俳句クリニック 2007年9月後半分(ドクター:えなみしんさ)

「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。


ドクターえなみの診断
2007年9月30日

(1)畦道にはや舞ひおりし曼珠沙華  小口泰與(60代,男)
(2)野分あと茜の浅間定かなり
(3)木道の野末に咲きし女郎花

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)数日前、どなたかの、棚田に舞い降りたマンジュシャゲを診断したと思うのですが、この句材もたくさんあります。わたしも、思いがけない所にあるマンジュシャゲを見かけるのですが、難しい句材です。「はや」の2文字もどうやって埋めるか、「いま」「さて」「まず」「すわ」「かく」「いと」「はて」その他、ぴったりのものはなかなかない。ここでは「ふと」などはいかが。
(2)「野分あと茜の浅間はだかれる」「野分あと果たして赤城彫り深し」の推敲句でしょうか。この句が中では一番安定してるでしょう。ただ自分の記録としては良くても、人に与えるインパクトはあまりないようです。
(3)ただそれだけの句。尾瀬などを歩いていると、結局、みんなと同じ写生になってしまい、難しいですね〜。客観的な写生ではなく、オヤッと思った感情を詠み込むとか、その時に起きたこと、あった事(誰かがこう言ったとか、誰かがこうしたとか、過去の記憶が甦った)などを取り合わせて詠むような工夫が必要なのかも知れません。わたしも同じ課題を持ち続けています。

(1)じゃがいもにしっぽがあればハーフかな  仁(60代,男)
(2)新涼やジーンズの娘(こ)と足絡め
 ドクターえなみ、よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「あのねのね」に、ハネを取ったら、とんがら し〜♪というのがありましたよね(古い)。俳句は言葉遊びでもありますが、掲句は円で考えると、俳句の一番外側で、わたしはファウルだと判定します。この境目が何なのか分かりませんが、ひと言で言うと詩的感興というような事でしょうか。
(2)う〜ん、どんな世界なのか読み取れないのは、ジーンズの娘が小さい子なのか、いわゆるギャルなのか分からないから。手ではなく、足絡めだからでしょう。

(1)ねぎの山青かったらの泳いでる  裸時(30代,男)
(2)カシオペア空欄のシャリぱくぱくぱ
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「青かったらの泳いでる」の文脈がとても難解ですよ〜。仮にその文脈が分かっても、句全体がわかって面白くなるという構造になっていないのでは。
(2)人は、分からない事に出会うと、言葉を失い無口になる。これを思考停止(エポケー)と言う。

住み古りし寺は碑のみや曼珠沙華  山本葆博(70才以上,男)
 まひまひと言えば、遊びをせんとや生まれけむ。まえまえ蝸牛。であるに小生、何をか思いけむ。あめんぼ、かわぐも、みずすまし、と思い為し、散歩途中の大池にみずすまし、大発生その水輪、雨の如し。即興句、粗忽は我が性にてありけり。なお掲句は戦前疎開先の景、うたた感慨深し。
ドクターえなみの診断と処方箋
 疎開先のみならず、「寺は碑のみ」は世の常。良く分かります。「住み古りし寺」は、「昔ある人が住んでいた古い寺は」の意味でしょう。やや難解でした。

満月や 海では海月が オクラホマ  拓人(50代,女)
 こんな幻想的な風景に憧れますが、ちょっと独りよがりで伝わりにくいでしょうか?
ドクターえなみの診断と処方箋
 拓人さんは、おそらく初めてです、よろしく〜。俳句のカタチになっていますが、あまり俳句的ではないでしょうね〜。季語がふたつ(満月、海月)あるのはいいとして、「海では海月が オクラホマ」というのが、よく分からない。拓人さんが知っているオクラホマと、ぼくが知っているオクラホマ(オクラホマミキサーのみ)が、重なるところがないし、果たして地名なのか(オクラホマに海があるか)も分からない。楽しそうな感じは伝わってくるのですが〜。

(1)秋薔薇の散るを促がす山の風  小口泰與(60代,男)
(2)影婆紗と磴を揺るがす萩の花
(3)芒野や木道に伸ぶ己が影

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)気持ちよさそうな風景。
(2)「影婆紗」が分からない。バサというオノマトペかとも思うが、これは難解そうなので追跡をやめます。
(3)尾瀬の俳句などで、類想がたくさんありそう。

(1)台本の余白が多し初しぐれ  未知(50代,男)
(2)夕映への線路ぎはまで林檎生る
(3)秋蝉や仕掛けの甘ひ落とし穴

 ご教示を。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)句意は面白いと思います。言い回しがだらだらした感じがしました。とくに「余白が」の「が」。
(2)「生る」が説明しすぎか。「ある」、それとも「かな」でしょうか。
(3)仕掛けの甘ひ落とし穴、が不明でした。

(1)せつかれてじらす次の手秋の縁  藤井茂子(女)
(2)辞す人の声の大きく秋夜長
ドクターえなみの診断と処方箋
(2)「秋夜長」と、あえてくどい言い方をしていますが、なるほど「夜長かな」だと、さっぱりしすぎて説明的に感じる。句材も面白く、成功の句。(1)は、前回診断ずみですよ〜(^_^;)ゞ

(1)小鳥来る薬湯を飲む縁側に  豊田ささお(70才以上,男)
(2)森深く大地に寝れば小鳥来る
 性懲りも無く作り続けて来ましたが、小鳥来るも弾数が少なくなってきました。
(3)朗々と少年吟士小鳥来る
 もうひとつおまけです。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)薬湯は珍しい句材。日常を切り取ったほほえましい句になっています。
(2)詩ごころが伝わります。「森深く」「大地」が重複している気がする。
(3)朗吟にイメージが膨らんだでしょう。ぼくの世代は赤胴鈴の助を思い出します(^_^;)ゞ。ちょっと明治チック。


2007年9月29日

(1)銀漢や帰ることすら出来ませぬ  仁(60代,男)
(2)金平糖ひとつふくみて遠花火
 ドクターえなみ よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)上5と、それ以降が響き合わない。たぶん、12文字が一般的なことを一般的に言ってるからでは。12文字のつかみは、藤井茂子さんがお上手で教わることが多い。参考にされたらいかがでしょう(わたしも勉強させてもらってます)。
(2)詩情をめざしているのだと思いますが、ピントが甘い感じです。

(1)虫の音に混じる雨垂れ書をめくる  せいち(60代,男)
(2)妻もまた読書人なり虫時雨
(3)開きゐる書へ飛んで来て秋の蚊よ

 宜しくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)句材もそうですが、言い回しも調和の方に向かっていると思います。言い回しなのか、「書をめくる」以外の事なのか、どこかに自分らしさを見つける必要がありそうです。
(2)これも、最初の句と同じことを感じます。
(3)ただ飛んできたというだけでは興味をひきません。日刊この一句2007年9月14日の「描けぬ日の画架に天道虫ふたつ/今井聖」ように、何か自分らしい工夫がいると思います。

(1)コンバイン稲穂の波を呑み尽し  浜太郎(60代,男)
(2)コンバイン蝗の家に戦車来て
(3)豊の秋いっき終結コンバイン

 3句の中で優劣をつけたい。
ドクターえなみの診断と処方箋
 浜太郎さん、初めてですよね。どうぞ、よろしく。岡野直樹さんの稲刈りシリーズから発想が広がったのでしょうか。3句とも、せっかちで暴力的な感じがするのは、上5に生々しいコンバインという言葉が据えられているからだと思います。好みですが、コンバインを耕耘機に変え、「耕耘機 蝗の家に戦車来て」を一番に押します。

窯出しに眼光凝らす秋日濃し  しんい(女)
 よろしくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 焼きものでしょう。「眼光凝らす」がどうかな〜と思いましたが、もしかしたら説明しすぎに問題があるのかも知れません。「窯出しに」の「に」や「秋日濃し」など。あくまでも例えですが、「窯出しの眼光凝らす秋日かな」程度のさらっと感に持っていかれると、まだいいのでは。

(1)ハングル文字の流れつく秋の浜  未知(50代,男)
(2)朴の葉の揺るる高みや世捨人
(3)瀧立つを女人と思ふ紅葉山

 ご教示を。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)755の句。句材は面白い。椰子の実が流れ着く藤村の詩の本歌取りにしたらどうかと思いました。そうなると、やはり575の方がいいのでは。
(2)う〜ん、これは全くわかりません。
(3)「瀧立つを女人と思ふ」、滝を女人と見たてているのでしょう。どうも、難しいですね。未知さん、ここんとこの投句を見ていると、テーマ(句材)がおおげさすぎるのでは。ひとり吟行でも行って、身近な所にも視点を置いてみたらいかがですか。それから、ユーモアというか、余裕というか、遊びというか、そういうモノがあるといいかと思います(ハングルの句にはそういうものを感じますが)。的はずれと思われたら聞き流してください。

赤蜻蛉句集開いて止まらせる  豊田ささお(70才以上,男)
 「小鳥来る」藤井さん、小口さんの句、改めて探してみました。 4句のなかで、好き嫌いで無責任にいえば、朗吟・・・はいいなと思う。そこが俳句センスのなさといわれそうですねえ〜・・う〜ん難しい・・で結局見たまんまに・・憧れと現実は乖離しすぎています。えなみドクターの「指に薔薇の花・・」の句など、よほどよく見つめていないとでてこないということでしょう・・・。だらだらと書きすぎました。すみません。
ドクターえなみの診断と処方箋
 いえいえ、句は十人十色で、好き嫌いは分かれるものです。それでいいのだと思います。掲句 ですが、こういう事もあると思いますが「止まらせる」に作為を感じます。自然の中にトンボがいて、作者がいて、ちょっとした交流がある。となると、「止まる」で作られた方がいいと思います。せいちさんの診断にも引用しましたが、日刊この一句2007年9月14日に「描けぬ日の画架に天道虫ふたつ/今井聖」がありました。ご参考までに。

(1)野分あと果たして赤城彫り深し  小口泰與(60代,男)
(2)稲妻に産土訛り夫婦かな
(3)老犬の歩みはかなし蛍草

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「果たして」がむつかしいのでは。「果たして彼はくるだろうか」のような副詞なのか、「果たす」の動詞なのか判断がつかない。ど ちらの品詞でも帯に短しタスキに長しのような気がする。
(2)「産土」ウブスナが珍しい言葉。生まれた土地。ウブは、うぶ声のウブ。埋もれている言葉を発掘して句を作られているように思い、拍手を送りたい気持ちですが、掲句は強引、こなれが悪いと感じます。中8の調べ。稲妻/産土訛り/の取り合わせも。
(3)「歩みは/かなし」「歩み/はかなし」両方に取れますかね〜。

(1)根回しの無縁の人と秋刀食む  藤井茂子(女)
(2)せつかれてじらす次の手秋の縁
 何時もご教示有り難う御座います。「小鳥来る」の朗吟は墓参(山の中)の時の経験と24日の出句は見たままでした。これからもよろしくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)う〜ん、むつかしい。まず「根回しの無縁の人」は、とても面白い。が、なぜ「秋刀魚食む」なのか。秋刀魚は庶民の味、素朴な味。だから「根回しの無縁の人と食べる」という理屈が感じられ、左脳の理屈のところでひっかかってしまいました。(今は、朝の食事前なので、わたしの体調もあるのかも〜)(^_^;)ゞ
(2)たぶん縁台将棋のような風景「せつかれてじらす次の手」のような12文字のつかみは、教えられる事が多い。「秋の縁」が不自然に感じます。「縁」がないと情景が掴めないという事でむつかしいのかも知れませんが、素直な所、夏を中心に季語を検討されたらいかがでしょう。

お話の堂々めぐりする夜長  藤(10代,男)
 素直、率直、平明な作句を心がけているのですが、概して平凡な着眼、発想で終わってしまっています。n何かアドバイスお願いします。あと、前の「祈りたる眉間と掌へ残暑」の句ですが、「たる」は完了の意では無く、存続の意で使わせて頂きました。まあ色々と難しいところですね。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「たる」は「〜ている」という感じ、分かります。わたしも、歴史カナは俳句以外は使わないので、ほんとうの事は分かってないのかも知れないが、どうも大げさになってしまいがちだと思う。その句なら、「秋暑し/祈る眉間と手のひらに」のようなまとめ方の方がいいのではと思った次第です。
 掲句 、そういうこともあるでしょうね。素直な分、おとなしい句でしょう。作句のアドバイスは、わたしが欲しいくらいです(^_^;)ゞ。前回も書いたように、ほんとうに文語〜歴史カナで自分の気持ちを表現できるのかは検討した方がいいかも。表現がかたまる前に、思考錯誤で、口語〜現代カナもやった方が発想も含め広がるのでは、と思います。また、目指す俳人を見つけることも大事でしょう、きっと。


2007年9月28日

(1)二科を見る裸体の前の悪友と  仁(60代,男)
(2)おみゃーさんやっとかめだなも京は秋
 ドクターえなみ、よろしくお願いします。23日の掲載分過大なる 評価をいただき> 赤面のいたりです。数十句作っても一句か二句なんとか俳句らしきものができたかな〜というレベルのなかありがとうございました。・・・他の人達の診断の結果もかかさず拝見しておりますがいろいろと教えられます。今後も厳しい診断をお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 人と違う俳句を目指している気持ちが伝わってきて、応援しています。
(1)裸体を見るから悪友なのか、とか、悪友だからストリップのような感じで芸術を見てるのかとか、そういう理屈を感じて、そこで思考停止してしまいました。
(2)わたしは、清水義範さんのファンなので、「やっとかめ探偵団」も数冊読んだことがあります(自慢するような事ではないのですが)。やっとかめは八十日目と書いて、名古屋弁で久しぶりの事。名古屋人が、京都でばったり友達と会ったという事なのでしょうが、そこに理窟というかワザとらしさを感じました。

