俳句クリニック 2007年9月前半分(ドクター:えなみしんさ)

「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。

9月と10月の担当ドクターはえなみしんさです。
<プロフィル>
 数年前までコピーライター。言葉の専門家と自負していたが、それは広告の上でのこと。コピーには、切字もなく、花も咲かず、鳥も飛ばず、口語専門。俳句と広告が似ている所は、読み手がいないと作ってもむなしいことか。まずは、わたしがみなさんの句の読み手になりましょう。楽しみながら、俳句の森をさまよえたらと思っています。
 俳句以外の趣味は、フラダンス(踊る)。柳名、新・若旦那で万能川柳に投句。漢検2級、日本語教育能力検定合格、FP2級、その他あれこれ検定マニア。
 よろしくお願いします。

ドクターえなみの診断
2007年9月15日

(1)自転車のサドルちひさし小鳥来る  まりあ(40代,女)
(2)自転車を漕ぐ前屈み秋燕
(3)白衣手に往診に来る水の秋

 先日車の窓から、サイクリングの自転車が目に付いて。「お尻が痛そう」と思う程、サドルの小ささが印象的でした。あのサドルは痛そうですが、自転車に乗ってみたい‥と思いました。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)コメントを読むんじゃなかった〜。予備知識が入ってしまった〜。しかし、読まなくてもいい句と思ったでしょう。季語の取り合わせもいいです。「痛そうなサドル」でも句になるかも。
(2)もしかしたら、レーサーのようにカッコ良く前屈している姿なのかと思うが、「前屈み」ではカッコ悪い姿しか思い浮かばない。
(3)「白衣手に往診に来る」という情景が思い浮かばない。

(1)十月や花舗の玻璃良く磨かれて  文の子(60代,男)
(2)露の朝辞任せし友故郷へ
(3)妻ケータイ我はパソコン長き夜

 感性の乏しい掲句ですが宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)十月俳句。たとえば十月と、その後の12文字が響いているかどうかは非常に感覚的。この句では、十月があまり効いていないような気がした。花舗がこなれていない言葉。
(2)たとえば、日記に書き込んであるならこれで良しでしょう。人にみせる俳句としては、報告句。
(3)新しい句材で、対比がちょっと面白い。しかし、俳句としての詩的感興はない。(わたしたちは、俳句に何を求めているのだろうか〜という思いが)

(1)野分あとおばけ傘立つ戸口あり  センリ
(2)ドリアンの殻とげとげし夜ひとり
 いつも見てくださりありがとうございます。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「おばけ傘」とは何か?ゲゲゲの鬼太郎の親戚か? (^_^;)ゞそれとも「お化け煙突」のような使い方か?これが分からないので、景が定まらず。
(2)ドリアン、わたしもタイ、インドネシア、シンガポールなどではまった一時期がありましたが、この情景をどう受け止めていいのか困惑。「夜ひとり」が困惑の原因では。

(1)この秋のとんぼの数の少なさよ  小口泰與(60代,男)
(2)芒野や密かなるもの猫の爪
(3)密やかな風のそよぎの花野かな

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
 前々回の句、「山風に強くはじけて鳳仙花」。読み返したら鳳仙花の生命力を感じ、いい句だと思いました。瞬間で判断して書いていますので、前後の句やその日の体調などで、感じ方がぶれることがあります、お許しください。
(1)この背景には、環境問題への思いがあるのでしょう。この言い回しでは伝わらない。難しい句材ですね。
(2)う〜ん、そうかも知れないが、膝をポーンと叩くところまで行ってない。
(3)これは小口さんにしては平凡でしょう。

完売の垂れ幕長し式部の実  藤井茂子(女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 式部だから御簾(みす)などを連想して「垂れ幕長し」なんでしょう。恐れ入りました(^_^;)ゞ

(1)爽やかや赤き橋超へ図書館へ  さくら(女)
(2)鳩吹きて大王松を見上げる子
 お寺の大王松に山鳩が巣を作りました。これは絵になると思い作句したのですが、 なかなか難しく---報告調でしょうか。宜しくご指導下さい。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)前回、すっきり詠むこととアドバイスさせてもらいました。その点ではよろしいと思います。「爽やかや/赤き橋越へ」て行くのが図書館では絵にならない。フィクションでもこの世にない所に行くとか、嘘でも変なところに行くとか考えてみたらどうでしょう。俳句は創造でもあるので。あるいは、隠すという方法もあります。「赤き橋越へ行きました」のようにどこに行くかを提示しない方法です。これがいい句という意味ではなく、方法のあれこれであると理解してください。
(2)漢字で書けてもニュアンスを考え、カナでかけばいいのです。「鳩吹きて大王松をみあげる子」の方が読みやすいのでは。「吹きて」が歴史仮名遣い。「見上げる」が現代仮名遣い。どちらかに統一。「〜して」→「それからこうした」と手順をそのまま書くと、面白い句にならない事が多い。やはり報告です。この一連の流れで、何がオヤッと思ったかを自分と相談してみてください。

(1)卒業式友の癖ある笑ひ方  藤(10代,男)
 今年の2月、高校を卒業致しました。時季外れですが宜しくお願いします。
(2)旧師より連絡のある秋の夜
 宜しくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「癖ある笑ひ方」が好意的に使われているのか、その逆で、嫌いだというのか文脈から判断できない。「友の」「癖ある」「笑ひ方」どれかを省略する。「卒業式友の笑顔懐かしく」(非常に駄句)、「卒業式泣きべそという笑い方」(季語と近すぎる)などの工夫を。
(2)これは全くそのままの報告で、用は何なのか、それからどうなったのかなどを暗示しなければ句にならず。

(1)男老い赤まんまなど摘んでもみ  せいち(60代,男)
(2)一編の遠かなかなといふ詩歌
 宜しくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)哀感あふれる句だが、気がめいってしまい、こういうのはニガテです(笑)。「もみ」が「揉み」と読めてしまったが、補助動詞の「見る」でした。文脈的に「揉み」と読みやすいところだが、小手先の対策は思いつかない。いいアイデアはないか〜。
(2)詩情あふれる句です。「遠かなかな」だからいいのだと思いますが、理解してもらえるか。「遠ー花火」「遠ー火事」「遠ーかわず」「遠ーすめろぎ(天皇の祖先)」「遠ーつ国」「遠ー妻(遠いところにいる妻)」「遠ー吠え」「遠ー山」など。ここら辺でやめておきますが、法則を見つけるのは難しいかも。「遠ーかなかな」は一般的でないというだけの事でしょう。「一編の〜といふ詩歌」は、「〜」の中身がポイント、また使えそう。

蜜柑の香ともに相席ローカル線  雅(50代,男)
 「ともに」は「供に」という意味ですが、相席客の蜜柑だということが分かるで しょうか。
ドクターえなみの診断と処方箋
  「蜜柑の香/ともに相席ローカル線」と切れているが、「ともに」は「香ともに」と読まれやすいところ。また漢字では「蜜柑の香共に相席ローカル線」で、意味不明に。575で読んでくれると信頼するしかないのですが、気になったら「蜜柑の香 ともに相席ローカル線」と開けたらいかがですか。ただ、一緒に座るから相席というので「ともに相席」は「馬から落ちて落馬して」のように持って回った言い方でしょう。ローカル線は、具体的に線の名前を使うとイメージがふくらむので は。いろいろと考えて楽しんでください。

(1)この国を捨てばやと説く羽抜鳥  未知(50代,男)
(2)死化粧をする汗玉の女ゐる
 ご教示を。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)たとえば説法を説く親鸞のような事をイメージした(こう説いたかどうかは知らないが)。異色の句材。羽抜鳥をこのように使うのがすごい。何か強烈な印象を受ける。読書、演劇、映画などが下敷きとなっているのでしょう。
(2)これはナゾの句。汗玉という言葉はたぶんないので「死化粧をする汗/玉の女ゐる」と切るのだろうか。「汗だく」と同じ意味だろう。ひとつは、葬儀をなりわいとする女性が、汗だくになって化粧をほどこしている。もうひとつは、舞台女優が楽屋で死化粧をしている。その他の解釈もあるかも。不思議な句。2句とも内容が伝わりにくいので、句の前にガイドになる一行あった方がわかりやすい類の句だと思う。


2007年9月14日

ライバルに大切りのピザ鰯雲  藤井茂子(女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 「大切り」の言い回しが藤井さんらしいが、この句は句意が理解できない。

(1)いつまでも不仲の金魚飼ひにけり  えんや(70才以上,男)
(2)いつまでも不仲の金魚残りけり
(3)富良野へと女の帰る残暑かな

 夏祭りに孫の買った5匹の金魚が二匹が残りました。宜しくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)(2)「不仲の金魚」というのが句のポイントなので、「飼う」 も「残る」もいらない。例えばですが「いつまでも不仲のままの金魚かな」のような方向に持っていくのがいい。金魚といえば、火箱游歩さんの「金魚には少し歪んでいるわたし」があります。金魚句まだまだあるでしょう。
(3)いい雰囲気ですが、現場にいないと共感できないつくり。たぶん、女と言っても誰で、どんな関係なのか分からないから。「女来と帯纏き出づる百日紅/ 石田波郷」と比べてみてください。

ぽくぽくと足裏クラブ濁り酒  裸時(30代,男)
ドクターえなみの診断と処方箋
 「ぽくぽくと→足」「足→裏クラブ」と連想で言葉が続き、ここまでがワンフレーズと読め、濁り酒とぶつける。足裏クラブまで馬でやってきて、濁り酒を飲んでいるというのが、ひとつの読み方か。「切り株やあるくぎんなんぎんのよる/加藤郁乎」は、「歩く銀杏、銀の夜」とも「ある苦吟、難吟の夜」とも読める。揚句は、これとは違うが10人いたら10人の感じ方ができて面白い。ここら辺が裸時さんの真骨頂でよろしいと思います。しかし、難しい挑戦ですね〜。

