「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。


2013年4月24日
小西雅子ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 岡野ドクターは「庭にライラック」。おしゃれですね。今、我が家の庭兼畑には、ソラマメ、タマネギ、ラッキョ、サンショウ、アスパラガス、ジャガイモ、キュウリなどなど。収穫は近い未来から遠い未来までさまざま。すべて夫が世話をしています。今どきのハーブの類はありません。「バジルなんかどうかなあ」と夫に言うと「バジルて何?馬汁?」。ハーブはなくても夫の野菜は美味しいです。
 今回も多くの俳句を送っていただきました。ありがとうございます。

【十句選】

さへづりやけふは新聞休刊日   太郎
 新聞の休刊日にはいつもの新聞タイムを持て余します。その時間にうまく当てはまった囀り。鳥の名前を調べたくなるかもしれません。前半は平仮名、後半は漢字と視覚的にも楽しめました。リズムも良く。

大楠のざわめきばかり春の闇   きのこ
 春の闇とはまだ月の出ないうっすらとした闇。木の葉のざわめきがその闇を占めているという、少し怖いような情景です。これから何が起きるのか。

木蓮やディキシーランド・ジャズに揺れ   大川一馬
 知っているジャズを口遊みたくなる句。揺れているのは人間でしょう。木蓮の咲いている場所にニューオーリンズの風が吹いているようです。

囀やかっと眼を開く仁王像   吉井流水
 「囀」と「仁王像」、何てステキな取り合わせなのでしょう。囀りという魔法によって仁王さんの目がかっと開いたようにも思えます。仁王像に生命力がみなぎります。やさしさと強さと。

豆飯のえくぼの頬を突っついて   紅緒
 わずか1m以内のできごと。豆とえくぼと人差し指、この三つのサイズがほぼ同じ。驚くほど抑制の利いた、コンパクトな情景です。だからこそ共感できる愛情だと思いました。

愛人の卵あたため春愁い   秋山三人水
 共感できるかどうかは評価が分かれると思います。花街の母のような風情に私は共感しました。

先生の胸に草矢を放ちけり   赤芽
 これまた意味深な句。この「先生」はきっと異性です。できれば語順を換えて「草矢」が最後に出てきたら尚良いのですが、「放つ」という動詞にそれを越える魅力がありました。

目借時ルノアールまでもう少し   おがわまなぶ
 「ルノアールまでもう少し」が理解できたわけではありません。修行中の画家、展覧会への道のり、などどのようにもとれるでしょう。この句を見た瞬間ルノアールの色彩と目借時が妙に合うと感じました。

忘れ霜ガム噛んでいる独り者   戯心
 リズムが良いのは、上5と下5の「も」が呼応しているからです。「忘れ霜」と「独り者」はやや近すぎる気がしましたが、「ガム噛んでいる」という現代の風景がそれを救いました。

花屑と追い詰められた鶏と   岡野直樹
 この句は今回のイチオシです。追いかけられ、追い詰められた鶏は白い羽を散らしながら暴れます。散り落ちた桜の花びらの重さ、軽さ、鶏の重さ、軽さ、それらが相まって絶妙なバランスを保っています。ペーソスもあり。

【その次の10句】

杉花粉小仏峠のど仏   伊藤五六歩
 リズムに挑戦された楽しい句。3つに切れてしまったのが残念。「小仏峠の」で良いのですが、きっと「の」が連なるので敬遠されたのでしょう。

背徳や虻の羽音のするあたり   くろやぎ
 「背徳」と「虻の羽音」。サスペンスドラマがはじまるようです。具体性には欠けますが意欲作です。

春の星ひとり一人に物語   せいち
 端正な句。句会に出されたら点数は入ると思います。やや抽象的。

花曇伎芸天女のやうな雲   今村征一
 「花曇」と「技芸天女」の配合はぴったりだと思います。最後の「やうな雲」は、同じく気象の「花曇」を邪魔してしまうのではないでしょうか。

チューリップ十一歳の歩幅かな   ロミ
 十歳ではなくて「十一歳」。何て中途半端な楽しい句。中途半端さは時にリアリティーを生むので可。

チューリップなかに羽音の聞こえけり   山上 博
 ステキなファンタジー。「音」があるので「聞こえけり」は省いてもよいかと。

置手紙「春を惜しむ」とありにけり   遅足
 かっこいいですね。こんな置手紙書いてもらいたいし、書きたいし。推敲して、○○○○○「春を惜しむ」と置手紙、にならないかなあ・・・・・。