里芋のねっとりころり村芝居  多弁(60代,男)
 「秩父路やどんぶりに盛る菊膾」の菊膾は田舎じゃ上品にちょっとだけ食うのでなく、山盛りにして食っている!ということでした。
ドクターえなみの診断と処方箋
 菊膾は、なじみのない食べ物で、実感がなく失礼しました。その後、藤井茂子さんからも、菊膾に関する面白いハナシが送られてきました(たぶん、18日か19日に掲載になっていると思います)。掲句 、「里芋のねっとり/ころり村芝居」なのか「里芋のねっとりころり/村芝居」なのか〜と考えてたら、里芋、村芝居の季重ねなのでした。どちらかに集中されるのがいいでしょう。

(1)向日葵を鴉ついばみ秋の風  センリ
(2)薔薇の花弱々しげに秋の園
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)(2)とも、季重ね(向日葵、秋の風)(薔薇、秋の園)です。季重ねが絶対いけないという事ではないのですが、この2つの句で言うと下5が、とってつけたようになっています。つまり、なくてもいいのです。その5文字分、見たことや感じたことなどにあててください。下の句「弱々しげに」が良くありません。みんなが使う一般的な言い方です。どう弱々しかったかも含め、ぴったりの言葉をさがしてください。

夫の屁に逃げ出すわれに十三夜  さくら(女)
 少し下品かも---宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 少し下品ではなく、そうとう下品です。しかし、わたしこういう句、大好きなんです。いちど「俳句おなら大会」をやってみたいと思っているくらい。「十三夜」とぶつけて品位?をかろうじて保っているやに思えます。もし句会に出ているなら、思い切って出して、みなさんの反応をうかがってみてはいかが(除名になっても責任もてませんが)(^_^;)ゞ

(1)籾殻の山は見る見る近江富士  岡野直樹(40代,男)
(2)籾袋ふんばる足にバッタ逃ぐ
(3)籾袋古稀の岳父が担ぎけり

 ご教示ありがとうございます。稲刈りシリーズです。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)短詩形の俳句らしい誇張で、面白いです。「見る見る」は、たちまちにの意味ですから、ひらかなの方がいいのでは。
(2)なるほど、そういう事もあるでしょうね。言い方でもっと面白くできそう。
(3)セゾンカードのCFで鉄棒やってたステテコの男性は、たぶんその位の年でした。年齢と健康は個人差が大きいので、古稀程度では、この年なのに〜ができた〜という句は難しいでしょうね。

雨雲と二人三脚運動会  しんい(女)
 「雨雲のうろうろ去らず運動会」、少し変えてみたんですが、何だか漢字ばかりで・・・。よろしくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「雨雲と二人三脚」という擬人化がわざとらしく感じます。また、運動会で、二人三脚の例えもピッタリすぎて、面白くありません。運動会の句の診断は、9月23日のsaさんにもあります。参考になさってください。

山里や色添えゆかし吾亦紅  浅葉洋(70才以上,男)
 先日の台風で、吾亦紅が大半なぎ倒されましたが、残った数本に、えび茶色の穂状の花を付けているのを見つけました。宜しくご指導お願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 花というものは、だいたいが(庭や部屋などに)色を添えてゆかしいものです。一般的な言い方ではなく、自分なりの表現をするように心がけてください。あるいは、コメントにある「吾亦紅が大半なぎ倒されましたが、残った数本に、えび茶色の穂状の花を付けているのを見つけました」。こちらを俳句にされたらどうですか。

(1)綾取りのもたつく小指蔓竜胆  藤井茂子(女)
(2)秋澄むや居ないあなたを探し折り
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)蔓竜胆は、ツルリンドウ。恋の句なのでしょうか。「もつれる」は季語のツルに近いので「もたつく」にされたのでしょうか。こういう句は嫌いではないのですが、綾取りをテーマにした恋歌はややパターンだなという気がしました。
(2)「探し折り」は折り紙でも折っているのでしょうか、分かりません。この事もふくめ、おもわせぶりです。おもわせぶりの全部が悪いわけではないのですが、「わたしって、こんなにデリケート」みたいな感じで言われると、「つきあっていられないぜ」と言う気になるものです(言葉悪くて失礼)(^_^;)ゞ


2007年9月27日

闇の世をにょっきり天へ彼岸花  豊田ささお(70才以上,男)
 彼岸花は、何もないところから、いきなりニョキッと出てきます。 しかも彼岸を外さず律儀に咲きます。いつもそのことに感じ入るのですが・・・
ドクターえなみの診断と処方箋
 花が咲いているときは葉がなく、葉があるときは花がないというのも曼珠沙華の不思議なところだそうです。掲句 、句意はすこし違っているかも知れませんが、「つきぬけて天上の紺曼珠沙華/誓子」を知っているので、類想句と感じてしまいます。ま、比べる相手がすごすぎるのですが(^_^;)ゞ

亡き母に初孫抱かせ秋気澄む  きなこ(50代,男)
 よろしく、ご診断のほどー。
ドクターえなみの診断と処方箋
 句意はわかります。また、ほんとうにそう思ったという事かもしれません。が、きなこさんを存じ上げず、句だけ読むと、言葉は悪いかも知れませんが怪談のように思えてなりません。あまり気持ちの良い句ではありませんでした。

(1)真後ろの話し相手は秋の鬼  仁(60代,男)
(2)綿菓子とくちづけしてる赤とんぼ
 ドクターえなみ、 よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「秋の鬼」とはなにか、いろいろ想像できる句ですが、結局、こうだろうというものを掴めなかった。「この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉」三橋鷹女か。まさか。
(2)「俳句は三歳の子供にもわかるように作りなさい」と芭蕉さんが言っている。この句はそういう句だが、大人が作ってると分かっているからどうなのかな。わたしはイマイチと思う。

(1)ブランデー実梅に注ぐ音甘し  蓉子(50代,女)
(2)終止符の打てぬ恋して春咳ぬ
(3)露の夜や梅酒の梅の沈み初む

 梅が底に沈めば飲み頃と教えてもらって今年漬けた梅酒が、そろそろ飲める頃かと家の隅に置かれたその壜をのぞくと、もう少しでした。「壜の梅沈みし頃や露の夜」とどうでしょうか。ご診断お願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「音甘し」が梅酒の甘い味を想像している事を感じさせ、面白いと思う。男には作れない句でしょう。
(2)「咳ぬ」がむつかしかった。「咳く(せく)」という動詞があるんですね。「春咳ぬ」の使い方が巧み。いかにも女流俳句という感じですが、嫌いではありません。こういう句が、男が多い句会で出句されると場が華やぐ気がします。ただハルセキヌは口誦性を考えると、やや難しいかも。句会ではその事は誰も言わないと思いますが。
(3)一読、雰囲気があって、良い句だとおもました。ただ、ふたつ季語があって、季語をどう考えるかが難しいです。「露の夜」とあれば、露の連想で、はかない、無情、死、などを思う。これが余計なのでは。「静かな夜」「もの思いにふける夜」「豊かな」「深い夜」など、季語でない言葉の選択が良いのではないでしょうか。あるいは、全く別の事、風景、思い出、肉親などを据える手もあるかと思います。底5は、わたしなら「沈むころ」としてしまうが、口語的でしょうか。好きずきか。「壜の梅沈みし頃や露の夜」も良い句だが同じ課題でしょう。

観月の後のさよなら深々と  藤井茂子(女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 鑑賞文を書くとながくなってしまうので省略ですが、観月のあるべき姿を描いていて、良い句だと思います。ちなみYahoo!の自動翻訳に入れてみました。
 Good-bye after the moon-viewing deeply
ちゃんと翻訳されている!!

蛍どこいたずら心白い皿  裸時(30代,男)
「破鈴糖7」というホームページやっているのですが「裸時」で検索しても上位にのってきません(;;
ドクターえなみの診断と処方箋
 「ぱりんとう7」見ました。裸時ワールドが少し分かった気が。
 この句は3段切れ。3つは、さんすくみ。それも裸時ワールドか。3段切れで、わたしが担当になって褒めたのは「ぽくぽくと足裏クラブ濁り酒」のみ。3段切れじゃないと満足できない感覚になっているのか〜。

隣からクラリネットと木犀と  穂波(女)
 「新涼の長いチョークを揃えけり」「ひと粒の切花の息秋すずし」へのコメント、ありがとうございました。切花を生けた水に、細かい気泡が浮かんでいるところを句にしたかったのですが、難しいですね。好きな題材なので、また考え直します。今回お送りする句は、去年Dr.三宅に見ていただいた「きんもくせいクラリネットとまたいとこ」の推敲です。「同じ重さの言葉が3つなので、2つにするように」とのことでした。ご指導よろしくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 三宅さんのアドバイスは賛成です。「きんもくせい/クラリネットと/またいとこ」。「と」がありますが、三段切れだというアドバイスもできます。つまり3つのものが対比すると、そこからひとつのイメージを作るのが難しくなるという事です(だと、わたしは思ってる)。
 さて、俳句は17文字なので、5W1Hを大幅にカットしなくてはならない。とは言いながら、句意(その句で伝えたい内容や、俳句の狙い) は伝えないとならない。この句では、「隣から/クラリネットと木犀」がどうしたのか全く分からない。また、仮に「借りた」と頭でおぎなっても、別に面白くはない。何が面白いと思ったのか、何を伝えたいのか、句意を整理してみてはいかが。

(1)はらからやモンゴルの草原は秋  遊雲(70才以上,男)
(2)秋場所や今場所の魁皇は弱い
(3)のっしのしと脂肪の塊小望月

 今日の「この一句」は「出島」でした。秋場所も後二日。白鵬の勝った時のしぐさや顔つきが何か朝青竜に似てきたような。残念なことに魁皇は途中休場。
ドクターえなみの診断と処方箋
 ご指摘は、9月22日「秋の暮でるでる出島出て負ける/墨谷ひろし」 でした。「出て負ける」が気の毒ですが笑える〜(^_^;)ゞ
(1)「相撲にもあっていいだろ夏休み」これ、わたしの川柳なのですが、わたしは朝青龍に同情的なのです。そういう気持ちが「はらから」にこめられていて好きな句です。川柳がまさにそうなのですが、今のことを詠んだ句は、時間がたつとどう感じるのだろうか。
(2)これは笑えます。この調子で全員の俳句が作れそう。
(3)順番に読んだので「小望月」が相撲取の四股名と思えてしまいました。これは冗談ですが。「小望月」とは十五夜の前の月。つまり、「十四夜」。「待宵(まつよい)」とも。「♪待てど暮らせど〜来ぬ人を/宵待草のやるせなさ」は、ヨイマチグサだが、正式名は、マツヨイグサ。月見草とも呼ぶ。掲句ですが、底5に落ちてないのでは。

(1)配達の兄さん蛇柄穴惑い  ポリ(50代,女)
(2)零余子食ぶガリバー女の日曜日
 いつもていねいに教えていただきありがとうございます。今回もよろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)ポリさんは、言葉の選び方が面白いですね。ここでは「配達の兄さん蛇柄」というのが変わってます。ただ、蛇→穴惑いのバトンタッチが言葉遊びだけで、意味がくみ取れません。
(2)「零余子食ぶガリバー」というのが、面白い。想像では、ムカゴが小さいので、自分がガリバーに思えたという事ではないですか。だとしたら「女の日曜日」は全くいらず、その事に集中して作った方がいいと思います。


2007年9月26日

(1)霊水にのみこだはる秋の蜂  仁(60代,男)
(2)はみがきはきらいです。ぼくキャンプファイヤー
 ドクターえなみ、よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)蜂が霊水にたくさん来ていて、蜂も霊水が分かっているのか〜と思ったという句でしょう。「こだわる」が言い得てる。中6、声に出して読んで気持ち悪くないですか。この句は、歴史的仮名遣い(旧かな) なんですね。なぜ?
(2)ついでだから、最後にも「。」を打ってしまった方がいいと思う。広告キャッチフレーズは、やたらと「。」をつける。当時は「書く丸派」と呼んでいました。キャンプが夏の季語。「ぼく」の二文字が光ってる。少年の姿が浮かび上がって、こういうのも面白い。

秋暑し木陰で羊群れをなし  岬(女)
 「吊橋を歩く羊や鰯雲」。先日六甲の牧場へ行って始めてゆっくり羊を観察?して参りました。人間と同じように木陰で休憩したり吊橋をすたすたと歩く姿に興味をかんじました。
ドクターえなみの診断と処方箋
 六甲というと六甲バター、六甲颪、関東の人間はそんな事しか思い浮かびませんが、バターがあるので牧場なんですね〜。暑いので→木陰で休んでるんだな〜、という納得になってしまい、右脳でのイメージの広がりはありませんでした。

(1)隣人は友人のやう入学す  藤(10代,男)
(2)路地裏の一匹でをるとんぼかな
 よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「隣人」とは?隣の席の人。入学式で隣にいる人?
(2)近頃めっきり少なくなったトンボを詠んでいて、良いと思う。「裏路地」でなく、「大通り」の方が面白いかも。あるいは具体的な地名でもいいかも知れない(地名の選び方にセンスが出る)。藤さんはズーッと歴史的カナと決めたのですか。こういうのは「路地裏の一匹でいるとんぼかな」の方が気持ちが伝わるような気がする。わたしも歴史的カナと決めたのだが、どうしても昔の事を詠んだようになってしまいがちで、口語俳句の時などは悩んでいます。句集などで、仮名遣いを統一する必要があれば別ですが、使い分けでもいいのかな〜と最近は思っています。

夕映えの窓に人影鰯雲  けいこ(女)
 いつも有難うございます。季語を鰯雲か秋澄めりか迷ったのですが。どちらも?でしょうか。宜しくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「鰯雲」では、ただ秋の季語として入っているだけのような気がします。「秋澄めり」だと、ボーッとうつる「人影」と合わない。探し直された方がいいと思います。

