「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。


2012年4月25日
星野早苗ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

葉牡丹の背も伸びきって春たけなわですね。皆さん、お変わりありませんか?
 さて、前回の『細雪』の続きなのですが、時代のせいか、手紙をやりとりする場面が数多くあります。その文面がそれぞれ個性的で面白いのですが、中でも心に残るのは、東京に帰った三女雪子から手紙が来ないのを案じて、何とか返事が来るようにと出した家族全員の寄せ書きです。
 それは、貞之助の発案で、お月見の日に、巻紙にしたためられました。

むら雲はやり過ごしつゝ待ちうけて月を捉ふる庭の松が枝   貞之助
名月や一つ足らざる影法師   幸子
姉ちやんは東京で見るけふの月   悦子
名月や雲の中から見え初めぬ   はる

 貞之助は二女幸子の夫、娘の悦子は小学二年生、はるは女中です。
 幸子と悦子の俳句は、「一つ缺けたる」を「一つ足らざる」に、「月夜かな」を「けふの月」に貞之助が直しました。すばらしい添削ですね。
 「そういふことの苦手な」として、四女の妙子は、松間の月を墨絵風に写生しましたが、人形作りや洋裁に秀でた妙子なら、きっと洒脱に描き上げたことと思います。
 さて、我らがおはるどんの句は……?
 この寄せ書きには、雪子から間もなく返事が届きました。

 今週は、206句の中から。

【十句選】

風光るシンガポールの新所帯   津久見未完
 マレー半島最南端のシンガポールの陽光が、風光る、新所帯を、共にヴィヴィッドなものにしています。異国で始まる新生活を応援したい作者の気持ちが伝わります。

父親を跨いで起きる遍路宿   度会とも
 遍路宿は格安の宿泊料金なのだそうですが、雑魚寝もあるのでしょう。朝、目覚めて廊下に出ようとすると、入口付近に寝ている父親を跨いで行かなければならない。こうした日常生活にはないシチュエーションも、お遍路ならではのことですね。

山菜教室湯が沸かぬ火がつかぬ   豊田ささお
 野外で食べる山菜料理は野趣があっておいしそうですが、湯が沸かぬ、火がつかぬ、の、調理以前のアクシデントも起こりうるのですね。けれども、そのてんやわんやがまた、出来上がった山菜料理を、とびきりの味にしたのではないでしょうか。

磯伊達の孕み眩しき春の潮   戯心
 磯伊達(いそだて)という言葉を、初めて知りました。海女の白い着物のことをいうのですね。濡れて身体にはりついた磯伊達に、膨らみかけたお腹がはっきりと見て取れたのでしょう。春の潮を背景にした妊婦である海女の姿から、妊娠も出産も自然の営みであることに気づかされます。

卒業のみなよく似たる写真かな   えんや
 卒業写真におさまった子ども達は、みなよく似ている、と作者は言います。それは、没個性的だと言うのではなく、どの子も卒業生らしい、ということなのでしょう。様々に個性的な子ども達なのは勿論なのですが、それを卒業という節目で大きく括った一句だと思いました。

みあげれば寿限無(じゅげむ)つらなる木五倍子かな   茜ファン
 淡黄色の木五倍子(キブシ)の花は、穂状につらなって咲き、細長い藤の花房のようです。その花穂の長さを寿限無と言われて、なるほどと思いました。寿限無の連なる花時の木五倍子は壮観でしょうね。

春雷や壁画のひとと目を合わす   豊秋
 思いがけないときにぴかりと光る春雷。その瞬間、壁に描かれた壁画の人物がぱっと浮かび上がったのでしょう。中世の教会の壁は、壁画で埋め尽くされています。壁画の人は誰だったのでしょうか?

一面の白き喝采梨の花   紅緒
 一面の、は、果樹園の梨の花でしょうか。収穫しやすいように、枝を低く広げて栽培されている果樹園の梨は、満開の白い花が棚の上一面に広がります。そのみごとさに、梨の花自身、喝采を叫んでいるのかもしれませんね。

四分音符だけのおけいこ鼓草   草子
 鼓草はタンポポのことだそうです。四分音符だけのおけいこが、具体的でいいと思いました。習い始めて日の浅い音楽教室のおけいこでしょう。鼓草、と古風に書かれたことで、味わい深くなりました。

焼蛤ひばりの曲が切れ切れに   とほる
 大きく立派な蛤が、海辺で焼かれているのでしょう。潮騒の中、風にのって切れ切れに流れて来るのは、美空ひばりの曲。かつて津々浦々に流れていた美空ひばりの声を聞くのに、これ以上のシチュエーションはないかもしれません。

【佳 作】

ピタパッと浪花のさくら見て帰る   ∞

連弾の狂ひ出したる花の昼   豊秋

わたくしが救世主とはチューリップ   茂



2012年4月18日
早瀬淳一ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 初めて桜の名所の夙川(しゅくがわ・兵庫県西宮市)に、家族で花見に行ってきました。阪急・苦楽園口駅から河原に降りると、上流も下流も人がいっぱい。運よくシートを敷いて道をはさんだ川端を見ると、広大なシートが。生ビールの大きなタンクが2つもあって、次々と若い人が集まってきます。うるさいだろうなと覚悟しましたが、50人ほどが6,7人ごとの男女の輪になって、静かに和やかに談笑しています。今どきの若い人のリアルな姿にいつまでも見入ってしまいました。
 さまざまなこと思ひ出す桜かな  松尾芭蕉

  【十句選】

雲雀野となる空港の一部分   今村征一
 地方の空港の端が野原になっていて、そのあたりに巣をつくっている雲雀がしきりに鳴き騒いでいます。ただ、ふと空港の滑走路の一部分が忽然と雲雀野になったかのような感じもします。錯覚を覚えさせてくれる句は、おもしろい。

滑り台すべれば青き花月夜   きのこ
 春、暖かくなると夜の公園で一人遊びたくなります。すべれば、というのは因果関係ではなく、すべるとぐらいの意。と、そこには満開の桜を照らす月夜。それが青く感じられると。なんとも手の込んだ、幻想的なにくい演出。

字が町町が市となり山笑ふ   えんや
 郷愁を感じさせる字○○という地名は、全国でどんどんなくなっているのでしょうね。平成の大合併とかで町は市になり、西○○や○○台とかの地名ばかり。でもその向こうには昔ながらの里山があり、春には花が咲いて笑っている。それを皮肉っぽく言わないでさらりと言いました。

春の海渡り廊下のくねくねと   茂
 春の海のそばに立つ古い旅館などの建物の廊下が、先まで長く続いている様子なのでしょう。それが、廊下が曲がりくねりながら海の上を続いているように思えるのは、「廊下が長々と」とせずに「廊下のくねくねと」とした効果。面白いですね。

家消えて白木蓮の現れり   ∞
 これも表現の妙。古家が解体されてその敷地に桜などの木がぽつんとよく残っています。この場合は白木蓮。それが「家消えて」という大胆な表現の効果で、家がすっと消えて、たちどころに白木蓮(の精)が立ち現れたかのよう。

船籍は不思議の国の海市立つ   伍弐拾
 船籍の不思議な国?というとナルニア国とかあるいは聞いたことのない国かもしれません。その国の港に海市が立つという。どんな品物が並んでいるのでしょうね。行ってみたい気がします。不思議な俳句ですね。高柳重信の世界を思い出します。

昼の月架かる墨田の桜かな   邯鄲
 怒られるかもしれませんが、関西人の東京への反抗心は東京への憧れの裏返しではないでしょうか。もちろん関西の誇りはありますが。スカイツリーはどうでもいいですが、やはり、見たこともない隅田川のほとりの桜見には憧れますね。そこに昼の淡淡とした月が見えたら最高です。

万葉の仮名のごとくに花散れり   戯心
 この比喩には参りました。ひらがなのように花が散ると言ったら当たり前ですが、万葉仮名とは!万葉仮名はひらがながなかった時代、万葉集などに使われた日本語の音を表すのに使われた漢字、いわば当て字ですね。そのいわく言い難い日本人の気持ちのように桜が散っていくというのは面白い。

春泥に息づくもののありにけり   戯心
 玄関か、家の前の道路を子供たちの賑やかな一団が通った後。近くの野原の泥が少し残っています。モノである春泥のなかに息づくものを感じる感性に惹かれます。その息づくものとは、春そのものでもあるでしょうし、子供たちの生気でもあるように思います。

餌を漁る鳥に日永の畑二枚   春生
 ふつうは畑二枚の中に餌を漁る鳥、とするところを、鳥に畑二枚とされました。すると、この鳥がとてもクローズアップされて大きく見え、カリカチュアライズされている効果がでました。俳句というのは、短歌でも詩でもできない表現ができますね。

