俳句クリニック 2007年8月前半分(ドクター:星野早苗)

「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。


ドクター星野の診断
2007年8月15日

(1)子の手牽き子の荷抱へし大夕立  文の子(60代,男)
 8/1以降ご指摘及びご教示頂いたものを推敲しました。元句は「子の手牽き子の荷を小脇大夕立」です。
(2)蒲公英の絮や研修了へにし娘(こ)
 元句は「蒲公英の絮や研修娘(こ)の了へて」です。
(3)籠りし子紫陽花塀を食み出して
 元句は「塀出る紫陽花雨に籠りし子」です。
(4)飼ひ犬の吾が陰選れり百日紅
 元句は「飼ひ犬の吾が片陰を歩みけり」です。
(5)木下闇警官腰を落としつつ
 元句は「木下闇警官腰を落としゆく」です。宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)(2)いいと思います。
(3)「食み出して」は「はみ出して」に。
(4)いいと思います。
(5)どうして素直に「腰を下ろす」としないのか、問題句ではありますが、その作者のこだわりがいいと思いました。警官が「腰を下ろす」瞬間をスローモーションで見ているような面白さがあります。コミカルに受け取ればいいのか、サスペンスなのか、いろいろな読みができる句ですね。

外しゆく胸のボタンや星流る  sa
 毎日あついです。宜しくおねがいします。
ドクター星野の診断と処方箋
 ある世界の中に閉じてしまっている印象を受けます。ナルシシズムを感じる向きもありそうです。

(1)かなかなのなきゐる野辺の女郎花  未知(50代,男)
(2)急かされて葉陰に音の花火かな
(3)夏虫のあらはに燃ゆや奥の院
(4)たらちねのいさめしものや秋茜
(5)語らひしこゑぞ野中の曼珠紗華

 ご教示を。
ドクター星野の診断と処方箋
(5)がいいと思いました。「ぞ」は「は」でも。
(1)「なきゐる」(2)急かされて(3)「あらはに」は言いすぎではないでしょうか。

切り分けるサロイン・ステーキ青楓  夏海(60代,女)
 母の法事の折に利用したの和風レストランでの作句です。サロイン・ステーキの形と楓の形が何となくマッチしている気がしていますが?
ドクター星野の診断と処方箋
 サーロインステーキと青楓は思いがけない素敵な取り合わせだと思います。色彩的によく映り、「切り分ける」にも臨場感があってステーキがとてもおいしそうですね。

(1)月を出てサンダルを見にこの町に  汽白(40代,男)
(2)かなかなのすがたなくしてこえばかり
 よろしくおねがいいたします。(友だちと山歩き・・・)
ドクター星野の診断と処方箋
(1)月の夜道から街灯の明るい町に…、と読みました。「サンダルを見に」の庶民性がとても魅力的です。
(2)確かに言われてみればそんな気もします。良いのでは。

(1)ひぐらしに耳をあづけて山の風呂  しんい(女)
(2)谷深く奇岩切り立ち滴れり
 宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「耳をあづけて」に迷いました。「耳」では当たり前ではないでしょうか。
(2)「谷深く」が説明的でややくどく感じました。


2007年8月14日

(1)キャンパスは百日紅咲くひと山先  岡野直樹(40代,男)
(2)夏木立その次までの遠さかな
(3)原爆忌風船立ち上る三井の寺

 日常の体験ではあるのですが、うまくできたでしょうか。よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「ひと山先」が分かりませんでした。
(2)いいと思います。
(3)「立ち上る」はこなれない表現です。「上がる」でいいのでは。

海賊船のごとき船に遊びけり  岬(女)
 この前の添削で感動した事を詠めばいいとご教授頂きましたが、今まで余り感動する事がなくいろいろ見落とす事が多いようでした。これからは出来るだけ丁寧にい ろんな事見ていきたいと思っていますが・・・
ドクター星野の診断と処方箋
 「船」のどこが海賊船のようだったのか、具体的に詠んでほしいと思いました。また、中七の語調が整いません。
 旅先などで面白い経験をされたのだと思います。そのような場合、一句二句ではなく、十句は作って見てください。感動するから句を作るのではなく、作った俳句の中から感動が生まれることもよくあります。そのような句ができるのは、5、6句目くらいからだと思います。

夕闇を押し戻してや花サビタ  豊田ささお(70才以上,男)
 今日句会があり、「蝉鳴いて山田の上に昼の月」を出したところ講評で「蝉の鳴く 山田の上や昼の月」にしたほうがわかりやすいと、のこと・・因みに主宰は現代俳句 系ですが、旧かな写生重視でやりづらいです。星野ドクターは如何おもわれましょう や?
ドクター星野の診断と処方箋
 「花サビタ」が分かりませんでした。「サビタ」は品種名でしょうか。
 「蝉鳴いて」の句は、いきなりの夏にぼんやりした昼の月が作者の戸惑いを表現していると読みましたが、確かに主宰の句の方が景ははっきりしています。「蝉鳴いて」は作者に蝉が近いので、作者も山田の村に立っているようです。主宰の句は、全体を俯瞰する位置に作者が立って居て、このような俯瞰的な眼を手に入れられることも俳句の魅力の一つですね。「旧かな写生重視」は実力ある俳人に多いです。学ぶことの多い句会をうらやましく思いました。

(1)七夕や竹下通陰暦に  文の子(60代,男)
(2)二桁を指もて足す子鳳仙花
(3)孝行もスカイラインは霧の海

 8/7のご診断有難うございました。「すっきりとできているのですが、絵本を見ているようです。細部にこだわる粘り強さを見せてほしいと思いました。」は勉強になりました。ご指摘を踏まえ考え直します。宿題が溜まってきましたが新しい句を先に診て頂きたく、掲句宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)八月の七夕行事をニュースなどでみると、日本にも陰暦時代というものがあったのだと思い出さされます。御句では地方都市ではなく「竹下通」なのが眼目なのでしょう。ここは、「や」と切らず、「で」とされるか、「星祭る」などとされると、七夕によって竹下通り全体が陰暦の時代に戻ったようで、句意がよりはっきりすると思います。
(2)いいと思います。
(3)親孝行のドライブ旅でしょうか。「も」ではなく「の」に。


2007年8月13日

長針が短針になる昼寝覚  藤(10代,男)
 よろしくお願いします。やはり発想が月並みですかね・・・。
ドクター星野の診断と処方箋
 「長針が短針になる」がよく分かりませんでした。

