「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。


2012年2月29日
南村健治ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 料理の番組が好きでよく見る。キャベツを湯がいて、隠し味を入れた肉をよく揉んで、出汁作って、弱火でことこと。いろんな過程があってだんだんと形になって、お皿に盛られて「ハイ、できあがりました」ということになる。で、それが美味しそうだとボクも作ってみたくなる。メモも録画もしていないので、記憶を頼りに作り始めるが、途中で途方に暮れることがあって、そんなときはまったく違った味の料理が出来上がる。とうぜん、予想通りに不味いときもあるし、変化技が冴えてとても旨いときもある。俳句作りも同じだが、不味いときは捨てればよい。しかし、今日作ったロールキャベツのクリーム煮を捨てるわけにはいかない。なんとかならないか。

【十句選】

余寒ありジレットの錆うっすらと   涼
 本来なら鋭いはずのカミソリの刃にうっすらと錆が浮いた。髭剃りは面倒だが、それは男のマナー、そしてときにはお洒落の一部分。綺麗に剃るのか、不精を装いながら刈り揃えるのか。いずれにしても錆をうかせてはいけない。が、しかし、予断なくそうなってしまった。「余寒あり」がその男性の心身の陰りを想像させる。(ジレット・・・・髭剃り製品のブランド名)

春の雪ホットケーキに蜜垂らす   涼
 子供のころホットケーキは憧れの食べ物だった。誤解を招くかもしれないが、家でてきとうに作るメリケン粉の固まりのようなモノではなく、パーラーか百貨店の食堂で食べるふわりと重ねられた本物のホットケーキ。銀色の器からトロトロと蜜を流し、小さめのフォークで食べる。この句、春の雪と取り合わせられ、雪の結晶がホットケーキに降りかかりながら溶けて行くような淡い気持ちなる。

亀に耳ありといふ春の学校   啓
 亀には人間のような形をした耳はない。しかあ〜し、聴覚器官はあって、たぶん、周囲の音は聞こえる。春の蠢きが聞こえるので、それに呼応するように鳴く。これが、亀鳴くの真相だあ〜〜。楽しくて、活気に溢れた学校でのひとこま。ここならもういちど通ってみたい。(壁に耳ありでなくてよかった)

古稀といふ春立つ如き日を迎ふ   今村征一
 還暦、古希、喜寿、傘寿、、、、永く生きているとお目出度い言葉で人生の節目を祝ってくれる。事務的なお役所のお祝いもそれはそれで必要なことだろうが、個々の人たちの温かなお祝いはことのほか嬉しくて頼もしい、と還暦を過ぎて身にしみた。この句、喜寿でも傘寿でも成り立つなどと野暮を云ってはいけない。彼の人の「春立つ如き日を迎ふ」という少し自賛気味のつぶやきをまずは愛でてみたい句。

春の雨溢れる遺跡の柱穴   きのこ
 しとしとと降る春の雨がいつのまにか遺跡の柱穴から溢れた。それはたんに水が溢れたのではなく、万物を蠢かす春の雨。遺跡の柱穴から、古代の春が溢れているようだと作者は思ったのだろう。ボクも、そう思った。もっとも、古代の春と云うのは抽象的だけれど、それは、例えば、地中の虫とか蜥蜴とか、春の息吹に、もう少しいうなら古代の息吹にまみれた小さな生き物たち。

失恋は辛いね大根切ろうね   ヤマモトタクヤ
 一本の太い大根だろう、きっと。ヒゲもチョロチョロとあって、土の匂いも残っていていて、大きな包丁でずんずんと切り進んでゆく。切るために切る。切った輪から大根の瑞々しい水分が滲みでる。それをしばらく眺めては再び切る。白い肌に刃を当ててずいっと切る。切ってどうなるものではないが、切る。と、まあ、そんな切なさがちょっとした可笑しさをともなって伝わってくるのは「大根」のせいと、他人事的な響きを持った「ね」のせい。

湯たんぽを抱えて宇宙飛行船   ロミ
 「抱えて」どうするのだろう。湯たんぽが宇宙飛行船みたいだ、というのか。あるいは、それを持って、115億円払って宇宙旅行をしようというのか。ともあれ、「抱えて」から「宇宙飛行船」への落差が馬鹿げていてお見事。

ふきのとうひとさしゆびはぼくのゆび   汽白
 自問自答の句か。その小道具として人差し指が登場している。人を差す指で、人差し指。他人ばかりではなく自身を差す場合もある。「ぼくのゆび」とは自身の存在確認か。小さな「ふきのとう」を前にして。

春の雪夫は狐になりたがり   あざみ
 日常のチョッとしたきっかけで気分に変化が生まれることがある。この句の場合は淡くて溶けやすい春の雪が狐への変身願望をもたらした。ただ、なぜ狐に、と考えても答えなど出ないし、無理に引っ張り出さなくてもよい。春の雪の淡さのように、ふ〜ん、そうか、それはちょっとオモシロイ発想だと受け止めたい。

たましひをひとつ載せけり春の雲   豊秋
 長閑な春の雲に切なさを感じ取る作者の心境を思えば心が傷む。春が来ても癒えることのない出来事とは・・・。常に一抹の不安を抱えざるを得ないこのごろを再認識した句。

【予選句】

浅蜊塩吐く小言など聞きたくなし   コッポラ

草むらを塒とせしか春の雨   太郎

すんすんとあしもと青しはこべかな   啓

春雨や鋸屋根の機屋街   葦人

春朝日浴びて人影西に伸び   いっせつ

マネキンの狐目光る雪しまく   洋平

うしろから抱きしめるよに冬深む   加納りょ

シリウスや耳たぶ冷ゆる水の国   まゆみ

天上は無口なるべし枝垂れ梅   遅足

先生の鴎に託す悼辞かな   ジョルジュ

山盛のご飯をすべる寒卵   えんや

縄電車春一番に引き返す   えんや

今日もまた恋してない手にハンドクリーム   つかむ

万作のにぎにぎほどく陽の光   茜ファン

仙人になりたい男麦を踏む   あざみ

雪降り止まずこの子泣き止まず   草子



2012年2月22日
星野早苗ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 立春後、雨の日が続きましたが、今年の関西の冬はありがたいような冬晴れの日が多く、冬ざれの景色にも緑が点在し、毎朝まぶしい空に救われました。
 暮れに読み終わった『細雪』は、最初から最後まで、関西贔屓の小説でした。
 愛想の悪い奈良ホテルに泊まった幸子夫婦はダニにも刺されるのですが、悪口はそれだけ。風景、文化、食べもの、着物、人物、全てにわたって戦前の京阪神間のスノッブな魅力が満喫できます。幸子夫婦の一人娘、悦子と女中のお春どんが魅力的でしたが、作者の意図とは別に、主人公の雪子より、はすっぱな妙子を応援したくなるのは、時代のせいでしょうか。
 今月は、全233句の中から・・・。

【十句選】

立春といふささやきに似たるもの   今村征一
 直喩を用いた句は、観念的・抽象的な方向へと流れがちで、成功させるのが難しいと言われます。しかしこの句では、「ささやき」というかすかなものに譬えることで、春の気配をつかみとることに成功していると思いました。

寒明けの水と飲みほす粉ぐすり   きのこ
 「水」そして「粉ぐすり」という具体的なものを合わせることで、くっきりと句が立ち上がってきます。物だけしか描かれてはいませんが、胎動する春の気配が、しっかりと感じとれる句です。

はたちです背は伸びてます温め酒   加納りょ
 「は」は、暗黙の対比の助詞です。精神的成長はまだまだかも知れないけれど、背は伸びていますよ、という健康さに惹かれました。「温め酒」などという、大人びたものにも、手を出して……。

溶けるとは氷の光生るること   学
 「氷解く」という季語を視覚的に捉え直した句。溶けだした氷が初春の陽光に光る様子がはっきりと目に浮かびます。こうやって、ひとつひとつの季語を自分の感覚で再定義してゆけたら楽しいな、と思わせる作品です。

涅槃図へこの世の十歩ほどの距離   遅足
 〈旅に病んで夢は枯野をかけ廻る 芭蕉〉〈糸瓜棚この世のことのよく見ゆる 田中裕明〉というふうに、彼岸と此岸、その距離と同時に行き交いをもまた、俳句は十七音という短い詩型のなかに表現してきました。その流れに連なる句ですね。

春風の道にまじわる人の道   遅足
 「風の道」と「人の道」。本来は自然が先で人が後なのでしょうが、しかし今はまじわっている。まじわることで人はすこし幸せをも感じるわけですが、春風の方もまた、人とまじわる幸せを感じているかもしれない、と思わせる句です。

色付けるサンショウウオの二月かな   豊田ささお
 「猫の恋」のサンショウウオ版でしょうか。「色付ける」は、「色が鮮やかな季節になった」ともとれますが、ここでは「恋の季節に入った」という読みで、いただきました。実際の彼らの行動は知らないのですが、生き物の生命力と切なさを感じさせます。

女子衆売れ残りたるほっけ割く   たか子
 売れ残ったほっけを割いて、焼き魚にしてまた明日売るのか、それとも今夜のおかず用に分け合って家に持ち帰るのか、いずれにせよ、女子衆の力強いパワーを感じさせる句です。冬の北国の光景として読みました。

凩や子を東京に取られけり   香おり
 昔、〈東京へゆくな/ふるさとを創れ〉という谷川雁の詩があったのを思い出しました。今もなお東京は、多くの若者たちをひきつけているのでしょう。「凩や」の季語も、切れ字も、よくきいていると思いました。

御渡りや女工哀史の残る街   山渓
 諏訪湖の御渡りの光景でしょうか。「女工哀史の残る街」は、概念的説明ともとれるフレーズですが、この句では、諏訪の製糸工場に勤めた女工たちの歴史を想起させることでいっそう「御渡り」が生かされているように思いました。

【佳 作】

病床は堅きものかな寒椿   涼

日をのせて白鳥湖へ急ぎけり   太郎


春意ふとガラスの中の阿修羅像   今村征一

色も香も海より春はやって来る   せいち

きはやかに臂はる阿修羅梅一枝   啓

初蝶の息抜くことを知らぬなり   遅足
ほうれん草茹でて来し方明るくす   〃

乳飲み子の腕組みを解く春隣   茂

春山を飛ぶ行者あり祠あり   豊田ささお

春間近きのうはおとといきょうはあす   草子
枝垂れ枝に花芽のごとく寒雀   〃

蝋梅や二上の風の透きとほり   とほる

春めくや入院の父窓に寄る   紅緒



2012年2月15日
早瀬淳一ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 まだまだ寒いですが、皆さんお元気ですか?
 いま、「World Order」にはまっています。ご存知ですか。須藤元気さんが代表のパフォーマンス・ユニットで、スローモーションとロボット的な計算され尽くした動きのダンスで、調和的な美の世界をつくりあげます。能、狂言、日舞など徹底的に型の美を好む日本人らしいパフォーマンスです。おもしろいのは、このような型にはまったダンスが、海外で熱狂的にうけているのです。まねするグループもいくつも出現しています。盆栽や俳句が、BONSAI、HAIKUとして世界中に広まっているのを思い出します。  今回もたくさんの投句ありがとうございました。そろそろ探梅に行きたい季節になりました。それでは、よろしくお願いします。

【十句選】

粉雪が女言葉のように舞い   加納りょ
 粉雪はちらちらと舞い、一直線には地面に落ちない。その雪片は、見えているのにすぐに見えなくなる。気がつくと襟元など意外なところに入り込んでいる。その様子を、婉曲的な、柔らかい女言葉にたとえたのはお見事。が、最近は草食男子の言葉は柔らかく、女子の方が言葉が荒いという風潮はありますが。(^^;)

凍み豆腐年金のこと猫のこと   伍弐拾
 凍み豆腐は、他の種類もあるかもしれませんが、一般には高野豆腐。少し甘くもどしても地味な食品なので、子供には人気がないが、ご年配には人気がありそう。私も好物。年金のことを心配してもしょうがないので猫のことでも思い出すかという、肩の力の抜け方が、この地味な食品によく合っています。三段切れのようですが、中七下五でひとフレーズ。ね、で音を踏んでいるのもおもしろい。