ぐつぐつと葛根湯の春寒し   茂
 葛根湯は有名な漢方薬。前半は暖、後半は寒。どこかで切れていたら10句に採っていました。例えば「春寒しぐつぐつぐつと葛根湯」。

ほろ酔いの父の土産や桜鯛   檸檬
 俳句の見本のような句。575で季語が生かされ、作者の主観がなく、切れがあり、答えが最後にあり。どんどん作ってください。

すべり台着地は桜蕊の上   スカーレット
 情景がよくわかる句です。「桜蘂の上」が魅力的なので10句に採ろうか迷いましたが、「着地は」ときて「〜の上」では少し説明的。惜しい。

【良いと思った句】

ステーキの皿の人参温かし   涼
 「温かし」は不要かと。それまでに温かさが伝わってしまっています。でも人参の美味しそうな句。

ちゃきちゃきと姉さんかぶり種を蒔く   いつせつ
 「ちゃきちゃき」はちょっと月並み。情景もよくわかりリズムも良いのですが。

口げんか又してをりぬ花曇   古田硯幸
 「花曇」と種の尽きない「口げんか」はよく合っていると思います。文語の句にされるなら「けんか」は「けんくわ」では?

真向かひに白山光る花の冷え   山畑洋二
 「花の冷え」という終わり方がとても良いと思いました。

箱根路や寄木細工と予余花の風   まゆみ
 「予余花」は入力ミスでしょうね。「寄木細工」と「余花の風」は良い組み合わせですね。

鳴き砂の鳴かぬ渚や目借時   えんや
 面白い句です。浅学により目借時とのつながりが理解できませんでした。すみません。

飛花落花昼を流るゝ水の音   夢騅
 リズムの良い句ですが、このままではどこかで見たなあと感じてしまいます。どこかに個性を。俗を。

トンネルを抜ければ光る青葉潮   洋平
 綺麗な風景。そこは雪国ではなく「青葉潮」。光だけでなく風も感じられる句です。

春寒や記憶継ぎゆく石畳   啓
 「石畳」と「春寒」はとても良いと思いました。「記憶継ぎゆく」は作者の思いが入り過ぎました。

ほうたいをしているあめがふっている   汽白
 「ほうたい」というのはノスタルジーですね。三島由紀夫や中原中也、そして「愛と死をみつめて」も連想します。しかし、無季の句になっていますので雨の種類によって鑑賞が変わってしまうのが残念。

少年の孤独あせびの花に酔ふ   孤愁
 よくわかる句です。「孤独」があるので「酔ふ」を別の言葉に。

行く春や寄付金募る会報誌   津久見未完
 これはこれで良い俳句です。何の寄付金だろう、何の会だろうと、そのあたりにパンチがないかも。

玻璃越しの地球語せはし春の蠅   たか子
 何だか楽しい句ですね。「地球語」などというダイナミックなものと「春の蠅」。その冒険に拍手。

乳のごと新芽の抱くひと雫   草子
 舌足らずで説明しきれていないところに好感が持てます。「新芽の抱くひと雫 」が良いので「乳のごと」を再考されると良いと思います。ただ、「新芽」が季語になるでしょうか。

金色の靴ひも闊歩春の山   中島啓之
 ご一緒したいような元気な山歩き。金色の靴ひもは素敵です。「闊歩」は言わなくても、いえ言わない方が共感が得られます。

芹摘めば旅にある子の指想ふ   豊田ささお
 子のことになるとどうも主観が入ります。「芹」と「指」が良い取り合わせなので「想ふ」を他の言葉にされたらどうでしょう。

ワープロは三年ぶりや暮かねる   意思
 俳句としての形は整っています。「暮れかねる」という季語もぴったり。

【気になる句】

花びらのこぼれて崩る椿かな
 椿というのはこのようなものだという共通の認識がありますので説明は不要です。椿から離れた何かをもうひとつ。

本間家や始末心に桜鯛
 「本間家や」の「や」という切れ字は場所が違うような気がします。切れ字はその句の主題を示すように使いますのでこの場合は「本間家の始末心や」のほうが良いかと。

