俳句クリニック 2007年3月後半分(ドクター:岡野泰輔)

「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。


ドクター岡野の診断
2007年3月31日

(1)透明な光の中の土筆かな  学(50代,男)
(2)糸ゆるむ木彫り人形春しぐれ
(3)山懐の繭から紡ぐ白い糸
(4)惜春や縺れる足で球を追ふ
(5)時雨来て天地の情の現るる
(6)漁火の横たふ闇の深さかな

 ご教示を。
ドクター岡野の診断と処方箋
 御句の多くは、少し気取った言葉の斡旋が対象をつかみ損ねているような気がしてなりません。(3)山懐、(4)惜春、(5)天地の情がそれです。その意味で(1)(2)が比較的、対象をつかんでいます。(2)はどんな人形ですか?操り人形?それを分からせる手もあるのでは。

春の月抜きつ抜かれつ塾帰り  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 子供の主観から書かれています。この場合そこにちよっと引っかかりました。もちろん、俳句の語り手(主体)は時空を越えて多様な人、ものになり得ますが。

春やいま巨木の下に寝転びぬ  豊田ささお(70才以上)
 「巨樹の会」先日脱会したばかりですが、ちょっと心が残ります。
ドクター岡野の診断と処方箋
 あらら、巨樹いいじゃないですか。私も巨樹大好きです。市街地では、邪魔とか、落ち葉がとかくだらない理由で切られることがあり、腹を立てています。さて、この句、大らかなことが取り柄です。春とか巨木とか亡羊としていていいのかもしれませんね。

早春のヤギさん近づき子等はしゃぐ  らん(70才以上,女)
 澄んだ空気静かなみちのくの動物園のヤギサンは人懐っこくて存分に楽しんだ孫たちでした。
ドクター岡野の診断と処方箋
 「早春の」で一回切ると意識してみてください。お孫さんとヤギの交歓を春の季節が祝福するように包んでいます。そのような気分を象徴する言葉として季語を探してみてください。

春休み部屋には猫とモーツワルト  うさぎ
 「駘蕩として部屋には猫とモーツワルト」の推敲ですが、(駘蕩をつかめぬままに日をかさね)春休みなってしまいそうです。イメージはあるのですが、的確な言葉になりません。お世話かけます。
ドクター岡野の診断と処方箋
 春休みでは駘蕩に役不足かもしれませんね。一語だけを探していると煮詰まりますよ。「部屋」は不要かも、猫とモーツァルトで「駘蕩」の八割ぐらいは満足しているかもしれません。前半はかなり自由です。もうひとつ、色々推敲していって、結果的に「駘蕩」と似ても似つかぬ句になっても、句として面白ければ、それはそれでよしです。

(1)樹を掘りし穴に入って花を見む  千坂希妙(50代,男)
(2)寝袋に幸と不幸のさくら散る
(3)鳥籠に花を入れるとしましょうか

 よろしく。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)ちょと異様で、中七以降の面白さが、上五でブレーキをかけられているような。過去に樹を掘ったということがいまいち腑に落ちてきません。
(2)幸と不幸が調子よすぎて嘘っぽいです。寝袋にさくら散るも普通じゃないので、面白そう。
(3)軽くて、この気分いいですね。語調の勝利です。

(1)ロシア語の辞書が古びて秋のゲル  北野元玄(60代,男)
(2)八月の馬乳酒があり椅子がある
 モンゴル第3弾です。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)いい感じですね。なんとなく分かる気がします。「秋のゲル」が安易かなと思いましたが、「ゲル」は使いたいですしね。「ゲル」の中の「ロシア語の辞書」がとても存在感あります。
(2)二つのものの並列が世界を作っていていいと思いますが、私には「馬乳酒」と「椅子」が逆でも面白いと思いました。まず「八月の椅子」があって、そして「馬乳酒」がある。八月の椅子があり馬乳酒がある/「八月の椅子」のほうが「八月の馬乳酒」より存在として面白いかなと思ったのです。5、5、7ですが。

ぴいかんて何のことやのチューリップ  藤井茂子(60代,女)
 この年になって初めてぴいかんの意味を友達から教えて貰いました。大阪弁と思ってましたらごく普通に使うとか・
ドクター岡野の診断と処方箋
 知らなかったのも俳句になるのですから、捨てたもんじゃないですね。不思議にチューリップらしいと思ってしまいました。

(1)馴初めは忘れたりけり更紗木瓜  うさぎ
(2)白壁の影絵揺れたり紫木蓮
 いつも、ご指導有難うございます。「木瓜の花長閑を浴びて開きたる」の推敲です。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)憶えているくせに!と突っ込みを入れておきますが、このようにとぼけてみせるのが、俳句のパターンにありそうな。(私見ですが)その意味では、俳句らしく、上手にできていると思います。更紗木瓜もそれらしいです。
(2)景がよく見えます。今回二句とも破綻なくまとまっていますが、新鮮さはないです。贅沢になっています。

唇の筋肉で飲む花御堂  裸時(30代,男)
 「バラバラの筋肉で飲む花御堂」を推敲してみました。バラバラのは猟奇的にも取 れるかなと後で思い唇の方がいいかなと→さっきコンビニに行ってきたのですがケバ イ女が「毎日のメールはうざい」と言っていました→それで俳句をつくると汚くなる からやめときました→
ドクター岡野の診断と処方箋
 バラバラで猟奇的とは思いませんが、こういう句の推敲って難しいですね。一語変わると、ガラガラと全体が変わります。その変わり方を楽しむという境地ですね。唇で飲むのも普通なんだけどなあ、と無責任につぶやいてみます。コメント後半、作り方次第ではないですか。


2007年3月30日

(1)一生って壺焼きは煮えている  汽白(40代,男)
(2)ドアあいてしばらく磯巾着の息
(3)ヤドカリや陰毛あらう波頭
(4)春の水おなじ靴でもちがうのね

 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(2)に反応できました。息も絶え絶え、瀕死の磯巾着、ポーチが濡れています。弛緩した叙法が好き。
(4)魅力あるも、コメントできず、(1)意外に乗れず、(3)逆選候補。

(1)どつこいしょカバン下ろして春休み  えんや(70才以上,男)
(2)牛舎より牛の色して恋の猫
(3)春の地震みな沖を見るバスの旅

 25日能登半島へ雪割草を見に行く途中、海浜道路のトイレ休憩時に地震に遭遇しました、津波の恐れがありバスはUターン、旅行は中止となりましたが大事に遭わず不幸中の幸いでした。
ドクター岡野の診断と処方箋
 危機一発でしたね。雪割草は残念ですが、運がよかったと。
(1)よくある景です。「どつこいしょ」も下ろすと他のものも見えてきます。
(2)面白いです。想像がふくらみます。
(3)この通りになったわけですね。中七以下実際この通りだとして、平明なよさがあります。

白木瓜と数字を押すと儲かるぞ  裸時(30代,男)
 川柳ではなく俳句なのです→
ドクター岡野の診断と処方箋
 川柳と俳句の線引きは私には関心外。両側から侵食しあっていけばいいのです。と言っておきながら、季語があれば俳句かというと、そうでもないような。裸時さんの句、季語を戸籍証明に使ってませんか?私は白木瓜のところ、これを押すことで生まれるある種の機知か、これを押すことの生理的感触を求めたいです。

(1)木蓮や暮れてひととき語り会ふ  学(50代,男)
(2)雑木林の風なりて冴え返る
(3)つちふるやチラシ手に受けカゴに入れ
(4)サボテンを枯らす女のカットかな
(5)父の日の来るたび父の近くなる
(6)母の日の来るたび母の遠くなる

 ご教示を。
ドクター岡野の診断と処方箋
 多作多捨を心がけていらっしゃると思いますが、ご自分で捨てるのも作句の内です。
 さて、(1)は暮れるまで誰と語り合ったかが知りたくなります。この語り方では。
(4)「カット」はテレビかなにかの映像ですか?映像にしなくてもいいような気がする。印象に残り、妙に怖いです。
(5(6)はご両親がご存命かどうかで読みが変わりますが、どちらにしても、他人である読者はあーだろうか?こーだろうか?と想像することになります。多様な読みに句が開かれている、というと聞こえがいいですが、この句の場合、自分に引き寄せて共感するにも、少しもどかしい。

(1)ビル風の渦巻く街の木の芽かな  小口泰與(60代,男)
(2)畦駆ける雉の鋭声や朝ぼらけ
 よろしくご指導願います。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)文字面を見ているとビルの屋上から並木の木の芽まで一挙にズームアップされたように読めました。縦書きで上から読み下すと余計その効果が。
(2)意味は分かるが、「鋭声」って言葉あるんですか?どう読むのですか?

(1)萩萌えて一糸乱れず鼓笛隊  しんい(女)
(2)待ちかねて一気にひらく桜かな
 宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)萩萌えてで春ですか?(私の季語集にはありませんでした)。あったとしても、萩にひっぱられてしまうなあ。鼓笛隊を一糸乱れずと表現すること自体が疑問です。鼓笛隊とはそのようなものですし、「一糸乱れず」そのものが使い古された比喩表現だからです。
(2)桜とは、まさにこのようなものなので、このことを俳句的にどんな言葉で、どう言うかがテーマです。例えば「待ちかねて」を捨ててしまうとか。

竹飯といえどもひとり春の昼  豊田ささお(70才以上,男)
 野趣あふれる竹飯を炊き上げてパンと割る時の爽快感は、仲間が居ればこそと、つくづく思いました。
ドクター岡野の診断と処方箋
 なるほど竹飯は大勢でわいわいやりたいですね。句としては、「いえどもひとり」が自問自答のきらいがあります。読者の想像にまかせたほうがよいときもあります。それにしても豊田さん、キャンプ、植樹、ネイチャーゲーム、イノシシ、とアウトドアライフすごいですね。

糸絡むマッチもいっぱい八重桜  裸時(30代,男)
 宝塚句会今日はラッキーでした→
ドクター岡野の診断と処方箋
 わからないなー、糸絡むで切れるのか、糸絡むマッチか?なら、糸絡むマッチとは?全体が像を結ばないので、個々の意味を問いたくなるのです。

通せんぼする子の笑顔春の暮れ  由利子(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 「通せんぼする子」は十分かわいいです。「笑顔」の別案があるかもしれません。「春の暮れ」もいいですが、ぜんぜん別のものと取り合わせる手もありそうです。

明日着る服決まらない春の宵  賀代子(70才以上)
 よろしくおねがいします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 逢う人、逢う場所によって着るものも違ってくる。それが決まっても肝心の心の中がとりとめなく、決まらない。
 「春の宵」の感じではあります。今日でなく明日がいいと思いました。


2007年3月29日

梅が香や暗闇坂の夕間暮れ  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 暗闇坂で夕間暮れだから、たしかに香りが引き立ってきました。「夕間暮れ」をもう一度ご自身の言葉で探られたらいかがかと。

