俳句クリニック 2008年4月前半分(ドクター:朝倉晴美)

「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。


ドクター朝倉の診断
2008年4月14日

花妖し袋小路に迷ひけり  涼
 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「妖し」いかがでしょうか。私としまして、「妖し」といわず、何となく妖しさを感じさせる季語を上五に持ってきたいところであるのですが。袋小路に迷うj花時、誰しもが経験しそうな春一瞬の怪ですね。万人に共通する情緒も大きな魅力です。

風車天にかざせば廻りけり  茫茫(50代,男)
「風車」という兼題で最初に浮かんだ句でした。あまりに単純だと判断して没にいたしましたが、気持のはしっこにひっかかり続けている句です。ご診断をよろしくお願い申し上げます。…それにしても。いくど読み返しても単純な句です(笑)。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 ご自分のなかで何かしら思いがある句は捨てられないものです。句会で散々であったとしても(笑)。そのような句、一案として、表現技法を徹底的にすることです。例えばですが、<風車天に廻る廻る廻るのだ>とリフレイン(反復法)など。それが良い句になるかどうかは別としても、自句として他人にはアピールできますよね。

鳥むつむ羽音に老犬吠えやまず  ねぎよしこ(70才以上)
 前句のご指導納得、有難う御座いました。新学期でお忙しいところ又よろしくたのみます。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 いえいえとんでもございません。皆様との一時、楽しい時間です。鳥の恋と老犬の取り合わせがとても良いです。一句が少し長々と述べられている感じをうけますので、句にリズムをつけるか、「むつむj羽音」を別の表現にされるとすっきりしそうです。それにしましても、睦む鳥と老犬、秀逸ですね。

(1)見知らぬ子笑顔の会釈春の風  えんや(70才以上)
(2)口喧嘩するも幸せ山笑ふ
 いつも適切なご診断有難う御座います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 いえいえ適切かどうか・・・。皆様の句が生き生きと世界を描かれていくことが楽しみです。
(2)愉快で魅力的ですね。「幸せ」がちょっと言い過ぎたでしょうか。「山笑う」で十分伝わると思えます。読者に、私も喧嘩止めようっと、と思わせる句です。
(1)こちらは「笑顔」がどうでしょう。「知らぬ子に会釈に似合う春の風」。笑顔を言わずしてその笑顔を伝えることができると、句の世界、情緒がおおきく膨らむように思えます。

(1)ままごとの児らににゃむにゃむ春陽射し  うき(女)
(2)お祝ひの電話の声や春の風邪
(3)列島をさくらぜんせんすべりだす
(4)春雷や母まつ子らの母おそし

 よろしくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)「児らはにゃむにゃむ」とは、句意が違うのでしょうか。ままごと、にゃむにゃむ、春陽射し、似た雰囲気のものの羅列によって、春の陽気さがよく伝わる句になっています。
(2)お電話の主が風邪引きでしょうか。こちらも春らしい喜びに満ちた句ですね。そこに春風邪を持ってこられた妙もあり良いです。「や」切れの位置が中七ですと、春の風邪に揺れが出そうです。「声」とありますので句意は伝わるのですが。〈春の風邪電話にて聞く祝いかな〉ですと受け手が風邪引きですね。どちらが風邪でも良いのですが、句中でどちらか迷うのは残念です。狙いでどちらにも言える表現をすることはOKです。
(3)列島、桜前線、常套なんですね。平仮名表記の工夫は良いです。
(4)こちらも、春雷と母子の様子が、ユーモラスさもあっておもしろく描けていると感じます。母の連続を避けることもできるかもしれませんね。

(1)乱れたるこの世の空や辛夷咲く  豊田ささお(70才以上,男)
 辛夷の花が咲きはじめました。桜・・ソメイヨシノより一足早く・・・まるで清浄の証のごとくです。
(2)天上の何を浄めん辛夷かな
 今日は朝から雨で、家に居ます。池の大きな辛夷がいま灰色の空いっぱいの白花かと、気になりつつ、ウジウジしています。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 どちらも、この世、俗世に、清いものとしての辛夷を詠まれたことが魅力でしょう。〈満月に目をみひらいて花こぶし 飯田龍太〉〈辛夷咲き日暮のこころ永くせり 細見綾子〉〈夜空にもありし奈落や花辛夷 山田弘子〉などなどの句が思い起こされました。
(1)「乱れたる」を別の言葉で表現できるとベストでしょう。
(2)中七、少々言い過ぎているようではありますが、良いと思います。「ん」と「かな」の使い方も優れています。

二上の 落暉に向い 鳥帰る  忘我(60代,男)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 カ行の音の鋭さがあり、それが特徴となっています。季語「鳥帰る」とあいまって一種の雰囲気も出ています。情景はけっして珍しいものではありませんが、地名の二上、落暉という言葉、それらによって魅力ある句となったと思えます。


2008年4月13日

(1)春の星いま地下をゆくほうき星  汽白(40代,男)
(2)ゴゴゴーッ地下ゴゴゴーッ春の星
 初句集、おめでとうございます。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 ありがとう存じます。
 二句拝見、どちらも天の星と地下を取り合わせたものですね。独創的な表現も合わせて、大胆な挑戦の句だと感じます。読者の賛否、評価などは分かれるかもしれませんが、私が手をいれる必要はないと判断しました。

(1)目刺かじり燗冷めすする左遷かな  岡野直樹(40代,男)
(2)埋もれいて地表にとどかぬ芽も生きて
 いつも丁寧なご批評ありがとうございます。どうも春の気分にならなくて。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 どちらにも、春の気分をお出しになりたいのでしょうか。それを念頭におきますと、
(1)かじり、すする、が春らしくならないと思えます。例えば<十二尾の目刺し燗冷め左遷あり>などと言葉の羅列によって軽さを出すことも一案です。
(2)埋もれる、とどかぬ、と否定、マイナスの言葉を用いず、同じ意味でも肯定の言葉を使うと印象が違ってきます。句意は同じてあっても。例えば、〈地上へと出よう出ようと物の芽ら〉という表現も可能です。(この句が良いというわけではなく、表現のたとえとしてあげました。)

(1)大試験子等それぞれの春を過ぐ  山本葆博(70才以上,男)
(2)やかましや彼岸此岸と日暮れけり
(3)糟糠の妻ありて又桜かな
(4)老木の梅かとまがふ桜かな
(5)長閑なる佐保の川辺をあゆみ哉

 毎毎ご多忙の折申し訳ありません。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 とんでもございません。皆様の句を拝見できて、毎日が勉強です。
 五句拝見。日常にさまざまな感動をうけて生活されている様子が伝わってきました。少々、それが日記のように説明になっているようなので、そのあたりを申します。
(1)「それぞれの」ですと、当たり前になってしまうので、具体的な何かでも良いかもしれません。
(2)おもしろさがあるでしょう。
(3)「又桜かな」に情感があり、良いです。糟糠の妻、ちょっと言い過ぎかもしれませんが下五に救われました。
(4)句意に情緒が足りないようです。
(5)下五、「あゆみ」がなくとも川辺にいることは伝わりますから、他の言葉をもってくることが可能です。そうしますと、句の世界がよりいっそう広がり、読者の印象も深くなる可能性があります。

(1)渓覆ふ霧の深きや毛鉤打つ  小口泰與(60代,男)
(2)厩出しチワワ軽がる小川跳び
(3)雪代や裳裾なだらか赤城山
(4)谷川に撓む瑞枝や昼の蝶
(5)はくれんの日を恐れざる白さかな
(6)鳥引くや我のかたへにチワワ居り

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 チワワがやはりおもしろい句材ですね。
(2)厩出しとの取り合わせが魅力的なのですが、「軽がる小川跳び」が説明しすぎています。
(6)とても良いですね。「鳥帰る」の季語とが大成功です。「引く」「居り」と動詞がふたつですので、上五は「引鳥や」、「帰る鳥」(動詞ですが連体形で名詞に掛ける)も一案です。
(5)白木蓮の独特な白さに注目され、「恐れ」という言葉の選択が良いですが、句意が少々散漫ではないでしょうか。是非ご推敲をお勧めいたします。
(1)雰囲気は良いでしょう。
(3)(4)、情景描写のみでしょうか。