【予選句】

人の上に花浮いてをり上野かな   まゆみ
・・たしかに花が浮いているように見ますね。

晴れる日の雲は迅しや雛納め   涼
・・雛納めの頃の寒い空はこんな感じですね。

嘴の黄色な鳥が春と云ふ   涼
・・鳥が春を告げています。黄色い、でいいのでは。

神載せて台車で回る春祭   古田硯幸
・・台車が具体的でいいです。

二輪草妻も買いたる俳句帖   古田硯幸
・・夫婦で俳句ができるのはうらやましい。

浅間山真向いにして花を待つ   太郎
・・大きな景ですね。

さえずりや湧水掬う九十九折   太郎
・・清冽な水が見えます。

紅梅の散るをうながす川の風   太郎
・・この擬人法は成功しいていると思います。

春の雨考える人駆ける人   B生
・・濡れて行こう、といかないところが面白い。

お向いの帰って春灯犬の声   きのこ
・・つつましい庶民の暮らし。

束の間の正気の母や桜餅   きのこ
・・認知症でしょうか。少々痛ましい。

初々し自己紹介や桜咲く   津久見未完
・・始業式のクラス開きでしょうか。

清明やおもむくままにローカル線   みさ
・・このような旅にとても憧れます。

春愁の見ても見んでもいいニュース   せいち
・・この程度の春愁は救われます。見ずともでいいのでは。

水切ってレタスの恋をあきらめる   遅足
・・淡い恋でしょうか?案外そうでないかも。

普段着のままに春風やってくる   遅足
・・優しい春風はそんなものですね。

マスコミの寵児ふはふは春の蝶   素秋
・・ふはふはがどちらにも掛かり、面白い。

掌に来て吹きあがる桜かな   えんや
・・類想感がありますが、うまい。

引き際の美しき人花辛夷   茂
・・このような人になりたい。花辛夷が効いています。

花はいま夜の白雲つれかえる   啓
・・花が雲をつれかえる、というのは面白い。

おぼろ月ちょっと遠吠えしたくなる   潤
・・ユーモアがありますね。

喫煙を「自死」と説く医師花ぐもり   たか子
・・川柳すれすれですが、この医師に共感します。

ちまちまとプリン食べをり春の風邪   菊
・・春の風邪の感じがよく出ています。

春暁の市のテントの急ぎをり   山内睦雄
・・朝市でしょうか。リアルですね。

山映す池の静かさ水温む   山内睦雄
・・今頃の感じがよくわかります。

ひこばえやうるふ二月のみそか雨   伍弐拾
・・よくできた景です。ひこばえと二月の季重なりが気になりました。

春の虹炊き込みごはん炊きあがる   伍弐拾
・・春の嬉しさが伝わってきます。

人力車春を探して浅草寺   邯鄲
・・客を探してだけど、春を探してとしたところがいいです。

落花舞ふ並木の中を鼓笛隊   幸夫
・・鼓笛隊という懐かしい表現がいいですね。

春愁や役行者の黒光り   幸夫
・・奈良時代の役行者が出てくるところが面白い。

退職の朝北窓を開け放ち   とほる
・・ちょうど三月頃。いいご退職のようですね。

花堤脚の短き犬散歩   くまさん
・・思わずクスリとしました。

四月馬鹿電波時計の振子かな   くまさん
・・電波時計は人工衛星からの電波で針が動くのですね。だから振子は必要ないので、この場合の振子は飾り物で、逆に電波の振動によって正確に動いていることになります。そのあたりを考えると、四月馬鹿は付きすぎかもしれませんが、川柳ではない面白さがあると思います。

ひいふうみ飛び越へましょう春の川   くまさん
・・小さな川の感じがいいですね。

山桜子どもの声のよく通る   春生
・・山の中の花見の楽しそうな感じ。

先頭の馬の尾まっすぐ風光る   紅緒
・・競馬よりは、野生の数頭の馬の感じがします。

菜の花に過去のわたしを見失ふ   紅緒
・・菜の花ってそのような力があるかも。

春爛漫ぎゅうぎゅう詰めのびっくり箱   紅緒
・・春爛漫はびっくり箱なのですね。

【ひとこと】

◎こうされては?
◆春睡を冥土の朋と愉しみぬ
・・春眠とされたら。

◆風車街ゆく人が愛しみて
・・もう少し具体的に。

◆桜餅芯があるよな余寒かな
・・よな、を直したい。

◆春疾風鉢から跳び出す植木たち
・・植木の鉢をはみ出して、とされては。

◆えんどうの さや剥き転がる 豆と猫
・・分かち書きはせずに、「剥き」を「に」にされては。

◆春うらら年相応の髪形に
・・「若い髪形真似てみる」とされては。

◆朽ちかくるトタンの出小屋春しぐれ
・・いい感じです。朽ちかけし、でいいのでは。

◆花万朶男はすぐに散り果て
・・散り果てる、とされては。

◆ジョッガーの額かすめる落花かな
・・かすめて桜散る、とされては。

◆長屋はくっついている春の月
・・町長屋ひしめいていて春の月、とされては。

◆春光や大海揺るる鮭の稚魚
・・揺する、とされれば。

◆信濃新聞にくるまれ今朝のレタスかな
・・新キャベツくるむ信濃の新聞紙、では。

◆桜見るそうか俺は偽物なんだ
・・〈偽物の存在として桜見る〉では。

◆夜桜やティンカーベルが棒を振り
・・下5を「横にいて」では。

◆春昼に亀重なるを見たりけり
・・重なっていたりけり、では。

◆一反もめんと飛んでゆきたい春の空
・・中7を、ふと飛んでいる、では。

◆春の田や椅子の上着で少し揺れ
・・「で」、は「が」では・・・。

◆片意地に戻るふるさと鴉の巣
・・意地張って、くらいでは。

◆たんぽぽや三角座りの兄妹
・・体育座り、の方が分かりやすいのでは。

◎説明
◆穴出でて認知症めく初蛙

◆生気ます耕す毎の春の土

◆休耕地雲雀囀り応援歌

◆春の水注いで大地祝福す

◆春うらら出不精なのは亡父ゆずり

◆新靴の出鼻をくじく花の雨

◆束の間の日差しに目覚め花辛夷

◆遮断機の動き滑らか春兆す


◆風紋のごとき春暁の夢名残・・複雑。

◆風車吾を喧嘩の相手せず

◆頻繁に高度変へつつ舞ふ蝶々

◎報告
◆野に群れて燕雲雀の鳴き交はす

◆盗み見を花の宴の中にする

◆サクラサク虎の雄たけび聞きました

◆嫋やかに風に応ふる濃山吹

◆また明日も鶯の声聞きに来る

◆段上で舞ふ春の蚊を凝視する

◆三(み)つの内一(ひと)つが田打されて居り

◆花七分登りし前と後に見る


◎理屈
◆生あるは未来あること初桜

◆大いなる肯定命題春来たる・・・哲学。

◆たんぽぽと月はどんどん日に遅れ

◎即き過ぎ
◆広つぱに球児戻れり草萌ゆる

◆水温むプールサイドの子らはしゃぎ

◆三行の解散通知三月尽

◆通ひ猫くノ一忍法躙口

◆飛騨牛や柳の土手の露天商・・いいですが、やや付きすぎ。

◆合格の祈願の絵馬や桜咲く

◆片栗の花べそかいてゐる少女

◆真白なる女の眉間春の雪

◆ネクタイは明るい色に五月祭・・別の季語に。

◆悦に入る西洋美人黄水仙・・別の季語に。

◆一喝も二喝もありし春の雷・・(切れているなら)。

◆破れ傘転がる街や春嵐

◆清明や嵐一過の空青し

◆終電の音遠ざかる雪の果て

◆補助輪を外したての子チューリップ

◆夜桜やティンカーベルが現れて

◎言い過ぎ
◆色っぽい水です春がきています

◆無人駅殊に桜の舞ひにけり

◆新茶汲む小夜の中山峠茶屋

◎全部言った
◆清姫のいちず散ゆく桜かな

◎・・・過ぎ
◆蕾持ち枝は折れずに春疾風・・言いたいこと多すぎ。

◆二十歳にもどる秘薬あり万愚節・・おもしろがり過ぎ。

◆春ごたつ猫が踊りを覚えない・・おもしろがり過ぎ。

◆がんばろう文字ひるがえし鯉幟・・言いたいことありすぎ。

◆捨てありし磯巾着のいとほしく・・気持ち入りすぎ。

◆青き踏む影踏む糞踏む韻を踏む・・やりすぎ。

◆荒土や山神むかえこぶし舞う・・材料多すぎ。

◆葦の角いかにぞ生きん火の海に・・気持ちが入りすぎ。

◎類想
◆卒業の空に刻みし誓いかな

◆一日のすぐに過ぎゆく葱坊主

◆チューリップ第二釦は予約ずみ

◆庭の木を右に左に恋雀

◆若草や母の乳房のやはらかき

◎そのまま
◆色のなき空に山茱萸黄を点す

◆まろび出てわらびの首の曲りたる

◆猫の夫獣の眼して戻る

◆散り初めて花の盛りになりにけり


◎抽象的→具体的に
◆清明であり偲ぶ日でありにけり

◆悲しみを纏わせるかな春霞

◆かたまって猩猩袴ゆめ色に

◆桜蕊降る夜の妙なご挨拶

◆清明の朝日嵐の傷あとに


◎三段切れ
◆眩しき陽わが誕生日誓子の忌

◆鶯や桜朝日梅夕日

◎川柳
◆カラス鳴くゴミ列島に富士聳ゆ

◎自己陶酔
◆廿才春の氷になり抱かる

◆こぶしの花空に散らばる僕の恋

◆春の海ぼくにだかれるきみは海

◆春の風きみをだきたいぼくは風


◎疑問点あり
◆義理チョコのお裾分け受く四月莫迦
・・バレンタインと四月馬鹿の重なりが?

