですが・・・。

寄り添って霜に耐えてる道祖神  山太郎(60代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 実は寒い冬を耐えているのは作者であり、道祖神はそれを見守っていてくれているのですね。

登校の遅れてをりし雪だるま  慈英(50代,男)
 ご指導宜しくお願い申上げます。
ドクター小倉の診断と処方箋
 雪が降って登校が遅れて雪だるまを作っているのだろうか。雪が降って登校が遅れるのは原因と結果だけれど、雪だるまとしたところが少しよかった。文法的には「し」は連体形ですから雪だるまにかかってしまうように感じてしまいますね。正しくは終止形の「き」でしょうか。あまり文法には強くないのでそのあたりお調べください。

(1)わが寺は七地蔵とや春間近  さくら(女)
(2)左義長の母子の耳の赤きかな
 宜しくお願い致します。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)六地蔵ではなく七地蔵なのですね。これほど強調しなくても「七地蔵」だけでその存在は十分伝わります。〈七地蔵の前通りすぎ春隣〉〈春間近坂を上がれば七地蔵〉くらいから始めてはいかがでしょうか。
(2)この季節は耳が赤いのは当然で、左義長ととりあわせても新鮮さはでませんね。


2007年1月24日

竹の子や算数が好き九九が好き  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 まずまずの句ですね。これだけで、小学生の低学年の子と作者との楽しいひと時を想像することができます。もしかしたら竹の子の出てきたのを楽しんでいるのかもしれませんね。イイ句です。

(1)耳鳴りを残して虎落笛止みぬ  鴻之助(50代,男)
(2)匙落とす大音響や冬茜
(3)子守唄遠き目をして冬家族

 またよろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)耳鳴りと虎落笛が音つながりで近いですね。虎落笛のが耳に残ったのかもしれませんがそれでも大差ありません。この季語にそのあたりは含まれているようです。
(2)大音響がおおげさですね。
(3)遠き目をして、がきっと言いたいことなのでしょうが、よくわかりません。誰がどのような状況でいるのかが見えてきませんでした。

薄氷の下に続々アカガエル  豊田ささお(70才以上,男)
 小倉ドクター今日は。こんなのはどうでしょう?一般的ではありませんが・・・
ドクター小倉の診断と処方箋
 アカガエルは薄氷のころにもう冬眠がら覚めるのですね。そして氷の下に産卵するようですね。そんなアカガエルの説明になってしまっているところが残念。あまり一般的でないので説明はある程度必要かもしれませんが。せめて「続々」は書かないでおきましょう。

(1)ランドセル揺らし帰る子息白し  雀子(60代,男)
(2)思考する回路は狭き冬深し
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)これが俳句のスタートですね。ここから推敲し、より良い俳句に仕上げていきましょう。まずは語順を変えてみましょう。〈息白しランドセル揺れ子が帰る〉。ランドセルが揺れるのも、子が帰るのもだいたいわかることなので、思い切って動詞を省略すると〈息白し赤や黄色のランドセル〉〈息白し物差しささるランドセル〉など、ランドセルを表現してみましょう。
(2)冬だから思考も縮んでいるとは残念ながら当たり前。

(1)赤城より硬き風吹き湯冷めかな  小口泰與(60代,男)
(2)降る雪に舞ひ急ぎたるとんびかな
 よろしくご指導願います。
ドクター小倉の診断と処方箋
 どちらの句も中7に言いたいことがズバリ出ていますね。特に「硬き」「急ぎたる」がきっと小口さんの言いたいところ。この部分を言わずしてこの句を成立させて欲しいですね。非常に難しいかも知れませんが。
(1)〈湯冷めして窓に映りし赤城山〉(2)とんびも冬の季語ですから季語が重なっているところも問題です。


2007年1月23日

冬を裂き未来へ駈ける乙女かな  春雪(70才以上,男)
 小倉喜郎先生、こんばんは。京都での全国女子駅伝を見てまして一句詠みました。
ドクター小倉の診断と処方箋
 説明がなければ何の句かわかりにくいかもしれません。もっと具体的な駅伝の様子を句にしましょう。〈霙降る第三走者が烏丸へ〉あまり良い句ではありませんがちょっと具体的ですよね。霰、牡丹雪、冬の雨、いろいろな季語を試して、駅伝を盛り上げましょう。

硝子戸に男やもめの冬帽子  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 ちょっと寂しいなあ。男やもめが現実であってもその部分は伏せておきましょう。

(1)つっついて若い鰆か苫小牧  裸時(30代,男)
 今晩鰆をいただきました。ありがたいです。
(2)梵天を走ってついた網走に
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)苫小牧がなぜ?この句を読んだ感想です。
(2)梵天をの「を」がわからない。
 俳句をつくることは自分の個性を出すことが大切ですが、読者との折り合いも大切。妥協と言ってもいいかもしれない。それを少なくとも意識し、俳句をつくらなければならないでしょう。