春あらし 夜半にさくらを こじ開けり  清水 進(70才以上,男)
ドクター岡野の診断と処方箋
 強引ですね。俳味というのとは違う乱暴さを感じました。桜が蕾のまま散ってしまうことを心配してください。

鳩十羽飛び立つ羽音春の雷  雅(50代,男)
 いつもご指導ありがとうございます。一斉に飛び立つ鳩の羽音に驚きました。十羽にしたのは、語尾が破裂音でゴロも良いような気がしました。
ドクター岡野の診断と処方箋
 そうですね。三羽から言ってみました。この場合、羽音と春雷、音がぶつかるのがいいか?雷はほとんど聞こえてきません。

(1)草の庵少し残れる春の雪  さくら(女)
(2)走る子の厠の前の紅椿
 いつもご指導有難う御座います。駄句ばかりですみません。宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)中七以下、十二音も使ってしまって、残るのは雪だけです。もったいないな、と。きれいな文体なので、「草の庵」が変われば、またぜんぜん違ってきますが。
(2)景がよく見えます。厠がいいですね。

(1)地球儀の回転滑らかゴビの秋  北野元玄(60代,男)
(2)草原を勝気に跳んで痩せバッタ
 モンゴルの秋(八月末)の第二弾です。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)どこまでも遮るもののない大平原の日の移りを詠まれたと思います。わざわざ、地球儀にしたので、妙なニュアンスがついてしまいました。素直に地球の回転でよかったのでは?
(2)気になるのは、「勝気」「痩せ」にみられる作者の主観の投影です。主観の投影決してわるくないですが、現状は平凡。もしくは、このような言葉、徹底的に排して所謂、客観写生(この言葉自体、ずい分荒っぽい言葉だとは思いますが)にするかです。

春寒や動けば音のするジャケツ  濡衣(女)
ドクター岡野の診断と処方箋
 春寒のある感じ、身体が再び冬の硬さに戻ってしまったような、そんな感触を、音のするジャケツで的確に捉えられました。とてもいいと思います。

(1)花辛夷らーめん屋にいま灯が点り  鴻之助(50代,男)
(2)07年問題児われ春霞
 お世話になっています。(2)は「2007年問題」の当事者ということなのですが・・・、よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)この光景なんとなく惹かれます。「いま」に悩みましたが、やはりあった方がいいような気がしてきました。なめらかではないですが語順もこれがいいですね。
(2)春霞などとのん気なことを言ってる場合ではありません。今からでは遅いかもしれません。敵は数年前から準備しています。

母のいた部屋から見える夏みかん  れい(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 ただそれだけのことなのに、いいですね。ちょうどその部屋から見えるものが、他の何ものでもなく、果実、それも素朴な夏みかんであることが特によかったと思います。まったく普通の散文体から前後を切って、俳句として提出されると、途端に夏みかんが象徴詩の主役として輝き始める。俳句という定型詩の不思議です。


2007年3月28日

(1)月朧心優しい君のよう  遊運(70才以上,男)
(2)あの春の結婚しようが古希となり
 雪の「狐の嫁入り」がまぶしくて目を細めると光が筋になっていたのを思い、ここに辿り着いたのですが、俳句に仕上げるのは難しいです。俳句的な「語彙欠乏症」です。
ドクター岡野の診断と処方箋
 辿り着く前の光の筋あたりを俳句に仕上げてみませんか?(2)はよくわかる感慨で、それだけに平凡です。この話題だけでは難しく、何かと取り合わせることを考えてみてください。

春暑し獣の糞の太きこと  豊田ささお(70才以上,男)
 イノシシと人間。どうも 共生は難しそうです。今日太い糞発見、猟師にみせたら・・「こりゃぁ猪じぁないぞ」じゃ〜なんだ?クマか?まさかですねぇ・・
ドクター岡野の診断と処方箋
 「 春暑し」という季語の斡旋が成功しています。ほんとうは、イノシシとか熊とか言いたいところですが。それにしても、自然豊かなところにお住いですね。
(1)春場所や行司の影に美女おはす  平多(70才以上,男)
(2)盗塁を決めて春泥突き上げる
(3)瞑ればすでに春ゐる理髪店

 北陸にもどうやら本格的な春が訪れたようです。三句宜しくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)綺麗どころですね、テレビの映像とみました。あの映像はレンズのせいか独特です。なぜか美女に目がいきますよね。句会などでも皆がわかって、うなずくでしょう。
(2)春泥を突き上げるのは大変ですが、甲子園よりも、北陸の校庭を想像しました。
(3)これは感じがわかる。ほんとに気持ちよくてそのまま寝ちゃいそうです。「春ゐる」がよかったです。

紅梅や女子高生の屯して  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 違和感ありましたが、その違和感がいいといえばいいのかな。あってもおかしくない光景。怖いですね、しゃがんでいるのでしょうか。

(1)春浅しお国なまりに振り返る  学(50代,男)
(2)蝋梅の花のこぼれし二つ三つ
(3)早春の波頭の寄せる河口かな
(4)暖冬の路地に白猫現るる
(5)朝霧の日輪月の移るごと
(6)如月のむらさきけむる雑木山

 ご教示を。
ドクター岡野の診断と処方箋
 御句、今回はいずれも、きれいな景をきれいに詠まれていますが、俳句らしき鋳型にそれらしい言葉を流し込んだだけのような気がします。これだと量産はききますが、読者の頭は素通りしてゆくでしょう。(2)(3)(5)(6)にそれが顕著。(5)は秋になります。可能性あるのは(4)、でも暖冬がいけません。

モンゴルで彦星ただいま浮気中  北野元玄(60代,男)
 モンゴルの8月末は日本の11月に相当する気候です。雨は非常に少ないようです。今の時期に深秋気分の俳句も変ですが、我慢して読んでみてください。上句、モンゴルでをゴビの宙も考えたのですが。
ドクター岡野の診断と処方箋
 モンゴルの大草原で見る星空はさぞ壮大だろうと思うのですが、その線を敢えて外したのですね。読者は我がままなもので、そっちを期待してしまうのですね、つまり日本にいてははなかなか作れない俳句を。さて掲句ですが、問題は「浮気中」で、ここモンゴルでもデートしてますよ、ということでしょうが、七夕伝説は大陸の方が本家で、この辺が、この軽口の意外に効いていないところです。「モンゴルで」の「で」も気になりました。

(1)紙飛行機あっという間に花だより  穂波
(2)雪形や干したばかりのシャツに湯気
 前回のコメント、うれしく読ませていただきました。ありがとうございました。新しい句を2句お送りします。(2)は、中七下五は実体験ですが、「雪形」はこちらでは見られません。まず身近な季語で試しましたが、しっくりこなかったので、テレビでしか知らない「雪形」にしてしまいました。ご指導よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)紙飛行機と後半がいい距離―離れ具合です。「あっという間」が気になりました。
(2)なるほど、雪形、いい季語ですね。これまた気持ちいい世界です。季語に工夫されていることがよく分かります。

(1)よなぐもり水車はリズム刻みをり  しんい(女)
(2)草若葉一糸乱れず鼓笛隊
(3)寺庭の雪崩るるごとく雪柳

 宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)よなぐもりと水車が合わないような。水と砂。
(2)(3)は「一糸乱れず」「雪崩るるごとく」がいずれも不自然です。作りすぎました。

(1)特売のシャツからし色春夕焼  ポリ(50代,女)
(2)春昼やレースのかがりややほつれ
 いつもアドバイスをいただきありがとうございます。今回もよろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)からし色と春夕焼けがとてもきれいだと思いましたが、特売で艶消しです。ここでわざわざ特売という必要があるでしょうか?
(2)悪くないです。ゆっくりした時間を感じます。視線が細部に誘導されました。

(1)冴え返る行き所なし椀の中  うさぎ
 「冴え返るさざ波立ちし椀のなか」の推敲です。
(2)唇にふるる木肌や蜆汁  (3)手に包む木目の椀や寒の明け
 いつも的確なご指導ありがとうございます。宜しくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)行き所なしですと、なんのことかわかりません。前の方がよかったです。あたかも冴え返ることによって立ったかのような椀の中のさざ波、という繊細な把握が好きでした。「立ちし」と言いたくなかったのですが、なかなか難しいですね。
(2)では無理にここで木の椀を詠み込まなくてもいいのでは?蜆汁と唇の関係だけで作られては?「ふるる」がいいので。
(3)ここで椀の木肌とする手も。

(1)古美術店休業中に春の雪  まりあ(40代,女)
(2)春燈下面会票に子と書きぬ
(3)麻酔より春の昼へと父還る

 アドバイスありがとうございました。鳩の句は散歩中に見つけたお墓(辛夷の木の下に「鳩の墓」と書いてありました)です。本当に。もう一度考えます。1番改作しました。2、3番、父が骨折して人工関節に換える手術をしまして。よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 鳩の件は見た人でないとわからないですね。
(1)難しいですね、語順とかいじってみてください。
(2)(3)はご事情分からずとも、十分伝わりました。特に春の昼へ還る、いいですね。陽光が溢れている感じがあります。


2007年3月27日

朝吹きの即身仏が平行線  裸時(30代,男)
 寝る前に俳句の断片をメモしています→次の日に季語などを足して推敲しています。
ドクター岡野の診断と処方箋
 いいですね、私は、最近ぜんぜん俳句ができません。
 これは手掛かりがありませんでした。一句の中でどこか絵が描けるとそこから読んでいけるのですが。

(1)駅前ににょきにょきにょきと土筆生ふ  学(50代,男)
(2)蛤の料理浮名を流しけり
(3)次々に生まれつくづくつくづくし
(4)春の潮留まりて光なき月
(5)徹夜明け春靄深き町の中
(6)大都会の春の海なる老夫婦

 軍艦防波堤は戦後、軍艦を沈めて中に石や砂を埋めて防波堤の替りにしたもので、現在撤去されたものもあるが、残っているものもある。そこにいまだ海鼠が住んでいる。
ドクター岡野の診断と処方箋
 軍艦防波堤については失礼しました。勉強させていただきました。
(1)ほんとですか?いい駅前ですね、としか。
(2)句意をとりきれません。蛤の料理に特別の意味がありそうな。
(4)理屈言うようですが光なき月は見えない。
(5)なにかありそうな状況ですが、「町の中」が芸がない。
(6)ずい分概念的なことを言ってます。「大都会」などと、詩としては素朴すぎる言葉をわざわざもってきたのも大いに疑問です。

お揃いのトートバックや桜草  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 若いカップルなのかなあ、気取らない清新な感じ。悪くないです。句会で票を集めそう、褒めています。

(1)転てき手来て雲雀野へ切り替える  満山(60代,男)
(2)太陽の属国に棲み花の冷え
(3)菜種梅雨サンドバックが垂れている
(4)ケータイで露西亜語話す春の山
(5)南方に星座を被る大干潟

