俳句クリニック 2008年5月後半分(ドクター:中谷仁美)

「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。


ドクター中谷の診断
2008年5月31日

春の宵フラ舞う友の若やぎて  郁子(60代)
 いつも有難うございます。どうぞよろしくおねがいします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
 私もフラダンスの発表会を見にいったことがあります。衣装が鮮やかで見ていて元気が出ました。この場合、「春の宵」と「舞」の取り合わせに引っかかります。ちょっとしっとり和風すぎないかと思うのです。フラダンスの持つ陽気な面を生かすためにはもう少し活発なイメージ、夏の季語がいいかと思います。そうすることで、「若やぎて」とまでいわなくても若い様子が表現できそうです。そこに表情やしぐさをもってくるといいかと思います。

真東に進む旅客機大西日  れい(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 きっぱりとわかりやすい情景ですね。ただ、ここは西と東ではっきり対比させるよりも、「北北東」「東北東」などちょっと細かくした方が面白そうです。さらにいえば、「北北東へ」と方向を示せば、「進む」はなくてもいいと思います。語順を変えるなども視野に入れてぜひご検討ください。

夏浅し大木の陰静まれり  由利子(70才以上)
 いつも有難うございます。ご講評楽しみにしております。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
 一読して、気持ちよさそう!と思いました。青葉が目に浮かんできます。ただ、大木の周りのことだけで句が終わってしまうのはもったいないので、結句の「静まれり」をちがうものに転換させてはいかがでしょうか。人の動作やそこに落ちているもの(なるべく季節に関係ないもの)などを焦点化するといいかと思います。

(1)竹林の宿に憩へる夏炉かな  匡(女)
(2)青蛙を驚かせたる宿の下駄
(3)菖蒲田の水濁らせて昨夜(よべ)の雨
(4)青蛙草生ふ中に見失ひ

 文法が今ひとつで、「座五」終止形か連用形か迷いましたが宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)「憩へる夏炉」だと、夏炉が憩うようになると思います。もちろん意味はわかりますが、しっくりこないかなと思います。ここは「夏炉に憩う」とすんなり読めるように工夫してみてください。
(2)発想はいいと思うのですが、説明になってしまっている印象があります。「驚く」を別の表現にしたらいいと思います。また、この句の場合、下駄の音が蛙を驚かせたという情報が大事なので、「宿の」という情報はなくてもいいのではないかと思います。
(3)激しい雨だったということなのですが、(2)同様に説明的であることが気になります。「濁らせて」がポイントかと思います。
(4)この場合は、「見失ひ」とされて正解だと思います。終止形だと「失ふ」なりますのでその前の「生ふ」と音が似てしまい、単調になります。音声化したときの雰囲気も大事ですね。

だからそれ、「ゴッホのよう」が妥協なの  北野元玄(60代,男)
 自己弁護とも他者の批評とも・・。ちょっとわけが分からなくなりましたね。あと、初夏の集いでお会いしましょう。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。この句はちょっと句の輪郭がなさすぎて言いたいことがわからなくなりすぎてしまっています。発想が飛びすぎると読者に手がかりがなくなるので、そこは気をつけたいところかと思います。

(1)カルガリーの裾野にホテル百夜かな  茂(女)
 夜9時ごろになっても雄大な牧場に馬がいる光景は忘れられないのですがロッキーとすると少しオーバーかなと思いカルガリーにしました。宜しくお願いします。
(2)つばくらめ雨を光らせ雨を切る
 今朝の雨の中をせわしくツバメが行き交いましたが雨では付き過ぎで風のほうが良いでしょうか?
(3)三叉路に夏に傾く石碑かな
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1) 「百夜」はきっと「白夜」ですね。カルガリーにした方が具体的でいいと思います。「裾野にホテル」というところが説明になってしまっているので、白夜の茂さんの感動をここは詠んで欲しいと思います。ぜひ雄大な牧場を!
(2)風が光る、風を切るというのはありきたりなので、風よりも雨のほうがいいと思います。素敵な句です。
(3)「に」の連続によって句の意味があいまいになってしまっていると思います。ご検討ください。

(1)風に添い風に乱れし柿若葉  れい(70才以上)
(2)朝靄の中の一人や夏木立
(3)葉桜や猫に送られかえる道
(4)身の内の棘哀しかり薔薇1輪

 いつも有難うございます。「哀しかり」が観念的かとおもい、「いかにせん」にしようかと迷いましたが・・・よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)柿若葉の様子そのものを描写しているので、ここは比喩や擬人などの工夫をすることで句に深みが出ると思います。
(2)「一人」とつったっている「夏木立」のイメージがうまく重なりますね。
(3)猫に送られという発想、いいなといました。すんなり受け取ることができる句だなと思います。
(4)れいさんの意見に賛成です。「いかにせん」の方が、身の内のとげに対する戸惑いがぼんやりと表れて読み手の想像が膨らむと思います。

(1)店の端よしずのかげの米袋  由利子(70才以上,女)
(2)五月雨や古きズボンの皮ベルト
(3)地に画く細かき葉陰夏きざす
(4)初夏やブラウスのボタン失いぬ

 はじめまして、どうぞよろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。よろしくお願いいたします。
(1)常連さんの来る商店街のお店のイメージです。「よしず」とあれば、米袋の位置のイメージははわかりますので、「端」という説明は不要だと思います。店の名前を具体的にしてみても味があるかもしれませんね。
(2これは、ベルトに思い切り焦点を当てて、直接皮ベルトが古いとした方がはっきりしていいような気がします。
(3)いい雰囲気なのですが、葉陰が夏というのはありきたりになってしまうので、結句の季語を、「夏」そのものの季語から離した方がいいと思います。
(4)おもしろいモチーフですね。ただ、リズム(字余り)と「失いぬ」という終わり方にかたいイメージがあります。語順を変えるまたは結句の表現を変えるとよくなりそうです。ご検討ください。


2008年5月30日

対岸に手を振りかえす子どもの日  ちえこ(50代,女)
 はじめまして。よろしくお願いします。子どもの日からはだいぶ経ってしまいましたが・・・。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。どのような状況なのか、場面の手がかりが少ないので、読者にとっては作品に参加しにくいかなと思います。誰がいるのか、などもう少し見えるといいかなと思います。

レース編む横に源氏の一ページ  あさ女(60代,女)
 「春の夜に光る源氏の一ページ」で季語を替えてみましたが、先生ますます難しく なりました。宜しくお願いいたします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。前回と比べて、レースというのは源氏の世界からつかずはなれずといった感じがしますので、いいと思います。他のことをしつつも読みたい源氏物語といった感じが出ています。

(1)角部屋の窓をたがへて見る新樹  更紗(女)
(2)夏空や鳥の声追ふ双眼鏡
(3)きっぱりと鳥鳴く雨後や青嵐

 こんにちは。(1)の場合「若葉」か「新樹」で迷いましたがいかがでしょうか?(2)「双眼鏡」は6文字なので5文字の「遠眼鏡」とも思いましたが「双眼鏡」の方が夏空の広さが出る感じでしたので。よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)この場合は、新樹の方が景色として存在感があるのでいいと思います。
(2)確かに双眼鏡の方が語感が合っていると思います。リズムを考えると「双眼鏡」が中7に上手くこないかと色々試行錯誤してみたのですが、なかなか難しいですね。この場合は結句でも許容範囲かなとも思いますが。
(3)「雨後」「青嵐」どちらも気候に関わる言葉なので、この場合は「青嵐」をもう少し離した季語にしたほうがいいと思います。「きっぱりと」と「青嵐」も少々近い気がします。

(1)本音みな読まれてをりぬ水中花  せいち(60代,男)
(2)水中花秘密めくこと美しき
(3)水中花身の上話などよさう
(4)ドライフラワーと夜は語り合ふ水中花

 欲張って4句もですが、よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
(1)水中花の華やかさと本音(=秘密)というのはよく合いますね。なにわよくわからないままに、しかし季語と句の雰囲気が合っている。このような詠みかたもいいと思います。
(2)この場合、「秘密」「美しき」というのがどちらとも直接的すぎる気がします。表現にひと工夫ほしいところです。
(3)これも、この場にいる人たち(きっと2人)がなんとなく秘められた、制約のある関係であると水中花も暗示している気がしていいと思います。
(4)「ドライフラワー」と「水中花」は組み合わせとしてつきすぎである気がします。

(1)蟻の列アラビヤ文字を記すかに  文の子(60代,男)
(2)十姉妹葬(はぶ)るじゅうやく咲く庭に
(3)じゅうやくや百寿祝ひし祖母のこと

 宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)面白い発想ですね。欲を言えば、「記すかに」といわなくても「アラビア文字で○○○○○」として、具体的な言葉を言うまどするとさらに楽しさが増しそうです。
(2)「葬る」という言い方で、なんとなく不思議な世界に来たような木になります。
(3)「祖母のこと」と終わると、祖母のことがどうしたんだろうと想像を膨らませたいのですが、手がかりが少ないのが惜しいような気がします。

(1)春の月花盗人の影写す  郁子(60代,女)
(2)花びらに風を抱きて牡丹咲く
(3)光る君たどる千年春の夢
(4)満開のバラに重たき小糠雨

 はじめまして。どうぞよろしくご指導下さいますように。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。よろしくお願いいたします。
(1)「春の月」「花盗人」は、春の感じが出すぎてしまって、花鳥風月の色が出すぎてしまいます。花ではないものを盗んでみてはいかがでしょう。
(2)きれいな句ですね。牡丹の雰囲気がよく出ていてロマンチックです。
(3)「光る君」「千年」「春の夢」では、まとまりすぎかと思います。どこか少しはずした方がいいと思います。
(4)「満開」「重たき」というのはどちらも直接的すぎるかと思います。表現をひと工夫してみてください。

(1)武蔵野の台地一面昇り藤  小口泰與(60代,男)
(2)躑躅咲く雨意に鳴き声牧の牛
(3)水郷に船逍遥のあやめかな

 よろしくご指導願います。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)スケールが大きい句ですね。「武蔵野の台地」という言い方で、十分広いイメージがもてるので、ここは「一面」という直接表現は避けた方がいいかと思います。
(2)一句の中に盛りだくさんでちょっと窮屈だなという印象があります。「咲く」「雨意」というのが説明的かと思います。
(3)「水郷」という語は「船逍遥」「あやめ」があるので言いすぎになるかもしれません。ご検討ください。


2008年5月29日

(1)春蝉に大見得切るや登山口  草子(60代,女)
(2)幾重にも曲がり下りて朴の花
(3)雨上がりテッセン開く羽化のごと
(4)嬰の手に載せてやりたや櫻の実

 説明句にならないよう気を付けたつもりなのですが、如何でしょうか?又カタカナにするか漢字にするか悩みました。ご診断お願いいたします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)これはユーモアと元気があっていい句だと思います。「大見得」がいいですね。
(2)五七が抽象的な説明になっていると思います。曲がり方を比喩で表すなど、より具体的に、その道のかたちが映像が眼に浮かぶといいと思います。
(3)漢字やひらがな表記が可能な植物をわざとカタカナ表記にする時は、なんとなくですがなるべく無機的なものとして扱うときであると思います。この場合は、句の話題の中心が鉄線花ですから、カタカナは避けた方がいいと思います。
(4)桜の実ってかわいいですよね。私の職場の校庭にもこの時期落ちています。かわいい句ですね。

(1)心地よき水音聞ゆ町薄暑  千鶴子(60代,女)
(2)夏きざすサンダルの足白く組み
(3) 薫風に長き髪ゆれ少女過ぐ

 はじめまして。よろしくおねがいします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。よろしくお願いします。
(1)「心地よき水音」。この水音はもっと生き生きと具体的に表現できそうです。
(2)爽やかな感じですね。ただ、「夏きざすサンダル」というのが説明的かと思います。ここはサンダルと少し離れた季語を持ってきたほうがいいと思います。
(3)「薫風」「長き髪」「少女」、この3つがあるとありきたりの発想になってしまうので、どれかひとつ意外性のあるものを持ってきて欲しいと思います。

(1)ぼくだけのおかあちゃんだねソーダ水  きなこ(50代,男)
(2)夏帽子かぶる深さに艶めけり
 暑くなりましたね。よろしくご診断下さい。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)今日は独り占めできたのかな。小さい子どもの気持ちってきっとこうですね。
(2)「艶めく」というのは直接的な表現ですので、よほど計画的に使わないと上手くいかないと思います。この場合、夏帽子と艶めくという取り合わせは、どこかにありそうだと思ってしまいます。かぶり方への着目はよい展開が期待できそうです。ご検討ください。