(1)ドラエモンの靴ぱたぱたと祭りかな  ポリ(50代,女)
(2)香水の瓶と花瓶とけさの秋
 ご指導ありがとうございます。今回もどうぞよろしくお願いいたします。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)いいと思います。「ぱたぱたと」が嬉しそうです。
(2)「香水の瓶」と「花瓶」の並列に魅力を感じませんでした。

(1)正信偈ダビング中の夜の秋  藤井茂子(60代)
(2)目標を箇条書きにす立葵
(3)しかじかと言われて見ても夏の恋

ドクター星野の診断と処方箋
(1)「正信偈」が分かりませんでした。
(2)報告にとどまっているように思いました。
(3)いいと思います。「夏の恋」が効いていると思いました。

何であるアイデアルでしょ桐一葉  北野元玄(60代,男)
 滑稽を狙っただけと言われそうですが・・、その通りです。「桐一葉」にこもる重厚さを吹き飛ばすような軽妙さが感じられれば、と思っているのですが。よろしくお願いいたします。
ドクター星野の診断と処方箋
 「でしょ」の部分を「逝く」とされると、植木等追悼の一句になるのではないかと思いました。桐の葉はやはり大きく重いです。

(1)夏草や子の嘘見抜くこと難く  文の子(60代,男)
(2)灯籠の明り消えしか梅雨明けぬ
(3)妻の球探すゴルフや夏休み

 8/2から8/6のご診断有難うございました。夫々もう少し考えてから、診て頂きたく存じます。掲句宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)いいと思います。「夏草や」をいろいろ考えてみましたが、「難く」と合っているように思いました。
(3)「夏休み」を御一考ください。

(1)ひさかたの見上げし子らと花火かな  えいこ(50代,女)
(2)それぞれの花火の色を持ち帰り
 思いがけず成人した子供達と花火大会を楽しみました。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「ひさかたの」は天にかかる枕詞ですが、「久方ぶりの」と言う意味でしょうか。モーニング娘。は以前「ひさぶりだぜ」と歌っていましたが…。「見上げし子ら」は「見上げるほど大きくなった子ども達」という意味なのでしょうか。この二語が、難解だと思いました。
(2)いいと思います。

折り鶴の羽尖りたる終戦忌  星次(40代,男)
 はじめまして。よろしくご指導ください。
ドクター星野の診断と処方箋
 この句の場合「終戦忌」が一句の内容を空疎なものにしてしまっています。季語は誰にも文句を言わせない力を持つものですが、それによって一句をまとめてしまうとつまりません。御一考ください。


2007年8月12日

(1)忘れること上手くなったねヒヤシンス  蓉子(50代,女)
(2)つかの間の音と光と缶ビール
 いつもありがとうございます。きのう家族と花火見物を楽しみました。よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「上手くなったね」が軽い自嘲でしょうか。他人に向けられたとすると成り立たない句なのですが、このままではどちらとも受け取れます。
(2)「つかの間の」は過ぎ去った時間を回顧しているように思います。今この瞬間の花火を詠んでほしいと思いました。

凛として風に身を刺すイワギキョウ  宮本笑子(50代,女)
 白山に行った時、岩陰に咲く可憐でみずみずしいイワギキョウの花をみて感動しました。よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
 「凛として」は読者に感じ取ってもらうべきところでしょう。「風に身を刺す」もこなれない表現です。イワギキョウが風に身を刺しこんでいるのでしょうか。
 風がイワギキョウの身を刺しているのだとしますと、「白山の風は(が)身を刺すイワギキョウ」としてみました。この場合、風は白山に登った作者の身を刺しているのですが、同時にそれに耐えて咲いているイワギキョウの花にもふいていますね。「凛として」に行きつくかどうかは読者次第ですが、俳句はそのような表現方法なのだとお考え下さい。頼りないようですが、それによって「凛として」以上のものを感じ取ってもらえるチャンスも出てきます。

(1)集ひ来し皆の頭髪洗膾かな  小口泰與(60代,男)
(2)短夜や皆の瞳の若々し
(3)眼路の果木道の果雲の峰
(4)駒草や雲海の端見晴るかす
(5)山際の清水掬びて甘露かな

 よろしくご指導願います。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「洗膾(あらい」と「頭髪」の取り合わせの句だと思うのですが、よく分かりませんでした。
(2)瞳への注目はいいと思います。
(3)(4)いいと思います。
(5)報告にとどまっているように思いました。

(1)かぶと虫角に技あり「背負投」  センリ
(2)群集の目の一点に花火咲く
 暑中お見舞い申し上げます。いつもご指導ありがとうございます。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「角に技あり」が面白いと思えるかどうか、の句でしょうね。虫キング大会が流行り、戦いの様子もテレビなどでよく見られますので、これはこれでいいと思います。「腰に技あり」などとしても。
(2)凝った表現ですが、報告にとどまっていると思いました。

(1)淀川の花火神戸の遠花火  慈英(50代,男)
(2)西瓜切る力も母の手にありし
 ご指導宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)二つの花火大会を同時に詠まれたのでしょうか。事実かもしれませんが、その偶然性のみしか印象に残りません。淀川の「手花火」とされると神戸の遠花火の音が生きてくると思います。
(2)「も」を「は」と限定されるほうが、力弱くなった母だが…、という句意が明確になると思います。元気なお母様なら「も」でも結構です。

せみ鳴くよ先祖代々気兼ねなく  多弁(60代,男)
 暑い日が続いております。よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
 「気兼ねなく」…言われてみればその通り。根拠を先祖代々にもって来ておられるのも、いいと思いました。今年も堂々の鳴きっぷりですね。

(1)小さくてすもも吐息の輪の中に  裸時(30代,男)
(2)夏負けの無理だけ写る包丁に
ドクター星野の診断と処方箋
(1)いいと思います。
(2)いいと思います。母に対する心情が過不足なく表現できていると思いました。


2007年8月11日

(1)浮いて来い嘘泣き上手な少女A  北野元玄(60代,男)
 季語の本意からは、ずいぶんかけ離れてしまいました。
(2)日焼けした額に半島由来の血
 鏡に映った顔を眺めて、自分の祖先は百済か新羅か高句麗かと時々問いかけています。8月4日のコメント有難うございました。またいつかお会いしたときに、じっくりとお話を伺いたいと思っております。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)面白いと思いました。ノスタルジックな季語に「嘘泣き上手」な少女を思い出されたのでしょう。ただ「少女A」としなければならない理由は分かりません。
(2)いいと思います。