その下は憤怒埋もる露の草  蓉子(50代,女)
 いつも丁寧な処方箋読ませていただき、えなみドクターの診断楽しみにしています。この句躊躇したのですが、思い切ってまな板にのせました。 (自分でこわい句とおもいます)よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「埋もる」はウズモル。フンヌウズモルの濁音から、心の中の葛藤が聞こえてくるように思います。心ならず戦争でなくなった方の慰霊碑や、歴史の中で悲運の死を遂げた方の遺跡などを連想しました。「露」は世の無常を伝え、「露の草」も「その下は」と呼応して適切であると思います。怖いというのは、社会的発言を含んでいるからではないかと思われますが、これはまだ個人的感慨でしかなく、心配はないと思います。また、俳句は時として社会に発言することもあるのだと思いますが、その時は自分の立場をしっかりさせる事が大切なのではないでしょうか。

(1)饒舌な人境内に凌霄花  まりあ(50代,女)
(2)指先に切り傷二つ西鶴忌
 ありがとうございました。「えんぴつの丈」は夜学生にしたいと思います。職場の一つが美大の予備校で、生徒たちは休み時間になると、何十本もの鉛筆をシャカシャカと削ります。新しい2句よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「饒舌な人/境内に凌霄花」。客観写生(感情を交えず写生する方法)のような句です。刑事が手帳にメモしたような文章。こういう作り方もあるでしょうね。「饒舌な人」と切り取るのが賛否わかれるかも。凌霄花のあの生命力と響き合っているとは思うのですが、句会なら候補にいれて最後で落とす句かも(失礼)。
(2)う〜ん、思わせぶり。でも、何で西鶴忌なのかが謎。桜桃忌とか河童記などでもいいのかも。そもそも思わせぶりなだけの句なのかも。

(1)アベマキの葉裏光らせ秋の雨  豊田ささお(70才以上,男)
 「里の木の葉裏光らせ秋の雨」のご診断有難うございました。アベマキがキャッチーな語かどうかよりも秋の雨に置き換わる下の句が浮かばず・・苦肉の策でした。 因みにアベマキは「里の木」の実景で、風に翻ると葉の裏が白く光ります。(雨を風にしようかとも思いましたが)
(2)コスモスの波はよせよせ寄せてくる
 近くの公園はコスモス、30種110万本というんです。コスモスなんか植えないでと願っていましたが、コスモスに釣られて来るヒトが多いので、どうしょうもないです。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)句の鮮度が格段にあがったと思います。ただ、アベマキの木はたぶん認知度の低い言葉なので、それをどう考えるかです(わたしは、植物にも弱い)。でも、「アベマキの葉裏」とあれば、木の名前と類推できるし、辞書にあたれば分かることなので、良いと判断するべきでしょう。
(2)コスモスは、たぶん、わたしの一番好きな花です。「よせよせ」は「寄せ寄せ」でしょうか。コメントからは「やめろ」という風にも取れるのですが。たぶん前者でしょう。「よせよせ寄せてくる」はあまり上手い言い方ではないように思えました。

(1)野分あと茜の浅間はだかれる  小口泰與(60代,男)
(2)大利根の響(どよ)めき立つや野分中
(3)農婦駆(は)す稲穂倒れし畦道を

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)珍しい言葉「はだく」は、「開く」でしょう。「着物の前がはだける」のように使う。野分あとの澄んだ空気に浅間が茜にそまっているという事ですが、「はだく」が言い得て妙というレベルにはなっていないようにかんじました。ちょっと凝りすぎかも。
(2)大利根が「響めき立つ」のが、わかりにくかったのは、「立つ」 の補助動詞にあるのかも。何か立っているのかと思ってしまった。「野分中」は、風景としての中と、時間としての中があると思う。これも読みで迷った。少し言い回しが難しすぎるのではないですか。こういう句なので「俳句は三歳の子供にもわかるように作りなさい」とはならないと思いますが、多少は意識するのもよろしいのでは。
(3)「駆(は)す」は、初めて聞いた。わたしのベネッセ古語辞典には「施す」があった。走る。あくせくする。あちこち走り回ること。農作業のあわだたしさを詠んだのだと思う。余談になりますが、俳句の背景には口誦性があり、声を出して意味が伝わるかどうかは、とて大も切だと思います。という事を考えると、正しいか正しくないかという観点ではなく、声を出して読んで伝わるかどうかという観点で、語彙のコントロールをする必要があるのでは、と思います。余計なことと思われたら聞き流してください。

自慢せし夫の福耳秋の風  さくら
 宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「自慢せし」という非常に珍しい上5で始まり、良い。微笑ましい。秋の風という寂しい季語を、暖かく受け止めている。こういう内容なので、口語で作ってみたい気になる。

長き夜の衣のほつれに針を打つ  藤井茂子(女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 「衣」は、きぬ。衣服のこと。昔の女の人は、針を持つことが多かったように思います。たぶん、ユニクロがなかったから。つまり、服が使い捨てでなかったからでしょう。それに兄弟も多かった。細々とした灯りに正座して針仕事をする母。ありがたい姿におもわず涙ぐんでしまいそうになりました(^_^;)ゞ

(1)結晶し世紀に貼られる夏みかん  裸時(30代,男)
(2)空蝉が発光したら空くぼむ
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)かつて梨のブランドに「二十世紀」というのがあって、そのステッカーが貼られる姿を想像したが、全く違うことかも。口に出して説明できなくてもいいのだが、裸時さんがイメージを持っているかどうかが、とても大事だと思う。それがあれば、もう少しわたしにも伝わるはずなので。
(2)生物エネルギーが、地球に何かの影響を及ぼしているという事でしょう。分かります。


2007年9月25日

(1)モーツアルトにジェームスデーンに秋思かな  仁(60代,男)
(2)すずらんのらららの群舞人の声
(3)流し目で見て歩く日のザリガニ

 えなみドクター、よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「モーツアルトとジェームスデーン」という脈絡のないふたりが出てきて面白かったが、それじゃジョン・レノンとアート・サイモンじゃだめなのか〜。よくわからんでした(^_^;)ゞ
(2)稔典先生は「うふふ」。仁さんは「ららら」。「舞人の声」が意味不明で、全体として意味不明でした。
(3)ザリガニは目が飛び出ていて、表情を変えずに風景をみている(ような気がする)。あのザリガニが服をきて、渋谷などを歩いていたら、きっとこんな句ができるだろうな〜と思った。ザリガニは季語ではないみたいなので無季(無季でも面白ければかまわないと、稔典先生は言っていた)。

刈残し二人を隔つ天の川  岡野直樹(40代,男)
 稲刈りシリーズです。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 稲刈りと天の川。大きな風景を詠もうとしているのだと思いました。「刈残し/二人を隔つ/天の川」。やや三段切れ。あるいは二段半きれ。特に、「刈残し/二人」の関係があいまいか。刈り残した田二枚が天の川で隔てられているという景の方が気持ちよい気もするのですが、どうですか。

(1)曼珠沙華北斎の空昏れにけり  蓉子(50代,女)
(2)別るるとかすかな予感夜の蟻
 「葛の風波涛は胸の響きなる」のご診断ありがとうございました。 元句は葛の花だったのですが、こちらのほうが自然でしょうか?よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「葛の風」が工夫で、句に動きが出ています。断然「葛の風」です。
(1)曼珠沙華の取り合わせに、「北斎の空」は面白いとおもいます。あ〜あの絵の空だと、読む人がおもえればもっといいのですが、残念ながら思い当たらずでした(無念)
(2)タイトルは「夜の蝶」。名匠/吉村公三郎監督、主演/京マチ子、若尾文子、香川京子の映画のようでした。遊んでスイマセン(^_^;)ゞ

(1)九条の中に生まれて根無草  未知(50代,男)
(2)蟲の音の晒さるる背や月渡る
(3)棚田には居座る岩や生身魂

 ご教示を。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)根無草という草があるのかと思ったが、いわゆるデラシネというやつでしょう。仮に、ある作家がこのような句を作れば、その人の行動と照らし合わせて「なるほど〜」と思うことがあるかも知れない。しかし、そうでない人がつくるバアイは、何をもってそのような事を言うのか不明となる。単にらしい事を口走っているだけで、実は何も言ってないのと同じではないですか。
(2)前回の「深みゆく闇を正して蟲の国」の対をなす句。「晒さるる背」が何か罪がありおびえているニュアンスなのだが読む方には何の事が分からず、おもわせぶりなだけ(たぶん、生きていることがそれだけで罪深い云々)で、前回の句の方がいいと思う。あとは技術的なところ、「蟲の音の」は「蟲の音に」でないと意味が通らないと思うが、勘違いか。この句では「月渡る」が季語として働いていて、虫の音と月が豪華ではあるが、季重ねがうるさい気もする。かと言って「蟲の音の晒さるる背」というわびしい状況のままでもどうかと思う。
(3)「棚田には居座る岩や/生身魂」。句意は伝わってきますが、生身魂というのが、どうも好きになれない。江戸中期に郡上一揆というのがあって、死を覚悟で江戸幕府に直訴する。その若者は皆、生身魂としてあがめられた。というのは分かるが、現代、100才まで生きようという時代に、生身魂はないんじゃなかと思います。ということで、句以前の事がひっかかってしまいます。すいません。

(1)背筋伸びけり十月の丸の内  文の子(60代,男)
(2)露の朝娘(こ)はマンスリーマンションへ
(3)秋暑し地球儀逆に回しみる

 宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)丸ビルも新丸ビルも新しくなった。「背筋伸びけり/十月の丸の内」。前半は、ビルも、見上げてる人も背が伸びたと読め面白いと思う。中7の頭2文字に「けり」が入っているという珍しい構成、初めて見ました。わたし明日、丸ビルの横からスカイバスというのに乗って、皇居一周する予定。1200円でお登りさん(笑)
(2)文の子さんの、日記俳句でしょう。
(3)時間を戻してみるということで、ちょっと理屈でしょうね。地球儀俳句は観念的な句になりやすいのでは。だから挑戦だ、という前向きの考えも。

(1)新米の音かろやかに研がれけり  えんや(60代,男)
(2)爽やかに髭剃りくれし理髪店
(3)補聴器に尿の勢(きお)ひや今朝の秋

 いつも適切な句評深謝致します。説明的な句、がもう少し理解出来ない小生です。どうか宜しくお願い申しあげます。
ドクターえなみの診断と処方箋
 少しでも感じたことを分かりやすく伝えたい、少しでも作句のアドバイスになればいいな〜と思いつつ、前の句の影響や、体調(酒の残り具合)、家庭の安定度?などにより評価がぶれるやぶ医者ですが、許容できるところだけでも参考にしていただけたらと思います。
(1)新米なので音をかろやかに感じるというのは、良くわかります。ただこの事だけでは、当たり前で句としては物足りない気がします。
(2)爽やかに感じたのは、そった髭がさっぱりしたからか、店のおやじさんの手際がいいからか、などか伝わってこない。もし、髭をそって爽やかというのであれば、当たり前でしょうし。「髭剃りくれし」の日本語もこなれが悪いのでは。文字は大幅にはみだすが「髭を剃りてくれたる」などか。
(3)補聴器をつけた人の事は考えたことがありませんでした。こういう事もあるのだな〜と新鮮な気がしました。「尿の勢(きお)ひや」もうまく7文字にはめたと思います。

(1)朝の胃の少し軽くて小鳥来る  豊田ささお(70才以上,男)
 私のいまは、こんなところでしょうか・・なかなかご期待に沿えず面目ないです。
(2)小鳥来る森のはずれの三角田
 見たまんまが一番気楽です。取り合わせでなく、報告に終わらない句をめざすのが私の方向ではなかろうかと愚考していますが・・・?
ドクターえなみの診断と処方箋
 「小鳥来る」との知恵比べですが、これも句会の楽しみでしょう。マイペースで楽しんでください。わたしなどは、みなさんがたくさん俳句をつくるのを垂涎の思いで見ています。ドクターが終わったら、修行の効果でドドッと句ができるのではないか〜(そんなわけないか〜)、そうなったらいいだろな〜という状態です(笑)
(1)「体調+小鳥来る」。今までの中でいちばんいいと思います。
(2)事情を知ってるからかもわかりませんが、ムリに風景を探した感じがしました。

(1)秋の蚊や藪の近道急ぎ足  藤井茂子(女)
(2)山装う銀糸ばかりの綴れ帯
(3)越後屋の主差し出す菊膾

 多弁さんの出句で。思わず出来ました。新潟では食用菊をもってのほか。思いのほか。とか名前がついてたくさん戴きます。大鍋に湯を滾らせお酢を入れた中に黄色かピンクの花弁をどさっと入れて5〜10秒。冷水に入れてきゅっと絞ります。それを料理にします。確かにどんぶりで出して戴きました。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「もってのほか」、面白い名前だな〜と思って調べたら「天皇の御紋である菊の花を食べるとはもってのほか」とか、「思いのほかおいしい」 などから転化したとある。新潟には友人がいるが、このハナシは聞いたことがなかった(もっとも、会うのはいつも夏だから)。
(1)面白いですね。底5、名詞止めは、動きも止まってしまう「小走りに」などはいかがでしょう。
(2)「綴れ帯」を調べたら「紀元前1500年頃エジプトで〜」から始まり、「今でも法隆寺か正倉院の裂として残ってる」というような事が書いてあり、長文のためお手上げです。そういう訳で句もよく分からないのですが、豪華な感じがしました。金ではなく銀も季語とマッチしているのでは。
(3)「越後屋のあるじ差し出す菊なます」と開いた方がよみやすいかも。余談になるかも知れませんが「越後屋」というと今の三越の前身、三井越後屋を連想します。越後屋とあるが、越後の出身ではなく伊勢松坂が出身。なんで越後屋というかというと、あるじの三井高利(たかとし) の先代が三井越後守という武士だったからだそうです。もちろん、越後にも越後屋はあるでしょうけど。知ったかぶりは、この11月に「江戸文化検定」を受けるので、勉強を始めたところだからで、失礼しました。