◆丸つこい子猫どこの子ペルシャの子
・・ペルシャ猫がその辺にいますか。

◆天気雨さくらは立ったままで咲く
・・ほかの木もそうでは?

◎分かりにくい・難しい
◆固茹でのたまご輪切りやリラの花・・卵サンドですか。

◆合格を告げて手向けぬ桃の花・・状況が?

◆雪代やはや新築の音こまか・・こまか、が?

◆針止めて次鳴るを待つ春の雷・・状況が?

◆お花見の百一本の造花かな・・状況が?

◆日の丸もユニオンジャックも花に酔い・・何のたとえでしょう?

◆夜桜や改札口に介護班・・イメージが結びにくい。

◆看経の洩れくる庭や牡丹の芽・・看経が分かりませんでした。

◆春泥や三船敏朗走る走る・・映画のシーン?

◆花の雲塔の風鐸ゆれやまず・・イメージが結びにくい。

◆絶景の花見の席ぞ鬼瓦・・どのような絶景か見えてこない。

◆春の虹子の呼ぶ声に飛び出しぬ・・状況が?

◆春の月きみは昭和のマドレーヌ・・マドレーヌが?

◆風かすか菜の花の黄にたじろげり・・たじろげり、がなぜ?

◆さておいて頬杖といる花の冷え・・さておいて、が?

◆抱ふれば幹につげたる花の白
・・なにをどうしているのか、わかりません。

◆木の根明く胸高直径1メ―トル・・胸高が?

◆見上げればサクラも揺れて123・・123が?

◆ろくろっ首闇ににょきにょきもやし独活・・季語が分かりにくい。

◆大作は流れに任せ花筏・・流れに任せ読む?書く?

◆擲ちしおくすり手帳猟期果つ・・関係が分かりにくい。

◆ひとつ空く緩和病床猟期果つ・・猟期果つとの関係が?

◆蒲団干す大漁旗干す骨も干す・・何の骨ですか?

◆桜咲くやっと小学九年生・・中学3年のことですか。

◆この国に富士の纏へる花の雲・・富士が遠景ですね。少しわかりにくい。

◆さよならと悔しまぎれのライラック・・イメージが結びにくい。

◎その他
◆霞立つ礼文アイヌの古戦場
・・礼文島で戦いがあったのですか。知らなかったです。

◆羊羹を厚めに切りてシクラメン
・・前半はよくあります。

◆あの時に買へば長者に四月馬鹿・・感慨。

◆岬鼻の先にまた岬風光る・・聞きなれない言葉。

◆一二分遠回りする桜狩・・気分はわかります。

◆土手青む小腹を満たすソーセージ・・詩がない。

◆桜餅タクシーを呼ぶ納骨日・・イメージがばらばら。

◆青年や缶珈琲の花の宴・・真面目な集まりですね。

◆枕辺に見せてやりたき花ふぶき・・気持ちはわかります。

◆春雷や海の携帯鳴りやまず
・・面白いが、無理があるかも。

◆この道は急ぎ抜けたし夜の梅・・主観。

◆風眩し海光浴ぶる車輪梅・・風眩し、と海光が近い。

◆みちづれにレタスのような人選ぶ・・面白いです。

◆聡き子の眸さみしき龍の玉・・たしかにそうですね。

◆ベッドよりふとんにしてね桜餅・・下世話な感じ。

◆彫像のやうなくちづけ花の影・・空想上。

◆干されても鰈上向き症候群・・上向き症候群ですか・・・。

◆若沖の虎吠えるかに浮かれ猫・・大げさ。

◆気負はずに詠みゆくことに花大根・・標語。

◆用紙よりこぼるる受験の黒き髪・・つながり悪い。

◆蕗味噌や母のてんぽで練りこなす・・わかります。

◆春嵐1プラス1は5にもなり・・道徳。

◆さくら貝あなたの法螺とビンのなか・・複雑。

◆青い地球海にとけ入る若葉雨・・青いと若葉が近い。

◆桜満つ南海トラフの上あたり・・不吉ですね。

◆春だからきみでいっちゃうぼくだから・・軽い。

◆花咲くや何でもかんでも美しく・・乱暴。

◆パンジーの鉢を正面にらめっこ
・・パンジーとにらめっこしているのですね。

◆境内に持仏のあまた桜まじ・・桜まじが?

◆ポチが哭く吠える噛みつく桜咲く・・しつこい感が。

◆花咲けばなんだかんだと春来(きた)る・・乱暴。

◆パンダ見にママと上野へ春休み・・子供俳句。

◆花の海芝いっぱいに春駆ける・・季重なり。

◆春愁の白粉ケース閉じたまま・・因果では?

◆清明に打ち振り鳴らす紙鉄砲・・もう少しシンプルに。

◆花曇り開きそこねの紙デッポウ・・こなれない。

◆天までも腕振り歩む一年生・・季語は?

◆尾頭をつけて反身の白子干・・景が見えませんでした。

◆四月馬鹿サンショウウオを枕とす
・・サンショウウオを枕とす、という嘘?

◆雨だれのつづきのごとく木付子咲く・・発想が近い。

◆蹲や水溢れ出て落ち椿・・視点定まらず。


2012年4月11日
中谷仁美ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 花の美しい季節がやってきました。といっても、まだまだ肌寒い日もある今日この頃、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
 春には美しい季語がたくさんあります。みなさんがお好きな季語はなんでしょう。私は「ふらここ」です。好きな季語でいい句が詠めたらいいなと常々思っていますが、なかなか難しいものです。この春こそ!
 今回も、取り合わせのうまい句、情景がぱっと思い浮かぶ素敵な句がたくさんあり楽しく読ませていただきました。ではよろしくお願いします。

【十句選】

花見時人混み好きで混む医院   葦人
 「人混み好きで混む医院」というフレーズ、リフレインがあってなんだかリズムが面白く惹かれました。花見時ときて医院とおわる意外性もいい。まちのお医者さんって、地域のお年寄りの社交の場でもありますね。病院に来ていてもみなさんなんだかんだ言ってお元気で、町内の桜情報など交換しているのかも。健全な気配のある医院です。

旅行先割れて春夜の多数決   度会とも
 「旅行先」ときて「割れて」と続く。何かと思えば「多数決」。倒置を使うことでぐっと読み手を引きつけます。こういう場面、女性だとだれでも1度は経験があるのではないでしょうか。旅先でこういうことがあると小さなことなのになんとも気まずい。その感じが、やや大げさな表現をすることで上手く出ています。翌日の行先を相談していたのでしょうか。はたまた夕食のメニューか。春だと、学生の仲良しグループの卒業旅行かも、などあれこれ想像が膨らみました。

目薬をさすとき「あー」といへば春   加納りょ
 なぜそれが春なのかといわれるとうまく説明できませんが、この感じよくわかる気がします。この「あー」きっと、のんびりした感じの「あー」だろうなと思います。

春来たりでんぐり返りしてみたり   睦月
 春が来ることとでんぐり返りすることとは本来関係がないのですが、春という、大きな変化がある季節と、ちょっとだけ日常的でないでんぐり返りという行為は並べてみるとおもしろい。その人物の、春の何となく不安定で物憂げで何とかしたいと思う気持ちが伝わってくるような気がします。

踏切の二つある町春の風   ∞
 町と春の風というのはやや平凡な取り合わせですが、「踏切の二つある」というフレーズが魅力的です。二つある町というのは、言い換えれば二つしかない町、そんな小さな町。表現がうまいなあと思います。

ガラス窓燕へ一寸引き残す   山渓
 燕の季節ですね。どんなおうちなのかな、どんな家族が住んでいるのかなとあれこれ想像が膨らみます。「ガラス窓」というところに生活感があり、燕とともに生活があるのだと思わせていいと思います。

春の泥町内会費は一年分   あざみ
 うちも先日ちょうど1年分の町内会費を払ったところです。町内会費は1年分というのは生活の中のごくありきたりな出来事なのですが、「春の泥」とくると、この町内会、なんだかひと悶着ありそうな気がしてきて、おもしろいですね。

傘寿にて地球儀買うや春の雲   さくら
 傘寿に地球儀を買うというのは、おしゃれで前向きで、すごく素敵だなあと思います。春の雲という取り合わせも、ぱあっと視界が広がる開放感があり、ふわふわとどこまでも行ける自由な感じ。いい取り合わせです。

洗濯機まわれよまわれ春の風   茜ファン
 栗木京子さんの「観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生」という短歌を思い出しました。短歌だと観覧車ですが、実に洗濯機って俳句的な存在。春の風が心地のいい日は、洗濯機思いきり何度もまわしたくなります。この「まわれよまわれ」いいですね。