日脚伸ぶ回転ドアはマイペース   山内睦雄
 自動の回転ドアは日がな一日ゆっくりと一定の速度で回っている。自動でない回転ドアは重く、一度回るとなかなか自然に止まってくれない。いずれにせよ、そんな回転ドアをマイペースととらえたところは、なるほどと思わせられます。少し日の伸びた静かな午後、マイペースに回る回転ドアは健気じゃないですか。

吾が鬼の面打つ母の豆一つ   啓
 江戸時代後期の俳諧のよう。作者はおそらく中年の男性(の設定)。子供たちとの豆まき、その傍らで孫に混じって老いた母親が自分の息子に向かって豆を投げているのでしょう。その投げ方が、一粒だけを軽くぽんとぶつけたのですね。なにか、泣かせるじゃないですか。同時に、作者の老母に対する愛おしさも伝わってきます。

ラーメンの熱き丼寒に入る   山渓
 類想もありそうですが、その意味と文体の単純さの強さ、1年でもっとも寒い時期の熱いラーメンのリアリティー、で頂きました。単なるラーメンそのものの熱さではなく、入っている器の熱さというのがいいですね。テレビで見ましたが、ニューヨークなどでも日本のRAMENは熱狂的にはやっているそうですね。ちなみに、神戸方面に住んでいる方は、灘区の2号線沿いにある「竹屋」、おいしいですよ。

豆撒いて心の鬼のありどころ   戯心
 作者は子供たちと一緒に、少しはしゃいで豆をまいている。家の中の災い・邪気よ、外に出て行ってしまえ。そのとき、ふと作者の心に浮かんだのは、自分の心にもそっと棲んでいる鬼=恨み・嫉妬ではなかっただろうか。そのことを、「心の鬼のありどころ」と詠んだ。措辞としてもぴたりとはまっているし、上手いです。意味も深い。

恋というモヘアセーターらしきもの   おがわまなぶ
 セーターが季語ですね。モヘアセーターというのは、モヘアの毛糸で編んだ、モアモアとしたセーターのことでしょうか。恋というのは、もちろん温かいですが、でも手応えのわからない、曖昧模糊としたものだとすると、この例えは言い得て妙だなと思いました。

豆がとぶとぶなでしこの福女   茜ファン
 豆がとぶ、で節分の句としていいのか少し迷いました。まず、なでしこを普通の大和撫子の意味と取る場合、おとなしい少女の福娘が飛び交う豆のなかに立っている図を思いました。次に、なでしこジャパンと取る場合、とぶなでしこの福女、と切って、なでしこジャパンの大野選手なんかが跳んでいる図が浮かんでおもしろかったです。

ポニーテールビジネススーツの春うらら   川崎洋子
 何も言っていないですが、なかなかつくれない句だと思いました。女子の髪型としては地味な方のポニーテールの、これまたグレーの地味なビジネススーツ(スカートは膝丈)の若い女の子。そこになにかいじらしい色気を感じます。それが、春うららで健康的な色気になりました。何を言っているのかわからなくなってきました。

枝の雪すべて上向き空青し   豊田ささお
 すべて、が言い過ぎで、中7は「上向いていて」ぐらいかなと思いましたが、でも「すべて」としないと景のおもしろさが伝わらないですね。どの枝にも根本から先までびっしり積もっている雪の正確なしかし意外な把握。普通の写生を越えた写生の面白さだと思います。

【予選句】

電飾の橋点りたる寒暮かな   太郎
・・電飾の橋、がおもしろい。

一条の夕日に浮ぶ大白鳥   太郎
・・一条の夕日が大きな景。

娼婦かもしれぬ女の黒コート   涼
・・その発想がおもしろい。

ケニアから届くメールや寒のうち   古田硯幸
・・寒いこのときに、ケニアに発想がよく跳びました。

加賀の嶺々翼の如く日脚伸ぶ   山畑洋二
・・日脚が伸びるのが翼のようというのはすごい。

大氷柱小氷柱の先にある深空   山畑洋二
・・よく景がみえます。

先生の歯のきらめきて山椿   俊
・・美人の若先生なのでしょうね。

ゆり根むく綺麗な髪になったでしょ   加納りょ
・・ゆり根との取り合わせがおもしろい。

冬の川底の芥に水澄みし   きのこ
・・芥の水が澄んでいるのが意外です。

優しさも黄色のセーター程で良し   山本たくや
・・モヘアセーターと少し似た句。

キムチ甕庭先に埋め春を待つ   邯鄲
・・韓国の家庭を思わせます。

厨より妻の鼻唄春立ちぬ   邯鄲
・・古風な感じでいいですね。

寒灸(やいと)含み笑ひの二人かな   邯鄲
・・灸でいたずらしようとしているのかな?

口遊む雪山賛歌深雪晴   今村征一
・・付きすぎですが、きりっとした寒さが伝わります。

日向ぼこする鳩三脚立てる人   茶影
・・静かな対比がいいです。

立春の中華人民共和国   伍弐拾
・・立春の天安門広場が浮かんできました。

立春大吉顔料の朱のおきどころ   伍弐拾
・・うまい。十句にしようと思いましたが、2句並んだのではずしました。

土曜日のカツレツさくり春きゃべつ   茂
・・土曜日のカツレツと春きゃべつはおいしそう。

冬晴れの飛行機雲は交わらず   遅足
・・冬晴れの感じがよく出ています。

初夢や手ぶらで帰る鬼退治   山内睦雄
・・初夢の空振り感が出て、おもしろい。

杖の赤い手袋ジンライム   山内睦雄
・・1編の詩ですね。

バレンタインのチョコとかやないですか   せいち
・・照れくさい感じですね。

豆撒きの上より睨む鬼瓦   せいち
・・構図がおもしろいですね。

春ですよ目くじら立てているあなた   せいち
・・そう言いたい人いますね。

板東の震えやまねど土の春   啓
・・関東でもなかなか地震が止まないですね。

鯛焼屋人形焼屋と並む社   えんや
・・並ぶ、かな。人形焼き屋がいいですね。

探梅や撫牛の鼻つやつやと   みさ
・・あの鼻、つい撫でてしまいますね。

県警の現場検証残る雪   恥芽
・・事故現場でしょうか、リアル。

諍ひは一語でをはる福寿草   たか子
・・仲裁の人の強い言葉のような気がします。

蝋梅や自転車止めて立ち話   山渓
・・なにげない日常がいいですね。

福は内鬼も内よの声もあり   菊美
・・鬼がおれも内に入れてくれ、とつぶやいたのでしょうか。

人の孫もう見あきたなホーホケキョ   らっこ
・・寒中見舞いでしょうか、おかしい。

凍返る星のささき聞こゆほど   くまさん
・・きれいすぎですが、本当にそうですね。

屋根の雪うすき夕日に映えのこる   菊坂
・・うすいピンク色と白のコントラストがいいですね。

セールスの電話に返事五日かな   ゆき
・・正月五日はこんな感じですね。

門までは道連れのあり追儺の夜   とほる
・・門までついてきてくれた人が感じいいですね。

春よ来い井上ひさしの丸めがね   川崎洋子
・・これも十句に入れたかったです。あの顔と丸眼鏡は「春よ来い」って感じですよね。

立春の男ともだち小声なり   あざみ
・・なんで小声か、いろいろ読めますね。

風二月バイクを止める橋の上   豊田ささお
・・さりげないスケッチ、好きでした。

節分の放り出されし藁のくつ   豊田ささお
・・藁のくつ、秋田か山形の感じがします。

冬霧や特攻基地の在りし湾   和久平
・・声高には言っていませんが、深いものが伝わります。

市議選に出馬を決めて鶴帰る   和久平
・・庶民が市議選に出るというのは大ごとですが、さらりと決めたところが、不思議な感じ。

北帰行幾たび見れば旅たつか   和久平
・・いつ見ても、まだそこに鳥がいるのですね。

着ぶくれてさつま漢の脚短か   和久平
・・鹿児島県の男性に怒られそうですが、おかしい。

北帰行舟を押し出す漁師妻   和久平
・・帰る鳥と漁師妻の取り合わせがいいですね。

立春のLesson3Section1   KQ
・・勉強をがんばっているかわいい中学生が浮かびます。

冬帽や縦列駐車してをりぬ   豊秋
・・冬帽をかぶったダンディーなご年輩のドライバー。

桜草生まれてくれてありがとう   紅緒
・・まさに桜草がぴったり。

【ひとこと】

◎こうされては?
寒の風瓦礫分別する浜辺・・温かみのある季語にされては。
凍て蝶とソーラーパネル村日和・・凍て蝶が救われていますね。
青天や着ぶくれの吾に静電気・・の我に、は、をして、でいいのでは。
花椿古文書閉ずおんな宮司・・閉ずは閉じるでは。
春浅し兄に向かひてボール投げ・・兄弟のキャッチボールや春浅し、とされては。
春浅し異国のボトル漂着す・・異国がやや平凡。「イラン」とかにされては。
猫の耳血管まで透き日向ぼこ・・血管の透く猫の耳日向ぼこ、とされては。
通過列車ビュンビュン過ぎる春待つ日・・ビュンビュン過ぎる列車や春待つ日、とされては。
昼月の高さへ鳶舞ふ冬の晴・・昼月のところへ鳶冬の晴、とされては。
白壁の裏木戸開いてつくしん棒・・つくしんぼでは。
ショベルカー雪を掬ひしまま置ける・・置けるは、の夜、とされては。
縄電車春一番を迂回しむ・・迂回しむ、を一員に、とされては。
春遅し手荒れなだむる小半時・・なだむる、を、をなぜるとされては。
ぽつんと裸木震災ボランテイア・・音が足らないので、ぽつねんと、とされては。
如月は蜜柑椪柑伊予柑で・・感じが並びかたい。如月以外ひらがなでは。
節分の鬼の職業公務員・・の職業、を、をつとめるとされては。
着膨れてまだ半纏を羽織けり・・まだ、をさらに、にして、を、を取られては。
下萌の測量杭の打たれけり・・「の」は、「に」では。
冬の雷ほくろに意味あることを知る・・ほくろの位置の意味を知る、とされては。
HONDAとかSUNTORYとかTSUBAKIとか・・TSUBAKIはシャンプーでしたっけ。ブランドは2つにして、季語で処理したい。

◎シンプルに
雪深し田の面の遥か小屋埋ずみ
逆さ嶺々皺くちやにして鴨着水
頬二つ風の一撃凍返る
寒風の誘いに乗らぬ敗れ傘
垂り雪朝の日つつみ雫落つ

◎説明
夕映えや鴨にまじえる大白鳥・・にまじえる、が。
元日のカフェのテーブル乾いてる
春浅し癖のある声確認す
固き梅光出したる木の梢
梅固き山門うらの道険し
たんぽぽのぽぽぽぽぽぽぽ狂ひ咲き・・狂い咲きが。
雪霏々と一切の音閉ざしつつ
科作り獅子に噛ませる新成人
遠くても空へまっすぐ麦青む
灰汁抜けてしなやかなりし菠薐草
たっぷりと父の気概や豆を撒く

◎報告
産院に駈け込む妊婦室の花
湯煙や冬の箱根路破顔満つ
墓参り雪に埋もれて氏見えず
ぼたん雪手のぬくもりに置いてみる
予報士の日替わり衣装に雪しずく
春の夢入選句集に我が名見し
初朔日エスカレータで横向かれ
ジャケットのポケットに鳴る釣硬貨
春立て予報の声も弾みがち・・立ちて、ですね。
御神渡り顔白く塗る男たち
山ひとつ越へて今宵のふぐと汁

◎理屈
戸の滑り重たき屋根の雪嵩に
マスクして眼鏡の曇る朝の道
サテツとは蹉跌のことよ蕗の薹・・植物ではないと言うことですね。

◎結論・答えを言った
やはり良し冬の箱根路湯の煙り
瀬枕の光の春の速さかな
冗談の世の中に棲み寒雀

◎言い過ぎ
たっぷりときみに抱かれて山眠る
躍りだす風花港見えてより
立春や看板娘の声まろし
日に透くる臘梅明し寒明忌

◎即き過ぎ
久女忌や不束と云ふことばあり・・いろいろ考えてしまう。即き過ぎ?
国訛り聞きつつ啜る根深汁
山積の廃材背に焚火かな・・廃材と焚火が。
温き血の通う六腑に寒の水
大梁の土間ほの暗しかまど猫
節分や露店の棚の鬼の面
捨て畑むかし狐火出し辺

◎・・・過ぎ
春北風瓦礫のままの辻の跡・・リアルすぎ。
鱈白子甘し庄内母の郷・・材料が多すぎ。
寒月に選ばれし者我一人・・自分を出しすぎ。
立春だ今しあわせの境界線・・思いを出しすぎ。

◎類想
焼芋や山に色ある夕間暮れ
海空をひと色にして雪霏々と
掘り炬燵一年前のカレンダー・・いいですが。

◎当たり前
兄を追う弟敏捷(はしこ)きつばくらめ
身にちさき内燃機関ふゆ椿・・内臓のこと?