(1)紫陽花の濡れて彩増す旅の宿  丸山俊郎(50代,男)
(2)万華鏡四葩の花の咲き乱れ
(3)彩りは気分しだいと七変化

 「あじさい」を詠みました。よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 紫陽花の季節ですね。じつは「よひら」は私の好きな季語です。
(1)旅先での素敵な発見ですね。「旅の宿」という終わり方、いいと思います。ただ、「濡れて彩増す」は少々説明的かと思います。表現にひと工夫を。
(2)「万華鏡」と「咲き乱れ」のイメージが近すぎると思います。「万華鏡」だけで丸山さんの言いたいことは伝わりそうです。
(3)「七変化」という呼び方の説明になってしまっている気がします。花を詠むのに「彩り」と言ってしまうともったいない気がします。

わが貌の父に似てくる木瓜の花  春(60代,男)
 「やちぶきの谷」ではありがとうございました。父が亡くなってから半年、先日は叔父(父の弟)も亡くなって・・、そのとき住職から、「お父さんにそっくりだね」といわれ、なんとなく面映い気持ちでした。思わず、「その節はお世話になります」。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。顔が親御さんに似ていると詠むとき、ただ「貌」というのではなく具体的に顔のどこがもしくはこんな表情が、と言った方が、句に個性が出ると思います。ぜひ句になりそうな似ているポイントをご検討ください。

(1)芍薬の甘き香りに迎えられ  悠(70才以上,女)
(2)水田に逆さ合掌田植え待つ
(3)水田に合掌造り田植え待つ

 何時もありがとうございます。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)「甘き香り」というところが直接的すぎるので、ひと工夫必要かとおもいます。
(2)(3)水田が田植えを待つというのは、ありきたりすぎかと思います。(2)の逆さ合掌の方が言葉に味があっていいと思うのですが、ここはぜひ、普通の水田から想像もつかないようなものを待ってみて欲しいと思います。

(1)著莪咲くや空ひかりだす竹とんぼ  更紗(女)
(2)菓子折の仕切り格子の薄暑かな
(3)身を解くシャドウボクシング新緑に

 5/19の診断有難うございました。「大空に飛ぶ竹とんぼ著莪の花」「菓子折を碁盤に仕切る薄暑かな」「新緑に身を解くシャドウボクシング」を推敲してみました。(2)は「菓子折を仕切る格子の薄暑かな」ともしてみましたが違いが?(3)の原句は 「身を解く(とく)」としたのですが、推敲句の上五に置く場合は「身を解く(ほどく)」と詠む方がリズムも良いようにも思えます。中七が8文字になりますが良いのでしょうか?また下五に季語「新緑に」を置く感じ方が理解できず、すみませんがもう少しお教え頂けたらと思います。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)竹とんぼに「空ひかりだす」という感覚、とてもいいと思います。
(2)「仕切り格子」の方がなんだかやわらかい印象です。違いを細かく説明するのは難しいのですが、更紗さんはきっとこれが一番いいと思ってえらばれたのですよね?私もこれに賛成です。「菓子折りを仕切る格子」とすると、「を」「仕切る」の2つで文章的になっているためやや理屈っぽいのかなと感じます。
(3)前回、「新緑に」か「新緑や」どちらがいいかとご質問いただいたとき、「私はこの句の場合「新緑に」と後に続くほうがいいと思いました」とお答えいたしました。もしかしたら、後というのを下5にととられましたでしょうか。「や」と切れるより、「に」と中7に続く方がいいという意味であとに続く、と書かせていただいたので、先日の句でいいと思っています。


2008年5月28日

(1)樟落葉折れ口ほのと匂ひたつ  文の子(60代,男)
 「樟の秋古葉の折れ口匂ひたつ」、5/16にご教示頂いた季語にしました。
(2)年金に医療保険ぞ草むしる
 5/21にご評価頂いた「草抜き」来月の兼題なのですが、別の句会に「草毟り」があり、掲句を作って見ました。草抜きとの違いを掲句のうように解したのですが、如何でしょうか。
(3)児も「たきゃいたきゃい」とはしゃぎ樫若葉
 5/21のご診断有難うございました。樫若葉「たかいたかい」を悦ぶ児の句を2通りに推敲しました。孫も小学2年生になり当時とは仕草も変わっていまいましたので、思い出しながらが掲句です。
(4)樫若葉「たかいたかい」が重くなり
 現在を詠みました。樫の古葉の心境です。
(5)麦の秋黄なるクレヨン一本の
 「クレヨンの一本あれば麦の秋」を推敲しました。宜しくお願い致します。
(6)晩鐘やしばし垂れたる鯉幟
 「三井の鐘ひととき垂れる鯉幟」の方が晩春に戻った感じが出て良いのかなと思ったりもしています。
ドクター中谷の診断と処方箋
 文の子さん、こんにちは。
(1)匂いを加えられたのですね。推敲前よりもソフトな句になった気がします。
(2)なんともいえないいらいら感が出ていますね。ただ、「年金」「医療保険」並ぶとわかりやすすぎる気もします。
(3)「たきゃいたきゃい」、幼い子が喜ぶ様子が眼に浮かびますね。この語があれば「はしゃぎ」はなくても十分伝わると思います。
(4)確かに重くなるのですが、ここで「重くなり」と結んでしまうとそのまますぎかと思います。
(5)すみません、前回の麦秋シリーズで私が他の句と続けて読んでしまって、正しく読めていませんでした。今回読んで、あらためて素敵な句だと気づきました。麦の秋の美しい風景をそのまま詠まれたのですね。誤診でした。「クレヨンの一本あれば麦の秋」のままでいいと思います。
(6)そうですね。私も文の子さんのご意見に賛成で、晩鐘よりも「三井の鐘」の方がいい気がします。鯉幟が鐘を聴いてひと休みしていると考えるとちょっと楽しいな、なんて読んでみました。

(1)小太郎の黒目大きく五月果つ  茂(女)
 小太郎は猫です。
(2)結論を一気に吐いて緋ぼうたん
 宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)俳句だけを読むと、小太郎は必ず猫というわけではなく、子どもととるか、恋人ととるか、他のペットととるか、それは読者に委ねられますね。猫と限定されたいのであれば、猫であることを匂わす必要がありますが、私はこのままがいいなと思います。愛らしい眼と気候のよいこの季節。元気が出る一句です。
(2)「非ぼうたん」を選ばれたところに、大人の女性という雰囲気が漂います。結論がどういうものか言わなくても、読者に色々想像されてくれる句です。

目薬の小瓶水色若葉時  慈英(50代,男)
 ご指導宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
 若葉時じゃなくてもきっと水色なのでしょうけれど、わざわざ取り合わせてみると特別な思いがしていいですね。色彩がさわやかでいいと思います。

(1)紫陽花や一人来てみる喫茶店  豊田ささお(70才以上,男)
 中谷ドクター今晩は、6月句会の兼題が「紫陽花」ですが、なかなかおもいつかなくて・・・・だめですねえ。
(2)紫陽花や君は何色でも良いよ
 通学合宿・・話せば長い物語ですが、今は各公民館でばらばらに日数だけは、6泊7日で、実施しています。以前は風光明媚な場所一箇所に選抜で良質の合宿をめざしたのですが・・・。いまは「広く浅く」です。これで、人材が育つとは思えませんが・・折り紙飛行機ですか、子どもには人気でした・・。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。6泊7日もあるなんて、子どもの立場では楽しそうですが、きっと色々気を使われるだろうなと思います。折り紙飛行機大成功だったのですね。ぜひ句にしてください。
(1)喫茶店、というよりも飲んでいるものを詠んではいかがですか?コーヒーだと、自宅でも飲めますが、エスプレッソ、カプチーノ、アイスティーなどを言えば、喫茶店といわなくても家以外だとわかると思います。
(2)こういう感じの句、私は好きです。紫陽花にも君(友人か恋人でしょうか)にもかかる「色」ですね。想像がふくらみます。

(1)はつ夏や玻璃戸にかかる雨の音  更紗(女)
(2)飛行船のゆるりとよぎる新樹かな
 こんにちは。(1)平凡でしょうか?(2)「飛行船の」は上六ですが、この句の場合「の」の省略はできないように思えるのですが。よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)句の内容が雨音のことのみに終わってしまってしまっているのでもったいない気がします。
(2)よぎるものといえばこの句の中では「飛行船」しかないので、この「の」は省略可能かと思います。新樹をよぎるというのはありきたりかと思うので、ほかにいい季語がないか探してみてください。中七が「ゆるりとよぎる」と短文調なので体言止で終わった方がしまりがいい気がします。

夏霞ジェットコースター先見えず  岡野 直樹(40代,男)
 あまりイメージがまとまりきらなかったのですが、よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
 「霞」ときて、「先が見えない」というのはちょっとつきすぎかと思います。ジェットコースターという題材はおもしろいと思うのでぜひもう少しひねってみてください。確かに先が見えないって怖さ3割増ですよね。

(1)またおでん嫌なら食うなと婆の声  藤尾(50代,男)
(2)空に浮く銀の貝殻十三夜
(3)子規逝くや不平も言はず月明に

 (1)は川柳になるんですか?(2)(3)は盗作になるんですか?俳句のさまざまなルールがよくわかりません。宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
(1)想像してちょっと笑ってしまいました。きっと「いや、おでんでいい」と弱気な言葉が続くのでしょう。なんだかんだで仲の良い様子が伝わります。私は俳句と考えていいと思います。これはかぎ括弧に入れて、「またおでん」「嫌なら食うな」婆の声 としてもいいかもしれませんね。
(2)(3)盗作かどうかということですが、意識して発想を借りること、似せることと、作ったものが思いがけず似ていたこととは違いますね。 俳句は自分の発想を作品に生かすわけですから、盗作かどうかなんて気にしないで済むように、自分だけの視点、自分だけの言葉で作るべきかと思います。十三夜や子規の死、藤尾さん独自の切り口で詠んでみてください。

緑陰や妻の朗読する「こころ」  遅足(60代,男)
 妻の句を、もう一つ作ってみました。句として成り立っているでしょうか?診断をお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 緑陰シリーズ、いいですね。句としてちゃんと成り立っています。ただ、実景かもしれませんが、奥様が「こころ」を朗読というは小説の内容から考えて意味が出すぎる気がします。違う本でもいいのではないでしょうか。詩人でもいいかもしれません。

銀ブラの夜のワインに夏帽子  あさ女(60代,女)
 若い時の帽子で詠んでみました。ますます俳句が解らなくなりました。すいません。
ドクター中谷の診断と処方箋
 先日の夏帽の句と比較しますと、とても魅力的な帽子になりました。銀ブラ、実は一度だけしたことがあるのですが、どきどきしました。さらにかっこよくしようと思うと、銀ブラの夜の情景と考えて助詞を少し変えてもいいかと思います。「銀ブラの夜にワインと夏帽子」など。また、助詞を省いてワインの色を加えることも考えられます。いかがでしょう。

(1)若葉寒艪音軋ませ渡し舟  匡(女)
(2)遠花火心奥の闇ゆらしけり
 宜しくお願い致します。名前を「しんい」から「匡」に変更致しました。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)映画か何かの一場面のような句です。「艪音軋ませ渡し舟」だと、艪音と船だけで場面が終わってしまうので、せっかくですしもう少し世界を広げたらいいのではないかと思います。「艪音」に対して「軋む」はいらないかもしれません。
(2) 花火をきっかけに思い出す悲しい記憶や悩みでしょうか。「遠花火」ってこういう気持ちを引き出す季語ですね。「心奥の闇ゆらしけり」ですが、表現がかたい気がします。たとえば単純ですが「心の奥の闇ゆらす」ともできます。ひと工夫しててください。


2008年5月27日

(1)コンビニで買い物、そして、花は葉に  北野元玄(60代,男)
(2)そんでェー、幽霊噺で蚊に食われ
 句読点入りの俳句や方言を使った俳句に挑戦中ですが、なかなかうまくいきません。(2)は関東の方言、そんでぇーを使ってみました。俳句本体の中身は両句ともにたいしたものではありません。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。色々チャレンジされているのですね。
(1)句読点が入った句、私自身も数句しかありません。よほど意図的に区切りたい、または語を並列的に扱いたいという時でなければ難しいと思います。この句では「そして」とあれば必要ない気がします。
(2)方言は句のアクセントにもなりますし、まったくわからないものは独りよがりになってしまいますが、その点だけ気をつければおもしろい句ができそうです。この場合、初句の字足らずを解消してください。「そんでェーと」などでしょうか。

(1)師匠はや岩と成り居る茂り中  きなこ(50代,男)
(2)しやがの花テンカラ師匠百歩さき
 渓流釣りに行ってきました。よろしくご診断下さい。
ドクター中谷の診断と処方箋
(1)師匠というのが誰なのか、なにの師匠なのかがよくわからないので、読みにくいかなと思います。
(2)の句を読めば分かるのですが、一句で独立してほしいところです。
(2)句がぷつぷつ切れてしまっている印象があります。この句の場合は「師匠は」としたほうがいいかもしれませんね。

(1)冷やっこい山風吹きし麦の秋  小口泰與(60代,男)
(2)木道の続きし空や青蛙
(3)黄牡丹や自転車降りし異邦人
(4)利根川の濁り初めるや竹落葉
(5)利根川の流れ荒ぶる夏の蝶
(6)雨粒をふんはり包む鉄線花