斉唱を拒みしあの日卒業す   B生
 卒業式に教員が君が代を歌わないということがニュースの話題になっていましたが、この句は教員ではなくて生徒のこと。ちょっと尾崎豊っぽい雰囲気が漂います。この句、卒業式に斉唱を拒んだなあと、あの日のことを懐かしむ気持ちと共に、そんな、斉唱を拒んで突っ張っていた自分を卒業したという2つの見方ができて、リアリティが感じられていいなと思いました。

【次 点】

霾れる落書き車体ドラえもん   葦人
 黄砂のどんよりと曇った感じと、ドラえもんとの取り合わせがおもしろいと感じました。

待春や手持ち無沙汰な犬と猫   涼
 犬と猫がいるんだから喧嘩でもしなさいよと思わずツッコミを入れてしまいそうになりました。一緒に住んでいて仲良しなのか、はたまた案外お年寄りの犬と猫か。飼い主さんが活動的になるのももう少し先なのでしょう、きっと。

果樹園の万の蕾や春霞   山畑洋二
 「万の蕾」、スケールが大きくて想像が膨らみます。とても素敵な情景!ただ、春霞というのがなんだかしっくりこないような気が。蕾と合いすぎるのかもしれません。違う季語も考えてはいかがでしょうか。

落椿第二の人生地に咲かす
 「落椿」って、どことなくマイナスのイメージがつきまとう気がするのですが、こういうプラスの発想ができるのだなあと気づかせていただきました。

カテーテル検査終はるや夕桜   天野幸光
 カテーテル検査、本人も家族も緊張し心配するものです。終わって窓の外をみると夕桜。癒されほっとする感じであると同時に、なんとなく明るい結果が待っているような気持ちにもなります。いい取り合わせですね。

身を反らし鐘撞く僧衣夕ざくら   今村征一
 先日情報番組を見ていて知ったのですが、世の中『美坊主図鑑』なる本があるのだそうです。その話を聞いてなんとなく安珍清姫の話を思い出してしまいました。さて、この句、きっと鐘を撞く僧の姿、絵のように美しいのだろうと想像します。夕ざくらという季語が効果的です。ただ、「身を反らし」と具体的に言っているのに「僧衣」というのは合わない気がしてひっかかりました。

彫像のやうなくちづけ花の影   孤愁
 素敵!少女マンガか、はたまた宝塚歌劇か、なんともきれいなくちづけの句。出来すぎかなと思いますが、ここまで言い切ってしまうと「花の影」というのもぴったりでいいかも。

春の雲アンテナみんな都会向く   岡野直樹
 実景として、アンテナが向く方角が都会のほうなのかもしれませんし、人の心のアンテナという読み方もできます。おもしろい発想だと思いました。

ていねいに食べる弁当桃の花   ∞
 大事な人が作ってくれたお弁当なのだなあと思います。そして、ていねいに食べようと思うぐらいていねいに作ってあるお弁当なのでしょう。桃の花という季語が淡くて優しくて、そのお弁当の持つ雰囲気を引き立てていると思います。

しゃぼんだま島の子島にとどまらず   紅緒
 切ない句です。ふわりふわりと漂い飛んでいくしゃぼんだまと、島から出て行ってしまう子のイメージが即きすぎかなと思います。

霾や有平棒は天めざす   山渓
 黄砂でぼんやり霞んだ中、カラフルな理髪店の有平棒がぐるぐる。「天めざす」という締め方はやや平凡かなとも思うのですが、情景がきれいに思い浮かぶ句です。

ガラス窓燕へ一寸引き残す   山渓
 燕の季節ですね。どんなおうちなのかな、どんな家族が住んでいるのかなとあれこれ想像が膨らみます。「ガラス窓」というところに生活感があり、燕とともに生活があるのだと思わせていいと思います。

知らぬまに絵の中にいる春キャベツ   B生
 絵に描かれていることをキャベツ自身は知らないまま、ということかなと思います。「春キャベツ」というのが、のんきな感じがして、きっと春らしい淡い色彩の絵なのだろうなあと想像しました。

【気になった句】

★若き日と変われぬ自分初桜

★きのうより長き廊下に卒業す

★無精卵音無く並び辛夷着く

★俳句とか和歌とか詩とか、あ! ちょうちょ

★縄張りはたんぽぽの咲くところまで

★立つてゐるところが地軸風光る

★遺言の書き方学ぶ春の午後

★すてし猫さきの帰宅の草朧

★春はやて鳥の吹っ飛びてしまへり

★チューリップ第二釦は予約ずみ

★水温む明日は犬の丸洗い

★東北は帰雁の空の下に在り

★春いっぱいおっぱいいっぱいハラいっぱい

★イヤフォンの片方忘る万愚節

★塔に来て彼岸桜と一輪車

★残されしマネキン二体春の雨



2012年4月4日
小西雅子ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 ようやく光の春が来ました。あちこちで催し物が開催されています。先日二時間時間があったので「北斎展」と「宮沢賢治展」を一時間ずつ見ました。両方不思議な作品が多くありました。不思議なものに触れると、心は自由だということを再発見します。はじめて逆上がりができたときのあの景色のように。
 今回も溌剌とした句がたくさん。ありがとうございました。

【十句選】

雲雀野や尻に敷きたる新聞紙   津久見未完
 「おーい、ひばり〜」と呼びかけている作者の声が聞こえてきます。地にある一枚の新聞紙からはてしない空まで、雲雀の声の飛翔がのびのびと描かれています。

音消してさらに眠れず柘植の花   度会とも
 テレビやラジオ、人の声、すべてを消してもまだ眠れない。いえ「さらに」眠れないという春の愁い。柘植の花はそんな気持ちにあてはまるつつましやかな花です。柘植の花の花言葉は「堅忍・禁欲」。今後、柘植の花をみるたびにこの句を思い出すでしょう。

桜餅つるりと試験おちました   加納りょ
 「桜餅」といっても関西と関東では違うそうです。しかし桜の葉の香りともっちり感は共通です。「つるりと試験おちました」はこれにまったく反してあっけらかん。このまったく反したことが逆に桜餅のもっちり感を引き立たせました。ひとごとのようで楽しい句です。

恐竜の大好物の春キャベツ   遅足
 恐竜には肉食と草食がいたそうですが、これは草食性四脚歩行のたとえばスデゴサウルスでしょうか。春キャベツがとてもおいしそうです。このような発想とてもステキです。

身綺麗に年を取りたし南瓜蒔く   古田硯幸
 南瓜の種や実を思い浮かべると、「身綺麗」がとてもよく合っています。「身綺麗」を漢字にされたことも南瓜のごつごつしたイメージと合いました。南瓜がころころ採れますように。

春風のペーパーナイフで読む詩集   B生
 なんとキザな(笑)実際にペーパーナイフでページを繰っているのか、それとも比喩でしょうか。「春風の」で軽く切れていると読みました。「ペーパーナイフで読む詩集」なんてどんな人でしょう。お目にかかりたいです。

ローソンもマクドナルドも春の雨   ∞
 ローソン、マクドナルドという現代の無機質な建物に情感のこもった屋根が乗ったような気がしました。「季語を替えれば何でも合う句」だという人がいるでしょうか。私はこの「春の雨」に深く共感して選びました。

黙々と続く貨物車雁帰る   大川一馬
 美しい風景が目に浮かびます。端正な佳句。雁と貨物車が同じ方向に進んでいて、両方に掛かる「黙々と」「続く」。まるで貨物が雁の荷物であるような錯覚を覚えます。

幻のラーメン店や涅槃西風(ねはんにし)   とほる
 涅槃西風は浄土からのお迎えの風といわれる風です。涅槃会のころの風。ラーメン店とはなんの関係もありませんが「幻」となれば極楽浄土と合いそうでイメージが広がります。わずかに結びつく、「取り合わせ」の見本のようなシンプルな作品。

下萌にむっくり大脳新皮質   草子
 いっせいに草が芽吹く春。頭の中も急に芽吹くような気もします。芽吹いてくれたらいいのにという願望でもあります。「大脳新皮質」という硬質なことばをうまく使われたなあと感心しました。

【次点】

覚え無き請求書来ぬ春愁ひ   葦人
 請求書があとで出てきたらよかったのにと思いました。例えば「春愁い身に覚え無き請求書」など。謎解きは中七のあとで!