◎季語は?
角氷崩れる音のコップかな・・角氷は季語になりますか?
ファミレスの隅に老婆は独りおり・・季は?暗すぎ。

◎季重なり
寒の月湖上に伸びる白銀路
センバツに選ばれ跳ねる春隣

◎重複
雪しんしん無音の行間埋めにけり

◎主観
人生を語れるやつはおらず雪
凍て返る田畑の土も深呼吸
剣闘士理想の声の鬼やらい

◎抽象的
冬晴れのなかの弟透きとおる
夢二画のをんなや春の白昼夢
探梅や見え隠れする長所かな

◎よくある・想定内
愛してるなんて嘘だろぼたん雪
今日もまた万年床か冬の朝
黒帯の坊主頭の寒稽古
受験子の母は会うたび嘆きけり
立春の叡山電車鞍馬行き

◎分かりにくい・難しい
草城忌ダンディとはと問う男・・状況がわかりにくい。
雪掻きの手は休めずに後日談・・後日談がわからない。
裸木の男もほれる肉体美・・裸木が肉体美ですか。ややわかりにくい。
煮崩れの湯豆腐妻に笑わるる・・どうして笑われるの?
寒靄を突つ切って来る夢の汽車・・夢の汽車が?
薄氷晴れ間の空へ飛び去りて・・何が飛び去りて?
立春の北京ダックの皮と身と・・皮と身がどうなのか?
日向ぼこ以下同文のメール打つ・・以下同文のメールとはどんなものか?
寒空へ天使の眠り向けており・・天子の眠りとは?
うつくしき骨となるまで話し込む・・状況が?
朝なさなすっくと立ちし大根かな・・朝なさなが?
雪ふればこの道はシスレーの道・・シスレーの道が浮かびませんでした。
つむり直と寄する阿修羅梅一枝・・景がわかりませんでした。
ぴしぴしと鳴れる池面や春立てり・・氷が割れているのかな。ややわかりにくい。
寒雷の思はぬ長さ箸を擱く・・漢字が難しい。
白雪の舞えば舞うとき阿波踊り・・なぜ阿波踊り?
喉もとを惑ふ人の名春おぼろ・・惑う人の名が?
梅三分匂ひを寄せて闇の中・・寄せて、が?
風秀づ天満宮の白梅に ・・風秀づ、がどんな感じでしょうか。
寒目白車体ふかしてあたためる・・車体に止まるのですか。
立春を鷲掴みする如来かな・・ややわかりにくい。
粗方を捌いて渡すごっこ(=布袋魚)かな・・景がわかりませんでした。
シクラメン君の一語の小さき嘘・・どんな嘘だったのでしょうね。
春時雨羅典語朗読星菫派・・漢字ばかりの効果が?
如月の足し算十人十色なり・・足し算が十人十色とは?
紀元節二百世継ぎでまる休み・・まる休みが?
寒声やイロハで歌うドミソミド・・わかりません。
おみ足を見せし雛も飾られて・・どんな服装ですか。
春泥は赤坂通りのホテルから・・状況が?
春愁の始め別れの握手から・・答えが出た。
春の恋仏の妻のたなごころ・・仏の妻とは?
胴回り測られてゐる冬木かな・・状況が?
節分の乳輪ピンクjの年男・・わからない。
ヘンゼルがグリム抜け出す愛の日に・・愛の日はバレンタインデー?
菜の花やひとつ湖畔の測量士・・ひとつが?
水中を走り来るのは佐保姫か・・佐保姫がなぜ水中?
冬の日や影がはりつくレンガ塀・・自分の影でしょうか。
ハイウエイ雪降れば現にもどる・・なぜ?
つかのまのヒロイン着地春淡し・・フィギアスケートですか。
縦縞が横縞になる春のマジック・・どんなマジックでしょう。阪神のユニフォーム?
鬼やらいテレビにでたってほんとうですか・・誰に対して?
白秋の恋のゆくえや冴え返る・・白秋に詳しくないのですみません。
麦踏むや正面からの戀ひの文・・なぜ正面?
靴音の響きに合わす冬の薔薇・・揺れているのでしょうか。
冬の海白髪どうしのかくれんぼ・・老人どおしのかくれんぼとは?
加湿器が机の上でごろりとし・・ごろりとしが?
柄が鞭になりしカバンや冬が行く・・柄が鞭になり、とは?

◎感想・その他
だいすきよあなたがすきよ蕪おろす・・うーん。
お隣の風呂からハミング春近し・・春を待つ感じが出ています。
すべり台すべるでもなし冬の蝶・・冬の蝶が浮いているような。
みちのくの桜の冬芽膨らめり・・震災から1年なのでいろいろ思いますね。
梅蕾む園のをちこちもぐら塚・・安らぎます。
ビヴァルディ胸のはざまを春の風・・四季のメロディーですね。
走り根に絡む走り根鳥交る・・生命力を感じます。
父と娘に黙の長きよ春炬燵・・よくわかります。
水仙や掛け声揃う列の靴・・そろそろ運動部も活発になります。
庭石の輝る日続くや寒椿・・静かな日々ですね。
春立ちてきな粉を入れしヨーグルト・・一度やってみたいですね。
ミュゼットの短き鼻に飾り餅・・ミュゼットは、小さいクルマですね。
寒林の闇に鍵鎖す終列車・・なつかしい。
足湯して霜焼けの指ほぐしをり・・足の指としたら、かなり痛いかもしれませんね。
竈猫しっぽでタクトふりており・・確かにしっぽプラプラさせていますね。
三輪車のピカピカのベル春を待つ・・寒いのでまだ使えないのですね。
鬼やらひ吉野の山は鬼ばかり・・おもしろい。
梅の花ぽぽぽぽぽぽと蒸気船・・暖かい感じがわかります。
節分のリストバンドの鬼面かな・・面をかぶってリストバンドをされていたんですね。
立春の真青き空や竹の園・・竹の里で変化が欲しい。
菜花摘み野掛け芝居の触れのなか・・なつかしい。
夕河口ゆりかもめ群れ鳥柱・・夕河口は苦しい。ゆりかもめと鳥柱は重複。
春近し心のギヤー入れ直す・・日記。
真夜更けて二月の雪の霏々霏々と・・ややおおげさ。
黄泉の子とデュエットしてる雪女・・フィクションが2つ。
トラウマの未だ癒えざる冬の月・・ネガティブ+ネガティブ。
AVを見た翌朝の雪の原・・下ネタ。
風ひゅるる雪女また啜り泣く・・暗い。
冬夕焼け忘れてならぬ人のこと・・道徳。
冬麗や去勢されたる犬と猫・・やや乱暴。


2012年2月8日
中谷仁美ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 暦の上では春ですが、寒い日が続きます。みなさまお元気でお過ごしでしょうか。私は寒いのが大の苦手で、寒いと眠くなります。きっと前世は熊かかえるなのでしょう。ああ、暖かい春が待ち遠しい。
 今回いただいた句は、なんとなんと234句!「今週の十句」新記録だそうです。冬は俳句ができやすい季節なのでしょうか。猫はこたつで丸くなる、俳人はこたつで俳句詠む、なのかな、なんて思ったりして。楽しい句、刺激的な句がたくさんあり、あれもこれもと思いながら読んでいるうちに、たくさんの句を選んでしまいました。どうぞお付き合いください。

【十句選】

寒い朝するりと剥けしゆで卵   えいこ
 寒い朝って、いろんなことがつらいのですが、そんな中でゆで卵がするりと剥けると嬉しいなあと思います。自分もこのゆで卵のようにするりと布団から出られたらいいのですが・・・。日常の一場面ですが、うまく五七五で切り取ることで素敵な句になっていると思います。

ユニクロへ脱力系女子冬に入る   山本たくや
 寒い冬、ユニクロほどいいところはないよなーと思います。何を買っても安くて暖かいしそれなりにおしゃれ!脱力系女子、ユニクロに駆け込んでそうですよね。さらっといまどきの言葉を入れられるって、うまいなあと思います。

絨毯に秘密話の染みてゆく   加納りょ
 この絨毯は、ペルシャ絨毯などの豪華な絨毯。高価な絨毯が敷き詰められた部屋でなにやら密談をしている。なんだかワルの匂いがします、この句。「華麗なる一族」とか「白い巨塔」とか、そういう世界のようなイメージ。ドラマがあっておもしろいと思いました。

UFOの堕ちて海鼠になったのさ   せいち
 実はUFOが好きなのです。最近、円盤型以外にいろいろな形のUFOが出現していますよね。確かにナマコみたいな形のUFOも目撃されていますね。よくあるつくりの句なのかもしれませんが、発想を柔軟に広げるって大事です!「なったのさ」という軽さもいいと思います。

大寒の水をつかんで絞りけり   遅足
 大寒の冷たい水に浸した雑巾をぎゅっと絞っている様子を想像します。「水をつかんで絞る」という捉え方が新鮮で魅力的です。

春の虹取りこぼしたるブーケパス   孤愁
 結婚式で、花嫁が、未婚の女性に向かってブーケを投げるイベントがあります。受け取った人は次に結婚できるというジンクスがあります。ブーケトスというほうが一般的かなと思うのですが、なにせ、そのブーケを取りこぼしてしまった。自分が参加した経験からいくと、あのイベント、取りたい、というよりも落とすと失礼だからなんとしても取らねばというプレッシャーのほうが大きい気がします。この人の場合、案外、取りたくなかったから、取りこぼしてよかったわ、と思っているのかも。そう思わせるのは「春の虹」だから。自分が良しと思う人生は人それぞれ。ブーケがいらない人だっていますよね。

今年去年母の小言の響くこと   土筆
 虚子は「去年今年貫く棒の如きもの」と詠みましたが、去年も今年も変わらぬものと言えば母の小言ですね。いくつになっても納得してしまう一句です。「響くこと」という嘆くような終わり方がいいですね。なんだかんだでみんなそんな母が好きなのです。

食パンをはみだす葉っぱ春早し   紅緒
 サンドイッチを作ったら、葉っぱがはみ出していた。その元気よさに春の気配。勢いがあってなおかつおしゃれな感じだなあと思います。俵万智さんの「自転車のカゴからわんとはみ出してなにか嬉しいセロリの葉っぱ」を思い出します。

湖氷る一言だけの便りあり   とほる
 湖が氷になるような寒い頃の便り。誰からのどんなひとことか、というのは読者の想像に任されますが、「湖氷る」との取り合わせが効いていて、きっと心があたたかくなるひとことなのだろうなあと思います。

この戀を四捨五入して冬の月   豊秋
 四捨五入しているのは恋にまつわる何なのか、具体的にはわかりませんが、恋を四捨五入するというのはとても冷静な作業だと思います。もう終わりに近いのかも、なんて読んでしまいました。自分の恋を冷静に見つめる眼と、冬の月を見つめるやや感傷的な眼が交錯する感じがいいですね。

【次点】

鯛焼の尻尾にもある餡こかな   邯鄲
 鯛焼きの餡がたくさん詰まっていたら嬉しいなと思うのですが、餡って、生身の魚で考えてみると臓物ということになるので、尻尾まであるとそれはそれでやや滑稽だなと思います。そういうおかしさを淡々と語っているなあと思いました。