なにもかも忘却の彼方水平線  ねぎよしこ(60代,女)
 季語がなくて御免なさい。前の「やまおだまき男の壷に恋をする」は男が作った壷のこと、山だしの婆さんの思いです。有難う御座います。
ドクター星野の診断と処方箋
 「なにもかも」「忘却の彼方」は大雑把すぎる表現ではないでしょうか。

(1)燈明へ火蛾はなちをる子らの夏  やすぼう(男)
(2)嫋嫋と砂風けずる石の音
 よろしく、お願いいたします。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「火蛾」は自ら灯に集まる蛾を言うので、「はなちをる」とは言えないのではないかと思います。
(2)「嫋嫋と」は独自な把握ですが、「砂風けずる石の音」が分かり難いと思いました。

(1)七夕にあまるばかりの我が身かな  未知(50代,男)
(2)霧立ちてさも中空の眺めかな
(3)露玉の身にしむ色や秋の声
(4)天にみせんきかせん蜩のこゑ
(5)独り居の竹の葉ぬるるしぐれかな
(6)炉の烟絶やさずや冬の山里

 ご教示を。
ドクター星野の診断と処方箋
 どの句も現実の手触りに乏しく、イメージが明確になりませんでした。

(1)四艇のヨット沖へと曳く小舟  藤井茂子(60代,女)
 朝凪の中ヨットがすいすいと走っているのをよくよく見ると小舟が引っ張ってました。
(2)一点を見据えた夫の盆踊り
 添削よろしくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)ヨットが小舟を曳くとも読めますね。「ヨットを沖へ」とされては。
(2)とてもいいと思います。「見据えし」でも。

(1)半空にひとり有明の月あり  未知(50代,男)
(2)わが魂のかよふばかりの秋の道
(3)脚細き人来たりけり盆の入り
(4)飲馴れた井戸水ほしや夾竹桃
(5)わすられて袖の身にしむしぐれかな

 ご教示を。
ドクター星野の診断と処方箋
 全体に雰囲気はあるのですが、確かな手応えが希薄です。


2007年8月10日

手を打てばこだま返りて滴るる  悠(70才以上,女)
ドクター星野の診断と処方箋
 いいと思います。「滴るる」は「滴れる」でしょう。

はちあはす山車や夜空の煌々と  如月
 はじめまして。初心者ですがどうぞよろしくお願いいたします。
 お囃子で相手に引き込まれた山車が道を譲るのですが臨場感が出ているでしょうか。
ドクター星野の診断と処方箋
 お囃子で相手を引き込むというのは始めて知りました。とても雅な山車ですね。一句でそこまで読み取みとることはできませんが、「はちあはす」の柔らかさ、「夜空の煌々と」の明るさに賑やかなお囃子も聞こえてきそうです。祭の一場面として臨場感もあります。いいと思いました。

(1)好きやから好き向日葵の少女A  せいち(60代,男)
(2)向日葵や少女等は肌かがやかせ
(3)向日葵の少女まばゆし少年に

 (1)は「少女A」がどうなのか?(2)(3)は、あたりまえか?迷っていますが宜しくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)(3)「向日葵の少女」は概念的なイメージで、句になり難いと思いました。
(2)報告にとどまっています。
(3)は、「向日葵や」と切ると「少女まばゆし少年に」が普遍性を持って生きてくるように思います。

(1)乱鴬や古刹甍の宝相華  山本葆博(60代,男)
(2)慮(る)舎那佛事事無碍法界蓮華哉
(3)招提寺薬師寺の鐘明け易し
(4)熱の児の朝焼けの頃落ち着きぬ
(5)蛍消え広がる闇の深さかな
(6)夏の風翠に染まれ稲のごとく
(7)蟇啼くや池面の雨の荒あらし

 誠に適切なる評語に感謝いたしております。蜀魂はホトトギスでした。
ドクター星野の診断と処方箋
 芭蕉は杜甫に学んで漢詩文調からスタートしましたが、やがて「かるみ」へと向かい、蕉風を完成させました。以後の俳句の歴史はそれをふまえて発展してきていますので、漢語(漢字)の多用は感心できません。しかしながら、漢語の使えるところは俳句の大きなメリットでもありますね。効果的な使い方を研究していただきたいと思います。
 さて、御句の中では(4)がとても良いと思いました。「児」は「子」に。(7)は「池面」が読みにくく思われます。「池の面(も)に雨荒あらし」

片蔭の井戸端会議弾みをり  しんい(女)
 報告でしょうか、宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
 井戸が本当にある「井戸端会議」なら成立する句だと思うのですが…。

(1)百合咲くや白樺林やはらかし  小口泰與(60代,男)
(2)天そそる北アルプスやユッカ咲く
(3)夕映えをたまはる浅間風露草

 よろしくご指導願います。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「白樺林やはらかし」に賛否が別れそうです。
(2)「天そそる」はこなれない表現です。
(3)いいと思います。

梅雨晴間黄傘回して下校の児  雅(50代,男)
 いつも的確なご指導ありがとうございます。「梅雨空のけぶりて遠き里の空」とどちらがよろしいでしょうか。
ドクター星野の診断と処方箋
 「黄傘回して下校の子」が、いいと思います。朝降った雨がやんでいたのでしょう。「梅雨空」と「里の空」は空の重複が成功していないようです。


2007年8月9日

避暑の子の白い光線倒れる木  裸時(30代,男)
 よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
 「避暑の子は白い光線」なら分かります。「倒れる木」は御一考下さい。

(1)流星の途切れるこゑや硫黄島  学(50代,男)
(2)夕焼けて巌を洗ふ潮の音
(3)蛸足の吸ひつくとんぼ眼鏡かな

 ご教示を。
ドクター星野の診断と処方箋
(3)が面白いと思いました。

(1)なくがよい短き命蝉生れて  遊雲(70才以上,男)
(2)立ち止まり又立ち止まり夏の山
(3)喜寿となる8月6日の朝目覚む

 いよいよ8月、やっと梅雨が明けたのにあと1週間で暦(季語)では秋。でも当分気分は夏です。
ドクター星野の診断と処方箋
(2)いいと思います。
(3)八月六日(広島忌)に喜寿(77才)を迎えられたのですね。「朝目覚む」が1945年8月6日の広島の朝と二重写しになり、いろいろな事を考えさせられる句です。よくできていると思いました。