 よろしくご指導願います。
ドクター中谷の診断と処方箋
(1)「冷やっこい山風」いいと思います。ここでは「吹きし」は必要ないと思います。
(2)「木道の続きし空」感じはいいのですが、意味に無理がありそうです。「木道は空まで続く」などではいかがでしょうか。
(3)自転車を降りないで走っている様子の方が面白いのではないかと思いました。
(4)と(5)は利根川ですね。どちらも季語を上手く使って川の描写と結びつけておられる思います。ただ、(5)「流れ荒ぶる」は違う言い方ができそうです。
(6)いい雰囲気ので句ですね。今回の中ではこの句が一番いいと思いました。

薔薇咲いて抜け道更に狭くせり  角力(30代,男)
 はじめまして、ふと浮かんだ句です。診断をお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは、角力さん。素敵な抜け道ですね。
 ただ、説明的なのが気になります。「薔薇の咲く抜け道」と言ってしまったほうがすんなりいくのではないでしょうか。「狭い」というのも、たとえばそこを通る際のしぐさを言うなどで表現できるかと思います。ご検討ください。

合掌の襟首浮かぶ雪明り  丸山俊郎(50代,男)
 「雪明り襟首浮かぶ棺前」の推敲です。私自身も詠みながら怖かったです。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは、丸山さん。推敲されて、もちろん怖くなくなりました。そして、合掌という一語でこうも変わるのだなと思っています。静かで清らかさが加わってとてもよくなったと思います。

小満やお大師さんのおやつ何  kikumi(60代,女)
 はじめまして、宜しくお願いします。何しろ、思いつくままで、今日の良き日、お 大師さん、四天王寺参拝、釣り鐘饅頭食べたいと、思うのです。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。私も先日お土産に釣鐘饅頭もらって食べました!
 この場合、「おやつ何」とするよりも、そのおやつを勝手に決めてしまったほうがいいと思うのです。「お大師さんはチョコが好き」とか「お大師さんはきなこもち」のように、具体的な名前を出した方が面白いと思います。すみません、字数の関係でチョコときなこもちがとっさに思いつきましたが、どうそご検討ください。

青とかげディープブルーの尾を残し  涼
 宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。青・ディープブルーと、色が二回出てくる必要はないと思います。「ディープブルーの尾」というのは印象的なフレーズですから、上五の青をとってみてください。

(1)青年の腕に点滴驟雨かな  茂(女)
 点滴と雨は付き過ぎでしょうか?
(2)内股の泥鰌掬いや飛行機雲
(3)麦の秋神話の里にクーペかな
(4)一礼の仁王門入り白牡丹

 クーペが気になりこのような句になりました。
ドクター中谷の診断と処方箋
(1)そうですね。点滴と雨はつきすぎかと思います。また、自分以外の人の腕に点滴がされている様子を見る機会って限られてくるので、意味が出すぎてしまう気がします。もしや四川の地震の映像かなと思ったりもしたのですが、この場合は「傷あと」など一般的なものの方がいいかと思います。
(2)「飛行機雲」字余りが残念です。泥鰌救いと雲との取り合わせはなんだかのどかでいいと思うのでリズムを整えてみてください。
(3)この場合、「クーペかな」では弱い気がします。色を付け加えるなどの工夫が考えられます。「神話の里の○クーペ」みたいな感じでしょうか。
(4)白牡丹鮮やかでいい情景だと思います。


2008年5月26日

(1)新緑や風呼ぶ雨後の石畳  更紗(女)
(2)風涼し四季を型どる京干菓子
(3)若葉風引き入れ朝の厨事
(4)風青し身を引き締めてハイヒール

 こんにちは。それぞれ季語が的確でしょうか?季語を生かすのに苦慮していますがなかなか難しいです。添削あるいは添削のヒントを頂けたら幸甚です。よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)「新緑」「風」「雨後」、自然の情景が3つ続くとちょっとさわやかすぎる気がします。この場合の季語は、少し自然そのものから離した方がいいと思います。
(2)四季をかたどるよりも、何か初夏のものをかたどっている干菓子そのものをクローズアップして詠んだ方がいいと思います。
(3)日常の感覚が出ていていいと思います。
(4)「風青し」と「ハイヒール」は颯爽としていて合っていると思います。ただ、「身を引き締めて」が言い過ぎかと思いますのでここは言い過ぎずにさらっといってください。あまりいい例ではないかもしれませんが私でしたら「風青し今日はこそっとハイヒール」ぐらいの軽さでいくかと思います。

(1)水たまのカルピスすこしだけ泣いた?  汽白(40代,男)
(2)新緑の列車がちょうどゆきました
 こんにちは。よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)クリニックではあまり出会わない雰囲気の句です。これぞ青春!って感じですね。
(2)こういう世界、つくってしまうと勝ちな気もするのですが、「新緑の列車」というのちょっとありきたりかなと思いました。

(1)鯉幟垂れり寄添ふ親子連れ  文の子(60代,男)
(2)渓流をならびて遡上鯉のぼり
(3)颪呑みほす一面の鯉幟

 宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)「垂れり」「寄添ふ」動詞が続くと句が説明的になります。また「親子」とあれば「連れ」はなくてもいいと思います。垂れて元気のない鯉幟を親子で見ている。十七音の中でこの情景に何かプラスできる気がします。
(2)五七が情景の説明になってしまっているかと思います。
(3)「颪呑みほす」表現もいいですし、豪快な感じがよく出ていておもしろいと思います。

さみだれの注ぐ棚田の田植えかな  どんぐり(男)
 棚田の美しい季節ですね。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。「さみだれの注ぐ」という表現きれいですね。ただ、「田植え」も季語になりますので、季重ねです。結句は、田から視線を転換した方が句に広がりが出ます。

薄暑光青き果実の中に入り  涼
 いつも適切な診断有難うございます。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
 初夏、気候のいいこの季節の生命感やわくわくする気持ちが伝わる一句です。「中に入り」ですが、「中までも」など、少しぼやかした終わりでもいいかと思います。

(1)金婚の旅の仕度や更衣  えんや(70才以上,男)
(2)そこかしこ旅の朝餉の冷奴
(3)夏つばめ群れなす宿の十二階

 五日間の金婚の旅でした。宜しくお願い申し上げます。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)旅の支度と更衣はイメージとして近すぎるかと思います。雰囲気の離れた季語を。
(2)たしかにどこでも冷奴ってでますね。「そこかしこ」が生真面目っぽくておもしろいかとおもいます。
(3)「群れなす」が説明的かと思います。「十二階」とあるので数字を出すのは避けた方がいいと思いますが、かしましく鳴いている様子や、並んでとまっている様子など、群れを間接的に表現した方がいいと思います。

(1)研修のネクタイ斜め青嵐  ポリ(50代,女)
(2)ギロギロの眼をした徹夜明けの夏
 アドバイスありがとうございます。拙い句ですが今回もどうぞよろしくお願いいた します。
ドクター中谷の診断と処方箋
(1)新社会人の初々しいネクタイといった感じですね。いいとおもいます。
(2)「ギロギロの眼」とあれば「徹夜明け」というのは説明的かと思います。朝方、早朝にギロギロの眼といえば、徹夜したんだなという推測が可能ですね。

短夜や任運騰騰えにしなる  山本葆博(70才以上,男)
 毎毎お手数で申し訳ありません。宜しくお願い申し上げます。古希過ぎてようやく近頃、任運たるを諾うと言うか、諦めざるを得ぬという心境です。それを漢詩もどきに迷吟して曰く。。。日日新たなる日輪を拝し、鳥雲を朋と為して知足たり、今晨優游両忘の艸庵、騰騰任運天真に任す。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。山本さん、今回は俳句も漢詩調ですね。私も学生時代、国文科でしたので大漢和辞典やらなにやらとさんざんにらめっこをしながら漢文・漢詩を解読した思い出があります。この句では「任運騰騰」非常にインパクトのある言葉ですね。ここに「えにし」と続くと句全体が抽象的なので、結句に何か具体的な動作やこの短夜の状況を知る手がかりが欲しいかと思います。日常との接点を持った方が読みやすいと思います。

浮き沈み知らぬがごとく蓮の花  雅(50代,男)
 朝の散歩で、公園の池に蓮の花が咲いていました。そこだけがしんとしていて、平穏で浮き沈みのない世界に思えました。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
 イメージも鮮明ですし、雅さんの意図もばっちり伝わる句だと思います。ただ、「ごとく」と言わずに、実際「蓮の花」は浮き沈みを知らないのだと言い切ってしまった方が、より浮き沈みのある世界との対比が出るかと思います。

(1)川原に沸る温泉のあり端居かな  小口泰與(60代,男)
(2)青蔦や長き裾野を靄が匐ふ
(3)心太言はずもの事口を衝き

 よろしくご指導お願い申し上げます。
ドクター中谷の診断と処方箋
(1)旅先でしょうか。上の五七がやや説明的です。川原の温泉と言ってしまってもいいのではないかと思いました。
(2)青蔦との取り合わせはいいと思いますが、後の七五が短文的で情景の説明になってしまっているかと思います。どこかで助詞を省くことで、かたさがとれると思います。
(3)心太のイメージを上手く利用されていると思います。


2008年5月25日

(1)ふりかへる狐のこゑにエビネ花  あさ女(60代,女)
(2)山道にエビネが咲いてほしければあげるよ
 声が聞こえビックリしました。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)通常でしたら「エビネ花狐のこゑにふりかへる」ですね。そのまま語順を変えた際に気になるのが、あさ女さんの句の中七の「に」です。ここに「に」がくると、狐の声とエビネ花がつながってしまって意味がわかにくくなります。ここはひと工夫必要かと思います。
(2)それはびっくりです、この句、わざわざ字余りになっていて、「山道に/エビネが咲いて/」までは順調に来ていることで最後の言葉にいんぱくとが出ておもしろいと思います。表記の問題なのですが、ほしければあげるよはかぎかっこにいれた方がいいと思います。

(1)雨蛙峠越えれば雨の国  豊田ささお(70才以上,男)
 雨蛙で一句です。取り合わせを考えることが出来ませんでした。
(2)青蛙住めばみやこぞ畦の底
 蛙でもう一句お願いします。シュレーゲルアオガエルの白い泡のような卵嚢が見つかりました。彼らは水辺の土の中に居て鳴き声だけが聞こえているのです。よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。ささおさん、蛙に夢中ですね。私も実は蛙が案外好きでして、(といってもキャラクターとしてですが)今も足元に蛙の小さいマットを置いています。蛙のいる情景というのはどうしても限定されてきてしまうのですが、そのままを詠んでしまうとせっかくの蛙の存在が生かされない気がします。
(1)この場合、「峠越えても」かもしれませんね。しかし「雨蛙」と「雨の国」はやはりつきすぎかと思います。まったく違う国がいいですね。ファンタジー的にまとめてもいいかもしれません。風、波、音など、雨以外で探してみてください。
(2)これも蛙と畦はありきたりかと思います。せっかくですし、卵について詠んでみてはいかがですか。

(1)薫風やこの月に生れそして逝き  草子(60代,女)
(2)夏立ちぬ棺の底の登山靴
(3)雲の峰山支度なる永久の旅
(4)遺影にはスローなジャズを椎若葉

 始めまして。立夏の日に大切な友を亡くしました。ジャズが好きで山が好きな彼らしい葬儀でした。供養の気持ちで詠みましたが、独りよがりではいけないと思いますので、ご診断をお願いいたします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。よろしくお願いいたします。添削させていただきます。
(1)初句の「薫風や」なのですが、「や」と入れるとはっきり切れすぎてしまい「この月」とのつながりに少し違和感があるような気がします。ここは「薫る風」としたほうが、この句の流れるような雰囲気に合っているのではないかと思います。いかがでしょうか。
(2)この句、「夏立ちぬ」「棺」というところのあわせ方が上手いと思います。今回の4句の中でこの句がいちばん好きです。
(3)「なる」というつなぎ方にすると意味がとりにくくなるのではないかと思います。「山支度なり永久の旅」という言い方も考えられるかと思います。
(4)故人の好きだったものをさりげなく句に添えることでその方を大事に思う気持ちが伝わりますね。

(1)逃げ水に孫手を伸ばすハイウェイ  丸山俊郎(50代,男)
(2)竿沈む一瞬の合わせに上りチヌ
 なかなか釣れません。よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
(1)確かに手を伸ばしたくなりますよね。「逃げ水」うまく使っておられます。かわいい句です。ただ、どうもリズム感が気になります。
(2)釣りがお好きなのですね。この句ちょっと説明的かなと思います。
(1)春の雲街にイマジン流るゝ日  学(50代,男)
(2)夜に鳴く蝉もありけり原爆忌
(3)失敗のどこ吹く風の鯰かな
(4)こうのとり舞ひ降り来たり田植へ歌
(5)白服の駅より押し出さるゝ朝

