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俳句クリニック 2008年3月前半分(ドクター:朝倉晴美) 「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。
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| 3月と4月の担当ドクターは朝倉晴美です。 | |
| <プロフィル> のんきな朝倉ですが、初めての句集が出ます。タイトル『宇宙の旅』を今回のクリニック名にも。瀬戸内地方で育った私、その海は優しくて、宇宙にもつながっている気がします。教職に復帰してもうすぐ一年。クリニックも気分新たに参るつもりです。皆様どうぞよろしくお願いいたします。 | |
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ドクター朝倉の診断
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2008年3月15日 (1)近道の置屋の裏の冬薔薇 えんや(70才以上,男) (2)物音のたかなる厨春近し (3)椿寿忌や吾れ新婚の花のころ お久し振りです、2006年より随分お若くなったようですね(笑)。難聴の為句会には参加出来ませんので通信句会に入っています。なかなか上達しません。2ヶ月間どうぞ宜しくお願い申し上げます。 ドクター朝倉の診断と処方箋 コメントありがとうございます。照れくさいものの、やはりうれしくなってしまいます。三句拝見。随分と言葉を選んでこられているように見受けいたしました。 (2)「たかなる」という表現が、春がそこまで来ている気配や、待ち望んでいる期待感が、とてもよく出ていて良いです。「厨」という古風な言い方も句の雰囲気を盛り上げています。 (1)置屋、句材としてはなかなか難しい言葉だと思いますが、近道、冬薔薇、とうまく取り合わせられ、冬の中にある一種独得な明るさが表現されているように思えます。静かな情景がしっとりと伝わってきますから、「の」の連続でないほうが良いでしょう。 (3)花のころ、がおしいです。中七までは抜群の取り合わせだと思います。言い過ぎて、自慢話のようになってしまっていますから。 (1)理事長をぶらんこに乗せ口火を切る 仁(60代,男) (2)春深し築百年の黒柱 朝倉先生、診断よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)何やら、今から決戦の火蓋が切って落とされそうな気配ですね。「ぶらんこ」に賛否はあるでしょうが、理事長との落差を楽しむこともできるでしょう。 (2)「春深し」という季感にとても似合う中七下五だと感じます。悠久の時の流れをも感じさせるゆとりある句です。 時計見る人をみており春の風 遅足(60代,男) 句集の出版おめでとうございます。時計でなくても句が成り立ちそうですが・・・ ドクター朝倉の診断と処方箋 ありがとうございます。周囲の方からおっしゃっていただくと、照れくさいものの、喜びが増します。投句、良いと思います。第三者の目で見る自分がいるものの、その視線は優しく、春の風の中の光景として、心情が心地よく伝わってきます。また、〈時計見る人みてをりぬ春の風〉も考えられます。(※旧仮名遣い表記ならば「みてをり」です。) 梅林の枝ふくいくと放物線 しんい(女) 枝垂れ梅のことなのですが・・・宜しくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「ふくいくと」という事実を、その言葉なしに表現することに、この句の優れたところが出てくると思います。せっかくの「放物線」ですから。〈枝垂れ梅放物線の香りかな〉、〈梅林の放物線の香りかな〉と考えました。梅の香りの濃密さが出ると良いですね。 春暁にまどろみて聴くラジオかな 栗太郎(60代,男) 年々目覚めが早くなります。早朝のラジオ番組には良いのがありますね。 ドクター朝倉の診断と処方箋 私もラジオ好きです。毎朝、NHKFMですね。「まどろみて聞く」が蛇足でしょうか。春暁にまどろむ本意がありますし、ラジオは聴くものですから。春暁とラジオの取り合わせは、魅力的な世界が開けそうです。是非ご再考くださいませ。 2008年3月14日 (1)幼さの残りし初音朝の床 どんぐり(男) (2)啓蟄や郵便受けの蓋を開け よろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)下手な鶯の声、とは良くいいますが、「幼さの残りし」は鶯への愛情がとても感じられ、春の希望に満ちた気分をもかもし出しています。このような表現こそ、読者に新しい感動を与えるのだと思います。しいて言うならば、「朝の床」が平凡で古い感じではあります。 (2)啓蟄と郵便受けがとても良いです。こちらも、春のこれから何かが始まるであろう期待に満ちた気分のある句で。「蓋を開け」は当たり前な行為ですので、再考の余地があるでしょう。 (1)春雷のぴしりと落ちる遠い町 涼(男) (2)冴え返るカタカタカタと心電図 よろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)冴え返るという季語が大変生きている句と感じます。冴え返るの持つ、本意、季感が余すところなく使われている上に、心電図という新しい取り合わせ。また無機質的な擬音語が、何かしら冷ややかな現実をも表現しており、秀逸な一句と判断いたします。 (1)「ぴしり」に好みはあるでしょうが、「遠い町」に心象風景が見えていて良いです。 手水舎に先客の鳥春の昼 茂(女) ドクター朝倉の診断と処方箋 雰囲気はとても伝わってきてよいのですが、手水舎、先客の鳥、春、昼、と言葉が豊富すぎる気がいたします。