(1)一万尺おもいのままなる雲の海  えいこ(50代,女)
(2)汗干せば眼下に聞こゆるほととぎす
 何時も診断ありがとうございます。先日 山に登った時の感動です。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)雄大な景色ですね。「一万尺」といきなり始まるのもいいと思いました。しかし、「おもいのままなる雲の海」が難解です。雲の海が思いのままになるものでしょうか。一万尺の山に登ると(作者が)雲の海を思いのままに行けるようだ、とするなら、「思いのままに」でいいと思います。
(2)「汗干せば」がいいですね。「聞こゆる」は少しもたつきます。「聞こゆ」或いは「響く」でも。

(1)うすものを螺鈿箪笥に今朝の秋  藤井茂子(60代,女)
(2)天辺に蝉蝉蝉の涅槃門
ドクター星野の診断と処方箋
(1)報告に終わっているように思いました。
(2)「蝉蝉蝉」の表現が冒険ですが、イメージが鮮明です。

(1)ひめますの虹をくぐりて十和田湖に  未知(男)
(2)ねむれない百物語合宿所
(3)マラソンの前を斜なるしぐれかな
(4)へそまがりたる胡瓜にもへの河童

 ご教示を。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)いいと思います。
(2)「合宿所」は「夏(季)合宿」としても。
(3)報告にとどまっているように思いました。
(4)「へそまがりたる胡瓜」は面白いと思いました。それにもめげず、菜園通いをしている元気な夏なのでしょう。「へ」の頭韻もいいと思いました。

(1)長かりし君らの脚や夏怒涛  未知(50代,男)
(2)銃痕を体に刻む父の夏
(3)ひまわりといふ喫茶店日短か
(4)はつ夏の葉書名前にルビありて

 ご教示を。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「長かりし」というと過去のことのようで句が複雑になってしまいます。
(2)「体に刻む」がややくどい表現です。
(3)「ひまわり」という名前の喫茶店にノスタルジックなものは感じますが、報告 にとどまっています。
(4)いいと思います。「はつ夏の」は「初夏の」か「はつなつの」に。


2007年8月8日

白桃の仄と紅さす老女かな  さくら(女)
 宜しくご教示下さい。
ドクター星野の診断と処方箋
 「白桃の仄と紅さす」の惜辞から「老女」は無理があるように思います。「女かな」でいいのではないでしょうか。

(1)グラジオラス剣上に舞う緋の姫君  岡野直樹(40代,男)
(2)蝉止まる自転車をこぐズボンの裾に
 (2)は実話です。それだけですが、よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)見たての句。これはこれでいいと思いました。「剣の舞」からの連想ですが、トルコの姫君かもしれませんね。
(2)「蝉とまる」は座五に置かれた方が語調が整います。

(1)蝉時雨胃の腑の底の抜け心地  豊田ささお(70才以上,男)
 ちょっと私だけの感覚に落ちてしまったようですが・・なにせ、今日はじめて、クマゼミの大合唱に取り囲まれて、腹の力がぬける思いでした。
(2)コウノトリ高く高くと雲の峰
 テレビでコウノトリの巣立ちを見ていて、思いつき、どうしても一句作っておきたくなりました。豊岡の人々の今までのご苦労が身にしみる思いからです。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)これはこれでいいように思いました。もう少し句意に添わせるなら「抜け落ちて」「抜け落ちし」。
(2)「高く高くと」…いいと思いました。ただ「雲の峰」は巣立ちの様子からはちょっと高すぎるかもしれません。

ひたすらにサルビアの花ひたすらに  三郎(70才以上,男)
 よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
 作者の中に何か強い思いはあるのだと思いますが、手がかりが掴めませんでした。「サルビア」に触発されるものをもう少し限定するために、「サルビアの赤」「サルビアの雨」などとされると、伝わるものはあるかもしれません。

(1)稲妻に見入りて音に竦(すく)みし児  文の子(60代,男)
 8/1のご診断有難うございました。「稲妻に見入る児音に竦(すく)みけり」を推敲しました。
(2)子の手牽き子の荷を小脇大夕立
(3)父祖の地を訪ね犀川霧の中

 宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)稲妻を見ていた子どもが遅れて鳴る雷鳴にびくっとした場面を詠んでおられるのですが、今度は「て」が説明的になりました。子どものスケッチとして、前回の句の方が素直でいいと思います。
(2)「小脇」は「抱え」とされる方がすっきりします。
(3)いいと思います。

シャム猫の気に入りの場所籐寝椅子  慈英(50代,男)
 ご指導宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
 内容はよく分かるのですが、報告にとどまっています。

(1)梅干は3日3晩で年をとり  浅葉洋(70才以上,男)
(2)古き味残す梅漬今年また
(3)梅干や日本の味をこの酸いに

 梅雨明けを待って今年も恒例の梅干作りを行いました。案外昔ながらの味は評判がよいようです。ご高評をお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
(2)句意は「昔ながらの味を残すために今年もまた梅を漬けるよ」ということだと思いました。「今年梅漬けて昔の味残す」「梅漬けて昔ながらの味残す」などとされるとよりよくわかる句になると思います。

(1遠山の嶺々在り在りと朝涼し  小口泰與(60代,男)
(2)夏ひばり嬬恋村に桑育つ
(3)ゆり咲くや富士見高原清し朝
(4)山風や富士見高原せみ時雨

 よろしくご指導願います。
ドクター星野の診断と処方箋
(2)がいいと思いました。

(1)めくりめくわれら十代明易し  未知(40代,男)
(2)雨蒼く昏れゆく海の野分かな
(3)この世ではみんな年よる葉鶏頭
(4)赤カンナどしどしどしと仔象くる

 ご教示を。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「めくりめくわれら十代」はひとりよがりではないでしょうか。
(2)いいと思います。
(3)大胆な把握。いいと思います。
(4)仔象が元気そうでいいと思いました。


2007年8月7日

(1)白日傘捨てて縁切り寺の女  未知(50代,男)
(2)秋空の開きたるときぞ号砲す
(3)ビー玉に閉じ込めてをり空の虹
(4)億万年のつぶやきや流れ星
(5)秋風を映すミラーやグッドバイ

 ご教示を。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)作者が傍観者になってしまっており、どのように感情移入すればいいのか分かりませんでした。
(2)「ぞ」がややうるさく感じられました。
(3)「空の虹」は冗漫。
(4)「億万年の」は大雑把。「や」ではなく、「が」と断定する方がいいと思います。
(5)グッドバイはどこからの発想か分かりませんが、太宰治の小説の雰囲気も感じられますね。