嵐来る欄干に一羽秋の蝶  えいこ(女)
 先日の台風での一齣です。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 言葉がごろごろして美しくありません。数えれば585です。「嵐」が秋の季語。「秋の蝶」とダブります。全部言おうと思わないで、オヤッと思ったことにマトを絞るのが、俳句のコツです。ワンポイントを伝え、残りは連想してもらえばいいのです。

(1)雪しまく町逆針の船磁石  蓉子(50代,女)
(2)思い切ることとは萩の月明かり
 ていねいなご診断ありがとうございます。皆さんへの処方読ませていただくと参考 になります。雪の句は以前句会に出しても良くなかったのですが、じぶんではそうで もなく思いますので、ご診断おねがいします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 多少でも参考になれば、ご返事を書いているハリがあります。
(1)とても面白い句です。日本の磁石には、普通の針と逆回りの「逆針(さかばり)」があり、それを詠んだ。が、この句を読んで理解できる人は、ほんのわずかでしょう。わたしも調べて分かりました。俳句は、座の文芸といいます。同席したメンバーに伝わるかどうかに気を配るのは作句前の心構えです。作品として俳句が独立することになっても、伝わるかどうか、独りよがりや知ったかぶりになっていないかのチェックは大切だと思います。季語の取り合わせもとてもいい句ですが、句会で評判が良くなかったのは、以上のような事でしょう。
(2)「思い切ることとは/萩の月明かり」。う〜ん、俳句らしい伝え方で感心しきりです。

(1)新走り忘れ形見のぐい呑みに  しんい(女)
(2)七夕竹しなるロビーや出湯宿
 よろしくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)今昔物語のようで、面白いですね〜。
(2)「出湯宿」と場所を限定してあるので「ロビー」がいらないでしょう。まずはロビーをはずす。次にオヤッと思ったことをプラスして575の手順でしょう。

(1)露の玉みどり児こゑをあげそめし  未知(50代,男)
(2)限無しや翁をきなの忌が並ぶ
(3)薔薇寺に漢かけこむ秋驟雨

 ご教示を。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)やまと言葉のチョイスで、いいと思いました。
(2)なんの事か?
(3)唐突に薔薇寺と言われても、なんの事か?


2007年9月13日

青き樹間に秋蝶の見え隠れ  さくら(女)
 駄句ですみません。宜しくご指導お願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「青き樹間」アオキジュカン?アオキコズエアイマ?まずは、575ですっきり詠むことを目指されてはいかがでしょう。

(1)秋澄むや削除のはいの続きおり  藤井茂子(女)
(2) 一人ずつ高き誇りの椅子の秋
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)スパムメールだろうか。ちっとも「秋澄む」ではないでしょう(^_^;)ゞ。わかりにくい句材。
(2)「 一人ずつ高き誇りの」は、オヤッと思わせるフレーズ。「椅子の秋」とは何か?たぶん、思いがすっきりと読めてないのだと思われます。

(1)遅刻せる先輩の夏帽子かな  藤(10代,男)
(2)秋のせみ入居者きまらない空家
 いつも鋭いご指摘ありがとうございます。大変、勉強になっておりますー。宜しくお願いしますー。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)表現がすっきりしていない。句意が読み取れない。
(2)「入居者のきまらぬ空家/秋のせみ」となるところをワザと調べを悪くしている意味は?入居者が決まらないから空家なのであたりまえ。

ヒグラシに急かされている永平寺  豊田ささお(70才以上,男)
 「蝉鳴いて階段長い永平寺」三段切れは、うっかりしていました。直しましたがいかがでしょう。
ドクターえなみの診断と処方箋
 こんどはいいですね(^_^;)ゞ

(1)ダイアナの追悼式典夏果てる  都(60代,女)
(2)星月夜見ていて一人こぼすもの
(3)頂の遥に湖秋の声

ドクターえなみの診断と処方箋
(1)報告というより、記録俳句。これはこういうものでしょう。
(2)「こぼす→涙」でしょうか。まさか愚痴ではないので。おもわせぶりはいいのですが、連想が働く動詞だともっといいでしょう。
(3)おおざっぱ、かつ見たまま俳句です。

(1)赤信号向かひに句友夏帽子  えんや(70才以上,男)
(2)図書室に移りし句会九月入る
(3)無灯火の自転車避(よ)ける星月夜

 どうか宜しくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)吟行では大受けの句でしょう。句会ライブ挨拶句の傑作。
(2)こっちはフツー。特に底5の受けがつまらない。
(3)星月夜だから道が明るい→だから、無灯火の自転車を見落としてしまいそうになるのか〜。こういう理屈が頭をよぎり、詩的感興が逸れてしまいました。

(1)教室の左側の窓紅葉す  ポリ(50代,女)
(2)色つきのかつらのような葉鶏頭
 ご指導ありがとうございます。今回もどうぞよろしくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)たぶんその通りだったのでしょうが、見てないわたしとしては、共感のしようもない。おそらく、なぜ左かのヒントがないからでは。
(2)「ごとし俳句」。ほほえましくあるが、例えとしては平凡かも。でもいいかもな〜、たとえば子供がこんな句を作ったら、すごくほめると思うので。

(1)膝下にビルの影伸ぶ今朝の秋  文の子(60代,男)
 9/7のご診断有難うございました。「山間に日の差し込みぬ柿花火」をお褒め頂き嬉しく存じます。「向かふよりビルの影伸ぶ今朝の秋」を推敲しました。
(2)子ら消えていま公園を法師蝉
 「子ら消えしいま公園を法師蝉」を推敲しました。
(3)天高しボールと靴の揃ひ飛ぶ
 宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「向かふより」→「膝下に」となった。説明的ではなくより具体的にはなったが印象は、あまり変わらないように感じます。ふとオノマトペが有効かと思ったのですが、どうでしょう。しばらくは、胸にあたためておいたらいかがでしょうか。
(2)、過去の「し」が「て切れ」になっただけで、何も変わってないのでは。たぶん、面白い句材ではないのでは。深追いしない方が得策かと。
(3)シャガールの絵は、恋人たちも、バイオリンも、ピアノもみんな空を飛んでしまいます。そんな風景が浮かび、よろしいかと思います。「揃ひ飛ぶ」は「イ音便」で「揃い飛ぶ」でもよろしいでしょう。

(1)梔子の花の香りや翁の碑  山本葆博(70才以上,男)
(2)秋風の蚊を吹き落とす夕べかな
(3)風楼に満つや山雨の寒々と

 最近とみに脳乱痴呆ぎみ。二重投句ごめんなさい。何のため、誰のための句作ぞや。人生不可解。両忘揀択ならず唯、日常底に生きるのみ。・・・。
ドクターえなみの診断と処方箋
 そうですね〜、「何のため、誰のための句作ぞや」が不明ですね。しかし思ったことを記録しておきたいのは本能なのでしかたがないのでしょう。(2)などは、芭蕉七部集にでてきそうな俳諧味のある句とお見受けしました。漢文の素養のないわたしは、山本さんのいい読み手ではないのだと思いますが、こんなんでよければ、続けて投句ください。「両忘揀択ならず唯、日常底に生きるのみ」って何ですか?(こんな事聞いてハジ)

(1)パイアール2乗の空はまるで秋  北野元玄(60代,男)
(2)秋麗の平方根は10.3
(3)円周率掛けて台風大型に

 秋の位置を原点に置いてみると・・、あまり興味が湧かなかったようですね。上3句も数学俳句です。小中レヴェルの数学/算数も、結構面白いですよ。ただし数学俳句はこれっきりにします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 専門知識を盛り込んだ句は、知ったかぶり俳句になり、皆がイヤな思いをするものなので、座にいる人が分かる範囲にコントロールすることが大事です。これがキチンと守られている(1)(3)は面白いと思います。特に(1)は好き。
(2)は、10.3の根拠が分からなかったので理解できず。思いがけないイメージが沸いてくるので、遠慮せずにどんどんやられたらいいと思いますよ〜。稔典先生のたんぽぽのような会心句が生まれる可能性を秘めている。

(1)晩夏かな安倍川砂利の間を流る  文の子(60代,男)
 東海道新幹線で普段は見過ごしている安倍川ですが、水の少なさに驚きました。
(2)群れてはす花と葉の丈揃ひをり
 「蓮群れし葉と揃ひゐる花の丈」を推敲しました。元句は上5で切りたかったのですが、連体形に読めるとのご診断により掲句としました。
(3)好球をキャッチャーフライ秋高し
 「天高く白球右へ逸れゆけり」を推敲しました。以前このクリニックで他の方の句ですが、「視線に動きが無い」と指摘されたドクターを意識したのですが、白球(ゴルフボールです)の句は、視線が不自然なのだと思いました。掲句は如何でしょうか。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)解説を読んでしまったので句意が分かってしまい、後悔しています(笑)。たぶん「安倍川砂利/の間を流る」読んでしまい、句意が不明になってしまったかも。気をとりなおして「安倍川/砂利の間を流る」と読んでも「砂利の間」というのが不明でしょう。言い当ててないのでは。
(2)苦心の改訂。漢字が続くときは「群れて蓮 花と葉の丈揃ひをり」と開けてでも、蓮は漢字にしないと意味不明になるのでは。あるいは上5を「蓮池や」と切るなどの工夫かも。文の子さんが伝えたかったのは、こういう事だったのでしょう。あまり面白い風景ではないのでは(笑)
(3)「秋たかし」のわたしのイメージは、痛快、快笑、スカッとするなど。悪くはないが、そこまで行ってない(独断的ですいません)。


2007年9月12日

(1)山裾を靄の流れと霧時雨  小口泰與(60代,男)
(2)愛犬と泊まりし宿の秋陰り
(3)団扇置く犬に向かひて独りごつ

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「靄の流れと霧時雨」のリフレインをどう考えるかですが、わたしは良いと思います。最初の「靄の流れ」は提示で、次の「霧時雨」 は、「霧の流れ」という特定された中の「霧時雨」。風景の印象を一層強くしています。
(2)「秋陰り」という季語を知ったのは最近のこと。わたしは「あきじめり」と読んでいたが、それは「秋湿り」で、これは「あきかげり」。角川「現代俳句歳時記」にはでていない。ついでに明治書院の古い歳時記にも出ていない。検索では「秋翳」の表記もあった。どうも「秋陰」と近い季語らしい。「春陰」と同じく外国人に説明しにくい季語だが、揚句は「秋陰り」を説明するのにふさわしい句になるのではないか。季語で生きている句で、感心。
(3)上5が面白いですね。