なんと申しますか、ぎちぎちに言葉を盛り込んだ感じを受けるのです。それは、読者がしんどくなりますので、せっかくの句が損をしてしまいます。手水舎と鳥をいかすならば、昼を切る、など取捨選択をされるのも良い修練だと思っています。 お雛様階(きざはし)超えて恋をする 岡野直樹(40代,男) はじめまして、よろしくお願いします。月に十句を目標に、一年が経ちました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 やはり、継続は力なり、でしょう。投句、発想が面白く感じます。その楽しさを強調するために、下五の工夫があると良いでしょう。「をする」ではなく、恋することを表す表現が、句の印象も楽しさも増し、愉快な句になるでしょう。 ままごとのおもちゃのしゃべり春炬燵 吉井流水(60代,男) 春とはいえ冴え返るこのごろです。孫が炬燵の上でままごとをして遊んでいます。子供らしく全部ひらがなにしようと思いましたがやはり漢字で締めました。 ドクター朝倉の診断と処方箋 春炬燵の持つ季感がとてもマッチしている句です。上五中七が平仮名表記であることも成功です。ほんのわずか、「ままごとのおもちゃのしゃべり」が冗長な感じを受けますが、かわいらしく早春らしい一句です。句材が無生物ばかりであることに助けられているのでしょう。 2008年3月13日 先づ香り色を味はふ蕗の薹 山法師 ドクター朝倉の診断と処方箋 「色を味はふ蕗の薹」の表現が良いです。「先づ香り」は工夫の余地がありそうです。馥郁とした香りを想像させる豊かな表現が他に考えられそうなので。蕗の薹への挨拶句としては十分です。 (1)梅林の真っただ中にあるデスク 仁(60代) (2)解体屋雛菓子もって和服着て 朝倉先生、こんばんは。今日もよろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)不思議な句で、少々?なのですが、雰囲気で読めそうな句ではあります。もちろん、正統としては情景がはっきり伝わる句にすべきですが。 (2)解体屋へ和服の人物が雛菓子を渡すのか、解体屋が今日は和服で雛菓子を持っているのか、こちらははっきりした方が良いと感じます。なぜなら、人物の違いで句の持つ情緒が大きく違ってくるからです。どちらも、発想には魅力を感じました。 (1)蕗の薹三つだけ摘む佳き日なり せいち(60代,男) (2)ほほえみに微笑返す桃の花 (3)一村に一品プラス桃の花 朝倉ドクター、宜しくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)蕗の薹三つだけ摘む、とても良いです。摘むという動作のイメージも早春にぴったりです。これで十二分に幸せや佳い日である気分は伝わります。よって下五の検討を是非お勧めいたします。 (2)ほほえみ、微笑、その表現が少々微妙ですが、まさにほほえましい一句です。 (3)プラス桃の花、気の利いた洒落た表現と発想ですね。「一村一品プラス桃の花」ではいかがでしょうか。口調に勢いが出て春の力強さを感じさせれるのではないでしょうか。 (1)二月尽風を舐めてる赤子かな 草子(60代,女) (2)啓蟄や地下に無口なチーズ屋さん (3)桜の湯受けて手中に温かし 「二月尽風を舐めてる背なの吾子」「百千鳥地下に無口なチーズ屋さん」の処方箋をありがとうございます。(2)はおしゃべりな雰囲気との取り合わせを考えたのですが失敗でしたね。「風柔し・・」とさりげなく詠んむべきか悩んだ末揚句にしましたが再診をお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)(2)どちらもすっきりとし、情景も無理なく読者に伝わります。私としましては、十分に良い仕上がりと判断いたします。 (3)朝倉流ではありますが、〈風受けて手中温し桜の湯〉ではいかがでしょうか。春風と桜湯の温かさ両方を出してみたく思いましたので。 (1)春一番利根の川瀬の奮ひ立つ 小口泰與(60代,男) (2)大いなる暾に向かひたる雲雀かな (3)かたことと缶ドロップや春の風 よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (3)がとても良いです。缶ドロップ(サクマのドロップが定番でしょう)の持つ、幸せと少しのせつなさを上手に使われた句だと思います。春の季語の中で、「風」を選ばれたことが成功の理由でしょう。春の風だけが持つ、暖かさと勢い、この情緒が生きています。 (2)情景はよく伝わります。「暾に向かひたる」の表現は読者を選ぶかもしれませんが。 (1)川が「奮い立つ」という表現が良いです。 (1)追儺ついな鬼神に横道なきものを 山本葆博(70才以上,男) (2)追儺ついな心の鬼の棲みつきて (3)大寒のゆふべ手向けし香華かな (4)暁闇に目覚めて遠き春の雷 (5)破邪顕正桃の節句と孫等かな はじめまして。宜しくお願い申し上げます。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそよろしくお願い致します。五句拝見。 (5)に興味を引かれました。「破邪顕正」と「桃」の取り合わせの良さです。また、できれば、「孫等かな」を差し替えたいと思います。お孫様への愛情をむげにするようで心苦しいのですが、上五の語感の良さ、桃の節句という十分に明るさのある季語、そのようなことから、下五はさらりと読めるものが良いかと。 (1)、(2)の「追儺ついな」の表現も、興味深いです。どちらも中七下七が多少説明しすぎているきらいもありますが、上句の言葉の連続に助けられています。 