(1)声青く染まりぬ森の雨蛙  文の子(60代,男)
 この雨蛙は如何でしょうか。
(2)梅雨明けの夕空トランペット鳴る
(3)夏しぶきイルカ胴体着水し

 宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
(2)(3)すっきりとできているのですが、絵本を見ているようです。細部にこだわる粘り強さを見せてほしいと思いました。
(1)いいと思います。

西瓜買ふ定かならねど叩きみて  しんい(女)
 宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
 全体が散文的です。作句の動機や感動の中心がどこにあるのか、読者に伝わり難いと思いました。

(1)炎昼や鳴門海峡潮止まり  永田岬(60代,女)
(2)夏夕日鳴門の橋に沈みけり
 添削お願いします。1日目は渦潮が見られませんでした。2日目は丁度いいタイミングで「渦潮に吸い込まれいく土用波」となりました。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)語調はいいのですが、意味はやや取りづらい表現です。「海峡の潮止まりけり」か「鳴門の潮の止まりけり」などとすると、より分かりやすいかもしれません。
(2)報告にとどまっています。

目覚めても追いかけにけり黄揚羽  豊田ささお(70才以上,男)
 「油照り郵便ポスト空のまま」を推敲していましたが、なんか川柳のようにしかよ めなくて、結局あきらめました。
ドクター星野の診断と処方箋
 寝ても覚めても、ですね。座5の字足らずが気になりました。「揚羽蝶」「黄の揚羽」或いは「青揚羽」でも。

(1)梨の水っぽかり友の死忘れて  未知(50代,男)
(2)噴水の消へゐて闇のひろがれり
(3)蛸足の吸い付く夕日みてをりぬ
(4)薔薇寺の皿を割りてや河童の忌
(5)曲がり家の屋敷童子や囲炉裏端
(6)つがる野の藁焼くけむり暮の秋

 ご教示を。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)この表現なりの魅力はあると思います。普通にすると「友の死を忘れて梨の水臭し」
(2)「消へゐて」がやや不可解。水が止まっているのなら「止まりて」でいいのでは。
(3)いいと思います。句またがりの面白さがあります。「蛸足の」は「蛸の足」でも。
(4)「割りてや」がすっきりしません。
(5)(6)報告にとどまっています。

(1)湧く雲を数へてをるや夏湯治  未知(50代,男)
(2)茄子の花妻の天下を良しとして
(3)白神の眠りの中に滴れり
(4)おふくろの後姿や烏瓜
(5)はまなすや遠き国より波寄せて

 ご教示を。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)内容は明快、「をるや」が冗漫。
(2)(4)(5)いいと思いますが、やや概念的では。
(3)山眠る(冬)の季語もありますが、これは白神山脈の夏の未明の景として素直に受け取りました。いいと思います。


2007年8月6日

(1)大潮に玉屋玉屋の花火舟  藤井茂子(60代,女)
(2)残月を背に受け夏の川上る
(3)八月の空見上げては雀行く

ドクター星野の診断と処方箋
(1)賑やかでいい風景ですが、報告にとどまっているように思いました。
(2)「川上る」のはかなり特殊な状況で、句の背景が掴めませんでした。
(3)「八月の空見上げては」に比べて、「雀行く」がやや投げやりな印象です。

(1)立葵いっせいに皆しゃべり出す  ポリ(50代,女)
(2)梅雨寒やすってんころりん夜が明けた
 拙い句をみていただきありがとうございます。今回もどうぞよろしくお願いいたします。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)いいと思います。どういう場面なのかは分かりませんが、「立葵」とよく合っていると思いました。
(2「すってんころりん夜が明けた」のナンセンスが「梅雨寒」とは合わないように思いました。

二枚目のキャベツにひそむ青虫や  芳江(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
 「や」は青虫への呼びかけのように受け取りましたが、どのように呼びかけたいのかが分かりません。作者も考えて見てください。

路巾に夕餉の匂い夏の夕  由利子(70才以上)
 実際に感じたことなのですが、よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
 「路巾に」が面白いと思いました。夕餉の匂いが道いっぱいに広がっていたのでしょう。

轟音と黒きこおろぎ空にあり  郁子(60代)
 「黒きこおろぎ」はヘリコプターのことなのですが・・・よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
 「黒きこおろぎ」に実在感があります。「轟音」が効いているのでしょう。

会話なき卓にトマトの入日色  れい(70才以上)
 「食前酒冷えたトマトの入日色」のご講評有難うございました。仰って下さったとおりだと思いましたので、このように変えてみました。よろしくおねがいします。
ドクター星野の診断と処方箋
 いいと思います。「入日色」に読む人それぞれの何かを感じられる句だと思います。

(1)濡れてゐし舗装路えごの花垂るる  文の子(60代,男)
 7/28、30のご診断有難うございました。休日はパソコンを触らないことが多く、お礼が遅れて申し訳ありません。「黒ずみし舗装路えごの花垂るる」を推敲しました。
(2)連発の煙残りぬ大花火
 7/30の診て頂いた「宿題に追はるる晩夏孫ら来て」は孫の宿題に追われた方で、ご教示頂いた「孫の来て」に改めます。「ら」は「娘は孫の宿題を私に押し付けた」なのですが、無理があることが判りました。有難うございました。7/28は隅田川の花火でした。
(3)大花火テレビカメラへ手を振る子
(4)大花火他所の子に手を繋がれて

 宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)いいと思います。
(2)目の付け所はいいですね。
(3)報告にとどまっているように思います。
(4)いいと思います。そういうところが子どもの可愛さですね。

(1)老鶯やもみじの風の中にをり  小口泰與(60代,男)
(2)噴煙を浴び夕顔やよべの雨
(3)白樺をゆらぎて走る山霧かな
(4)朝焼けの横雲長き浅間かな

 よろしくご指導願います。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「もみじの風」に戸惑います。
(2)「や」で切る必要を感じませんでした。
(3)「ゆらぎて走る」がこなれない表現です。
(4)いいと思いました。

今日は西あすも歩くや秋に入る  さくら(女)
 宜しくご教示下さい。
ドクター星野の診断と処方箋
 「今日は西」が曖昧すぎるような気がします。


2007年8月5日

廃線の鉄釘ゆるむ土用かな  涼(70才以上,男)
 よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
 「廃線の鉄釘ゆるむ」が分かるようで分かりません。