一日の長きを憩う三が日  由利子(70才以上)
 実感です。よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 実感であろうと、そのまま書いては俳句にはなりません。特別なことを書く必要はありませんが、どのように過ごしたかを書くべきですね。「あ〜くつろいでいるな」とは読者が感じるのです。

風邪心地酸素の重き夜の来て  れい(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 酸素が重い、とはわかるようでわからない。風邪心地とはそんなものだということでしょうか。ちょっと作りすぎの感ありですね。

味噌作り年寄り2人おままごと  賀代子(70才以上)
 俳句をはじめててまだ日が浅いのですが、よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 わが家でも以前は味噌をつくっていましたが、今はもうつくっていません。親が味噌を搗くのを横でじっと見ていた覚えがあります。「おままごと」ではちょっと寂しいので、本格的な味噌搗きの句にしましょう。その時の具体的な行動を句にしましょう。〈味噌を搗く夫が眼鏡を押し上げて〉あまり良い句とはいえませんが、「夫」を出せばその裏には「妻」がいて、それは2人を意味しますね。その夫の行動や様子をちょっと入れるとそれで句になります。説明しようとするのではなく、具体的物事を書けば読者がうまく読んでくれます。

佳き日々は白きページの日記果つ  郁子(60代)
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 表現としては「は」が「の」ですね。そうなると後の「の」と重なるのでそのあたり推敲しなければなりません。もっと問題なのは「佳き日々」が見えてこないところですね。作者はいろんな良い日を経験しているのですが、読者にはさっぱりわかりません。「白きページ」も美しい表現ではありますが、やはり具体性がない。雰囲気は良いのですがそこで終わってしまった句といえるでしょう。

(1)七輪に手をかざしつつ朝市女  悠(70才以上,女)
(2)祇王寺の竹の葉ずれや冬の雲
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)まずまずですね。〈朝市や七輪に手をかざしつつ〉〈朝市女七輪に手をかざしつつ〉など、推敲をしてめいてください。
(2)苔に包まれた風情のあるお寺ですね。私もずいぶん前に訪れた記憶があります。竹の葉のすれる音とその向こうにある冬の雲という単純なつくりが、お寺を際立たせているようです。

(1)稚児が舞ふソウル新春チマチョゴリ  栗太郎(60代,男)
(2)冬桜咲いてをりけり地震の朝
(3)石垣に未だ癒へざる地震の痕

 読者を意識して句を作るという先生の考え方に、なるほどと思いました。
ドクター小倉の診断と処方箋
 俳句は創作活動ですからどの句もここから句に発展させなければなりませんね。
(2)冬桜、と言えば咲いていることを意味しますので、「咲いてをりけり」は全く不要。
(3)「未だ癒へざる」は作者の気持ちなので書かずにおきましょう。例えば〈石垣に冬のたんぽぽ地震の朝〉のように創作しましょう。

(1)梅が香や暮れて屋台の店閉づる  文の子(60代,男)
(2)咲き初めし紅梅覚めぬ我が頭
(3)寒梅や飼ひ犬の耳ピンと立ち
(4)春立つや鉄扉の開いて女学生

 1/17のご診断有難うございました。「立春」の理解が出来ていないことが判りました。掲句は如何でしょうか。
 宜しくお願い致します。
ドクター小倉の診断と処方箋
(3)この句がいいですね。寒梅と犬の耳の取り合わせがシャープでいいです。「飼ひ犬」を犬種にしてみても良いかも。〈寒梅やシェパードの耳ピンと立ち〉のように。(1)暮れて屋台が閉まるのは当たり前。(4)鉄扉がちょっとおおげさに感じました。

(1)冬夕焼け右眼に潜むねたみ虫  北野元玄(60代,男)
(2)道端にベンツが止まる七草がゆ
 1/16のご診断、ありがとうございました。テロを応援していると取られても困るので、前回も申しましたが、テロの句はお休みします。今日は、小倉俳句への挑戦第2弾です。(2)は本歌取りです。勿論、元歌は小倉さんの俳句です。厳しいご指摘をお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 まず問題は本歌取りをする元の句に問題がありますよ。読者が知らなければその句はきっとわからない。やはり基本は自分のオリジナルな句にしましょう。
(1)ねたみ虫、がよくわかりませんね。つまり全体として何を言おうとしているのかがわかりません。
(2)ベンツが違和感ですね。

(1)客間にも光りこぼるる四日かな  小口泰與(60代,男)
(2)寒暁の榛名を映す丸き月
(3)犬の餌狙ひし鳥や霜だたみ

 よろしくご指導願います。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)シンプルな句ですね。三が日が過ぎ、客間に光がこぼれるということは、客が帰ったのでしょうか。その反対でしょうか。わかるようでわからない句になっています。例えば〈客間にも光射し込む四日かな〉とすれば少し絵が見えてきます。