2008年3月12日 (1)北窓に鳥の声する今朝の春 茂(女) (2)ほろ苦き話ほろほろ梅見ごろ ドクター朝倉の診断と処方箋 (2)言葉遊びが楽しい一句です。こぼれ梅の風情が良いですね。ただ、「見ごろ」が言いすぎでしょう。下五、「今日の梅」なども考えられます。 (1)句に切れを持たせ、一句を引き締めるのはいかがでしょうか。また、「北窓開く」という春の季語がありますので、あわせて今朝の春も推敲できるかと思われます。 大師池うどん屋の梅満開に 豊田ささお(70才以上,男) 日本一のため池の堤で、生活改善のお母さん方がうどん屋をやっていて、暖簾前にきれいな白梅が咲いていました。こういうと大体わたしの在所がばれそうですが・・池の近くの研修会館での句会に出しましたら1点句て、座の評価は挨拶句の域をでていないということでしょうか・・これを超えるために何が必要かをご教示いただければ幸せです。早瀬ドクターからは、「当たり前で詩がない」というご診断をよく頂きました。同じ失敗をまたやったかという思いもありつつ・・・よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 瀬戸内育ちの私、コメントの在所、大変よくわかります。とっても美味ですよね。 さて、投句ですが、大師池という固有名詞に救われていると思います。挨拶句は挨拶句で完成されていて良いと考えています。折角ですから、もう一句つくられてはいかがでしょうか。うどん屋のお母さんと梅という句材も面白いと感じます。句に、詩、ポエジー、情感を盛り込むにはーーいろんなトライの仕方がありますがーー同じ句材で何句も作ってみることも一法です。そうこう試行錯誤しているうちに、ひょんなことでポエジー(詩)ある表現が出来たりします。もちろん、作品、創作というものは、初めにポエジー(詩)ありきですが、何にでもそれを表す手段が必要ですよね。手段、技は鍛錬から生まれることも多いと考えています。 (1)桜まじ向き合っているスニーカー 仁(60代) (2)春来たる詩吟きこきこ波間から 朝倉先生、よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)向き合っているのは、二人でしょうか。一足のスニーカーが左右の足が向き合ってるのでしょうか。桜まじとスニーカーも悪くはないですが、向き合う様子と同じで、少し曖昧さを感じます。それが残念な点です。 (2)きこきこ波間から、春の海の音の形容でしょうか。詩吟きこきこ、面白い表現ですが、こちらも少し読者が迷いそうで損をしていると思います。せっかく独創的な発想ですから、より読者に伝わる表現が良いと思うのです。 (1)落椿ここよここよと母の声 草子(60代,女) (2)押絵雛すこやかなりし母おはす 初めまして。ちょっと湿っぽい句かもしれませんがよろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 二句拝見いたしまして、どちらも優しい風情のお母様像が浮かび上がりました。この二句はそれで完成されていると思いますが、もう少し客観的にお母様を詠むのであれば、次のように考えられます。 (1)「ここよここよと母惑う」、例えば少しユーモラスに。 (2)「すこやかだけの母なりし」、子供に還ったようなお母様として。 決して、対象の人物を冷たく詠むのではなく、一歩距離をおくことによって、よりその人物の純粋な姿を表現することを意識しています。それが、読者への共感、感動を生むと考えているからです。 (1)草餅の包まれし和紙八つ折に 勇平(70才以上,男) (2)鎌倉の栗鼠のくさめも陽炎へり 始めまして。70の手習いで始めた俳句ですが、月並句、類句の範疇から抜け出せません(>_<)。診断の程、お願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそはじめまして。70の手習いとお聞きしますが、表現の発想が独創的で良いとお見受けいたしました。 (1)「和紙八つ折に」がとても良いです。包み紙が句材であることは珍しくないですが、和紙であって、包んであったものをきれいに畳む様子には、優しい春の気持ちが伝わってくるようです。 (2)栗鼠のくさめ、良いですね。鎌倉と具体的な地名も効果的です。くしゃみをする栗鼠に現実感を持たせているからです。ただ、くしゃみそのものを陽炎とすることに無理さがあること、くしゃみが冬の季語であること、それらを考えますと、鎌倉の栗鼠、陽炎の二つで句作されると良いかもしれません。 (1)料峭や二川に分かつ丘なりし 文の子(60代,男) (2)バレンタイン包みの中にキティちゃん (3)管絃に溶け入る吾が身春眠す 宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)春寒料峭ですね。丘の様子がよく似合っているのではないでしょうか。肌寒い中、何かを決意するような気配さえ感じられ、言葉としての表現はありませんが、深い抒情がある句だと思います。優れた一句です。(「二川に分かつ」は「川を分かつ」でも良いでしょう。) (2)現在の世相ですね。 (3)管弦楽曲をいい気持ちで聴いていて、、、夢の中でしょう。管弦楽と春眠の取り合わせが美しいです。 (1)自転車の溢れる街の霾 茂(女) (2)春うらら方程式を解く羽目に (3)イヤとしか言わぬ子の上春の雲 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)自転車がやはり月並みでしょうか。思い切って、オリンピックのことなど詠まれるのも、今の中国、北京をタイムリーに表現できて良いかもしれません。印象的なぶん、力強い俳句になり読者を魅了する可能性があるからです。 (2)とてもほほえましく良い句だと思います。季語の春うららが実に効いています。