半時を聞き手に徹す秋の空  藤井茂子(女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 いい視点です。これでできていますが「半時」とは「一時」の半分の一時間かか?今や慣用句的な言い回しでしかないので、具体的な時間や、出来事などとからめてリアリティを持たす工夫ができるかも。

(1)野分前虫一つなく一つ啼く  未知(50代,男)
(2)秋の山より牛声の下りて来る
(3)破れたるままの障子で冬になる

 ご教示を。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)テクニックで思い入れをつたえようとしているが、いじりすぎではないですか。「ひとつ鳴く」を強調とも読めるし、ワンバイワンとも読める。
(2)散文的ですが、句材は面白いと思いました。
(3)散文っぽいのは、山頭火のような味を狙っているのでしょうか。あれは句がいいというよりも80%は生き方に共感しているのだと思っているのですが。この句材のようなものは、散文的なのも悪くないと感じましたが、だらだらした感じになりがちなので要注意です。

普段着のままで宜しく夜の秋  藤(10代,男)
 よろしくお願いしますー。
ドクターえなみの診断と処方箋
 何のことでしょう。句意がさっぱりです〜(困惑〜)

(1)赤々と水鏡して曼珠沙華  都(60代,女)
(2)廃屋を覆い尽くして竹の春
(3)曼珠沙華揺れるその畦陽炎いぬ

 何時も有難う御座います。宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)曼珠沙華が水面に映っているのを「赤々と水鏡して」と詠んだ句。わたしの好みは別として、よろしいのではないかと。
(2)吟行などで皆が目にした風景であれば、点が入る句でしょう。素朴な所は悪くない。
(3)曼珠沙華は秋。陽炎は春。曼珠沙華がかげろうのように燃えていたということでしょう。陽炎をはずし、言い方を工夫すれば句になるかも、難しそうですが。

(1)瞑想の如来坐像や銀河濃し  さくら(女)
(2)十六夜の欠け墨を手に外に出でぬ
 えなみドクタ−さま、はじめまして、よろしくご指導お願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 さくらさん、初めまして。ドクターに「さま」を付けるのはやめてもらえませんか、そういうガラではないので(汗)。
(1)思わせぶり俳句。「瞑想の如来坐像や」に全く工夫がない。
(2)欠け墨? すいません、句の意味が全く理解できません。

佇みて翁の句碑や秋の声  しんい(女)
 よろしくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 吟行では、句碑の句も必ず提出される。これも詠むのが難しい。というか、ほどんど常套句になってしまいがち。揚句もその典型のひとつ。季語は四季折々で、「菜種梅雨」としたり、「遅桜」としたり、「蝉時雨」としたり、便利な句だが、それ以上ではない。逆に、吟行でそこそこ点が欲しい人は、このような句を10ほど持って行って、季語を変えればカタチにはなるが、それでは俳句をやる意味がない。

雨雲の切れて覗けば天高し  えいこ
 ドクターえなみ、初めまして。久しぶりに診断仰ぎます。宜しくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 えいこさん、初めまして。雨雲が切れた→覗いた→天が高かった。という思考が一般的です。やはり、自分をくぐらすことが肝心でしょう。

(1)みんみんのいよよきはやか雨後の声  如月
(2)秋澄むやトトロ出さうな杜の青
 えなみドクターはじめまして。クリニック2ヶ月目です。(2)はトトロという表記なので口語で「出そうな」と、また「杜の青」を「森の青」とした方が良いでしょうか?初心者ですがよろしくご指導お願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 如月さん、はじめまして。せめて男か女かだけでも教えてください。
(1)「きはやか」が工夫ですが、雨後にみんみんの声が大きくなったという句材が平凡。
(2)口語俳句=現代かなづかい、文語俳句=歴史的かなづかい、が原則ですが、これにこだわる必要はなく、自分で決めればいい。「船団」の坪内稔典さんは、どんな俳句でも現代かなづかいと決めているように。「秋澄むや」と「杜の青」と同じような言葉が使われているのがモンダイ。視点が一般的な域からでてない。自分をくぐらすことが肝心かと。


2007年9月11日

(1)思春期の少女の翳り猫じゃらし  ウーフ(60代,男)
 猫じゃらしを詠みたくて詠みました。
(2)非核論夢か地球の秋の夜
ドクターえなみの診断と処方箋
 ウーフさん、はじめまして。
(1)「思春期の少女の翳り=猫じゃらし」と読んだのですが、そうですか。そうじゃないとしたら、句意が読み取れなかった。
(2)「非核論夢か」は全くおっしゃる通り。しかし、これは政治スローガンの言い回し。俳句は、自分の感性をくぐらす必要があるのでは。

(1)鈴虫の声入り来る電話かな  悠(70才以上,女)
(2)秋の草一本さして陶器市
 はじめまして、お世話になります。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 こちらこそ、よろしく。前回のは星野ドクターに出された句だったのですね。
(1)句意が面白いのでは。「入り来る」が未消化か。「声の聞こえる」が基本として、言い回しに見せ場が作れればいいのだが。
(2)俳句らしい、ディテールにこだわったいい着眼点。「陶器市」まで説明しなくてもいいかも。秋の草が一本さしてあった、にスタンスをおいた方がいいのかも。良くなりそうな予感が(^_^;)ゞ

頬撫づる風のさやけしこぼれ萩  しんい(女)
 よろしくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 品のいい句で、こういう句を好むメンバーが揃っている句会では数点はいると思います。しかし、句材(風が気持ちよい+萩)は、至って平凡。平凡なことは、言い回しで工夫して面白くするしかない。みんなが思うことを、みんなと同じ語彙(ボキャブラリー)や文脈(言い回しとも)で表現したら、みんな同じような句になってしまう。たとえ稚拙であっても、自分なりの感じ方、自分なりの言い回しの工夫が必要でしょう。わたし個人としては、すでに詠みつくされたジャンルの句に分類してしまうので、食指が動きません。

(1)パソコンの文字のかすみてしむ身かな  小口泰與(60代,男)
(2)山風に強くはじけて鳳仙花
(3)強き日に肌燃立つや薄荷咲く

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「かすむ」と「しむ」をかけたのでしょうが、肉体的な衰え→身にしむの因果関係がナマでしょう。
(2)鳳仙花がはじけるのは普通。句意が良くわからない。
(3)「強き日に肌燃え立つ」のは何かが分かりませんでした。

モノトーンの服の一服月見宴  藤井茂子(女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 「服」が2度現れるが、一度目は「モノトーンの服」、二度目は「煙草や茶を一服」と意味が変わる。自在なよみっぷりで感心。しかし、葬式のような花見だな〜と思う(^_^;)ゞ

(1)立秋や小さき地蔵の小さき影  未知(50代,男)
(2)土塀に突つかい棒をする蛙
(3)汐ふくむ夕月乳房の垂れにけり

 ご教示を。
ドクターえなみの診断と処方箋
 未知さん、初めまして。
(1)「小さき地蔵の小さき影」は当たり前。
(2)もしかしたら、蛙が塀のつっかい棒のように見えたという事か。そうだとしたら、ムリがあるのでは。
(3)この句に至るまでに、未知さんの頭の中で自分のフィクションができているのでは。読むほうはそれが分からないから、結果、「汐ふくむ夕月」とか「乳房が垂れる」とかの句意が不明になってしまうのかも。

(1)ぶつかってタンデムのままゆく蜻蛉  豊田ささお(70才以上,男)
 適切なご指導を頂き目から鱗の思いです。実は4日に句会があり兼題が芙蓉だったのですが、主宰から二重丸をもらった句はひとつもありませんでした。私も×でした。ま、当然ですが・・・
(2)桔梗の精風に誘われ世に出でぬ
 先日の「桔梗さん闇に向かって開いてね」を推敲するうちにマッタクちがったものになりました。
ドクターえなみの診断と処方箋
 そうですか、句会に出てらっしゃるのですか。好きな作家の句を読んでみること、まずは独断でもいいので面白がってたくさん作ってみることでしょうか。好きな句をノートに写すというのも聞いたことがあります。
(1)トンボの交尾という事かも。詩的感興とは違う方向でしょう。
(2)「桔梗の精」というのがムリがあると思うのですが、「闇に向かって開いてね」よりは、具体的なできごとを詠んでいるので進歩だと思います。しかし、風に誘われて世にでた、というのは甘い。

(1)花吹雪こんにちはしてさやうなら  藤(10代,男)
 「挨拶をしてさやうなら」を改善してみたつもりです・・・。
(2)台風の夜のいつもの会話して
 よろしくお願いしますー。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「挨拶をしてさやうなら」は、ほめたつもりだったのですが、書き方があいまいだったようです。この句では、花吹雪が、とんできてすぐ去っていくというだけなので、言葉の見せ場がないのでは。
(2)台風9号の日に考えたのでしょう。たしかに台風が来るたびに同じ会話をしていると思う。それは「いつもの会話して」では言い当ててないのでは。ついでながら、台風というとこの句「台風をみんなで待っている感じ/ 中田美子」

(1)秋ひとり母来た道の長かりし  都(60代,女)
(2)秋の暮れ振り向く道の長かりし
ドクターえなみの診断と処方箋
 2句とも、良く分かる句で、わたしも共感です。ただし、こういうことは誰も思うことで、あえてしみじみ言われると、ちょっとな〜という気持ちになってしまいます。ここから先の作者の個性(笑い、ユーモア、ど根性)のようなものを加味することが必要でしょう。