2007年1月22日

菜のつぼみほろ苦くあり千の風  菊美(60代,女)
 震災12年、直接被害はありませんでしたが、先ず自分にできることを!ラジオの呼びかけに、献血に出かけ、見つけた菜の花、辛し和えにして、、。今年も美味な味に思い巡らし、西宮で震災に会い、大病もした友も穏やかに暮らしだそうでほッとしてます。説明になりましたm(__)m
ドクター小倉の診断と処方箋
 「千の風になって」のことですよね。15日にはテレビで何度も神戸からのヴィーナスブリッジからのトランペットを聞きましたね。菜の花の蕾ですから震災より少し後ではありますが、追悼の句として良いのではないでしょうか。菜のつぼみ、というのは正式には菜の花の蕾でしょうから、この場合は菜の花にしましょう。

海沿ひの上昇気流を凧  暮春(50代,男)
ドクター小倉の診断と処方箋
 上昇気流が当たり前なのですね。海沿いに何かがあり、それを背景に凧揚げをしている句にしましょう。自分の立つ位置が見えるように。

その赤が似合ふと店主女正月  慈英(50代,男)
 ご指導宜しくお願い申上げます。
ドクター小倉の診断と処方箋
 面白い場面ではありますが、あまり感動がないのはなぜでしょう。服屋なのか帽子やなのか眼鏡屋なのか。具体的物を出した方が面白いかもしれませんね。

自信作けなしけなされ初句会  春雪(70才以上,男)
 小倉先生、こんばんは。春雪です。今年初めての船団句会に出ました。自分の句に対してけちょんけちょんでした。(笑)
ドクター小倉の診断と処方箋
 船団の句会はみんなが思ったことを責任を持って言うところがいいでしょう。私もたびたび痛い目に遭ってます。この句はその時の状況だけですね。

蒼天や笹子囀るときを待つ  豊田ささお(70才以上,男)
 今晩は・・昨日鶯が笹から笹へ移るのを見ました。2月に入ればさえずりが聞けますね。
ドクター小倉の診断と処方箋
 笹子は冬の鶯のことですから、春を待っているのが当たり前。季語の説明でしかありません。このことを踏まえて俳句をつくりましょう。豊田さんオリジナルのね。

(1)堀の鯉取り揚げきった寒さかな  学(50代,男)
(2)雪国の温しすとんと落とし蓋
(3)どんぶくに日の匂ひあり受験生
(4)今日帰るといふメールや老の春
(5)ふるさとの水のうまきやげんげ畑

 ご教示を。
ドクター小倉の診断と処方箋
(2)俳句になりそうな材料がありますね。落し蓋と雪国の取り合わせはポカポカしていてよさそう。そのためには外は寒いほうがよさそうです。
(3)どんぶくとはちゃんちゃんこのことでしょうか。それなら冬。受験生は春の季語です。季語が重なってもいいのですが、受験生にちゃんちゃんこはあまりにも普通です。

陽だまりは長い縁側飾焚く  多弁(60代,男)
 きつい診断をお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 きつくするつもりはないのですが、ついつい言いたいことを言っています。この句は季語が効いているでしょうか?冬のポカポカ陽気はそれだけで十分季語として存在感ありです。そこへ飾焚く、をおく必要があるでしょうか。

菜の花や二時三十分の電車行く  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 二時三十分の意味がわからない。投別な数字を使うことは悪くはありません。成功すればいいのですが、疑問を持たれては逆に損をしてしまいます。

並の日となりて忘られ小正月  桐子(60代,男)
 1月15日。平成11年までは「成人の日」として国民の祝日でした。今は格下げとなり存在感がなくなったような気がします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 全てを言ってしまいましたね。もっと小正月を生かしましょう。実はこの日が私の誕生日です。以前は誕生日が休みで人に会わないこともありましたが、平日になったので「おめでとう」を言われる回数が増えました。

(1)立春のネットにて農学びけり  文の子(60代,男)
(2)幾筋の日矢立春の相模湾
(3)立春や中天目指す飛行雲

 宜しくお願い致します。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)農学の何を学ばれたのでしょうか。そのあたりを書けばもっと魅力的な句になりそうです。
(2)(3)どちらも気分に流された感じですね。遠くばかり見ずに近くも見ましょう。

(1)霾ぐもり少し偏り解像度  しんい(60代,女)
(2)決着はなかなかつかぬ霾ぐもり
 よろしくお願い致します。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)何の解像度か、(2)何の決着か、が見えてきません。そうなると雰囲気だけの句になり、句として弱い。

(1)福寿草朝餉の湯気の立ちてをり  小口泰與(60代,男)
(2)山風の頬を凍らす散歩かな
(3)咳き込むや山風雨戸たたきをり

 よろしくご指導願います。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)湯気立つ(2)頬を凍らす、が当たり前ですね。具体的に書きましょう。