「羽目に」が少々くどくはありますが、句の雰囲気に助けられています。 (3)こちらも微笑んでしまいそうな一句です。「しか言わぬ子の上」が推敲できるでしょう。説明の強い表現になっていますし、口調もあまりよくありませんから。しかしながら、イヤイヤ病のこどもと春の雲は、とても良い感じですね。 (1)危険地帯すくすく伸びて土筆かな 仁(60代,男) (2)菜飯茶屋青信号が点滅す 朝倉先生、よろしく、お願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)面白いですね。イレギュラーな(定番ではない)句作、読者の好みはあるかもしれませんが、仁さんらしい一句として良いのではないでしょうか。土筆がすくすく伸びる一帯も、開発が進んで立ち入り禁止などになっているのか、などと読みました。「かな」も句を引きしめて効果的に使われていると思います。また別の解釈もあるかもしれませんが、それはそれでよいのではないでしょうか。 (2)菜飯茶屋と信号、少し離れすぎてはいないでしょうか。つまり、ちょっと現実感が乏しいということです。実際にあり得たことかもしれませんが、読者は無理を感じるでしょう。 2008年3月11日 (1)蜜を吸ふめじろのサーカス宙返り 栗太郎(60代,男) (2)春夕陽たまごの黄身のやうな色 朝倉先生お久しぶりです。なかなか上達しませんが、ご指導宜しくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 栗太郎さん、こちらこそです。上記のようにおっしゃいますが、投句、特に(1)、言葉の選び方、句の調べ、とても良いと感じました。 (1)十二分に楽しい一句で良いです。口調も良く、それがめじろの軽やかさを強調していて句の魅力を増しています。 (2)「やうな色」では説明しすぎでしょう。いっそ「たまごの黄身を食べたいな」くらい発想がとんだ方が良いかと思われます。「食べたいな」は一例ですが。 早春やフエリーは暗き口を持つ 涼(男) よろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 お見事ですね。いつもその発想と表現力に驚かされてしまいます。フェリーの車両乗降口の形容、そして早春との取り合わせ、上五の「や」切れの効果。かもし出す、早春の喜びと不安がとても優れています。 (1)春の朝透明の傘干してあり ポリ(50代,女) (2)春の日に乙女走りのサラリーマン はじめまして。どうぞよろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそはじめまして。お願いいたします。 (1)情景がとても良いです。透明の傘は、「ビニール傘」とされても良いのではないでしょうか。春の天気の変わりやすさが想像されますし、またビニール傘の気軽さも、春の朝の気配に似合っているようの思えるのです。「ビニール傘の干しており(をり)」などという表現も一案です。 (2)「乙女走り」、句の中で生きているかどうか、少し微妙かもしれません。春の日に似合いすぎるか、逆につまらないか。春という季節の勤め人の句は、多くの人が挑戦していますので、作り甲斐はあると思います。 (1)かさかさと五色ラムネや風光る 小口泰與(60代,男) (2)傷深き奇岩の山や春の雪 (3)春曉のビルは燃立つ榾の如 よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)五色ラムネや風光る、が良いです。「五色」が句の情景を豊かにしています。何でもない句材=ラムネを、一言形容するだけで、句全体が生き生きと美しくなっていくことを、改めて感じました。一方で「かさかさと」は少し余計ですね。 (2)良いと思います。奇岩の形容と春雪の取り合わせが魅力的に伝わってきます。実感があることも、この句の利点です。 (3)上五中七、強烈な印象が効果的です。「榾の如」に賛否はあると思いますが、小口さんらしい自句として良いと思いました。 (1)いちはやく名を光らせて雪の嶺 学(50代,男) (2)梅咲ひて雪の町にと杜氏かな (3)逃水の日溜りとなる観覧車 ご教示を。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)名を光らせて雪の嶺、が良いですね。雪の輝きがより鮮やかに感じられます。その分、上五がもったいないです。分かりすぎて答えを出してしまっていますから。光景がはっきりと述べられていますから、少し含みのある内容の上五でも大丈夫だと思いますし、むしろ句が豊かになるかもしれません。 (2)梅、雪、杜氏、少々付きすぎてしょうか。 (3)逃げ水と観覧車、とても印象的で優れた取り合わせではないでしょうか。逃げ水と観覧車、どちらもそこはかとなく感じさせる哀愁のようなものがお互いうまく同調し合っていると感じます。難点は「の日溜りとなる」という表現です。具体的な光景の読みに迷いがでます。光景を明確に表現することによって、逃げ水と観覧車の持つ情感も読者により伝わることでしょう。 2008年3月10日 (1)爆撃機沖に日暮れて霾るや 鈴木信輔(男) (2)首筋に桜の息がかかるほど (3)コピー機のまだ起動せず雛祭 なかなかうまくならなくてよく落ち込んでいます。よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「上手にできた!」と思うほど、危険なことなありません。下手だなあ、と思うことも上達への不可欠です。 (2)(3)良いです。 (2)桜の息、優れた表現だと評価したいです。桜はよく人にたとえられたり、何かの化身、などと言われることが多いですね。それだけ、桜だけが持つ特異性があるのでしょう。それが、「桜の息」によく表現されていると感じます。