2007年9月10日

(1)送電塔雄々しく並び赤とんぼ  センリ(女)
(2)ひぐらしや三本立てるご神木
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「雄々しく並び」が面白いが、「送電塔/雄々しく並び赤とんぼ」「送電塔雄々しく並び/赤とんぼ」の両方に読め、イメージが定まらない。「雄々しく並び」を使いながら解決するのは、たぶん不可能。他の言い回しで解決なのでしょう。
(2)写生句という事でしょう、そのまま読めば普通の写生句。ただ、この「ご神木」が携帯の受信アンテナのことではないかと思い、それが面白かったのですが(笑)。

(1)のうぜんに呑み込まれたる垣根かな  うさぎ(女)
(2)麦藁帽綻びぬける夕日かな
(3)だぼだぼのシャツに絡まる夏の風

 ドクターえなみ、こんにちわ。アメリカからの飛び入り参加です。俳句歴8ヶ月のビギナーです。よろしく!
ドクターえなみの診断と処方箋
 うさぎさん、アメリカからようこそ。
(1)「呑み込まれた」が工夫の言葉。るのうぜんは繁殖力が強いですからね、よく分かります。
(2)帽子が古くなって「綻びぬける(ほころびぬける)」のでしょうか。「ぬける」の状況が良く分かりませんでした。
(3)夏の風が吹いて、だぼだぼのシャツがわたしに絡まっているのをこう詠んだ。「だぼだぼのシャツ」のオノマトペもいい感じです。笑顔が見えるシアワセの句です。8ヶ月のビギナーなら、この線でどんどん作ってください。

水あふれ吸水シート花模様  裸時(30代,男)
 三段切れにならないようにベタにつくってみました。
ドクターえなみの診断と処方箋
 この句は、裸時さんが言うように、水があふれて給水シートが花模様になったという一章仕立て。あまり詩的な世界ではないでしょう。裸時さんの持ち味は日本語の文脈のずらしからくる奇妙な感覚、それと二物衝撃のおもいがけなさ。ただ、あまりズレすぎたり、二物衝撃が激しすぎるとと意味が分からなくなる。あるいは詩的感興が失せる。そこで、コントロールが必要なのでは、とわたしは思っています。

木漏れ日に泳ぐ秋刀魚と七輪と  悶朗(50代,男)
 先月からお邪魔しています。よろしくお願いします。七輪とか練炭火鉢とかいまの子が知らないような物でもホームセンターに行けば売っています。子供に聞かれました。「お父さんこの七輪も中国製?」なんとなく心地よいリズムでした。
ドクターえなみの診断と処方箋
 モンローさん、なるほど「お父さん/この七輪も/中国製?」ですな〜。シャガールの「空を飛ぶ恋人」のように、秋刀魚と七輪が空を飛んでいる風景をイメージしました。「泳ぐ」の効果ですが、いまいち読み切れない句で、他の人はどんな風に読んだが聞いてみたい気がします。

(1)バーコード貼りたる林檎貰ひけり  えんや(70才以上,男)
(2)水草やどこに触れても縮む蛭
(3)真空の袋に光るへしこ鯖

 はじめまして、どうぞ宜しくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 こちらこそ、どうぞよろしく。
(1)バーコードは、面白い句材だが、句は報告の域を出ていない。
(2)じつは、「どこに触れても縮む姪」と読んでしまい、そうなると「水草」との響きがどうかと考えていた(恥)。揚句は、「どこに触れても縮む蛭」は説明的かも。「縮む蛭」を生かして考えてみたらどうでしょう。
(3)へしこ鯖は福井県小浜市昔から若狭の保存食とのこと。真空の袋に光っているだけでは句として物足りない。知らない人も「へ〜」とおもえるような何かを見つけることが必要でしょう。

庭園の実りの秋へやせ雀  藤井茂子(女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 風流だが古めかしい句材。が、詠みっぷりに感心。普通なら「や」だが「庭園の実りの秋へ」の「へ」。「雀」ではなく「やせ雀」。ここでも教わることが多い。

青空の亀甲模様や竹の春  岬(女)
 青々と茂った竹林の上には珍しい形の(亀甲模様の)青空が広がっていました。「山道に伸びに伸びたる竹の春」今までになく竹が高く伸び天にも届く有様に思えました。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「青空の亀甲模様」に竹が伸びてゆく風景が魅力的です。「山道に伸びに伸びたる竹の春」も、カンタンに詠んでいますが、リフレインが効果的。こっちは手入れもされず野性的に伸びた竹林を思い浮かべます。

馬鈴薯の花咲き関東ロームかな  蓉子(50代,女)
 この句は2005年に亡くなられた、第38回蛇笏賞を受賞されている福田甲子雄氏の追悼句として句会に出しました。そこでは関東ロームが理解していただけませんでした。師が亡くなられたときお会いしたことはないのですが、伝え聞くそのお人柄を思い、浮かんだ一句でした。
ドクターえなみの診断と処方箋
 追悼句と読まなければ、面白い句だと感じました。ただ、追悼句は、故人への気持ちを整理し、残された方へのご挨拶だったりするので、関係者が理解できずに、自分の思いが相手に届かなかったとしたら追悼句という実用文が意味をなさない。「関東ローム」が失敗、という事になるでしょう。しかし、これは追悼句という形式を借りた句会での句ですからね。これでいいのでは。(くどい文章ですいません)。

(1)踏み込んで屹度見据へし扇かな  山本葆博(70才以上,男)
(2)至道哉唯嫌揀択秋深し
(3)鷹舞うて山高みかも雲の峰

 星野先生より漢字多用は如何なものかとのコメントありましたが・・・揀択煩悩相 対両忘ならぬ身なれば。
ドクターえなみの診断と処方箋
 星野さんのご意見もむべなるべしです。わたしも2番など読む気にもなれない。が、山本さんが「作っていて楽しいし、漢文に強い人(主に高齢者か)に分かってもらえばいい」と考えているなら、それはそれで自由です。ただ、わたしのような漢文を学校でほんのちょっとしか習わなかった層や、さらに若年層に思いを伝えたいなら、分かってもらえるような文章のコントロールをすべきだと考えます。
 この辺のことは前の北野元玄さんへのコメントにある「俳句=作る本能+伝えたい欲求」とも関連があると思います。参考にしていただければと思います。

ナガサキはいつも背中にスキがある  北野元玄(60代,男)
 この句は数年あるいはもっと長い間、ずーっと考えてきたものです。句としての完成度の点で未だ人に見せる勇気が本当はありません、と同時に、倫理的に人、とくに被爆体験者の方々に見てもらってよいのかどうか確信が持てません。私は被爆地の出身ではないし、被爆者でもありません。世代が一致しているというだけの者ですが、原爆、被爆などの言葉の前では常に心穏やかではありません。えなみさんは大分お若い方ですから、このような私の心理はわかっていただけないだろうと思いますが、歴史的事項は事項として長崎には「出島、南蛮人、維新、被爆体験、大災害(大洪水や雲仙噴火も)、市長殺人、etc.・・」と、いろいろな事件が頭を過ぎりますが)、この句、俳句としていかがなものか率直なご意見をお聞きしたいと思います。季語はナガサキのつもりですが、無季俳句に分類されても一向に構いません。
ドクターえなみの診断と処方箋
 まず、9月4日診断の「赤、青、銀、夏の自転車誰から死ぬ?」は、林田紀音夫(はやしだきねお/昭和10年没)の「黄の青の赤の雨傘誰から死ぬ」が本歌だと思います。何人かの方から指摘をいただき、ありがとうございました。
 さて、揚句に戻って。北野さんは句を思いついた。しかし、世に問うていいか迷っている。こういうモンダイは「なぜわたしは俳句を作るのだろう」という素朴な立脚点を抜きにしては話せないのではと思います。
 わたしが俳句を作る理由は、以下の2つではないか。ひとつは「生活の中で心に浮かんだ思いやイメージを記録にとどめておきたい」という本能的なもの(作る本能)。そして記録するだけではなく「誰かにその思いを伝え、できたら共有したい」という欲求(伝えたい欲求)。これも、本能的なものでありましょう。
 北野さんは、この「作る本能」を満たした。しかし、次の「伝えたい欲求」を満たすにあたり躊躇があるのは、伝える内容が社会的なものだからでしょう。社会的は発言は、自分の立場と相手の関係を明確にする必要がある。「ナガサキはいつも背中にスキがある」は、誰が(ナガサキに住む人としてか、否か)、何のことを詠んだのか(出島〜被爆体験〜市長殺人)が漠然としており、さらにインナーとして反省しているのか、嘆いているのか、批判しているのか、おちゃらかしているのかが、不明確。このままでは「しかたない発言」と同じではないかと思います。従って、発表するに至らないというのが、わたしの感想ですが、最終的には北野さんが判断する事です。(疲れました)(^_^;)ゞ


2007年9月9日

天に腹見せて悠々かぶと虫  きなこ(50代,男)
 えなみドクターはじめまして。よろしくご診断下さい。
ドクターえなみの診断と処方箋
 きなこさん、いい俳号ですね。さて、かぶと虫はひっくり返って脚を宙にさまよわせているので、悠々ではないのでは。調べのよい句ではありますが。

(1)小鳥来るけふに限りて妻の居ず  小口泰與(60代,男)
(2)退社時に仄かな赤城木槿かな
(3)背戸に咲く萩は庭師の想うまま

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)妻に話しかけようとしたが、こんな時に限って妻はいない。面白い視点の句です。どんな事も句になるのだとカンシン。
(2)「仄か」は「ほのか」。「仄かな赤城/木槿かな」なのか「仄かな/赤城木槿かな」が迷う。前者なら退社時に赤城が仄か。後者なら木槿が仄か。
(3)そりゃそうだろうと思うが、風流人のひとことと思えばこれも良しかも。「想うまま」は「櫂は船頭の思うまま」「味は板場の思うまま」などといろいろ使えますね。「♪舟は櫓でやる/櫓は唄でやる/唄は船頭さんの心意気〜」。