凍豆腐タップの響く町内舘   勇平
 凍豆腐、タップ、町内舘。田舎のレトロなイメージが漂うのがいいなあと思います。

雪女呼んでいいかなキョンキョンて   加納りょ
 思わず笑ってしまいました。キョンキョン(小泉今日子さん)似の雪女が出てきたら怖いのも何もかも忘れて近寄ってしまいますね。

背の高い女が好きだ雪も好き   加納りょ
 「背の高い女が好きだ」というスパッとした言い方がいいなあと思います。ただ、「好きだ」ときて後半「雪も好き」というのはややトーンダウンした感じがあってそこがひっかかりました。

受験子の若き我なり急ぐなよ   遅足
 受験生に若き日の自分を重ねて、「急ぐなよ」というぶっきらぼうなひとこと。受験の行き帰りから進路決定、人生そのものまで、色々なものに対する先輩からのアドバイスだなあと思い、とてもあたたかい気持ちになります。

迷いなき冬芽の一つ一つかな   菊
 冬芽のイメージをうまくつかんでいるなあと思います。厳しい寒さの中に顔を出す冬芽に迷いなんてないですね。

白色の鉛筆残る春隣   やすし
 色鉛筆でしょうか。白以外の色を総動員して、カラフルな楽しい絵を描いているのだなあと想像します。ケースには白が残っているのですが、その残った白色の鉛筆からも春の予感がする、明るい気持ちになる句です。

火の島の海ゆったりと魴鮄来   和久平
 なぜにホウボウ、と思いつつ、「火の島」という激しい言い方と「魴鮄」の響きの取り合わせが面白いと思いました。

大寒やちょっとお尻をあげてみる   あざみ
 文字通り重い腰を上げるという感じでしょうか。寒いと何もかも億劫。でも、ちょっとお尻をあげてみる、この感じ、ユーモラスでいいですね。

【いいなと思った句】

千代田区に雪よちよちと落ち積もる   小林飄
 「よちよち」から降り積もるのは珍しいのかなと感じられます。言葉遊びを生真面目に句にしているところがなんだか面白いなあと思います。

活断層直下に冬のすみれ咲く   今村征一
 断層という大きなものとすみれとの対比がいいなと思います。ただ、「直下」というのは意味的に一考の余地があるのではないかと思います。

北窓を塞ぐやジャズる弦6本   勇平
 先月京都であった公開座談会「俳句と動詞」で新しい動詞を作っていこうという話がありました。「ジャズる」って楽しい動詞ですね。「弦6本」とするよりは、家の中の何か違うものがジャズるほうがより楽しいのかも、と思いました。

席譲られて水仙の無愛想   孤愁
 席を譲られていたのは水仙のように美しい女性だったのでしょうか。いくら美しくても、席譲ってもらってお礼のひとことぐらいは言うべきだよなあと思う、一連の場面を見ている第三者の視線ですね。

女物干たる部屋や蜆汁   えんや
 まったくの色気のなさがおかしくてなんだか笑ってしまう一句です。

マフラーのひらがなのごと巻かれて   啓
 字足らずなのが惜しいなあと思うのですが、マフラーっていろいろな巻き方があって、そう言われて考えてみると「め」「つ」「す」あれこれ思い浮かんで楽しいですね。

靴底の斜めに減りて日脚伸ぶ   茂
 冬の間もあちこち歩いたのでしょう。営業マンのことかな、なんて思いました。暖かくなるのが待ち遠しいですね。

萎へてなほ影は正しく冬薔薇   洋平
 冬薔薇そのものは枯れてきてしまったけれど、影はまだ正しく美しい姿のままである。「冬薔薇」のイメージをうまく引き出していると思います。「萎えて」とは、あえて言わなくても「影はなほ」と言えば伝わるかと思います。

如月や遺書に書かれた「僕の夢」   秋山三人水
 なんとなく心に引っ掛かりました。

雪が降る音を殺して黙秘権   茜ファン
 俗な言い方だと、「しんしんと雪が降る」ですが、雪が降る様子に「黙秘権」という言い方が面白いなあと思います。「音を殺して」はやや言いすぎかなと思うので、ここは一考の余地があるかなと思います。

いまはむかし電子レンジのちんと冬   伍弐拾
 電子レンジ、寒い冬には大活躍ですが、最近の電子レンジってあたたまると音楽が流れますね。確かに、ちん♪というのはいまはむかし。ユーモアがあっていいですね。

最終話また見逃せり炬燵猫   紅緒
 炬燵猫、と言いつつ自分も炬燵猫なのだろうなあと思います。炬燵に入っているのにどうして見逃すのさ、という意見もあるかもしれませんが、そこまで思い入れもないけど見ているドラマを炬燵に入ってとろとろしている間に見逃すってあるなあと共感してしまいました。

空を裂き木霊を呼ぶや斧始   豊田ささお
 童話の中のワンシーンのようだなあと思いました。普段の動作を大げさに言ってみるというのも俳句の面白さだなと思います。

寒梅は個人主義に徹すべし   睦月
 寒い中、ちらほらと咲く寒梅。そうか個人主義かあ、と思って見てみると新鮮ですね。リズムが良いといいなと思いました。

日脚のぶ発車のベルのながくなり   睦月
 田舎の電車、春が近くなってきて、ホームに人が増えて、なんだか発車のベルも長い。そんな情景を想像しました。「日脚のぶ」との取り合わせがいいですね。

【気になった句】

自販機の「温かい」押す冬銀河
 青春だなという感じがします。でもややわかりすぎるかなという印象も。

一両の吾妻線や雪野原
 情景がとてもきれいですし、固有名詞も活きています。ただ、写真や絵ハガキによくある感じかなあと思います。

猛犬の耄けて懐けり春隣
 春隣との取り合わせはいいのですが、説明しすぎかなと思います。

冬の宴そこここで聞くポピュリズム
 冬の宴だと当たり前かなと思うので違う場所で聞いてもいいのではないでしょうか。

七変化して白嶺の冬夕焼
 七変化だと具体性に欠けてなんだかぼやけてしまう。その中の一瞬を捉えてみてはいかがでしょうか。

春の鯉水をはがしてきらめきぬ
 水をはがすとういうのが美しい。きらめきぬが月並みかなと思います。

冬林檎はじめはなにもしゃべらない
 なんとなく魅力を感じるのですが、状況がわかりにくいので、もう少し読む手がかりがあってもいいのかなと思います。

荷台よりブロッコリーがもこもこり
 荷台より、という情報はなくてもいいのかもと思います。ブロッコリーを擬人化して冒険してみてはいかがでしょう。

川底の丸太ん棒や冬の鯉
 見立ては面白いのですが、説明になってしまっているのが惜しい気がします。

肩車乗る児はしゃぐ児どんど焼き
 楽しそうな雰囲気が伝わってきます。「〜する児」の〜の部分にひとひねりあってもいいかも。

深深と独白続く夜の雪
 「深深と」という時点で雪は読者につたわるので違う季語のほうが世界が広がりそうです。

冬鳥の海やバッハの無伴奏
 句の雰囲気をつくるのに曲名を持ってくると、読者によって受け取り方に大きな差が生じてしまう可能性があるなあと思います。

青空へ血管のごと冬欅
 よくわかるのですが、なんだか生々しいのがひっかかってしまいました。

あつあつの卵ご飯の寒の暁
 おいしそう!と惹かれたのですが、「の」が多いと句全体が流れすぎてしまう感じがあります。

雪吊りの縄ゆるぎなし木の寡黙
 ゆるぎなし、というのは説明的過ぎるかなと思います。

犬食わぬ喧嘩するやつ春待つな
 面白くて笑ってしまいました。でもやや笑いに走りすぎているかも。

新雪をキュキュと泣かせて女坂
 女も泣かせている罪な男なのかしらと想像しました。これもやや滑稽すぎる気がしてしまいました。

こっそりと見てはいけない冬のこと
 「家政婦は見た!」のイメージかなと思いました。もう少し読む手掛かりがあったらいいなと思います。


2012年2月1日
小西雅子ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】
 今夜は雪かもしれません。夕方、首をすくめて我が家の畑に行くと、今食べられるのは九条ネギと水菜と大根。咲いている花は、水仙と寒菊。たくさん成って収穫できなかった久保柿は遅れて落ちてくちゃっと転がっています。先日ここで変な生き物に出会いました。猫のようで猫でない。なんと「アライグマ」でした。会ったとたんお互いに「あなた誰?」。
 さて、今回もたくさんの俳句ありがとうございました。今年もよろしくお願いいたします。


【十句選】

次々に出そろう星や北颪   太郎
 何て美しい光景なのでしょう。北颪というきびしい自然が、まるで冬の星を生み出す手品師であるかのような。
 スバルけぶらせて寒星すべて揃う  山口誓子

サーカスの来るてふ噂日脚伸ぶ   邯鄲
 「噂」に感心しました。楽しい「噂」の広がる様子はまさに「日脚伸ぶ」。もうすぐ春が来るよという気持ちも出ていて今回一押しの作品。

水仙や昨日の記憶はや淡し   藤原 有
 水仙の学名はナルキッソス。水鏡に映った自分自身に恋してしまうというおなじみのギリシャ神話。「昨日の記憶はや淡し」は加齢による事情ではなく、「今」だけを生きるナルキッソスにぴったりだと思いました。

日本の家族の形カボチャの形   山本たくや
 そうです。まさにうちの家族です。朴訥としていて古風で不器用で。ただ、選をするときはどうしても当季の俳句を優先してしまいます。「カボチャ」は秋の季語。10句からはずそうかとも思いましたが句の力に圧倒されました。

冬凪や家々の屋根輝けり   菊
 冬の凪は貴重です。外に出て海をながめたくなる気持ちが伝わります。太陽か月か星か雪か、屋根を輝かせているものが何かはわかりませんが、そこに住む人々の喜びが表現されています。

誰彼に触れる嬉しさ着ぶくれて   せいち
 「着ぶくれ」は古今東西俳人好みの季語。たいていは滑稽な「着ぶくれ」が登場するのですが、こんなに幸せな気分にしてくれる「着ぶくれ」ははじめてです。

白菜の一枚ずつの核家族   茂
 面白い句ですね。核家族ならなるほど一枚で足りそう。いえ、私はそれより白菜自身が核家族の集まりだと感じました。結球とはいえ個の葉の集まり。句会でも点はたくさん入りそうです。

独楽おそくくらくらくらときみを抱く   加納りょ
 独楽が止まりそうになるときの様子と「抱く」がとても不思議な結合。「くらくらくらと抱かれる」なら官能的ですが「抱く」はいやにゆっくりしていてミステリアス。

春の日をペロリ舐めてるキリンかな   やすし
 キリンののんびりした様子と「春の日」がとてもよく合っています。「日を舐める」という工夫もあり佳句になりました。

太書きの万年筆や冬深む   天野幸光
 シンプルで魅力的な句。まるまるとした万年筆のひんやり感も伝わりますし、太字のインクの香りや書かれた文字も「冬深む」に合っていると思います。

【次 点】

友禅の黒を着こなし雪をんな   今村征一
 「雪女」も俳人好みの季語ですが、「友禅」を着た「雪をんな」ははじめて拝見しました。とてもユニークな句。白と黒の対象がはっきりしすぎてしまいましたが10句と差がない句です。

荒星に毛並み立てたる茶髪陣   ジョルジュ
 「荒星」と「茶髪」は異色のコンビ。「毛並み立てたる」がわかりにくかったかも。好きな句でしたので10句に採ろうか最後まで迷いました。

トンネルの数だけ雪に籠もる里   山畑洋二
 いい句ですね。トンネルを過ぎるたびにどんどん雪深くなる里。

節分の鬼に父母ありにけり   遅足
 最初は10句に入れていました。「鬼」と現世を結びつけた作品で、端正な上手い句。
 豆撒く闇鬼美しく育ちきし   豊田都峰

十二月八日フラダンスの練習日   孤愁
 十二月八日は太平洋戦争が始まった日。ハワイ(真珠湾)でつながった意欲作です。平和を強調した句でしたが、やや川柳的かも。

四温晴上野の森のゴヤ展へ   みさ
 とても良い句だと思います。ただ四温晴という季語はどうでしょう。「四温晴上野」と漢字が続いてしまいます。「上野の森」と「ゴヤ」を生かす、もう少し柔らかな季語の方が良いかと。