また、首筋ですから、後ろからですよね。それも成功の情景でしょう。 (3)コピー機と雛祭が気の利いた取り合わせです。雛祭の楽しさと華やかさと、コピー機との落差が、私たちの日常の一場面であることを伝えています。しかしながら、深刻になり過ぎず、ユーモラスな句に仕上げられていることが成功の要因でしょう。 (1)恋猫や崩れかけたる築地塀 しんい(女) (2)駘蕩の霞の衣遠筑波 宜しくお願いいたします。(2)季重ねなのですが・・・ ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)が良いです。築地塀、めっきり少なくなりましたが、私はその風情や語感が大好きです。懐古趣味ではなく、情緒あるものをうまく句に使うことは、なくなっていく風景、ひいては、失われつつある情感を、とどめておけるのだと思っています。また、恋猫という現在進行形で生きている季語を持ってこられたことが成功の要因でしょう。句が単なる懐古のものにおちいっていませんから。晩秋から冬だと「崩れかけたる」と合いすぎて寂しすぎますが、春なので気分良く読める点も優れています。 (2)読者にとっては、少し難解でしょう。 (1)春曉の谷をつんざく鴉かな 小口泰與(60代,男) (2)ぬか雨を糧とし先駆辛夷かな (3)春晨光りたまはる榛名かな 朝倉先生お久しぶりです。よろしくご指導願います。 ドクター朝倉の診断と処方箋 小口さん、お久しぶりでございます。大変ご熱心な投句、続けていらっしゃるようでこちらも身が引きしまる思いです。三句拝見、どれも、言葉の選択が丁寧だと感じました。 (1)上句を「春暁の谷」、と一度切られてはいかがでしょうか。鴉のつんざく声がより強く響きそうですから。 (2)「辛夷咲く」という表現を使うのも一案です。しかしながら、「先駆」という表現も捨てがたいので、このまま添削なしともしたいです。 (3)榛名は地名と判断し、春の息吹、清々しさのある一句として良いと思います。「かな」もその効果が出ているでしょう。 (1)真四角のマンホールへと春一番 茂(女) (2)お内裏に雑巾掛けを見られけり ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)取り合わせの妙ですね。マンホールはしばしば句に詠まれますが、真四角が効いています。春一番の元気のよさを前面に出すことに致しますと、〈春一番真四角のマンホールへと〉。句またがり(中句と下句に言葉がまたがってること)にはなりますが、私は、春一番の風の勢いを十分生かすことで、この句の良さが出てくると思うのです。春が待ち遠しくなる一句です。 (2)人形の視線という句材は、時にありますし、文学作品にもありますね。雑巾掛けという日常の雑多な一部分が効果的ではありますが、「見られけり」がどうでしょうか。推敲の余地がありそうです。 (1)空をそほつと押し上げて花ミズキ 学(50代,男) (2)野山焼きて取つ組み合ひてゐる子かな (3)呼びゐても犬現れぬ春の庭 ご教示を。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)良いですね。花ミズキが空を押し上げている様子には、共感の是非があるでしょうが、春の空気、大気の様子が気持ちよく伝わってきそうです。ストレートな表現も、春の気配に合っているように思えます。 (2)上五を「野山焼く」として軽く切り、「取つ組み合ひの○○○○○」と下五に子供の様子を加えてはいかがでしょうか。投句は切れずに、動きのある句ではありますが、逆に冗長な感じを与えてしまいます。子供たちの活発で明るい様子、春の野焼きにぴったりだと思います。 (3)私も、「春泥はほら今ここ犬の鼻先」という句を作ったことがあります。春と犬ってなんだか幸せな気分があるような気がいたしますね。投句、ユーモラスがあって良いです。私は、呼んでもこない犬を、寂しさとは受け取れませんでした。むしろ、春の庭でくつろぐ犬、寝入る犬かと。また、あえて、中七で「犬現れず」と切ってしまう方法、〈春の庭呼びゐても犬現れぬ>と句末を連体形止めにする方法などを考えてみました。 2008年3月9日 (1)土筆のみち真つ直ぐ行けり手漉和紙 仁(60代,男) (2)日本中どこであろうと流行風邪 朝倉先生、こんばんは、今日もよろしくご診断お願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 仁さん、こんばんは。二句拝見。どちらも取り合わせに挑戦されている句に見受けられました。 (1)土筆の道と手漉和紙、吉野や四国の山あいの地を彷彿とさせられました。「真っ直ぐ行けり」という動作ですが、表現はもう一歩工夫できるかもしれません。春を抒情的に感じさせる点が良い句です。 (2)日本中の流行風邪が面白いです。「どこであろうと」という表現が、句の中で浮いてはいないでしょうか。推敲の余地がありそうです。 薄氷の下からにらむメダカの子 豊田ささお(男) 見たまま俳句と思いつつだしてみました。ご教示を・・・ ドクター朝倉の診断と処方箋 少しユーモラスな感じですね。それが、初春の雰囲気と似合っているように思えます。表現をさらに推敲してみますと、<メダカの子睨みておりぬ(をりぬ)薄氷(うすごおり)もありえるでしょう。 トントントン千切り大根春の音 ねぎよしこ(70才以上,女) よろしく。 ドクター朝倉の診断と処方箋 とても幸せな句ですね。多少、言い過ぎで幸せ過ぎているようにも取れますが、擬音語も使って、とことん幸せをアピールする句も良いものだと思いました。 氷解く一抹の憂さそこはかと しんい(女) 宜しくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 「一抹の憂さ」か「そこはかと」。