氷採るヒッチ国妃どうなんだん  裸時(30代,男)
 面白いですか?なんか変なのが出来ました(・・
ドクター小倉の診断と処方箋
 面白くないです。変ですね。私の句は読者に不親切と言われたことがありますが、その私が言いましょう。読者には優しく。


2007年1月21日

(1)コンビニに集まり来り甲虫  学(50代,男)
(2)山茶花の墜つる音して夜汽車かな
(3)雁渡る田一枚づつ暮れてゆく

 ご教示を。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)時代ですね。集まり、とあればたくさん来ているようですね。もしそうであっても1、2匹くらいのほうがリアルです。〈コンビニの看板にくる甲虫〉。
(2)(3)は中7がそれぞれ説明的です。

春立つやT・レックスののどぼとけ  玉白石(50代,男)
 立春には少し早いですが……。よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 ティラノサウルスのことでしょうか。喉仏があるのかどうかわかりませんが、ありそうですね。問題は季語が効いているかです。少し響いているようではあります。ひとつ候補を〈立春のT・レックスののどぼとけ〉。

「誤伐した」誤殺と言わずや冬の森  豊田ささお(70才以上,男)
 木守柿へのご教示ありがとうございました。食べる対象より外すとロマンが残りましょうか?推敲してみます。昨日雑木林で、アベマキを間伐したつもりがカラスザンショウを伐って(伐った後からとげがわかり)後悔しきりでした。
ドクター小倉の診断と処方箋
 説明がなければ意味不明の句になってしまいます。読者をもっともっと意識してください。

あぶり出すひと文字は「あ」千代の春  澄(50代,女)
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 なぜ「あ」なのか。初めの意味か。それでは面白くありませんね。

(1)年あらた水の如くに生きようぞ  小口泰與(60代,男)
(2)また一人来て若水を汲みてをり
(3)年玉やラジコンカーのにぎにぎし

 よろしくご指導願います。
ドクター小倉の診断と処方箋
(2)単純だけれど句材としては面白いですね。この人の特徴を上5に入れてみましょう。
(1)は観念のみ。
(3)にぎにぎしは不要です。

(1)氷壁や倫理バロックしらべへと  裸時(30代,男)
 取り合わせの場合は「や」が良いでしょうか?
(2)香海の生まれてこのかたはもちくわ
 香のコーナーの香海を使ってみました。
ドクター小倉の診断と処方箋
 「や」という切れ字は、そこで意味的にも切るもので、余韻を生み出す効果がありますね。それは意味があっての話で、感覚的言葉の組み合わせで使うのはなかなか難しい。
(1)倫理がわからない。わからない、とは意味がわからないのもありますが、感じることができないことも意味します。
(2)こちらはなんとか雰囲気は感じられる。香海とは「香気のただよう海」(e船団香りと言葉)だそうですね。

(1)岩壁を男降り来るクリスマス  まりあ(40代,女)
(2)女正月メール画面に薄日射す
 ありがとうございました。「お正月」を正面からつくるのは、どうも苦手でした。句跨りなどの破調に傾いてしまいがちですが、破調でなくつくってみました。宜しくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 基本は575で、時々破調にすると新鮮でいいですよ。
(1)ロッククライマーでしょうか。クリスマスに降りてくることが面白いですね。降誕祭でもあるけれど、それは考えずにおきましょう。
(2)これも悪くはないですね。ただメール画面に薄日が射すのがありそうでなさそうで。あまり実感がない。

十年日記枕辺に置き去年今年  タマ(女)
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 「日記買う」という季語があります。去年今年という季語とあまりにも近いので工夫が必要です。「十年日記を買った」ことだけで十分年末の雰囲気がでます。

枯枝の意思あるごとく空に伸ぶ  浮橋(60代,女)
 初めまして。俳句始めたばかりです。枯枝の一つとして同じ形はなくそれぞれ意思があるかのごとく枝を伸ばしている様子を表したかったのです。
ドクター小倉の診断と処方箋
 俳句は全てを言ってはいけない。作者は句材と季語である絵を作ります。その絵を見た読者が絵を再生し、その絵に感じるのです。この句の中で「意思あるごとく」はその読者が感じることです。


2007年1月20日

荒波の崖に砕けて野水仙  桐子(60代,男)
 先日、テレビのニュースでわがふるさとの海辺に咲く水仙が映し出されました。日本海側ですが、有名な越前ではありません。何故放映されたのか不思議です。
ドクター小倉の診断と処方箋
 よくある風景で、句にもありそうですね。やはりオリジナリティが欲しい。桐子さんだけの何かを発見をしてください。

春のひとみボクは生まれてみようかな  月虎
 こんにちわ、そろそろちょっと生まれてみたいです。関係ないけど、目がしろいだるまを買いました。よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 ひとみはだれのもので、ボクはだれなのでしょう。全体の雰囲気としてはなんとなくわかるのですが、雰囲気だけに終わっています。句としては弱い!