2007年9月24日

(1)夏雲の水脈の栓そっと抜き  仁(60代,男)
(2)今日の君問うてみたい芋煮会
(3)麦秋の帰りの闇を洗いけり

 えなみドクター、よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)一読、さわやかな気分が入ってきました(今までの説明では、右脳が動きました)。畦などを止めていた栓?を抜いたとも読めるし、天然水のキャップを開けたとも読める。「栓」なので、たぶん後者か。普通は「夏雲や/」と切る。そこに間は生まれるが、どうしても硬くなる。「夏雲の〜」と、後の単語に意味をつなげたことも効果をあげていると感じました。
(2)「君」とあると異性を考える。芋煮会で何を問うのか不明。
(3)この句も右脳がさわやかに受け止めてよさそうなものだが、そうはならなかった。ということは、こまかい所は置いておくとしても意味の把握があった上で右脳がうなずいているのだろう。「帰りの/闇/洗いけり」などが漠然としていて、文脈から意味(イメージ)を掴めなかったのだと思う。

(1)終止符を打たず燐寸を擦れば野火  未知(50代,男)
(2)深みゆく闇を正して蟲の国
(3)恙なく一日暮れて柚子ひとつ

 ご教示を。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)野火は野焼きの火。大岡昇平の「野火」、寺山修司の「燐寸摺るつかの間の海」の「燐寸を擦る」など文学の断片が盛り込まれ、右脳に心地よく響く。が、後で意味を考えてみると、「終止符を打たず燐寸を擦れば」のイメージがつかめない。わたしには難しすぎる。
(2)人間の勝手で地球が滅亡に向かっている今も、虫は懸命の営みを行っている。底5の「蟲の国」が、わたしたちの「人間の国」を意識させて良いと思う。
(3)柚子湯なのか、焼酎に浮かせてお湯割りなのか。いずれにしろ、あのでこぼこの柚子が恙ない一日の終わりにあってよかった。「柚子ひとつ」で成り立っているが、「柚子ひとつ」が「恙ない一日」を受け止めるほどの力があるか、やや不安。

(1)氾濫の跡ある彼岸曼珠沙華  文の子(60代,男)
 曼珠沙華の残り3句をお送りいたします。
(2)対岸へ石投げする子曼珠沙華
(3)曼珠沙華天上隠す戦闘機

 山口誓子の空になりませんでした。朝霞基地が近いからでしょうか。宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「氾濫の跡ある彼岸」というのは、直前に水害があったのでしょうが、それは単に報告としか響きませんでした。
(2)「対岸へ石投げする子/曼珠沙華」底5とその前が響かない。
(3)戦争中の句と読めば、ありうる句だとは思いましたが、現代とは思えないのでは。(日本は平和で良かった〜)

小鳥来る海辺ホテルのバイキング  藤井茂子(女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 藤井さん、「小鳥来る」の3句目。気持ちのよさげな風景ではありますが、いかにも小鳥が来そうな場所との取り合わせでは、当たり前だと思います。

骨壷の骨哭くことも炎天下  蓉子(50代,女)
 元句下五は鰯雲だったのですが・・・迷っています。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 追悼句でしょうか。「哭く」は鳴く。「慟哭」のように声を出しなく。秋の季語は「実り」と、冬に向かう「寂しさや衰え」が中心です。ということで「鰯雲」はないでしょうね〜。「骨哭く」の激しさに合うのは、どちらかというと炎天下になりますが、あまりにも強い季語で、「骨哭く」を食ってしまうように思えます。夏を中心に、もう一度探されたらいかがでしょう。

玉簾天を仰いでたじろがず  浅葉洋(70才以上,男)
 始めまして。宜しくお願い致します。暑さに負けず、真っ直ぐに立ち純白の花をつけた玉簾を見て、清清しくなり詠みました。
ドクターえなみの診断と処方箋
 浅葉さん、こちらこそよろしく。タマスダレ、見たことあります。あれがそうだったんですね〜。さて掲句ですが、感じたことにいつわりはないのですが、花の表現としては類想がたくさんありそうな気がします。

禁断の場所をめぐりて小鳥来る  豊田ささお(70才以上,男)
 「小鳥来る井戸端に張る盥水」おっしゃるとおり左脳しか使っていない句です。かといって、右脳は直感勝負なので、爽快に簡単にというわけにもいかず、いつも、悩んでいる現状です。読者の左脳を刺激となると余計に考えてしまいますね。
ドクターえなみの診断と処方箋
 右脳などと言うと難しく感じますが、要は意外性がないとか、平凡だと言う事だと思ってください(失礼)。掲句 、禁断の場所の何たるかがわからず、同じく左脳でストップしてしまいました。別の言い方をすれば面白くなることもあるか。あるいは、場所のとりあわせだけにこだわらない方がいいのかも知れません。「小鳥来る」のお題は、藤井茂子さんが、ここまで3句チャレンジしています(掲載はまだのこともあるかも知れません)。また、9月9日回答の小口泰與さんにもあります。参考にされてはいかがでしょう。

秋の野にぶりりと放つおならかな  栗太郎(60代,男)
 ドクターえなみ駄作にお付き合いいただきありがとうございます。 先日の「お疲れと秋がささやき・・・」の句。海外旅行の疲れと夏バテが重なりもうろうとして出勤の途中、近くの池のほとりで涼しい風に吹かれました。耳元で秋の精が「夏はもう終わりですよ。今日からは私の出番です。お疲れさま」とささやいたような気がしたのです。
ドクターえなみの診断と処方箋
 そうですか、次に来る秋がささやいたという事なんですね〜。さて掲句、秋の野におならを放つ、というのは大らかでよろしいのですが、「ぶりり」ではおならと近すぎる。中身が出てしまいそうです(失礼、聞かなかったことにしてください)。

(1)ふと目覚む鳴き声競ふ月鈴子  小口泰與(60代,男)
(2)白鷺のけふも増へたり花真菰
(3)秋薔薇のはつはつに咲き空青し

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)月鈴子(げつれいし)鈴虫の異名です。この名の和菓子もあるようです。せっかくなので、この名前を中心に据えた句にすればよかったのでは。しかし、勉強になりました。
(2)「真菰」は夏の季語。沼や川、田んぼの水路などに自生し、丈が2メートル以上にまでなるイネ科の草。白鷺も同じく夏の季語。「白鷺のけふも増へたり」という実感はわたしの暮らしにはないのですが、わかる気がする。季重ねだが、いい取り合わせだと思う。
(3)「はつはつに咲き」のオノマトペが、いまいちです。

月光や肉なき人の背を洗ふ  きなこ(50代,男)
 よろしく、ご診断下さい。
ドクターえなみの診断と処方箋
 悲しい句。肉親の介護のような事を考えました。自分を客観的に眺め言葉にとどめようとしている感覚は好感がもてます。ただ、もし、このような句がずらりと並んだら、読む方が辛いな〜。


2007年9月23日

(1)わが生きし証に一つ翁の忌  未知(50代,男)
(2)わが詩は冬の銀河に語り継ぐ
(3)わが花の種子を宿しぬ地球かな

 ご教示を。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「翁の忌」は芭蕉記の事。俳句らしい顔をしていますが、おもわせぶりで実はイメージの手がかりがない句と感じます。
(2)こういう文章もできるだろうとおもいますし、文脈の上から意味をさぐる事もできます。ただ、実感がない。言葉が上滑りしていると言う辺りが課題ではないですか。
(3)「わが花の種子」というのが、一読ピンと来ません。技術的には「宿しぬ/地球かな/」と切れが続いている。句意(作者の思い、句の狙い)が整理されていないように思います。

太ももの筋肉まぶしい運動会  sa(60代,女)
 はじめまして!宜しくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 saさん、はじめまして、こちらこそよろしく。
 掲句ですが、見たまんまだと思います。見たまんまで面白いことがあればそれでいいのですが、そういう事はあんまりないものです。(思い出すと、昔は徒競走の前にサロメチールを塗る子がいた、グリコを食べる子がいた。昼の弁当にカツが入っていた。校長の体育の服が似合わなかった。来賓挨拶が一本調子だった。お金持ちは、いい弁当だった。父ちゃんが大声をあげるので恥ずかしかった、など、ないことはないのかもな〜)
 この句でいうと、「太ももの筋肉がまぶしい、色っぽい」などというのは平均的な感じ方で、平均的な感じ方を、普通の単語やいいまわしで句にしても面白い句にはなりません。自分だけの何か見つけ、それが伝わる言い方を工夫するあたりから俳句との格闘になってきます。「太ももの筋肉」で5+4文字も使っていますが、「太もも」だけでもいいし、「もも」だけでも出来るかもしれません。まずは、575でいろいろと作ってみることでしょう。

(1)由里ちゃんのおおきなおなら敬老日  仁(60代,男)
(2)不揃いの朝取りいちごだから食う
(3)震災忌十字に結ぶ古新聞

 ドクターえなみ はじめまして、よろしくお願いします。朝倉、三宅、小倉、各ドクターにはいろいろとご教示をいただきありがとうございました。又、俳句ムードが動き出しましたので5ヶ月ぶりに拙句のご診断よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 仁さん、はじめまして。俳句ムードのことを、この「e船団」の管理者の中原幸子さんは「俳句モード」と言っています。そして、いい句ができたと思ったときのことを「どきんモード」と言っています。言い得てますね〜。
(1)すごくいいです。おおらかで。日常生活とも、介護ホームのような所ともとれます。わたしの読み。由里ちゃんという小学生が私の横で、おおきなおならをした→横にいた私は「そうだ、老人になるとおおらかになっておならも遠慮しなるだろうな〜」と思ったというようなものでした。
(2)「不揃いの朝取りいちご」と韻をふんで俳句タッチ、一転「だから食う」と意味を反転させ、それが口語チックになっていて好感です。普通の感情がまずあって、それを575にしている感じでとてもいい。理屈は左脳ばかりが働いて良くない事が多いが、この句はそれを逆手にとった。この作り方もあるか〜!
(3)発見があり、うまいもんですね〜と感心です。ケチをつけると、前のふたつと比べ言い回しが窮屈な事か。しかし、意味がいっぱいいっぱいなのでやむを得ないでしょう。

(1)俵編む指に肩にと赤とんぼ  しんい(女)
(2)雨雲のうろうろ去らず運動会
 「うろうろ去らず」→「退けよと祈る」・・・とも思いましたが、 何れにし手も、踏み込みの足りない句ばかり。ご丁寧にお教え下さるのに進歩のあとが見えずすみません。
ドクターえなみの診断と処方箋
 にくたれ口ばかり言ってすいません。悪く思わず好意的に解釈していただき、ありがたいとおもっています。
(1)「指に肩にと赤とんぼ」は良く見て作った言葉だと思います。ただ「俵編む」というのが、あまりに特殊で、実感がありませんでした。吟行などなら伝わると思いますが。
(2)悩まれている辺りが問題でしょう。実景をままに575にしようと思うと、そこから逃げ切れない。創作だと思ってふくらまして考えることも時としては有効かも。

刈田からバッタと蛙お引越し  岡野直樹(40代,男)
 稲刈り体験をいろいろ作ってみたいと思います。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 川柳っぽい感じ(世を風刺している感じ)がするのは底5「お引越し」 にあるのかも。バッタか蛙かどっちかで、しみじみ(笑)作ってみたらいいかも。

(1)色鳥やブリキの玩具野ざらしに  蓉子(50代,女)
(2)亡き人の故郷へつづくいわし雲
 逆針の診断ありがとうございました。読み手に伝わってこそ俳句。 目から鱗…でした。独りよがりの句をこれからも作ると思いますが、それは記録にとどめておくだけにしたいと思います。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「雪しまく町逆針の船磁石」ですが、吟行で景を共にしていたら、ハナシは変わっていたと思います。また、分かりにくいから良くない句という事でもないと思います。わたしのように調べて良さを味わう人もいるので。句集などを出されるなら、必ず入れた方がいい句です。
(1)ブリキの金魚のオモチャを思い浮かべました。バケツとスコップなどが置き去りになっている風景も見ます。これは実感のある風景。句がピンとこないのですが、季語がどうでしょうか。
(2)たしかにそう思うことはありそうです。逆に誰でもそう思うことなので句としては平凡かと。

(1)まひまひの雨かとまがふ池も哉  山本葆博(70才以上,男)
(2)秋の日の障子の影の移ろひぬ
(3)秋の気の令夫人かなマルチイズ

 毎朝、唐招提寺あたりで。犬のさんぽ。。。ご多忙の折恐縮です。。。。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「毎朝、唐招提寺あたりで。犬のさんぽ。」とは!唐招提寺は工事の前に見たきりだ。あの美しい屋根が毎日見られるとは、なんと贅沢な。門の前の茶店の鶏うどんのササミがくさかった事も思い出した(笑)
(1)意味不明でも右脳が喜んでいます。底5のイケモカナがなんとも言えない気持ち良さ。たぶん、「かたつむりの雨かと見間違うような池もあることよな〜」という事か。正確な意味がわからないが名句の匂い。(ひどいドクターだ)(^_^;)ゞ
(2)これは平凡と思う。この景を自分の表現で定着させるのは至難か。
(3)日記などに書いておくと、鮮やかに風景を思い出すことができる句かと。「秋の気」は意味としてこれでいいのですが、句に入れるとボーッとした感じです(理由不明ながら)、中7のカナ切れも面白い効果。向こうから令夫人が来てマルチーズのようだとも読めるし、マルチーズをつれた令夫人がきたとも読めるが、どっちに読めてもいいんじゃないかと思った。