 いつも的確なアドバイスをありがとうございます。よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)は「転てき手」を単純に知りません。
(2)「太陽の属国」をうまく感受できませんでした。
 以上すいません。
(3)いいですね、サンドバックは垂れているものですが、それを念押しして言ったところに、俳句的喩が発生しています。
(4)春の山と露西亜語の取り合わせ魅力ありです。
(5)大景が気持ちいい。被るも成功。

(1)留守電に囀りの声友の声  しんい(女)
(2)トンネルを抜けし思考やひこばゆる
 いつも駄句ばかりでお恥ずかしい限りですが、お願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)こういう留守電だとうれしいですね。声が表記上も重なっているのが効果的。
(2)なるほど、とても微妙なことをいってますが、「ひこばゆる」が季感としても、心理としても、うまく働いているように思います。前半が所謂俳句の文体ではなく、概念といえば概念ですが、今の私には、この句の場合いいのではないかと思っています。

(1)行く春やペンギン空を見詰めゐし  文の子(60代,男)
(2)里の春脚太き馬駆け抜けし
(3)眼は寒を受けし完全武装とて
(4)余寒なほ空白多き掲示板

 都知事選は大勢立候補しましたが、掲示されているポスターは数枚です。時期的に は「花冷えや」と思いますが創作しました。宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)ペンギンの佇んでいる景がきれいです。ちょっとした感傷があります。
(2)「脚太き」がいかにもと言う感じでいいですね。「里の春」は安直でもうすこしなにかないですか?
(3)防寒?花粉症?花粉症なら眼鏡も必要です。
(4)前書きがないと成立しない。

うきふねに(宙船)のリたい様な春がきた  菊美(60代,女)
 お世話になります。選抜と共に春が来ましたね、高所恐怖症なんですが、どんな船かな?と思いつつ、入場行進見て楽しみました。
ドクター岡野の診断と処方箋
 すいません、入場行進見てませんでした。「宙船」をうきふねのルビ的に使うのでしょうか?宙船は造語ですか?すこし無理があると思います。飛行船とか熱気球だったら、気持ちよさそうですが、私も乗れません、怖くて。句としては「様な」がまずいと思います。

つつつつつつと春の音まだ微か  藤井茂子(60代,女)
ドクター岡野の診断と処方箋
 お!やりましたね。7.5.5のリズムも快いです。肝心の「つつ」のオノマトペが私にはいまいちでした。受け手によって個人差があると思います。色々な人に聞いてみてください。

(1)もこもこと土の隆起や揚雲雀  小口泰與(60代,男)
(2)雨の中小犬駆けるや春炬燵
(3)寄り添ひて佇み仰ぐ春茜

 よろしくご指導願います。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)もぐらとも思うけど、そうは書いてないので、ただの土の隆起だと思うことにします。想像するに天と地の対比ですね?その図式だけが目立つ結果となりました。それは前半の曖昧さにもよると思います。
(2)なかなかいい風景です。
(3)「寄り添ひて」が誰なのか分からないと句にもうひとつ入っていけません。佇みも要らないような。

(1)ドラキユラは嘘をつかない復活祭  与太郎(50代,男)
(2)ドラキユラは牙を見せないシクラメン
(3)ドラキユラは模倣を嫌ふ四月馬鹿

 前回の句より少しましかなと思ひますがどうでせう。宜しくお願ひします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 全部ドラキュラのキャラクター規定ですね。その規定がどれだけ新鮮か、驚くか、だと思います。その意味では(3)かなと。
(2)牙はつきものなのでたとえ否定してみせても、全句季語の前で切れていますが、その読みは置いといて、(1)ですとドラキュラとはそもそも嘘をつかない復活祭である、と読めます。ドラキュラが復活祭である、というのは惹かれます。となると、復活祭にも掛かるものとして、「嘘をつかない」はつまらない。以下Dはシクラメンである、Dは四月馬鹿である、とみていくと、四月馬鹿がやはり問題かな。

春昼や見られ癖つく保存木  豊田ささお(男)
 え〜春昼でぼ〜と固まっている今日このごろです。池辺のピンクの陽光桜は開花しましたが・・。
ドクター岡野の診断と処方箋
 春昼にしておくと、以下茫洋と何でもありになりそうな、実際この季語そうです。見られ癖か、見られ慣れか、どちらにしろあまりこなれた表現ではありませんね。保存木も本当は保存樹のほうが感じがいいのですが。

バラバラの筋肉で飲む花御堂  裸時(30代,男)
 「唇の筋肉で飲む異余寒」を推敲してみました→逆に飲めそうもないものを飲んでみようかと思いました→句のうえのことですが→
ドクター岡野の診断と処方箋
 「異余寒」は「伊予柑」にあらずで、とりあえず飲む対象としてイメージできなかったのですが、どんなに異様であろうとも、「花御堂」は色、雰囲気も含めてありありと頭の中で具象化できる。この差は大きいです。それにこの手の言葉は豊かなバックグランドをもっていますから、荒唐無稽な文脈の中でも、むしろその文脈に抗ってでも存在を主張する。詩的に痩せないのです。言えるのはここまででして、「バラバラの筋肉」がどうかとなると、、、、「バラバラ」が問題かな。


2007年3月26日

ワルツする春のメダカの五匹ほど  多弁(60代,男)
 桜も咲き、脳みそも足腰も弾力性に富んできてほしいのですが・・。
ドクター岡野の診断と処方箋
 困りました。素材は揃っているのに、詩的感興に乏しい、そういう感じなのです。五匹も具体的だけど、あまり効いていない。春のメダカが、私にはやはり辛いです。思い切って初夏の句にしちゃいませんか?

駅前の 辛夷一本 やっと咲き  清水 進(70才以上,男)
ドクター岡野の診断と処方箋
 「辛夷一本」が疑問です。一本というと木の幹を思ってしまうので。「やっと咲き」に待ち望んでいた春への喜びが表れていますが、ここは、ぐっとこらえて、「やっと」のような気持ちが露に出る言葉を捨ててしまって、「駅前の雑踏のなかに白い辛夷が咲き始めた」とさりげなく詠んでみてください。それでも十分うれしい気持ちは出るものです。

大盛の黄金チャーハン朧月  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 この手は季語との距離感だと思います。付くか?離れるか?朧月、いいような、そうでもないような、朧な距離です。黄金だからですか?私は、チャーハン、なぜか昼間を思います。
(1)フルートの独奏春を待ちもして  文の子(60代,男)
(2)京よりの強東風に耐へ蔓橋
(3)明星の発信梅の咲き初むる
(4)雪になる明治生まれを納骨し

 春分も過ぎてから冬に戻り申し訳ありません。宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)魅力あるものの、待ちもしてがわかりませんでした。
(3)発信という措辞が適当でないような。
(4)どうしても中村草田男の句を思い出してしまいます。

(1)紅白梅絵馬それぞれに願い事  悠(70才以上,女)
(2)梅東風や浜辺に拾う五色石
(3)一歩より揺れる吊り橋山笑う

ドクター岡野の診断と処方箋
(1)紅白それぞれは、俳句的にそれほど重要ではないかと。
(2)五色石は具体的な行事かなにかあるのですか?無知です、そこがわからない。
(3)わかりますが、文字通りにこの季語をつかうのは句が浅くなりますよ。

刺し傷に微熱続くや春薔薇  香珠
 「春薔薇(はるそうび)」という言い方で季語として成立しますか?
ドクター岡野の診断と処方箋
 成立するでしょう。歯切れ悪くてすいません。多分する。本当に痛いわけですね、それがいいかどうか?歯切れ悪いです。別の原因も考えられます。でもありがちか?歯切れ悪いです。

(1)春の宵ローアングルのライトアップ  せいち(60代,男)
(2)恋の危機ゆっさゆっさとミモザ揺れ
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)ローアングルで何がライトアップされているのか分からなければ、春の宵も活きてこないようです。
(2)面白いです。大変な危機のようですが、余裕も感じます。そこがいいですね。

(1)ぺデキュアの桜色なり道明寺  うさぎ
 確かに「サンダルで道明寺を買いに行く」の「サンダル+買いに行く」はくどいようです。動詞を省いてしまいましたら、こんな風になりました。
(2)春曉や月に重なる辻の屋根
(3)暁に半身委ねし春の月

 「暁に半分だけの春の月」から推敲しました。
(4)春の昼ごろんと夫のシルエット
 「春の宵ごろんと夫のシルエット」から推敲しました。独学、自己流、ドクターの診断だけが頼りの初心者ですので、コメントの、「切れ」とか「配合」とか「技法」とても難しいです。よろしくご指導ください。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)別の句になりましたが、これはこれで春の気分に満ち溢れています。一句が変化をして、最初からは思ってもみなかった世界に連れて行ってくれることがあります。
(2)なんとなく魅力あります。(3)はむしろ前と変わっていません。(2)は「春暁や」ではっきり切れて読者はまず春暁の光を想像でき、以下の月と屋根の微妙な風景とイメージが重層的になり、句に奥行きが生まれています。それに比べて(3)は暁に月が半分見えたということしか伝わってこないのですね。
(4)春の昼に夫のごろ寝はきわめて普通、つまり何も想像力を刺激されない、春の宵は季語集をご覧になってわかるとおり、艶めいた、独特の雰囲気をもつもの、との共通理解があります。そこで「春の宵」と「ごろ寝の夫」との組み合わせ―配合はユーモラスで私の想像力を刺激しました。前がよかったんですよ、面白い句を作ってるじゃありませんか。

春場所や贔屓の顔が見え隠れ  紫雲(70才以上,男)
 初心者です・・・宜しく。
ドクター岡野の診断と処方箋
 この贔屓は力士のことですか?それとも谷町のことでしょうか?そこがわかりませんでした。まあ「見え隠れ」なので力士ではなさそう。ひょっとして、綺麗所?とにかく肝心なそこがわからないので、悩ましいです。

(1)独り居の鰤の煮付けの皿洗う  えんや(70才以上)
(2)春めける市長賞てふ椀の朱
 いつもご指導有難う御座います。2句宜しくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)皿を洗うにしてはいささか疎ましい「鰤の煮付け」という素材がいいですね。人間が器に盛ってものを食べ、洗って、また食べる、その繰り返しを思いました。もちろん独り居とすればなおさらです。
(2)いいと思います。「春めける」で気持ちが出ているのですね。「てふ」でちょっとした自嘲を感じましたが、読みすぎでしょうか?

春霞女神の名の豪華船  藤井茂子(60代,女)
 添削何時も有り難う御座います。今朝6時にぼんやりとした沖合から、沢山の灯を付けた船がするするやってきました。望遠鏡で確かめましたらどうやら豪華客船のようでした。
ドクター岡野の診断と処方箋
 いいところにお住まいですね、羨ましい。私は豪華船より豪華客船のほうが感じます。客船という響きが好きです。そこで「春霞女神の名もつ豪華客船」としてみました。どうかな?(汗)。ところでその女神とは誰?