(1)百選の桜トンネル暮れ残る  しんい(女)
 「百選の花トンネルの夕明り」とも思いましたが。
(2)弘法寺の伏姫桜一盛り
(3)渡し場に萌ゆるはこべら群雀
(4)横走る野焼のけむり遠霞

 よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)とても良いです。それに、どちらも良いですね。二句目は、「の」の連続が気になりますから、<百選の花トンネルや夕明り>でいかがでしょう。桜のトンネルと百選、その言葉のバランス、お見事です。情景も夕べ、ベストの選択です。
(2)こちらも句材が魅力的で、情景が生き生きとしています。「桜一盛り」も効果的です。
(3)ちょっと付き過ぎ、情景描写におわりそうです。渡し場のはこべらにはひかれますが。
(4)こちらも(3)と同じであるようです。

(1)新しき風のにほいや厩出し  うさぎ
(2)春の駒跳び越す空の水溜り
(3)一瞬の風に成りたる春の馬

 週一度の娘の乗馬のレッスンの間に作りました。
(4)揚雲雀宙(そら)の孔(あな)から堕ちてきし
(5)雲間より一直線の雲雀かな
(6)笹鳴きやお並び出来ない園児いて
(7)同じ道春も行くらん一年生
(8)金色の根付けの鈴や花菜漬
(9)肺いっぱい吸い込む笑い風車

 アメリカでは風車は春のガーデンのデコレーションに使われます。宜しくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 九句拝見させて頂きました。
(6)(7)(8)が良いです。また、(1)(2)(3)と、さすがに馬場でお作りになられただけあって、素晴らしく気持ちよさが伝わってきています。
(1)「や」切れ、少し気になります。推敲の余地ありそうです。
(2)「飛び出す空へ」として、春駒の元気のよさを、より出してはいかがでしょうか。そして、「水溜り」は取りやめ、駒の若々しさも出るような下五をお勧めいたします。
(3)風になる馬、せっかくの表現が「成りたる」で平凡になってしまいそうです。中七、推敲できそうです。それに「〜の・・・」という表現が二つありますので、それも整理されると良いでしょう。例えば「一瞬の春風」ともできます。
(4)(5)、雲雀の本意をよくつかまれていますが、わりとよくある描写でしょう。
(6)(7)、人物を句材に取り入れられますことが、お得意のように見受けました。(6)は園児の姿によって、春への希望、期待が色濃くでました。(7)は「春も行くらん」が秀逸です。季節の移ろいを感じ、時も流れをも感じさせる豊かな句です。
(8)取り合わせが大変良いです。私は「や」切れをわりと厳密に推敲しますので、〈金色の鈴持つ根付鈴花菜漬〉としたいと思います。
(9)少し分かりにくいでしょうか。

(1)春園の裸婦像の手の温しかな  仁(60代,男)
(2)山茱萸の一斉に咲き不機嫌なり
 朝倉先生、こんにちは。今日は暖かかったですね 外で万年青の植え替えをやってましたけれど汗ばんできました。 岡崎に親戚の方が見えるんですって何か、いっぺんに親近感が沸いてきました。そうそう遅くなりましたけど「宇宙の旅」上梓おめでとうございます。又、本屋さんに出ましたら読ませていただきます。
 春光の日々のやさしさ句集出づ
ドクター朝倉の診断と処方箋
 もったいないほどのお言葉、句とまことにありがとうございました。うれしく読ませていただきました。万年青、魅力ある植物ですよね。実家の庭にもあり、お正月は花器に活けることもあります。
(1)絶妙ですね。春独特の暖かさを、お見事に句にされています。「の」の連続が、投句の場合、少々うるさく感じます。それだけが少し残念ですが、良い句です。
(2)こちらも良いです。茱萸の花と「不機嫌」がミスマッチとしてうまく生きています。厳しく追求しますと、茱萸の花の季語としても取り扱いと、「咲き」と「なり」という二つの用言(動詞と形容動詞)に気がつきましたが、許容でしょう。

(1)片栗の花を束ねてブーケかな  学(50代,男)
(2)鶯や宇治に立ち寄る匂宮
(3)隠れ家のそれは見事に花黄菅
(4)花の昼羅生門より御所抜けて
(5)春雷やはりはり鍋の備忘録

 ご教示を。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)が良いです。片栗の花の素朴な可憐さが、ブーケにすることによって、より増しています。
(2)匂宮、源氏物語でしょうか。宇治にたちよった匂宮の幻想でしょうか。
(3)中七が言い過ぎているでしょう。
(4)「羅生門より御所抜けて」という情景描写に興味を引かれました。「花の昼」にしますと、ちょっともったいないですね。中七下五に負けない季語が良いと感じます。
(5)おもしろ味があるでしょう。雷と鍋の取り合わせも愉快です。


2008年4月12日

(1)妻の手にバシと打たるるきのめかな  せいち(60代,男)
(2)シャボン玉イギリス村へ連れて行く
(3)春キャベツ敗れし恋いのほの甘し

 (2)は、これでは意味不明でしょうか? 「シャボン玉イギリス村に飛ばしつつ」なら解りやすいでしょうか? 宜しくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)意味不明ではないでしょう。むりろ「連れて行く」の方が、シャボン玉が特別なものになって良いと思われます。
(3)春キャベツと失恋の取り合わせが魅力的です。「ほの甘し」は不要ですね。春キャベツが甘く柔らかいものは周知ですから、そこから自然と連想できます。
(1)せっかくの奥様の句、もっと大胆な表現が良いのでは。身内を詠むときのコツかもしれません、思い切り大げさに詠む。つまり、良い意味での滑稽味、おかし味を出し、句の魅力とするのですね。

弟や八重歯を抜いて入社式  茂(女)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 姉の弟への視線が心地よい句ですね。八重歯を抜くのが弟ですから、「や」切れの使用に妥当性が薄いようです。「や」と「を抜いて」が推敲できるかもしれません。着眼も良いですし。

(1)陽ふふむ花・花・花や暮泥む  草子(60代,女)
(2)天空に一筆献上白木蓮
(3)アネモネや大きな目より息を吐き

 花といえば桜を指しますが雪国の春は梅も桜も・・・です。角めいた木蓮の花は「あの世」とも交信しているかのように思えます。アネモネは大好きなんですけど開ききると姿が変わりますよね。花の句ばかり3句、よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)表現の妙を感じました。「陽ふふむ」も「花・花・花や」もとても良いですね。そして「暮泥む」も悪くはないのですが、「陽ふふむ」とは少し合わないですから、作るのであれば「花・花・花や」と「暮泥む」で一句が良いでしょう。
(2)こちらも表現力の勝利ですね。中七の強い体言止がとても効果的ですし、白木蓮という季語、ぴったりです。あの白さが青空に映え、わりにしっかり上へとまっすぐ伸びている樹は天空と似合います。
(3)少し、好み、賛否が分かれるかもしれません。開いたアネモネを目と形容できるか、そしてそこに情緒があるか、ということです。

見上げれば 何時も応える さくらかな  浅葉洋(70才以上,男)
 待望の桜の季節がやってきました。普通、花は向日性のため太陽に向かいますが、桜は反対です。このため、日本人は尚桜を愛するようになったとの説は、この時期改めて実感しています。見上げる目線に応えてくれる桜を詠みました。ご高批評をお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 今年の桜は見事な色と質感、量感でした。開く前の寒さが要因らしいですね。桜を愛でる形はさまざまですが、桜が非日向性であることを思いながら、やっぱりしみじみと観たいものです。投句、発想が優れています。桜との身近さも良いです。一方で「見上げれば」が不要でしょう。

(1)耳鳴りの耳に鶯谷渡り  悠(70才以上,女)
(2)春の軸変えて一服茶を立てる
(3)絵手紙に筍の味封じ込め

 何時もありがとうございます。よろしく。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)ユーモアの一句と感じられましたが、どうでしょう。「耳鳴り」の受け取り方の差があるように思えます。鶯の谷渡りらしく詠もうという気持ちは伝ってきました。
(2)床の間のお軸に春を詠み込む、という発想が良いです。「変えて」「立てる」と散文調ですので、推敲できるでしょう。
(3)葉書によって筍のおいしさを詠み込むことも、優れた発想です。こちらも表現を推敲しまして、〈絵手紙や筍の味封じ込む〉ではいかがでしょうか。