(1)群生や木陰を曼珠沙華明り  文の子(60代,男)
(2)高麗人(こまびと)の渡り来し地や彼岸花
(3)曼珠沙華群れて彼の世の賑はふや

 9/15-18のご診断有難うございますした。特に「俳句としての詩的感興はない」とのご指摘を有難く承りました。また、「無記名だったらイメージが沸かなかった」とお気遣い頂き申し訳ありません。句会は無記名ですから要は×と思いました。沢山のご教示をよく整理してみます。昨日は曼珠沙華の群生地に行ってきました。6句作りましたので、2日間宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 俳句を作らないといけない、と思って花や景色を見ていると、あんまりいい句ができないもの(わたしの体験)なので、吟行でもない限りは、のんびりやられた方がいいのでは(笑)
(1)「曼珠沙華明り」が工夫。「木陰を曼珠/沙華明り」と切って巧みではありますが、上5もふくめ窮屈な感じがしました。
(2)これは群馬県の高麗のことでしょうか。ありそうな句です。
(3)「彼の世」とは、あの世、彼岸という事でしょう。まんじゅさげは彼岸花とも呼ぶので、「らしい句」に分類されるのでは。人の事なので何でも言えてしまうが、我が身だったらと思うと句作に悩むでしょう。歳時記を開けてみました。「曼珠沙華どれも腹出し秩父の子/兜太」「曼珠沙華抱くほどとれど母恋し/汀女」「つきぬけて天上の紺曼珠沙華/誓子」。目のつけどころ(句材)がサスガです。「空すめば飛んできて咲くよ曼珠沙華/及川貞」と、詩情の持っていく句もありました。既成概念からはなれることも大事かも(わが身への教訓)

(1)祈りたる眉間と掌に残暑  藤(10代,男)
(2)祈りたる眉間と掌へ残暑
(3)仏像の耐えたるやうな残暑なる

 宜しくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)(2)「に」か「へ」かの前に、気になるのが「祈りたる」。ここでは「祈っている」という意味に使われているとおもうのですが、「たる」は完了(〜た、〜てしまった)。大げさでしっくり来ていないのでは。「祈りの眉間と手のひらに」などか。また、眉間と掌(てのひら)に残暑があるというのも、実感がなく言葉が上滑りしているように感じました。「に」と「へ」は説明すると長くなるのですが、「に」はat、「へ」はtoです。
(3)「仏像が残暑に耐えているようだ」は、当たり前で、発見になっていまっせん。

(1)風流に生けしハスのみからからと  kikumi(60代,女)
(2)オミナエシ儚い恋も思い出に
 ありがとうございますm(__)m。ハスのみが、季語でした。カラカラと音がして、マラカスみたいです。蜂の巣みたいな穴に、チリメン布地に綿を丸くして詰めて、飾る方がいました。カラカラ頭鍛えますm(__)m
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)やっぱりハスの実が季語でしたか。「風流に生けし」というのが常套句です。みんながそう表現してるから、わたしも使ってるという言葉です。それじゃ「風流に生ける」とは、どういう事?と考える事から新しい俳句ができるのではと思います。
(2)オミナエシも秋の季語。同じ秋の七草にフジバカマがあり、どちらも目立たない花(楚々というのか)。この季節、注意深く見ようと思います。花には花言葉があって、掲句は花言葉の説明のよう(女郎花の花言葉は知りませんが)でもあります。句としては飛躍がなく平凡ですが、まずはどんどん作ってみることでしょう。


2007年9月22日

(1)田を覆ふ往合(ゆきあい)の早稲空青し  小口泰與(60代,男)
(2)街の灯のまた一つ消え秋時雨
(3)とうきびの髭を残すや甘露なり

 鮮しについて・・・黒田杏子様の御句に「鮮しき日に傷みゆく白牡丹」と堀井春一郎様の御句に「雪となりひとの過去の鮮らしや」等々の句があります。学研の俳句古語辞典にも「鮮し」の言葉は載っております。ご参考になりましたら幸甚に存じます。今後ともよろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「鮮し」(あたらし)についてご教示いただき、ありがとうございました。学研の俳句古語辞典はわたしも持っており確認しました。
(1)往合(ゆきあい)が美しい言葉。出会う、交差するの意味で、「ゆきあいの空」は、夏から秋にかけての空。「往合(ゆきあい)の早稲」は、同じ頃の稲を言う(と、日経の春秋にあった)。わたしの歳時記にはないが、小口さんの歳時記にありますか(なくても、季節はきちんとしている)。句ですが底5がお定まりで、やや安易ではないかという印象を受けました。
(2)この時期の寂しさを詠んでいるのだと思います。「また一つ消え」に込めた思いが伝わるかどうかですが、ひとえに鑑賞者の感受性ひとつ。伝える方としては、もう一歩踏み込んだ表現にしたいと思います。
(3)「とうきびの髭を残す」のが、どの事を言っているのか理解できませんでした。

(1)轡虫雑草の森見上げてる  ポリ(50代,女)
(2)さようなら向日葵あなた心太
 ご指導ありがとうございます。今回もよろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「不思議の国のアリス」のイラストのような句ですね〜。擬人化という事になるのですが、ただそれだけで、何か足りない気がしました。
(2)面白くて微笑んでしまいました。でも、「さようなら/向日葵/あなた/心太」は、どこで切ってどういう意味がわからない。仮に「さようなら向日葵/あなた心太」とすると、あなたは心太になってしまう。「ぼくはうなぎだ」という文章も場によっては通用するが、ここでは意味不明。向日葵、心太、共に夏の季語である事も頭にいれて、再チャレンジ!

朗吟の姿は見えず小鳥来る  藤井茂子(女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 「朗吟の姿は見えず」とは、誰かが公園などで詩などを朗吟しているのでしょうか。朗吟という行為に対しての馴染みがないので何とも言えませんが、わざとらしいシーンのように思えてしまいました。

(1)まな板の魚の臭ひ九月果つ  さくら(女)
(2)まんじゅしゃげ風が怨みを流しけり
 いつも有難うございます。いささか跳んでみましたが--よろしくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)思いがけない句材で良いと思います。「まな板の魚の臭ひ」と「九月果つ」の取り合わせ。秋刀魚が秋だからかな〜と、納得できなくもないのですが、「夏終わる」などでも、夏の海で魚を捕った思い出を連想させるからいいかな〜などとも思いました。
(2)曼珠沙華と書けばサンスクリット語で赤い花の意味。根に毒があるから彼岸と結びつけたり、死人花という名がついた、「持って帰ると火事になる」と言われたり、と、調べ出すと興味はつきないですね〜。この句もそんなわけで「怨み」が出てくるわけですが、「怨みを流す」 というのが良くわからないです。まだ跳び足りないのか(笑)

(1)かげろうが黄泉のままに写ってて  裸時(30代,男)
(2)月プラで少女が完成していくよ
 プラはオノマトペです→
(3)搭乗し回想ばったん鈴の虫
 この句じゃないですけどアニメ用語もオノマトペとして使うのはありでしょうか?
ドクターえなみの診断と処方箋
 オノマトペは擬音語とか擬態語などと訳されています。要は、音や様子をライブ感で伝えるためのものなので、それを果たすものなら、何でもあり。新しく作ってもいい。もちろん、アニメに出てくる言葉もありです。裸時さん、要は受け手が、なるほどな〜と思えばいいのです。コントロール忘れないでくださいね(^_^;)ゞ。
(1)「写る」は写真などに映る。ゆらゆら立ち上るかげろうが黄泉のままに映っている。心霊写真のようなものでしょう。中6、気持ち悪くないですか。「まのま(間の間)」などはどう?
(2)オノマトペの意味を誤解してませんか。稔典先生監修のオノマトペ100句がネット検索で見られますから、見てください。
(3)スポーツクラブでロッククライミングをやるときに、壁のどこかに取っかかりがあって、そこに指先をひっかけて登ってゆく。この句には、どこにもひっかかりがない。う〜ん、う〜ん。何だ〜。

(1)稲刈りの田の上雲の影渡る  岡野直樹(40代,男)
(2)稲ひと穂バッタ脅かし拾い歩く
(3)籾袋重きに耐えず赤とんぼ見る

 稲刈りの手伝いを少ししました。まだまだ何か作れる環境だと思いました。
ドクターえなみの診断と処方箋
 稲刈りは、霞ヶ浦の「稲刈りツアー」でやったことがあります。手で刈るのはホント大変なことでした。横にはコンバインが待機していて、残りはやってくれました(笑)
(1)感じが良く伝わってきます。「稲刈りや」と一度切ってもいいかも知れません。
(2)「バッタ脅かし/拾い歩く」動詞がふたつ連続しているので、ごちゃついています。下5も5字で収まるのでは。もう一工夫でしょう。
(3)籾袋、赤とんぼの取り合わせですが、いろいろうまく行ってない。まずは「重きに耐えず」、「重い」でも意味は伝わるのでは、「赤とんぼ見る」は「見る」がなくてもいいのでは。普通なら、「もみ袋ずしりと重い/赤とんぼ」(これでは駄句)のようなカタチになるのでしょうか。

向こうからおやキツネ目のサングラス  玉白石(50代,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「キツネ目のサングラス」とは、キツネ目の男がサングラスをしているのではなく、サングラスがキツネ目のカタチなのでしょう。「向こうからキツネ目のサングラス」が来ただけでは句にならず、そこで「おや」なのですが、印象はさほど変わらないのでは。

(1)折り紙の小さき箱の秋の色  センリ(女)
(2)熱帯魚ついと珊瑚に隠れけり
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「折り紙の小さき箱」とは、折り紙が入れてある箱か、折り上がったものが入れてある箱か。聞き慣れない言葉に景が定まらずでした。
(2)「ついと」で句になっていると思います。

(1)とうきびを口一杯に咥へけり  小口泰與(60代,男)
(2)木槿咲く靄に沈みし芙蓉峰
(3)コスモスやさわだつ波の山中湖

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)とうきびにかぶりつくと、自然に口いっぱいになるものなので、「どう言うか」で更なる工夫が必要でしょう。
(2)「芙蓉峰」は富士山の事だそうです。と考えると、このような風景は良く見られると思います。だとしても、木槿に芙蓉峰をぶつけるのはフォーカスが甘くなってしまう。それよりも、こういう風景を句にするのはどうしたらいいものか。もしも吟行なら、句材を別に探してしまいそうです。
(3)「さわだつ」は、「騒立つ」で、さわぎはじめる。この一語で句になっていると思いました。平凡な風景を、平凡な言葉で伝えては句にならず。平凡な風景でも、言い回しにちょっとした工夫があれば、それだけで句になる。そこに自分なりの感じ方や、考え方、発見その他(同じフレームにある何かとの組み合わせ)があれば、さらに面白くなるのか。みなさんの句を拝見しながら、そんな事を感じています。

あっと勝つ五目並べや小鳥来る  藤井茂子(女)
 中七に「や」を使わない方が良いと聞いてますが。宜しくご指導お願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 え〜、中7に「や」を使わない方が良いなどとは聞いたことがない。 「12文字+季語」のような事になれば、自然と「や」で切れるであろう、と思って5分ほど調べてみました。
 「あの家の中は老女や/春げしき」三橋敏雄
 「家毎に地球の人や/天の川」  三橋敏雄
 見つけられたのは、わずかこの2句でした。「研ぎ上げし剃刀にほふ/花曇」のように言い切りのカタチで終わるもの(日野草城)が多いようでした。また、「限りある命よわれよ/降る雪よ(真砂女)」「がんばるわなんて言うなよ/草の花(坪内稔典)」のように「よ」のものはいくつもありました。なぜだが考えてみたいと思います。教えていただき、ありがとうございました。
 さて「あっと勝つ五目並べや/小鳥来る」。上5は、思いがけずたちまち勝ちになっていた、というような事でしょう。少し分かりにくいのでは。季語のとりあわせはいいですね〜。中7の「や切れ」ですが、自然だと思いますよね〜。

(1)だんご虫寿命の程の霧がある  裸時(30代,男)
(2)熱帯に薔薇薔薇人が落ちてきた
(3)底の裏いわしの自由裏天気

 裏にはまったかもしれません(^^;
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)う〜ん、う〜ん、う〜ん。
(2)薔薇薔薇人とは何なんだ〜、考えたくもないし〜(^_^;)ゞ
(3)「底の裏/いわしの自由/裏天気」三段切れ。語彙のコントロール。


2007年9月21日

里の木の葉裏光らせ秋の雨  豊田ささお(70才以上,男)
 久しぶりの実に久しぶりの雨でした。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「葉裏光らせ秋の雨」は気持ちのいい言い回しです。句の印象が弱いのは、読み始め「里の木」が漠としているからか。ここに具体的な木をいれる(それが季語なら、下5を変える)手もありますが、人の心をつかむ(キャッチーな)何かを入れる手もあるでしょう。

(1)新涼の長いチョークを揃えけり  穂波(女)
(2)ひと粒の切花の息秋すずし
 遅くなりましたが、先日は、「捕虫網」と「てんとう虫」の句へのコメント、ありがとうございました。「中七は守れ」とのこと、覚えて実践したいと思います。句の種は見つかるのに、作ってみてボツにすることばかりが続いていましたが、久々の投句、よろしくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「中七は守れ」というのは絶対のルールではなく、俳句は声に出して伝えるものなので調べ(ゴロ)はとても大切という風に考えてください。
(1)秋なのでクラスが再開し長いチョークをそろえた、という事なのでしょうか。学校なのか、駅などの連絡板のようなものか、わが家なのか、景が見えませんでした。「揃えけり」の文字を、その分にまわしてもいいかも知れません。「新涼や長いチョークの伝言板」(あくまでも例です)のように。
(2)切り花が長持ちするようになったということでしょうか。「切花の息」というのが工夫のように思いますが、「ひと粒の」というのがよく分かりませんでした。たぶんですが、ちょっと考えすぎかも。いろんな言い方で、どんどん作ってみるのが良いのではと思いました。