蟷螂の子獲物捕らえて睨めつける  岡野直樹(40代,男)
 獲物を盗られまいとして、こちらを睨みつけているようにしたかったのですが。
ドクター星野の診断と処方箋
 難しい状況ですね。とりあえず「の子」は省き、「睨めつける蟷螂獲物得てもなお」「得て後も」などと考えてみましたが。

猛暑とて風呂は熱めや渋団扇  豊田ささお(70才以上,男)
 まったく自選ができませんがお送りします。先日来蝉の句では、しつこすぎてすっかりお騒がせしました。
ドクター星野の診断と処方箋
 「猛暑とて」が説明的です。

(1)後ろ手の案山子うな垂れたまま雷雨  やすぼう
(2)病むように立ちスコールの濡れ案山子
 よろしくお願いいたします。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)同じような雰囲気の言葉が並び損をしているように思いました。
(2)全体が「濡れ案山子」だけで言い尽せます。前半の字数が惜しいと思いました。

腹這う子足裏白し柿若葉  えいこ(50代,女)
 宜しくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
 「腹這う子」がいくつくらいの子なのか迷いました。「柿若葉」なら赤ちゃんでしょうか。外遊びの出きる子が日焼けして「足裏白し」なら「柿若葉」は合わないように思います。

(1)静かさに紺のまつはる浴衣かな  未知(50代,男)
(2)流星のこゑのとぎれる硫黄島
(3)ホームより介護のこゑの明易し
(4)蚕しぐれの中なる闇の者たちよ

 ご教示を。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「静かさに紺のまつはる」 が分かりませんでした。
(2)(3)(4)イメージで詠んだような弱さがあります。

蝉の鳴く中にひと日の夢の跡  花彦(20代,女)
 以前から,一度診断していただきたいと思っておりました。初投句クリアボタンと格闘す。頂戴した処方箋をきちんと飲んで,快方に向かいたく存じます。よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
 雰囲気はあるのですが、「ひと日の夢」を読者に伝えることができていません。また、俳句は短い詩形ですので、「蝉」の一語で「鳴く」も含まれますし、「蝉時雨」という単語もあります。詰め込みすぎはいけませんが、字数を最大限に生かす工夫をしてみてください。

消しゴムに彫る落款や夏見舞  しんい(女)
 宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
 「や」で切る必要を感じませんでした。「で」でいいのではないでしょうか。また、「落款」ではなく「夏見舞」を魅力的にするようなものを彫ると尚いいのでは。


2007年8月4日

(1)蚕こしぐれの板の間に敷く花むしろ  未知(50代,男)
(2)鍬の柄の手に馴染みたる梅雨晴れ間
(3)旅にゐてなんじゃもんじゃの花と会ふ
(4)河童忌の過ぎてや影の立ちにけり
(5)流星のこゑのとぎれて虫の声

 ご教示を。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「花むしろ」に「蚕しぐれ」がかすみます。
(2)「手に馴染みたる」は常套句ではないでしょうか。
(3)いいと思います。なんじゃもんじゃは「ひとつばたご」というそうです。
(4)「影の立ちにけり」には魅力も感じましたが、具体的にイメージが湧きませんでした。「河童忌」にしかヒントが無く、読者には伝わらない表現だと思います。
(5)いいと思います。「流星のこゑ」には降るような流星群を想像しました。

動物の森の怪談夏止まる  裸時(30代,男)
 以前hさんに診断してもらった句の推敲です。
ドクター星野の診断と処方箋
 「夏止まる」は面白いと思いますが、「動物の森」が具体的にイメージできませんでした。

木下闇いにしえ人の墓のあり  永田岬(60代,女)
 大覚寺に行ったとき源融のお墓があり名前が長くて575に入らず、「いにしえ人」としましたが、他にどの様な言葉で表せば良いでしょうか?
ドクター星野の診断と処方箋
 素直に詠んでおられると思いますが、一句全体が報告にとどまっています。大覚寺の木下闇に源融のお墓を見つけられた、その日のことを、10句20句と作られて、まずご自身の感動の在り処を確かめることが肝心です。そうした中で、墓という言葉を使わなくても、源融その人が現れることもあり得ます。今年できなくても、何年か先にふとできることもあり、そうした瞬間を待つ楽しみも俳句にはありますね。

(1)白玉のさるとるのしりたいへんだ  汽白(40代,男)
(2)すべて瞳になってすわっているの夏
(3)夏草の花にしゃがんでいた古城

 いつも、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「さるとるのしり」が分かりませんでした。
(2)いいと思います。透明感があります。
(3)いいと思います。ヨーロッパの古い小さなお城を想像しました。

蝉生れぬ公園の夜は白々と  豊田ささお(男)
 蝉生れ(羽化)て何がどうなるというわけでもないのですが、人はそこに意味を見つけようとするのですね・・残念なことに私の中では何も起こらないのです。
ドクター星野の診断と処方箋
 いいと思います。私は一晩中蛍光灯がついている公園の夜が「白々と更けていく」のを想像しましたが、勿論夜明けを想像してもいいですね。何より、「白々と」に「残念なことに私の中では何も起こらないのです」という作者の感慨が重ねられた所に「蝉生れぬ」の新しい句の誕生を感じました。

(1)真夏日のたまに定食屋に入る  北野元玄(60代,男)
(2)虚無感を蛇一本で括りおく
 「梅雨空というさりげない怠惰」が気分が好いですね。有難うございました。「直進の台風隣家で右に逸れ」が俳句ではないと一刀両断されましたが、その理由をご教示いただければ嬉しいのですが。台風の進路に一喜一憂するのが、何か変ですか?
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「たまに」は考える余地があると思いますが、「真夏日」と「定食屋」、いいと思います。
(2)「虚無感」とは言わずにそれを表現してほしいと思います。「蛇一本で括りおく」も具体的にイメージが結び難い表現です。
 俳句を考える時、具体的には言葉で考えていくしかないのですが、その過程で言葉と言葉の結びつきの中から「詩」が生まれた場合、一句が出来るのだと思います。それは恩寵のようなもので、仕組んでできることではありません。ですから、俳句になるかどうかはその「詩」を賜ったか賜らなかったかで、作者の責任ではないのです。できたと言って自慢できるものではなく、できなかったと言っても次をまた作ればいいのです。作り続けることが俳人の条件だと思っています。