2008年4月11日

(1)杖の先ふと若草にふれてみる  由利子(70才以上)
(2)遊歩道ものの芽日毎きそいい伸ぶ
(3)椿落ちて何事もなく午後すぎる
(4)ガラス越しの光まばゆし春立つ日
(5)石鹸の泡やわらかし春の朝

 ご無沙汰いたしましたが、またよろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそでございます。
(3)(5)、良いです。ごく普通の日常を情感豊かにとらえられています。
(3)<椿落つ何事もなく過ぐる午後>ではいかがでしょうか。
(5)泡への着眼がお見事です。春の朝が生き生きと魅力をもって迫ってきます。
(1)(2)、どちらも着眼は良いのですが、中七下五が散文調すぎるようです。
(4)少々、当たり前の情景、表現でしょうか。

(1)光失せ朧になりてはらはらと  郁子(60代)
(2)霞はれ湖畔の木々の薄みどり
(3)春の陽にノラの丸まる物干し場
(4)雨上がり空に輝く白木蓮
(5)玉子手に笑いさざめく復活祭

 さくらが咲き始めました。お元気でいらっしゃいますか?よろしくおねがいします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらは、毎日自転車操業(笑)ですが、元気にしております。ありがとうございます。
 五句拝見いたしまして、春の景色を感性豊かに詠まれていると感じました。そして共通していることが、表現の推敲の余地です。 五七五の十七文字ですから、説明文にならないように、読者に印象深くなるような表現を試みてみましょう。
(1)「光失せ」があいまいな句意にしています。朧に絞ると良いでしょう。
(2)良いですね。霞晴れる、湖畔、木々、薄みどり、と意味ある言葉も多いので整理することもお勧めです。
(3)野良猫と春と上手に取り合わせられましたが、この表現では少々平凡な句に。語順を入れ替える、切れを作るなどが有効でしょう。
(4)「輝く」が不要です。
(5)「笑いさざめく」という表現をとるならば「玉子手に」を捨てましょう。復活祭=卵は無理なく伝わりますから。

(1)春昼や球場横の観覧車  れい(70才以上)
(2)桜描くさくらクレヨン折れたまま
(3)春眠を恣しいままにす里帰り
(4)街灯の程よき間隔おぼろの夜
(5)春満月今にも零れそうに浮く
(6)一間だけ消してひとりの春満月

 よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 どの句も春の魅力的な情景、情緒が表現されています。
(1)一等良いです。球場横が秀逸ですね。春の明るさがよく伝わるようになりました。
(2)「描く」が不要でしょう。「折れたまま」を生かしたいですから。
(3)気分は十二分に伝わってきますね。女性の読者にはおおいに支持されるでしょう。ただ、少し言い過ぎてしまっています。
(4)良い着眼なのですが、表現にもう一歩工夫ができるでしょう。
(5)(6)、どちらも句意が魅力的です。ともに中七を推敲されるとより良いでしょう。

(1)花吹雪手に受けし子の爪立ちて  千鶴子(60代,女)
(2)ミステリー佳境に入るや春炬燵
(3)春寒やコーヒーの香の濃く匂う
(4)夕闇に白梅の香の濃くなりき

 お久しぶりでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそ再会をうれしく思います。
 四句拝見しまして、どれも、一瞬の感性、感動をつかまれていて、それが魅力となっていると感じました。
(2)一等良く思えます。「や」切れが気になりましたが、ミステリーを読んでいることに合っているようです。強い句材ですから。
(3)「匂う」が不要でしょう。例えば、<春寒やわたしの珈琲香り濃く>。少し言葉を変えすぎてしまいましたが、参考までに。春寒い時期の、一瞬のぬくもりでなく、香りの良さ。とても良い着眼です。
(1)吹雪、手に受け、爪立つ、と動詞、動きと多くなり、情景が散漫になりがちです。良い情景ですので少し絞られたら良いでしょう。
(4)春の闇と匂いは、ままあるのです。

(1)菜の花や山に椎茸菌を打つ  豊田ささお(70才以上,男)
 朝倉ドクター、お早うございます。夕べ送るつもりの句が、寝てしまって朝になりました。外は花曇のようですが・・・よろしくお願いします。
(2)菜の花や入日の山に人の声
 え〜・・前作「椎茸菌・・」は、普遍性がないようで、ムリかなと思いましてこういうふうなのはどうかなと・・デス。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)投句、良いですね。椎茸菌を植え付けることは認知度が高いと思いますから、句意は無理なく伝わるのではないでしょうか。言うならば、視点が気になりました。菜の花を見て、山での行為ですから。里山の情景とすれば良いかな、と判断しました。
(1)こちらは、「菜の花」「入日」がつきすぎました。童謡にもありますし。もちろん、だからといって全ての場合がだめなわけではありませんが、投句は常套手段と思われ良さが伝わらないでしょう。

(1)白梅や漆喰の闇暖かし  うさぎ
(2)ペデキュアに足袋を重ねし雛の夜
(3)コーヒーの香(かほり)くゆりぬ木の芽雨
(4)はるうらら百年続きますように
(5)ただ其処に梅の花ある隠れ里
(6)萌ゆる芽に辿り着きたる仔馬かな

 はじめまして!ドクター朝倉。俳句歴1年、アメリカ在住、インターネットで独学中です。漢字と旧かな、難しいですね。 宜しくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそよろしくお願いいたします。漢字と旧かなを気にしておられるようですが、在米はお長くていらっしゃるのでしょうか。
(2)六句の中で秀逸です。ペデキュア、足袋、雛と抜群の情景です。もちろん、そこに情緒があり、ペデキュアにいやみない個性もあります。「重ねし」ですが、「履かせて」でもすっきりと仕上がり良いと思います。「夜」も限定しない方が意味深長になりすぎず良かもしれません。それに、夜は足袋を脱ぐものですから。すでに、ペデキュアと足袋で十二分に独創的ですから、あとはすっきりと仕上げることがコツですね。
(1)春の闇夜と白梅は、わりと常套、よくあるのです。
(3)「香くゆりぬ」の表現、賛否はあるでしょうが、木の芽雨にあっているでしょう。「香り」としますと「かおり、かをり」と読めますね。
(4)評価は微妙ですが、このような句も自分のオリジナルな一句として持っていても良いと考えています。
(5)少し、いいすぎ、情景描写しすぎているでしょうか。
(6)着眼が良いです。萌ゆる芽と足元おぼつかないであろう仔馬、似合っています。「に辿り着きたる」の表現に推敲の余地がありそうです。

(1)雀等の芝啄ばむやクロッカス  小口泰與(60代,男)
(2)うぐいすや竹林の影やはらかし
(3)春火鉢幼馴染に蕎麦打てり
(4)絶え間なく白波立つや百千鳥
(5)紅梅や常に身支度ととのへり
(6)青空に風高ぶるや枝垂れ梅

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)雀とクロッカスの取り合わせがとても良いです。どちらも小さいものでさりげなく、特徴ある可愛さが共通していますから。お互いに相乗効果を出して、句が豊かになっています。
(2)「竹林の影やはらかし」の表現、秀逸です。春らしい、それも鶯は早朝、春の早い時期から鳴き始めますから、その時候とぴったりです。
(3)句意、魅力的です。春火鉢が季語として強いので邪魔しそうです。
(4)少々あたりまえでしょうか。
(5)こちらは、紅梅と中七下五の取り合わせが意外なおもしろさを出しているでしょう。読者の好み、賛否はありそうですが、春浅い時期の一瞬の心情を詠まれた句で興味を覚えました。
(6)情景、平凡でしょう。


2008年4月10日

春風に男の気持ちわかるまい  栗太郎(60代,男)
 朝倉先生いつも丁寧なご指導をいただき感謝しております。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそでございます。
 良いです。一言だけ、〈春風や男の気持ちわかるまい〉でいかがでしょうか。「や」切れの強さなどが、句意にとても効果を出すことでしょうし、句にリズムもできますから。このようにスパッと言い切る、断定の表現の魅力、そして季語の選択が成功しました。

しばらくはいいだこ箸に挟みをり  涼(男)
 いつも診断ありがとう御座います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 良いですね。飯蛸が絶妙です。飯蛸の時期、その形容、料理としてのあり方、そして美味さと。飯蛸の持つすべてが、句の中で生きています。飯蛸でなければ、この句の情緒、しばらくという時間が持つニュアンスが出ませんでしたでしょう。