 ご教示を。
ドクター中谷の診断と処方箋
(1)あたたかい雰囲気の句ですね。春の雲というのが、七五とつかずはなれずでいいと思います。
(2)「蝉」と「原爆忌」の共存が、どちらも季語なのでどうなのだろうと思うところはあるのですが、「夜に鳴く蝉も」というところ、上手いと思います。
(3)「の」が続くことで流れるような句になっているのですが、この句の場合そのゆるいかんじが「鯰」に合っていていいですね。
(4)「コウノトリ」と「田植え歌」が近いので、ひと工夫必要でしょう。「舞い降り来たり」がありきたりなのでもったいないと思います。ここにインパクトを持たせたほうがいいと思います。
(5)場面は分かりますが、このままだと学さんの思いが伝わってこない気がします。字足らずが気になります。

(1)神域を出でて御輿も大はしゃぎ  岡野 直樹(40代,男)
(2)タンポポや子育て終えて丸坊主
 「綿毛飛ばしたんぽぽ並べるはげ頭」の推敲です。
(3)御輿担ぐこの子どこの子娘婿
 「御輿担ぐたまたま帰る娘婿」の推敲です。よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
(1)表現が説明的になっているかと思います。「神域を出でて」がかたいので、ひと工夫必要かと思います。
(2)タンポポに「子育て」という発想いいですね。
(3)遊び心のあるとってもいい句になりました。祭りのにぎわいの中、来るものは拒まないおおらかな雰囲気があります。ぶっきらぼうですが愛があります。なんやかんやとかわいがられている娘婿さんといった感じです。

(1)白川の水面に揺るる夏柳  岬(60代,女)
(2)ゆったりと流るる疎水夏落ち葉
 同じ川でも白川の流れは速く川の隅に花菖蒲が一株咲きよく流されないと感心致しました。 疎水の流れはゆったりしていました。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。学生時代、伏見の疎水沿いの道を自転車で走っていました。懐かしく思います。
(1)白川と柳というのがつきすぎかなと思います。ここは花菖蒲のエピソードを句にされたらいかがですか?
(2)いい雰囲気ですね。「ゆったりと流るる」、これは直接「ゆったり」と言ってしまわないほうがいいと思います。ゆったりのイメージを持つ言葉を持ってきてはいかがですか。

(1)夕蛍友の遺作の小さかづき  しんい(女)
(2)友病めり鏡の奥の紅牡丹
 「白牡丹」か「紅牡丹」に迷いましたが、宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)「夕蛍」と「友の遺作」。イメージとして近すぎる気もするのですが、この場合、最後が「小さかづき」でおさまるのでいいかなと思います。しっとりとした大人の句ですね。
(2)赤か白か迷って赤にされたのですね。うーん。私も迷うところです。でも、やっぱりしんいさんと同じ紅かなと思います。牡丹は華やかさがありますが、病に対しては紅の方が元気が出ますね。


2008年5月24日

(1)衣替へ爪の鋭きチワワかな  小口泰與(60代,男)
(2)渓流に銀輪光り夕立かな
(3)魚止めの岩魚舞ひをる夕まずめ

 中谷先生、毎回ご親切なご指導感謝申し上げます。今後ともよろしくご指導願います。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。こちらこそ、よろしくお願いいたします。
(1)チワワちゃんですね。衣替えをしていたらじゃれてきたのでしょうか。なんとなくドラマのあるいい取り合わせだと思います。
(2)きれいな光景ですが、「渓流」「銀輪」「夕立」、きれいにまとまりすぎの印象です。少しはずした語を持ってきたほうが想像力が湧く気がします。変えるとしたら、中七でしょうか。
(3)これも(2)と同じで、情景を上手く詠まれているのですが、句の広がりという点で少し物足りなさを感じます。

(1)似合うかな鏡の中の夏帽子  悠(70才以上,女)
(2)子つばめの一羽残りて日暮れけり
 四羽のうち一羽が飛び立てず残りました。 淋しそうです。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)モチーフはたいへん共感がもてていいと思うのですが、「似合うかな」といってしまうと読者に分かりすぎてしまいます。この場合、鏡の中の表情やしぐさを言うことで「似合うかな」という気持ちを表現して欲しいところです。
(2)情景が思い浮かびました。うーんかわいそう。明日は飛びたてますように。日常の出来事をうまくきりとって俳句にされていますね。

(1)女子プロの涙の優勝ほととぎす  えんや(70才以上,男)
(2)金婚の旅の函館走り梅雨
(3)金婚の伊香保の宿も冷奴

 20日の句評、誠に有難う御座いました。金婚の旅に函館の夜景を期待して行きましたが、当日は最高温度が10度で午後より雨となり残念ながら夜景を見ることが出来ませんでした。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。函館うらやましいです。夜景は次回のお楽しみですね。
(1)「の」が2つ続くことで、説明的になっています。「優勝の涙」とあたまに持ってくるなど、語順を変えることでリズムが出そうです。
(2)句のどこで切れるかによって句の表情は大きくかわると思います。「の」というのは便利な助詞なのですが、この句の場合、(1)と同様に「の」が続くことがあまり良くないようです。「金婚の旅」で一度切ったほうが句に締りがでると思います。ご検討ください。
(3)この句の場合は、結句の「冷奴」で句の流れを上手く変えられているのでいいと思います。「も」がいいですね。

(1)己が影をサーフボードにあめんぼう  文の子(60代,男)
 「あめんぼう四肢もて己が影ふみぬ」の別バージョンとして考えていたものです。
(2)あめんぼう二つを手とし水に立つ
 「あめんぼう四肢もて己が影ふみぬ」は6本足なので、「四肢もて」としたのですが、「影ふみぬがあれば、四肢もてはなくてもいい」というご指摘を想定しておりました。掲句は如何でしょうか。
(3)馬みずをのみ水馬みずを踏む
 5/19のご診断有難うございました。つくりすぎの「馬つちを踏み水馬みずを踏む」を推敲しました。宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)「影をサーフボード」という見方、とても新鮮で楽しいと思います。爽快な句ですね。
(2)理屈先行の句になってしまっていると思います。
(3)水を中心にされたのですね。「馬」と「水馬」の対比が分かりやすすぎるのでその点で評価がわかれると思います。私は、水馬としないで「あめんぼ」といったほうがいいと思います。

揺れる房むかし懐かし藤の花  どんぐり(男)
ドクター中谷の診断と処方箋
 「揺れる房」というのは「藤の花」の説明としてよくあるので、表現にひと工夫ほしいところです。この句の大事なところは「むかし懐かし」というところかと思います。この部分をもっと具体的に語ってください、ぜひ。

蜂迷う硝子戸の向こう旭町  翡翠(30代,女)
 先日、職場に蜜蜂が入って来ました。ガラスの自動ドアに体当たりをくり返すものの、出られずに大騒ぎ。刺されないように捕まえてやっと逃がしました。「蜂迷う硝子戸の先旭町」とも考えたのですが、どうでしょうか?よろしくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。こんなこと、よくありますよね。私の教室にも時々小さい蜂が入ってきてものすごいパニックになることがあります。先に挙げられているほうがいいと思います。「硝子戸」ですが、「ガラス(硝子)」とされても意味が通じると思うので、ズムを合わせるためにはそのほうがいいのではないかと思います。

(1)吸葛対のステッキ化粧坂  大川一馬(70才以上,男)
 ご指導有難うございます。「吸葛対のステッキ寺社巡る」の下5を鎌倉の「化粧坂(けわいざか)」にかえてみました。
(2)豆飯のお仏供の湯気や子の寝覚め
 「たかんなの入りしお佛供(ぶく)や香華院」を筍から豆に変更、香華院も自宅にかえてみました。
(3)麦秋や一瞬のうちなえ地獄
(4)麦秋やノルマンデイの地平線

 結局、(3)は「麦秋やB29が夢砕き」(戦争)から災害(四川省)へ、(4)は「麦秋や晩鐘遠きノルマンデイ」(ミレー)から1944年6月6日の上陸作戦へ思いを切り替えました。少しは改善されたかなと思っているのですが?
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。先日の句をご推敲されたのですね。
(1)化粧坂とはいったことで具体性が出てよくなりました。また、ステッキで坂という元気っぷりがプラスされていいと思います。
(2)これもお仏供そのものから、湯気、子の寝覚めと持っていかれたことで広がりが出て成功していると思います。
(4)かっこいい句になりました。結句の「地平線」というのがいいと思います。
(3)については、上手く読み取れなかったのですが、「なえ」とは「なゐ」のことでしょうか?読み違えていたらすみません。

夏帽にかへて似合わぬ黒い肌  あさ女(60代,女)
 中谷先生。(勝手に変えて詠んでください)その方が勉強になります。お願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。今回の句なのですが、似合わぬ黒い肌というのはちょっと寂しいなあと思います。ここは発想を変えて夏帽子が活きるような句にしてみてください。

(1)紅は母 黄色は父の 愛のばら  浅葉洋(70才以上,男)
(2)芍薬は ひたすら咲けり 憂き世にも
 中谷先生初めまして。 宜しくお願い致します。薔薇の大輪が咲いています。また芍薬が八重一重とも見事に咲きだしました。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。初めまして。
(1)色に例えるというのはいいですね。ただ、ここでは「愛の」といわなくても十分愛情は伝わると思います。言い過ぎないことも読者が作品を想像して読みためには必要かと思います。
(2)結句の「憂き世にも」という表現がストレートすぎるので、ここは憂き世の指す具体的な内容にするなどの工夫が必要かと思います。ぜひご検討ください。

(1)さへづりやパレットに足す黄と緑  せいち(60代,男)
(2)水芭蕉遠く水音聞きながら
(3)泉湧くその一点に目目目目目

 丁寧な診断ありがとうございます。前回の「・・・・・泉引く」の句「たうたうと泉引き入る山田かな」にしましたがこれは平凡か?よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)黄色と緑色の羽の鳥なのか、またはその鳥のいる森の風景を書くと決めたのか。色々な想像が湧く句です。
(2)この場合、「水芭蕉」とあるので「水音」というのはつきすぎかと思います。
(3)「目目目目目」という直接的であり間接的でもある表現の効果大です。インパクトの勝利です。


2008年5月23日

(1)千羽鶴捧ぐ儀式の薄暑かな  吉井流水(60代,男)
 広島では修学旅行生が脱帽して詩歌を歌い朗読して千羽鶴を捧げる儀式を粛々と進めていましたが、「の」が気になります。
(2)夏帽子今朝は妻のが上にあり
 前日、帰宅した順番に帽子は置かれてあるのですが・・・読み取ってもらえる表現になっているでしょうか。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)「の」が気になるのでしたら、「捧ぐ儀式の」を「捧げる儀式」とすればどうでしょうか。
(2)吉井さんの意図、ばっちり伝わりますよ。細やかな視点、仲良し夫婦なのだなと思います。素敵な句です。

(1)直線に眉引く女将夏至の夕  茂(女)
 一直線の眉の引き方に何か理由があるのか不思議でしたので。一が入ると字余りになりますね。よろしくお願い致します。
(2)ベルボーイ蕨知らぬと天仰ぐ
 宿泊ホテルでベルボーイの人にこのあたりで蕨取れますか?と尋ねましたら蕨〜と絶句の挙句とうとう、分かりませんが他の者に聞きますと電話してくれ、ホテルの直ぐ傍でたくさん取れました。その時の句です。お願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)なぜなのでしょうね。ちょっとお会いしてみたい気がします。「直線」で十分かと思います。また、「夏至」という区切りとなる季語を選ばれたのもいいと思います。
(2)「天仰ぐ」というのがよくある表現かと思います。短文的になるのを避けるには、「蕨知らぬベルボーイいて・・・・」などの倒置も可能です。

(1)葉桜の枝にびっしりみくじかな  岬(60代,女)
(2)葉桜の下で昼餉の園児達
 先日京都の円山公園に行き そこでもう花の季節は終わり新緑の季節へと季節の移り変わりを感じました。人でも多く楽しげな感じでした。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。円山公園の桜、学生時代以来見に行っていません。今年ももう葉桜なのですね。
(1)この場合、「びっしりみくじかな」というよりもたとえば大吉を見つけた、中吉をみつけたなど、おみくじを具体的に述べることでおみくじという道具が活きます。
(2)のんびりおいしそうですね。この句でも、園児のお弁当のおかずの中身などを句に入れれば、「昼餉」と言わなくても楽しそうなお弁当タイムが伝わると思います。より具体的な小道具が、読者の読みを引き出す俳句をつくると思います。