春の闇老いの一徹花馬酔木
 「春の闇」と「花馬酔木」季語の重さが同じくらいなのでどちらか一つにされたほうが。

高遠の絵島屋敷や桜舞ふ
 「高遠」といえば「桜」。桜の名所としてあまりに有名ですので、この地名を使うならもっと個性が要求されます。作者自身の視点を。


2013年4月17日
岡野泰輔ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 桜の時間はあっという間に終ってしまった。桜よりも猛烈な雨風のほうが印象深かった。そして寒さも。5度以上の幅で気温が乱高下している。なんだか気候が荒っぽくなってきている気がする。「四月は最も残酷な月、リラの花を・・・」T.S.エリオットの『荒地』(岩崎宗治訳)の冒頭を思い出す。そういえば我が狭庭のリラ(ライラック)もつつましく花をつけた。さて今回もたくさんの春の句をいただきました。

  【十句選】

春なかばのこぎりの目に狂ひあり   伊藤五六歩
 春なかばとは正に今頃のことか。一斉に芽吹き、花が咲き。一方で身体も、精神もどこか狂った感触が兆すときでもある。そんな季節が無機物たる鋸も狂わせたかのように読めるところがおもしろい。(もちろん作者はそんなことは一言も言っていないが)はっきりと鋸の目の狂いを発見したのだ。ここを断定したのがよかった。

白梅をアテナインキの壜に挿す   涼
 アテナインキが何ともレトロ、と思って調べたら、立派に現役。学芸の神アテナのエンブレムをあしらったガラス壜、やはりレトロなデザイン。万年筆を使わないので知らなかったが、脈々とファンがいるらしい。何ということのない句だがアテナインクという固有名詞が力を発揮している。こういう匂いと歴史をもっている名詞は強い。

養花天隅田の土手に鼓笛隊   まゆみ
 隅田川と桜は五万と詠まれているだろうが、ここでは鼓笛隊がとても効いて桜花とよく似合う。小学生ぐらいの子どもたちを想像したい。桜花、子どもたち、音楽、と道具立てはとても明るいが、平板といえば平板。ところが空は花曇、曇天、この養花天という季語がこの句の平板化を防いでいる。こういうとき、季語の力を再認識する。

春の雨神輿は台に載りしまま   古田硯幸
 静かな情景に惹かれた。静か、しっとり、こまやか、艶な、、と歳時記にある記述そのままの、明るい雨を感じた。祭の当日倉出しをした神輿に静かに降る雨。緑さす明るい境内に神輿だけでなぜか人の気配を感じない。それは「載りしまま」の措辞が放置された印象を伴うからかもしれない。そう読むとちょっと不思議。読みすぎかな。

惜春のまた初めより砂時計   遅足
 砂時計を何度も逆さまにしては、飽かず時間の形象を眺める。春という季節の物憂さがよくでている。ここまではとても好きなところ、ただ「惜春」が致命的に問題だと思う。(入選には少なからずためらった)最近別のところで、デタッチメントとコミットメントのバランスというような話を読んだ。辞書的にはデタッチは超然、無関心、距離を置くなど。コミットはかかわり、関与、等。俳句に引き寄せていえば、詩の根幹をなす事物からの距離のとりかたということか。概ね俳句にはデタッチメントが必要なようです。「惜春」は要検討。言葉の湿度を下げられることを。

コクトーの鼻で弾けたシャボン玉   B生
 シャボン玉句数あれどコクトーの鼻にあてて弾けさせた句はないだろう。その発想に拍手。なるほどコクトーはそれに相応しい立派な鼻の持ち主であった。
 コクトーとシャボン玉といえばこの詩がある。
  シャボン玉の中へは
  庭は這入れません
  周囲(まわり)をくるくる廻っています
  (堀口大學訳)
 俳句みたいな詩だ。あるいは俳句の翻訳のような詩。

防波堤を男が走る暮春かな   たか子
 句に沿ってこのまま読めば、堤を男が走っているなんでもない春の景。ただしばらく眺めていると、このなんでもなさが気になってくる。俳句の短さはそうやって読みを挑発してくる。この走る男は少し不穏ではないだろうか。防波堤が、暮春が発動し、風景の彫りが深くなる。この句をさかなにして、ただごと俳句の秘密を語ろうとしているのだが、うまくいっていないようだ。