(1)秋日濃し鶏の腿焼き山盛りに  まりあ(40代,女)
(2)夜学子のえんぴつの丈揃ひをり
 えなみドクターありがとうございました。1番店頭の風景なのですが、この表記「鶏の腿焼き」で分かりますでしょうか?よろしうお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)わたしの住まいの近所にも鳥新という専門店があり、良く見る風景です。「秋日濃し」がヒントと考えると、野外でBBQをやってるとか、縁日を想像する人もいるでしょうね。それよりもまりあさんが、この風景のどこに興味を持ち、それをどう表現するかが大事。このままでは報告句でしょう。
(2)最近は、鉛筆を使う人が少なくなりました。この間、補助軸というのを買いにいったら、まだ売っていて2つで100円ちょっとで、驚きました。昔は、鉛筆を削りペン立てに入れてから勉強した(という印象がある)ので、懐かしい風景でした。夜学子という季語の言葉も含め、昔の事のようで、それが残念です。せめて夜学生とでもしたらどうでしょう。アジアから留学の子などは、今もこのような風景があるのかと思います。

大掃除巫女も加わり秋暑し  岬(女)
 こんにちは。2回目です。よろしくお願いします。松尾大社で巫女さんまでが大掃除しているのでびっくりしました。「巫女までも大掃除して秋暑し」が原句ですが推敲してこの句にしました。
ドクターえなみの診断と処方箋
 松尾大社というとお酒の神様で、こもかぶりがたくさん積んであった。あれも掃除するのだろうか。庭もたくさんあって大変でしょうね。さて、大掃除というと普通は年末の行事。それが、この季節に、巫女さんまで加わって右往左往の様子が伝わってきます。ユーモラスでいいと思います。

捨て畑のまた一つ増え曼珠沙華  悠(70才以上,女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 まったく、その通りなのではないかと思います。その捨て畑にどこからか飛んできた曼珠沙華が花を咲かせている。季語とのマッチングも含め、良い句だと思います。が、残念ながら、捨て畑の句は何句が見たことがあり類想句がありそうです。

明日のこと明日のこととし蝉しぐれ  えいこ(50代,女)
 すでに詠み尽くされたような気がしますが、よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「明日のこと明日のこととし」とは、明日できることは明日やればいいや〜という事でしょう。こういう事を言う人はどういう人かと考えて見ると、ものごとにくよくよしない、楽天的な人なのではないか。となると「明日のこと明日のこととし」というような静的、内向的な言葉ではないのでは、とおもいました。言い方を考えてみたらいかがでしょう。

(1)本当に地球は青いか月今宵  遊雲(70才以上,男)
(2)ヘーゲルやエンゲルスやと星月夜
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)わたしも見たわけではないので、全くそう思います。遊雲さんは現代かなづかいのようです。歴史的カナなら「ほんたうに地球は青いか」のようにすると面白いかと思ったのですが。現代カナでも、ひらかなの方がいいかも。
(2)昭和初期のちょこざいな書生風で、楽しい句です。季語も良いと感じました。

数珠玉や手にお手玉の母おもふ  さくら(女)
 いつもご教示有難うございます。散歩の途中数珠玉を見つけ、遠い昔、数珠玉でお手玉を作ってもらったことを懐かしく思い出しました。ドクタ−の処方箋、何度も読み返していますが、なかなかうまくいきません。宜しくご指導ください。
ドクターえなみの診断と処方箋
 すっきり仕上がっています。表記もやわらかさが感じられ気持ちがいいです。特に「数珠玉を手に」ではなく、「数珠玉や」と切ったところで一度ストップモーションがかかり、「手にお手玉の母おもふ」とハッと我に帰った感じがとても良いと思いました。「お手玉の母」も俳句らしい伝え方。「お手玉を作ってくれた母」「お手玉が好きだった母」をこう名詞化しています。勉強になりました。
 この句は、これでできていますが、「俳句は思うからつくるので、俳句に<思う>はいらない」といちゃもんを付ける人(わたしのような人)がいますから、知っておいた方がいいでしょう(^_^;)ゞ

(1)山襞の深き島より秋の航  藤井茂子(女)
(2)われ先のグルメ展とや秋の昼
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)この夏は能登を一周したので、「山襞の深き島」からグラスボードが遊覧するのを何度も見ました。しかし、「山襞の深き島」という言葉は見つけられなかったので感心しています。「遊覧船」と言わないでも「秋の航」と言えばいいというのも勉強になりました。自分ができなかったことを人が実現すると過大評価になる(対比誤差という)ので、少し離れて考えると、よくできた写生句という事でしょう。
(2)デパートやホテルでやっているイベントなのでしょう。「われ先のグルメ展」と名詞化したのが工夫。長々と説明しなけらばならないシーンをすっきりと伝えています。藤井さんには感心させられることしきりです。


2007年9月20日

秋暑し夜明けを待たずキイを打つ  豊田ささお(男)
 「天高く伸びするものよ痩せ猫よ」いただきたいですね・・・ありがとうございました。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「天高く伸びするものよ痩せ猫よ」もらってください。さて、掲句は報告でしかないでしょうね〜。残暑であっても、秋なので夜明け前は少しは涼しいと思ってしまい、季語ともあってないと感じました。

レシートで飛行機を折り鰯雲  さかな子(30代,女)
 初めまして。どうぞよろしくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 さかな子さん、こちらこそよろしく。折り紙の句はたくさんありますが、レシートで折るというのは初めて見ました。ただ、あんな小さいものなので飛ぶのかどうか気になりますが、句材が新鮮でした(^_^;)ゞ。

秩父路やどんぶりに盛る菊膾  多弁(60代,男)
 よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 一読、秩父の秋の豊かさを連想しました。わたし、菊膾の何たるやは知ってるのですが、あまりなじみのない食べ物です。だいたいが器にちょこっとだけ出てきます、食べるのもちょっとだけ。どんぶりに盛るというのが、どんなニュアンスなのか実感がありませんでした。

(1)バーコード翳せばおつり夕かなかな  満山(60代,男)
(2)水眼鏡フラッシュバックする手足
(3)足ヒレを脱ぎ大阪へ帰る女

 Dr.えなみ初めまして。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 はじめまして、こちらこそよろしく。
(1)面白そうな句材。しかし、バーコードをかざしてお金が落ちることはあってもお釣りはでないのでは。意味がわかりませんでした。
(2)隔靴掻痒な感じ。たぶん「フラッシュバック」の意味がまだ確立されていないからでは。わたしの感覚では、おぼれそうになった記憶が甦ったというようなものですが。
(3)「足ヒレを脱ぎ〜大坂へ帰る〜大坂の女が」という組み合わせは面白いと思いますが、焦点がない感じ。満山さんが何を感じているのか読み取れず、報告の域をでていないのでは。

(1)わたがしに乗った神様踊り髪  裸時(30代,男)
(2)天の川プ列車に乗る予報嫁
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)盆踊りがあって、縁日がでてる。その縁日のわたがしに神さまが乗ってる。お祭りには神さまがいて、神さまのスケジュールでみんな楽しんでるという事でしょう。「わたがしに乗った神様」が面白いのでここにウエイトを置くと、「踊り髪」がうるさく感じる。それとも神様が踊り髪なのだろうか。普通なら「踊りかな」が自然なところだが、裸時さんは「かな」が嫌いでしょう、きっと。「踊りの夜」「踊る輪に」「踊ります」「踊り出す」とかですか。
(2)「プ列車」を検索してみたが、不明。何か面白そうなのだが、結局意味不明。「予報嫁」はきっと誰にも分からない。語彙のコントロールが必要だと思う。

空澄て声澄み余命はつらつと。  ねぎよしこ(70才以上,女)
 星月夜待ちぼうけかも星と遊ぶ。2句よろしくおねがいします。フラダンスいいですね、ハワイでとりつかれたのででしょうか。素敵な先生に巡り会いました。
ドクターえなみの診断と処方箋
 はじめまして、こちらこそよろしくお願いします。
(1)俳句に「。」はつけないので、新鮮な感じがしました。今の心境を読まれた句とお見受けしました。「はつらつ」が常套句ですので、そこから一歩ふみこんで、どうはつらつかを考えてみると、新しい自分が見つかるかもしれないと思います。「空澄て」は、「空澄みて」ですね、細かいことながら。
(2)「星月夜/待ちぼうけかも/星と遊ぶ」。「星月夜」は、月がないが、満天の星が月夜のように明るく照らしていること。この句では「待ちぼうけかも」は何を待ちぼうけなのかが、不明でした。仮に星月夜がまちぼうけなら、そのあとの「星と遊ぶ」は何なのか、という風に。

(1)ざぶざぶとザリガニ掴むお母さん  うさぎ(女)
(2)風の中サンドキヤッスル動き出し
(3)冷やっこ小鉢のふちの薄さかな

 宜しくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)下5ですっかり報告になってしまいました。俳句は17文字しかないので、5W1Hは大幅に省略し、印象に残ったことに絞り込む必要があります。ザリガニは(たぶん)季語ではないでしょう。(わたしの感覚では夏ですが)。
(2)「サンドキヤッスル」は「砂の城」ですから、たぶん「砂山」が日本語でしょう。うさぎさんはアメリカ在ですから、少しあいまいになってしまったのかも。それが動いたというのは風景が見えます。夏だと思いますので、夏の季語を入れてください。
(3)小鉢にのせてある冷や奴をじっと見ている視線を感じますが、句意(何を伝えようとしているのか、句の狙い)がはっきりしないので、物足りない感じです。

(1)白秋やガイド教師の大手振る  藤井茂子(女)
(2)秋水にご法度の愚痴見透かされ
 課外授業の生徒を引率の先生だけが元気良く大手を振って行かれる姿にほほえまし く思えましたが・・・。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「ガイド教師」が聞き慣れない言葉。学校の教師が、課外授業などでガイドさんをやっているのか。造語も絶対ダメという事ではないのですが、ある程度は理解できる言葉を選んだ方がいいでしょう。(後で、コメントを見たら合ってましたが〜)(笑)
(2)「ご法度の愚痴」の言い回しが面白い、また「秋水」のヒンヤリした感じとも響き会っている。視点がいい。


2007年9月19日

小鳥来る井戸端に張る盥水  豊田ささお(男)
 えなみドクターいつも的確なご診断をありがとうございます。実は10月句会は「小鳥来る」が兼題です。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 そうですか、句会に出すとなると責任を感じてしまいますな〜。さて、掲句は「盥水」と「小鳥来る」が近すぎると思います。つまり、左脳が「小鳥が来るから、井戸端のタライに水をはっておくんだな〜」と理屈で理解してしまい、右能で快感を感じる前に思考停止となってしまうからです。右脳、左脳をもう少し考えてみると、白秋の詩などは意味を考えなくても読んでいるだけでなんだか気持ちがいいことがある、これは右能偏重タイプ。普通は左能で意味を把握しながら右能で詩が響くという構造ではないでしょうか。いずれにしろ、左脳で止まってしまっては詩情はわかない。ここら辺は、もっと考えてみたいと思っています。

脳を擦るチャグチャグ馬コ居待月  裸時(30代,男)
ドクターえなみの診断と処方箋
 裸時さんにしては、わかりやすい語彙で作られていると思いつつ、やはり意味不明。人間いずれは死ぬわけですから、残った句が誰が作ったか分からない句であるよりも、「あ〜、あの人らしいな〜」というオリジナリティのある句であることが好ましいと思います。が、それも句の意味がわかる、句からあるイメージがふくらむ範囲のハナシだと思います。ここでは「脳を擦るチャグチャグ馬コ」の「擦る」が文脈をこわしているのではと思います。裸時さんの句は、興味深いので、なぜ「擦る」を選んだのか教えてもらえるといいのですが。

(1)炎昼や老松の幹ひんやりと  うさぎ(女)
(2)蝉時雨日記に書き込む晴れマーク
 まだ夏を引きずっています。 そろそろと秋の季語を勉強中です。 宜しくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)老いた松が夏の最中にも動ぜずにある、という風格を描いていると思います。「ひんやりと」が少しナマかな〜と思いました。
(2)「蝉時雨」と「晴れマーク」が近いです。結果、今日も良い天気だった→だから蝉時雨だった(あるいはその逆)という範囲でしかイメージが膨らみません。季節の変わり目を読むというのが、俳句の楽しみでもあり、むつかしいところでもあると思います。アメリカにいて季節の移り目はどんな事なのですか。

読みさして虫の音を聴くゆうべかな  山本葆博(70才以上,男)
 えなみ先生、小生に漢学素養などありません。お尋ねの両忘揀択ならず日常底に生きるのみ等と一知半解の禅語を弄び厭味なること恥じ入ります。書籍によれば両忘とは内外両忘すなわち相対二元的対立こだわりを忘れると言う事なのでしょうか、また唯嫌揀択とは碧眼録にある言葉で,取捨分別を離るとありますから、即ち何事もえり好み差別することなく、公平、平等覚と見ることでしょうか。
 日常底とは自分本来の在りかたで又、過ぎたること、いまだ来たらざること過去、未来に心を労する事無き、日常底、即今、今日、現在ただいまを日々是れ好日、カラリカラリ、のんびり生を楽しむ、これが全とう出来れば最高と念じ居るばかりです。恐惶謹言。半可通亭夢睡。
ドクターえなみの診断と処方箋
 やはり蒟蒻問答ですが、なすがままに楽しく生きようと言うことだ理解しました。こう平凡に言ってしまっては実も蓋もないもんです。前も申し上げたのですが藪医者ですが、ドクターえなみ、ドクターしんさあたりでご勘弁ください(笑)。掲句、山本さんの生き方そのものであると思いました。「読みさして」が気持ちのいい入り方です。

(1)どんぐりのとんころりんとおちにけり  小口泰與(60代,男)
(2)色鳥の日矢に当たりて華やげる
(3)湯けぶりに僅(はつか)に白し萩の花

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)オノマトペがあまり効いていないと感じます。
(2)そのままでナマだと感じます。
(3)5日回答の「湯けぶりに燻(ふす)ぼりをりし萩の花」の推敲でしょう。「はつかに」は、わずかに、いささかに、などの意味。「はつかに」「ふすぼる」などの大和言葉はそれだけで情緒がありますが、要は「わずかに白い」という事でしかないと思いました。露天風呂と言えばひと言なのですが、石の湯船、岩の湯船、木の湯船が大小さまざまにある。風景も山、海、崖の上、裏庭などとあり、季節も変わる。体験も含め、温泉俳句は、案外むつかしいのではないでしょうか(だから、挑戦という考えもある)。