風そよぐコスモスさそふ旅心  雅(50代,男)
 最初は「風を待つコスモスさそふ旅心」としたのですが、実景が目に浮かばないと思いこのように変えました。いかがでしょうか。
ドクターえなみの診断と処方箋
 文脈が不明で句意を読み取れません。「風そよぐ」「コスモスさそふ」と動詞がふたつあるのが原因かも。目の前にあるコスモスを見て旅心が騒いだと言うことでしょうか。

柿簾鐘鳴らしゆく消防車  文の子(60代,男)
 9/5のご診断有難うございました。「ボトル飲み干して軽き荷炎天下」を「同時にアフォリズムのように響きました。」と狙い通りに読んで頂き満足しております。「半鐘の鳴り響く邑柿簾」を掲句としました。宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 柿なので、奈良の秋、斑鳩の里のような風景を思ったのですが、緊急事態との取り合わせを詠みたかったのですね。「柿簾/鐘鳴らしゆく消防車」上5とその後が響きあわないように思えました。

 以下昨日に続き孫が作りました句の残りをお送り致します。誰が教えたわけでもなく、普段は一緒にいない児が575に纏め、季感も備えていて驚いております。私はただ褒めておりますが、別の接し方があればご教示の程併せてお願い申しあげます。(文の子)
(1)おひさまはピカピカひかるほうせきだ  はるみ(男)
 しょうがく1ねんせい、6さいです。
(2)せみのこえジージーなくよめがさめた
 おひるねから、さめました。
ドクターえなみの診断と処方箋
 わたしは子供はニガテですし、子供の教育者でもない。体験談をひとつだけ。わたしの姪が学校の授業で俳句を作り褒められた。親がハガキに句をかかせわたしに送ってきた。そこで、ほめて「ちび丸子ちゃんの俳句教室」という本を送った。しばらくしたら、彼女は俳句をやめてしまった。原因は、俳句の本を読んだら季語とか575とか書いてあったので、メンドーになったらしい。
 子供の感性には教わることが多いが、絵や音楽や子供の写真と比較して、俳句は単語と文脈でなりたっており、文には制約が多い。思ったことを「ことば」に置き換えなくてはならず、言葉の数には限りがあり、思ったこととのズレがある。そこら辺を考えないと、子供の俳句はほめられたことを繰り返すだけとなる。よほど確かな指針でない限り、往々に大人の期待の裏返しでしかなく、間違った言葉感を持ってしまう可能性もある。したがって、子供が俳句をやることにも疑問がある。
 だから、ハイクという575ごっこだと思って、楽しく遊ぶのがいいんじゃないですか。ハイクの楽しい思い出が残れば、その子は大人になったときに、また俳句を始めようと思うのでは。教えようと思わないでほめることに終始することかも。以上、偏ったつたない考えですが、こんな風に思う人もいるという程度に聞いてください。

秋風に呼込みかろき吉本亭  高橋(60代,男)
 明るい秋風が表現できればと。
ドクターえなみの診断と処方箋
 わたしも参加した吟行での一駒。浅草の風雷神門で待ち合わせをしていたら吉本の若い衆が、演劇を見に来ないかと話しかけてきた景。面白い読み方だと思います。景を知らない人は「吉本亭」が何か分からないのでは。関西の吉本とは思わないかも。

蛍火の尻の緩みでありぬべし  藤(10代,男)
ドクターえなみの診断と処方箋
 とても10代とは思えぬ古語の使い手。「べし」は推量。「尻の緩み(ゆるみ)」と見立てが、10代の方とは思えない巧みさ。名句の匂い。

秋めくや言葉すくなに花火の子  慈英(50代,男)
 初めまして。ご指導宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 こちらこそよろしくお願いします。「言葉すくなに」が秋の寂しさを伝えています。「花火の子」が過不足なく、すっきりとしたいい句です。

出無精の窓いっぱいの花火かな  岡野直樹(40代,男)
 週に一回は何とか作ろうというペースです。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 もう5句目、いいペースじゃないですか〜。さて「出無精の窓」が面白い。ただ、出不精なので自宅の窓から花火を見ているとなると、窓をかじるくらいの花火しか見えないのではとも思う。それとも、出不精が花火の見える友人宅に行って、そこから見てるのか。俳句は言葉が少ないので連想があれこれでき、それを逆手に取ることができればといつも思う。

今未明絹のかげろう真の闇  裸時(30代,男)
 えなみドクターよろしくお願いします、写真の石像綺麗ですね(^^
ドクターえなみの診断と処方箋
 写真はアンコールワットです。裸時さんは行かれたことありますか〜(^_^;)ゞ。
 さて、掲句。「絹のかげろう」は、シルクロードの真っ直ぐな道を連想させ、「絹のかげろう真の闇」は石でできた建物の入り口の闇などを連想させます。この状況を考えると春の昼でしょう。となると「今未明」が全く効いていないのでは。なぜこの言葉なんでしょうか。裸時さんは、句を作るときに風景(あるいは世界)が見えていますか?あいまいなまま言葉をぶつけているように思えるのですが。(全くの読み違いでしたら、言ってください)(^_^;)ゞ

(1)生御魂背骨を椅子の背に添はせ  まりあ(40代,女)
(2)渋民の音清らかな落とし水
 えなみドクターよろしくお願いいたします。2番の句は2,3年前の旅行の思い出です。(星野ドクター短い間でしたがアドバイスいただいてありがとうございました。)
ドクターえなみの診断と処方箋
 まりあさん、はじめまして。
(1)おそらく背の曲がっているであろうお年寄りが椅子に座るさまを巧みに描かれていると思います。「背に添はせ」が巧み。生御魂は季語なのですが、元気なお年寄りを生御魂と呼ぶのはどうなのだろうか、わたしはそう呼ばれたくない。おっと、これは、また別の問題でした。
(2)「落とし水」田を刈り始める前に畦を切って水を落とすこと。調べも良く気持ちの良い句です。立派な句ですが「音」が「落とし水」と近い。おそらく他の言葉も検討されたと思いますが、これはこれで良いのでしょう。


2007年9月8日

(1)竹筒の酒こぼし呑む竹の春  高橋(男)
(2)笹舟を子に教へけり竹の春
 ドクターしんささん、いつもお世話になります。さっそくですが、竹の春に竹の道具を使うのはどんなものかと?駄句でお目をよごしますがよろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 高橋さん、こんにちは。あんまりむつかしい事は聞かないでください。答えられませんから(^_^;)ゞ。この2句に関していえば、竹の春に竹を切って竹筒を作ったり、笹舟を作ったりしているという季節感を感じることができて、違和感はありませんでした。他の季語ではダメかというとそんな事もなく、「竹筒の酒こぼし呑む寒露かな」などの気候でもあうような気がします。それじゃあ、夏の季語はどうなのかなど、研究すればいろいろあるのでは。
 先日、新潟の句会で「ぼたもちや棚田の米が取れるころ」という駄句を選んでくれた人がいて、同じような質問をした覚えがありますが、答えは「別に〜」でした。ということで、この辺にて。

(1)満月やつらつら吟ず李白の詩  しんい(女)
(2)脳トレや露ほどの知恵涸らすまじ
 よろしくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「つらつら吟ず」の語感はよろしいのでは。無知をさらけだすようですが、わたし李白の詩について露ほども知らず、これ以上の感想を申し上げることができません(恥)
(2)しんいさんの本心とお見受けしました。わたしも全く同感です。意味がたくさんあるのが俳句で、意味がひとつしかないのが川柳だと、坪内稔典さんがおっしゃっていたと思います。川柳もやるわたしとしては、これも真実と思えます。川柳に近い句というところでしょうか。

(1)秋草野天山北路風の道  栗太郎(60代,男)
(2)秋天山草原駿馬風渡る
(3)草原に駿馬の駆ける旅秋かな

 えなみドクターはじめまして。先週、中国のウイグル自治区に行ってきました。天山北路はすでに秋。いい空気をいっぱい吸って元気になりました。つたない句ですがよろしくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 こちらこそよろしくお願いします。ウイグル自治区とは珍しいところにご旅行で。旅のベテランとお見かけしました。いわゆる海外詠。先月の日経朝刊に森澄雄さんの1ヶ月の連載がありました。その中のある海外旅行に触れ「1句もできず」とありました。かように海外詠はむつかしい。
 海外詠は、外国で詠んだことを伝えたいと思うあまりに、どうしても地名読み込みになりがちで、それが窮屈な事になる。と、少ない体験から思います。頭に(ウイグル自治区にて)とあるつもりで詠まれるのが良いと思います。3句の中では、(3)がウイグル自治区の大きな空気が駆けめぐっているようで、気持ちがいい句でした。

(1)あおぞらがくもといっしょにおどってる  はるみ(男)
(2)かぶとむしくわがたむしとバトルして
 しょうがく1ねんせい、6さいです。はじめてはいくをつくりました。
ドクターえなみの診断と処方箋
 はじめてのはいくをよませてもらってありがとう。こんなふうに、みたことや、おもったことをどんどん575にしてみましょう。おじいちゃんというせんせいがいるから、はるみくんは、どんどんじょうたつするでしょう。げんきでね。

五七五(ごしちご)に纏め一年生九月  文の子(60代,男)
 9/4のご診断ありがとうございました。特に「全体的に、文語の言い回しや単語の選び方が大げさになっていて、大上段にかまえた感じ。」は鋭いご指摘で感謝しております。1日3句の制約があるので、推敲句は後日診て頂きたいと思います。昨晩小学校1年生の孫が誰が教えたわけでもないのに、4句送ってきました。以下に2句記しましたので宜しくお願い致します。掲句は窮屈なので、「小学1年生の孫」と前書きして「九月かな五七五(ごーしちごー)に纏めし子」としたいのですが如何でしょうか。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「小学1年生の孫」
  九月かな五七五(ごーしちごー)に纏めし子
 まさに孫俳句です(^_^;)ゞ。確かに文中の句の方が調べがよろしいかと。文の子さんが、自分の孫を上手に表現できたと思えれば、それでいいのでは。
 お孫さんの句は、お孫さんの事を良く知ってる文の子さんが、ほめたり、アドバイスすれば、それが一番だと思うんですけどね〜、ぼくまで引きずり込むなんて、ずるいですよ〜、かんべんしてよ〜(ぶつぶつ)。