海坂に島影ふたつ卒業歌   たか子
 海坂(うなさか)、海境とも。水平線が描く弧、海の果、そこからは海神の国、その境界。含蓄のある言葉だ。船の上か港か、とにかく海を前にして聴く卒業歌だろう。イメージの含有量の多い海坂という言葉のおかげで一句にのびやかなひろがりが生まれた。一方おまけのように藤沢周平の海坂藩も連想してしまう。

諸事情で土筆になってもう四日   岡野直樹
 諸事情という営業トークのようなぼかし方。力の抜け具合がいい。きっと大人の事情があったのだと思う。ジャンケンで負けたわけではあるまい。四日という日数も妙なリアリティーがある。きっとあっという間の四日間だったに違いない。この後人間に戻れるのかも気になるところ。

花の雲預金解約してをりぬ   豊田ささお
 空を覆うばかりの満開の豪奢な桜と逆方向の預金解約という行為。取り合わせとしてエッジが効きすぎているともいえるが、おもしろい。解約に至った諸事情をあれこれ想像してしまう。上五はそれこそどんな季語でも置けそうだがなるほど中でも「花の雲」は悪くない気がしてきた。花時の落ち着かない気持、急く気持が句の後半に揺曳している。

【予選句】

俎板の干されし塀や春の雨   きのこ
 そういうことがあるのかどうか?

黄水仙海へ海へとなだれ咲く   太郎
 海へのリフレインからなだれ咲くにかけての語調がいい。景はよくある。

山門の向うに続く桜道   古田硯幸
 山門の外から境内を見ていると思う。三井寺のような大寺なのだ。大振り。

花ふゞき風のあしあと残しけり   紅緒

飢餓の碑に出合ふ観音桜かな   学

我ルーツ探し当てたり豆ご飯   学
 豆ご飯がご褒美のようでおいしそう。

パン生地のすやすやねむる花見かな   智弘
 このままでは謎。花見の見がいけないのだと思う。桜とパン生地の取り合わせはあり。桜の周辺の厖大な言葉を探られたらいかがかと。

かざぐるまふたつにおしりわれている   汽白
 昔英語の先生にhipは片側、両側合わせてhipsなんだと言われたことを思い出した。オブジェとしてのおしりとかざぐるま。

しおひがりぼくはしちしちきみはごご   汽白
 四十九歳と二十五歳のひと回り以上の歳の差、と読むのか?「し」と「ひ」をうまく使い分けられない生粋の江戸っ子は読みにくい。江戸っ子でなくても読みにくい。表記もふくめてそのもどかしさがこの歳の差カップルの姿。

青がすき青がすき好き蛙鳴く   ∞

雑草に満天星躑躅降注ぐ   檸檬
 星が降るというから狙いはわかるが、雑草が疑問。

磨崖佛見下ろす桜ふぶきけり   和久平

北窓を開くポルシェにYAZAWAかな   小林飄
 北窓を開けてこの景色は爽快。

春愁やスプーンを滑るオムライス   えんや
 オムライスが滑るのが意外。これも春愁。

木蓮の花明かりあり小さき窓   紀子

一輪の菜の花置きて去りにけり   豊秋
 誰だろう?

夕晴れや庭いちめんの花筵   とほる
 描かれている美しい色と光は想像できる。夕晴れがいいのか?とか、いちめんがいいのか?とか、選ばれた語句の推敲が必要。

鞦韆や桜の空の上にあり   とほる
 これはとても気持いい。


2013年4月10日
朝倉晴美ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 みなさま、こんにちは。
 花冷えに、春嵐、花吹雪と、桜にとっても忙しい一週間のようでした。
 今回も、たくさんのご投句をありがとうございました。
 実に、意欲的な句が多く、選もワクワクいたしました。その意欲が、俳句としてうまく生きるかどうかは、本当に難しいところですが、挑戦を恐れないでほしいと思っております。
 私自身、句会でボツだったとしても、いろいろな試みをしているつもりです。
 では、私の好きな一句から。
 【春昼のホットケーキが蜜を吸ふ  山田弘子】