(1)秋の気を胸いっぱいにハーモニカ  藤井茂子(女)
(2)むかご飯出雲訛りのわかりだす
ドクターえなみの診断と処方箋
 ハーモニカを吹くと、秋の空気を吸い込んでいるのだな〜と思う。よく分かるが、それだけに当たり前だと思います。表現の工夫でなんとか句になるのでは。
(2)こっちは、「むかご飯」と「出雲訛りのわかりだす」の関係が分かりません。

靴の紐結び直して草の花  慈英(50代,男)
 ご指導宜しくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「草の花」は、野山などに咲く名もない秋の花の総称、「千種」「秋の草」とも。靴の紐を結び直したら、目の前に草の花があったのでしょうか。草の花に限らず、座り込んだら目の前に花や草があったという類想はたくさんあります。とりあえず言い回しを工夫してみてはいかがでしょう。この句では、「〜て止め」が底5との関係を曖昧にしていると感じました。

(1)蟷螂にまた睨まれてヨイトマケ  未知(50代,男)
(2)冷酒や酔ひのまはるをじっと待つ
(3)この国を捨てばやとかや羽抜鳥

 ご教示を。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)ヨイトマケは、今はなく美輪明宏の世界で生きてますね〜。ヨイトマケもそうですが、この句も実存感を持たない句ですね。それではファンタジーとか詩情あふれるかというとそうなってないと思います。イメージの核がなく言葉だけ並んでいる感じがします。
(2)これは報告です。報告句は「だからどうなんだ〜」「何が言いたいんだ〜」と言う気がするものです。
(3)2回前の「この国を捨てばやと説く羽抜鳥」の方が伝わりやすいのでは。

あひゃっとさいなまれて菊日和  裸時(30代,男)
ドクターえなみの診断と処方箋
 俳句マシーンで造ったような句。俳句マシーンというのは、上5、中7、底5がそれぞれ何百も入っていて、スイッチを押すとスロットマシンのように選んで句ができる。パソコン検索でも見つけることができる。何百回もやってると面白い組み合わせの句ができることがある。ただし、これをずーっとやってると、何が面白くて何がつまらないか分からなくなってくる(笑)。この句も感覚や語彙のコントロールを失っているので、たまたまできただけの句のように思えるのですが。

お疲れと秋がささやき季移る  栗太郎(60代,男)
 森 澄雄さんの海外詠の話は私も読みました。納得です。
ドクターえなみの診断と処方箋
 この句、どの季節を入れても成り立つのかな〜。
 「お疲れと春がささやき季移る」
 「お疲れと夏がささやき季移る」
 「お疲れと秋がささやき季移る」
 「お疲れと冬がささやき季移る」
 お疲れとささやく季節は、夏が一番なんでしょう。春と秋はお疲れと言わないような気が。冬は、お疲れというよりも、もうすぐ春だ〜と思う気持ちの方が強いのでは。上5と季節に発見があれば、面白くなる可能性があるかもしれません。


2007年9月18日

(1)ははそばの母亡き今の桐一葉  小口泰與(60代,男)
(2)秋薔薇にひたと出でたるとかげかな
(3)浅間はや定かになりて秋桜

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)興味深い句でした。「ははそば」は母への枕詞のようなので調べてみたが、尾瀬桧枝岐温泉で「ははそばふるまいコース」などと使われていた。つまり、枕詞ではなく母の手打ち蕎麦というような意味でしょう(違ったら教えてください)。「ははそば」がなければ「母亡き今の桐一葉」なんで、面白くもなんともない。それじゃ「たらちねの母亡き今の桐一葉」じゃどうかというと面白くない。面白くしているのがこの新・枕事のような造語。つまり「いつも蕎麦を打ってくれた母」のようなニュアンス。清水義範さんが得意とするパスティーシュ(模倣やパロディ)のようなものでしょう。知的遊びで感心。
(2)「いでたると影かな」「いでたる蜥蜴かな」とふたつ読める。が、最初のは意味がないから、後者だけでしょうね。そうなると、秋薔薇と蜥蜴(夏)の季重ねの句ですね。それはいいとしても「秋薔薇」と「秋」がついているのは何故かとか、ディテールが気になる。蜥蜴が「ひたと出る」のは面白いと思った。
(3)近景と遠景の対比の句。前回の「木槿咲く日々鮮(あたら)しき赤城山」と同じ構造。「浅間が定かになる」は、上手な言い方ですが、あまり心に響きませんでした。文語的できどった感じがしたからかも知れません。

(1)ドリンクバー団栗拾って一休み  ポリ(50代,女)
(2)シャワーヘッド点々の水星月夜
 いつも教えていただきありがとうございます。今回もどうぞよろしくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「ドリンクバー」「団栗拾う」と、面白い言葉を選んでいますが、「一休み」で、一気に力が抜けて「何が言いたいんだ〜」と言う報告句になってしまったと感じます。
(2)シャワーヘッドをみあげたら水滴があって、星月夜にイメージが膨らんだという事でしょう。面白い感じ方だと思いますが、ほんとにそう思うだろうかとの疑問もあり、右脳への心地よい刺激までは至りませんでした。別の言い方をしたら良くなるか〜、でも、シャワーヘッドと星月夜を入れると、残された言葉はわずか、難しいでしょうね〜。

(1)秋立ちぬ少女の脛にビルの影  文の子(60代,男)
 9/13のご診断有難うございました。「天高し」のイメージはドクターの言われる「痛快、快笑、スカッとするなど」を私自身も持っている中で、捻って見たのですが、もう少し考えます。掲句「しばらくは、胸にあたためておいたらいかがでしょうか。」と承りながら申し訳ありません。前回お送りした直後に浮かびましたので、宜しくお願い致します。
(2)人と火の一つになりし大文字
 星野ドクターに評価頂いた句を更に推敲しました。
(3)河骨(かうほね)や驟雨きて池昏きなか
 宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「向かふよりビルの影伸ぶ今朝の秋」→「膝下にビルの影伸ぶ今朝の秋」→「秋立ちぬ/少女の脛にビルの影」と来ました。「脛」は、すね。最初の句意(作句の思い、狙い)は、「季節が変わって影が伸びたな〜」というものだったと思うので、句意が変わってきてるかも知れませんね。それはそれで結構なんですが、「少女の脛にビルの影」がピンときませんでした。少女というと、日本的な(例えば竹下夢二の)少女をイメージします。その少女の「すね」に「ビルの影」なので、映像が浮かびにくいのです。
(2)星野ドクターに出された句は「人の文字火の文字見せて大文字」。声にだすと実に気持ちいい。詩情あふれるいい句だと思いました。また大の文字はは、実は人が作った「人の文字」でも、火が作った「火の文字」でもあると看破した。その気持ちよさもあります。揚句は説明的だと思う。韻をふんだのはわかるが、「ヒトトヒノヒトツニナリシ」が舌をかんでしまいそうです(笑)
(3)河骨(かうほね)は池や流れのゆるやかな川に生える、細長い卵形の葉をもつ水草。写生句のようですが、一読、調べが良くないです。河骨も、驟雨も夏の季語。盛り込みすぎているように思います。

(1)雨上がり蜩の声透き通る  三郎(70才以上,男)
(2)入道雲支え山々静まれり
 よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 はじめまして。三郎さんは初めてなので、どのレベルでお話しすればいいのか、とまどっていますが。
(1)「透き通る」句はいくつか見たことがあります。たとえば指や手など、透けないものも感覚的に透き通ります。それと比べると、声が透き通ると表現するのはやや平凡と感じました。句はしっかりできていると思いますが。
(2)夏の風景をしっかり詠まれていると思います。類想句がありそうですが。

(1)長き夜や受験英語に付き合ひし  文の子(60代,男)
(2)葉先なる露玉草を閉じ込めし
(3)十月や張り替へられし煉瓦道

 孫のことではご親切にご教示賜り有難うございました。宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)文の子さんの日記俳句。よろしいのでは。
(2)「露玉草(つゆたまぐさ)」は、蓮の事。葉の中に露の玉ができることから来ているようです(勉強になります)。「葉先なる」は蓮の葉の先にあるという意味だと思いますが、情景がうかびません。うまく言い当ててないのでは。
(3)「張り替へられし煉瓦道」は面白い所に目が言ったと感心。季節としては、行動的になり気持ちが前に向かう時節、春〜夏あたりが一番ぴったりするのではと思いますが。(ここの診断の季語は、当期にこだわりません)

西鶴忌エゴン・シーレの裸婦をみる  涼(70才以上,男)
 よろしくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 涼さん、初めまして。「西鶴忌/エゴン・シーレの裸婦をみる」
●エゴン・シーレの裸婦を見た、その日が西鶴忌だった。
●西鶴忌に西鶴のことを考えていたらエゴン・シーレの裸婦が脳裏に浮かび上がってきた。
 このふたつの読みができる。西鶴と、エゴン・シーレを関連づけて考えたのは発見ですが、とっさに共通点を見つけることができず、不協和音を起こしているように思えます。

(1)木槿咲く日々鮮(あたら)しき赤城山  小口泰與(60代,男)
(2)うしろより鳩の羽音や鉦叩
(3)峠より雨意を率ゐる懸巣かな

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)近景と遠景の対比、お手本のような気持ちのいい句ですね〜。 「鮮」はぴったりの漢字だと思うのですが、「あたらしい」と読むのは漢和にもでておらず、きついと思うのですが、どう考えるのかご教示いただけたら幸いです。
(2)鉦叩を実際に見た人はおそらく希で、俳句の中のイメージで生きている虫。あえて「鳩の羽音」と取り合わせた冒険句でしょう。「うしろから」の上5はいいが、おそらく午後〜夕暮れ時。羽音が聞こえたら鉦叩はどうするのかが想像しにくい。想像はそこで止まってしまいました。
(3)「懸巣」は秋の季語。頭が良くてトンビなどの鳴き真似もするらしい。鳴き声のあるホームページを見つけたので、立ち寄るのも楽しいでしょう。さて揚句、「雨意を率ゐる」が漢文読み下しのようで難しい。気持ちのいい句材なので、ここは芭蕉になったつもりですっきりと詠みたいところです。

(1)鰯雲棚田を棲家と決める今朝  藤井茂子(女)
(2)出る杭の一寸伸びる秋の風
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)俳句は創作ですが、時として自分の記録でもあります。この句は創作だと思いますが、もしも作者の近況だと考えると、これに口を挟むのは技術的な事だけということになります。ここでは中8だけが問題です。決まりだからという事ではなく、リズムが悪くなるからと考えてください。並び変えですまなければ、要素をけずる、言葉をかえるなどですが、できるでしょうか。
(2)「出る杭は打たれる」を下敷きにした句。「一寸伸びる」イッスンノビルが効いています。「あけぼのや白魚白きこと一寸/芭蕉」も頭の片隅にあって、白→白秋→秋の風、となったのでしょうか。「出る杭」が一寸伸びて秋の風に叩かれた、というのが句意で、風流で結構な句だと思います。

(1)露草にうぽつと変に恋してる  裸時(30代,男)
 深夜アニメを観ていたらテンションあがってしまいました→
(2)青い布裸にかぶせるヤンデレら
 ヤンデレはアニメ用語です(^^
(3)汗しぼりゴールドハイツ混沌に
ドクターえなみの診断と処方箋
 あまりにも楽しそうに造っている様子なので、水を差さない方がいいのかな〜とも思うのですが(^_^;)ゞ。相手(ここでは俳句)とコミュニケーションするには、背景にあるまとまった知識(スキーマ)を共有する事が前提です。たとえば「鏡餅」だったら、「お正月に飾るもので、日がたつにつれヒビが入り、木槌で割っておしるこにして食べる」というような事です。そのようなスキーマがあって、初めて鏡餅の会話や俳句が成立します。この句で言えば、一緒にアニメを見ている人は共通のスキーマを持っているのでつたわるが、残念ながら、そうでないわたしには伝わらないという事です。「俳句=作る本能+伝えたい欲求」(9/10北野元玄さんへのコメント)をご一読ください。


2007年9月17日

(1)妻と子とビールの泡と以下余白  玉白石(50代,男)
(2)法師蝉空青ければかなしみも
(3)ささやきの小径に夏を五人組

 久しぶりに投句します。よろしくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 玉白石さん、初めまして。
(1)日々の幸せをサラッと読んでさわやか。「以下余白」がいいですね〜。
(2)「空青ければかなしみも」は、言い過ぎ。
(3)ささやきの小径は、春日大社や軽井沢、その他にもある。「ささやきの小径に夏を/五人組」。五人組というのが何だか分からないので、句も理解できずです。

(1)ゆさゆさと二百二十日の土俵入り  遊雲(70才以上)
(2)後にも前にも人なし花野道
(3)なみなみと硯の海の野分風

 えなみドクターの写真、外国?。いいですね。何か一寸、南村さんと同じ雰囲気。
ドクターえなみの診断と処方箋
 写真は、カンボジア・アンコールワット。そのような事を言われては、南村さんに申しわけない(^_^;)ゞ
(1)二百二十日は台風シーズンまっさかり。ことしは、9月11日。相撲は収穫を祈り神にささげる行事である。これらを踏まえた句となっている。「ゆさゆさと」のオノマトペが面白い効果をあげている。「ゆさゆさの名句は『ゆさゆさと 大枝ゆるる 桜かな/村上鬼城』「まるまるとゆさゆさとゐて毛虫かな/ふけとしこ」などがある。たまたま「船団」74号が、相撲特集で、宣伝になった〜(^_^;)ゞ
(2)これは平凡と思いました。
(3)野分は台風の風なので「なみなみと硯の海の野分かな」の方がいいのでは、みたて、隠喩の句。みたてが近いかも知れません。