(1)天ざかる鄙に住みけり秋の空  小口泰與(60代,男)
(2)横雲の長き赤城や露の朝
(3)芭蕉葉やことに古りたる山の寺

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「天ざかる」が、みやびな語感だ。「天離る」と書き「鄙」にかかる枕詞とある。「天離る 鄙にはあれど 我が背子を 見つつし居れば 思ひ遣る こともありしを」など。この枕詞で一句になっていると感じますが、小口さんはやや言葉に頼りすぎかも。語彙の豊富さが句意を更に強めるように働くと、もっといいのでは。
(2)風景を普通の言葉で575にしているだけでは。
(3)芭蕉葉というと、義仲寺を連想します。句意が平凡なのでは。

鬣の一本ずつに秋の風  藤井茂子(女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 「鬣」は、漢検2級の文字だそうですが、もう書けません。読みは「たてがみ」。馬のうなじ(首筋)から肩の近くまで生えている長い毛。ちょっと理に落ちた感じを受け右脳は動きませんでした。

新涼のバッグきちんと掛けにけり  藤(10代,男)
ドクターえなみの診断と処方箋
 句意は納得できる。きちんと掛けたのは、肩だと思いますが、整理棚のような所とも思える。またバッグも、幼稚園児の鞄とも、学生鞄のようなものとも、女性の通勤バッグとも取れ、景がさだまらない。

蝉鳴いて階段長い永平寺  豊田ささお(70才以上,男)
 えなみドクター「酔芙蓉身を投げたいよ夕空へ」へのご診断ありがとうございました。たしかに空へ身を投げるというのは解せないですね。もう少し考えます。昨日永平寺へ仲間6人と旅をしてきました。そのときの実感ですが、報告の域にとどまっているでしょうか?
ドクターえなみの診断と処方箋
 わたしも8月10日、永平寺にいました。落語の「蒟蒻問答」には永平寺の坊主がでてくる。圓生さんのには芭蕉翁もでてきて、何回聞いても笑えます。
 さて、「蝉鳴いて/階段長い/永平寺」と三段切れです。「蝉鳴いて」と「階段長い」の間に脈絡がない。この12文字をひとつの固まりと考え、この中に心が動いたワンポイントを詠み込み、次の5文字とぶつけるという要領でやられるといいと思います。

(1)裏庭のひともし頃の木槿かな  小口泰與(60代,男)
(2)思草其処のみ日矢の当たりをり
(3)はたはたや閃き強きチワワの目

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「ひともし頃」が瞬間分からなかった。たぶん「灯ともし」でしょう。清潔で気持ちいい句です。
(2)おもい草、キセルに似ているのでナンバンギセルとも。風情のある花なんですね〜。一カ所にスポットをあてる句法として「また一人遠くの蘆を刈りはじむ/虚子」を連想した。表記、「其処のみ」は開くほうが「思草」が活きるのでは。「おもひ草ここのみ日矢のあたりをり」が好み。おしつけるつもりはありません(笑)
(3)「閃き」は、ひらめき。この「はたはた」は、魚ではなく、バッタでしょう。だから、チワワの目がひらめく。観察眼がするどく、かつユーモラスな詠みっぷり。バッタとチワワという小さい犬の取り合わせが効いてます。


2007年9月7日

魚肉類大夕焼けにたらしこむ  裸時(30代,男)
 よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「大夕焼けにたらしこむ」ものは何なのか?具体的には絵の具くらいしか思いつかないが、魅力的な表現です。その文章の前にある上5の「魚肉類」が具体的ではあるが、その後とつながらない。俳句の構造的には、そこに二物衝撃が生まれているのだが、衝撃が激しすぎて(笑) ビッグバーンしてる。上5をいろいろ考えてみるといいかも知れません。

(1)鶴が二羽描かれし椀や野分立つ  ポリ(50代,女)
(2)鰯雲渋谷駅前工事中
 はじめまして。拙い句ですがどうぞよろしくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 ポリさん、こちらこそよろしくお願いします。
(1)椀の中に鶴が二羽いて、外は野分だ。椀の中の鶴は野分に羽をなびかせている。墨で描かれたふすま絵のようなファンタスティックな世界です。素晴らしい。
(2)これは見たまんまの風景。ポリさんにはいい風景だったのでしょうが、読む方は「渋谷駅前」「工事中」」の現実の方ばかりに目が行ってしまう。

犬の行く前をきちきちばった跳ぶ  けいこ(50代,女)
 宜しくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 見たままを表現しているのだと思いますが、散文的。例えば8文字「犬の行く前を」は5文字「犬のまえ」で良く、「きちきちばった跳ぶ」の2文字「跳ぶ」はなくても作れる。あるいは「きちきち」でも良い。そこで、5〜8文字の余裕ができる。その文字に、気持ちなどを託すこともできる。ただし、もりこめばいいという事ではないので、要注意ですが。

(1)山間に日の差し込みぬ柿花火  文の子(60代,男)
(2)子ら消えしいま公園を法師蝉
(3)向かふよりビルの影伸ぶ今朝の秋

 宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)見上げると花火のように見えるので「柿花火」。美しい言葉に感激してしまいました。「山間」は「やまあい」。サンカンと読む人はいないと思うが開いてやわらかく見せてもいいかと思いました。遠景と近景の対比。いい句ですね〜。
(2)コラキエシイマの調べが良くない。
(3)今朝の秋は、立秋の日、8月6日頃。ここでは、秋を感じた日というニュアンスか。「向かふより」が説明的だと思う。わたしもこの景を読もうと思ったことがあり、まだ読めていない。難題でしょう。

(1)朝焼けの月を伐りたる烏かな  山本葆博(70才以上,男)
(2)しらしらと骨触れ合うて時雨けり
(3)老鶯の沈黙深き想いかな

 ご教示をお願い申し上げます。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)名優に声を出して読んでもらいたいような、調べの高い句です。
(2)は、前回とりあげました。
(3)老鶯を我が身に照らしているという事でしょう。こういう句は、ご本人を存じあげていると、感慨も一入という句かと思います。句だけではものたりなさを感じました。

(1)良い風だ遊ぶ子の声八月尽  都
(2)蝉の声少なくなったね二学期だ
 初心者です。今日で三回目の投句です。宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)八月尽の風は、熱気混じりの風だと思うが、かすかに秋の風だったのでしょう。3つのブロックに分解される3段切れはイメージが分散するので、俳句では良くないとされているのですが、この句はまあいいか。良い風だの上5も実感ぽく響き良い。
(2)和田誠さんの句に「うれしいなみんなに会える二学期だ」(うろおぼえ)があったけど、この句のばあいは、二学期と組み合わせる理由が希薄かも。ついでで申し訳ないのですが、前回の3句目「赤とんぼ連れてこの街夕暮るる」は悪くない句に思えてきましたので、申し添えます。

(1)古寺に五重塔あり夕野分  遊雲(70才以上,男)
(2)一通の文も届かず野分晴
(3)野分立屋上ただ今緑化中

 初めまして。9・10月よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 こちらこそよろしくおねがいします。
(1)575にはまっていますが、普通の風景を普通に詠んだだけです。とりあえずは「古寺に五重塔あり」が当たり前で面白くないのでは。
(2)晴耕雨読の暮らしぶりが伝わってきます。野分晴も良いと思います。「一通の文も届かず」が、やや一般的な感じを受けましたが。
(3)これは分かりやすすぎる。それに句にして面白いことではない。これは句材であって、緑化のサマを詠めば句になる可能性があるのでは。

(1)かなかなのかなかなを呼ぶかなかなと  せいち(60代,男)
(2)秋の蚊をまた打ち損づ頬と手よ
 えなみドクター、宜しくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 こちらこそよろしくお願いします。
(1)言葉遊びも、俳句の楽しみのひとつです。「かかななになかなかこないかなかなや」(嬶中になかなか来ないかなかなや)(失敗)とか、いろい遊べます。揚句は、今一歩。言葉遊びの楽しさが生きていないと感じてしまいました。
(2)頬を打ったら逃げられた、という事でしょう。もっと上手い言い方がありそうだと感じました。「損ず」はザ行で変化するので、言い切りのカタチなら「損ず」だと思います、たぶん。

(1)XゼロYゼロともに秋の位置  北野元玄(60代,男)
 秋が原点に存在する? はじめ月を考えたのですが。
(2)騙し絵の真中に遠く秋の空
 騙し絵など、実は見たことはありません。ここでは、高くより遠くでしょうね。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)グラフのXゼロYゼロは分かるが、それが「秋の位置」というのが説得力ないのでは。
(2)だまし絵は安野光雅さん、エッシャーとか、あ〜ゆ〜やつでしょう。読者に具体的なイメージがわかないのは、作者も具体的なイメージを持たずに句にしているからで、こういうのを観念的というのでは。ナマイキ言ってすいません(^_^;)ゞ

五時起きのまず玄関に九月の灯  藤井茂子(女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 「まず玄関に」の前の「の」が面白い。普通の日本語なら「五時起きてまず玄関に」となるところ。助詞の一文字はとても大事。まず玄関に行って新聞を取ろうと思ったら9月の灯りになっていた。日記風の詠みぶりにも感心。

(1)赤とんぼこの指とまれ遊ぼうよ  都
(2)赤とんぼ追って追われて恋終わる
(3)赤とんぼ連れてこの街夕暮るる

ドクターえなみの診断と処方箋
 俳句を楽しまれている様子がうかがえ、楽しい気持ちが伝わってきます。この世界で楽しんでいるなら、じゃますることもありません。ただ読み手として申し上げれば、句の内容が、すでにある童謡、歌謡曲などの世界のなぞり、もじりでしかないことがモノ足りない。もしも、上達を望まれているのなら、この辺の句を50くらい作ってみると打ち止めという気分になってくる。そこから先に、新しい表現が生まれてくるのではと思います。勝手申し上げてスイマセン。