(1)風船逝く雨の夜空や青空や  娯魔如(60代,男)
(2)千年の未来(とき)はみゆるか山笑う
 ルビは無理がありますか?
(3)アナーキー?専制政治?目刺し喰ふ
 ?は必要ないという俳友の評も。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)私は、ルビを打つことにさぶさかではありませんが、「どうしても」という場合を基準にしています。投句は、「千年のとき」という表現にこだわっておられるようですね。「みらい」でも「とき」でも句意に大差はないように思えますので、選択は作者の好みということになるでしょう。一方で、「みゆる」の主語に迷いました。
(1)雨の夜空と青空、どちらにも風船は飛んでいってしまった、ということでしょうか。「逝く」の表記も伝わらなくははないですが、空も二つですし、少々読者がとまどいそうです。
(3)そうですね、<アナーキーと専制政治目刺し喰ふ>でも可能でしょう。発想、季語のおもしろさが魅力の句です。

(1)木枯らしや葉のなき木々の凛と立つ  どんぐり(男)
(2)月冴えてバラード響くイブの夜
(3)菜の花や川面がジャズを奏でおり

 12月から俳句をはじめました。冬の句もあわせてご指導をしていただければと思います。よろしくお願いいたしますね。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそです。少しでも楽しんで下さったらうれしく思います。三句拝見。どれも感動した情景を気持ちいっぱいに表現されていると感じました。作者の感動がよく伝わる反面、句材が多めで、読者が少ししんどそうです。
(1)中七が不要でしょう。「木枯らし」と「凛と立つ」で情景は十分伝わります。そして、残りの七音に情緒を詠まれてはいかがでしょうか。作者の感動、作者らしい言葉、表現で。
(2)こちらはイブの夜が蛇足でしょう。月の冴えた夜、バラードだけでその素敵さは感じさせることが可能ですから。またイブにすると別の意味も付随し、バラードの月夜が生きてこなくなります。それにしまして、「バラード」、良い句材ですね。
(3)拙句ですが、〈チャイコフスキー菜の花畑通るとき〉。数年前の句です。菜の花には音楽を感じますね。私の処方としましては、川面でなくとも良い気がいたしますが、どんぐりさんは川面が奏でることにこだわっておられるのでしょうか。それでしたら「奏でおり」を省かれると良いでしょう。「川面のジャズ」も可能です。感性豊かな三句でした。

(1)花曇朝のカフェオレ手付かずに  大川一馬(70才以上,男)
(2)春愁や朝のカフェオレ手付かずに
 どちらにすべきか迷っています。
(3)紫木蓮親子の背中遠ざかる
(4)花曇公園の灯の膨れ来て
(5)花冷えや短足犬とその衣装

 ご教示を。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)(2)ですが、(1)が良いでしょう。花曇とカフェオレ、良い雰囲気を感じます。手付かずであることに情緒もありますから。
(3)良いですね。白木蓮ではない紫木蓮らしさが出ているでしょう。白よりも少しだけ複雑な感情、微妙な感情を詠みこめる季語だと思いますから。
(4)納得はする句なのですが、特に新しさや感動がありませんでした。
(5)「その衣装」が残念です。花冷えと短足犬の取り合わせは楽しいですから。いっそダックスフンド、コーギー犬、などど固有名詞を試みるのも、楽しい挑戦でしょう。

(1)蝶の昼宮の裏には千年杉  茂(女)
(2)チューリップ方程式を解く羽目に
(3)擦れ違う袖のかさっと花の冷

 お花見シーズン到来と思いきや今日はエアコンのつけっ放しの一日でした。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)蝶と千年杉との取り合わせが成功しているでしょう。そして、具体的にお宮とされたことも良いです。情景が眼前に浮かび、蝶も千年杉も現実感が出ました。悠久の時と、夢かうつつか、といった情緒が十二分にあります。
(2)チューリップから中七下五への唐突な展開。私はおもしろく読みました。チューリップの持つ明るさを意識しての句だと思い、それは成功しているでしょう。少しだけ申しますと、山田弘子さんの句で私が大好きなものに〈チューリップ月にかたぶき眠る夜〉があります。そのチューリップが持つ微妙なニュアンスを私は最高のものとしたいのです。
(3)「かさっと」が残念です。句を平凡にしてしまいました。杉田久女の〈花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ〉を彷彿とさせる句ですが。


2008年4月9日

(1)春うれひ開演前の無の舞台  うき(女)
(2)風光れば光るほど差す偏頭痛
 よろしくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)春愁と開演前の舞台の取り合わせに妙を感じます。春愁を「春うれひ」とされたことも工夫が見られます。「の」の連続を、可能であれば他の表現にできたらよいかとは思いますが、開演前の一瞬の雰囲気を捉えた句で良いです。「無の舞台」という表現に賛否はあるかもしれません。
(2)発想が魅力的です。表現が整っていないようなので、〈風光る光るほど差す偏頭痛〉で良いと思います。

(1)彼岸会の黙す水向地蔵かな  けいこ(女)
(2)菜の花や湖面行き交うポンポン船
(3)卒業の写真は褪せずエリカ咲く
(4)春の街買うブラウスはさくら色

 よろしくおねがいします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)の情景、良いです。菜の花の景は多々見られますが、湖面を持ってこられたことで、湖岸に広がる広々と咲く菜の花が見えます。ポンポン船という句材も優れています。春の湖の長閑さを如実に表現できています。一点、「行き交う」がもったいないです。中七を「湖面二隻の」などとするのも一案です。情景により具体的な動きが出て、印象が強くなるでしょう。
(3)卒業写真と「エリカ咲く」は抜群の取り合わせです。こちらは「褪せず」がとてももったいないです。平凡な説明になってしまうからです。エリカの花の魅力を引き出すような中七を是非ご再考くださいませ。
(4)春と桜色のブラウス、つきすぎました。
(1)彼岸会のやさしい祈りの雰囲気は伝わってくるのですが、表現が説明すぎてはいないでしょうか。そうしますと、読者はその良い雰囲気も感じにくくなるのです。言い過ぎていると逆に伝わらないのが俳句です。

(1)鷹鳩に化すアンパンの餡の闇  北野元玄(60代,男)
 「鷹鳩と化す恐竜の歯の化石」のリベンジです。
(2)倉庚が鳴くトーストの焼き加減
 数日前の早朝、裏の庭でウグイスが鳴いていました。ちょうどトーストを焼こうとしていました。わざわざ倉庚などと難しい漢字を使う意味がないのかもわかりませんね。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)アンパンの餡の闇、独創的で良いと思います。季語との兼ね合いは読者の好みが分かれるところでしょうが、闇をごく日常の、それもかなり庶民的なアンパンにしたことが、句の魅力となっています。庶民的であっても美味ですし、厳しく辛い闇というよりも日常にある闇を感じさせ、それが読者の共感を得るのです。
(2)そうですね、二十四節気を勉強しますと気付いたりしますが。しかしながら、句意は良いです。トーストの焼き加減、鳥の訪れとよく合っているようです。さりげない日常の光景です。

(1)じんわりと日の沈みゆく春の海  しんい(女)
(2)長椅子へ珈琲運ぶ目借時
 (2)長椅子の人へ・・・の意で、省略にはなりませんか?愚問で申し訳有りませんが、宜しくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)情景はとても春の海らしく良いのですが、「じんわりと」が言い過ぎているでしょう。残念。
(2)もちろん、「長椅子の人へ」の意としてとれます。投句、良いでしょう。眠気覚ましとしてのコーヒーが、多少目借時とつきすぎではありますが、珈琲という漢字表記がそれを払拭しているようです。

(1)遊び心学び心の入学す  文の子(60代,男)
(2)春愁や土産のコイン古びたる
(3)着るものに悩める妻の彼岸かな
(4)繋ぐ手を振り払ひけり入学す
(5)春暁や桜島なほ闇の中