(1)風に揺れ水にたわみし柳の芽  小口泰與(60代,男)
(2)毛鉤追ふ雪代山女あさぼらけ
 よろしくご指導願います。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)きれいな芽柳の写生で語調も流麗ですが、もうひとつ新鮮さが。
(2)前に似たようなのありませんでしたか?雪代山女までは釣り人ならではのシズル感にあふれていますが、「あさぼらけ」が取ってつけたよう。


2007年3月25日

ビル風の路地舞うチラシ啄木忌  彩貴(40代,女)
 前回の「鉄幹に〜」の句は庭の梅の古木を見て作ったのですが、句会でも「解らん」と言われました。説明しなければ解らないのはダメですね。
ドクター岡野の診断と処方箋
 こちらに知識がありませんでした。ビル風と啄木忌の取り合わせはなかなかだと思います。ビル風で路地というのが私には、ちょっとそぐわない感じがします。

春の日の未熟児を抱く相撲取  慈英(50代,男)
 ご指導宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
 実際にご覧になった景だと思われますが、うまく受け取れていません。「未熟児」に情報が多すぎて一句の中でうまく納まってくれないのです。

(1)名残雪陽差しがつくる五線譜に  遊雲(70才以上,男)
(2)春分や今日も変わらず生きている
 今日は彼岸のお中日。一転暖かくなりましたが、このところの寒さに「毎年よ・・」が頭から離れません。そこへ雪です。そこで「この冬の最後の雪か彼岸入る」が浮かびました。が、冬と雪と彼岸と三つも季語が。で、「この雪は名残の雪か墓掃除」でもまだ二つ。何とか一つにしたのが(1)の句ですが。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)「 陽差しがつくる五線譜」がわかったようでわかりません。「名残雪」のせいか一昔前の雰囲気だけのフォークソングのようにも。お彼岸を意識すると難しいかも。
(2)正直なご感想かもしれませんが、季語が動くというか、季も動きますね。上五まで全部口語調でいったらいかがでしょう。

菜の花や上親子丼二千円  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 菜の花と親子丼は悪くないです。二千円がどうか?その親子丼食べてないのでなんとも言えません。

城跡と製茶の街に来てひとり  八女(30代,女)
 製茶なんていう季語絶対使わないですよね〜!!
ドクター岡野の診断と処方箋
 製茶とはねえ、と思いましたが、たしかに季語集に載ってました。この句「城跡」と 「来てひとり」の中に挟まって「製茶」がいささかの異化効果を発揮しています。それでも「来てひとり」がナルシスティック。

タンポポがNASAを占拠する日がきたら  イワノフ(60代,女)
 俳句病です。診断をお願いいたします。ドクター、原因はなんなのでしょうか。
ドクター岡野の診断と処方箋
 今はその日を徹底的に幻視しつつ、体を鍛えておいてください。NASAの前に日本が西洋タンポポに占拠されています。俳句病は運動不足が原因かと、有酸素運動をおすすめします。

胸を張るナースは紺のカーディガン  雀子(60代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 カーディガンは冬となっています。それでもきりりとした看護婦さんが目に浮かび、いいと思います。見たままなのでしょうが、紺色が効いてますね。それにしてもカーディガンの季語は今や、疑問ですね。秋でも、春でも、夏でさえ、カーディガンはなにげなくお洒落です。

(1)冴え返る厨の隅にねぎ白し  千鶴子(60代,女)
(2)着信音高く響きて風光る
 どうぞよろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)いかにも冴え返るの景ですが、ねぎ白しがあまりにも冬なので、やはり気になります。
(2)「風光る」から何やら浮き立つ気分を想像するのですが、それが何か、すこし匂わせてもいいような。

(1)たんぽぽや鹿の子斑の浅間山  小口泰與(60代,男)
(2)春の土割りをり青芽尖りけり
 よろしくご指導願います。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)鹿の子斑がやはり問題で、これが斑雪なのですね?たんぽぽか斑雪どちらかにしぼるべきでは?
(2)青芽は季語ではないようですが、なんとなく重複を感じます。をり、けりの脚韻のリズムは面白いです。

春昼のシーレの花粉狂女追ふ  きなこ(50代,男)
 エゴン・シーレが好きです。よろしくご診断下さい。
ドクター岡野の診断と処方箋
 シーレはかなり癖あります。春昼との取り合わせには大いに脈ありです。ただ、狂女とか出さないほうが、余韻、余情は出るかと。シーレに最大限働いてもらうのです。

(1)白く咲く花に残れる寒さかな  浅葉洋(70才以上,男)
(2)昼やっと夜に追いつき杏咲く
 適切なご高評いつも感謝しています。彼岸前の寒さの中、蒼空に白杏の花が映えております。そして明日は漸く中日です。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)この場合、白杏といわないと、わからないと思いますが。
(2)こちらは、待ちかねた季節への喜びがよく表れています。「追いつく」がいいですね。


2007年3月24日

(1)涅槃西風一句生まるる寺巡り  しんい(女)
(2)畑作り一坪なれど豆の花
 宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)その一句をどうぞここへ、と言ってみたくなりました(笑い)。涅槃西風と寺は近いですが、まだしも寺の名前が分かるとかすると。
(2)「なれど」と言いたいお気持ちはわかります。ただこの家庭菜園、又は、貸し菜園は一般化していて、「なれど」の感慨は、読者、既に先刻ご承知です。ですから、なかなか一句の中心にはなれないのですね。その感慨に「豆の花」はよく似合っているのですが。

(1)走り雨ぶっきら棒の白タンポポ  北野元玄(60代,男)
(2)春分の夕焼けそうか今6時
 小生、上のような季題俳句はあまり得意ではありませんが・・。よろしくご診断をお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)この句の“つかみ”は多分「ぶっきら棒」でしょう。それが効果的かどうかというと少し疑問です。タンポポのキャラクターにそれは既に織り込み済みで、そこに俳句的喩の新鮮さはない。擬人化の難しいところです。
(2)「そうか今6時」はとぼけていて面白いと思いますが、「春分」なので理を感じてしまいます。そうか、しかしこの理がないと「そうか今6時」が活きない。という訳で私の鑑賞は同同巡りを始めました。前半が後半の説明役にすぎるということでしょうか。

(1)春雷や三代にして卸成る  小口泰與(60代,男)
(2)火の山も斑雪なりけり辛夷咲く
 よろしくご指導願います。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)すいません「御成る」がわかりません。「御成り」ではないんですよね?
(2)「火の山」と「斑雪」の位置関係が曖昧です。「斑雪」は作者と近距離を思わせます。「火の山」を歩いているのか?「火の山」を眺めているのか?

春の旅眼鏡のままに妻眠る  玉白石(50代,男)
 よくある光景ではありますが……。よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 よろしいのではないでしょうか。春の旅がとても効いている。奥様への温かい眼差しを感じます。妻ものは顰蹙を買いがちですが、このように平明に詠まれたら文句ありません。なかなかこうはいかない。

(1)永き日や垣根を越えし木瓜の影  うさぎ
(2)駘蕩として部屋には猫とモーツワルト
(3)木瓜の花長閑を浴びて開きたる

 インディアナは三寒四温に一喜一憂の日々です。(1)は「永き日や石に座る木瓜の影」の推敲です。宜しくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)いいですね。刻々と進行していく季節への喜びが受け取れます。
(2)素材よし、ですが、この素材で「駘蕩」と言わずに「駘蕩」を表現してください。
(3)これも同様、ここでは「長閑」を使用禁止にしておきたいです。「駘蕩」も「長閑」もある雰囲気、情趣が感じられてとてもいい言葉ですが、まさにその情趣こそ、俳句で表現したいことなので、意識的に使わないと安易に流れます。「駘蕩」も「長閑」も、その言葉そのものを素材化するぐらいのつもりで作らないと。 その意味では(3)にその意識は見えるのですが。

(1)蝌蚪生れて子らの眼と出会うなり  豊田ささお(70才以上,男)
 「ベレッタン」は造語でしたか・・なるほど腑に落ちました。いま、ニホンアカガエルどんどん孵化しています。
(2)テロ止まず春宵一刻イラクの子
 イラク開戦記念日でした。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)蝌蚪の視線で見ているのが面白いです。
(2)春宵がイラクの風土に無理なのでは?行ったことありませんが。そもそも春宵一刻の意味がとりきれませんでした。埃っぽい戦場と対比させたのでしょうか?このような題材は、よほど噛み砕いた上でないと詩の言葉に定着しないでしょう。挑戦は買います。

(1)鳩眠る上花辛夷ひらきゆく  まりあ(40代,女)
(2)古美術の店の休業春の雪
(3)校門のざわめき離れ卒業す

 ありがとうございました。我が家に犬はいないのですが、見かけたもので。3句よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)「上」と位置関係をことわる必要あるでしょうか?結果、鳩の居場所が気になります。眠る鳩とひらく花辛夷で十分きれいな句になります。
(2)これもなかなかよい景ですね。上五、中七を整理されるとぐっとよくなると思います。例えば、古美術店とするとかですね。
(3)よろしいのでは。

(1)雲一朶朝間山頂春兆す  小口泰與(60代,男)
(2)山風に負けず沸きゐる雲雀かな
 よろしくご指導願います。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)好みもありますが、「一朶」のようないいかたが「詩」を取り逃がしているような気がします。漢語表現は俳句を引き締めて、大いに有効ではあるのですが、一度出てきた漢語をひらかなに解いてみることをお勧めします。
(2)「負けず」を言わないほうが雲雀が活きてきます。

(1)液晶の行き先赤羽春夕焼  ポリ(50代,女)
(2)赤青のカスタネットと入学す
 ご指導ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)カーナビでしょうか?携帯電話ほか液晶を使った機器は多種あるので乱暴です。
(2)シンプルでいいです。赤青のカスタネットはよく憶えています。今でもそうでしょうか。

(1)光る春くろしおはるか大和路も  菊美(60代,女)
 宜しくおねがいします。ネンテン先生は車中で良く作句されるとか?天王寺ターミナルで電車みて旅に出たくなりました。思うだけですが。
(2)髪を梳く母の声する椿咲く
 いかがでしょうか?
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)言葉でも旅ができますよ。この句は場所がはっきりしません。黒潮と大和路と、特に「大和路も」の「も」が句を不安定にしました。
(2)回想のお母様ですか?前提として俳句は今、この現在のことを描いていることになっています。工夫して回想のお母様にしてください。

引き潮の穴ぼこあまた山笑う  藤井茂子(60代,女)
ドクター岡野の診断と処方箋
 海岸ですよね、どうしても「山笑う」にしたいですか?取ってつけたようです。穴ぼこあまたは面白いですが。


2007年3月23日

木の幹に聴診器当て春の昼  豊田ささお(男)
 ネイチャーゲームの「木の鼓動」そのままですが、他人様が見ると異様かなと・・・。
ドクター岡野の診断と処方箋
 ユーモアを狙っているのだとしたら、それほどでもないです。春の昼でのんびりした感じがありますが、むしろ、そのままですが森のきれいな緑を感じさせたほうがよいのでは?