(1)芍薬や久闊叙せし夜の別れ  更紗(女)
(2)はつ夏の奈良や客間の納曽利面
(3)初夏や奈良に見る月偲ぶ月

 中谷先生、毎回分かりやすくご教示下さり有難うございました。(1)は「久闊叙せし」か「久闊叙する」で迷いましたが、語り終えた夜という事で過去の「叙せし」にしましたが?(3)「月」が秋の季語ですが、奈良の歴史を偲ぶ意味で「偲ぶ月」にしました。また「初夏」と「はつ夏」と「はつなつ」の使い分けは何でしょうか? 良く分かりません。よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)私も更紗さんのご意見に賛成です。やわらかい感じを受けますね。
(2)客間にあったらちょっとびっくりかもしれません。インパクトのある語をうまく使えると句がおもしろくなります。
(3)このままでは偲ぶものの幅が広すぎると思います。奈良の歴史という具体的なイメージを伝えるためには、もっとそれを匂わせる必要があると思います。ありきたりかもしれませんが、月の影が歴史にちなんだ何かに見えるなど。「奈良」を、歴史的な呼び方や地名に変えるのもひとつの方法かと思います。「初夏」「はつ夏」「はつなつ」の使い分け、表記の問題ですが、私の場合、実はほぼ直感です(笑)。やわらかい、かわいいイメージを受け取ってもらいたければひらがなを選びますから「はつなつ」ですし、さわやかなイメージ、あまり季語に重点を置かないでさらっと行きたければ「初夏」を選びます。逆にアクセントをおきたい時、少しかたい句の時は「はつ夏」を選びます。色々書き換えてみると、それぞれの表記の持つイメージが見えてくると思いますよ。

せせらぎのちかくにありて蕨餅  豊田ささお(70才以上,男)
 せせらぎと蕨餅近すぎるようですか・・蕨餅が春の季語というのに参りました。
ドクター中谷の診断と処方箋
 そうですね、ささおさんがおっしゃるように、せせらぎと蕨餅はつきすぎかと思います。取り合わせにひと工夫が必要ですね。季語って、今の私達の生活を考えると時々あれっと思うことがありますよね。

(1)母一人残して送り火消えにけり  丸山俊郎(50代,男)
(2)祇園茶屋小豆コロリと口の中
 「ぜんざいの小豆コロリと口の中」の推敲です。
(3)朝切の鉄砲ユリをドンと生ける
(4)にぎりめしほうばって夏の山に立つ

 よろしくお願いします。スカットしたい気分で。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)切ない句です。いい雰囲気なのですが、欲を言えば、「送り火」「消え」「残して」、否定的なイメージの語が並ぶので「母一人残して」を、「母一人○○にいて」とか、「母一人○○○」(居場所やしていること)などとして、少しここはぼやかした表現にしたほうがいいと思います。
(2)推敲されて句の世界がぐっと広がりました。「祇園茶屋」いいチョイスだと思います。
(3)「鉄砲ユリ」と「ドン」大胆な感じです。結句の字余りが解消されるとスカッと感が増すと思います。
(4)スカッとした句ですね。ただ、これだと短文的かと思います。「夏の山に立つ」だとほうばっている人の動作そのものになるので、たとえば「にぎりめしほうばって立つ山は○○○」(季語)など、結句を少し工夫したらいいのではないかと思います。

桜んぼ真っ赤に実り空に映え  松風(70才以上,男)
 添削、どこを変えればよいか。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
 俳句を推敲する上で大事なことのひとつは、余計な語をいかに省くかということかと思います。できるだけ説明にならずに自分の思いや発見を伝えるということも重要なポイントです。この句の場合、情景の説明になっていて、一度読めば様子はわかるけれども松風さんの思いや感動、発見のポイントが読者に上手く伝わらないと思います。たとえば、「真っ赤」があれば「実り」はなくてもいいと思います。また、「映え」は説明的すぎると思います。この句を推敲するには、さくらんぼの赤い様子を何かに見立てる(たとえば顔色とか)、比喩や擬人法を使うなどの方法が考えられます。

そこんとこ「西日のせい」は詭弁です  北野元玄(60代,男)
 朝晩の涼しさを除けば、本当に夏らしくなりました。ねじあやめの句のコメント、有難うございました。「実はそんな理由なんてなさそう、もしくはどうでもよさそう、と思えてくるような一句です。」はまことに的を射ており、慧眼の至りと脱帽(+感激)です。私自身が何も理由や理屈など考えておりませんでしたから。今後もこの路線で行きたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 初夏の集いは出席の予定にしております。シンポの座長、頑張ってください。楽しみにしています。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。そういっていただけると私もうれしいです。あたたかいお言葉をありがとうござます。
 今回の句、いったいどういう場面なのかと思いますが、「詭弁です」という言い方がなんとも大げさで、「西日のせい」という軽い言い訳と対照的ですね。おもしろいと思います。ただ、「そこんとこ」というのが曖昧なので、ここは想像の手がかりがもう少し欲しいところです。初夏のつどいでお会いできますことを楽しみにしております!

(1)御輿担ぎ私の町を実感す  岡野 直樹(40代,男)
(2)商店街御輿が賑わい連れて来る
(3)御神輿やビールとビールへ一担ぎ

 御輿シリーズでいってみました。よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)意外性があるといいのですが、ちょっと平凡なイメージです。
(2)「賑わい連れて来る」ですが、「商店街」と「賑わい」はつきすぎか思うので、 ここは何か違うものを連れて来てくれないかなと思います。「賑わい」を言い換えてみてください。
(3)今回の三句の中ではこれが一番祭らしい勢いがあると思いました。「ビールとビールへ」ですが、ここは「ビールビールへ」などとしてリズムを合わせたほうがいい気がします。


2008年5月22日

(1)行くはるや古き農具の錆びしまま  娯魔如(60代,男)
(2)噴水やそしらるるわけ受け入れむ
(3)六地蔵彫る母の背や麦の秋
(4)葱坊主廻れ右する畑の風

 作句を始めて年余。ちょっと、スランプかと…。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。よろしくお願いします。
(1)なんとなく寂しい春です。「錆びし」とあれば「古き」はなくてもいいかと思います。
(2)「そしらるるわけ受け入れる」、ここは名詞をつかって「そしり」のほうがすっきりするのではないかと思います。そしられる理由とそしりそのものは厳密には意味が違うとは思うのですが、どうしても理屈っぽいかなと思いました。
(3)母はどんな思いで彫っているのか、また母が彫る姿を見つめる視線に込められた思いをいろいろ想像します。「麦の秋」という結句、合っていると思います。
(4)「葱坊主廻れ右」という発想がおもしろいと思います。ただ、結句は畑から少し離れたほうが句に広がりが出ます。

(1)テレビ消す独居老とや鳴く蛙(かわず)  豊田ささお(70才以上,男)
 今夜は見たい番組も無くテレビを消すと、にわかに遠田の蛙の声・・「どっきょ どっきょ独居・・」と聞こえました。
(2)紙ヒコーキをスイと隠して青葉闇
 明日からまた子どもたちと紙飛行機が作れるかも・・・通学合宿が始まります。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。ささおさんは、通学合宿のお世話をされているのですか?
(1)むむむ、ちょっと寂しい句です。「どっきょ」とひらがなにしたほうが、ちょっと作品としての重さがとれて読者にとって読みやすくなる気がします。後半、「どっきょどっきょと鳴く蛙」ではいかがですか。
(2)「スイと」いうそっけなさがいいですね。「青葉闇」の少しミステリアスな感じがいいと思います。紙飛行機は作れましたでしょうか。

(1)流木の水面に頻る飛花落花  しんい(女)
 季節の過ぎた句ですが、宜しくお願い致します。上五の「流木の」軽い切れのつもりですが、流木の水面となってしまいますか?
(2)リラ咲くや正午を告ぐる時計台
 宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)情景を考えると「流木の水面」と読んでしまいました。「飛花落花」に対して、「頻る」は言い過ぎではないかと思います。飛花落花の色や様子を具体的にしたほうがいいと思います。
(2)リラの花、正午、時計台。ぴったりおさまってしまって、情景以上のものが句から立ち上がってこない気がします。たとえば、何か意味ありげな時間を告げるなど小さな意外性が読者の入り込む余地を作ります。

うぐいすの鳴き争いを街に聞く  仁(60代,男)
 いつもご親切な診断ありがとうございます。今日の(16日)の推敲句のコメント参考になります。なるほど、なるほど、ですがそれから一歩先になかなか進めない現状です。 今日もよろしくおねがいします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。まだまだ新米で、なかなか上手くアドバイスができずすみません。
 今日の句は、少々ストレートすぎる表現かと思います。「街に聞く」という結句が短文的で平凡になってしまっているかと思います。結句を○○通り、○○町など、具体的な地名にして、「の」「を」などの助詞を上手く変えてみてもいいかと思います。

(1)緑陰や水浴終へし女体たち  学(50代,男)
(2)あたたかし母さす指をみる少女
(3)くちなしの花の契りや胸の奥

 ご教示を。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)「緑陰」「水浴」「女体」というのは、ちょっとできすぎなきがします。
(2)母を指しているのは誰か、またどのような状況なのかがわかりにくいと思います。読者に伝えるひと工夫を、ご検討ください。
(3)あたたかい雰囲気のある句ですが、「花の契り」も「胸の奥」も抽象的かと思います。なにかひとつ具体的にわかるものが必要かと思います。

(1)麦秋や兵隊被災地に向かひ  文の子(60代,男)
 ここからは時事俳句です。
(2)「なぜパンの値段あがるの」麦の秋
(3)かな読むも書くはさかさま麦の秋
(4)クレヨンの一本あれば麦の秋
(5)サンディエゴよりサンノゼへ麦の秋

 5/16のご診断有難うございました。樟落葉を知りませんでした。推敲します。また、「真向かひに外湯の塀置き谷若葉」は対岸に温泉とその塀があるのでは狙いと違うので、「置く」を使ったのですが如何でしょうか。麦秋についてドクターの「歯ブラシ」はピッタリと思いました。今年未だ麦を見ていないのですが、触発されて昼休みに遊んでみました。宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。麦秋にチャレンジされたのですね。
 先に、先日の外湯の句の件ですが、どうしても句が状況の説明になってしまうように思います。文の子さんの解説を読むと意図もよくわかるのですが、一句で読んだ時に魅力を感じるためには、もっと簡潔な表現で詠むことが必要かと思います。
(1)四川の大地震、連日ニュースで報じられていますね。時事詠って、以前にも述べましたが、時事を俳句にすることにもひとつの価値があると思うのですが、上手く詠むのはなかなか難しいですね。この場合は、「向かひ」はなくても「被災地へ」と終わっても通じると思います。
(2)はパンと麦がつきすぎかと思います。
 私は今回の文の子さんの麦秋シリーズの中では(3)がいいなと思いました。小さい子でしょうか。一人前に読めるけど書くとまだまだおこちゃま、というかわいい様子を想像いたしました。
(4)もきっと小さい子がクレヨンで絵をいつまでも描く様子でしょうか。もう少してがかりが欲しいところです。
(5)は旅行でしょうか。これも手がかりが欲しいところです。

(1)烈風に牧草傾ぎ牡丹散る  小口泰與(60代,男)
(2)鉄線の間垣を包み咲きにけり
(3)葉桜や終の陋居の太柱

 よろしくご指導願います。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)情景の説明になってしまっているところが惜しいと思います。「烈風」「牧草傾ぎ」「牡丹散る」は派手な材料が多すぎると思います。 「傾ぎ」「散る」と、動詞が2つあることも説明的となってしまう要因かと思います。言い過ぎないで情景を語ってください。
(2)これも説明的かなと思います。「包み」「咲きにけり」という部分がどうしても短文的になっているので表現に工夫が必要かと思います。
(3)しっとりと落ち着いた句ですね。情景のイメージが鮮明です。最後に「太柱」にたどり着いて、読み手はなんだかほっとします。

(1)撫で肩にシフォンスカーフ夏の朝  茂(女)
 何時もはっとするような品のよい装いをされる方が身近にいます。
(2)透明のペンの署名や夕薄暑
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
 私も、品のよい装いの方に出会ってはっとすることがあります。「撫で肩に」としたことで、その人のまとうイメージが想像しやすくなりますね。なんとなく、モディリアーニの描く貴婦人を想像しました。
  牡丹の花びらそつと散りにけり

(1)醜草の早や出でにけり初夏の雨  小口泰與(60代,男)
(2)野沢菜の花の明りや千曲川
(3)岩魚釣り杣も通りし獣道
(4)啄木鳥や獣の道は杣の道
(5)魚止めの滝に打ちたる毛鉤かな

 毎回ご親切なご指導感謝申し上げます。早速、「沢蟹の逃げ足早し鄙の宿」を「沢蟹の岩に隠れし鄙の宿」と推敲してみました。よろしくご指導願います。
ドクター中谷の診断と処方箋
(1)「醜草」というとなんだかただの雑草にも風格がでます。「早や出にけり」は少し説明的かと思います。
(2)趣のある情景ですね。この句を読んで野沢菜の作り方を調べてみました。
(3)と(4)、この場合、(3)の「岩魚釣り」ではそこに意味が出すぎてしまうので、(4)の「啄木鳥」との取り合わせの方がうまくいっていると思います。「獣の道は杣の道」というのもいいですね。
(5)「魚止めの滝」いいですね。ただ、「そこに打ちたる毛鉤かな」というのはありきたりすぎる気がします。同じような意味でも、たとえば毛鉤の描写を細かくするなどもっと情景を想像させることばが必要かと思います。