年を歴た鰐の剥製冬銀河  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 年を暦た、が不要。なぜならば、鰐の剥製と冬銀河を取り合わせ、その結果は読者のもの。答えまで書いては読者は興味をもってくれません。〈口開けた鰐の剥製冬銀河〉〈目を閉じた鰐の剥製冬銀河〉など、その鰐を読者に伝えてください。

(1)冬麗の髪は七三婚約す  とし(60代,男)
(2)除夜の鐘ガキ大将が先に逝き
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)はお祝い(2)は追悼の句ですね。思い出として残しておきましょう。

(1)雨けぶる遠目に赤き藪椿  悠(70才以上,女)
(2)山茶花や魚屋を出て小走りに
(3)竹爆ぜるたびに飛びまふとんどかな

 よろしくおねがいします。
ドクター小倉の診断と処方箋
(2)が少し面白いですね。山茶花と魚屋は意外な組み合わせですが、生活感が出ています。
(1)(3)は季語の説明になってしまっています。

(1)豆の苗寒の雨粒弾きけり  穂波
(2)枯れ芝に天から光るゴムボール
(3)虎落笛自衛隊機が五分毎
(4)鎌鼬自衛隊機が低く飛ぶ

 先日はご指導ありがとうございました。本日は4句投句いたします。実景なので、分かりやすくてもありきたりかもしれません。よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 ありきたりでもその場面をしっかり切り取れば良い句になります。
(3)(4)自衛隊機が飛ぶことを俳句にするのは良いのですが、季語を工夫しましょう。このままだとやや重く、冷たいですね。そのような気分で見られているのかもしれませんが、それでは単なる風刺的な句となってしまいます。俳句は詩ですから冬の花などが良いかもしれません。

(1)水仙の二輪一輪足され買う  えんや(男)
(2)退さること知らず前へと鴨の足
 厳しいご指導大変嬉しく思います。挑戦したくなります爺ですよ(笑)
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)水仙を買うときありそうなシーンです。こういう句をつくるのは難しい。なぜならば、そのままを書くといかにも説明的でぎこちない。ある程度事実を変えたりしてさりげない表現にしましょう。例えばその花屋の様子、店員の様子などと水仙を取り合わせたりしましょう。
(2)この句も説明的ですね。もっと鴨の具体的行動、周りの景色、と私を俳句にしましょう。

(1)いつまでも拗ねてる冬の老眼鏡  北野元玄(60代,男)
(2)イノベーションウサギの名前考える
 1/12の診断有り難うございました。私がテロリストを俳句の中で取り上げるようになったのは小倉さんの「急がねば」の影響だったと思います。「傾いて電車が止まる四日かな」に挑戦(のつも> り?)して、上2句を作ってみました。(2)は本歌とりです。よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)句意がよくわかりませんね。きっと北野さんの中には思うところがあるのでしょうけれど、私には伝わってきません。
(2)本歌取りの本がわかりませんが、たとえそうであってもその句は独立していなければなりません。この句の場合「イノベーション」が唐突で、しかもその内容が想像できないもどかしさがあります。やはり俳句は読者を意識すべきです。

窯出しや夕日容れて無音の炎かな  ねぎよしこ(70才以上,女)
 懐かしいお顔に又出会いました。相変わらず下手ですがよろしくお願いします。家の側にリタイヤしてべて手作業の陶芸家が木だけの窯を作りました。
ドクター小倉の診断と処方箋
 まずリズムが悪いですね。窯出しということは火はもう消えていますよね。それとも引き出しといって炎の中から取り出したものでしょうか。それならもっと激しいはずですね。あまりたくさんの思いを言わず、シンプルにしましょう。

冬木立ぴんくの鼻を象しゃぶる  遅足(60代,男)
 「みぞおちのうごかざるもの寒の鯉」の診断、ありがとうございます。「みぞおちの寒鯉の髭くすぐったい」と、してみました。象の句は見たままです。冬木立と寒木立など、季語を探していますが、いま一つです。よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 見たままかもしれませんが、私には「ぴんくの鼻」がわかりません。作者と読者のズレがあるようです。鯉の句は「くすぐったい」まで言う必要はないでしょう。

(1)酔い痴れて浪花の春の道将棋  千坂希妙(50代,男)
(2)なかなかに足を下ろさぬ地鶏かな
 的確なご指摘有り難うございます。ふたたびトライ、よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)もう少しまとめてみましょう。
(2)目の付け所が面白いのですが、このことをうまく俳句にしなければなりません。まずは「なかなかに」がいけない。季語と地鶏の歩く様を表現してはいかがでしょうか。例えば「冬暖か」+「鶏歩く」で十分ゆっくりと歩いている感が出ます。