【十句選】

天金に春落葉して誤植かな   伊藤五六歩
 「天金」「春落葉」「誤植」、と、この三点セットがお見事です。強いて申すならば、「かな」止めが気にはなりますが(少々、表現が強すぎる、という点で)、三点セットの絶妙さにカバーされているでしょう。最近、天金を施した本をみてないなあ、と思い、大学で古書を必死に繰っていたころを懐かしく思い出しました。
 ノスタルジーも、この句の魅力ですが、「誤植」というウイットが、そのノスタルジーを軽やかなものに仕上げています。
 ああ、大学の図書館に行きたくなってきました。
 【春落葉焚きては昨日忘れけり  古賀まり子】

臨月の娘と歩く木の芽晴   古田硯幸
 掲句は傍らの人物に着眼し、以下は、空に視点をもってきた一句。
 【木の芽晴天守の上の航空路  大橋敦子】
 木の芽晴という季節にどちらも似つかわしいと思えます。飛行機の通り道には、日常から脱却するような楽しみが感じられるわけですし、臨月とは、これからの未来に向けた輝かしい期待感があります。どちらも、今、ここからの飛翔のような昂揚感が魅力です。
 また、掲句では、「娘と歩く」母(もしくは、父かそれに準ずる人物)の優しい気持ちが、さりげなく表現されているでしょう。娘を心配してしまう親心です。

ステンレスの新しき駅冴え返る   二百年
 上六ではありますが、「ステンレス」という表現力に脱帽です。近未来を思わせるような駅舎も、すでに現代では珍しくない日常となった感があります。駅舎、という言葉すら不似合かもしれません。もちろん、「冴え返る」という季語にもぴったりと合っています。ステンレス独特の質感、そこにかんじられる艶やかな冷たさ、輝きが、とても似つかわしいのです。似つかわしいもののひとつに……以下、
 【冴えかへるもののひとつに夜の鼻  加藤楸邨】

大仏の穴をみあげて花粉症   ロミ
 花粉症と言えば、<晴時々曇ときどき花粉症  ふけとしこ>と思いだしてしまう私ですが、大仏もまた花粉症なのかもしれません。もちろん、掲句では、大仏を見上げる人物が花粉症なのですが、鼻の孔も大きかろう大仏が花粉症かもしれないと、連想してしまうところに、この句のユーモア、面白さがあるのです。つまり、魅力があるのです。大仏は、鎌倉でしょうか、奈良でしょうか。一節には、鎌倉の方がハンサム顔などと言われていますが、私は、奈良のどっしりとしたふくよかな大仏さまに手を挙げたいと思います。先日、四国八八か所のひとつに参りましたが、そこのお釈迦様もそうだったかも、などと楽しい想像ばかり湧いてきます。
 もう一句、お気に入りの句を紹介いたします。
 【口外を禁じられけり花粉症  内田美紗】

赤丸は土・日運休花曇   せいち
 そうなんです!土日はダイヤが違うのですよね……。私は、何度もそれゆえの間違いをしております。時刻表見間違えです。そんな気分を代弁してくれているかのような「花曇」一句です。句中には、乗り損ねたとも、待ちくたびれたとも、何も言っておりませんが、「花曇」がなんとはなしに、そのような気分を出しているでしょう。少しけだるいような、しかし、そう深刻ではない、ある春の一日を丁寧に詠んだ佳句でしょう。
 以下は食べ物との取り合わせの句。
 【ゆで玉子むけばかゞやく花曇  中村汀女】
 【鮎菓子をつつむ薄紙はなぐもり  長谷川双魚】

折り鶴の春の力を蓄える   遅足
 句材の「折り鶴」も、季語としての「春の力」、そして表現力ある「蓄える」。三位一体となって、力強い春の一句と仕上がっています。
 掲句、「折り鶴」の持つ「力」を如実に表現しえた秀句です。以下も、「春の力」を感じさせる句。
 【腸(はらわた)に春滴るや粥の味  漱石】

ピッコロの急に鳴り出す風信子   学
 ヒヤシンスも、驚くというより、喜んだのではないでしょうか、ピッコロの音に。ピッコロの持つ特徴ある音と、ヒヤシンスは本当によく合います。たぶんに、水栽培かな、と思われますが、ヒヤシンスの花付の豊かさや色の鮮やかさが、実にピッコロ的です。ピッコロ的、などという言葉は、今、私が勝手に作ってしまいましたが、そのくらい、ぴったりだと感じてしまったのです。
 蛇足ですが、フルートよりピッコロのほうが、演奏は何倍も難しいそうです。楽器が小さくなればなるほど、難易度は上がるとか。オーケストラ部の友人が申しておりました。では、文芸もそうなのしら?そうならば、俳句が一番難しい詩型?
 【銀河系のとある酒場のヒヤシンス  橋關ホ】