白梅や大腿骨にバーコード  智弘(30代,男)
 宜しくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 これはしばらく読みきれませんでした。大腿骨でつまずきあらぬ方向に往きました。なんだ、売っている白梅の苗かなんかですね?大腿骨は気が利いてます。やはり「や」で一度切ったほうがいいんだろうなあ。

(1)ひな祭り新しき箸並びをり  豊純(70才以上)
(2)目ざむれば今日一日の暖かや
(3)襟元のすっきりとした立ちひいな
(4)雪花やおつる窓辺の日曜日
(5)白きもの暖冬一転寒き朝

 先生始めまして。駄句を五句送ります。辛口のご診断宜しくお願い致します。お返事楽しみにお待ちしております、宜しく。
ドクター岡野の診断と処方箋
 はじめまして。
(1)が物だけが見えて、気持ちは背後に、ということでいいと思います。
(2)一日の終わりの感慨ではないでしょうか。
(3)中七は説明、違う言葉で襟元のすっきり感を出してください。
(4)「おつる」が要らない。
(5)ほとんどニュース原稿です。
 この句の内容全部言うには、俳句は向いてないです。どこか一箇所切り取りましょう。 (1)のように。

唇の筋肉で飲む異余寒  裸時(30代,男)
 体の部分シリーズです。よろしくお願いしますm(_ _)m
ドクター岡野の診断と処方箋
 因果を全部解き、バラバラにしました。こういう手法は10行も20行も費やせる現代詩なら、トータルであるイメージとか世界観を伝えられますが、俳句では、そこまでたどり着けないでしょう。「異余寒」も私は違和感があります。全体が過激な中に、きちんと敢えて古典的な季語を取り合わせるというほうが、効果的なのではないでしょうか。

(1)道明寺首筋寒しワンピース  うさぎ(女)
(2)冴え返るさざ波立ちし椀のなか
 的確な診断有難うございます。こちらは、寒の戻りとなりました。道明寺に寒いは、矛盾でしょうか?さざ波は大げさでしょうか? 判らないことばかりです。宜しくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)いいと思います。寒の戻りの季節感がよくでていると思います。道明寺とワンピースの取り合わせ、いいじゃないですか。
(2)大げさではないですよ。「立ちし」と言わないで、できるといいのですが。

ドラキュラの牙生え変わる春分の日  北野元玄(60代,男)
 暑さ寒さも彼岸までと言います・・。草田男の「萬緑」を思い出しますので、オリジナリティーが低いのかもわかりませんが。
ドクター岡野の診断と処方箋
 そんなことはないですよ。「春分の日」がかったるいと思います。もっといい言葉がありそうな。ドラキュラなのでかなり広範囲です。

(1)一坪の菜園(さえん)彩る豆の花  しんい(女)
(2)連絡線そぼ降る島の海おぼろ
 宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)「彩る」は省略して、その分「豆の花」を具体的にしましょう、色とか。
(2)島への連絡船、そぼ降る雨と島、おぼろな海、これだけの材料がばらばらに置かれていて、俳句としてひとつの世界を作るまでになっていません。材料を減らされたらいかがでしょう。そぼ降る島は言葉としておかしいです。

(1)海老天を夕餉にと買う春の宵  由利子(70才以上)
(2)猫の子に呼ばれて「ニャオ」と春の風
 ご教示をよろしくおねがいします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)ある春の宵に海老天、買いました、との日記です。たおやかな春の宵と海老天とは落差がありすぎます。ある意味すごい取り合わせです。とりあえず春の宵に似合う世界か、海老天に似合う季感-季語を探してください。
(2)猫の子が季語ですから、「春の風」は要らないですね。「ニャオ」はすごいです。やってみてください。

(1)ぼんやりと昔を思う春の宵  賀代子(70才以上)
(2)黒い空月が見ている春の宵
 季が重なっていると思いますが、よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)春の宵はたしかにこのようなことありますね。ぼんやりと思うことを俳句で表現することは至難の技です。動いていく気持ちを、具体的な人か物に託してみてください。
(2)季重なりは気になりません。まず春の宵に対して「黒い空」が異様ですし、「月が見ている」も何かありそう。その異様で何かありそうな感じが一句の中で解決される必要はないのですがあるまとまったイメージとして、読者に提供する必要があります。この句では空と月と宵が断片的でまとまったイメージとして受け取れません。


2007年3月22日

(1)ブロッコリーかために茹でて春の宵  れい(70才以上)
(2)ブランコの妙に似合うは哀しかり
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)春の宵のまだ明るさの残っている浮き立つような気分が伝わってきます。この季語、ブロッコリーと相性がいいですね。
(2)この自嘲もいいなあ。この「似合う-哀し」が絶妙です。

注文はカフェオーレです山笑う  藤井茂子(60代,女)
 驚くほど大きなカップになみなみと注がれたカフェオーレに思わず出来ました。
ドクター岡野の診断と処方箋
 面白い俳句的「間」はあります。

(1)啓蟄や醜草靴に纏ひつき  小口泰與(60代,男)
(2)春落葉急転回のチワワかな
(3)掌すれば川の冷気の春山女

 よろしくご指導願います。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)醜草がいただけません。わざわざこの字をつかった意図がわかりません。
(3)よろしいのではないでしょうか。中七に工夫の余地ありでしょう。

春場所や通天閣は酔っている  多弁(60代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 句が大きいというか、大雑把すぎませんか?酔っているのは相撲ではないと思うし、そうなるとただの酔っ払い!通天閣危ないですよ。大づくりでも、焦点のあて方でとんでもない句になります。
  『台風や地球の水を繰り返し』和田悟朗

「夢桜」山を削って植えまする  豊田ささお(70才以上,男)
 NPO法人「讃岐夢桜」大阪の県人会らがたちあげて、1000本植えます・・どうも日本人はサクラに弱いです。
ドクター岡野の診断と処方箋
 ご苦労様です。カギかっこに入れているように「夢桜」はこのNPO法人のネーミングですよね。全国区になっていない名称は鑑賞しにくいです。植えまする、とすこしおどけているのは、この運動への距離、小さな違和をみましたが?私も山を削ってどうするんだ!と思いましたが。

(1)蒼空は白だけでよし辛夷咲く  浅葉洋(70才以上,男)
(2)天心を春風に乗り目指す鳶
 何時もご高評感謝しています。風が春霞を吹き払い、青空に辛夷が映え、遥か上空には鳶が舞っています。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)語呂が悪いです。このまんまの材料でも語順を入れ替え、音読してみてください。
(2)辛夷いいですね。とくに詠まれているような状況では、「だけでよし」と断定する気持ちよくわかります。悪くないのですが、このような詠みかた、よく聞くような気がします。

(1)式辞祝辞答辞に至り春時雨  鴻之助(50代,男)
(2)積み込まるるごと列つくり卒業生
 (1)は、答辞で、涙する生徒保護者を春時雨としたのですが、季語をこんな比喩に使っていいものかどうか。(2)は、生徒たちは、訓練されてきれいに列を作っているのですが、ちょっと作りすぎの感じがしたもので。2句よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)普通に読めば、時間経過で、ちょうどそのころになって、時雨が来た、と読めます。悪い句じゃない。鴻之助さんご説明のようには読めないし、読めたとしてもいい句じゃない。
(2)いいと思います。「積み込まるるごと」ですべてわかります。同感です。

穴ぼこの細き畦道まだら雪  加護坊(70才以上,男)
 添削をお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 まず、太い畦道はあまりないので「細き」は不要かと。次に「穴ぼこの畦道」、穴ぼこ状の畦道は想像つかないので、畦道に穴があいている状態を想像します。そこにまだら雪というのが、絵になって現れない。「穴ぼこ」の責任です。

(1)安曇野のレンズ工場春の雪  満山(60代,男)
(2)春の雪甲斐に動かぬ野面石
 蛍烏賊に対する「通俗を料理しきれてない」とのアドバイス、大変参考になりました。ありがとうございました。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)なんでもないが、いいと思います。「安曇野」の地名のもつ力、「レンズ」の質感、それぞれが「春の雪」によく働いています。名詞、大事ですね。
(2)野面石とは野面積のことか?ほとんど(1)と同じ構造なのに、こちらは既視感がある。「甲斐」のせいか、「動かぬ〜」と言い方か?こちらのほうが、より、いわゆる俳句らしい外観をまとってるせいか?

春愁やマニキュアの色変えてみん  千鶴子(60代,女)
 どうぞよろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 いわゆる、つき過ぎの典型では?春愁を変えてみましょう。マニキュアからなるべく距離をとって。

(1)サンダルで道明寺を買いに行く  うさぎ(女)
(2)封印を解きし京の花菜漬け
(3)春の星転がる冷凍蜆かな

 推敲しました。サンダルでうきうきしたフットワークを伝えたかったのですが?異国にて、蜆は冷凍物です。
ドクター岡野の診断と処方箋
 「誘い」という動詞がひとつ減ってすっきりしました。こうなってみると、俄かに「買いに行く」が冗長に見えてくるから不思議、「行く」を省略してしまっては?こうなると全体の構成から考えなければなりませんね、すいません。
 うさぎさんの句は全て異郷の地での作とみると、日本の季節を体現する食材への弾む気持ちがよくわかります。この文字通りの海外詠だけでまとめられると、ひとつのスタイルができると思います。「封印を解きし」とか「転がる」にその気持ちでています。

寺の屋根から心へと薔薇の棚  澄(50代,女)
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 大胆な展開でいいと思います。ただ「心」がなあ、、と思います。「心」にしてしまうと何でもありなので。薔薇の棚はそこに実在している作者へと動いているのではないですか?