やわらかき雨に包まる牡丹の芽   太郎
 情感豊かで魅力的な句。正岡子規に「くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる」の有名な歌があるので、上手い句ではありますが、どこかで見たかなと思ってしまいました。

デクノボートヨバレテヲリ春の雲   学
 宮沢賢治ですね。「春の雲」ともよく合っているのですが中七が字足らずになってしまいました。

繰り返すでんぐり返し土手うらら   たか子
 こどもの楽しそうな様子がよくわかります。最後まで十句に採ろうか迷いました。「返す」「返し」のリズムも良いと思いました。

翅といふ力信じて海の蝶   紅緒
 「海の蝶」は以外でした。誰も詠まない句として魅力はあるのですが「翅という力信じて」は読者の想像力を邪魔してしまいました。「海の蝶」で読者はそのような推測ができると思いますから。

霾やざぶざぶざぶと菜を洗ふ   くまさん
 いいなあ、この大胆さ。「ざぶざぶざぶ」がとても魅力的です。

山茱萸花多し少年は孤独   茜ファン
 リズムが悪いのが残念。「少年の孤独山茱萸の花多し」なら十句に採っていました。山茱萸の花はたくさん咲いていても、その黄は「少年の孤独」だと思えます。素敵な句でした。

【良いと思う句】

鷹鳩と化して蠢く大地かな   天野幸光
龍天に昇り空家の竜宮城   隼人
鷹鳩に化して直らぬ喧嘩ぐせ   隼人

 まずこの三句。
 よくぞこのマニアックな季語を使ってくださいました。「鷹化して鳩と為る」は、強い鷹も穏やかな鳩になってしまうという春の季語。中国の二十四節気を三つに分けた七十二候のひとつ。
 「龍天に登る」は龍が天に登り雨を降らせるという中国の故事からきた、同じく春の季語。三句共残念ながら少し理屈っぽくなってしまいましたが、この意欲に拍手です。

女学生カプチーノ飲む余寒かな   涼
 現代の光景で好感がもてます。

鳥曇り池の静寂戻りけり   山畑洋二
 「り」の音の繰り返しがリズミカルです。

少年はふと青年や春休み   きのこ
 春休みには近所にこんな少年いるなあと共感しました。「ふと」がとても利いています。

いもうとよ椀の桜湯ゆらめけり   啓
 「かぐや姫」の歌「妹よ」を思い出しています。妹がお嫁にゆくのでしょうか。兄の切なさが伝わります。

元カレは殺してしまえ不如帰   加納りょ
 面白く、あぶなっかしい句。残念ながら「不如帰」の季節感がありません。口をついて出たリズム感はありますが。元カレは織田信長風?

ご利益のちちんぷいぷい萬愚節   茂
 これは同じように口をついて出た句ではありますが、季節感が共感できます。俳句とはこんなものかもしれないという独特の軽みが魅力的。

養花天駅より人の湧いてくる   せいち
 「養花天」というのは花曇りのような季語です。曇り空なのに人が湧いてくるという目の付け所が良いと思いました。最初間違って「養花天駅」と読んでしまい、それもまた面白いなあと自分で思っています。

昭和の日なき歳時記のおんぼろろ  えんや
 「昭和の日」という季語がまだ掲載されていない古い歳時記ということですね。「おんぼろろ」になぜかとても魅かれました。

片栗や急勾配の坂下る   山渓
 最初は十句に採っていました。よく見ると「片栗」が咲いていませんでした。「片栗」だけではどうでしょう。「片栗の花」とか「片栗咲く」のようなことばが必要かと。「急勾配の坂下る」がとても良いので再考を。

古希にして身に添ふ暮し嫁菜飯   今村征一
 「添ふ」が「暮し」にも「嫁」にも掛かっていて、または「嫁」が「菜飯」にも「添ふ」にも掛かっていて良い句だなあと思いました。

鶴眠る特攻兵の夢の跡   和久平
 よくわかる端正な句。

ハーレーを横付けにする墓参かな   吉井流水
 これはこれで良い句なのですが、「墓参」は(歳時記では)秋の季語になっています。どうしても当季の句を採ってしまうので残念です。秋に投稿されたら十句に採りました。

外にもでよ日も囀りもあふれをり   洋平
 「外にも出よ触るるばかりに春の月  中村汀女」を踏まえた句ですね。この春の気持、とてもよくわかります。

豊かなる乳房の土偶春の夢   邯鄲
 お名前は俳号でしょうか。お名前まで含めるととてもりっぱなひとつの作品が出来上がります。

ショベルカープシュッとひとりカンをあけ   汽白
 プシュッと缶をあけるということで季節感を共有しました。ショベルカーのつめたさが「ひとり」とつながってとても哀しい・・・。

右利きの蛇穴を出て夢の中   秋山三人水
 右利きなのは蛇ですか。それなら面白いです。「夢の中」が風景を曖昧にしてしまい残念。

啄木忌真似てみたばや“すき歩き”    秋葉
 「すき歩き」教えていただいてありがとうございます。石川啄木は「すき歩き」をしたそうです。「すき歩き」とは道を歩いている綺麗な人について歩くこと。この歩き方、昔からあるそうです。それを知らない人にはわからない句。知っている人にはつまらない句。難しいですね。

春田打つ鍬の首グラグラグラと   豊田ささお
 実感ですね。「グラグラグラ」が面白いのですが、口に出すとリズムが悪いようです。

受け答え間遠となれる春日和   戯心
 よくわかります。ほんとうに春はそんな気分です。

【気になった句】

春匂ふついつい薄着くしゃみかな
 様子は手に取るようにわかるのですが。この句、二つ季語が入ってしまいました。「春」・「くしゃみ」は冬の季語。

三月やさくら錯乱桜肉
 意欲的な作品。「さ」でまとまってはいますが頭の中で映像化するのがたいへんです。

紅い爪うっとり乗せる踏絵板
 踏絵は春の季語。紅い爪なら「うっとり」は不要かと。

青き踏む今牛若かエアーK
 私もテニスが好きですから錦織選手のことだとすぐにわかりました。一般的にはまだ知らない人が多いかもしれません。それより「青き踏む」と「牛若」が同じような感覚でもったいないです。

福島で微笑む人を想う春
 すぐにわかる句です。共感する人もいるでしょう。ただ、俳句は短い詩形ですので「想う」というようなことばは省いたほうがよいと思います。客観的な映像を作る工夫を。

春の雨御預け喰らうニューシューズ
 「御預け喰らう」のようなことばは常套的なのでいまひとつ魅力がありません。生のことばを。



2012年3月28日
小枝恵美子ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 彼岸も過ぎましたが、雨が時々降ってちょっと肌寒いですね。でも、大阪では梅の花が散りました。三月二十一日に長野県から、『蕪村句集』の著者、玉城司氏が伊丹市の柿衛文庫に講演に来られました。長野はまだ雪が降っていて、マフラーと手袋をして来られたそうですが、「伊丹市はとても暖かいですね」、とおっしゃっていました。蕪村に「春水や四条五条の橋の下」という句がありますが、さ行音が効いていてリズム感があり、春水(しゅんすい)の勢いに活気を覚えます。
 皆様の俳句も、春の動きを充分に感じさせてくれました。春は一番好きな季節です。

【十句選】

飯蛸をぷつりと噛んで黙りけり   涼
 飯蛸は「腹内に白米飯のごときものありて充満す」と歳時記にありますが、それを「ぷつりと噛んで」黙ってしまった。向かい同士で、食事をしている男女を想像しました。ちょっとしたひとことが原因なのかな、と思いますが、飯蛸がほろ苦い言葉のようですね。「ぷつりと」が「噛んで」と「黙りけり」の両方にかかって効果的です。

目刺目刺右から二番目あなたみたい   加納りょ
 破調の句ですが、「目刺目刺」と反復することで、沢山並んでいる目刺がぱっと目に浮かび、それから右から二番目が見えてきます。目刺の目とか口の感じが、「あなた」に似ているのでしょう。実際に魚屋で見たら、目がそれぞれ違っていました。

つけ睫毛わんと咲かせて卒業す   加納りょ
 今、卒業シーズンですが、袴姿や振り袖姿の女子を電車で見かけます。つけ睫毛って、ほんとに「わんと咲かせて」という形容がぴったりですね。今風の卒業生が見事に表現されていて、また、彼女たちの元気な姿が未来に繋がっていくようです。

春眠のなかへ亡き人づかづかと   遅足
 こころよいまどろみの中へ、亡くなった人が現れた。しかもづかづかと。この「づかづかと」は、嫌悪感よりも親近感があると思います。きっと作者の身近な方だったのかと。自分自身が気になっている人は夢の中によく出てくるものだと思います。「春眠」の心地良さの本意を「づかづかと」で、巧くずらしています。

立ち止りまた立ち止り春日傘   洋平
 春はそんなに日差しは強くないけれど、日傘が蝶のようですね。「立ち止まりまた立ち止まり」は、道で知人に出会っておしゃべりしている様子か、通りすがりの草花に目を止めているのかとも思います。リズム感があり、時間的効果もありますね。

しんこいわ・こいわ・いちかわ・はるのかぜ   汽白
 「新小岩・小岩・市川」とするよりも、ひらがな表記にすると、「はるのかぜ」と、響きあってやわらかな風が吹いて来ます。また、「こい、こい、はるのかぜ」「わ、わ、わ、はるのかぜ」のような言葉遊びが隠されていて、楽しくなります。総武線に乗って、春風を感じている様子が目に浮かんできます。

目も口も耳も素になり春の宵   草子
 「春の宵」の本意は、甘美な雰囲気ですが、目(視覚)口(味覚)耳(聴覚)が素になっていく感覚で捉えられていると思います。すべて素になって、春の宵に包まれている心地良さが感じられました。また、皮膚感覚もあり、春の宵を巧く表現していると思います。

プルプルと雨飛ばしちゃえ猫柳   茜ファン
 「飛ばしちゃえ」という、くだけた言い回しが、猫柳のふっくらとした形態と呼応して、「プルプル」動く様子が生き生きと目に浮かびます。童心の感じられる、楽しい俳句です。