 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(3)(4)、読者の興味をひく句です。
(3)洋服(和服)に悩む妻と彼岸、その取り合わせに意味を感じさせます。どんな妻でどんなお彼岸なのだろう、そしてその一家は、などど。それが、また、どの家でもありえそうな状況でもあって。そんな句意が私たち読者の共感となるでしょう。
(4)闇の中の桜島にどんな心象を託しているのでしょうか。または、どんな気持ちでみているのでしょうか。春の暁、しかしながら、まだ闇の中の桜島。桜島そのものは火山灰はあるものの、鹿児島の明るさ雄大さの象徴でしょう。そんな桜島が闇の中。これからの明るさを思うのか、今の暗さを思うのか、その微妙さに、心の機微を感じました。
(1)川柳風に読んでしまいました。
(2)ちょっとつきすぎましたでしょうか。春愁と古びたコインですから。
(4)情景も気分も大変よく伝わるのですが、逆に伝わり過ぎて情緒がもの足りない気いたします。

木の空の中空にある余寒かな  涼(男)
  (木の空=磔柱)
 宜しくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 (木の空=磔柱)と記されており、私の鑑賞不足かもしれませんが句意に悩みました。〈磔柱の中空にある余寒かな〉ですと情景は見えてきますが。申し訳ありません。


2008年4月8日

(1)はんなりや京の女の京ことば  学(50代,男)
(2)春の夢ころり往生賜れり
(3)氷頭なます闇夜の星の降る音よ

 ご教示を。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)ちょっとあたりまえすぎましたでしょうか。
(2)おもしろい句ではあるのですが、「春の夢」と「賜れり」の読みに迷いました。夢で頂いたのでしょうか。それとも希望でしょうか。
(3)お恥ずかしながら、「氷頭なます」を先ほどしりました。知ったうえでしたら、中七下五とあわせて、良い句意、表現だと思います。

花馬酔木行くあてもなく真昼どき  豊田ささお(70才以上,男)
 木の芽雨と花馬酔木へのご診断有難うございました。いつも、目から鱗の想いです。・・・でも、私には何枚の鱗がかぶさっているのでしょう・・・。馬酔木の句の「白い月」を省いてみました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 コメント拝読、お恥ずかしいくらいもったいないお言葉です。
 「真昼どき」、大変良いです。花馬酔木と真昼の意外な展開が、非常に興味深く印象深い句となっています。もちろん、「行くあてもなく」という気分に、季語も時間設定も合っているからこそ、馬酔木と真昼の取り合わせが生きてきているのです。花盛んな春の昼間、そんな気持ちに誰しもなりえるのだ、と思わす強さもあります。

(1)春の雨青む息吹の畑かな  だい(60代,男)
(2)幼子のつかまり立ちや牡丹の芽
(3)学舎の梅の香源氏物語

 初めてです。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそお願いいたします。
 三句拝見したしまして、とても感性がよろしくていらっしゃると感じました。句へのきっかけ、俗に目の付け所といわれるものです。と同時に、表現の工夫に余地があるでしょう。
(1)春の畑のもつ青々しさ、そして恵みの雨のような春雨。その感受性は鋭いでしょう。ただ、この表現ですと、句材も言葉も多くて一句としてしんどいのです。単純に申しますと、意味の強い言葉を減らすことも推敲のひとつです。
(2)牡丹の目と立ち始めのこども、とてもよく合っているのですが、できれば、「や」切れを手始めに上五中七に工夫ができるでしょう。
(3)こちらも、良い句材がそろっていて良いですが、例えば〈梅が香や学舎(ガクシャ)の源氏物語>とすることもできます。

(1)春の夕山の向こうは大都会  茂(女)
(2)春昼や猫のすたすた勝手口
(3)若葉風遊歩道に椅子の無く
(4)瓜漬の琥珀の肌や和子作
(5)ブティックの前通り過ぎ新茶買う

 少し気の早い句ですが奈良漬を友から送られて作ってみました。宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(4)(5)が良いです。
(4)琥珀の肌、と見立てたことが成功です。下五で一転、「和子作」と固有名詞で具体的に示していることも、句の流れも良く、魅力的です。
(5)ブテイックと新茶の取り合わせが優れています。ブテイックも春に心躍るものであります。しかしながら、同じ心躍るものならば新茶を買うという心の清々しさを感じさせます。それがまた、あり得る話として実感が強いことも、読者をひきつけます。
(1)常套でしょうか。
(2)「猫のすたすた勝手口」がとてもおもしろいです。ただし表現に工夫できそうです。
(3)こちらも良いですね。遊歩道のちょっとした意外性を爽やかに表現されています。

(1)寒肥えを終えて背伸びや遠筑波  けんじ(70才以上,男)
(2)新たなる命幸あれ山笑う
(3)サクラサク待ちたる時の遥かかな

 診断ありがとうございました。梅一樹の句は紅梅と白梅が一本の梅に咲き分け、それが「思いのままに」という名の品種ということを教えられて、消化不十分ながら句にしてみました。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)「寒肥えを終えて背伸び」の気持ちはよく伝わります。ですが、遠筑波が合いすぎて逆に平凡な仕上がりになってはいないでしょうか。
(2)山笑うの季語によく合う句意です。人間は年中誕生するようになりましたが、元来生物は春が誕生の時でしたから。あらためて、生命の息吹の素晴らしさを気分良く感じさせる句です。
(3)「サクラサク」は電報と掛けているのでしょうか。それも楽しい工夫なのですが、投句、句意に迷いました。
*「思いのままに」、品種名でしたか。勉強不足で失礼いたしました。さまざまなことを知れることも俳句と触れ合う魅力です。

(1)歌ひながら共に降りたる雲雀かな  小口泰與(60代,男)
(2)たんぽぽや利根の川瀬の波白し
(3)たんぽぽやけふの廊下のこころよし
(4)又してもけぶる赤城や蝶の朝
(5)春燈や新刊置きし古机
(6)ぶらんこや長き裾野の赤城山

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(5)とても良いですね。春燈という季語、新刊というあたらしいもの、そして古い机。普通ならば、新刊と古机の取り合わせの狙いがいやみになるところですが、春燈という季語がそれを救っています。『春の艶冶な情感を灯に託したもの』(新版・俳句歳時記、雄山閣)とありますように、独得の情感を持つ季語に負けない中七下五であるでしょう。お見事です。
(6)ぶらんこと長き裾野の取り合わせが良いです。ぶらんこの持つ楽しさ、悠々さが、山の景とよく似合っています。
(1)(2)平凡な表現になっているでしょう。
(3)中七下五の句意に興味を惹かれますが、たんぽぽなので視点に迷いました。中庭の渡り廊下などとしますと無理はないのですが。
(4)句材が多く、少し散漫な句と感じました。


2008年4月7日

(1)行き先はたんぽぽいいえつくしんぼ  うき(50代,女)
(2)あかしろ黄開きすぎてもチューリップ
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)「たんぽぽいいえつくしんぼ」という表現を評価したいです。私は、俳句の魅力のひとつに、口語の表現があると思うのです。つまり喋りことばですね。もちろん、それをそのまま俳句にうつせばよい、というものではありませんが。投句、語調もよく気持ちも伝わってきます。ただ、上五が少々安易でしょうか。折角の中七下五ですから、推敲の余地がると思うのです。
(2)こちらも、表現の妙が魅力の句です。特に「開きすぎてもチューリップ」が良いです。奇をてらうのではなく、素直ですが印象強く的確な表現です。上五、どうでしょう。「赤白黄」で良い気がいたします。また、別の色も可能ですね。

(1)発信源あなたたおまえと春の風邪  吉井流水(60代,男)
 川柳ぽくなりましたでしょうか。
(2)卒業の席もそぞろの合否かな
 読み手にどう取られるかが気になりますが・・・
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)そうですね、ちょっと川柳風でしょうか。ただ、そこに皮肉や批判がないので、私は愉快な一句として評価したいです。春の風邪ですから、深刻ではなく、笑って許せそうな雰囲気もあります。(*中七「あなたとおまえ」と受け取りました。)
(2)現代の世相ですね。読み手にその句意は伝わると思いますが、表現がどうでしょう。「卒業の席もそぞろ」が特に気になりました。上五に「卒業式」を用い、ご再考されても良いかと思います。

(1)うららかやフアションショ-に家族連れ  さくら(女)
(2)伊自良湖のやはらかき波山笑ふ
 宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)残念。うららか、ファッションショー、家族連れ、と三つすべてつきすぎてしまいました。春らしい陽気は感じられるのですが。
(2)「やはらかき」と「山笑う」が並ぶと少々気にはなるのですが、「伊自良湖のやはらかき波」という表現に助けられているでしょう。固有名詞も効果的ですし、何より柔らかい波であるということが春らしい湖面を表現しています。逆にそれだけで、十分春らしいのです。なので、「山笑う」を並べることが余計かとも感じるのですが、湖も山も春なのだ、という強調した句としても読めますので許容ではあります。どちらにしましても、上五中七が良いです。