2008年5月21日

(1)水田に逆さ合掌五月晴れ  悠(70才以上,女)
(2)新緑や落柿舎に来て投句箱
(3)万緑や里山を背に深呼吸

ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
 今回の三句、実景を詠まれたのだなあと思うのですが、それゆえにどうしてもつきすぎであることが気になりました。
(1)白川郷でしょうか。「水田」と「五月晴れ」はつきすぎかと思います。季語を少し離れたものに変えてみてはいかがでしょうか。
(2)「落柿舎」と「投句箱」はどうしても平凡な組み合わせとなってしまいます。落柿舎の、あまり俳句と関係ないことに着目して詠むといいと思います。
(3)万緑、里山、深呼吸というのは、森林浴のイメージで、容易につながってしまうものかと思います。ここにも意外性が必要かと思います。深呼吸をやめて何か日ごろあまりしないことをしてみてはいかがでしょうか。

緊急時連絡くださいイソギンチャク  北野元玄(60代,男)
 これはうまく出来た、と思ったのですが・・・つきすぎですか?
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
 おもしろいですね。イソギンチャクのイメージと緊急連絡、なんとなく危なっかしいイメージが合っていると思います。つきすぎということはないと思います。

(1)リストラといふ役回り草引きぬ  文の子(60代,男)
(2)樫若葉「たかいたかい」を悦ぶ児
(3)日経が車内を占拠五月来る

 宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)取り合わせの妙です。草を引いているのですが、貧乏くじを引いたんだといわんばかりに、ぶつぶつ言っているのではないかと想像します。草引きと不平不満というのは 密接なつながりがありそうですね。
(2)樫若葉の生命力と児、いいと思います。「悦ぶ」と直接言わずによろこびを表現できたらもっといいと思います。
(3)通勤電車の光景でしょうか。「占拠」という大げさな表現が効いています。

やちぶきの谷とも知らず迷いけり  春(60代,男)
 はじめて投稿します。よろしくお願いします。北海道ではエゾノリュウキンカのことをやちぶきといいます。ロープウェイの駅裏の湿地帯、やちぶきの群生をみつけてとても感動しました。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。初めまして。全く知らなかったので早速調べました。黄色が鮮やかなかわいい花ですね。「やちぶきの谷」というのがいい表現です。「迷いけり」という結末がなんだか民話風なのですが、これはうれしい迷子さんですね。

(1)ソナチネの譜面にひとつサクランボ  勇平(70才以上,男)
(2)桜桃少女の笑窪に包まれし
 お疲れのところ、何時も拙い句に目を通していただき恐縮しています。 (再送となります?すみなせん。)
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)「ソナチネ」と具体的に曲集の名前を出されたところがいいと思います。レッスンの先生が合格印にさくらんぼのシールをくれたのか、もしくは音符に赤で印なのかなど色々想像しましたが、かわいい句だな思いました。
(2)少女の笑窪の中にじつはさくらんぼが入っていると読みました。「桜桃」「少女」「笑窪」は甘い取り合わせなのですが、大胆な倒置がいいのではないかと思います。

(1)雪明り襟首浮かぶ柩前  丸山俊郎(50代,男)
(2)鍬休め腰を伸ばせば夏の月
 よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)白い襟首ばかりが明るく浮かび上がるという情景かと思いますが、「襟首浮かぶ柩前」とつながるとちょっと怖さがでてしまう気がします。
(2)上の五七が少し説明的かと思います。「夏の月」にいたるまでの描写にひと工夫欲しいところです。

(1)そらまめ茹でるバーゲンのズボンきつい  仁(60代,男)
(2)百万本のポピー・一個のにぎりめし
(3)サーファーを横目で見てる割烹着
(4)山の五月同窓会があったらし

 中谷先生、こんばんは。よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)実験的な取り合わせ方の句かと思いますが、このままでは事実を羅列したままの印象になってしまいます。たとえば「茹でる」「きつい」どちらも用言で終わっていますが、片方を体言止にする、どこかを倒置にするなど何か表現の工夫が必要だと思います。
(2)これは対句が上手くいっていると思います。ポピー畑の中でおにぎりを食べている、広がりのある情景が目に浮かびます。
(3)サーファーと割烹着はつくりすぎかと思います。
(4)俗世の暮らしにはあまり興味がないような、「山の五月」。寂しさはなく、のどかな感じがしていいと思います。

緑陰の妻に短き声かける  遅足(60代,男)
 拳の句の診断ありがとうございます。緑陰や、と切るほうが良いのか?また短き、ではなく、短く、が良いでしょうか?よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
 「緑陰の妻」、のほうがこの場合ひとつの風景の中に奥様がおられるようなイメージとなっていいと思います。このフレーズいいなと思います。「短く」とすると説明的に感じますので、「短き」と連体形にしておいたほうがメリハリが出ていいと思います。

(1)薔薇置かるそびらに医師の当番表  しんい(女)
(2)亀の子の右往左往や金盥
 宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)「そびら」って美しい表現ですね。この場合「置かる」はなくてもわかるような気がします。
(2)かわいい情景ですね。「右往左往」という言い方も亀の子のことを言うのになんだか大げさでそれがおもしろさを生みます。

(1)先頭のガイドの手旗風薫る  悠(70才以上,女)
(2)折り紙のこいのぼり立つ水子蔵
 よろしくおねがいします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)気候のいいこの時期、旅の季節ですね。「先頭のガイドの手旗」、もう少し簡潔な言い方にできそうな気がします。
(2)切ない句ですが、さらと詠まれたことでうまくいっていると思います。


2008年5月20日

(1)シグナルは青街路樹に初夏の風  茂(女)
(2)雨の夜に金魚のあくび見てしまう
(3)青桐やおかみ専用黒電話

 こんにちは。何時もご丁寧な添削感謝致してます。小料理屋に黒電話が飾ってあるのかと思いきや女将さんがつかってました。又見たまま俳句になりましたが宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)気持ちのよい風景ですね。「シグナル」とされたところがいいと思います。ただ、信号、街路樹、初夏の風、はちょっとつきすぎかと思います。
ひとつはずしてちょっと意外な街のものに着目してみてもいいと思います。 (2)「金魚のあくび」面白いです!雨の夜の物寂しいようなつまらないような気持ちが吹き飛びますね。「見てしまう」が効いています。
(3)きりっとしたおばあさんでちょっと頑固なおかみを想像してみました。いまどき黒電話だなんてかえって新鮮ですね。 季語なのですが、「青桐」もいいかなと思ったのですが、おかみのイメージを、あからさまではなくもっと浮き立たせる季語がありそうな気もします。一度探してみてください。

(1)はつなつの靴の白さにおほほのほ  ポリ(50代,女)
(2)網棚に張子の虎を置く立夏
 「網棚に張子の虎置く立夏かな」を直してみました。「腕ひしぎ逆十字」の方は思いつきませんでした。どうぞよろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)初夏って靴を新しくしたくなりますね、確かに。
(2)推敲されたほうが、きっぱりと終わっていて「立夏」らしさが出たと思います。「腕ひしぎ逆十字」、ことばが長いだけに難しいですね。インパクト特大ですが。またできましたらぜひ読ませてくださいね。

柏餅1つ2つやこっそり3つ  稲冶増彦(70才以上,男)
 厚かましく、そして恥ずかしく(大汗!)ですが、よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。そんな大汗だなんてとんでもありません。
そう、柏餅、2個目まではまあいいかなと思うんですよね。でも、3つめとなるとちょっと恥ずかしい気がしてこそっと食べる、もしくは少し(ほんの少し!)時間を置いて食べたりするものですよね。この気持ちよくわかります。たいへん共感できてしまう楽しい句です。結句の字余りが少し気になりましたが、「こっそり」に代わる語が私自身思いつかず、このままでもいいかなと思います。

(1)サル山に伝染したる昼寝かな  学(50代,男)
(2)昼寝してすでに宇宙遊泳中
(3)アラビア文字に午睡するおばあちゃん

 ご教示を。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)情景が思い浮かんで思わず笑ってしまいました。かわいい句ですね。
(2)宇宙遊泳の夢をみているのでしょう。字足らずが気になるのでひと工夫してみてください。
(3)アラビア文字を見て眠くなったのでしょうか。なかなか素敵なおばあちゃんです。ただ、この場合は少し説明不足で唐突な印象があります。もうひと工夫必要かと思います。

藤の房有りや無しやの風に揺れ  どんぐり(男)
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。藤の房が揺れる様子、いいですね。この句、風の説明が直接的すぎることがおしいなと思います。七五がすっと流れてしまう印象があり短文的になっているのでたとえば藤の房の揺れ方など情景がもっと浮かぶような表現をされたらいいのではないかと思います。

新緑や柄杓の水飲むのどぼとけ  藤尾(50代,男)
 たとえば、トンネルを夜汽車抜けるや雪の国、のようになになにするとすぐにというような[や]の使い方は駄目なのでしょうか?
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
 のどぼとけに着目された点、おもしろいですね。新緑とのどぼとけ、清清しくいい取り合わせです。ご質問の「や」の件、大丈夫だと思います。ただ、切れ字と違って意味が下につながりますので説明的にならないように気をつけて使う必要がありますね。

(1)青葉して初雪食堂若女将  きなこ(50代,男)
(2)近江路やそぞろ小股の黒日傘
(3)大股に近江八幡日傘妻

 先日、近江八幡で遊んできました。
(4)エコバッグ持たぬ風切る夏大根  中谷ドクター、いつも丁寧なご診断ありがとうございます。今回もよろしくおねがいします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)青葉の季節も「初雪食堂」。この句、「初雪食堂若女将」と終わってしまうと、言いっぱなしの印象があります。想像の手がかりがどこかに欲しいと思います。
(2)と(3)近江路の小股と大股でつくられたのですね。私は(3)のほうが、おもしろいなと思いました。日傘妻といえばなんだか楚々としている印象なのですがそれが大股なところがいいですね。
(4)このかたちだと「 エコバッグ持たぬ」は風にかかっているのかなと読んでしまうのですが、そうすると意味がとりにくくなります。ご検討ください。

(1)梔子草雨にかがり火灯すかな  豊田ささお(70才以上,男)
 今日も雨です。クチナシグサが咲いていました。この草は一部ではかがり火草ともいうそうです。一般にはシクラメンですから、マイナーな呼び方ですね。まったく別の意味のとりあわせのようですが・・ (2)卯の花や棚田の跡に雨しるき
「俳句を作ること自体がプラス思考」という明快なお言葉をいただき少し元気が出ました。ありがとうございます。掲句の「しるき」は間違いかもしれません。「激し」という意味がつうじるでしょうか?
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。今日も、私もプラスにがんばります!
(1)梔子草知らなくて、インターネットで調べてみました。シクラメンとは「篝火草」という名前は同じでもまた別のものなのですね。この場合、「かがり火」と言ってしまうと、せっかく「梔子草」とした効果がない気がします。違う見かたをしたほうがいいと思います。梔子草教えてくださってありがとうございました。
(2)「しるき」、古語辞典で見つけました。「著し」の連体形ですね。意味は「きわだっている。はっきりしている。明白である。」(旺文社『全訳古語辞典』)とあります。「著しい」のだと考えると豊田さんの意図と全く違うということはないのですが、解釈が難しい気がします。違う語を持ってきたほうがわかりやすいと思います。ご検討ください。


2008年5月19日

(1)母の日や昨日も明日も母である  遊雲(70才以上,男)
(2)伸び伸びと白い脚ゆく街薄暑
(3)日曜の朝の日課の草を引く

 今日は琴光喜負けちゃった。故障さえなかったら今頃横綱だったかも。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。琴光喜のことを見守ってくださっているのですね。とってもうれしいです!ありがとうございます。横綱になってほしいといつも願っています。まずは早く勝ち越して欲しいです!
(1)そう、いつになっても母は母ですね。この気持ち誰もが共感できますね。
(2)白い脚を追っているというのはいいのですが、「伸び伸び」はありきたりかなと思います。脚にかかるぴったりな言葉を、ぜひ探してください。
(3)これは一句が短文のようになっているのでひと工夫必要かと思います。「日曜の朝は草引き○○○・・・」のように思い切って語順を変えてみてもいいかもしれません。

(1)難局に棋士持つ扇子の動き止み  丸山俊郎(50代,男)
(2)背伸びしてあなたの腕に朧月
(3)春灯の中で薄紅そっと差し

 よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)説明的すぎる気がするのは、おそらく頭に「難局」と明かしてしまっているからかと思います。このつくりだと、難局という状況の説明になってしまっていて、扇子をうまく使って棋士の動きに着目したことが活かされません。「難局」と言わず難局と伝えられたらいいなと思います。
(2)こういう句、好きです。「背伸び」とあることで、妖艶すぎないのがいいですね。朧月を上手く活かしていると思います。
(3)色っぽい句ですね。「春灯」「薄紅」「そっと」このキーワードは3つ並ぶとちょっと豪華すぎる気がします。この場合結句をすこし離したほうが句に広がりがでると思います。