啓蟄や急いで行こうワトソン君   睦月
 シャーロックホームズが、相棒のワトソンに投げかける口癖を巧く「啓蟄」と取り合わせました。暖かくなって虫が出てくる頃にぴったりなセリフですね。そう言えば、今、シャーロックホームズの映画が上演されています。それから、山本純子さんの句集『カヌー干す』に、「白南風のボンドは列車の屋根にいる」という句もあります。

楤の芽を秘密のやうに貰ひけり   紅緒
 硬い外皮が破れ、柔らかな巻き葉が出た頃の香りの高い楤の芽ですが、その形態は、どこか秘密っぽいですね。楤の芽をてのひらに載せて渡されたような感じがしました。「秘密のやうに」がとても良かったです。

【予選句】

踏青や一直線に球を追ふ   いっせつ
 野遊びの子がボールを追って行く様子がいきいきとしていて、気持ちのいい句です。

いぬふぐり団地の隅に椅子並べ   きのこ
 団地の隅にいぬふぐりがたくさん咲いていて、そこに椅子を並べている風景。ちょっとした日だまりの明るさと平和な感じが良く出ています。いぬふぐりの空色がやさしげですね。

絶え間なく笑いの渦に春キャベツ   茂
 春キャベツのふわっとした巻き葉は、ほんとに笑っている感じです。おいしそうなキャベツです。

小さな手大きく振って入学す   まゆみ
 小学一年生に入学するときの様子が「大きく振って」の表現で、一年生になるうれしさが伝わります。小学生の頃が親も子も一番楽しいですね。

春の野やベースの動く草野球   吉井流水
 春の野原は、若草が生えていて、ベースにタッチしたりすると確かに動きます。でも楽しそう。

雪解田(ゆきげた)や小鳥のあそぶ空ふたつ   とほる
 雪解けの田んぼに空が映って、小鳥も楽しげに鳴き始めた様子。「空ふたつ」に詩情があり、瑞々しいです。

春風にこたへてゐたり猫のひげ   啓
 猫のひげは風に答えているように見えますね。「ひげ」のひらがな表記が、春風のやわらかさと響きあって、効果的です。

涅槃会や岩波新書開きをり   豊秋
 お釈迦様の入滅した日の法会。その日に岩波新書を開いて読んでいるのですね。私の本棚に目をやると、『正岡子規 言葉と生きる』、『蕪村』など、岩波新書がありました。釈迦への崇敬と賛美、岩波新書への想いが響き合います。

セロファンの折り目正しや春うれひ   豊秋
 昔の薬は三角に折ったセロファンに入れて口に流しこんだことを思い出しました。ちょっとノスタルジックな句でした。

【気になる俳句】

分からないと言える気楽さ山笑う
 中七の「気楽さ」が言い過ぎで、答えが出てしまっているのが残念です。「分からないことはそのまま」とかにされたほうが、「山笑う」が生き生きします。

眠さうにボンボン時計鳴る遅日
 「眠さうに」が言い過ぎになっているのが惜しいです。ボンボン時計の響きが「遅日」の名残惜しさとマッチしています。上五をちょっと考え直してください。

末黒野を見てから吹奏楽を聞く
 末黒野と吹奏楽の取り合わせがいいです。ただ、「見てから」「聞く」で、報告になっています。俳句にする時は事実を少し脚色して、詩情を持たせることに留意すると良くなります。例えば「末黒野へ吹奏楽の流れ来る」など。


2012年3月21日
岡野泰輔ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 あの日から一年過ぎて、まだ落ち着かない気分のままです。現に昨夜(3月14日)大きな揺れがあったばかりです。(本当にもう勘弁してくれよ)まあサッカーオリンピック代表チームがスカッと決めてくれたからいいか。これに香川と宮市が加わったら楽しみです。ところで春に似合うのか、猫の句が多かったように思います。恋猫にしろ、のんびりした猫にしろ、どうしても月並みな猫句を脱しきれていない。猫好きの私も、春の猫句は難しい。既存のイメージに乗っかってしまうからか。いっそ、夏とか秋の猫はどうだろう?と思いつつ十句選です。

【十句選】

啓蟄や盗られしバイク戻り来ぬ    葦人
 二十四節気すべてが季語ですが、なかでも啓蟄が人気があるのは、具体的に虫がもぞもぞ動く気配があるからでしょうか。冬の間停滞していたもの事が動き出すのも、たしかにこの頃です。盗られたままになっていたバイクが戻ってくる、こんな嬉しいことはありません。季語「啓蟄」がぴったりです。

花びらの少し外れしチュウリップ    涼
 ものをじーっと見続け、見たことだけを言う。写生の典型のような句。それだけに先行句はあると思います。俳句を始めたころ、「このような句のどこがいいんじゃ!」と思っていました。いいんですよね、これで。「少し外れし」ですからこの花びらは落ちていません。言われて私も見たことあるなあ、と思いました。

音合はせ小さくそろふクロッカス    啓
 問題のある句かもしれません。ギターバンドかなにか(二人か三人)の音合わせとクロッカスの配合とみれば、中七の「小さくそろふ」が前後両方にかかってしまうからです。またクロッカスの一物仕立てとみれば、「音合わせ」の比喩に無理があるものの、クロッカスの咲く可憐な景として了解できます。私はどうしてもバンドの音合わせととりたい、だってクロッカスが似合うから。フォークですね。あー、でも読みに自信がないなあ。

大小のカヌー干す庭春浅し    茂
 これも見たまんまの、何も計らいのない、いわゆるただごとの句です。どこがよくて選んだんだろう?カヌーの大小は父子か?夫婦か?いずれにしても活動的なある生活、人物を彷彿させる。芝生と海の匂い。(なぜか海だと思うんですよね)カヌーの大小の提示だけで読者の参加性が高いからか?散文としては何でもないんですが、俳句として提示されると急に読みが始動される。俳句という形式は不思議なものです。季語「春浅し」はベストではないと思う。

恋すてふ我が名立て立て独活揚げる    加納りょ
 明朗快活、勢いよく壬生忠見の本歌「恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか」のパロディを仕立てました。忍ぶ恋の元歌に対してここではパパラッチまで呼び込みかねない「立て立て」のリフレインの乱暴さが秀逸です。独活揚げるの野趣に富んだ感じもいいなあ。

仮の街仮の住いに春の虹    秋山三人水
 この句は今ですとどうしても、震災後の仮設住宅、あるいは他県に避難した人々を詠んだととれます。もちろん、それでいいんです。それでいいんですが、それだと春の虹が甘くはありませんか、という声が聞こえてきます。春の虹は希望の謂い、のように隠喩でなく実際にそこに虹が出たと読みたい。またこの句を転勤族のものとしてもよい、ああその方がいいかなあ。昨年3月以降は何を詠んでも、あるバイアスがかかるということはある。

春の闇差し込んでみるコンセント    ∞
 書いてあるとおりに読みます。闇ですから暗いんです、手探りでコンセントに電気器具のプラグを差し込む、これだけですよね?これだけのことが春の闇の春のおかげで、妙な空間、色彩を帯びてきます、私には。この読みの色眼鏡で見ると「差し込む」という動詞や「コンセント」という名詞がにわかに生動してきます。回りくどかったでしょうか。

光り合ふ鴨明日帰るかも知れず    みさ
 「光合ふ」の措辞の輝きでいただきました。句頭の光が句末まできらきらと届いています。全体に淀みがないんですが下五の「かも知れず」はいかにも俳句、の言い方です。それが気になります。「光合ふ」は鴨と鴨、鴨と水の戯れるような光の明るさがあります。鶴、白鳥、雁とみな北へ帰りますが、情緒過多なこれらと比べて、この明るさはやはり鴨のものだな、と納得しました。

滔々と川膨らみて百千鳥    みさ
 雪解けで水嵩を増した川と、雌への求愛の囀り、生命力に満ちたいかにも春らしい景ですね。ある種のパターンに陥るところを救ったのは「川膨らむ」という実感のある措辞。

啓蟄の朝や大雨降りやまず    とほる
 今回は期せずして十句の最初と最後の季語が「啓蟄」になりました。いかにも啓蟄の気分の葦人句に対してこちらは啓蟄句としてはちょっと珍しい。暦上のその当日(3月6日でしょうか)ちょうど雨が降っている、それも大雨が降りやまないというのです。この大雨というところに、ちょっと虚をつかれます。
 二十四節気は季節の永遠の循環性の表現でもあると思いますが、個人が遭遇するその中の一日は、全く個別の一回だけの経験です。季語の永遠性と、俳句的体験の一回性のようなことを考えさせられました。

【予選句】

亀鳴くと川にかすかな光あり   学
 さらっと、とぼけています。

春障子外は静かな朝の雨   山畑洋二

虹鱒の夕日を加へ遡上せり   太郎

春の雲から抜け出せぬ検診日   度絵智
 検診日春の雲から〜とする手も。

春光に波立つ甍旅立つ日   大川一馬
はだれ雪瓦礫のままの辻の跡   大川一馬


序の口の背(そびら)の土ぞ春の土   伍弐拾

おぼろ夜の行方不明の眼鏡かな   せいち

国家濃く湯豆腐うすくなる夕   遅足
 「国家濃く」がいまいち伝わらなかった。

よく折れる色鉛筆や建国日   遅足

春雨や屈みて直す靴の紐   山渓

霾や有平(あるへい)棒はマイペース   素秋
 有平棒(床屋のサイン)を知りませんでした、勉強になりました。とてもいいのに「マイペース」でぶち壊しになった。

啓蟄や目の消毒の水を張り   茂
 「目の消毒の水」とは目薬でしょうか?引き伸ばして大げさに言う面白さはあります、特に「水を張り」。「目の」ではなく、「目に」では?