どちらかが不要かと思えます。読者に想像させる余地があるほうが、句に含みがでます。 氷解くという季語も含みを持たせられる力がありますから。少し昔の句ですが、<氷とくる水はびいどろながしかな 貞徳>があります。感情を表す言葉はありませんが、気持ちが伝わってくるような気がする句ではないでしょうか。 (1)卒業の散り難き輪の中にをり はるを(60代,男) (2)三月の校舎に別れ告げにけり (3)下萌の土の弾力楽しめり ご指導ありがたく存じています。俳句を学ぶ者として、感謝いたしております。 ドクター朝倉の診断と処方箋 何かしらのお力になれればうれしく思います。三句拝見。どれも、表現の優れてい る点があるのですが、一方で言い過ぎてしまっていて句が損をしているように思えま す。 (1)卒業の散り難き輪、良いです。「中にをり」が言い過ぎです。 (2)三月の校舎、良いです。「別れ告げにけり」が平凡な説明です。 (3)下萌の土の弾力、良いです。「楽しめり」が直接過ぎます。 三句とも、前半部分は、季節感も十分あり、かつオリジナルで情感ある良い表現だと感じます。是非、ご再考下さいませ。初春の香りいっぱいの句を楽しみにしております。 2008年3月8日 (1)古物商電話一本春疾風 仁(60代,男) (2)蛇穴を出でて二代目建築士 朝倉先生、こんばんは、よろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こんばんは、仁さん。まだまだ寒い日が続いていますね。 (1)よくまとまっている句です。名詞ばかり、漢字ばかりの表記もいやみなく、です。古物商からの電話か、古物商への電話か、はたまた古物商が電話を受けている様子をみているのか、ちょっと迷うのではありますが、春疾風という季語によって払拭されているような気がします。そのくらい春の風は元気が良く、強い季語なのかもしれませんね。 (2)〈蛇穴を出づ二代目の建築士〉も考えられます。それにしましても、とても面白く愉快で、建築士が魅力的に見える句です。 (1)開発のすすむふるさと花薺 しんい(女) (2)船頭の手持無沙汰や川おぼろ 朝倉ドクター、進歩が無くて・・・(__) 又、ご指導のほど宜しくお願致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 そんなことございません。言葉の選び方が充実しているのではないでしょうか。 (1)「すすむ」が言い過ぎているでしょう。また、開発という言葉を使わずに、建売住宅、新興住宅、幹線道路、など他の言葉で、開発がすすむことを表すこともできます。花薺の選択はとても良いです。 (2)なんだか、春はのどけきかな、という気分が十分に出ていますね。情景もよく伝わります。「や」切れが少し強く作用しますので、気にはなりますが悪くはないでしょう。 タンポポぽんぽん洋タンポポ ねぎよしこ(70才以上,女) 平家の隠れ落人のように日本タンポポが少なくなってしまいました。3月も気分新たにお忙しいでしょうがよろしくお願いします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 お気遣いありがとうございます。慌しい月ですが、春というフレッシュな季節はうれしい忙しさですね。投句、良いと思います。読者の好みはあるでしょうが、オリジナルな自句として持たれてはいかがでしょうか。ぽんぽんという擬音語も春の楽しさを出していますし、洋タンポポという現実も、少し皮肉もあって効果があるでしょう。 (1)甕の底より藍建ちて春の山 学(50代,男) (2)細胞のひとつひとつや寒明ける (3)言の葉の北前船や東風 ご教示を。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)甕覗きの色ですね。春の山との取り合わせ、良いと思います。春の水温む季感もよく合っているでしょう。私ならば、〈春の山甕の底より藍建つ日〉としたいところです。上五で切れるとすっきりし、口調も良くなると感じますから。 (2)こちらも、寒明けるという季語がよく効いている句でしょう。「ひとつひとつ」という言葉の連続に、細胞の隅々までという強調も感じられ良いです。難を申せば、「や」切れの是非です。少し強過ぎる感もあるからです。「ひとつひとつに」でも句は成り立ちますね。 (3)北前船と東風、良い雰囲気です。一方で、言の葉が句を難解にしていませんでしょうか。 赤椿鵯の頬紅のいろ 豊田ささお(70才以上,男) なんともわかりにくい句になってしまったかと反省しつつも、とにかく四苦八苦の挙句です。 ドクター朝倉の診断と処方箋 分かりにくい句とは思いません。椿の色とひよどりの頬の色を詠まれた句ですね。ひよどりはわりと人家にやってきますので、椿とも無理がないでしょう。難点は、「赤」「紅」でしょうか。くどく感じますし、五七五の十七文字しかありませんからもったいないですね。ある冬の日の一場面がより印象的になったり、オリジナリテイある表現になると良いと思います。 2008年3月7日 (1)晨朝の川面に群るる寒鴉 山本葆博 (2)大寒の街を走りて泪あり (3)兀兀と坐定不思量寒の朝 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)寒鴉、<寒中黒い羽が冴えて寒さをつのらせ、田の畦に降りている光景は、冬の寂寥を深くさせる。(『新版俳句歳時記』雄山閣)という本意のある季語と、「晨朝の川面」という情景のすがすがしい冷たさ。鴉という生き物が群れているのも、その静けさのなかに音と動きがプラスされ、魅力ある情景でしょう。 (2)「泪あり」への飛躍が、少し難解かと感じました。 (3)正法眼蔵、禅宗ですね。「寒の朝」が似合い過ぎている感じもいたしますが、「兀兀と坐定不思量」との絶妙な取り合わせがこの句の魅力となっています。