柿の木にちいさい青い子規たわわ  汽白(40代,男)
 星野ドクター、ありがとうございました。えなみドクター、よろしくお願いいたします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 汽白さん、「船団東京句会」お疲れさまでした。第二回は、11月1日(木)ですね。20人で締め切り。くわしくは「e船団」お知らせにありますね〜。しかし、こないだも会ったばかりで、なんかやりにくいな〜(^_^;)ゞ
 さて、読み下していくと底5で、ど〜ん裏切られるが、フレームがしっかりしているのでイメージが伝わるという句でしょうね。柿の実を子規と言ってしまったのが大胆。汽白さんの面目躍如。

(1)十月の猫日向にも日陰にも  文の子(60代,男)
(2)撮り溜めしビデオも尽きぬ長き夜
(3)煌ける朝露妻の指眺め

 宜しくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)対比が面白いです。十月と、「日陰」「日向」の取り合わせも、秋から冬に向かう季節をイメージさせいいと思います。
(2)うまいもんですね〜、日記風に、こうサラリと詠めたらいいですね〜。わたしは「カンタンに詠む」というのが憧れなんです、ついいじりすぎてごちゃごちゃになってしまうので〜(^_^;)ゞ。長き夜が説明的かも、でもしかたないか〜。
(3)「煌ける」の文字の選び方。「妻の指眺め」ること。変わった句ですね。文の子さんの句と分かっているので、文の子さんの世界で読んでいますが、無記名だったらイメージが沸かなかったかも知れません。

ゴンドラに母を誘ひし秋の嶺  けいこ(50代,女)
 前回、散文であるとのご指摘を受け考えたつもりの今回の句ですが…難しいです。ご教示お願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「ゴンドラに母を誘ひし/秋の嶺」。こんどは、秋の嶺の前で軽く切れて、俳句用語でいう二物衝撃(=取り合わせの句)のカタチになっています。ゴンドラに母を誘うというのが泣けます。ゴンドラというのは個室ですし、そこに入って高いところから風景を見るというのも、親子の長い歴史を感じます。子供の頃に載せてもらった思い出があるんじゃないかなどとも想像できます。秋の嶺はこれでもいいのですが、紅葉になっているとか、田が色づいているとか、竹が青々としているとか、ニュアンスがあってもいいかと思いました。
 文法の補足、「ゴンドラに母を誘ひし/秋の嶺」の「誘ひし」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形です。「秋の嶺」が母を誘ったのではないので、意味からはここで切れていますが、ぷっつり切るなら「誘いき」です。このままでも間違いではありません。ちょっと気になったものですから、やっかいな事を言って申し訳ないです。

風流に生けしカタクノ心詠み  kikumi(60代,女)
 始めまして、宜しくお願い申し上げます。長居植物園の蓮池〜ハスのみ(花たく)2本ずつプレゼントがありました。ススキなど、草花生けてみました。”ロータス効果”(ゴミや、虫の腐廃物をころころまとめて玉露にして落とし、蓮池の滋養になる)と掲示してあり、この年で始めて知りました。胸迄入りハスの実収穫です。3年に1回掃除されるそうです。
ドクターえなみの診断と処方箋
 kikumiさん、こちらこそよろしく〜。長居植物園は、大阪マラソンでよく聞く名前ですね〜。ロータス効果、初めて知りました。もっと普及するといいですね。
 さて掲句、カタクノが分からないのでは。調べたらカタクリの事とありましたが、コメントからは「蓮の花托」と読めます。どちらなのでしょう「花托」だとしたら季語のない俳句という事になります。季語のない俳句もありますが、この句の場合は花の名前ががないと成立しないと思います。カタクノとカタカナにしたのも理解できません。また、「風流に生けし」とは、どんな風に生けたのか、「心詠み」とは、どんな風に詠んだのかを自分なりの言葉で表現することを心がけてください。

(1)ハンマーを投げ切ったあとこそ霰  未知(50代,男)
(2)いつの間に峠越へしか黄昏るる
(3)寒かろう眠たかろうに岩木山

 ご教示を。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)詩的世界を目指している気持ちが伝わるが、わたしには難解。ハンマーを投げるなので、ハンマー投げのこと。「投げ切ったあとこそ」の文脈のずらしが面白いが、「霰(あられ)」と来て、何のことやらでした。
(2)無季。これは平凡。
(3)「寒かろう眠たかろうに/岩木山」。難しい試み。これはこれで一編の詩ですが、無名の人が発表して、どこまで伝わるのだろう。仮に山頭火なら、また別の伝わり方をするだろうな〜。以前の「破れたるままの障子で冬になる」のような句も含め、わたしには判断がつきません。

(1)早朝の虫さんざめく救急車  豊田ささお(70才以上,男)
 桔梗の精・・の句,指摘されるまで、甘いと思いませんでした。いまさらながらご指摘のとおりと・・「船団74号」今頃読んでいてえなみドクターの7句いずれも分かり易い中にエスプリが効いていて敬服しました。なかでも「風葬の村・・」とても真似できませんが大好きです。目標にさしていただきます。
(2)若狭路をつるみほどかぬとんぼかな
「ぶつかってタンデムのままゆく蜻蛉」を変えました。神宮寺の芝生でノシメトンボの交尾を長い間見ていて車に乗り遅れそうになりました。
ドクターえなみの診断と処方箋
 拙句をほめていただきありがとうございます。最近も仲間に「前から言おうと思ってたんだけど、おまえの俳句、近頃いまいちだな〜」と指摘されたりして、わたしなりに悩んでいます。ここに診断をあおぐみなさんと一緒に勉強のつもりです。(そのクセに偉そうで、申し訳なく思っています。丁寧な言葉で遠回しな表現を使っていると、文章が長くなってしまう事もあります。敬語なども省略させていただいてきます。ご理解のほど)(^_^;)ゞ
(1)「早朝の虫さんざめく」ところに、たまたま「救急車」来たというだけでは。結果としての世界が見えない。「早朝の虫さんざめく」と「早朝」がついているのも理解できません。
(2)「若狭路を/つるみほどかぬ/とんぼかな」。読みにくかったのは、「とんぼ」の「と」が助詞に読めてしまうからかも。「蜻蛉」とでもした方が。「つるみほどかぬ」がどうかという事もあります。若狭路が入ってイメージがプラスされましたが、結局は、交尾しているというだけでは句にならないのでは。

(1)沢風に騒立つ鶏や鰯雲  小口泰與(60代,男)
(2)老犬の太き鼾の夜長かな
(3)山風に虫の音はたと朝ぼらけ

 よろしくご指導願います。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)一目、ごろごろした句と感じました。漢字が多いせいもあるでしょう。「さわかぜにさわだつ鶏や」としたら印象もちがってくる。ここら辺はこのみでしょうが。韻をふんだのは成功ですが、句は平凡だと感じた。「鶏」に対して「鰯雲」もうるさいと思う。
(2)ワン句。できている句だが、犬がかわいいという事が前提にあるので、どんな句も良く見えてしまう。以前の「愛犬と泊まりし宿の秋陰り」よりは平凡。
(3)「虫の音はたと」止んだのでしょう。思わせぶりな句と感じました。

河口まで並走の船秋の朝  藤井茂子(女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 写生っぽい句。散歩して見た風景でしょうか。句としては平凡でしょう。


2007年9月16日

晩餐を終えて案山子を立てにゆく  星次(40代,男)
 はじめまして。ご指導よろしくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「晩メシ」とするところを、晩餐としたという事でしょうか。句意(どんな意味で、何を伝えようとしているのか、作者の狙いなど)がよく理解できませんでした。

(1)枝豆を摘みて今日の一人ごと  藤(10代,男)
(2)囀りの聖書ひらきしまま去りぬ
 囀りと聖書は、やはり近いでしょうか?
(3)朧月始発列車を待つ夫婦
 時季外れですが、よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)こんな風にさりげなく575にできるのは、とても良いと思います。句としては、「今日の一人ごと」が思わせぶりすぎて、わたしとしては、見も知らぬ人の一人ごとなどつきあってる暇ないよ〜(性格悪い)と感じてしまいました。
(2)囀りと聖書が近いかどうかですが、近いでしょう、たぶん。別の季語なら、もっとイメージが広がりそう。
(3)上5にどんな季語がきてもほとんど成り立ってしまう句。一句のまとまりが弱いのでは。

哀れ蚊の小強き羽音叩きたり  ひさがき
ドクターえなみの診断と処方箋
 ひさがきさん、はじめまして。わたしの整理もありますので、せめて男か女かだけでも教えてください。「哀れ蚊」と思ったのに「叩きたり」なので、首尾一貫していないのでは。「小強い」は造語ということになるのですが、コズヨイは、音読して美しくないし、音読では意味も伝わらない。文字ができたのは言葉ができたズーッと後の事で、まずは音読して伝わるかどうかが一番大事。
 既存の言葉の中からさがす努力が必要でしょう。「哀れ」の書き出しはなにかと思ったら「あはれ子の夜寒の床の引けば寄る/中村汀女」でした。

天高く長く伸びする痩せ猫よ  豊田ささお(70才以上,男)
 唯一の同居者が猫・・・夏ばての猫です。
ドクターえなみの診断と処方箋
 いわゆるニャン句。猫がかわいいと思うと、切っ先がにぶります。掲句、「天高く〜長く〜伸びする」がだらしない。ひとつは、上5で切ってしまう。「天高し/長く伸びする痩せ猫よ」。ももうひとつは「長く」を削除。「天高く伸びするものよ/痩せ猫よ」などはどうでしょう。

毬栗や羅漢目を剥く舌を出す  多弁(60代,男)
 ドクターえなみさま、はじめまして。よろしくお願いします。
ドクターえなみの診断と処方箋
 「羅漢目を剥く舌を出す」の繰り返しは面白いと思いました。毬栗が落ちてきたからと理由も分かります。藤田湘子さんは「寺社俳句は作るな」と言っていたそうです。理由は読み尽くされているからという事だったと思います。この句には工夫がありますが、ステレオタイプの句にならないようにご用心です。

(1)浦風や粧ひ初めし筑波山  しんい(女)
(2)粧へる山に夕日の照り返し
 よろしくお願い致します。
ドクターえなみの診断と処方箋
 しんいさんらしい、完成されたきれいな句だと思います。にくたれを言うと絵はがき俳句です。自分だけの感じ方はどこにもありません。

秋燕の先頭を伐る身のこなし  山本葆博(70才以上,男)
 至道云々の句のこと汗顔です。反省しきり固陋頑迷自己中心でした。「俳句=作る本能 + 伝えたい欲求」のご教示、誠に有難う存じました。たとえ些細なことでも感動の瞬間にフォーカス絞込み、新しい視点できりとり、素直な共感できる表現で・中七は絶対守り、団十郎にならぬよう、具象具体的にあいまい語を避け、ときにアフォリズム的深い思想箴言を含む句を日常底のなかに作ることが出来ればと念願いたし居ります。今後とも何卒宜しくご指導賜りますよう願いあげます。
ドクターえなみの診断と処方箋
 よけいな事をごちゃごちゃ言ってしまうのは、わたしの悪いクセです。黙っていればいいのにそうできず、みなさんに嫌われます。参考になることだけ、いいように聞いてください。あんまりもっともな事ばかり言っている自分に消え入りたい気持ちになります。お手柔らかにお願いします(^_^;)ゞ
 さて掲句。気持ちのいい情景。「伐る」は「きる」。ツバメは春の季語ですから、これが夏ツバメになったり、秋ツバメになったりすると、本来の季節感+その季節の感覚がプラスとなる。典型は、「夏の風邪」「老鶯」「冬の蝶」など。と考えると、「秋燕」の検討が必要でしょう。わたしの感覚では「先頭を伐る身のこなし夏つばめ」だろうか。これがいい句かどうかは置くとして。

タクシーに列長々と秋暑し  悠(70才以上,女)
ドクターえなみの診断と処方箋
 行列と「秋暑し」は、良く響いている。が、タクシーの行列ではあまり面白くないのでは。パチンコ屋とか、バーゲンとか、新装開店とか、句材に工夫があった方が面白くなると思いました。

(1)おふくろの別れは不意や白桔梗  未知(50代,男)
(2)死化粧してをり汗玉の女なり
(3)台風が去って一家はばらばらに

 ご教示を。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「おふくろの別れ」とは、ご両親が離婚されたという事か。他にもいろいろ想像がついて景の定まらず。
(2)前回の「死化粧をする汗玉の女ゐる」と同じ感想です。
(3)「何を言うか?」「どう言うか?」は広告にも同じ課題でした。前者は句材という事でしょう。句材が面白ければ、すっと言うだけでも面白い句ができる可能性があるが、そんなに新しい句材はない。また新しいだけではポピュラリティを持たない。つまり、俳句は案外「どう言うか?」が主戦場なのかも。この辺りは考えがまとまっていないので、またいずれ。この句、句材にプラスαがいるのでは。

(1)葛の風波涛は胸の響きなる  蓉子(50代,女)
 関東ロームのご診断ありがとうございました。鯨塚のある岬鼻に立って波音をきいていると、自分が波音と同化していくような感じがします。
(2)君がくれし花火の礫てのひらに
 花火を間近で見ていたら何か落ちてきて、豌豆の少し大きめの塊でした。花火のなかの不発球と教えられたのですが、どういえばいいのかわからないので礫にしてみました。通じないかもしれないですね。
ドクターえなみの診断と処方箋
(1)「葛の風」は、初めて目にする使い方。詩情があるが、本当に効いているのでしょうか。「赤のまま」「はまなすに」などと比べてどうなのでしょう。「波涛は胸の響きなる」は、前回の「思い切ることとは/萩の月明かり」と同じく俳句らしい伝え方で感心しきりです。
(2)礫は「つぶて」。蓉子さんが書かれているように、意味が伝わらないでしょうね。豌豆のような不発球を句にするのは難しそうですね〜。でも、新しい俳句が生まれるかも。