山眠り子のいびき鳴る佛壇間  きなこ(50代,男)
 「山眠り」の季語と「いびき鳴る」が、付き過ぎでしょうか?よろしくご診断下さい。
ドクター小倉の診断と処方箋
 いびきだと対照がはっきりし過ぎているようです。「寝息」くらいのほうがよいかもしれません。「仏壇間」もいろんな場所にしてみましょう。


2007年1月19日

童顔の婿訪れし七日かな  玉白石(50代,男)
 ドクターの診断、勉強になります。よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 童顔、が説明的で面白くないですね。来られたときの様子を書くとか、手土産を書くとか。具体的に婿さんを象徴するような物で表して見ましょう。フィクションでもOKです。〈ハム提げて婿訪れる七日かな〉、ちょっと違いますか?ハムをいろんなものに書き換えてみてください。

(1)初みくじ相好くずし回し読み  竹雀(70才以上,男)
(2)去年今年相場の流れ流されて
 小倉先生、こんばんは。ご指導をお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)相好くずし、は初みくじに含まれていますね。回し読みするのも当たり前。つまり季語に近いことを言っていることになります。
(2)さて何の相場でしょうか。株なのか何かの取引なのか。それならばそう書くほうが良いでしょう。世間の物事に対する相場であればちょっと漠然とし過ぎています。

自販機で日本茶飲むや初御空  豊田ささお(70才以上,男)
 初というには、トウが立ちましたが、ヨク晴れた空を見ながら自販機のお茶になじむこの頃です。
ドクター小倉の診断と処方箋
 私は常にお茶を持っています。好きなお茶はジャワティ・サントリーウーロン茶・一番くらいですか。〈自販機で買う○○茶初御空〉くらいでいいのではないでしょうか。○○にはメーカーでもいいかもしれません。

(1)てっぺんの枝に移りて寒雀  仁(50代,男)
(2)老犬よ寒さまだまだつづくらしい
 小倉先生、いつも煩わしい拙句のご診断ありがとうございます。処方箋を見いだせないまま、またご指導をよろしくお願い致します。
ドクター小倉の診断と処方箋
 今日の句は普通の句ですね。もう少し仁さんには飛んで欲しいなあ。
(2)老犬と寒さが続くのが普通です。
(1)寒雀はさむい中丸くなってじっとしている雀ですから、それが枝のてっぺんに移ったのはちょっと変化があります。目立たない句で、句会ではこの微妙さは気付かれないかもしれませんね。

残り福ビタミン剤を方尿す  智弘(30代,男)
 宜しくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 放尿がイマイチですね。実感はあるのだけれど、実感だけという感じ。確かに残ったビタミンではありますが・・。

(1)宇宙人レンコンに目をお忘れよ  ポリ(50代,女)
(2)キーホルダーの小さなギター冬うらら
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)愉快な句。レンコンの穴を見て宇宙人を思ったのかな。
(2)良い句ですね。季語が効いていますね。冬ではありますが、ポカポカと暖かい感じがしていいです。「小さな」が必要か、他の形容も考えてみてください。キーホルダーは小さいものですから。

息白し夫婦のごとく応えけり  きなこ(50代,男)
 よろしくご診断下さい。
ドクター小倉の診断と処方箋
 夫婦のことくということは夫婦ではないということ。誰と誰の話なのか見えてきません。

マクドナルド成人式の終わりけり  智弘(30代,男)
 宜しくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 マクドナルドで成人式があったのかな。ちょっと状況がわかりません。

餅ん子のパックより生れ鏡割  桐子(60代,男)
 〈しぐるるや丹波の里の登り窯〉、小倉ドクターの「プロフィル」を拝見し、お住まいは立杭辺りに違いないと思い、景色を想像しながら詠んだ次第です。意図して「スキ」を作れるように早くなりたいものです。パック式の鏡餅、考えたものですね。パックを開けると、小さい餅がぞろぞろ。
ドクター小倉の診断と処方箋
 説明を聞けばわかるのですが、このままではちょっと考えなければならないですね。確かに面白いのですが、俳句にしてみるとさほど面白さが伝わりませんね。パックの鏡餅も当たり前になりつつあるようです。わが家では年末に餅を4臼搗きましたが、甥っ子達が手伝ってくれたので楽でした。


2007年1月18日

楪をもう五六枚欲しきかな  しげ(60代,男)
 ドクター小倉の新年自信作を是非披露してください。
ドクター小倉の診断と処方箋
 楪は子孫繁栄のシンボルから新年の飾りに使うようになったようですね。それをもう5,6枚欲しいとはちょっと欲張りなのか。あるいはホントに5,6枚欲しかったのか。どちらにしても惹かれるものがありませんでした。最近つくった句です。
  立ったまま少し眠って雪催