多少、読者を選ぶ句ではありますが。 (1)見たくない墓場のからから風車 千坂希妙(50代,男) (2)茂平次居る春子も来たね皆うぐいす (3)参道の梅の若葉に嫉妬する ご教示を。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)墓場という場所、「見たくない」という表現、合わさると、なんとも強烈な情景と感じてしまいます。その魅力を享受できるかどうかかは、読者によるのではないでしょうか。「見たくない」をいう上五を変えることで、句の情景は大きく違ってくるとは思います。 (2)少し昔の映画、『さくら判官』でしょうか。固有名詞の選択は、好みの分かれるところではありますが、「〜居る〜も来たね皆〜」という言い回しは調子も良く、陽性の感情が見えます。うぐいすもまた、明るい春を喚起させます。全体に春への期待が見える、雰囲気の良い句です。 (3)少々、言い過ぎているでしょうか。参道と梅も定番ですね。(定番の取り合わせが悪いのではありません。定番だけで句が終わってしまうと、新しい魅力がその句にないからです。) 2008年3月6日 (1)春の雪ロールケーキの匂ひかな 悠(70才以上,女) (2)折り紙の雛も並べ老ハウス またお世話になります。中々成長できていませんが、よろしくおねがいしす。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそよろしくお願いいたします。 (1)良いですね。まだ気候は冷たいけれども、春の幸せな様子様子が伺えます。多少「かな」がきつい感も受けますが、「匂い」をもってきたことで、ロールケーキにも含みが出ました。また、春の雪の淡さ、優しさとロールケーキの質感がぴったりですね。 (2)少し、常套でしょうか。ご老人向けのセンターや施設は、上手に句にすることが難しいように感じています。投句ですと、「並べ」が不要かもしれません。 囀りが引っぱり上げる朝日かな 穂波(女) ドクター朝倉、お久しぶりです。こちらへの初投句が一昨年のドクターの担当のとき、始めたばかりで右も左もわからない私に親切に教えてくださって、本当にありがとうございました。またご指導いただけるこの二ヶ月間、うれしく、楽しみです。どうぞよろしくお願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそおひさしぶりでございます。ありがたいお言葉、とても励みになります。僭越ながら、私の何かが、誰かの俳句の励みになったならば、それはとても喜びです。 投句、発想が良いです。とてもオリジナリテイがあります。それを最大限に生かすには、表現が工夫できるのではないでしょうか。<囀りの引っぱり上げる朝日かな>はいかがでしょうか。また、下五を「朝の陽」などにする案もあるでしょう。何にしろ、朝のキリリとした清々しさが大変伝わる句です。 (1)七十二の男の背中青き踏む 遊雲(70才以上,男) (2)紙雛を二人で折し頃のこと (3)木と春と魚と春とうごめいて はじめまして。朝倉さんって、「万智ちゃんは今も憧れ雛飾る」の朝倉さん?。私は、70の手習いにと昨年俳句を始め、俳句クリニックにも俳句を送信してやっと1年余りです。お手柔らかに。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそはじめまして。仰せの通りでございます。歌人の俵万智さんを詠んだ句の朝倉です。私の句を挙げて問うて下さるうれしさを感じました。ありがとうございます。 (1)(2)がとても良いです。 (1)七十を過ぎた男性の姿と、若々しい青との対比。すばらしく感じます。具体的に七十二歳としたところも、この人物を印象付けることに成功しています。踏青、野遊び、春遊び、春の生まれ来る喜びは、老いも若きも万人のものであるのだ、と再認識もさせてくれる句でしょう。 (2)少々、甘い句かな、とも思いますが、「紙雛」というさりげないものによって、助けられています。また、「二人」が夫婦であったり子供と母親であったりと、いくつかの情景が思いおこせる良さもあります。 (3)工夫されていることは伝わってきますが、その魅力が読者には伝わりにくいように思えます。 (1)眼光の鋭き亭主梅一輪 茂(女) (2)折々に恩師のメール弥生来る ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)亭主は、ご主人さまのことでしょうか、それとも茶席でのことでしょうか。でもどちらでも「鋭き」が生きています。私は、このように情景はさまざまに読めても、感じさせる情感が共通している句は、評価したいと思っています。梅一輪がよく合っているからでしょう。 (2)たぶんにお年を召しているであろう恩師が、メールを送るという意外性と、弥生。良い取り合わせでしょう。また「来る」という進行形の言葉も、句を明るいものにしています。「折々に」が、少々蛇足かな、と気になります。そこは検討の余地があるでしょう。 (1)球春のバッター悠長に一周す 希妙(50代,男) (2)つくし出る一等も出て熊も出た いつも有難うございます。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)春ののどけさが良くでていて、それが句の魅力になっています。少々、説明が多い感じも受けますので、その点は推敲の余地があるでしょう。しかしながら、一句の口調も気持ち良いです。 (2)愉快な句ですね。できれば、一等が何の一等であるか分かる方が、句が具体的になってよいかもしれません。熊はジョークの世界ともとれますね。 (1)鴨の水隔てて話しもらいけり 仁(60代,男) (2)梅林を一人行く子に要注意 朝倉先生、こんばんは、お久しぶりでございます。