(1)奥利根の流れの流転花火かな  小口泰與(60代,男)
(2)まひまひや埒も無きもの流れおり
(3)臈たけし紅の和菓子や白絣

 よろしくご指導願います。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「流れの流転」は無理な表現ではないでしょうか。
(2)「埒も無きもの流れおり」に具体的なイメージが湧きませんでした。
(3)全体が同じような情緒に流れてしまっています。


2007年8月3日

(1)アスファルトに蛇の屍や日の旺ん  蓉子(50代,女)
(2)凌霄は夕日のいろをのこしをり
 的確なご指導ありがとうございます。「けり」か「をり」かで迷ったのですが。よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「日の旺ん」は中七までで分かります。「蛇」も季語ですので、ここは大胆な取り合わせを考えられてもいいのではないでしょうか。
(2)「けり」で終わった方が一枚の写真のようにすっきりすると思います。ただ、全体が凌霄の説明になっているのが残念です。

(1)片陰の失せ短針の隠れけり  文の子(60代,男)
(2)塀出る紫陽花雨に籠りし子
(3)蒲公英の絮や研修娘(こ)の了へて
(4)頂の白き紫陽花くにざかひ

 宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)現代的なモチーフの取り合わせです。真夏の正午、暑そうですがひんやりした手触りがあります。とてもよいと思いました。
(2)「塀出る紫陽花」ははみ出して咲く様子だと思いますが、わかり難い表現です。
(3)内容はよく分かるのですが、「研修娘の了へて」の語順がややこしく思いました。
(4)いいと思います。

咲く花と散りゆく花の遠花火  れい(70才以上)
ドクター星野の診断と処方箋
 花火を花に見たてられた句ですが、全体が遠花火の説明になっています。

(1)ダンディな男の傘や梅雨の朝  由利子(70才以上)
(2)愁いごと多き世となる青梅落つ
(3)梅落ちて地にへばりつく雨上がり
(4)水たまり静もりてなお梅の雨

 よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
(2)「愁いごと多き世となる」は大雑把すぎる表現です。
(4)発想はいいと思いますが、「梅の雨」が分かりませんでした。

(1)月煌々照らす心に石一つ  郁子(60代)
(2)サルビアに気を送るかに黒き蝶
(3)稜線を雲乗り越える岳の夏
(4)スポットを浴びて友舞う杜若

 いつも有難うございます、ご指導よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
(3)がいいと思います。
(4)「友舞う」がわかり難く思いました。「杜若友スポットを浴びて舞う」「舞う友のスポット浴びし杜若」など工夫してみてください。

(1)蟻の巣に水を入れたり我みにくし  芳江(70才以上)
(2)冷蔵庫チョコの入れ忘れもどりけり
(3)陽にやけし肌あらわなるおさな顔
(4)二の腕にタトウのちらり半夏生

 はじめまして、よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
(3)が出来ていると思います。
(4)「ちらり」は「見えし」に。俳句はあっさりした表現でいいのです。

背に溜まるひかり重たし夏は来ぬ  悶朗(50代,男)
 初心者です。よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
 「重たし」の感受には賛否が分かれると思いますが、意欲的な作品です。


2007年8月2日

(1)噛締めて飯かみ締めて終戦日  えんや(70才以上,男)
(2)片影に顎掻く猫の目を瞑り
 いつもいつも有難う御座います。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)いいと思います。作者が終戦日を詠もうとされる緊張感は伝わってきました。
(2)これだけでは句に成り難く思います。

(1)日の暮れて平凡ですね冷奴  未知(50代,男)
(2)白シャツをひろげるすきにたたまれり
(3)魚の群のぼりゆく七夕の雨
(4)白南風や駅前のバスターミナル
(5)菊膾身持ちのかたき人なりや

 ご教示を。
ドクター星野の診断と処方箋
(3)(4)がいいと思います。

山人衆の頭上をにいにい蝉渡る  豊田ささお(70才以上,男)
 「長談義頭上をにいにい蝉渡る」を直したつもりです。一つ思いつくとそれ以外に考えられない癖があります。少し離れてみる癖をつけようとしてはいるのですが・・・
ドクター星野の診断と処方箋
 こうなると「山人衆」がよく分かりませんね。「渡る」という言葉に惹かれるものはあるのですが、これはかなり長い距離の移動を連想させます。前回の「蝉ひとつ頭上をよぎる長談義」で決定番とされてはどうでしょうか。

(1)よしきりや葭茫茫と捨小舟  しんい(女)
(2)短冊の一句揺れをり陶風鈴
 宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)近い言葉ばかりが並び、全体の印象を薄くしています。
(2)いいと思います。

(1)飼ひ犬の吾が片陰を歩みけり  文の子(60代,男)
 この片陰は季語から外れるでしょうか。
(2)外側は若者郡上踊の輪
(3)故郷の踊替はらぬ友の癖
(4)土用波ビーチバレーのコートにも
(5)遠花火音の在り処を児に問はる

 宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)季語からは外れると思います。吾が「影」でいいのでは。
(2)(3)内容はよく分かるのですが、報告にとどまっています。
(4)「ビーチバレー」に「土用波」は言い過ぎのようです。
(5)素直に詠まれた句だと思うのですが、全体が遠花火の説明になっています。

(1)夕焼やじやんけんぽんでまた遠く  せいち(60代,男)
(2)じやんけんで石段登る雲の峰
 宜しくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)いいと思います。
(2)いいと思います。

(1)古本の十文字掛け熱帯夜  藤井茂子(60代,女)
(2)朝曇錦糸卵の出来上がり
ドクター星野の診断と処方箋
(1)いいと思います。古本が何冊も十文字に縛られて積まれていれば、暑苦しいですね。
(2)好みもあるのですが、「出来上がり」はやや唐突でしょうか。また、「ゆで卵剥けばかがやく花曇」を連想してしまいました。発想が似ているのではないでしょうか。「錦糸卵を刻みけり」「飾りけり」では。

(1)画用紙を溢れて咲ける日輪草  千鶴子(60代,女)
(2)かご枕抱えて探す風の道
 どうぞよろしくお願いいたします。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)いいと思います。
(2)内容は良くわかるのですが、報告にとどまっています。

(1)おにぎりは海苔半切と梅干しを  さくら(女)
 いつもの倍の海苔を使いました。
(2)どのひと(女)も黒日傘さす午後3時
 いつもご指導有難うございます。宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
 素直に詠んでおられますが、(1)(2)とも報告にとどまっています。
(1)はいつもの倍の海苔を使ったわけなども知りたくなりました。
(2)「午後3時」の限定が分かりません。