胴貸したごっそり乱れる猫柳  裸時(30代,男)
 推敲しました→
ドクター岡野の診断と処方箋
 「 胴貸した」-「どうかした?」の多義性が見えてきました。猫柳はセクシーです。

(1)暁に半分だけの春の月  うさぎ(女)
(2)群青の帳にのこる春の月
(3)春の宵ごろんと夫のシルエット

 暁に残る半月は少し悲しい感じでした。それとは対象に、春の日永はほんのりします。 景色の説明だけでしょうか?
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)(2)とも、とてもきれいな景色ですね。どちらもこの後に七七つけて短歌として詠いたいくらいです。俳句はここで終わってしまうので、どうしても美しい扉だけという気がしてしまうのです。そのため「切れと」か「配合」とか技法のことが色々言われるのだと思います。
(3)これは俳句的といえば俳句的。季語の情緒をまぜっかえしています。


2007年3月21日

春昼や、ここにしかない莚敷き  豊田ささお(70才以上,男)
 たしかに俳句は、昇華するまでにほんとは時間がかかるものなんでしょうね・・・。ありがとうございました。
ドクター岡野の診断と処方箋
 「ここにしかない」の強調が私にはそれほど伝わってきませんでした。

(1)野火たてば反故同然の蔵書かな  学(50代,男)
(2)朝霧やいづくゆくらむ舟灯り
(3)紅梅の軽々ともの言ひにけり
(4)地球儀を回せば咲ふ糸ざくら

 ご教示を。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)「ば」でつながっているので野火と蔵書の関係が分かりたいです。気になるのですが。
(3)紅梅にしてはめずらしい言い方、そこが気になります。
(4)とても面白いと思います。糸ざくらも回るようです。「咲ふ」がわかりません。

妻の留守目刺五匹に茶碗酒  春雪(70才以上,男)
 先生、ご指導下さい。
ドクター岡野の診断と処方箋
 男ひとりの気ままというところでしょうか。「読み」が参加する空白がないような気がします。ですから、余韻-余情も生まれないのです。「茶碗酒」の俗っぽさはこの場合足を引っ張っています。

チューリップ蝶々結びは苦手なの  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 面白いです。句会で一票入れてしまうかもしれません。切れを入れる入れないで色々読めそうです。

(1)海市ただ座って妻の毛づくろい  汽白(40代,男)
(2)ぬかるみは水のかたどる朧の夜
(3)おぼろ夜のぬかるみに知るひとの色

 こんばんは。よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 こんばんわ。
(1)切れをなくされたのですね。毛づくろいの猫のような妻と、その周辺まで海市効果が及ぶことになりました。より茫漠として、俳句としてどうかはわかりませんが、より不思議感は強まったと思います。
(2)はまともなわりに、「水のかたどる」がわからない。
(3)これも思わせぶりで、ひとの色が捉えきれませんでした。

(1)春日や古きすべてを捨てられず  由利子(70才以上)
(2)啓蟄を待たず小虫のとび来る
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)春という季節のある感じを捉えていると思います。季語は一考を要します。
(2)これは概念的です。

(1)理由なく家出てみたくなる春の宵  れい(70才以上)
(2)花すみれ分相応という言葉
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)春の宵はとにかくこのような危ない気分に誘われます。少し春の宵の解説になっていますが「理由なく」がそうさせているかもしれません。
(2)すみれもまさにこのような花として詠まれてきました。『菫程な小さき人に生れたし』漱石。御句は誰もが了解できる、花すみれの世界です。花すみれは魅力ある花ですから、全く違う世界に置いて、新鮮な句作りに挑戦されたらいかがでしょう。

(1)春の宵今夜のおかずなんにしょ  賀代子(70才以上)
(2)春の宵予報外れて雨が降る
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 両句とも、春の宵がかわいそうです。「今夜の」とか「外れて」とか不用意に使っています。どちらかといえば、(2)の「雨が降る」ほうが春の宵には脈があります。春の宵の独特の時間と季節感を引き出せそうですから。

(1)ねこ被りしてはをられぬ恋の猫  遊風(60代,男)
(2)をちとこち古里どちらとりかへる
(3)風神のふくろとりかへ春一番

 はじめまして、よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 よろしくお願いいたします。3句とも、言葉を遊ぶ、そのことだけで成立している俳句です。
(1)(3)はまあまあ、洒落、小噺の類で、一読で飽きるようなところがあります。うまいこと言ったね、で終わってしまうのです。可能性があるのは、ここではうまくいっていませんがむしろ(2)のような方向です。

(1)日曜に干す靴下や山笑う  菜月子
(2)リラの花スーぺリア湖は胸の先
(3)リラ冷えや乳房の先に光る湖

 (1)は「午後二時に干す靴下や山笑う」の推敲です。休日感を優先させて、朝寝坊 したというニュアンスは省略しました。(2)は固有名詞を使っています。(3)は湖を 「うみ」と読ませています。どちらの方がいいのか、ご指導よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)わかりやすくなりましたが、同時に平凡にもなりました。むずかしいものですね。(3)のほうがいいかと。(2)は固有名詞を使っているものの、やや報告か。リラの花悪くないのですが。
(3)リラ冷えの体感と光る湖が響き合っているような感じをもちました。

(1)春愁の眼鏡の螺子を締め直す  彩貴(40代,女)
(2)鉄幹に精のあるらむ朧月
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)この行為と春愁はいい取り合わせです。螺子とか締め直すという具体がとりとめのない春愁によく合っています。
(2)これは何とも言えません。朧月と鉄幹はなにかありそうですが。

ぎんこうをぎんこうと聴く春日和  雀子(60代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 あっ?これわからないのですが、銀行と吟行でしょうか?どちらが前か?春日和なら銀行が前ですね。わざとひらかな表記のなぞなぞにした効果は薄いかと。

快晴の空で大見得春の富士  栗太郎(60代,男)
 13日の朝新幹線の中から見えた富士山。それはそれは見事で、思わず歌舞伎の舞台を思い浮かべました。
ドクター岡野の診断と処方箋
 その時のお気持ちはよく分かります。「大見得」とは擬人化ですが富士山そのものが元々日本の大見得のような山なのでこの喩えは効いていません。また「春の富士」はすこし乱暴で、このの舞台を引き立てる季語があるはずです。「快晴の空」も天気予報みたいな言い方で、もっと適切な言葉を探してください。

ふらここを鳥語の中へ漕ぎ出せり  慈英(50代,男)
 ご指導宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
 いいんじゃないでしょうか。気分出ていますよ。


2007年3月20日

(1)チシヤ猫の牛の物真似春の昼  与太郎(50代,男)
(2)春の月ハイド氏の売る猫の舌
 宜しくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 このような“世界もの”は元の世界からどれだけ俳句的結構にすくい取れるか、だとも思います。その意味で(1)(2)とも疑問。(1)はチシャ猫のキャラクターが活きず、(2)はやり過ぎかなと。

(1)イチローに似たる自画像卒業子  えんや(70才以上,男)
(2)馬車通る五十年前に卒業す
 宜しくお願い申しあげます。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)いそうです。よろしいのでは。
(2)五十年前がいけないような気がします。

リコーダー吹き吹き帰ろ春ひなか  香珠
ドクター岡野の診断と処方箋
 中七の童謡調をよしとするか?春ひなかの表記も疑問。

(1)永き日や石に座る木瓜の影  うさぎ(女)
 「永き日や石に滲たり木瓜の影」を推敲しました。
(2)春泥を飛び越えてゆくハイヒール
 「春泥やハイヒールを履き替えし」を推敲しました。ジーンズと名残雪はできませんでした。
(3)日永なり猫を相手にランチかな
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)座るがまだ私にはピンときません。
(2)前の説明より、ストレートで軽快でいいですね。足を挫かないか心配ですが。
(3)日永とはこういうことなんでしょう。

当て馬が嘶く厩舎義仲忌  智弘(30代,男)
 宜しくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 義仲忌の例句になるのではないですか。お上手だと思います。当て馬の荒々しい息使いが聞こえてくるようです。言葉に遺漏がないです。そういえば義仲は頼朝の当て馬だったんだなあ、と思いました。

春昼や影も日向も縁側に  豊田ささお(70才以上,男)
 コケの花は夏でしたか、春のキャンプの朝に見つけた記憶がありましたが、夏の記憶違いでしたか、年甲斐なく春夏冬とジュニアキャンプに付き合ってクタクタです・・
ドクター岡野の診断と処方箋
 キャンプいいですね。高校いらいキャンプやってません。
 さて、掲句、春昼の光と影しかありません。この抽象的な内容を俳句にするには大胆でもあり、至難の業かとも。それとも「影日向のある人」のようなことを含意してますか?それはないですよね。

(1)チュウリップ青春18切符買ふ  せいち(60代,男)
(2)春灯の一駅ごとに違ふ色
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)はずむような気分が出ています。
(2)「違ふ色」がどうか?濃くなるとか、そういうことでしようか?

花衣肩が消えてる暇な人  裸時(30代,男)
 「ペレッタン」は造語でした→そんな名前のおたまじゃくしがあるといいなあと思いました(^^;
ドクター岡野の診断と処方箋
 花衣肩が消えてる、まではわからないまでも魅力的です。「暇な人」の俗っぽさがそれを打ち消しています。

(1)ちよこちよこと子雀駆けて犬の餌に  小口泰與(60代,男)
(2)春雨に畑もうす茶に竹そよぐ
(3)春の夢山川風の渡りゆく
(4)鳴き声も彼方に流る揚雲雀

 よろしくご指導願います。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)小雀の句で「ちょこちょこ」は禁句に近い、赤ちゃんの句の「よちよち」と同様です。
(2)この句では「竹そよぐ」が役にたっていない、一句にとって余計な気がします。
(3)(4)もそうですが全体に言葉だけで流れている気がします。

木瓜の花昼下がりの空の青  三郎(60代,男)
 よろしくおねがいします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 「昼下がり」が要らないですね。空の青で事足りているのでは。

山の辺の春の花咲く草の庵  さくら(女)
 宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
 きれいな言葉が並んでいますが、景が見えてきません。山か、花か、草庵か、ひとつでも具体名があるとよいでしょう。よくできた道具には、掴みやすいように凹みとか、ギザギザとかついてますよね、あれと同じで、この句は掴もうとすると、ツルッと滑ってしまうのです。よくできていない喩えですいません。

いのししの帰ったばかり春の朝  藤井茂子(60代,女)
 早朝の山に蕨取りに出掛けた折、私共より早く、イノシシの土を掘りかえした黒々とした跡があちこちに有り驚いた光景です。宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
 蕨取り、できていいですね。うらやましい。さて掲句ですが、説明を聞かないと、黒々とした掘跡とか驚きは伝わってきません。その時のことをそっくりそんまま俳句にしようとすると難しいかもしれません。蕨取り、早朝の山、黒い土、走るイノシシ、その周囲でじわじわ作句しましょう。結果として当日のある一部を切り取った句ができそう。


2007年3月19日

(1)花冷えやベンチに犬の寝そべりし  文の子(60代,男)
 「花冷えやベンチに犬の座りをり」を推敲しました。
(2)駅降りてからのラッシュぞ花日和
(3)横顔を見せてパンダの浅き春

 切れが気になりますが、如何でしょうか。
(4)ラジコンの低空飛行揚雲雀
 宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)すいません、前のほうがよかったです。律儀な犬と花冷えがいい感じです。寝そべってしまうと花冷えとの関係が弛緩しました。
(2)切れは別に気になりません。花見の名所の一般論になってしまうので、字余りになっても、その駅の具体名を入れられるのも手かと。
(4)低空と上空の対比でしょうか。取り合わせには失敗していると思います。

(1)まなびやの渡り廊下に黄水仙  しんい(女)
(2)色褪せぬ埋火掻くや片心
 宜しくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)素直にそこにあるものを詠まれた句。いかにも黄水仙という感じがします。それ以上ではない。
(2)「片心」とはきれいな言葉ですね。埋火に心象を仮託しても、片心がさらっとしていていいのですが、「色褪せぬ」に深読みを誘うものがあり、既視感を感じます。