ウナ電の黄泉より届く深雪晴   豊秋
 「ウナ電」を知りませんでした。調べましたらかつての至急電報とのこと。深雪晴なら黄泉からなんでも届きそう。ステキな句です。

豆大福の豆から食べる小正月   あざみ
 「あるある」多くの人がそう思うでしょう。小正月は小豆粥を食べるという習慣が昔からありますが、それとも相俟って上手いなあと思いました。

【良いと思う句】

居住まひを正して対峙枯れ山水   葦人
 感情を最小限に抑え墨絵のような句。作者はきっときりっとした方なのでしょう。

一月の繊月に会う部屋の内   まゆみ
 「部屋の中」が抽象的で惜しいです。ここをうまく推敲したら10句に入るかも。

夕市のチョコつめ放題日脚伸ぶ   きのこ
 現代の風景。どんどん詰め込まれているチョコレートが可笑しいです。

九分九厘凍らせて池の嗚咽かな   コッポラ
 この句も「嗚咽かな」までは「おーっ」と思いました。「嗚咽」で作者の主観がでてしまいました。イメージ化しやすい言葉に。

見え隠る冬青草の猫の耳   啓
 「冬青草の猫の耳」は素敵です。捨てるのはもったいないので再考を。もうおわかりのように「見え隠る」が不要です。「冬青草の(に)猫の耳」でもう見え隠れしています。

サッチモの振り絞る声春近し   恥芽
 サッチモの声と「春近し」はとても良い取り合わせです。春が近いので振り絞らないほうが良いと思います。事実としても。

雪催黒一色の地獄門   隼人
 すっきりして良い句だと思います。この「地獄門」は映画・詩・彫刻、どのことかわかりませんが、「雪催」と「地獄門」ですので「黒一色」と言わない方がより黒く感じるかもしれません。

雪道をコントラバスに譲りけり   えんや
 こんな光景いいなあ。狭い雪道でコントラバスを運ぶ人に出会ったのですね。上五は「雪の道」のほうが良いでしょう。
 雪が来るコントラバスに君はなれ   坪内稔典

華やぎて獅子に噛ませる新成人   大川一馬
 「新成人」とくればもうじゅうぶん華やいでいますので「華やぎて」は平凡です。もう少し接写して何か作者独自のものを。でも未来に満ち満ちた光景ですね。「幸せに」と願う瞬間です。

着ぶくれは昭和のこととなりにけり   涼
 平成の着ぶくれはモコモコのダウンコート。「昭和」といえば、それ以前のコートや半纏、綿入れの着物などを思い出します。次回はぜひ平成の「着ぶくれ」の様子を詠んでください。

LEDの厨を覗く雪女   たか子
 意欲作です。「LED」はちょっと省略しすぎましたね。しかしこんな刺激的な作品はどんどんお寄せください。お待ちしています。

モーロクに美しい冬の脚二本   ∞
 魅力的な句です。ちょっとごちゃごちゃしてわかりにくくなりました。例えば事実とは違うかもしれませんが、「美しい脚二本モーロクの冬に」など自由律もたまには効果的。

海豚飛ぶ火山の海に棲みつきて   和久平
 なんて素敵な句なのでしょう。切れもあり、展開もあり。ただ、「飛ぶ」と「棲む」二つの動詞が平均化していて分散してしまいました。好きな句です。

春一番面従腹背大歓迎   秋山三人水
 漢字だけですっきり。面白いなあ。とてもおおらかで。「大歓迎」という作者の意志を詠み手のイメージしやすい何かに替えれば名句ができそうです。

初旅や黄泉へ一夜の夢列車   草子
 こんな物言いは失礼ですが。この句「黄泉」がとても楽しいところに思えます。「初旅」の「旅」は不要かと。こんなふうにこんなことを俳句にできるなんてステキです。

日向ぼこ校長以下順不同   睦月
 いいですね、この光景。はじめは10句に採ろうかと思いました。中七に一文字足りないのが惜しい!「校長以下順不同」が、ずらっと並んだ先生たちを想像させて俳句らしい俳句。

姉記す足袋のことまた祖母のこと   KQ
 笑いました。「足袋」と「祖母」が並列で。これぞ俳諧です。

貝印カミソリ利かぬ寒の水   伍弐拾
 老舗「貝印」のカミソリと「寒の水」、とても良い組み合わせで魅力的な句になりました。欲を言えば、事実に反しても「利かぬ」は「利く」ほうにしてほしかったなあ・・・。

渋滞の先に豚ゐて寒の雨   とほる
 面白い体験?ですね。豚が寒そう。で、それがまたのんびりしていて。すっきりまとまっています。句会に出せば点は入るでしょう。

人日の麻布十番笑い寄る   豊田ささお
 「麻布十番」というのは関東の人には知名度があるのでしょうね。リズム内容ともに良いと思います。

路面電車ぐるり向きかへ春隣り   紅緒
 気分のいい俳句。良い句だなあと思います。ただ「ぐるり」か「向きかへ」、片方ではだめでしょうか。俳句は短い詩形ですので一文字でも無駄にしたくないと思うのですが。

【気になった句】

浄土ヶ浜気合を入れて寒稽古
 「浄土ヶ浜」と「寒稽古」はとても魅力的な取り合わせです。「気合を入れて」は「寒稽古」という季語にその気持ちが含まれていますので別の何かに替えられると良い句になりそうです。

セーターの香りに沈むお姉さん
 「沈む」に工夫が見られ、気持ちはよくわかります。「香り」と「お姉さん」はイメージが近すぎてもったいないです。どこかで切って異質なものをひとつ。

カバに逢う冬の日ざしも暖かく
 季語として登場するとき、「冬の日ざし」は暖かいことを含んでいますので 「暖かく」が不要でした。とてもこころがなごむ良い句ですね。

フライパン冬の目玉を焼いている
 「目玉焼き」だということがすぐにわかってしまうのが残念。「冬の目玉」は面白いフレーズですのでまた使えます。「フライパン」「焼く」はどちらかでもよさそうです。楽しい俳句でした。

雪おんな湯船に赤き櫛一つ
   なまめかしい雪おんな。「赤い櫛」といえば寺山修司の世界を思い浮かべます。フィクションならもっと派手に、あるいは極限まで地味に。意欲的な俳句ありがとうございました。

クオカード大寒の気で減額す
 「クオカード」という言葉が俳句になったものは、はじめて見ました。「大寒の気」の「気」がわかりにくかったかもしれません。


2012年1月25日
小枝恵美子ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

   今朝、ラジオを聞いていたら、「旧暦の新春寒波到来ですね」と、天気予報士が言っていました。窓の外では本当に雪が舞い始めました。寒さにもめげずに、今年も新しい俳句を目指してチャレンジしましょう。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 さて、今週の十句ですが、皆様だんだんとレベルアップされています。5句投句される方は、1、2句は冒険して下さいね。守りに入らないで、過激に作って下さるとうれしいです。

【十句選】

小春日の風船ひとつ反抗期   山本たくや
 おだやかな日和の空に風船がひとつふわふわと浮いている風景、反抗期の象徴として。何処へ流離うのか、何とも不安げな気持ちを「風船ひとつ」で表現したのが良かったと思います。牧水の歌の「白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」が浮かんできました。

ことごとく冬芽立ちたる森の黙   今村征一
 裸木もすでに冬芽が立っていますが、「ことごとく」に希望があふれていて、春が待ち遠しく感じられます。でも森はまだ沈黙を保っているのですね。「森の黙」がよく効いています。森の中を歩きたくなりました。

寒林を抜け来し影の獣めく   山畑洋二
 寒々とした林を抜けて来る、その影が獣めくという感覚がいいなあと思いました。走って抜けて来たのでしょう。木々の冷たさは人を原始の時代へ引き戻すような気がします。また、その人ではなく、黒々した「影」に焦点を当てたのが詩的です。

寒卵子がらりと開く勝手口   茂
 あ音の繰り返しが気分の良さを表現しています。台所の勝手口から、家の人か親しい人が寒卵を抱えてやって来たのか、もしくは寒卵が既に台所にあって、誰かが勝手口からやって来たのか。 いずれにしても、寒卵があることのうれしさが、開いた勝手口の明るさと響きあっています。「卵子」は「卵」か「玉子」では?

短日やぽくりぽくりとチョコを噛み   加納りょ
 オノマトペの「ぽくりぽくり」が、ゆったりとした時間の流れを感じさせます。短日というと、昼が早くから暗くなっていきますが、私はぽくりぽくりとチョコを食べているんだよ、という捻りがユーモラスな雰囲気を醸し出しています。

金目鯛こいつはきっと面食いだ   加納りょ
 金目鯛は、旬のおいしい魚ですね。眼は金色に光っていて、ちょっと流し眼でもされるとうっとりするかも。「こいつはきっと面食いだ」と断定したのが面白いです。魚屋さんに行って、色々な魚を眺めながら想像すると、楽しくなるでしょう。ユニークな断定が効いています。

また一つ更地に春の風の道   遅足
 家が壊されて更地になり、そこに風の道が出来た、と捉えたところに詩情がありました。「春の風」としたのは、やはりそこから、希望が見えてくるからだと思います。頬をなでる風のやさしさが伝わってきました。

松に雪文字の小さき大辞典   学
 松の緑の上に積もった白い雪は鮮明でたっぷり。そんな窓際の風景をちらっと眺めながら、大辞典を開くと小さな文字がびっしり。雪と小さな文字が響きあって、意外な取り合わせが生まれました。大辞典もりっぱにどっしりとしています。

すっぴんのとっぷんとっぷん初湯かな   KQ
 この句は文句なく初湯のうれしさを表現していますね。破裂音のぱ行の繰り返しが明るくて、たぶん、「すっぴん」だから、女性でしょう。「とっぷんとっぷん」は、乳房がゆれている感じで、豊かな初湯の風景を想像しました。

成人祭マクドナルドの老夫婦   とほる
 成人式の日のマクドナルドは若者でいっぱい。そこに、にこやかに老夫婦が座ってハンバーガーを食べている。成人と老夫婦の間には四〇年以上の歳の差があるが、いつか人は老いて時代は変わる、そんな感慨を想い浮べ、いつもの街角のマクドナルドにドラマを見ているようです。

【予選】

村の音消しゆく雪の重さかな   まゆみ
 今、この句を鑑賞していたら粉雪が舞ってきました。どんどん積もればこの句のように音を消しゆく感じになるだろうと思いました。

犬の座も決まりて温し福寿草   太郎
 冬の日差しの当たる場所を定位置にする犬の様子と福寿草の黄色が良く効いています。

酒蔵の窓みな小さし寒に入る   せいち
 小さな窓が並んで、寒の頃の酒蔵の風景が鮮明に見えます。

木の瘤も耳をダンボに日向ぼこ   孤愁
 木の瘤に日が当たっていつ風景をユーモアにあふれる表現にしたのが良かったです。

冬の蝶つまづいてゆく瓦礫の街   戯心
 この句は、冬の蝶が飛んでいる風景と作者自身が躓きながら瓦礫の街を行く姿との取り合わせと読みました。はかなげな冬の蝶のかすかな息遣いが救いなのかと思います。

ころころと土手をころげる寒雀   えんや
 寒雀はふくら雀とも言われるぐらいふっくらしているので、ころげているようにみえたのでしょうか。上五と中七のひらがな表記が良かったです。

虹色の魚の話新年会   紅緒
 新年会の華やぎの場での会話、「虹色の魚」が未来が輝きそうですね。ただ、もう少し具体性があるともっと良くなると思いました。

冬田より一風として賢治来る   学
 寒々とした冬田のほうから吹いてくる風を「賢治来る」としたのが、詩的ですね。

松過ぎや音楽室の肖像画   豊秋
 音楽室の肖像画との取り合わせに意外性がありましたが、肖像画が鮮明になるともっと良くなる気がします。

陸ガメを冬眠させて斑鳩へ   草子
 陸ガメを冬眠させておいて、私は斑鳩の里へ行きます、と読みました。斑鳩には法隆寺などあり歴史の古い場所なので、亀と響き合うのでしょう。