2007年8月1日

ててててて字が徹底なスイカより  裸時(30代,男)
 今日は暑くて歩き回ったのでくたびれました。
ドクター星野の診断と処方箋
 「字が徹底な」は無理な表現です。

(1)流星とみせて蛍の藪にそれ  山本葆博(60代,男)
(2)のうぜんの花咲のぼるみ空かな
(3)初蝉や今を盛りと啼きつべし
(4)魂極る命を光る蛍かな
(5)蕭々と霖雨蜀魂か玉音か

ドクター星野の診断と処方箋
(1)「流星とみせて」はやや強引でしょうか。「流星と見えて」で良いと思います。
(2)「花咲きのぼる」までは興味をもって読みましたが、「み空かな」はなんだか肩透かしをされたようでした。
(3)「初蝉」の初々しい情感と、願望ではあっても「今を盛りと」は合わないように思います。
(4)いいと思います。
(5)「蜀魂」が分かりませんでした。

(1)片影に猫があご掻く目を細め  えんや(60代,男)
(2)のうぜんや夫亡き人の家広し
(3)庭石に腰掛けなほも草を引く
(4)特選に「シンジラレナーイ」蝉時雨

 いつも拙い句、ご指導有難う御座います。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)報告にとどまっています。
(2)いいと思います。のうぜんは漢字、座五は「広く」でも。
(3)いいと思います。
(4)ユーモラスなのですが、これだけでは句に成り難く思いました。

(1)色のない虹を見ている僕がいた  北野元玄(60代,男)
 「色のない虹」というフレーズを新発見(?)しました。やはりピーターパン・シンドロームの傾向があるのかな・・
(2)七色の虹モノクロのジャンギャバン
 ジャンギャバンより嵐寛十郎とか越後獅子の方が自分には似合っているのですが・・・。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)抽象的なフレーズが二つ並び、読む手がかりが掴めません。
(2)いいと思います。「七色の虹」は意味を持ちませんが、「モノクロのジャン・ギャバン」を呼び出す掛詞の働きをしているようです。また、ジャン・ギャバンは(大きく派手で?)七色の虹にもどこかで繋がっていますね。アラカンや越後獅子ではいけません。

(1)神々のほほ笑み座る冷房車  三郎(70才以上,男)
(2)廃校の里に迎えよ夾竹桃
(3)夕の風迎え通すや夏座敷

 よろしくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)涼しげな乗客を神々に見たてられたのですね。私は面白いと思いましたが、人間を神に喩えるのはかなり特殊です。死後を連想されると賛否は分かれそうです。
(2)何を迎えるのか、誰がむかえるのか、分かりませんでした。
(3)報告にとどまっています。

花へちま風さはさはと吹き抜くる  しんい(女)
 宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
 「花へちま」は「へちま咲く」でいいのではないでしょうか。「さはさは」が糸瓜棚を吹く風の音を連想させて、いいと思いました。

輝ける雲の一片夏終わる  蓉子(50代,女)
 少し早いですが、夕日に染まってゆく雲の一片に見いっていると、なんとなく夏の終わりを感じてしまいました。よろしくおねがいします。
ドクター星野の診断と処方箋
 飯島晴子の句に「泉の底に一本の匙夏了る」があります。どちらも耀くものを詠んで夏を惜しんでいるのですが、小さな「匙」の存在感、若い人たちのキャンプなども連想させる具象性に比べると、写生の句だとしても「雲」は抽象的ですね。晴子の句が有名なだけに、どうしても比べられてしまう損な句なのではないかと思いました。

(1)空蝉や二時告げる鐘こだまして  えいこ
(2)二時の鐘氷の旗の揺れもせず
(3)校庭にゼラニュウム赤く青春

 植物園で目と耳を凝らしてみました。宜しくお願いします。
ドクター星野の診断と処方箋
(2)がいいと思います。よく見ておられます。
(3)「青春」と言いたい気持ちは分かるのですが、ここはぐっと我慢して具体的な物を捜し当ててください。よくなると思います。

(1)頃合ぞ氷室覆ひし笹黄ばむ  文の子(60代,男)
(2)木下闇警官腰を落としゆく
(3)稲妻に見入る児音に竦(すく)みけり
(4)丑三つの郡上踊の勢(きほ)ひ増し

 上5で軽く切りたいのですが、「丑三つや」でしょうか。宜しくお願い致します。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「頃合ぞ」と言える全体の状況が特殊なように思いました。
(2)「腰を落としゆく」が屈んで進む状況なのか「腰を下ろしつつある」ということなのか迷います。
(3)内容はよく分かりますが、報告になってしまいました。
(4)「や」でいいと思いますが、座五を「増す」と終止形にされるとより切れがはっきりします。

(1)月の石見に行った日のラムネ玉  遊雲(70才以上,男)
 ラムネ玉かソーダー水か迷いました。
(2)愛宕から比叡のお山へ大西日
 「お山」だと8字かも知れませんが滑らかに読めるので。
(3)海開き今年も絵手紙父から来
 下五、「父から来」か「絵手紙来」か。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「ラムネ玉」でいいと思います。1970年の万国博覧界は月の石が呼び物でした。「の」は「や」と切られてもいいかもしれません。
(2)比叡山は「お山」で通るのですが、句は報告にとどまっています。
(3)どちらかと言えば「絵手紙来」ですが、「今年も」は句を弱くします。「父からの絵手紙の来る海開き」などいろいろ作って見てください。

(1)蚕しぐれや板の間に降る窓明かり  未知(50代,男)
(2)あぢさゐや火傷の泡のオキシフル
(3)ひたひたと海底に溶けゐつつ秋
(4)影の再た影の重なる今朝の秋
(5)その瞬に脳あからむや新走り

 ご教示を。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)いいと思います。板の間が目に浮かびます。
(2)「火傷の泡のオキシフル」とあぢさゐの取り合わせが成功しているとは思えませんでした。
(3)主体が分かりません。
(4)「影の再た」が読めませんでした。
(5)「その瞬に」はそのときにでしょうか。独創的ですが、「脳あからむ」は説得力に欠けると思います。

(1)亡き姉の浴衣姿や目覚めけり  えんや(70才以上,男)
(2)出会ひける守宮の四股踏む構へ
 いつも的確なご診断、大変嬉しく思つております。
ドクター星野の診断と処方箋
(1)「や」で切る必要を感じませんでした。「に」でいいと思います。
(2)破調の句ですが、「守宮四股踏む構へなり」とすると語調が整います。