春風や校長写真セピア色  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 歴代の校長の写真が並んでいる校長室かなんかを、を想像しました。セピア色の写真とは郷愁、懐旧等の代名詞で、余程工夫を凝らさないと、それこそ俳句が手垢のついたセピア色になってしまいます。春風も似合って万人が共感できる世界ではありますが。

(1)とぶ先は小川の向こう紫雲英の田  遊運(藤野雅彦)(70才以上,男)
(2)これからは趣味に生きたし鳥雲に
 「飫肥(おび)」独りよがりで済みませんでした。「飫肥」はもう一句出来てたのですが(飫肥の山みな杉の山杉の花)。杉花粉より山桜の方が「あっもう桜だっ」という印象が鮮明だったので。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)誰がとぶのでしょうか?何やら楽しげで、ご本人がとぶとみたいです。
(2)ここまで直球だと、突き抜けて、有無を言わせないところがあります。「鳥雲に」にもいい距離で。

春麗干潟再生実験中  栗太郎(60代,男)
 電車の中から見た淀川の風景です。
ドクター岡野の診断と処方箋
 うららかな景色です。よいところをつかまえられたと思います。全部漢字がよいかどうか?季語、春麗の周辺を探られたらいかがでしょう。

山笑うお地蔵さんの団子虫  藤井茂子(60代,女)
ドクター岡野の診断と処方箋
 ユーモラスです。 この季語をこのように使うのは、なくはないですが、一般に表現が浅くなります。なくはないですよ。

(1)葦の芽や靴先ぬらす雨上がり  小口泰與(60代,男)
(2)厩出し雲垂直のお山かな
(3)犬の子の躾定かや春の縁

 よろしくご指導願います。
ドクター岡野の診断と処方箋
(2)冬が終わった開放感でしょうか。雲垂直のかたちが分かりません。
(3)お見合いですか?説明してますね。

(1)電動の車椅子行く風光る  ポリ(50代,女)
(2)春うららあららTシャツ黄ばんでる
 アドバイスありがとうございます。よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)この(あの)車椅子は動いているなあ、風が気持ちいいなあ、ということしか伝わってきません。なにかが欠けています。
(2)ららのリフレインが楽しい。答えがいまいちです。

(1)通り芯曲がり真っ直ぐ琵琶の花  学(50代,男)
(2)篝火の揺れゐて枝垂桜かな
(3)手拭を頭にたたみ春の雲
(4)腹割って吹くピッコロよ雪解川

 ご教示を。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)枇杷の花ではないですか?こういうのを写生というのだったら写生は面白くないです。
(2)絵のよう、というか絵に描いた餅ならぬ俳句です。
(3)前に書きましたが?
(4)ピッコロ吹くのにそんなに力が要るんですか?

猫の目は自然抗体風車  裸時(30代,男)
 よろしくお願いいたしますm(_ _)m
ドクター岡野の診断と処方箋
 猫の目の定義ですね。風車は感じるところあります。自然抗体で切るのか、自然抗体風車と一気に受容を迫るのか、私は後者を採りたいです。裸時さんがここに込めた詩的総量の十分の一ぐらいしか受容できていません。読者を選ぶと思います。しかも句によって選ばれる読者が違うような気がします。

羅生門読み返しいる春の宵  れい(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 事実はともかく、この場合は何を読んでいるかが俳句としては問題です。「羅生門」と「春の宵」、お互いの世界が響きあわないように、私には感じられました。つき過ぎてもいけないのですが。


2007年3月18日

(1)冴返る夜はよく効く漂白剤  穂波
(2)おくるみのガーゼの裏地山笑う
(3)早口の九九の二の段ミモザ咲く

 「雛の間」へのコメント、ありがとうございました。「日なた」に代わる言葉は、少し時間をかけて考えたいと思います。新しい句をお送りします。ご指導よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 (1)(2)(3)とも皆いいと思いました。それぞれ、漂白剤、ガーゼの裏地、二の段、が新鮮な季語の世界をつくっています。こういう句を見ると、季語って捨てたもんじゃないと思わされます。勉強させてもらいました。

春昼や一人縁側に猫を抱く  豊田ささお(70才以上,男)
 また 春昼に戻ってきましたが、インパクトがないような・・どうでしょう?
ドクター岡野の診断と処方箋
 いかにも春昼といえば春昼、インパクトはとくに必要ありませんが、ありきたりすぎませんか?新鮮な春昼を見つけてください。

(1)帰省子の犬の背中を撫でにゆく  学(50代,男)
(2)香をひらく紅茶ポットに冬帽子
(3)ビール呑むか岩波新書慰問本
(4)春の宵車窓の顔の浮かびけり
(5)軍艦防波堤に住む海鼠かな

 ご教示を。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)(2)(4)は素直に感じが出ています。(1)が特にいいです、見えるようです。
(3)出だし面白く、慰問本で私は躓きました。
(5)住むのは軍艦か?海鼠か?軍艦防波堤とは固有名詞でしょうか?

(1)交差点に一秒の恋三月来  まりあ(40代,女)
(2)水草生ひ鴉の影のやはらかし
(3)マルチーズの薔薇色の皮膚春の昼

 岡野先生よろしくお願いします。1、2番改作です。3番薔薇色と季語は付き過ぎか‥とも思いますが。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)「 三月来」のなかでは一番いいです。「交差点」で雑踏とか言わずにすんで余裕ができたのですね。
(2)水草が出てきたので、前よりは納得できます。
(3)付き過ぎ は気になりませんが「薔薇色の皮膚」が大げさ、又はなにか臆面もない溺愛を感じてしまいますが、いかがでしょうか?

匂ひ菫恋文捨てず住み替わる  菜月子
 今、引越しを控え、荷物の整理をしているところです。それで、こんな句ができました。よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 よろしいのでは。甘いけど匂い菫はこの感傷によく合っています。つき過ぎというなかれ、ですね。

年一度食べる楽しみつくしんぼ  タロー(30代,男)
 宜しくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 そうなのだと思いますが、このままでは単なる報告に終わっています。

伏せ目がちの猩猩袴何を見る  さくら(女)
 山辺の道にひそと咲いていました。宜しくご指導お願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
 すいません、猩猩袴、知りませんでした。写真で見ました、勉強になります(汗)。擬人化ですね、なるほどと思われますが、「何を見る」までい言わないほうが。

(1)街燈に陰陽のあり桜冷え  文の子(60代,男)
(2)焼け跡の臭ひ残りし梅の花
(3)薄紅の散りしと蕾こぶし咲く

 宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)陰陽とは単に明るさをさす言葉の域を超えていますので、そこが曖昧だと思いました。なんとなくの気分はわかるのですが。
(2)特定の場所の特殊なことをさすのでしょうか?そこがわからないとせっかくの梅の香りが台なしです。
(3)薄紅は何か?何の蕾か?とにかくこぶしが咲いたのはわかります。

(1)冴え返るコンビニを出で走り出す  えんや(60代,男)
(2)門を出る黒き地主の恋の猫
 窓を覗くと、お向えの家の屋根が薄っすらと雪化粧しています。どうか宜しくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)こちらも数日、冴返る感じがあります。寒いから走るのでしょうが、元気すぎて冴え返るとそぐわないような。
(2)「黒き地主」がわかりませんでした。 猫の飼い主か、猫そのものか?

鳥帰る天空なぞる放物線  雅(50代,男)
 いつもご指導ありがとうございます。鳥が大空の軌跡をたどって帰っていくイメージが伝わりますでしょうか。
ドクター岡野の診断と処方箋
 雄大なイメージですね。この句では放物線が鳥の帰っていく軌跡そのもののように読めますが、それでいいんですよね。となると「なぞる」が疑問。何をなぞっているのか?鳥のDNAに組み込まれた帰りのルートでしょうか?

さくらちゃん答辞畳んで卒業す  藤井茂子(60代,女)
ドクター岡野の診断と処方箋
 さくらちゃんがかわいいです。「畳んで」がいいですね。

(1)たんぽぽや軒端の犬の声高し  小口泰與(60代,男)
(2)芝広しもの芽も出でて摘み取らる
(3)犬の尾の揺れにまかせて草青む

 よろしくご指導願います。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)繋がれているのですね、散歩させたほうがいいです。(冗談)。私にはこの犬、人に吼えているように聞こえてしまって、たんぽぽと合わないのですが。
(2)「もの芽も」の「も」はいらないと思いますが。そのときは「ものの芽」ですかね。

(1)つわの花工事現場を巡回す  学(50代,男)
(2)卒業の楽譜の端のサインかな
(3)団栗の弾け落ちたる地球かな

 ご教示を。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)工事現場に似合うような気がしてきました。巡回という行動まで入ったのがよかったですね。
(3)接写から一挙に大俯瞰になるところが気持ちいいです。


2007年3月17日

(1)狂ふ蝶イーハトーボに官吏來る  与太郎(男)
(2)蝿生まるジキル博士の空手形
 12日の「春眠や」の三句へのアドバイスはとても勉強になりました。宜しくお願ひします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)宮沢賢治のつくりあげた確固たる宇宙、その中だけでの俳句のようです。少しでも、この今の現実と通路があるといいのですが。
(2)こちらは「蠅生まる」が不気味。(1)と同工ですが、なんかリアリティーがある。私には。

(1)我が部屋は妻のゐぬ間にひこばえる  学(50代,男)
(2)雪は闇に沈みて木の割ける音
(3)風の日のふくろう森は深呼吸
(4)木の実を取り入れて森は夜匂ふ

 ご教示を。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)は尋常じゃないですね。
(2)(3)(4)いずれも魅力あります。生々しい森の生命感がとらえられています。(2)が特に印象に残ります。ひとつの世界をつくられていると思います。

(1)春泥をかき混ぜてゆく三輪車  うさぎ
(2)友誘い道明寺を買いに行く
(3)仏前にショートケーキと菜を手向け
(4)枯れ芝に先駆け名乗るうまごやし(クローバー)

 インデアナでは春の予感に人々が浮き足立っております。そんな気持ちが伝われば と思います。
ドクター岡野の診断と処方箋
 その気持ちは十分伝わってきます。
(1)具体的でいいです。
(2)「友誘い」か「行く」どちらか省略できるような、
(4)なるほど、うまく言いましたね。

(1)小気味よく投げ打つボール草若葉  しんい(女)
(2)学童の行儀の良さや草若葉
(3)通り雨いのち漲る草若葉

 草若葉で三題なのですが、宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)(3)は「小気味よく」「いのち漲る」がそれぞれ俳句が十七文字かけて実現したい主題なのではないでしょうか。

(1)ここよりは落人の里春蘭(ほくり)咲く  文の子(60代,男)
(2)急行を遣り過ごす旅春の風
(3)卒業や友に年齢明かされし
(4)多機能も使ひ得てこそ夜の朧