(1)囀りや一人遅れて登山道  えいこ(女)
(2)跪きすみれ1輪1人占め
 初めまして、昨日久しぶりに山歩きしましたら本当に気持ち良くて、思ったままを詠んで見ました。診断お願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそお願いいたします。
(1)良いです。「囀り」とても効果的に使われています。一人遅れてはいるが、囀りだけはいつも一緒である、囀りが私を励ましていてくれている、などど、心境風景が実によく伝わる句で、その情景も魅力的です。「や」切れも効いています。囀りの印象を強くし、語調も整いました。
(2)少々、表現が平凡でしょうか。「一輪一人占め」(この場合、漢数字表記をお勧めいたします。)は興味をひきますが、「跪き」がその魅力を抑えてしまっています。すみれらしい句意でよいと思いますので、是非ご再考下さいませ。

初蝶来追ひつ追はれつ消えにけり  山法師
ドクター朝倉の診断と処方箋
 少々平凡になってしまっているでしょうか。「消えにけり」も悪くなないのですが、句全体をみたとき、生きてこないようです。

(1)サンショウウオ産卵の空朧月  豊田ささお(70才以上,男)
 サンショウウオといっても、カスミサンショウウオです。雨模様の生ぬくい夜にゼリー状のコイル一対のなかに40〜80個の卵を産み付けます。
(2)花冷えや拝命笑止自治会長
 子ども会ジュニアのキャンプを終えて帰った所、なんと自治会長の役が待っていて、冗談じゃないですよと断ったけど結局引き受けて…後悔しきりです。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)良いですね。春らしい生命感のある句です。そして意外性もあり句の魅力となっています。「朧月」がありますから、「空」はなくとも大丈夫です。
(2)こちらは愉快な句です。少し川柳の感じを受けました。花冷えという季語がまずまず妥当に合っているでしょう。「拝命笑止」が句のおもしろさを出しています。


2008年4月6日

ふたりとも脛に傷持つつくつくし  北野元玄(60代,男)
 「脛に傷あり」の方が明るく聞こえるかもわかりませんね。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 おもしろくユニークな句で笑ってしまいました。〈つくづくし脛に傷持つふたりいて〉はいかがでしょうか。土筆を見るたびに思い出す魅力ある句です。(*土筆はつくづくしと表記されます。)

(1)げんげ田やむらさきの風あふれゐて  しんい(女)
(2)干し網の連なる浜や鳥帰る
(3)菜の花やゆるゆる廻る観覧車

 宜しくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)げんげ田とむらさきの風が良いですね。春のやさしさ、おおらかさも感じます。下五は推敲できますでしょう。少々安易な表現で残念です。
(2)こちらも春の景が大きく広がる句です。私は「や」切れの使用を、わりに厳しく考えますので、投句、<鳥帰る浜に干し網連なって>としてみたのですが、視点が違ってきますので、推敲の一案としてあげておきます。
(3)そうか、観覧車はゆるゆる廻るのか、と納得させられてしまう句です。読者の賛否はあるかもしれませんが、オリジナルな一句として評価したいです。季語も明るさがあり、特別ではない花であることが良いでしょう。

(1)真向かひに瀬戸の海原蕨積む  悠(70才以上,女)
(2)一本の早蕨にそっと触れてみる
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)瀬戸の海原と蕨の取り合わせが良いです。海と陸、そしてどちらも春を感じさせるに十分ですね。ただ一点、「真向かひに」を推敲の余地がありそうです。真向かいと言わずとも、海が眼前にあることは伝わるでしょう。景の大きな豊かな句です。
(2)「一本の早蕨」と限定されたことは良いですが、「そっと触れてみる」が残念です。説明におわっています。

(1)春爛漫中空の隙埋め尽くす  茂(女)
(2)上がり目の文楽人形花開く
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)良いですね。春が隙間なくこの世すべてを覆い尽くす、という景を独創的に表現されている点が優れています。あまたある、春の季語の中から、「春爛漫」を選ばれたことも大変効果的ですし、「中空の隙」も気分までがおおらかになるたっぷりとした言葉です。
(2)「上がり目の」という表現がすこし散文のようで、一句の語調のバランスが良くない感じも受けますが、文楽人形を句材として上手に読まれた句でしょう。季語も、「桜」を用いず、「花開く」としたところが、上五中七と合っているようです。

(1)春泥のこつてり靴の重きかな  うき(50代,女)
(2)背のにもつ楽器のかたち風光る
 俳句を始めて2年です。診断よろしくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)春泥の本意を大変よくつかまれていると感じます。ただ、「こってり」と「重き」が重なりますと言い過ぎているでしょう。どちらかを取捨選択されて、「かな」を使わないならば、「や」切れを用いることもできます。
(2)とても良いですね。多少語調のたどたどしさは感じますが。こちらも季語の本意をつかまれたうえで、独創的な発想と表現「背のにもつ楽器のかたち」であります。そして、さまざまに想像が膨らみ、気分の良い一句です。

(1)お屋敷の一樹に紅と白き梅  さくら(女)
 一本の梅の木に紅白の花が咲いていたのです。なんかわかりにくいですね。すみません。
(2)つぎつぎと庭に顔出す黄水仙
 急に暖かくなり水仙の花がつぎつぎと開き狭庭が賑やかになりました。朝倉ドクタ− 初めまして宜しく御願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 こちらこそお願いいたします。
(1)分かりにくいというよりも、散文調が気になりました。<紅と白一樹に咲きて屋敷庭>などを考えてみました。
(2)コメントの「賑やかに」という黄水仙の様子が良いです。その良さを句に致しましょう。例えば、朝倉風ではなりますが、<つぎつぎと喋り始める黄水仙>。黄水仙のイメージが生きてくるように思えたので。賑やかな花、主張のある花、そんな黄水仙で庭が明るく楽しくなった景を表現できると秀逸です。

(1)球春の梨田監督満面で  kikumi(60代,女)
(2)絵にもなるレンゲたんぽぽ地蔵サン
 宜しくお願いします。塩見先生の草野球応援に行きますが? 川柳ですね?
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)「レンゲたんぽぽ地蔵サン」という羅列が良いですね。表記の工夫も面白いでしょう。上五が少々安易さを感じますので、是非ご再考をお勧めいたします。
(1)上五は「球春や」と切れがある方が良いと感じます。下五の「で」も少し気にはなるのですが、梨田監督らしさを追及するならば「満面で」でしょうか。


2008年4月5日

(1)担任が恩師となる日の桜かな  遊雲(70才以上,男)
(2)春風と仲良しチップインバーディー
(3)お彼岸の長針が短針を抜く

 「コットンプリント」は「猫柳」には合わないかと思っ季語を「青き踏む」も試してみましたが余計なことでした。、一番だめかと思った句を一番にとってもらって、自分の選句力を反省しています。お彼岸も過ぎて今日はほんとにいい天気でした。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 選句力がどうではなく、自分自身の句への評価はなかなか正しくできないものです。そこで、句会があり他人の選があり、俳句のおもしろさがあるのです。句の意外な魅力を読者が引き出してくれるのです。
(3)と(2)が良いです。
(3)「お彼岸や長針の短針を抜く」ではいかがでしょうか。切れを用い、「が」をやめることによって、俳句の姿が整うと思うのです。あまりにも俳句らしくすることには賛成しないのですが、語調や助詞を整えることで、読者への印象、伝わり方がよくなりますから。
(2)楽しい一句です。楽しさを出す場合は、遠慮せずに思い切りその楽しさを出すこともコツのひとつでしょう。
(1)少し平凡になってしまいました。句意か表現、どちらかには工夫が必要でしょう。

(1)春うらら青竹ざるの京とうふ  学(50代,男)
(2)初花の一途の心ありにけり
(3)花の雨盛塩舐める牛のゐて
(4)山洞に鯨絵のある泉かな
(5)水晶の珠の摩れ合ふ胡蝶かな
(6)土筆出て摘みたりゐれば子も摘みて