窯初めすは鶴を焼き雲を焼き  杏(50代,女)
ドクター小倉の診断と処方箋
 「す」がわかりませんでした。

浮き土にスパイクのあと薄氷  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 まずまずの句ですね。「薄氷」が同じ目線ではありますが、この場合はスパイクのあとをうまく際立たせているようです。この調子でお願いします。

(1)冬の雲沖へ流れて白き波  文の子(60代,男)
(2)露天湯に冬の海風山颪
(3)波よりも速き飛沫や冬の湾

 宜しくお願い致します。
ドクター小倉の診断と処方箋
 どの句も同じような言葉が並んでいますね。そうなると句は限定され、面白くありません。広がりのある句を意識してください。文の子さんの持ち物など、身近なものと遠くの海、山、空など。

三川を受けて重たき冬の淀  雀子(60代,男)
 いつも懇切なご指導有難うございます。淀川の三川合流地点の景です。よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 3つの川が合流して重いというのは普通ですね。冬の淀も重い。〈淀川に川流れ込み春たんぽぽ〉これが良い句とはいいませんが、少し具体的にしたのと、季語を南向きの土手のたんぽぽとして、目線を変えてみました。俳句は立体的にしましょう。

ぬくぬくと口を拭って懐手  浜っ子(60代,男)
 船団俳句は初体験です。よろしくお願いいたします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 「ぬくぬくと」がわかりにくいですね。状況が見えてきません。もう少し具体的状況をお願いします。

(1)岳友のみんな六十路や初登山  せいち(60代,男)
(2)初登山背には馴染みの古リュック
 小倉ドクター、今回もよろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
(2)背にリュックは当たり前で、馴染みと古、も重なっている。まずそのあたりが気になりますね。もっというと、馴染みも古も書かないほうがよい。そのリュックの特徴を具体的に言ってみることで、「馴染みのリュックなんだな」と思えばOK。「初登山」も私の歳時記や季寄せを見る限り傍題にありませんね。「初登り」「初山」とはあります。初めての登山という意味に取られる可能性もあるかな。

初空や陽射しを浴びてモグラの子  豊田ささお(70才以上,男)
 小倉ドクターお早うございます。「初空やまっすぐに飛ぶ紙飛行機」の推敲です。モグラが太陽の光で死ぬというのはウソらしいですね。
ドクター小倉の診断と処方箋
 モグラが日の光で死ぬか死なないかは別にして、陽を浴びているモグラの必然性がないですね。なぜモグラなのか?ほとんどの読者は疑問に思うでしょう。

先生が先生しかっとる晩夏  藤(10代,男)
 宜しくお願い致します。。。
ドクター小倉の診断と処方箋
 藤さんは作風が変わったかな。生徒からの目線が面白いですね。季語もピタリとはまっていていいです。先生の世界を垣間見て、「先生も大変だな」と思ったのかな。

(1)福笹を立掛けておくティータイム  慈永(50代,男)
(2)初戎赤信号に鯛の群れ
(3)福笹に隣る座席を選びけり

 今宮戎の残り福に行ってまいりました。ご指導いただけますようお願い申上げます。
ドクター小倉の診断と処方箋
(1)この句が良いかな。余った席にに福笹を丁寧に立てかけて、たくさんの人出でちょっと疲れて一息といった感じですね。
(2)鯛の群れはありがちな見立てです。

細雪赤いコートのかよい妻  きなこ(50代,男)
 よろしくお願いします。ちょっと「演歌調」でしょうか?
ドクター小倉の診断と処方箋
 確かに演歌の匂いはしますね。それよりも、細雪、コートがどちらも季語ですね。わざわざ2つの季語を出す必要はない。まずは1つの季語を大切にしましょう。


2007年1月17日

松納日頃の音の戻りくる  桐子(60代,男)
 松も過ぎ、家の中も外も正月らしい音が消え、又いつも通りの景色が戻ってきました。
ドクター小倉の診断と処方箋
 「松納」とは日常に戻ることで当たり前です。どんな日常の音が聞こえてくるか具体的に書きましょう。

泥落とす大根の肌眩しけり  浅葉洋(70才以上,男)
 素人百姓の自作の大根です。寸足らずの大きさですが、甘く昔の味がします。洗いたての肌が、お日様に当たって白く輝いているさまを詠みました。 宜しくお願い致します。
ドクター小倉の診断と処方箋
 確かに泥を洗い落としたときの大根は眩しいですね。しかしこれだとそのまま説明したことになります。その白さを知っている人も多いでしょうから、「大根を洗う」という行動だけで止めるくらいにして、後は読者に委ねましょう。

(1)立春の枝の先丸み帯びにけり  文の子(60代,男)
(2)立春や乳母車より顔見せて
(3)おくるみの赤子目を開け春立ちぬ

 宜しくお願い致します。
ドクター小倉の診断と処方箋
(2)この句がまずまず。季語が効いているかが問題ですね。季節的には良いのですが、もう少しわかりやすい「冬暖か」「春を待つ」などのようにするのも一案。