【気になる句】

寒泳に青年の尻火照りけり
 「寒泳の」とすると、尻に焦点がいって良くなると思います。「に」は説明的になります。

賭け事の好きな人の炬燵かな
 賭け事の好きな人が競馬新聞など読んでいるのかと思いました。中七が字足らずでリズムが良くないので、「男の」としたほうが、より具体性が増しリズム感も良くなります。

老人の鼻穴太し松の内
 お目出度い松の内と老人の鼻の穴を対比させていてユーモラスです。「鼻孔の」とされたらどうでしょう。

寒晴れに尾を振る犬や葬の家
 この句も「寒晴れに」の「に」が説明的です。「寒晴れの」とすると尾を振る犬が鮮明になります。


2012年1月18日
岡野泰輔ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 今年もよろしくお願いいたします。今年もまた、みなさまの投句から刺激をうける一年になればいいなと思います。さて選句をするとき、どうしても説明しやすい句を選びがちになります。得てして説明しやすい句とは、そこに書かれてあることがすべて、自分にとって既知であるかに思い込んでいる場合が多いのです。それを安易に共感と言ったりします。
 説明しづらいが妙に気になる、といった句にも手を伸ばしてみたい。私の経験のサイズを超えて私の言葉がその句に届くか?あるいは追い越してひたすら空転するか?さて、どうなりますやら。

【十句選】

誰彼も掌に雪飼っていた    山本たくや
 不思議な句です。誰も、彼も、つまりみな掌に雪を飼っていた、過去形ですから、今ではなくあの頃は、ということになるのでしょうか。最後が過去形で終っているところで軽い詠嘆の気分が生まれます。掌に雪を飼うという不思議な行為が、日常の尺度では測れないが、何とも魅力的です。雪というすぐ消えてしまう儚いものを愛玩するように飼うという行為。・・と、ここまで読んで誰彼が「誰そ彼」→「黄昏」に通ずることに気がつきました。そうか、一句全体に黄昏の薄い光が差していて、溶ける前の雪が微かに光っています。美しい。

鍵盤の一列流れ冬銀河    ジョルジュ
 冴え冴えとした冬の星と楽器の取り合わせはよくあるかもしれません。たしかに冬の星を見ていると森閑とした大空間から音楽が聞こえてくるような気がします。荒星や毛布にくるむサキソフォン 攝津幸彦  ここでは一昔前の映画に出てきそうな星空に鍵盤のオーバーラップ。一列流れという措辞が捉え難いのですが流麗なタッチを生み出す指、またはそれによってリズミカルに動く鍵盤の連なりを想像しました。

冷温の核やとろとろ煮大根   遅足
 政府は終息宣言を出しましたが、とんでもないと思います。素材の扱いが生で気持ちいい句ではありませんが、同時代にこういう句があってもいいと思います。あまりにもあからさまな核燃料と煮大根のアナロジーは一方が食べ物だけに眉をひそめる向きもあるでしょうが、ここで洒落てどうする?というスタンスもあり、私はそっちに肩入れします。「とろとろ」という措辞は天文学的な時間をかけても無害化されないこの物質の本質に触れています。

天井の天女ほのめく初明り   隼人
 普通に考えると初詣に行った寺社の天井画に曙光が差し込んでいるという図なのでしょうか。それで十分なのですが、違和感は残ります。元旦の夜明けの低い光と、初詣の喧騒は齟齬をきたします。いっそのこと天井画なんて無しにしましよう。自宅でも宿でも寝室の天井に初明りがどこからともなく入り、反射して天井にゆらめく光、それを天女と見た。やがて部屋に光が満ちると天女は消える。子どものころ天井の木目が大艦隊に見えたことを思い出しました。

をとこ帯衣桁を占むる淑気かな    素秋
 よほどの旧家なのでしょうか。現在普通の家に衣桁なんてありませいんものね。私自身、絵では見たことがあるけれど、実際に着物や帯の掛かった衣桁を見たことはありません。ここでの眼目はいつもは華やかな女ものの帯や着物が掛かる衣桁が、無彩色の男帯によって占められているというところです。なぜそうなのかは分からないし、それが淑気につながるかどうかも疑問です。「占むる」が普通ではない感じをあたえて句としては効果的だと思いました。

葛湯とくマグカップの大きさに    茂
 これはまた平明な句。この句はぴったりこのマグカップのサイズに収まり、読みも、それ以上にも、それ以下にもなりようがありません。等身大の句のよろしさ。「マグカップの大きさに葛湯を溶く」という文章を倒置しただけですが、そうすることによって、句が終らずに循環しています。じっとこの句を眺めていますとこの循環が、この幸せな時間を永続させているような気がしてくるから不思議です。マグカップに溶くではなく、その大きさに溶くとしたことで熱々の葛湯のたっぷりした量感が強調されました。

年新た宇宙の渚歩みゆく    和久平
 新年の句としては、このくらい大きく大らかな句があってもいいのではないでしょうか。渚とは海と陸の間(あわい)、打ち寄せる波と砂の混じるところ。そんな両義的な場所を一挙に宇宙的スケールに拡大した気持ちよさがあります。
 打ち寄せる波とは時間の謂でしょうか。新しい年を迎えてこの地球に立って新しい一歩を宇宙的時間に印す作者の気宇がうかがえます。記名版を読みますと作者は年末年始の9日間を循環器病棟で過ごされたとか。そうだったんですね。

あなた雪ですよ早くねましょうよ    あざみ
 素秋さんの予選句にカール・ブッセがでてきますが、この句でもブッセを思い出します。というより、圓歌(当時は歌奴)の落語『授業中(山のあな)』を思い出します。(ちょっと古いか?)生徒がブッセの詩(上田敏の名訳)の朗読をする。冒頭「山のあなたの空遠く」の部分「山のアナ、アナ、アナ、アナタ、もう寝ましょうよ」とやる。やっと本句にたどり着きました。つまり、あなたで始まり、ねましょうよで終る本句は、ある年齢以上の人達には絶対圓歌の「山のあな」を想起させる。これも本歌取りの一種でしょうか。というわけで「あなた」の前にどうしてもアナ、アナ、アナのリフが聞こえてきてしまうんです。
 これで鑑賞になっているでしょうか?もう寝ましょうか?

黒猫のうねりのような寒の夜    紅緒
 一年で一番寒い寒の内、しかも夜ですから、しんしんと冷えて、コチコチに乾いた空気感、ですから本来生きものの気配すら感じることができない、と私などは思ってしまいます。でも作者はこの寒の真っ暗闇に黒猫のうねりのような質感を感じています。特異な感覚だとおもいます。黒猫の艶々した毛並みが動きにつれて柔軟にうねるさまは十分に魅力的です。夜の暗黒のなかの黒のうねりか、夜の冷気そのものにうねりを感じるのか、そこは判然としません。私の実感とはずれるのですが、ある夜の質感を言いとめているようにも思われます。

だるまさんころんださきに年明ける    豊田ささお
 二つ読みがあって、ひとつは起き上がり小法師のダルマさんが転んでは起き上がり、転んでは起き上がりしてゆく。そして新しい年がくる。(まるで大きく転んだ日本が起き上がって新年を迎えるように)まだ完全に起き上がってはいませんが。
 もうひとつは、こちらの方が好きなのですが、子どもの遊び「だるまさんがころんだ」です。鬼が「だるまさんがころんだ」と何回も唱えているうちに年が明けた、というものです。鬼になった子どもが目をあけて振り返ってみると誰もいなくなっているという風景も一瞬見えて、ナンセンスなんですが、懐かしい実感がある。

【予選句】

石のごと波に洗われ浮寝鳥   まゆみ

初富士や夕日は雲の海に落つ   まゆみ

組重の和風洋風中華風   今村征一

うそ寝する猫の耳動く三日かな   きのこ

とりあへず起きることから大旦   せいち

数へ日や村にひとつの理髪店   山渓

初電車杖が杖へと席譲る   大川一馬

しろがねの海を一気に初明り   邯鄲

 後半の勢いはいい。「しろがね」が?初明りする前から海は光っているのか?

さわさわと声のするほう牡蠣積まる   加納りょ

蜜柑むく黄色い爪できみを抱き   加納りょ


初夢やブッセの空へ觔斗雲   素秋
 山のあなたの空に孫悟空、幸せは見つかったのか。

客絶へて三日の猫の大欠伸   素秋

追炊きに老いの乳房をつつく柚子   えんや

淡雪や定家も読んだ方丈記   秋山三人水

橙のプラスチックはないだろう   小川学

 ほんとうに、それはないだろうと思います。

金粉ショー場末の小屋の大晦日   小市
 これもまた大晦日、場末まで言わなくてもいいと思いますが。

元旦の噴煙龍となり昇る   和久平
 力強く起ち上がる年です。

青鷺の池に映れる初御空   ゆきよ

松納猫の奥歯が抜けました   あざみ

国芳の猫の醍醐味姫始め   あざみ

蝋梅のこと宇宙人の尿のこと   ∞

 二つの「こと」の距離に取り付く島がない感じです。妙に気になったのですが。

大仏を後ろ盾にして懐手   洋平

行儀よく箱に納まる鱈場蟹   葦人

人日や飼い主に似る犬の顔   KQ

斜に構え独楽の紐巻く左利き   戯心

 「斜に構え」が姿勢と性格両様にとれ、面白い。また右利きから見ると左利きは曲者にみえるということもある。

門錆し重機ヤードの霜の華   戯心
 門が錆びているということが、ここではあまり効いていないような気がする。ここは省略しても十分ある世界。

シャンプーの香ある病床初鏡   草子

走初ユニオンジャックのシャツを着て   小林飄

 ロンドンオリンピックを目指すという心意気。

沖へ出た船も帰って冬の月   睦月

【ひと言】

煎りたての香り漂い外は雪
 いい感じですが、珈琲と書いたほうがよい。となると「漂い」は不要かも。

ビル上にいつもの鳶いる二日かな
 表記は「ビルの上」か「屋上」で「ビル上」は無理でしょう。

冬林檎重ねし本の上に置く
 あまりにも『檸檬』に重なりすぎでは?

胸張ってト音記号の初ガラス
 「初ガラス」の表記は乱暴。鴉かカラス。

寒昴エルイーディーに付け替えて
 LEDと書いたほうがよい。カタカナ表記にした特別な意味は感じられない。


2012年1月11日
えなみしんさドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 あけましておめでとうございます。これを書いている今日は、正月4日。東京日本橋の七福神巡りに行き、一年の平穏を祈ってきました。さて、年末に旧暦の並記してあるカレンダーを買いました。これによると元旦は、まだ12月8日に過ぎません。つまり江戸なら、師走まっただなか。赤穂浪士の討ち入りも、煤払いも、まだこれからの事。まるで2つの時間が流れているような気になります。冬は厳しいものがありますが、俳句の上では一番好きな季節。今週は193句もの投句をいただきました。楽しみながら、学びながら読ませていただきました。

【十句選】

開け閉ての声の正しき姫始   遅足
 姫始は諸説あり、角川の大歳時記などには「柔らかいメシを初めて食べる」のが本来の意味とあります。しかし、普通の人が思うのは秘め始めでしょう。つまり、すごく生々しいイベントです。「開け閉ての声の正しき」は、そのきわどい所を逃げずに、しかも正月の儀式としての品格を保ちながら表現していて格調の高い句だと感心しました。

鳥の眼を持ち初夢の人となる   遅足
 この句は妙に調子がいい。その原因は「〜持ち」の後で一度切れて、「〜となる」と続ける繰り返しの妙にあるように思います。詠まれている内容は、ごく普通のことですが、上手に表現すると気持ちの良い句になるという見本のような句です。

白ショール肩に余りて二十歳かな   素秋
  白ショールをはおった20才の女性の美しさを詠んだ句。「肩に余りて」と表現したのが豪華でいいと思います。ただ「白を着る」は夏の季語ですし、白秋は秋。やや寒そうな感じがしました。口の動きもなめらかでなく、そこら辺に工夫があると、もっと良くなるのでは。

実の名は聞かぬ約束雪女郎   素秋
 俳人は雪女、雪女郎が好き。バーチャルなアイドルなので、どこにでも出没するし、どんな事でもできる。という事は、どんな句でもできるわけですが、非日常の雪女と、日常生活の、ちょっとしたズレの不思議さみたいなものが面白い句になるのではないか。この句を読んでそんな感慨を持ちました。