 ご教示を。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)良いですね、青竹によって情緒が一段と増しました。
(2)一途の心と桜がつきすぎましたでしょうか。
(3)盛塩を舐める牛という句材が良いです。下五は「牛一頭」ではいかがでしょうか。牛の存在が眼前に迫る迫力がある方が良いと思いました。
(4)情景の読みに迷いました。
(5)水晶の珠と胡蝶、どちらも軽くない言葉で羅列はしんどそうです。
(6)情景が良いです。表現を少し工夫しますと、例えば〈土筆出て我摘む子も摘むみんな積む〉という言葉の使い方も可能です。

(1)彼岸の日貨物列車の通り過ぐ  ポリ(50代,女)
(2(クロッカス空全体を眺めてる
 アドバイスありがとうございます。今回もどうぞよろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)上五「春彼岸」ではいかがでしょうか。さりげない情感がとても良い句です。表現も優れています。
(2)発想、良いです。一方で中七に物足りなさがあります。是非ご推敲をお勧めいたします。

(1)亀鳴くや復刻刀剣に銘  はるを(60代,男)
(2)春燈や輪島塗なる祝ひ樽
(3)残雪の信濃路に買ふおろく櫛
(4)燕来る砲門今も海を向き

 ドクター朝倉さまの診断を指針にして俳句を勉強している昨今です。ご診断お願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 いえいえもったいないお言葉で、お力になれると良いのですが。
(1)難しい季語である「亀鳴く」を見事に取り合わせられています。「や」切れも効いています。古美術の刀剣ではなく、復刻という事実が句を現代風にし、句意も無理なく伝わります。字足らずとは思いますが、許容でしょう。
(2)輪島塗と「祝い」がつきすぎましたでしょう。
(3)こちらも、信濃とおろく櫛、定番でしょう。上五中七は良い情景です。
(4)中七下五がとても良いです。「今も」という言葉が、意味の上でも語調の上でもアクセントになっていて効果を出しています。季語ですが、「来る」ですと「向き」も動詞で重なりますので、「初燕」などどされることもお勧めの方法です。

(1)春の夢罪多くして逃げられず  涼(男)
(2)ひもすがらもの言はずして山笑ふ
 先日のご指摘の「一日をもの言はずして山笑ふ」を推敲してみました。宜しくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(2)古風な言葉が効果的になった思います。あまり狙いすぎるといやみになりますが、投句、中七下五と良いバランスでしょう。
(1)こちらも、涼さんには珍しく心境吐露の句とお見受けしました。夢、罪、逃げられない、と少し重い言葉が並びしんどい気が致しました。

(1)菜の花を墓前にテノール続きおり  茂(女)
(2)菜の花を供華に童謡歌いおり
 墓地で菜の花畑に〜の男性の歌声に吃驚して近くに寄りますと、墓前で何度も歌っておられました。亡くなられた方の愛唱歌か、兎に角始めての経験で是非句にしたく思いましたが、ご指導お願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)良い情景と感じます。その景をより印象深くするために、菜の花と墓前を切り、「菜の花や」や「菜の花畑」を使われてはいかがでしょうか。下五も「続きおり」でなくともかまわないでしょうから。
(2)こちらも「供華に」ではない表現が良いでしょう。句材としての(1)の「テノール」が良すぎて、「童謡」は平凡と感じてしまいます。


2008年4月4日

(1)物芽出づ気配小指のむず痒し  せいち(60代,男)
(2)春一番足裏熱き老いの恋
(3)また逢へる三つだけ摘む蕗の薹

 (3)は、前回の「蕗の薹三つだけ摘む蕗佳き日なり」の「佳き日」は、ご指摘の通り蛇足でした。改作しました。宜しくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(3)良いです。「また逢える」が、さまざまな場面を想像させます。しかし、どの想像も希望あるものでしょう。それが、中七下五から感じられ、多くの読者の共感を呼び、読みの揺れもありません。
(1)「小指のむず痒し」、おもしろく良いですね。「気配」が不要でしょう。
(2)「老いの恋」の持つニュアンス、読みが少し難しいでしょうか。

(1)水底の泥をうかせて残る鴨  えんや(70才以上,男)
(2)階段をつまづく猫や春の昼
(3)わが影に鴉の歩む春田かな

 「春の田にわが影ながく鴉翔つ」を推敲しました。
(4)嗚呼深き足裏の皺や山笑ふ
(5)木曽駒も絵島屋敷も花の中

 いつも懇切丁寧なるご診断、誠に有難う御座います。駄作ですが宜しくお願い申し上げます。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(3)良いです。自分の影に託す思いがよく伝わってきます。
(4)おもしろい句と感じました。それに、読者が「そうそう」と相槌をうつような句意とあいまって良いでしょう。上五は好みもあるでしょうが、句意と合っていてご愛嬌でしょう。
(2)こちらもおもしろさが長所の句です。春の昼の一風景、読者も共感し、そこに春らしいのどかな気分があります。
(1)(5)少し平凡でしょうか。

(1)外出はリバーシブルと決め彼岸  文の子(60代,男)
(2)鐘の音の六時告ぐるも彼岸なる
(3)磯遊びここ義貞の渉りし地

 お忙しい中を1句ずつご診断賜り心より御礼申しあげます。「対向車来て裏道のおぼろ月」はご指摘のように視線が気になっていました。兼題が「朧」だったものですから。また、「挙式後も別なる住まひ二輪草」の二輪草が狙いすぎとのこと、斡旋する季語の難しさが分かりました。掲句磯遊びを推敲しました。史実との取り合わせは如何でしょうか。宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(3)史実をその事実だけとして客観的に捉えられて表現することが、俳句の中では生きてくると思うのです。あまりにも作者の思い入れが表現されていると、読者は押し付けられてしんどくなってしまうからです。投句、良いと思います。義貞も同じように磯遊びをしたのではないか、と想像が膨らみます。
(1)発想がとても良いです。表現が散文のようですので少し工夫しまして、〈春彼岸ジャンパーいつもリバーシブル〉と。
(2)読者に伝える情緒が薄い気がいたしました。

(1)辛夷咲く手垢まみれのコンサイス  北野元玄(60代,男)
 あまり酷使したコンサイスも最後は原形を保つことができないほどになりました。その割りに英語は一向に・・。学年度の替わる緊張の時期ですね。
(2)野仏ののど仏から陽炎える
 言葉遊びのような句です。「陽炎う」と言うのは正しい用法ですか?
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)素晴らしい辞書ですね。コンサイスも本望な一句です。辛夷はとても良いですが、「手垢まみれ」をもう一歩工夫されると良いでしょう。
(2)「陽炎う(ふ)」ですが、俳句の場合、「陽炎いて(ひて)」などと同様動詞扱いが可能です。投句、発想が興味深い句です。


2008年4月3日

(1)バス停にトランク三つ風光る  穂波(女)
(2)夜の風はおって春のショールかな
(3)保育所の窓から歌がもんしろちょう
(4)梟の眼が埋れ木の亀裂から

 コメントありがとうございました。(1)から(3)は新しい句、(4)は去年ドクター小倉に見ていただいた「埋れ木にシマフクロウの姿かな」の推敲です。「発見がほしい」とのことでした。よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)とても気分の分かる情景なのですが、「風光る」が分かりすぎて、句が平凡になってしまっています。トランク三つがおもしろいだけに残念。
(2)夜の風を羽織るショールという発想が良いです。ただ、「はおって」、「かな」が、俳句として安易な表現と感じてしまいました。
(3)良いです。保育所から聞こえる歌と紋白蝶、とても春らしい明るさに満ちて、希望も感じられます。一点、「が」が気になります。「窓から歌歌」とも考えましたが、帯に短し、たすきに長し、という感ですね。
(4)〈埋もれ木に梟たちの○○○○○〉として、フクロウの目や縞の面白さを表現されてみてはいかがでしょうか。

(1)嬰(やや)の手に吊るし雛のぼぼ子揺れ  草子(60代,女)
(2)北窓の厨にフキノトウみっつ
 フキノトウは漢字を当てたいのですが変換不能でした。推敲しているうちに季節に追いていかれそうです。
(3)恋焦がれゐてチューリップ茎伸びる
(4)近道は馬酔木溢るる板の塀

 よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(3)が良いです。恋焦がれる気持ちとチューリップの茎が伸びるという描写がとても良い取り合わせでしょう。少し表現を整理して、〈恋焦がれチューリップ茎だけが伸び〉ではいかがでしょう。
(2)「北の厨」にあるフキノトウが良いです。こちらも表現を整理してみます。 〈蕗の薹みっつ厨の北窓に〉とできそうです。(*たしかにフキノトウ、変換は手書き入力などですね。)
(1)気持ちは分かるのですが、情景と表現が当たり前過ぎて残念です。
(4)近道が馬酔木の溢れる道であることは、魅力的な情景です。是非表現をご推敲下さいませ。「板の塀」も蛇足でしょう。

(1)列島をドライブ中です花便り  茂(女)
(2)せめぎ合い灯台に向け春北風
(3)買い物帳三つ葉芹記す空の青
(4)何時までも居残りそうな春満月
(5)春陽に赤の煙突豪華船

 今朝の満月は何時までも見守ってくれそうな暖かな優しい月でした。その後豪華船もお日様に向かってやってきました。久し振りに嬉しい朝でした。宜しくお願い致します。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 断然(4)が良いです。春満月の抒情がとてもよく感じられます。「居残る」という少し古めで、やさしい語感の言葉が効果的に働いています。
(3)こちらは、買い物メモに三つ葉芹という季語を記す行為が良いです。空の青さを、もう少し自然に詠む方が良いと判断しますので、〈買い物張三つ葉芹記し空青し〉ではいかがでしょうか。
(1)気分はとても伝わってきて良いのですが、春のドライブの常套でしょう。
(2)「せめぎ合い」と直接述べるよりも、他の言葉で表現するほうが良いでしょう。
(5)当たり前の表現になってしまっています。

(1)長閑なり鴨川の土手犬走る  岬(60代,女)
(2)雪解けの川に中州の小さくて
 バスの乗換えでふと橋の上から鴨川を見ました時の情景です。
(3)陶狸表情つけて山笑う
(4)陶狸顔さまざまに山笑う

 優しいご指導と添削有難う御座います。先日信楽に行き、狸の顔をよく見たところ、いろいろの表情をしているのに気がつきました。狸村に流れるワルツも中々のものでした。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)長閑なり、が言い過ぎているでしょう。
(2)良いです。中州の小ささに注目されたことが優れているでしょう。そこに春先の情緒を感じます。ただ、「の」「に」「の」「て」と助詞が多いのが難点です。
(3)「表情つけて」と「山笑う」がつきすぎました。
(4)こちらは良いでしょう。楽しい句となりました。<山笑う顔さまざまに陶狸>も可能です。

(1)湖心より白波立ちし揚雲雀  小口泰與(60代,男)
(2)陽炎や湖に沈みし鄙の宿
(3)里山の馬の歩みや風光る
(4)青空に紙ひこうきや岡すみれ
(5)雉鳴くや雑木林の木々の色
(6)春炬燵捨てかねてゐる花瓶かな

 よろしくご指導願います。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)良いですね。湖を湖心とされたことが成功の要因でしょう。中七で切れていることも、揚雲雀への視点が高くなり効果的です。
(3)こちらも良いです。里山、馬の歩み、風光る、とバランスの良く句材が並んでいます。春らしいのどかさがうまく表現されています。
(4)紙飛行機とすみれの取り合わせが良いですが、青空が蛇足ではないでしょうか。
(6)「捨てかねてゐる花瓶かな」がとても良いです。そして、季節はもちろん春。しかしながら、「春炬燵」がいただけません。花瓶に家具(炬燵)では句が散漫になってしまいます。是非、その捨てかねる気持ちがより伝わる季語を期待いたします。
(2)何かの比喩か、現実か読みに迷いがでました。
(5)少々平凡でしょう。

(1)春の雪タンバリンの中にも降る  汽白(40代,男)
(2)気になるあいつ鉢植のヒヤシンス
 こんばんは。よろしくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)独創的な表現が大変良いと思います。絶妙な春の雪とタンバリンの情景でしょう。そこに、春の雪らしい情緒がさりげなくもしっかりと伝わってきます。
(2)朝倉の個人的な意見かもしれませんが、鉢植えよりも水栽培ではだめでしょうか。「気になるあいつ」からヒヤシンスへと、こちらは句材の転換の妙です。俳句としての魅力も感じました。


2008年4月2日

気持ちにも変化をみたり水温む  手鞠(60代,女)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 水温む時節の情緒であることはよく理解できるのですが、抽象的で読者に伝わりにくいのではないでしょうか。どんな変化なのか、具体的に述べてみると魅力が増す可能性があります。

(1)色鉛筆削りて春の山描く  悠(70才以上,女)
(2)体育館落成まじか初音聞く
(3)オープンの星野記念館春うらら

ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)が良いです。春山ならではの色使いが、色鉛筆を削る様子から十二分に伝わってきます。感情の言葉で表現するのではなく、行為(動作)の言葉から感情、そして情緒が表現されていて、俳句の妙です。また<色鉛筆削りて描く春の山>も可能ですね。
(2)情景はとても良いのですが、表現が少々安易でしょうか。特に中七を工夫されると良いでしょう。
(3)星野さんと春うららは似合いますね。

春雷や鼻緒の先は吉か凶  岡野直樹(40代,男)
 ご指導ありがとうございます。先の句を推敲してみました。よろしくお願いします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 春雷が効果的に働きました。良いですね。「鼻緒の先の吉と凶」ともできます。鼻緒ならではの表現もこの句の魅力です。

永き日や五指に馴染みしモンブラン  涼(男)
 宜しくおねがい致し」ます。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 私はペリカンが好きですが、やはり万年筆の王様はモンブランでしょう。永き日とモンブランの取り合わせは、自然でかつロマンを感じるのですが、中七があまりにも分かりすぎて平凡になってはいないでしょうか。


2008年4月1日

春の昼シャツ真っ白の男伊達  茂(女)
ドクター朝倉の診断と処方箋
 拙句ですが、〈薫風や風は何色シャツは白〉を思い出しました。比べるわけでは全くありませんが、春昼もまた、白シャツに似合うのだ、と実感いたしました。俳句の魅力ですね。同じ句材がさまざまな場で生きてくるのですから。男伊達もおもしろく感じました。昨今の、男性向けファッション誌なども連想しますし。

(1)菜の花を掻き分けてくる一輌車  しんい(女)
(2)犬ふぐりペダル漕ぎゐる線路みち
 宜しくお願いいたします。
ドクター朝倉の診断と処方箋
(1)良いですね。菜の花列車の風情です。ままある光景ではありますが、一輌車に助けられました。
(2)「ペダル思い切り」などはいかがでしょうか。春真っ盛りの元気さを表現する言葉を欲しく思いました。犬ふぐりと自転車が良いですね。

三階の病室の窓閉じて春  遅足(60代,男)
 春が動きますか?秋や冬では寂しいから春かな?早春や、晩春はあるでしょうか?
ドクター朝倉の診断と処方箋
 「窓閉じて春」が優れています。そこに、寂しさと期待の両方がない交ぜになっているからです。窓を閉めた人物の複雑な思い、葛藤が伝わってきました。投句のように微妙な、一筋縄ではいかない感情を句に表現する、伝えることも俳句の魅力のひとつです。また、「閉じて春」という言い切りの表現も、句の情緒を増幅させています。三階という具体的な描写も的確です。もしかすると、〈三階の病室の窓閉めて春>がベターかも。

(1)公園のちびっこぴょこぴょこ風光る  栗太郎(60代,男)
(2)父のいて母もいたあの春彼岸
 朝倉先生こんにちは。いつもご指導いただき感謝しております。説明的になる癖、早く直したいと思っております。
ドクター朝倉の診断と処方箋
 とても意欲的なコメントありがとうございます。
(1)「ちびっこぴょこぴょこ」に音のおもしろさがあり、風光る光景に愉快さ、軽快さが加わっています。せっかくですから、「公園の」のご推敲をお勧めいたします。悪くはないのですが、中七下五がとても良いので。
(2)「春彼岸」、思いは十二分に伝わるのですが、付き過ぎましたでしょう。その思いを連想させる程度の季語が適当かと思われます。特に家族が登場している句は、控えめな感情表現がコツです。作者は思っている以上に表現してしまいがちですから。