(1)歯の愛の色の息吐く桜桃忌  裸時(30代,男)
(2)湯豆腐の猫の競走もつれそう
 湯豆腐を食べてる途中で思いついたのでメモしました。
ドクター小倉の診断と処方箋
 ん〜ん・・・。わからない。意味がわからない俳句はたくさんあるけれど、そのわからなさが心地よくないとね。どちらかというと不安になってしまう。それは何か意味をもっているのかという不安感みたいなもの。どちらの句も「の」の多用が特に気になります。

変わりなき願いは一つ初詣  三郎(60代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 その変わりなき願いを具体的に書いてください。そうでないと読者は欲求不満になりそうです。

海鳴りの色無き舟屋初明り  煙(60代,男)
 はじめまして。診断をお願いして3ヶ月目の新米です。ご指導よろしくお願いします。
ドクター小倉の診断と処方箋
 「色無き」がわかるようでわからない。これは煙さんが感じられた結果で、その結果だけを言われても読者に伝わりません。舟屋をもう少し具体化する必要がある。例えば〈海鳴りの舟屋の二階初明り〉のように、作者の位置をはっきりさせる。或いは舟屋にある具体的なものを書くようにしましょう。俳句は具象が基本。


2007年1月16日

(1)初詣急勾配の磴つづく  しんい(60代,女)
(2)パソコンの駄々こねだすや凍つる夜
(3)冬枯れの山路でこぼこ九十九折

 (3)は、あまり代わり映えしませんが、「九十九折冬木の山に雲の影」を推敲した句です。よろしくお願い致します。
ドクター小倉の診断と処方箋
(3)確かにあまり変わっていません。でこぼこも九十九折も当たり前。
(2)パソコンが駄々をこねるのはさほど面白くありません。なぜならみんなそう感じるからです。
(1)どのように急勾配なのかが見えてこない。

凱歌上げ夜を買い占む冬の闇  北野元玄(60代,男)
 1/10のご診断、有り難うございました。「暗闇が占領している冬の夜」や「暗闇という名のテロが冬を背負う(しょう)」などを考えていましたが、結局上句のようになりました。「凱歌上げ」のフレーズは自分では、半分気に入って半分は反感を覚えております。小倉ドクターのご意見をお聞かせください。
ドクター小倉の診断と処方箋
 「凱歌上げ」に関しては私も同感で、読者によっては反感を買ってしまうでしょう。それよりも、句として重いですね。夜、があるのだから「闇」は必要ないように思います。それにしても北野さんはテロの句が多いですね。ここ数年のことを考えると、こういった句は必要以上に意味を持ってきます。

(1)寒暁や利根の流れは東方へ  小口泰與(60代,男)
(2)町の灯と競ひし冬の夕日かな
(3)歳晩や行き交ふ台車荷の溢れ
(4)忽然に咳き込む妻や月の冴
(5)蝋梅の香の遠のけり夕まずめ

 よろしくご指導願います。
ドクター小倉の診断と処方箋
(3)「荷の溢れ」まで言う必要はありません。年末ですから。
(4)季語と即きすぎるくらいですね。咳も月の冴えるのも季語ですからそのあたりも考える余地はありそう。「忽然」が説明的ですね。

寒月や「硫黄島からの手紙」みる  加護坊(70才以上,男)
ドクター小倉の診断と処方箋
 映画のタイトルのみの句となってしまいました。「寒月」が加護坊さんのお気持ちを表しているのかもしれませんが、加護坊さんのオリジナリティは出ておりません。

適当に生き元日をお待ちする  藤(10代,男)
 お久しぶりです。今後とも宜しくお願い致します!!
ドクター小倉の診断と処方箋
 本当にお久しぶり。こちらこそよろしくお願いします。
 少しおどけた感じがありますね。それにしても「適当に生き」が気になる。適当に生きていない人が言っているように感じました。願望かな。

(1)人日や玄米めしは冷凍庫  仁(50代,男)
(2)さおやー竿リヤカーが行くちゃんちゃんこ
 小倉先生、今日もよろしくご指導お願い致します。先日の「ルソー」の句ご指摘ありがとうございました。
ドクター小倉の診断と処方箋
 仁さんはいったいどのように俳句を作られているのか知りたいですね。
(1)季語が効いていない。(2)ちゃんちゃんこが唐突。以上、私の意見です。

山門に仁王立ちする冬木立  春雪(70才以上,男)
 小倉先生、こんばんは。
「作句意図」 近くの寺院に大きな銀杏の木があります。山門を前にして仁王立ちしてる様に見えました。
ドクター小倉の診断と処方箋
 意図を聞かなくてもよくわかりますよ。わかりすぎですよ。「仁王立ち」を言わずに感じさせる句にしなければなりません。