(1)母の日を妻の日としてケーキ買ふ  大川一馬(70才以上,男)
 「母の日を妻の日ととる愚妻かな」をこのように作り直してみました。
(2)父の日や父の齢を超えて生く
 この原句は「父の日や父を超えしは齢のみ」
(3)庭いぢり三文の徳茗荷の子
 ご指導有難うございます。原句は「草取りの余得なるべし茗荷の子」です。お手数かけてすみません。再診よろしくお願い申し上げます。
ドクター中谷の診断と処方箋
 先日の句をご推敲されたのですね。3句とも上手く直されたなと思います。
(1)あたたかい句になりました。素敵なご夫婦ですね。
(2)前回の句よりも前向きな印象になりいいなと思いました。ストレートな表現ですが、父の日の思いとしてこんな句もいいなと思います。
(3)「三文の徳」とされたほうがのどかな感じが出ていいと思います。

(1)急く帰途の足蹴を照らす五月かな  更紗(女)
(2)大空に飛ぶ竹とんぼ著莪の花
(3)菓子折を碁盤に仕切る薄暑かな
(4)新緑に身を解くシャドウボクシング

 こんにちは(4)はひとり真似事でやってみたシャドウボクシング。「新緑に」を 「新緑や」にした方が良いでしょうか?また「や」の切れで悩みます。宜しくご教示お願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)「足蹴」という言い方にひっかかります。あと、「急く帰途」というところが説明的かと思いますので、ここの表現をひと工夫してみてはいかがでしょうか。
(2)「大空」「竹とんぼ」とあれば、「飛ぶ」はないほうがいいと思います。そのぶん空の様子を詳しくするとリアリティが増すと思います。
(3)菓子折の箱の中の仕切りのことでしょうか。なんだか面白くなりそうな予感がするのですが、状況がよくわからないので、もうひと工夫必要かと思います。
(4)「シャドウボクシング」が俳句に入ってるなんて斬新です。そして更紗さんが実際されたということにびっくりして、思わず私もやってみました(笑)。私はこの句の場合「新緑に」と後に続くほうがいいと思いました。

(1)馬つちを踏み水馬みずを踏む  文の子(60代,男)
(2)液体を固体のごとく水馬
(3)あめんぼう四肢もて己が影ふみぬ
(4)とびとびになる児の話あめんぼう

 5/12のご診断有難うございました。「子らの乗る小さきエスエル蝌蚪の紐」は「ちさきエスエル」で575に揃えたつもりでした。先人の句にも「小さき」を「ちさき」と詠む例が多いものですから。掲句宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。先日の句きちんと読み取れていなくてすみませんでした。
(1)対句の試み面白いと思います。ただ、馬と水馬、土と水はちょっとつくりすぎの感があります。(かと言ってほかに何が言いかというと難しいのですが・・・。表記を変えるのもひとつの方法かもしれませんね。)
(2)発想としては面白いのですが、理屈っぽいのではないかと感じました。
(3)結句の「影ふみぬ」があれば、「四肢もて」はなくてもいいのではないかと思いました。それよりは踏んでいる様子を描写したほうが句の情景が鮮明になります。
(4)かわいい句ですね。今回の中でいちばんいいなと思いました。子どもの話とあめんぼうの取り合わせ、たいへん魅力的です。

(1)やんま飛ぶ野球小僧の淡路島  勇平(70才以上,男)
(2)土俵入り柝の音に合はす夏力士
(3)舞台袖柝ぱたぱたぱたん走り梅雨

 的確で解り易い診断と処方は、初心者にとって大変に有難い教材となっています。有難うございます。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)私の故郷を詠んでくださってありがとうございます。淡路と言えば「瀬戸内少年野球団」ですね。「やんま飛ぶ」という語が効いています。やんまもボールも小僧も飛んでいるような元気の出る句です。
(2)夏力士という終わり方、いいなと思うのですが、上の57が少々説明的かと思います。「土俵入り」「柝」のキーワードがあれば、後は直接言わなくても違う表現で言い換えられそうな気がします。いかがでしょうか。ご検討ください。
(3)「ぱたぱたん」のオノマトペ、舞台袖と走り梅雨をうまくつなぐ役目をしています。上手くお使いになっていますね。

はいと言ふことばの中に夏来る  涼
 宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。さわやかな句です。「はい」の声や発音、間など色々な中に夏を感じたんだろうなと思いました。「夏来る」というきっぱりとした終わり方もいいですね。

(1)初夏の錨巻き揚げられてをり  学(50代,男)
(2)玉虫の翅に薫物花馬酔木
(3)ざりざりと髪を切るゝ夏の雲
(4)あの節は八岐大蛇夏兆す

 ご教示を。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)夏らしい風景です。「初夏の」という始まりでもいいですが、この句では結句に季語を持ってくるのもいいかなと思いました。
(2)玉虫と薫物とくると飛鳥かなと思うのですが、具体的に分かりにくいのではないかと思います。
(3)「ざりざり」というオノマトペ、大胆な響きが夏らしくていいと思います。「夏の雲」と視線が上に上がるのもいいですね。
(4)お神楽でしょうか。(ちがっていたらごめんなさい。)「八岐大蛇」インパクトがあっていいですね。面白い発想です。

(1)起す子も泣いている顔運動会  えんや(60代,男)
(2)よしきりの啼いてくれるな退職日
(3)補聴器の鳴りだす橋や薫風に

 いつも適切なアドバイス、誠に有り難く存じます。三句宜しくお願い申し上げます。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。今回の三句、どれもいいなと思いました。
(1)仲間がこけてしまって、こけた子は大泣き。起こしながらその子つられて泣いちゃうという様子だと読みました。以前担任していた子が、大玉ころがしで負けて運動場の真ん中で大泣きしてしまったことを思い出しました。この瞬間を俳句に詠んだということが素敵だと思います。ポイントは「起す子も」の「も」ですね。想像がふくらみます。
(2)なんだかかっこよく響く一句です。退職日、私はまだ迎えたことがありませんが、「啼いてくれるな」に直接は言わない気持ちがこめられている気がします。
(3)「補聴器」と「薫風」の取り合わせがいいと思います。明るい気持ちになる一句だと思います。

(1)リラの花汽笛遠のく夕間暮れ  しんい(女)
(2)ひねもすの緑雨にけぶる金色堂
 5/13付ご指導頂いた「みちのくや緑雨にけぶる金色堂」を直してみたのですが・・・。又、「昼暗き」とも思いましたが。
(3)薪能シテ金扇をおもむろに
 これも「おもむろに金扇使ふ薪能」を並べ替えてみたのですが・・・。宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)「リラの花」が効いていますね。美しい情景です。ただ、「汽笛」と「夕間暮」れは容易に想像できてしまう状況なので欲を言えばどこか意外性が欲しい気もします。
(2)「みちのく」よりもこのほうが句のイメージに広がりがでると思います。「昼暗き」だと、雨だから当たり前、となってしまう気もします。「ひねもすの」は語感がいいのでこちらのほうでいいと思います。ただ、「ひねもす」も雨を説明する言葉なのでここは「けぶる」を違う表現に変えても良いかもしれませんね。
(3)「シテ」と薪能の世界に踏み込んだ言葉が入ったことで場面にリアリティが出ました。


2008年5月18日

(1)新樹かなツアコンの名は未来という  仁(60代,男)
(2)陽炎が固まっているハワイかな
 こんばんは、中谷先生。きょうもよろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。ご旅行にいかれたのでしょうか。なんだかうきうきする二句です。
(1)この句、最後が「〜という」と、短文的な終わり方なので、初句を体言の季語にしたほうが句に緩急が生まれてバランスがいい気がします。
(2)「陽炎が固まっている」ってどんなのだろうかと色々想像してみました。絵はがきだろうかと思ってみたり、広々とした光景を眺めているのかと思ってみたり。結局結論はでなかったのですが、なにやら不思議な句。惹かれます。

夏帽子鏡に映し旅の朝  あさ女(60代,女)
 帽子の季語を詠んでみたかったです。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。夏帽子、私も好きな季語です。旅に向けてうきうきする気持ちが伝わります。ただ、旅行前に帽子姿を鏡に映すというのはモチーフとしてよくある発想かと思います。「旅の朝」、個人的には「朝の旅」の方が、ちょっとした楽しみのようでかわいいと思いました。(勝手に変えてしまってすみません。最初字を読み違えてしまいまして・・・。)この句を手がかりにしてぜひどんどん夏帽子の句にチャレンジしてみてください。

初夏やクレーンの生える港町  茂(女)
ドクター中谷の診断と処方箋
 初夏には草木、花など色々なものが育ちますが、クレーンが生えるのというのは斬新な発想です。港町を具体的な町名にしても面白いかもなと思いました。

5月場所初日きん星稀勢の里  稲冶増彦(70才以上,男)
 まったくの入門者です。どうぞよろしくご指導くださいませ。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。稀勢の里、今場所絶好調ですね。我が琴光喜も負けてしまいました。少し気が早いですが今後の番付が楽しみな力士です。
 この句の場合、稀勢の里が初日に金星を取ったという事実だけになっていて思いや感動が読者に伝わらなくなってしまっていると思います。省ける語は省いて、思いが前面に出る表現を使ってみてはいかがでしょうか。「五月場所」言わなくても初夏の季語と「金星」という語があれば五月場所と伝わるでしょうし、初日の金星がすごいのか、金星であることがすごいのか、それによって省く語・加える語も違うと思います。ぜひご検討ください。

(1)鉄線の花芽直立天を指す  小口泰與(60代,男)
(2)郭公や残雪ありし美術館
(3)牧草を刈るや水鶏の高き声
(4)夏帽や長き浅間の溶岩台地
(5)病葉や置き捨てられし鎌と鍬
(6)産土の雪間に咲きし夏桜

 ご親切なご指導感謝申し上げます。よろしくご指導願います。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。あたたかいお言葉をありがとうございます。
(1)「直立」と「天を指す」は同じような意味になるので、どちらか一方にしましょう。私は「天を指す」の方がいいと思います。
(2)「郭公」(夏)と「残雪」(春)、違う季節の季語2つが1句の中に共存しているのは、私自身は違和感があるような気がします。小口さんはそこをねらわれているのかなとも思うのですが、やはり季語はひとつの方がすっきりすると思います。
(3)ちょっと懐かしいような風景です。いい雰囲気にまとまっていると思います。
(4)「長き」が何を修飾しているのかが曖昧かと思います。「溶岩台地」が下にくることでリズム的になんとなく重い印象です。語順を入れ替えるだけでもすっきりしそうです。ご検討ください。
(5)病葉の雰囲気が句に合っていると思います。ただ、少し寂しすぎる取り合わせかもしれませんが。
(6)産土ってちょっといい言葉ですね。(小学校の校歌の歌詞にあったことを思い出しました。)ただ、雪と桜が共存する句というのは、(2)と同様に、たとえ実景であったとしても季節の感覚として難しいかと思います。

眉毛まで髪切り詰めて夏に入る  翡翠(かわせみ)(30代,女)
 5月11日の診断ありがとうございました。「バケツより湯舟が良いと菖蒲風呂」になおしてみました。少しやわらかくなった気がします。5月に入り急に暑くなったので、いつもより前髪を短く切りました。でもまた寒くなりました。季節についていけません。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。推敲された句のほうがいいと思います。菖蒲の気持ちになられたのですね。
(1)髪を「切り詰める」という言い方はあんまり聞かないような気がするのですが、この場合、夏を迎える覚悟のようなものがあっていいと思います。私も最近美容院に行ってきました。夏って髪を切りたくなりますね。

(1)金魚屋の呼びゐるこゑの遠ざかる  学(50代,男)
(2)夜光虫母につきたる嘘二つ
(3)更衣ひかへ几帳の水あさぎ
(4)ぼうたんやいろりの灰の掃かれをり

 ご教示を。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。今回は(2)がいちばんいいなと思いました。夜光虫と嘘との取り合わせ、イメージの中に後ろめたいような気持ちがうかびあがってくるような気がします。青春のかおりのする句です。
(1)「呼びゐるこゑの遠ざかる」なんとなくもどかしく感じます。もっと簡潔に表現できると思います。短くなった分、時間帯やら天気やらの情報を足せるのではないかと思います。そうすると状況がより明確になります。
(3)水あさぎで涼感先取りの演出かなと思いながら読みました。「和」のイメージでまとめておられますが、イメージの全くちがうものを取り入れてもいいと思います。
(4)ぼうたんといろりの灰の取り合わせ、季節感から考えると違う季語でもいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。