 ウィンドウズビスタにして使い勝手が悪くなりました。
(5)ぎこちなき烏(う)のスキップや春の風
 「片寄れる烏(う)のスキップや春の風」を推敲しました。宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)がいいかな。(2)はやっぱり説明。春の風しか手触り肌触りのあるものがありません。
(4)掲句だけでは、そのことは分かりません。カメラかなにかと思いました。ここが像を結ばないので、なにやら魅力的な夜の瀧が活きてきません。
(5)「片寄れる」は状況がわからないと書きましたが、「ぎこちなき」とあっさり形容されてしまうよりいいですね。すいません。

(1)春時雨娘の抽出しに金ボタン  鴻之助(50代,男)
(2)呑み手なきワインボトルや花曇
 話は別ですが、岡野ドクターの抱いていらっしゃる猫はトラ猫ですね。先日、犬が死んだのですが、家の中には親子の猫が5匹います。その中にやっぱりトラがいて、唯一のオス猫です。同性を慕ってか、息子にべったりと甘えます。また、2句よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)なるほど、なるほど、抽出しを開けちゃいけませんが、でも抽出しがやっぱりいいですね。
(2)「呑み手なき」がわかったようで、わからない。

(1)胴貸したカレンダーの猫柳  裸時(30代,男)
 同化、どうかした?とかいろいろ考えました。体の部分シリーズです(^^;
(2)桜色いろいろ吐き出すストレッチ
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)体の部分シリーズですから、やはり胴ですよね。裸時さんの発想とは違うかもしれませんが、私は「カレンダー」が疑問です。カレンダーにすると猫柳が絵空事になってしまいます。せっかくの体シリーズなので、猫柳の肉体性が出たほうがよいかと。
(2)これは率直に面白い。ストレッチの実感もあります。

水中はもがいてばかり春の鴨  澄(50代,女)
 よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 春のある気分がきれいに投影されています。ただ、この事柄は比喩として一般化していますが。

(1)春と冬の行き交う町に拉致ばかり  北野元玄(60代,男)
 時事俳句です。川柳調です。時節柄、題材を取り上げるに躊躇がありましたら、どうか私に遠慮なくボツにしてください。
(2)屋根ひとつもぎ取りに来た春一番(代替句)
 先に送った拉致の句(1)が具合が悪ければ、代替にこちらで投稿させてください。だめもとで、上句を稔典さんの俳句王国に応募したのですが、いずれ船団誌次々号に投稿する予定でした。コメントをいただければうれしく思います。
ドクター岡野の診断と処方箋
 時事俳句OKです。ひとり俳句だけがのうのうと花鳥諷詠していればいいわけではない、そう思います。ただ、短歌に比べて時事を扱うに不利な形式ではあると思います。短歌のように思いを全面展開できないから。基本的に言葉足らずを利用する形式なので、前書きとか注釈なしで、渦中の時事問題を素材化するのは、結構難しいです。私も何度か試みては失敗しています。
 さて掲句、「春と冬の行き交う町」にある季節感と、その他人間的な揺れ動きを読みました。「拉致ばかり」にある思いが出ていますが、これはこれ、韜晦する方法も有効かと思います。

雪便り嫁いだ孫を懐かしむ  賀代子(70才以上)
 よろしくおねがいします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 テレビニュースかなんかでしょうか、ふと雪国に嫁がれたお孫さんを懐かしむ。この「懐かしむ」は現代の語義からすると回顧的なので、私は少しつまずきました。

(1)天心を春風に乗り目指す鳶  浅葉洋
(2)蒼空は白だけでよし辛夷咲く
 毎度ご高評感謝しています。強風が雲を吹き払った澄み切った青空に、真っ白な辛夷、その上空に悠然と鳶が舞っています。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)語呂が悪いです。このまんまの材料でも語順を入れ替え、音読してみてください。
(2)辛夷いいですね。とくに詠まれているような状況では、「だけでよし」と断定する気持ち、よくわかります。悪くないのですが、このような詠みかた、よく聞くような気がします。

(1)また地震くちびる赤き地蔵かな  千坂希妙(50代,男)
(2)春場所や五年たっても三段目
(3)相撲取り霞の空に茶でうがい

 よろしく。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)は前後でバラバラな気がしますが。配合とか、衝撃とはちがうようです。
(2)わかりますが、お相撲さんってこういうものと思っていますから。
(3)このほうがいいですね。臨場感があります。

(1)雲一朶秩父連山朝霞  小口泰與(60代,男)
(2)たんぽぽや噴煙北に流れをり
(3)毛鉤追ふ雪代山女定かなり

 よろしくご指導願います。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)漢詩みたいですね。きれいな大景なのに漢字がひしめき合って窮屈そう。もちろん、漢字だけで仕上げるという効果もありますが、そうはなっていないと思います。
(3)雪解けを待ちかねて渓流に入った釣り人の静かな喜びが伝わってくるようです。「雪代山女」とはそのような呼び方があるのですか?


2007年3月16日

(1)野良猫に振られてばかり蕨餅  菜月子
(2)午後二時に干す靴下や山笑う
 (1)は猫好きの読み手じゃないとわからないでしょうか?(2)はあまりにも普通かもしれませんが、休日のある種の心持ちを意識しています。よろしくご指導お願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)贅沢な野良猫ですね。野良も飽食です。
(2)休日といわれて、ああそうか、と思いました。注釈なしに伝わるといいのですが。天気のいい感じがします。

パンジーの園より鳥の翔ちにけり  豊田ささお(70才以上,男)
 春昼の句、早くもいき詰まり作れませんので、鶫の句の改作をしてみました。
ドクター岡野の診断と処方箋
 豊田さんが見た景色は多分この句のとおりなのでしょう。私もそうなのですが、見て、あ、いいな!と思ってもそこにある現実の素材の組み合わせでだけは一向に俳句になってくれないこともあるのも事実です。嘱目吟など抜群にお上手な手練の方もいらっしゃいますが、その方たちは、見たものを、そのまま俳句の言葉として捉まえられるようです。ひと目で流麗な写生句のできあがりですが、それは月並みと隣り合わせでもあるのです。豊田さんのこの公園での経験は放置しておけば、ある日、全然別のきっかけによって、まったく違う句に昇華するかもしれません。・・・・と私は自分を励ましているのです。 豊田さんの句をダシにして勝手いいました。

憂き事は聞こえぬ耳よ春日向  ねぎよしこ(70才以上,女)
 龍太死す。の指導有難う御座いました、懲りずによろしく頼みます。
ドクター岡野の診断と処方箋
 こちらこそ。春日向の中、脳天気な人への皮肉でしょうか。一方、春は物憂い季節でもあることが、私には微妙にオーヴァーラップしてしまいます。ある種の誤読を誘うようなところが、言葉の厄介なところであり、面白いところだと思います。

恋猫のつくろひもせづ眠りけり  やや(女)
 改めて宜しくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 たしかに、ひらかなのほうが、やわらかくていいですね。

恋猫の繕ひもせず眠りけり  靖壺(女)
 初めまして、どうぞ宜しくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 よろしくお願いいたします。恋疲れでしょうか?一見、いわゆる恋猫の感じがしませんが、「繕ひもせず」で精根使い果たした感じが出ている。

(1)冴え返る隣の部屋から来るメール  菜月子
(2)山吹を見あげる午後の気鬱かな
 ありがとうございました。ご指導いただいた句は推敲が行き詰まっています。あらたに投稿いたしますので、よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)新しい「冴え返る」ですね。こういうことは今、ごく普通にあるんでしょうね。こわいです。オーソドックスな季語を、このようにいじっていくのはいいと思います。
(2)「見上げる」とは高い場所に咲いているのでしょうか?そこで躓いてしまいました。それは別にして、気鬱なとき 何かを見上げている感じはわかるような気がします。

(1)公園の清掃総出いぬふぐり  えんや(70才以上,男)
(2)月曜の静かに垂るる半仙戯
 宜しくお願い致します。
ドクター岡野の診断と処方箋
 中七が四字熟語みたいで、なんとかなりませんか?公園なので余計、市役所の業務日誌みたいです。
(2)雰囲気はよくわかります。垂るる、いいですね。私の好みでは半仙戯が字面も含めて表現としてご大層すぎます。 鞦韆も同じ、ぶらんこでいいような。

(1)鳥もまた水浴びしたり春の雲  はるみ(50代,女)
(2)絵手紙にお守り添えて里も春
 こんにちは。年に数回おじゃましております。今年はもっと参加したいと思います。よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 よろしくお願いいたします。
(1)この鳥は具体的ではありませんが、春に囀る鳥類全体を言祝ぐおおらかな気分に満ちていて気になりません。「もまた」と曖昧化する語法はここでは効果のひとつでしょう。
(2)この「里も春」の「も」は調子だけで、すこし安易ではないでしょうか。座五全体にもそれは言えます。

(1)チョロQを転がす族のキンポウゲ  裸時(30代,男)
(2)チョロQを転がし隊のキンポウゲ
 推敲してみました→。よろしくお願いしますm(_ _)m
ドクター岡野の診断と処方箋
 好みとしては(2)の転がし隊です。次の「の」はいろいろあるところではないでしょうか。こういうのを季が動くというんでしょうが、そういうことをいってもしょううがないような。正直今回は以前ほどの刺激はないです。

(1)白梅や北の入江の常夜灯  玉白石(50代,男)
(2)啓蟄の窓から覗く女の子
 よろしくお願いいたします。
ドクター岡野の診断と処方箋
(1)「 北の入江」と書かれると、そこはどこ?と聞きたくなってしまいます。場景としては雰囲気ありそうですが、北の入江の漠としたところが前景にきて常夜灯がぼけます。従がって白梅もよく見えません。
(2)私は「啓蟄」の起用に疑問があります。この「女の子」に作用していることは認めますが、そこが気になります。

(1)わがままな女との旅蛍烏賊  満山(60代,男)
(2)陥穽の底から覗く鼓星
 岡野ドクターはじめまして、よろしくお願いします。
ドクター岡野の診断と処方箋
 はじめまして。
(1)物語ですね、蛍烏賊がきれいですが、「旅」なので通俗にやや流れています。もっともそこが作者の狙いとも読めますが通俗を料理しきったとまでは受け取れませんでした。よくも、悪くも「蛍烏賊」が強いのでしょう。
(2)かなり特殊な状況ですが、この視角でオリオンを見たのがいいですね。四角か、丸か、あるかたちで区切られた冬の夜空に冷たく光る三ツ星。私も体験してみたいです。現代アートのある種の行き方(インスタレーション)にこの句と同じような体験があります。(越後妻有アートトリエンナーレ、次回は2009年、常設展示もあり)「陥穽」という漢語表現が多分に読みを人事方面に引っ張りますが、ここではごく物理的なおとし穴(それも大きい)と捉えました。