2007年9月6日

秋風や乗り人をらぬ人力車  藤(10代,男)
 はじめまして。よろしくお願いしますー。
ドクターえなみの診断と処方箋
 藤さん4句目ですよ〜(^_^;)ゞ。秋なので「乗り人をらぬ人力車」が寂しそうだと言うのは順当な感じかた。そこで「秋風や」と詠みだしたのですが、この季語では世界が広がらない。この事を「季語が近い」と言う。ということで、季語を工夫してみてください。たとえば(思いつきでしかないが)〜
    鳥かへる+乗り人をらぬ人力車
    大文字 +
    ほおづきや+
    美術展 +
 季語を変えることで、句の世界が変わってくる。わたしも良く指摘を受けることなのでエラソーな事は言えませんが。

指広げ触れるを待つのおじぎ草  岡野直樹(40代,男)
 触ってほしそうなおじぎ草を詠みたかったのですが。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 おじぎ草は、含羞草とも書き、おじぎする、はずかしそう、だけに焦点をあてた一章仕立ての句は、さんざん詠まれているような気がする。句意は良く理解できますが、前回述べたように二物衝撃など、別の視点が必要なのでは。

(1)山裾の紫煙さやけし蕎麦の花  しんい(女)
(2)秋桜受け流す術諭しをり
 少し直してみたのですが、宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 前の句は、あえて読まないことで感想を述べます。
(1)良くできた句ですが、山裾+紫煙+蕎麦の花と、すでにある典型の中から抜け出せていない。美しく詠もうとすればするほど、この典型からぬけだせなくなるのかも。一言で言うと、みんなが感じているが誰も見つけられなかった感覚や感情を、見つけ出すことかも。そんなに難しく考えずに、自分はナニが素晴らしいと思ったのかを考えてみるのがいいのかも。
(2))秋桜と以下12文字の二物衝撃。「受け流す術」を「諭し」は、想像の範疇ではあるが、後ろ向きな、あまり気持ちのいい行為ではないので、どうも好きになれません。

(1)灯かり失せ車窓の母の白さ哉  やすぼう(男)
(2)母若く奇しき車窓に映りこむ
 よろしくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 美しい母へのただならぬ思いを詠んだ句なのでしょう。ホントのことなのか、ドラマを仕立てているのかわかりませんが、この世界、わたしは好きです。作家性が高いので、一般的な句会ではあまり受けないかも知れませせんが、一般的な句ににじりよらない方がいいと思います。
(1)白が夏の季語です。ドラマですね〜。
(2)無季。「奇しき車窓」が難解で、ミステリーのよう。無季でもかまわないが、もうちょっと読み解くヒントがあると感情移入もたくさんできるかもな〜。

(1)太棹の調弦秋の風に聞き  藤井茂子(女)
(2)九月一日藍色のマット敷く
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)太棹というのは三味線などでしょうか。「秋の風に聞き」なので、人が楽器を持っている情景でしょう。「太棹」という具体性がいい。調べも良く、成功の句。
(2)9月1日は、二百十日、防災の日など。普通の感覚では夏が終わり秋になる日。1句目にひきつづき「藍色のマット」の具体性が良い。ただの「マット」では句にならない。教えられます(^_^;)ゞ

白芙蓉どこまでも青い空だよ  豊田ささお(70才以上,男)
 えなみドクター、はじめまして、クリニックへは1年目ぐらいです。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 こちらこそよろしくお願いします。前回の「闇に向かって開いてね」と同じく「どこまでも青い空だよ」の語りかけに思いがこめられているのだと感じました。揚句は気持ちのいい表現で、豊田さんがこの句を作ってすっきりしたのなら、このままでもいいのでしょう。
 ただこのままではクリニックにならないので申し上げますと、白芙蓉が他の植物になっても成り立ってしまう事が俳句としては物足りない。「青空と白芙蓉+そこに見えるもの、そこで起きた事、そこから生まれた思いや思い出」などを加味することで別の伝え方をすることができるのではと思います。

北窓を開けて寂しき虫の声  都(60代,女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 う〜ん、その通りだと思うのですが、それ以上ではない。なぜ、どう寂しかったのかを考えてみると作句のヒントがあるかも知れません。なお、「北窓開く」は春の季語ですので、これも考慮の必要があるでしょう。

(1)地蔵会や中学生は恥ずかしげ  岡野直樹(40代,男)
(2)無言にて朝の挨拶おじぎ草
(3)雷にめげずに食らう広島焼き

 おじぎ草って、何度触れても飽きないんです。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)地蔵会という季語を初めて知りました。近畿地方で盛んとありますから、岡野さんはそちらの方か。「中学生は恥ずかしげ」がナマ。理由がわからず感情移入の余地がない。
(2)おじき草だから毎日挨拶をするという事だけでは句にならないのでは。「無言にて朝の挨拶=おじぎ草」という構造だが、最初の12文字をおじぎ草でない事を詠む、二物衝撃(とりあわせ)の方法もある。
(3)たぶん、雷の日に広島焼きを食べたということだと思います。単なる報告は、他の人はどうでもいいことなのでは。

月光の真中に疼く傷をもち  蓉子(50代,女)
 2ヶ月間適切に処方していただきまして、ありがとうございました。おかげさまで、作ることが少しずつ楽しくなってきました。これからもよろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 蓉子さん、容子さん、どちらの表記がスタンダードなのですか。
 揚句、「月光の真中」は、月の真ん中とも取れるし、月の放つ光の真ん中とも取れる。古い記憶をさぐっているような詩的な表現で感心しました。


2007年9月5日

古き家に旧き友居り立葵  けいこ(50代,女)
 宜しくご指導ください。
ドクターえなみの診断と処方箋
 う〜ん、わかったようなわからないような句。「古き家に旧き友居り」 は、町の移り変わりが激しい現在では当たり前ではないのかも知れない。故郷を訪ねたら、昔の家のまま友が住んでいたと言うことかも。友人への挨拶句としては成り立っているでしょう。が、うんと想像力を働かせないと句としてはモノ足りない感じを持ちました。立葵のとりあわせはいいですね。

渡り鳥ずぼんが燃える藍のムチ  裸時(30代,男)
ドクターえなみの診断と処方箋
 三段切れ。
 二物衝撃(とりあわせ)句の基本は、「12+5」「5+12」。知っていてあえて三段切れに挑戦だとしたら失敗している。

(1)鳴き声の青き空までつくつくし  センリ
(2)夜の秋紙のうさぎをふくらませ
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「つくつくし」は、つくつく法師。「おいしいつく」とも呼ぶ。 気持ちのいい句。青いのは空なのですが、「鳴き声の→青き」と続いて、鳴き声まで青く感じる語順が効果をあげていると思う。
(2)ふんわりした幻想的な句でいいですね〜。「夜の秋」で切れているので最後は連用形で軽く流しているが、前半の切れは軽いので、言い切りの「ふくらます」の方がいいと思うが。

(1)大西日あいさつをしてさやうなら  藤(10代,男)
(2)万緑や陶芸教室へ向かふ
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)挨拶をして「さやうなら」というのではなく、「さやうなら」と挨拶をするわけですから、「あいさつをしてさやうなら」は不思議な言い回し。大西日に気をとられて特別な気持ちになっているような雰囲気が伝わってきます。
(2)上5と後の12文字に何の響きあいもない。上5の季語は、「たんぽぽや」「秋時雨」「つくつくし」どんな季語でもあう。陶芸教室のナニかに焦点をあてないと前回の「初めての陶芸教室」と同じことです。

(1)ボトル飲み干して軽き荷炎天下  文の子(60代,男)
(2)半鐘の鳴り響く邑柿簾
(3)天高く白球右へ逸れゆけり

 宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)いいですね、炎天下が効いています。ペットボトルを飲んだので背中の荷が軽くなったということかと思いますが、同時にアフォリズムのように響きました。語感もとてもよく、快感!
(2)「邑」は、ムラ、またはクニ。古代の村のイメージ。この邑で鳴るのは「梵鐘」では。「半鐘」は緊急事態で鳴らす鐘なので、イメージが分散する。
(3)天が高いのに、白球は右にそれ、視線が定まらない感じがしました。

(1)秋澄むや水輪広げて池の鯉  しんい(女)
(2)水澄みて池の飛石累々と
(3)新涼や枯山水の石の黙

 えなみドクター、初めまして、宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 初めまして、こちらこそよろしく〜!
 3句とも、庭園の吟行などで見かけそうな句です。一見、句材が古いと思います。表現も575に納まりお上手ですが、心が動きません。対策は、このような句材は詠まないことにするか、それにもまさる情熱で新しい視点を持ち込むことかと思います。わたしなら前者を選んでしまいますが。(笑)

(1)湯けぶりに燻(ふす)ぼりをりし萩の花  小口泰與(60代,男)
(2)干割れたる校庭に見ゆ秋桜
(3)うすうすと赤城現る蛍草

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)語彙(ボキャブラリー)の豊富な方とお見かけしました。けぶる、ふすぼるの語感はいいが、内容は平凡だと感じました。
(2)水不足の夏だったのでしょう。そんな中にも秋桜が花を咲かせているという事なんでしょうが、右能は動きませんでした。
(3)「うすうすと赤城現る」のオノマトペに風景が見えました。

助詞ひとつ間違う唄の秋暑し  藤井茂子(女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 句らしい雰囲気ではありますが、「助詞ひとつ間違う唄」というが具体的に想像できないのが、隔靴掻痒。

(1)桔梗さん闇に向かって開いてね  豊田ささお(70才以上,男)
 桔梗は今の世相を清めるような色合いを持っているようです。切羽詰った人間の闇をどうにかしてくれそうな気がする、かなわなくても、側にいれば落ち着く。それだけですが・・・
(2)余念なき水禽靴に芙蓉咲く
 観念的でしょうか・・・?よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)コメントを読んでから句を読むと、せつない気持ちが伝わってくるような気になりますが、コメントがないと意味不明でしょう、たぶん。「切羽詰った人間の闇をどうにかしてくれそうな気がする」「かなわなくても、側にいれば落ち着く」。この辺りまで詠み込む必要があるのでは。
(2)水禽靴は、水琴窟と同じなんでしょう。「余念なき水禽靴」が分からない。たぶん、思いを言い当ててないのでは、と思います。