2008年5月17日

新緑のうねり雷光のハイウェイか  仁(60代,男)
 中谷先生、こんばんは、いやはや、今日は強かったですね。十五日間これでいきましょう。相撲の話はさておき、推敲句よろしくお願いします。「新緑のうねりのごとくハイウェー」の推敲です。お願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。琴光喜がんばれ、と毎日9時からのNHKニュースを欠かさず見ております。なんとか早めに勝ち越して欲しいものです。
 さて、推敲された句ですが、「雷」が夏の季語となってしまうのでこれはちょいと都合が悪いかと思います。声に出してみると、この句では中が八なので結句が「ハイウェイ」で終わってしまってもリズムとしてはいい気がしました。響きを考えると、「新緑のうねりハイウェイ・・・・」とつなげてもいいかもしれません。いかがでしょうか。

(1)新緑の天井木漏れ日ライトショー  丸山俊郎(50代,男)
(2)湯上りのピンクの肌は涼求め
 いつも診断有難うございます。毎回正に目から鱗です。よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。緑の美しい季節ですね。あたたかいお言葉をありがとうございます。
(1)「ライトショー」は「木漏れ日」を言い換えたものですから、説明しすぎになっています。一句の中にどちらか一方の言葉でいいと思います。その代わり、その光の様子を具体的に言ったほうが情景が鮮明になります。
(2)ストレートすぎるので、表現にひと工夫必要だと思います。短文のようにならないためには、「湯上りの肌はももいろ」など語順を変えるだけでもだいぶ印象が変わりますよ。ぜひご推敲ください。

「はい・これ」と小花模様のパラソルを  れい(70才以上)
 よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 なんだか、ドラマのワンシーンを切り取ってきたような一句です。綺麗なのですが、上手くできすぎのような気もします。パラソルの「小花模様」という部分、もう少しインパクトのあるものにするといいのかもと思います。「パラソルを」という、余韻のある終わり方が素敵だなと思いました。

ねじあやめ思考を停止する理由  北野元玄(60代,男)
 時々、遠隔地?から投稿します。普段は句会などには参加できません。忌憚のないコメントをお願いします。この句、「ねじあやめ」の語感が気に入っています。
ドクター中谷の診断と処方箋
 元玄さんこんにちは。よろしくお願いいたします。
 この句おもしろいと思います。「ねじあやめ」、確かに良い語感だと思います。いい言葉を見つけられましたね。「思考停止」という少々理屈っぽい語との取り合わせも上手くいっていると思います。実はそんな理由なんてなさそう、もしくはどうでもよさそう、と思えてくるような一句です。

(1)吹く風に震える房や藤の花  どんぐり(男)
(2)下町の空に風吹く幟哉
(3)下町の空に吹く風鯉幟

 風は穏やかに吹いたり、駘蕩と吹き抜けていったり。藤の房と鯉幟で風を俳句にしてみました。ご指導よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)藤の花が震えるのは誰かが揺らしたのでなければ風の力なので、「吹く風に」はなくてもいいと思います。花が震えるというところから、別の発想につなげてもいいですね。(人の感情とか)
(2)(3)どんぐりさんがお持ちの風のイメージを句に生かすためには、風の描写を細かくしたほうがいいと思います。「空に」「吹く」は省いてしまっていいと思います。「○○の風」「風は○○」などとしてはいかがでしょうか。

(1)御輿重し子供御輿に回りたし  岡野 直樹(40代,男)
(2)御輿担ぐたまたま帰る娘婿
 知らない方とわいわい御輿を担ぎました。よろしくお願いします。
(3)目玉貼り軒下に住む鯉幟
 小さな鯉幟を何とか句にしたかったのですが、どうでしょう。よろしくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
(1)(2)春のお祭、私の地元でもあります。子ども時代の、わいわい楽しく子ども御輿を担いで大人はおいしくビールを飲んで、おにぎりを食べて、地元みんなで一日を過ごした思い出があります。
(1)だとお気持ちはよくわかりますが、御輿をわいわいかつぐという雰囲気が伝わってこないなあと思うのです。「重し」と言わずに重さを表現できたら十分一句になると思います。顔色、表情、痛みの感覚、人の多さなど色々な方法が考えられます。
(2)娘婿さんが祭の時に帰省して御輿を担ぐというのはいい情景ですね。「たまたま」とは言わなくてもいいような気がします。娘婿も地元の人にまざってわいわい、というふうな情景にすると御輿の雰囲気が出ると思います。ぜひご検討ください。
(3)「住む」はなくても、「軒下に」と「鯉幟」で、小さい鯉幟だということが分かります。目玉に注目されたのは面白いですね。「目玉貼り」というよりも、どんな目玉なのか、どんな表情なのか(想像になりますが)のほうがよいと思います。


2008年5月16日

(1)親指の赤いペディキュア街薄暑  遊雲(70才以上,男)
(2)母の日の母は綺麗な母であり
(3)雅山の腹の辺りの薄暑かな

 今日はOBの句会で席題は「薄暑」と「母の日」。昨日までとうって変わり肌寒い雨の一日でした。明日からは夏場所です。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。夏場所真っ盛りですね!
(1)「ペディキュア」であることがいいですね。赤というのはありがち色ではあるのですが、ペディキュアであることで、なんとなく秘められたものであるような気がしてきます。「街薄暮」の中赤が鮮やかです。
(2)ストレートな表現ですね。たまにはいいかなとも思うのですが、「綺麗な母」という部分、比喩を使うなどして綺麗な様子を直接的表現を避けて考えてみてもいいと思います。
(3)雅山のおなか、むむむ。目の付けどころがおもしろいですね。ただ、ここで「薄暑」ではインパクトが弱いのではないかと思います。ぜひこの五月場所に雅山のおなか研究をしてみてください。

(1)吸葛対のステッキ寺社巡る  大川一馬(70才以上,男)
(2)たかんなの入りしお佛供(ぶく)や香華院
 香華院(こうげいん)は菩提寺の別称ですが、5音なので使ってみました。
(3)麦秋やB29が夢砕き
 麦秋が兼題になったのですが、こんな昔の景しか浮かびません。
(4)麦秋や晩鐘遠きノルマンデイ
 そうでなければ、ミレーの絵位、想像力の乏しさに悩んでおります。 ご指導のほどを。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)対のステッキということで、具体的に言わなくてもステッキを使う年齢の方がお2人いることがわかりますね。夫婦もしくは恋人。吸葛はそんな情景に合っていると思います。ただ、「寺社巡る」という表現、ありきたりかなと思います。この句では、どこかおしゃれな場所にお出かけさたことにしてはいかがですか。具体的な固有名詞を使ってみてもいいと思います。
(2)佛供と香華院というのは近すぎるのではないかと思います。季節感はよく出ているのですが。
(3)「夢砕き」という表現はよくあるのでひと工夫いると思います。
(4)麦秋とミレーの絵というのはよくある発想なので、思い切って違うものを持ってきたほうがいいと思います。麦秋って、魅力的な季語だと思うのですが、いざ句にするとなると難しいですね。思い切り季語と離して取り合わせたほうがうまくいくかもしれません。私は以前麦秋とはにわ、麦秋とはぶらしをそれぞれ取り合わせた句を作ってみたことがあります。大川さんもぜひ取り合わせを試みてください。

絵のなかのおおきなおおきなめだかの子  仁(60代,男)
 何んか、小学生が作るような句になりましたけど年中の孫が描いてきた絵そのままです。よろしく、お願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こういう句も、大人がつくるからこそいいんじゃないかと思います。ひらがなのたどたどしさもいいと思います。工夫するとすれば、「絵のなかの」でしょうか。その絵がきっと何か特別な絵なのだろうと匂わせることができたら成功かと思います。お孫さんの絵、きっと元気な絵なのでしょうね。クレヨンでかいたのかなーと想像してみました。ぜひご検討ください。

露天風呂ふわふわふわと蔦若葉  あさ女(60代,女)
 中谷仁美先生、いつもありがとうございます。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
 露天風呂と蔦若葉、なにかもうひとつ題材を加える、もしくは露天風呂についての情報をくわしくしたほうが句の面白味がでます。「ふわふわふわ」というのは、若葉がそよ風にそよぐ様子でしょうか。もう少し具体性があるとより句の情景が鮮明になります。

(1)酢を入れて混ぜて冷ましてみどりの日  せいち(60代,男)
(2)賑やかに校長室の目高かな
(3)とくとくと田へたうたうと泉引く

 宜しくお願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
(1)いったい何を作ったのかたいへん気になります。まるでなぞなぞのようですが、みどりの日、丁寧にお料理をしているのだなあと、のどかな休日を想像いたしました。おもしろい句ですね。
(2)目高の好きな校長先生でしょうか。「賑やかに」と直接言わずに目高の様子を表現できたらいいなと思います。
(3)「とくとくと」も「たうたうと」も「泉引く」にかかるオノマトペですが、この場合どちらかひとつに絞ったほうがイメージがしやすいと思います。間に「田へ」が入っているので「とくとくと」が分かりにくくなっている気がするのです。ご検討ください。

(1)送別会鬼の上司の初涙  丸山俊郎(50代,男)
 ビックリと感激のシーンでした。
(2)ぜんざいの小豆コロリと口の中
 ぜんざい大好き。
(3)さくらんぼソフトクリームの頂に立ち
(4)さくらんぼぷらぷらゆれてはにかみて
(5)さくらんぼオリーブ代わりのマティーニ

 大好きな果実です。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。
(1)こういう場面って感激いたしますね。ちょっと短文的かと思います。ここは「送別会」と言わず、たとえば花束を受け取って、など、送別会だとわかるシーンを演出した上で「初涙」と持ってきてはいかがでしょうか。
(2)こういうこと、誰にでもありますね!このままではあまりにもストレートな表現です。たとえば句のどこかに「ぜんざい大好き」ということを匂わせることができると、「小豆コロリ」が生きてくる気がします。
(3)(4)(5)では、(4)はいちばんいいと思いました。さくらんぼ自身ともとれるし、何か(誰か)の比喩ともとれますね。かわいい句です。私もぜんざいやさくらんぼ大好きです!

(1)花筏また、よろしくと出発す  仁(60代)
(2)花筏三キロ先で解散す
(3)目高の子宿ったと僧が今日も言う
(4)山頭火目高といつしよに野渡の家

 中谷先生、こんにちは。今日は、ご指摘を受けた句の推敲の診断をよろしくお願いします。(1)と(2)は原句「花筏夢ちりばめて大海へ」の推敲句が出来ないので違った視点から作ったものです。(3)は原句「住職の目高の話しにおどろきぬ」
(4)は原句「山頭火目高といつしよに棲んでゐた」の推敲です。よろしくご指導お願いします。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。先日の句を推敲された(1)(2)ですが、私は(1)の方が断然素敵だと思います。花びら同士が実はこんなことを言い合って流れていると思うと楽しい気持ちになりますね。
(2)花筏の解散というのはおもしろい発想ですが、ここでは3キロというのが現実的すぎて少しそっけない印象です。なにせ、(1)がとってもいいと思います。
(3)なるほど、僧の話はそういうことだったのですか。今日も言う、ということは何度もその話を聞いているのですね。字余りが気になります。短文になっているので、簡潔な表現を考えてみてください。
(4)推敲されて、とてもすっきりしました。ここまでくると欲が出てしまいまして、「いつしよに」の部分、同じ意味の言葉で3音でおさまるものがあるといいなと思いました。「語る」「集う」などを考えてみましたが、色々ご検討ください。

(1)ボトルより水飲む犬や街薄暑  文の子(60代,男)
 ドクターには説明とご指摘を受けそうですが。「ボトルより水飲む犬や聖五月」は如何でしょうか。
(2)樟の秋古葉の折れ口匂ひたつ
 「樟の秋古葉の折れ口匂ひたつ」麦秋、竹の秋は公認の季語ですが、掲句は如何でしょうか。駄目なら「行く春や古葉の折れ口匂ひたち」ですが、これは如何でしょうか。
(3)真向かひに外湯の塀置き谷若葉
 外は「と」ですが、読み難いでしょうか。宜しくお願い致します。
ドクター中谷の診断と処方箋
 こんにちは。コメントを予想されてしまうとなんとも言いづらいのですが、今回もおつきあいくさだい。
(1)「聖五月」のほうが、おしゃれな感じがしていいと思います。外国の街のワンシーンのようになりますね。
(2)「樟の秋」個人的には季語としてもいいんじゃないかと思うのですが。しかし、「樟の秋」と「古葉」はつきすぎではないでしょうか。この場合「行く春」の方がいい気がします。でもそうすると、楠であることが伝わらない・・・。このモチーフで「楠落葉」などを季語として匂いに焦点を当てて詠んでもいいのではないかと思います。
(3)一般的には「そとゆ」ですよね。ここではそとゆと読んでもリズムは大きく崩れないのでいいと思いますがいかがでしょうか。また、この場合「真向かひ」とあれば「置き」はなくてもいかと思います。ご検討ください。