板塀の古き落書き沈丁花   茂
 道具立てが揃いすぎた感あり。

静電気パチリと寒の戻りけり   睦月

魞挿しの網に比叡の影を捕る   戯心
 琵琶湖ですね、大景がかっこいい。

三、一一一四四六黙祷   くまさん
 表記の試みとして。

吾の足もカエルになりゆくマグリット   加納りょ
 マグリットが余計です。

釣竿の菜の花越しに立ち上がり   ∞

シャッターの昼を閉ざして地虫出づ   えんや

なぜなぜと問ふ子に春の匂ひする   さくら

糞(まり)洗う水も温みてこの頃は   草子
 鳥かごかなんかの掃除かと思いました。

また君に白紙答案雪柳   紅緒
花束を光にくるむ野のあそび   紅緒


【ひと言】

黒き猫達磨のごとき春の星
 中七「達磨のごとき」が前後にかかっている。どちらにしても「達磨」が適当か?

半世紀女雛のやうな妻と居て
 のろけ?面白いんだけど。

こきこきと鳩寄り来る余寒かな
 〈鳥わたるこきこきこきと罐切れば  秋元不死男〉があるので、こきこきが損。

男等に止まり木温し明日勝負
 何の勝負か?競馬とか?妙に実感はあるが。

内視鏡喉を貫く春一番
 春一番は凄過ぎる、貫くも痛すぎる。

青ぬたの酢の効きもよし山笑う
国破れ河破れても山笑う

 二句とも季語「山笑う」の陥りがちな失敗例。山が本当に笑っているという意味が出すぎると途端に句が薄っぺらになる。この季語は難しい。

3・11を肴に酒を呑んでゐる
 偽悪がちょっと過ぎた、自粛する必要はないがこのテーマに偽悪は似合わない。


2012年3月14日
えなみしんさドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 検定ブームは去ったのですが、「東海道53次検定」というのが面白そうなので受けてみました。東海道には石碑がたくさんありますが、チャンピオンは芭蕉句碑です。四日市の先の杖衝ツエツキ坂で落馬して「歩行カチならば杖衝坂を落馬かな」。慕って追ってきた弟子と土山で会い「命ふたつの中に咲きたる桜かな」。小夜の中山で西行を思いつつ「命なりわずかの笠の下涼み」が、わたしのベスト3。ほんと、芭蕉は俳句界のベートーヴェンです。で、蕪村がモーツアルト。じゃ、一茶は??。さて、今週は171句からの選です。

【十句選】

「あら」と言い「でもな」と返す春の街   涼
 「あら」と「でもな」の間に会話が隠されていて、それを想像させるのが面白いと思いました。この二人はご夫婦なんでしょうか。街角の風景か。はたまた浮気がばれたのかとか。

浮かびくることばに遅れ二月来る   涼
 「浮かびくることばに遅れ」という表現が面白い。二月らしい事(例えば、梅がめぶく、春らしくなる)と、暦の二月にはズレがあるんだヨという事ではなかろうかと思いました。

鍵穴が武田鉄矢に見えて春   加納りょ
 武田鉄矢といえば金八先生だから、それとカンケーあるのかなぁ。学校とか、校則とか、そんなのと。実は、良くわからないのですが、こういう句は意味を追い求めるよりも面白いなぁという気持ちを素直に認めた方がいいと思い選びました。

藤ゆれる不安がないと不安なの   加納りょ
 「不安がないと不安なの」の措辞に共感しました。アンチテーゼではありますが、複雑な現代のありようを表現していると感じました。「不安なの」の口語のつぶやきもいいし、「藤ゆれる」も効いてます。

春愁と云ふ鼻糞のごときもの   今村征一
 春愁なんて言葉で春のもやもや感を考えているのは俳人だけでして、そんなもんはメソメソ考えてもどうしようもなかろう。という辺りを「鼻糞」と言い放った。そういう快感のある句です。

トンネルの間に間に浅き春飛べる   今村征一
 こないだ中央線に乗って東京から松本まで行きましたが、日本の鉄道はトンネルが多いですね。トンネル〜一瞬の光〜トンネル、みたいな具合です。その事を詠まれたのだと思います。「浅き春飛べる」が工夫の措辞ですが、もっといい表現があるかも。

白板を拭き消すように雁帰る  せいち
 黒板の前に立つ授業中の女先生。外は春、雁が帰ってゆく。日本映画の定番のシーンです。黒板ではなく白板なので、実はその読みよりも、単に白板を消していると読んだ方が素直でしょう。確かに白板は跡形もなく消えますので。

春うららいい日いい医者いい病気   やすし
 ほんとは深刻な事なのかも知れませんが、下5の「いい病気」がある種の開き直りを感じ、痛快。「いい」の繰り返しと、日→医者→病気、と思いがけない展開が効いています。

おぼろ夜の狐や狸や讃岐うどん   川崎洋子
 おぼろ夜に続き、狐や狸。狐や狸は冬の季語ですから、ナンカナ〜と思ったら「讃岐うどん」と落とされます。まるで、狐や狸にだまされたような句です。

残されし命見てをり春の虹    戯心
 最後の一句でこの句をいただきました。春になって物が芽吹く時、人間の命もまた同じように活かされていると感じるという事でしょう。このような心境になるのは良く分かります。季語が良く聞いた共感句でした。

【次点十句】

子と住みし日のごとく買ふ桃の花   きのこ
 やさしい言葉で思い出を語っている句で、読み手の人柄がしのばれます。

少しだけの地軸のづれや閏月   まゆみ
これを書いているのは、3月10日。あれから一年たちました。

酒止めよ煙草止めよと春二番   今村征一
 春一番には何かがあって、それからそれから。「春二番」が効いています。

妻と居てようじなき日の桜餅   隼人
 桜餅が効いているんじゃないでしょうか。いい二人の関係が見えてきます。

朧より差出し人のなき手紙   遅足
 朧からは、いろんな物が出てきます。これは黄泉の国からの手紙なのでしょう。

ももいろの開かずの箱から桃の骨  遅足
 「桃色の箱」「桃の骨」という取り合わせが、意味をむつかしくしていると感じました。

水温む鼻先丸い新幹線  岡野直樹
 今の新幹線は鼻先丸くないですね。従って、東京オリンピックの頃の新幹線を思い浮かべました。

好きなものタンポポあの娘のコンバース てる・るるる
 取り合わせの明るい句でいいと思います。上5がまんまなので工夫の余地があるかも。

初蝶や空の高さを測りつつ   遅足
 上手な句ですが、ややありがちな表現かと。「初蝶」でなくてもいいのが弱み。

正論はときに暴論花あざみ  孤愁
 わたしは「暴論はときに正論」もあるかな〜と思いました。季語が効いています。

【その他、気になった句】

四十年変らぬ顔の内裏雛   隼人
 キリンの首が長いなどもそうですが、あたり前の事を改めて詠むと別の印象を受けることがあります。散文的なのでどっかにキレを入れたらいかが。

初蝶の飛び立つ刹那うすみどり   遅足
 そつの無い句、欠点のない句ですが、ちょっときれいに収まりすぎて面白くないかも。

若き日の干潟が見へて北鶴行  和久平
 青春の思い出を読んだ句か。北鶴行ホッカクコウですか、鶴帰るの傍題でしょうか。

草萌える付箋だらけの五校ゲラ   秋山三人水
 草萌える季節に、いつまでも原稿と格闘している姿に滑稽味が。

五十歳尾崎豊を卒業す  秋山三人水
 尾崎豊がイミシンですが、伝えんとする気持ちが良くわからない所に句の弱みが。

武者返しより攻め上がる城の春   戯心
 講談を聞いているようで、面白かった。

つるし雛つなぐは母の縫いの糸   茜ファン
 お母さんが作ったつるし雛なんでしょう。「縫いの糸」が日本語としてこなれていない。「縫いし糸」とか。

AKB48どころじゃないわ猫の恋   とほる
 口をついたノリのいい言葉が575になって悪くないです。


2012年3月7日
朝倉晴美ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 みなさま、こんにちは。
 このたびも、たくさんの投句をありがとうございました。
 総評としましては、春の句材の良さが出ている句が多い反面、季語の説明に終わっているものが、今までの中で一番多く感じられました。同時に、散文のようにただ十七文字に当てはめたものや、理屈のみを述べている句も散見されました。
 確かに、春の季語は意外に難しいのですが、あえて。ぜひ、できた御句は、翌日か数日経っての推敲を。そこで、語順をかえることや、理屈の説明になってしまっている自句に気づくこともあるのです。まさに、私自身のことですけれど。「わが振りなおせ」ですね。