一年前の担当の折にはいろいろとご指導を賜り誠にありがとうございました。今回の診断を待ちわびておりました。又よろしくご指導の程お願いいたします。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそ再会をうれしく思います。そんな風におっしゃっていただくと、とても励みになります。お言葉に恥ずかしくないよう努めたいと思います。 投句、どちらも冬、早春の良いムードが感じられます。ただ、情景が少し読み取りにくいように感じられます。 (1)鴨か、話相手に焦点をはっきりと当ててみられてはいかがでしょうか。 (2)「要注意」という言葉がこの句の魅力を半減させてはいないでしょうか。上五、中七が読者に期待をもたせているだけに、その魅力を膨らませたいのものです。 2008年3月5日 (1)二月尽風を舐めてる背なの吾子 草子(60代,女) (2)百千鳥地下に無口なチーズ屋さん 本当に二月も終わります。つたない句を診ていただき、お世話になりました。まだ冬の気配たっぷりの当地ですが、句で春を先取りさせていただきました。チーズ屋さん、実際はいつも雄弁に説明をしてくれます。 ドクター朝倉の診断と処方箋 どちらの句も発想が良いです。それをより読者に伝える技を使うことにいたします。 (1)二月の終わりに、風を舐める幼子、雰囲気があって良いですね。ただ、「背なの吾子」が冗長な気がします。背負う大人を省き、子供だけに絞ると印象も強くなりすっきりしそうです。 (2)「無口なチーズ屋さん」が良いです。そんなチーズ屋さんなら一度行ってみたいですもの。難なのは、百千鳥と地下がつながらないことです。意外な取り合わせが効果的なこともありますが、今回はしんどいのではないでしょうか。草子さんだけの魅力的な世界が見えていますので、是非ご再考下さいませ。 (1)義理チョコへホンネの笑顔浅き春 文の子(60代,男) (2)日溜まりを見付け花片栗みつけ (3)デゴイチの蹌踉(よろば)ふ走り陽炎へる (4)鳥帰る店にレトロの羅針盤 朝倉ドクターお久し振りです。小生は前回診て頂いた頃より、ペースが上がり、昨年は句会、新聞等への投句とも好調でした。ここへ来て忙しさから調子が落ちていますが、ドクターのご指導のもと回復に努めたいと念じております。どうぞ宜しくお願い申しあげます。週末はPCに向う時間が取れないので、4句纏めてお送り致します。宜しくお願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 文の子さま、お久しぶりでございます。投句への姿勢、いつも素晴らしく感じております。さて、私がそのお手伝いができるかどうかかは、甚だ恐縮なのですが。がんばります。 (1)発想が面白いですね。浅き春とよく合っていると思います。「ホンネ」のカタカナ表記も生きています。 (2)こちらは、表現がよいでしょう。「みつけ」の連続に、日溜りと花片栗を見つけたときの喜び、幸せ感があります。 (3)(4)、工夫なさっていることは伝わってくるのですが、どちらも少し、定番な場景で説明しすぎでしょうか。季語の選択は良いと感じます。特に(4)は、取り合わせも妙なので表現の仕方に余地がありそうです。 早春のチーズケーキも食べたいな kikumi(60代,女) お世話になります。 植物園は早春の花畑展示で(温室)イチゴも熟れてて、イチゴケーキもいいのですが、チーズを入れました。昨年11月、熊本城400年記念「草枕」國際俳句大会の記念誌、送付戴き、ネンテン先生選句などあり、足元にも及びませんが、学びつつですm(__)m ドクター朝倉の診断と処方箋 チーズケーキ、成功です。早春にイチゴケーキでは当たり前すぎますから。それに、チーズケーキの色や味、雰囲気も早春にうまく合っていることでしょう。惜しむらくは、下五です。「食べたいな」では直接過ぎますので御一考を。思わず、チーズケーキを買いにいこうと(作ろうと)するような言葉が理想ですね。「早春のチーズケーキは○○○○○」「早春のチーズケーキの○○○○○」など。 マンションやピアノとドリルと猫の恋 茂(女) 船団の中原幸子さんの句にとても感銘を受け検索している内にこちらのクリニックを知り一年になります。それからお邪魔を致しております。宜しくご指導お願い致します。 ドクター朝倉の診断と処方箋 こちらこそよろしくお願いいたします。中原さんの句では、<桜咲くそうだヤカンを買いに行こ>が好きです。 句ですが、まず「ドリル」が気になります。漢字や計算などのドリルでしょうか。それがはっきりしますと、小学生の姿が見えてきますね。次に、上五、特に切字の「や」がもったいないです。「猫の恋」を上五にし、季節感を印象付けてみることも一案です。マンションに住む小学生のピアノとドリル、そして春の猫の日常の一場面は魅力的です。ぜひ、ご推敲下さいませ。 (1)揚雲雀小さき墓ある五色沼 未知(50代,男) (2)狂言の狐足して朧月 (3)花見宴風雪打ちし公園に ご教示を。 ドクター朝倉の診断と処方箋 (1)句の印象ですが、少し重たくないでしょうか。もちろん、その重さが句の意義や魅力に不可欠であることもありますが。同じ内容を詠む場合、読者の心にすんなり入ってくる表現を、わたしはお勧めしたいと思っています。具体的に言いますと、「小さき墓」と「沼」の組み合わせがしんどいのではないかと感じます。 (2)機知と発想に富み、表現も効いています。狂言、狐、月、と少々付きすぎの感はありますが、気持ちよく一句が読者の心に入ってきます。それに、なんとなく愉快な気分もあって良いです。 (3)「公園に」の「に」が曖昧です。「花見宴」が対象であると分かりますが、少し推敲の余地がありそうです。「風花の打ちし公園花見宴」などが考えられます。 |