天を掃く竹縛られし十二月   学
 「天を掃く竹」の表現に度肝を抜かれます。暮の市で、くくられて売られている竹を表現したのだと解釈しました。その竹は、竹箒なのか、どんどに使う竹なのか。12月の大空と竹の対比が冴えていて見事です。

マント着てレディガガめくあれは母   たか子
 恥ずかしながら、ことしの紅白で、初めてレディガガを見ました。その実力、サービス精神は、マドンナ以上と感じました。この句、そのレディガガが上手に詠まれています。最後に母が出現して微笑ましい。声にして語感もとてもいい。「あれは」の言葉の整え方がはまっているのでしょう。

大王松一本だけの賀春かな   茂
 大王松については何も知りません(あえて調べません)。でも、ダイオウマツという響きに、堂々として威厳のある松の姿を想像しました。そして、それが1本だけの松飾りとは、旧家や、武道道場などの歴史のある玄関をイメージしました。また、3.11の事も思い、厳粛な気持ちになりました。シンプルで、手がかりが少ないので、逆にいろいろと考えることができる句でした。

ふゆだね本当にふゆだね君送る   KQ
 説明のいらない句。大好きな句です。「ふゆだよね」と5文字にしなくても、この方が自然な気持ちが伝わる。「君送る」という関係が下5で提示され、その前の2回のリフレインがいっそうきわだちます。

伊勢海老の曲り具合に興ざめる   あざみ
 タイはめでたい。コブは、よろこぶ。祝い事の膳に用いられる食品は、語呂合わせの縁起モノが多いもんです。そして、タイと並んで尊いのが、エビ。しかも、伊勢神宮の名をもつ伊勢エビ。その理由は、腰が曲がるまで長生き、という事でしょう。おやじギャクは攻撃の的ですが、実は、祝の膳はおやじギャグ以上と感じることも。作者は、その謂われにふと疑問を持ったひねくれ者なのでは。実は、わたしもそうなのです。

セーターの彼を知るのは私だけ   小山正美
 例えば、会社の憧れの先輩。女子社員の憧れの的。そんな存在の彼なのでしょうか。書くとヤボですが。とてもカンタンな句ですが、初恋に近いころの、ういういしい気持ちが伝わっていて、好ましい句でした。

【次点十句】

老人になったその日の日向ぼこ   涼
 わたしが子供の頃は、「日向ぼっこ」はカラダにいいと信じられていたので、子供もやっていました。今やっているのは老人だけ。それとも、季語として残っているだけかも。日向ぼっこをしていると、年寄りになった気がしてくるな〜という事をさりげなくこう表現したのが面白い。

聖夜の灯眺め勤務をせし事も   今村征一
 わたしの会社は高層にあったので、クリスマスの日には、向かいのビルの窓にクリスマスイルミネーションが浮かび上がり、そんな日の残業はせつないものがありました。共感句です。

大楠のざわざわざわと年移る   きのこ
 「大楠」だから「ざわざわ」で、季語の付け方が絶妙です。

北風をまたぎて月の通る道   遅足
 冬の月のきびしさが、きれいに表現できていて上手な句だと思いました。

冬の日をひっかき回し鬼ごっこ   せいち
 冬日を走り回っている子の風景がみえてきます。「ひっかき回し」が成功。

ボヘミアングラスにどさり皇帝ダリア   素秋
 グラスにダリアが差してあるだけの句ですが、ボヘミアン、皇帝が、ロシアチックな 連想をかきたてて面白い。

年の暮夫婦で窓の裏表   邯鄲
 名詞だけの句。「夫婦で窓の裏表」が上手い。大掃除の句として新鮮なものを感じました。

土くれの杖ついている霜柱   戯心
 写生句風の句です。「土くれ」のあらあらしさがいい感じです。

裏側をみせて貼りつく玻璃の雪   くまさん
 雪の表面から見れば、ガラス面は裏側だ、確かに。その発見が句を面白くしています。

姉妹だけの家族会議や根深汁   紅緒
 季語でイメージが変わる句です。「冬いちご」でも「春いちご」でもそれぞれに面白い。この季語も小津安二郎の映画みたいな渋い味がしました。

【その他の候補句】

散り切ってもう身構へずに立つ冬木   きのこ
 「身構へずに立つ」で、冬木の美しさを表現していると思いますが、やや常套かも。

カナリアの空を残して冬木立   遅足
 きれいな言葉が並んでいい感じですが、「カナリアの空」が解釈できませんでした。

折鶴の翔びたつところ雪青き   学
 折り鶴だが、飛び立った所の雪が青かった。取り合わせにややムリがあるような。

師の造る海鼠料理に骨があり   学
 「骨がある」とは、うまいということか。「師」とは誰か。手がかりが曖昧。

倉影に人の明らむ多喜二の忌   たか子
 「人の明らむ」がうまい。この方の多喜二忌の句も良かったです。

星砂が零れてをリし四温晴   たか子
 きれいな句ですが、四温晴と海の砂はピンとこない。

妻の刻母の時など義士の夜   たか子
 「女たちの忠臣蔵」と言った所でしょうか。「妻の刻母の時」から読み取れるものがむつかしかった。

年の暮れ客あしらいの上手い猫   秋山三人水
 猫句。「客あしらいの上手い」と季語が効いています。

ゆきゆきてゆきつくはてやゆきをんな   豊田ささお
 ちょっとやりすぎのように思います。

 まだあるのですが、ここまでにさせて頂きます。
 お風邪など召されませんように^_^;


2012年1月4日
早瀬淳一ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 新年あけましておめでとうございます。でも、これを書いているのはまだ年の暮れ、忘年会シーズンです。今日も実は3晩連続の忘年会の3日目で、これからどうやってさりげなくでかけ、さりげなく戻ろうかと、思案中です。
 さて、24年最初の十句です。年用意のお忙しい中、たくさんの投句、ありがとうございました。生活感のよく出ています句、面白い句も多くありました。ではよろしくお願いします。

【十句選】

一生を記しある墓碑や青木の実   今村征一
 や、をとるか、「一生を記す墓碑銘青木の実」、とされては。日本人のお墓より、外国人墓地にある西洋人の墓碑銘の感じがします。何年に生まれ、何年に結婚し、何年に戦争に行き、ここに眠る、という風な墓碑。その短い記述を見たとき、読んだ人はいろんなことを深く思いますね。取り合わせの青木の実がさりげなく、絶妙です。

凩や小倉最中は箱の中   コッポラ
 外は木枯らしが吹いて寒いけど、お正月の室内は暖かい。みんなごちそうを食べて、親戚のお土産の最中は飽きられて、箱の中にぽつん。まんじゅうやクッキーではありきたり。小倉最中がいい味を出しています。は、よりが、の方が最中に焦点が当たって、いいような気がします。

灯油缶二つ並べて冬入日   すずすみ
 「灯油缶二つ並んで冬入日」、の方が好きです。いかにも風雅、というものではなくて、灯油缶のような雑駁なものがただぽつんと並んでいる光景が、季語と取り合わされ、微妙な詩を生む。俗な要素を得意とする俳諧によく合っています。二つ、もいいんでしょうね。仲良く会話しているようで。

込み合つてゐる討入の日の飲み屋   せいち
 12月14日のある飲み屋のテレビには、赤穂の義士祭の様子が映っているのですね。暮れのせわしない日常の風景の、臨場感がよく出ています。その飲み屋に本当に、一仕事終えた浪士達がどやどやと入ってきたら面白いでしょうね。「討ち入りの日の居酒屋の込み合つて」ともできます。

三分の一の胃の腑や燗熱し   邯鄲
 胃潰瘍で切られた三分の一の胃。あまりお酒はよくないような気がしますが、それでもお正月。奥さんに注意されつつも、ほろりと流し込んだ熱燗の酒。小さな電灯がポッとついたように、熱くなる胃のなか。胃の腑、という言葉がよく効いています。

談志逝く雑炊熱うせよ熱うせよ   伍弐拾
 「談志逝く雑炊熱う熱うせよ」でいいですね。孤高の天才、反骨の人、異色、実は面倒見のいいアニキ、といろんな風に言われた師匠。亡くなってみて初めてその人の真価、意味、がわかるんですね。雑炊を熱くして食べようという言い方に、談志師匠に対する思いが伝わってくるような。それにしても、今年もいろんな有名人が去っていきましたね。

入院は斬新奇抜なマフラーで   加納りょ
 斬新奇抜という言葉が俳句には、激しすぎるかもしれません。ひょっとしたら結構深刻な入院かもしれません。それでも、思いっきり明るい、派手な色柄のマフラーを首に巻いて病院に入ろうという気持ちは、とてもわかります。

はつたりを利かせてゐたる海鼠かな   たか子
 海鼠はすき好んであんなわけのわからない(人間にとって)形になったんではないですよね。だから、はったりをかましたりする気はないはず。でもそこをあえて、作者は「はったりを利かせているんでしょう」と呼びかけてからかっている。そこに、海鼠への愛のようなものを感じます。海鼠にしたら、ほっといてくれよ、と思っているでしょうね。

振り向きて旧姓名乗る雪をんな   孤愁
 このナンセンスさ、好きです。呼びかけられて、名前を言うこと自体がおかしいのに、わざわざその姓が旧姓だと付け足す雪女。雪女は結婚するのか?招待客は誰だ?と際限なく変な空想が広がります。このわけのわからない不条理さ。でも、このように徹底的に遊ぶ、というのも俳句の大事な要素だと思います。ちなみに、雪女も俳人によくいじられて遊ばれています。ほっておいてほしいでしょうね。
 ズームイン朝に出ている雪女   塩見恵介

綿虫や水子地蔵の赤帽子   幸夫
 あまりものは言っていませんが、意味深な句ですね。この鮮やかな赤帽子は哀しいし、綿虫はあわあわとして、水子の消えていった淡い命を象徴しています。ある意味、水子地蔵、は俳句に使うのは反則かもしれません。や、で切り、名詞でぴたりと終る、決まりすぎの句かもしれません。が、年末年始の気分によく合いますね。