【十句選】

水温む素手の握手に力込め   いっせつ
 季語の使い方が大変お上手です。上五に名詞扱いの動詞を置くことによって、下五の「込め」が大変強調されることになっています。力強い言葉ですから、よけいに、その強調が効果を出しています。
 また、「素手の握手」という表現は、秀逸でしょう。「手」の連続は、いうもがな、もう手袋を外している季節感に、素手の持つ意味、握手の持つ意味、それぞれが、句の世界を広げています。
 そして、その世界は、とても心丈夫な気分を湛えています。
 ああ、こんな握手、してみたいものです。誰か、私としてくれませんか。
 〈水温む静かに思ふことのあり 星野立子〉

歳時記の内より春がゆっくりと   涼
 大穴のような良句。歳時記をこのように詠みこまれるとは、一本取られた気分です。ただし、「歳時記」を詠みこむことは、大変印象深いですから、類句を指摘される可能性はあります。
 「ゆっくりと」と分かりすぎるくらい素直な表現は、この句に限っては成功しています。
 〈おもしろやことしの春も旅の空 芭蕉〉

座布団干すそば屋を廻り草青む   きのこ
 こちらの句の難を探せば、動詞が3つ(干す、廻り、青む)ということではありますが、情景の鮮明さ、そして鮮明さゆえに迫ってくる季節感、生活感、その臨場感が読者を引き込みます。
 僭越ですが、「座布団を干す蕎麦屋さん草青む」というかたちも可能です。
 下記は、猫との取り合わせです。
 〈垣添や猫の寝る程草青む 一茶〉

錆付きし釣針添へて針供養   邯鄲
 「釣針」を句材にされたことが、素晴らしい着眼です。また、それが「錆び付」いているとは、なんとも、形容しがたい思いが迫ってきます。そして、下五に収めた季語「針供養」。それぞれの単語が、お互いをちょうど頃合いあたりで支え合っているように思います。
 下記は、まち針の供養。釣針、まち針と供養も多彩です。
 〈まち針の頭の瑠璃も供養かな 野村喜舟〉

おしゃべりな浅蜊の闇へのびる舌   遅足
 そうだった、浅利はおしゃべりなんだわ…。
 もう、すっかり、夜半の浅利ワールドに引き込まれてしまいました。深夜の台所や、土間に置かれている砂抜き中の浅利たち。ときおり吹く潮に、驚かされたり、楽しまされたり、この一句で浅利の魅力が200%伝わることでしょう。
 下五の体言止め(名詞で収める)も、大変効果的。もちろん、擬人法も。さっそく、明日は浅利を買って、負けないくらい生態観察をいたしましょう。
 下記は、夜ではない浅利の景です。大昔から、浅利はちゃんと大口を開けていたのですね。
 〈陽炎にぱつかり口を浅利かな 一茶〉

つぎつぎとマトリョーシカや冴え返る   素秋
 マトリョーシカにやられました。「つぎつぎと」は当たり前なのですけど、マトリョーシカはそうであるし、そうあるべきです。そして、「や」切れと季語によって、がぜん、「つぎつぎと」が生き生きしてきました。
 また、ロシアという国の歴史的な事情ゆえ、「冴え返る」もまた生かされています。
 詩人の犀星は句作も盛んで、「筆屋」をとりあわせています。
 〈筆えらぶ店先にゐて冴え返る 室生犀星〉
 下記は、有名句のひとつ。
 〈冴え返るもののひとつに夜の鼻 加藤楸邨〉

春水に晒す茶巾の縁かがり   茂
 私は茶道が大好きなので、すぐにピンときました。茶巾になじみのない方には、「布巾」でも良い気がいたしました。非常に、感性豊かで、語彙力の高い、句姿も整っている、秀句です。
 〈春水や四条五条の橋の下 蕪村〉
 こちらは、古くからの本意である「春水」です。

野仏の頬杖ついて春の顔   古田
 野仏の頬杖も、もちろんとても魅力的な情景ですが、それを「春の顔」としたところが、句に力強さを与えています。仏教用語などは、ともすれば、意味を持ちすぎるのですが、この野仏は、中七下五によって、塩梅よく仕上がっています。「ついて」という口語的な表現(「つきて」ではなく)も、野仏をぐっと私たちに近づけていることでしょう。

草青む現場事務所の撤去跡   天野幸光
 どんな光景でも、「草青む」という季語は、似合ってしまうところがあるのですが、掲句の「現場事務所の撤去跡」は、草の青さをより引き立てる情景でしょう。また、この具体的に限定した表現により、情景がまざまざと浮かびます。
 また、「撤去」という何かしらの終了という事実が、春という季節の明るさを、さらに引き立てています。漢字表記の多さも、その春と冬の対比のようで、成功しています。
 「草萌え」にて、抽象的に詠んだ句と具体的に詠んだ句をそれぞれ紹介します。
 〈草萌えて土中に楽のおこりたる 星野立子〉
 〈柔道着二人で絞り草萌ゆる 大串章〉

縄電車春一番に引き返す   えんや
 縄跳びが春の季語であるように、縄電車も春にとても似つかわしいでしょうが、掲句の良さは、「春一番に引き返す」ことであります。引き返す、ということは、そこで一瞬の停止、そして読者をも含む、気持ちに一呼吸がでます。春の一瞬の逡巡さえ感じられそうです。
 〈声散つて春一番の雀たち 清水基吉〉
 こちらも、雀に視点を置くことで、一瞬の春をとらえています。

【次 点】

ボサノバに体を揺らす春夜かな   涼
 ボサノバと春がちょっと似合いすぎるかもしれません。気分はとても良いです。

たんぽぽの沢山咲きし貸家かな   邯鄲
 平易な表現ですが、句意に似つかわしいと思いました。

なぞなぞは雛の笑みもて片えくぼ   ジョルジュ
 片えくぼに工夫がみられます。

木の芽あえ母の遺した謎レシピ   秋山三人水
 謎レシピという造語が、平凡な中七を生かしました。

春が来たお尻ふり振りカバの愛   菊美
 「愛」は言い過ぎているかもしれません。

ちやほやとされてもみたし春の月   茂
 「されてもみたし」が、文語としては、少々収まりが悪いかもしれません。

車椅子もうすぐ春の入り口に   草子
 少し難しい句材を、嫌味なく仕上げています。

地虫出づ背広の袖にボタンあり   おがわまなぶ
 袖にボタンがあっても、何も不思議ではないのですが、地虫出るころの、ある日常が感じられました。

【選外より】
 添削してみました。いかがでしょうか?

★古都のどかバスの乗車に間に合はず
 〈古都走るバス追ひかける妻夫〉

★より道はミスタードーナツ春となり
 〈今日も寄るドーナツショップ春めいて〉

★子が駆けて孫が追い抜く春の丘
 〈一族の少年少女春の丘〉

★ことごとく洗ひ尽くして春の雨
 〈私をも洗ひ尽くせり春の雨〉

★春のバス女はひとりで大丈夫
 〈春のバス女はいつもひとりきり〉

★結納の口上つかえ春隣り
 〈啓蟄や口上つかえ結納日〉

★さりげなく見計らう中バレンタイン
 〈バレンタイン己も君も見計らう〉

★大きな目見開くシュート春の風
 〈春風やシュートを見やる大きな目〉

★艶やかな夢春眠の二度寝かな
 〈朝寝して艶やかな夢いく度も〉

★マンションとマンションの間に春の月
 〈春月や高層ビルから顔を出す〉

★反対の署名に回る春の寒
 〈反対の署名多くて春隣り〉

★納税期「分からん数字」と鳩の鳴く
 〈納税期鳩といっしょに笑いましょ〉

★ひな祭りボヘミアびとも招かれて
 〈ひな祭りボヘミアの人パリの人〉

★紅椿乙女椿と散り椿
 〈紅椿乙女椿と散る真昼〉

★誰がためにいふにはあらず梅真白
 〈梅真白誰がために咲く彼のために〉

★蒲公英を毟り海へと捧げ放つ
 〈蒲公英や海へと捧げ放ちけり〉

★小流れの土手に光や蕗の薹
 〈土手一面光の中の蕗の薹〉

★大試験キャンパス巡る風硬し
 〈大試験今日は強風注意報〉

★梅林に立寄りたくなる雨後の夜
 〈雨あがる梅林の夜約束す〉

★あらいぐまカエルの卵をパクリかな
 〈あらいぐまカエルの卵物色中〉

★決断のつかぬ明日(あした)や蜆汁
 〈蜆汁決断できぬことばかり〉

★春雲や各駅停車のモノレール
 〈春雲や急行のないモノレール〉

★守り継ぐ雛の調度の耳盥
 〈磨きこむ雛の調度の耳盥〉

★梅咲くや赤子のあくび精一杯
 〈梅咲いて赤ちゃんあくび大あくび〉

★料峭が箒の様な藁揺らす
 〈料峭や整列されし藁箒〉