(1)朧月空に疾風貴人あり  裸時(30代,男)
(2)星草の丸い夢中にかじりたい
 星野ドクターありがとうございました→
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)裸時さん、こんにちは。朧月ー疾風ー貴人。いい雰囲気の言葉が3つつながっていますが、その関係が不明瞭。3段切れだからでしょう。
(2)へ〜、星草(コンペイトウグサ)という草があるですね。あたまに丸い綿のようなものをつけた秋の草です。さてと、「星草の丸い/夢中にかじりたい」と切れるのか「星草の/丸い夢中に/かじりたい」と切れるのかが不明。たとえば「かじる」は「〜をかじる」とかじる対象を入れるもの。また「丸い」は、言い切りのカタチなのか「かじりたい」にかかるのかも不明。これは裸時さんが、文脈をわざといじって新しいイメージを作り出そうとしているからだと思いますが、コンランさせるばかりで成功していません。いじりすぎ。


2007年9月4日

(1)目覚ましは四時枕元には捕虫網  穂波
(2)てんとう虫お泊まり保育のパンの上
 星野先生、二ヶ月間ありがとうございました。先生の交代の日にちを一日勘違いしていたので、直接にはご挨拶できないかもしれませんが、お礼申し上げます。
 えなみ先生、はじめまして。穂波と申します。句歴はほぼ一年、過不足なく17音に気持ちを盛り込むことの難しさを実感するこの頃です。よろしくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 星野さん、わたしからもお疲れさまを申し上げます。穂波さん、どうぞよろしく。せめて男か女かだけでも聞かせてもらえませんか。わたし、 今も17文字にはめこむことに苦戦しています(笑)(えなみしなさ)
(1)子供の世界がよく表現されていますが、確かに775ですね。ここで無理矢理575にするのがいいのか、ゴロは悪くても意味を大切にするのかは、俳句やる人の共通の悩みでは。無理矢理575にするには「目覚ましは四時枕辺に捕虫網」。ここは横書きだから漢字にこだわらないで「目覚ましは4時枕辺に捕虫網」あたりで、いかがでしょうか。
(2)子供いないので「お泊まり保育」が分かりません。でも、きっといい句だと思います。ここでも、585で悩ましいですね。初心者のころは中7は絶対に守れと書いてあるのを読んで、今でもかなり守っています。575にならない時は、その句をやめてしまう事もあります。単語が7文字や8文字の時が悩ましいのですが、掲句はこのままで自然。これでいいでしょう。(甘い!こうしたらいいという意見あったら、ぜひ教えてください)(笑)

(1)カーラジオから懐かしき曲秋夕焼  容子(50代,女)
 カタカナは使わないほうが良いと句会では言われますが、個人的にはカタカナの持つ語感が言いと思うときがあります。前に「アスファルトに蛇の屍や」の句で、句会では「舗装路」に直すよう指導されたのですが・・・どうでしょうか。
(2)異邦人行き交うロビー鶏頭花
 数年前神戸のホテルの豪華に活けられた花の前、まるで劇場映画のワンシーンのようでした。
ドクターえなみの診断と処方箋
 カタカナ語辞典には6万語程度が収まっており、音楽用語、料理用語など、カタカナの力を借りないと言い表せないものがたくさんあります。一方、俳句結社の主宰の中には伝統文化だからとカタカナ語を毛嫌いする人がたくさんいて、信じられません。合羽、カステラ、かるた、襦袢もみな外来語なのにね〜(このハナシ、好きな話題なので長くなる。この辺でやめておきます)(笑)
(1)素直な句、「懐かしき曲」がアバウト過ぎて食い足りないかも。
(2)ひとつの風景を言い表してると感じました。

(1)左右より居眠る頭(かうべ)秋暑し  文の子(60代,男)
(2)蓮群れし葉と揃ひゐる花の丈
(3)右手に陽受くるも顔を秋の風

 えなみドクターはじめまして。句歴3年の初心者です。2ヶ月間どうぞ宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 こちらこそ、よろしくお願いします。
(1)列車の両隣の席がいねむりを始めたということでしょうか。「居眠る頭」がおおげさ。
(2)分かりにくい原因は、いいまわしが整理されていないからかも。 「蓮群れし葉」の「し」が難解。たぶん「蓮の葉と花が同じ丈だった」 という事なのでしょう。意味は「蓮の葉と揃ひし蓮の花の丈」のような事かも。声を出して聞いてもらい、意味が通じるまで推敲する必要があるのでは。
(3)これは分かる。「あかあかと日はつれなくも秋の風」なのでしょう。「受くるも顔を」が工夫の言い方だが、わたしには気取った感じがしました。
 全体的に、文語の言い回しや単語の選び方が大げさになっていて、大上段にかまえた感じ。団十郎のセリフを聞いている感じ。力を抜いて、口語で考えてはいかが。表記が旧かなであってもかまわないので。

旧邸の水琴窟や秋澄める  悠(70才以上,女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 吟行の公園や庭などに水琴窟があると、詠む人が必ずいます。が、だいたいが似た句になります。残念ながら、この句も、その域を出ていないと感じました。藤田湘子さんは「寺社俳句は作るな」と言っていたそうです。理由は読み尽くされているからという事だったと思いますが、水琴窟に新たな可能性があるといいのですが。

(1)夕虹の端から端へ舌いちまい  北野元玄(60代,男)
(2)赤、青、銀、夏の自転車誰から死ぬ?
 えなみ様
 俳句を通してお話ができるとは嬉しい限りです。えなみさんの俳句観を語ってください。上の2句、駄句ですが、よろしくお願いします。(2)はパクリ俳句(に近い)です。
ドクターえなみの診断と処方箋
 諏訪でも、去年の伊丹でもお世話になりました。さっそくの訪問、わたしも嬉しく思います。ただ、あんまり難しいことは聞かないでください、答えられませんから(笑)。
(1)とても面白い。思い浮かべたは、夕虹を舌でなぞっている風景。 「舌いちまい」には、軽率、調子のいいヤツ、嘘つきその他諸々の意味があって、いろんなイメージが膨らみます。
(2)若々しい句ですね。「赤い自転車にのる人」「青い自転車にのる人」「銀色の人にのる人」を見ながら、ふと死を考えたという事でしょう。表記ですが、素直に「赤青銀」でいいのでは。その後に「、」を入れたくなるのなら、ひらかな表記もあるかも。「?」も安っぽくみえました。決して『 時計屋の時計春の夜どれがほんと』のパクリではありません。「あかあおぎん夏の自転車誰から死ぬ」、これいいかも。

(1)新涼や太き羽音の鳩の群  小口泰與(60代,男)
(2)人の疾知れども触れず秋団扇
 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
 こちらこそ、どうぞよろしく。
(1)「太き羽音の鳩の群」は、新涼とはいいがたく、逆に暑苦しさを感じてしまいました(笑)
(2)疫は、「えき」または「やく」。流行病とありますが、ここでは「メンタルも含めての病」のような意味でしょう。秋扇で触れようとしないのは、あまり感じのいい人ではないですな〜。

(1)しらしらと骨触れ合うて時雨けり  山本葆博(70才以上,男)
(2)僧正の逝きて時雨を聴く夜かな
(3)秋冷の野に老残の身を放つ

 えなみ先生、始めまして宜しくご指導賜りますよう願いあげます。 上記3句は旧作です。義父命終。
ドクターえなみの診断と処方箋
 さきほども申し上げたのですが、せめてドクターえなみ、ドクターしんさあたりでご勘弁ください(笑)。
 追悼句が三つ。追悼句は、故人への気持ちを整理したり、残された方へのご挨拶だったりするので、作品のような評価と別の観点があると思いますが、とりあえずそのことは置いておいて。
(1)は、申し分のない句です。(2)は「時雨を聴く」のは、文脈から「わたし」だと思いますが、僧正ともとれなくないかも。
(3)は、ちょっとかっこ良すぎると思いますが、山本葆博さんを存知あげないので、もしかしたら、これが自然体なのかも知れません。

寿司桶のたがの斜めに秋暑し  藤井茂子(女)
 えなみしんさ先生初めまして。報告句からの脱皮に四苦八苦してます。宜しくご指導お願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 こちらこそ、よろしくお願いします。えなみ先生はこそばゆいです。やぶ医者だと思いますが、せめてドクターえなみ、ドクターしんさあたりでご勘弁ください(笑)。
 さて、報告句からの脱皮に四苦八苦しているとの事ですが、ささいな事でもいいから何かにスポットをあてる事が大事かと思います。その点、この句は「寿司桶のたがの斜め」が面白い。そのあたりが、てかてか光ってるのが「秋暑し」と響きあっていると感じました。ただ、同時に分かりにくい表現でもあるので、広く共感を得るにはもう一歩の工夫がいるかも。

初めての陶芸教室なつのそら  藤(10代,男)
 稚拙な表現ですが、素直に詠んでみました。
ドクターえなみの診断と処方箋
 ふたつの事をひとつの句の中でぶつける二物衝撃の句ですが、「初めての陶芸教室」が当たり前のことすぎて気持ちが伝わってこない。何を感じたのか、何が面白かったのかなど、自分の心が動いた瞬間にフォーカスを絞り込む必要があるようです。

酔芙蓉身を投げたいよ夕空へ  豊田ささお(70才以上,男)
 星野ドクターいろいろありがとうございました。またのご指導を楽しみにしております。えなみドクター、はじめまして、よろしくおねがいします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 2ヶ月は長丁場。良い読み手になれるように頑張りたいと思います。 よろしくお願いします。さて「身を投げたいよ夕空へ」が、口語でいい感じですが、意味が難解。下から作者が美しい夕空を見上げている感慨なのでしようか。ちょっと分かりませんでした。