【予選句】

靴の甲ふと一滴のしぐれかな   涼
 しぐれの新しい面を切り取りました。

B組に居りし少女に冬の雨   涼
 居りし、と過去になっているのが?ですが、詩を感じます。

空風や隅に集ひし牛の群   太郎
 隅に集ひし、がいい写生ですね。

また一人朝の焚火に加わりぬ   太郎
 平凡かもしれませんが、ほのぼのとしていいです。

雪の富士車内の話題独り占め   いっせつ
 よくわかります。声も聞こえてきそう。

売る気なく将棋見てゐる暦売   今村征一
 歳末のなつかしい風景。

喉頭癌と騒ぐな夫よ喉の風邪   きのこ
 この夫の気持ち、よくわかります(笑)。

極月や切羽詰まれば智慧の湧く   山畑洋二
 標語のようで可笑しい。この時期、つぶやきたいと思います。

一つぱしの顔して選ぶボロの市   邯鄲
 初めて知ったのですが、世田谷のボロ市ですね。一度行ってみたいです。

水槽にスッポン眠る四温かな   邯鄲
 四温の季節はまだ早いと思いますが、静かな感じが好きです。

コーナンでコピー用紙と正月と   ∞
 「コーナンのコピー用紙とお正月」、とされては。灯油缶の句と似ていて、いいです。

佐渡島島のかたちに雪積もる   伍弐拾
 あたりまえですが、いきなり佐渡島が出てきておおげさで可笑しい。

石蕗の花フィフティン・ラブの声に揺れ   大川一馬
 寒い季節のテニスコートの感じがリアル。

失恋の鍋焼饂飩がリセットし   勇平
 「失恋を」では。失恋で沈み込むのではなく、鍋焼きうどんでさらりと流す気持ちが好きです。

赤札の上に赤札歳の市   くまさん
リフレインが歳末のせわしなさをよく表しています。

百歳も生きちまおうか屠蘇の酔ひ   孤愁
 憎まれても百歳まで生きるぞという、お年寄りに共感します。

go-went-goneもうすぐ来るねNew Year!    KQ
 高校生のような俳句ですが、横文字が2か所もあり、なかなかうまい。

裁判所の裏かしましき寒雀   とほる
 裁判所と無邪気な雀。いい取り合わせですね。

江戸城の外堀見張る鴨連隊   戯心
 鴨連隊がかわいらしい。

「マジ?」「マジ!」と谺でしょうか?白い息   草子
 面白い。下5を他の季語に変えた方が。

木の葉散る池の深さは知らずして   豊田ささお
 木の葉が池の深さを知らない、という不思議な句。

○四つ書けばアンパンマンになる師走   あざみ
 忙しい師走になにしてんねん、と突っ込みたくなる句。

もう止めよう開脚前転冬銀河   あざみ
 これも前句と同じ。想像しただけで、腰を痛めそう。

【ひとこと】

◎こうされては?
◆南天の一粒にある重さかな
 ・・・南天の実の一粒の重さかな、とされては。
◆刑務所の日の丸はためき冬深む
 ・・・刑務所に日の丸上がり冬深む、とされては。
◆片脚は銀行より出づ冬の虹
 ・・・銀行に片足を置く冬の虹、とされては。
◆ヒーターの灯油ぴとぴと夜の更けゆく
 ・・・更けゆくを深む、とされては。
◆風の無き赤城の裾野麦を蒔く
 ・・・漢字が多すぎるので、なき、でいいのでは。
◆真新し大注連縄を拝しけり
 ・・・新しき、でいいのでは。
◆除夜の湯にしみじ臍を見て笑ふ
 ・・・しみじみ、では。みて、はひらがなの方が。
◆山茶花の妻に落花を告げらるる
 ・・・落花を妻に、では。
◆つぶやきの色にさざんか咲きました
 ・・・「ました」を「にけり」とされては。
◆冬の朝蜂蜜瓶の蓋叩く
 ・・・叩く、を固し、ぐらいでは。
◆湯豆腐のまかない飯や焼き鳥や
 ・・・焼き鳥や、を別のものに。
◆グラウンドグルグル野球部冬至かな
 ・・・野球部と野球部冬のグランドに、とされては。
◆今もちやん付けで呼ぶ人蜜柑来る
 ・・・ちゃん付けで呼ぶ人といてみかん剥く、とされては。
◆練塀に冬至の日影伸ばしたり
 ・・・下5は、伸びてをり、とされては。
◆てんでんに時雨見てをり長法話
 ・・・てんでんに、をそれぞれに、とされては。
◆銀杏散る髪にも肩にも背中にも
 ・・・シンプルに。
◆丸まつたレシート一枚日向ぼこ
・・・下5を、歳末の季語にされては。
◆アドバルーン一つ天皇誕生日
 ・・・一つを、流れ、とされては。
◆ひとつずつ影ある挿絵寒雀
 ・・・影ひとつずつ持つ挿絵、とされては。

◎三段切れ
◆一休み 罵倒観音 日向ぼっこ・・・馬頭観音では?

◎そのまま
◆あかあかと炭火熾して友を待つ
◆実直ななまこのような父でした
◆赤きわむ南天の実の空に映え
◆あつあつの煮込みうどんのきざみ葱

◎説明
◆銀杏散る階段状のふきだまり
◆お揃ひの冬帽被りやがて古希
◆花灯路心も動き1句かな
◆軽やかに霰降る音木々の葉に
◆髪洗ふ皆既月食日を跨ぎ
◆聴覚の研ぎ澄まされし冬籠
◆水底で泥鰌動かず凍つる部屋
◆思考路は前向きのまま去年今年
◆この星に起こりしすべて古暦
◆街騒をよそに灯せる聖樹かな

◆寒気来る構えて我らは次を待つ・・・「は」はいらない。

◎報告
◆客が来た一家総出や室の花
◆石鹸に歯形残せり嫁が君
◆湯の宿の襖をゆらす冬の雷
◆底冷えの駅に待ちをる始発かな
◆神殿の屋根を外して煤払
◆目を瞑り呪文唱えて冬の夜
◆くさりつけ走りし犬や落葉舞ふ
◆柚子沈め心を鎮め沈思する
◆柚子沈め浮かび上がるまで沈思する


◎理屈
◆冬の虹常用漢字にない「絆」
◆片付けて空白の庭ポインセチア
◆厚き雲の上や冬至の日天子
◆高枝を伐りとり冬の空広し


◎言い過ぎ
◆寒灯の利根荒涼の流れかな
◆紫の酢漬け大根健康美・・・健康美が。
◆カラヤンの第九大好き年くるる

◎即き過ぎ
◆「乞う連絡」張り紙破れ年がゆく
◆水浅き弱き光の冬の川
◆縦縞の気圧配置図おでん吹く
◆四阿の茅葺に積む枯葉かな


◎・・・過ぎ
◆息白し行き交う子らの紅ほっぺ・・・言いたいことが多すぎ。
◆冬至祭裸灯下げて野師の声・・・雰囲気は出ていますが、材料が多すぎ。

◎類想
◆一筋の枯野道とは遠きもの
◆大蛇のごとき注連縄二本よじりけり
◆竜の如のたうつ雷や雪起し
◆人波にもまれて行くや大熊手
◆北風吹いて狐の夜会しておりぬ
◆テレビ見る特等席の炬燵かな
◆ポケットの小銭重たき初詣
◆山茶花のかげにテナント募集中
◆マシュマロの雪がふんわり朝の庭

◆歳晩やお醤油色の里の家・・・たとえが、ありそう。

◎分かりにくい
◆その頃はスイツチバツク山眠る
◆変る日のうさぎもはねてほんまやね
◆枯れ葉飛ぶ最後の一葉風つかむ・・・風つかむ、がやや。
◆極月や刺身のつまはいそがしき
◆凩や合わせ鏡にある無実
◆餅つきやバケツバケツの波紋かな
◆極月の母に折り目をつけておく
◆飢えている星の流るる聖夜かな

◆冷蔵庫より雪色のチューリップ・・・面白いけど
◆振り出してゾロ目に負けた雀です
◆消息はライブハウスでレノンの忌
◆羊田や「のらのら」子ども農業家
◆ゲイの旗ひとつ足りない冬の虹
◆お目当ては餅つき動画今日日の子
◆迷ひ箸三の膳なる海鼠かな
◆空に書く乾坤一擲火廼要慎
◆薄氷の欠片で足るる透けし里
◆アンテナを十字架とふ人に聖夜
◆翅よせて綿よせて休む綿虫
◆寒林やわたしと私の隙間だけ

◆山茶花や子どもマンモスクリニック・・・マンモスクリニックが?
◆小春日のうまゐ三昧庭の犬・・・うまゐ三昧、が?
◆裏山に冬日射しおり神の島・・・神の島って?
◆凍て星と詠まれる日もくるこの地球・・・核戦争後の地球?
◆「絆とは」語るは語る落ち葉焚き・・・語るは語る、が?
◆ポチ眠るふたつでひとつ雪明かり・・・ふたつでひとつ、が?
◆PCでJウエイブで歳暮の礼・・・Jウエイブが?
◆ブラウザの冴えて結社の俳句読む・・・ブラウザの冴えて、が?
◆降誕祭愛の言葉や圧力鍋・・・なぜ圧力鍋?
◆横浜やアン・ドゥ・トロア羽子の路地・・・横浜が?
◆初詣どんぐり飴で雪となり・・・状況が?
◆数え日や日に日にふへる値引き率・・・何の値引き?
◆一輪の押し上げている凍空・・・何の一輪?
◆初音かなみんな揃うて右を向き・・・状況が?
◆枯園を赤いマントの河馬がゆく・・・赤いマントの河馬とは?
◆木の屑や鱶ほど寝入る仏師たち・・・鱶ほど寝入る、とは?
◆熊穴へ宅急便を送り合う・・・熊が穴に、と宅急便の関係が?
◆片秀だつ冬の噴水離れ鳩・・・片秀だつ、が?
◆去年今年笑顔の並ぶ待合室・・・どこの待合室?
◆赤いマフラーでまた一緒に死ぬよ・・・状況が?
◆極寒の中でも家の中走り・・・家の中が極寒とは?
◆19時の予定がずれるおでんかな・・・状況が?

◎ひとりよがり
◆冬の駅ザムザの日昏れ佇(ま)っている
◆キーボード冬探すこと人差す指


◎川柳
◆日本をああのこうのとおでん酒

◎重複
◆ぎしぎしと大注連縄をよじりけり
 ・・・ぎしぎし、とよじりけり、は同じこと。

◎無理が・・・
◆冬のドラマ家族が消えて父ひとり・・・冬のドラマが。
◆幻想を盛り込む言葉冬料理
◆数え日や躰にのこる不整脈・・・不整脈という言葉は俳句にムリ。
◆薄氷に音の重なるピアノかな

◎感慨
◆ぼんやりと掌見つめ冬の虹
◆昇進のあたらしき夕寒牡丹

◎疑問点あり
◆棒を置く小澤征爾の咳払い
・・・咳は冬の季語ですが、咳払いで季語になりますか?
◆冬木の芽うぶ毛の光る娘と二人
・・・娘を、こ、と読ませるのは?

◎その他
◆珈琲が放つ幸せ冬小部屋・・・想像の余地がない。
◆赤銅の皆既月食凍てる街
・・・言いたいことはわかるが、もう一歩。
◆初披講仰せつかりて眼鏡拭く・・・もう一工夫。
◆初暦風呂に持ち込む夢を見し・・・夢の内容がもう一歩。
◆りんごむく明日の天気ラジオから・・・もう一歩。
◆鍬ふるう冬枯れ畑の凍み大根・・・強い季語が2つ。
◆煤逃や厠で臍のごまを取る・・・痛そう。
◆大枯野己が透けて見えてくる・・・ドッペルゲンガーですか。
◆ブルースのひとつやふたつ滲み星・・・ブルースは、歌ですか?
◆聖夜より性夜にかぎる、そうだろう?・・・下ネタ。
◆ロリコンと言はれて久し冬ごもり・・・下ネタ。
◆元日の兎模様のエコバッグ・・・かわいらしいが・・・。
◆冬の駅ニーチェなカフカを待っている・・・面白いですが・・・。
◆吊革にぶら下がる冬終電車・・・冬、が唐突。
◆親分が微分教はる炬燵かな・・・唐突。
◆叩かれて薄き血を出す冬の蠅・・・蠅の血は見えますか?
◆猫通る一枠あけて障子貼る・・・本当ですか。寒いのでは?
◆寒の鯉のたりのたりと浮かびくる・・・よく見えますが。
◆かいつぶり冬の日輪尻で受け・・・さりげない写生ですね。
◆鳥の声あからさまなり冬の森・・・主観。
◆おらが春アインス・ツバイ寮歌祭・・・おらが春、がある著作。
◆ひとつふたつ喜びありて暦果つ・・・歳末の思いが伝わります。
◆初雪や十ほどあった祖母の恋・・・どうして、知っているのですか。
◆火の番を平たい猫にさせている・・・平たい猫は面白い。
◆山道をかさかさ歩く12月・・・師走の乾いた感じは出ています。
◆逃げやすき一家眷族寒すずめ・・・寒すずめの一家なのですね。
◆「変身」を読むや天皇誕生日・・・意味深。
◆はつ夢やゴッホこっそり写楽展・・・ゴッホがこっそり写楽展に来ている?
◆手鏡にあかんベえなど初笑ひ・・・自分で面白がりすぎ。
◆冬銀河渉れば鳴りぬ銀の砂・・・抽象。
◆赤道を知つているのか雪女郎・・・知らないでしょう。
◆セーターの少女に抱かれ犬老いる・・・老いる、が不思議な感じですね。
◆点滴の一滴一滴雪の街・・・長い静かな闘病が思い浮かびます。
◆数へ日や一人見る「坂の上の雲」・・・リズム悪し。
◆花八つ手一生愛すなんて嘘・・・常套。
◆煩悩の数の花びら冬薔薇・・・冬薔薇と煩悩はあまり合わないのでは?
◆実南天元気よく泣く赤子かな・・・赤子と実南天、いいですね。
◆初雪の無邪気な笑顔三陸町・・・去年の記憶ですね。