永き日のビスケットにはベルマーク   岡野直樹
 これは、森○製菓のマリービスケットですよね!ベルマークも確認済です。このビスケット、辛党にもファンが多い、ロングセラー品。子どもはもちろんですが、なんと犬も好きとか。長い間、世代を超えて(種を超えて?)好まれているビスケットが、何も語らずにいて、「永き日」を語ってくれています。つまり、平和な一日の景なのです。「ベルマーク」が、句にアクセントとオリジナルテイーを付け加えています。お見事です。
 明日の朝食は、ミルクテイーとマリーで決まりです。そして、金毘羅歌舞伎が始まりましたので、【金比羅に大絵馬あげる日永哉  子規】を挙げておきます。

味噌漉しに花冷えの風漉しており   茂
 味噌漉しを使うか否か、特に麦味噌のように粒がある味噌の場合、漉すかどうかは家族争議にもなりえる問題で……。少々、大げさに申してしまいましたが、「味噌漉し」の持つニュアンスが、俳句らしく生きている句でしょう。実際に、漉すことのできるはずのない「花冷えの風」を漉しているその気分とは、どのようなものなのでしょうか。少なくとも、ワクワクしたり、大喜びしている気持ちではないでしょう。しかしながら、悲嘆にくれる気持ちでもない。その、独特の感性が、多くの女性の共感を呼ぶに違いありません。昨今は、老若問わず、男子厨房に入る、ですから、男性方にもぜひ、共感していただきたいものです。
 【花冷えや俄かに泊まる母の家  山田みづえ】

サーファーのよぎれば濡るる遍路道   伍参堂
 【遍路坂サンドイッチの断面図  晴美】
 お粗末ながら、拙句でございますが、お遍路との取り合わせの両句です。
 サーファー、大変に魅力的です。その上に、「よぎれば濡るる」という動きのある表現力。脱帽でございます。実景としての強みもあります。太平洋沿いの遍路道も確実にありますから。

【次点】

闇の中へ頭差し込んでいる釘煮   ∞

シャッターは千分の一花の塵   涼

春嵐一夜に緯度をずらすかに   大川一馬

惜春や鳥の形をして眠る   遅足

麗かや補聴器まはるショーウインドー   えんや

黄砂降る駱駝睫毛を震はせり   山上 博

大袈裟な漢早退山笑ふ   今村征一

大海を目指す川なり花筏   和久平

青き踏むマクドナルドの紙ふくろ   智弘

プチプチを潰してをりぬ彼岸かな   たか子

膝小僧すくつと立てり鰊空   たか子

春の鍵盤雫のやうに跳ねかへる   紅緒

さくらさくら相席してもいいですか   鉄男

自転車の空気入れなきゃ桜咲く   とほる

【予選】

古書市にぽるとがる文(ぶみ)春夕べ   伊藤五六歩

♂♀ともつれたまんま釘煮食う   ∞

円球の墓石に枝垂れ桜かな   涼

花の下同胞母に父似かな   まゆみ

たらの芽や瀬音山路を離れざる   太郎

恋猫の声聞き分けてるうちの猫   きのこ

伝説の平家の里に残花かな   洋平

飛行機雲対角線に春の玻璃   古田硯幸

果樹園の万の蕾に遠初音   山畑洋二

コクトーの鼻で弾けしシャボン玉   B生

母の手をギュッとね朧月の影   Kumi

ななめに来ななめに過ぎる春の禽   二百年

姫さまも王さまもいて苺喰う   ロミ

ぼうたんのぼうたんたるを忘れけり   学

じいちゃんと並んで出迎え黄水仙   岡野直樹

佐保姫のにきびの痕や春愁   邯鄲

こころざしすこししをれり春大根   啓

煙濃き野焼に車止まりけり   山渓

春の鳶舞う高みよりビバルデイ―   戯心

朧夜の紅唇少し開かれて   戯心

蓬摘む浦和レッズの話して   隼人

鶯や鳴いて鶯うぐいすに   おがわまなぶ

おっとっと朧月夜の糞を踏む   おがわまなぶ

煩悩も志気もふつふつ花ミモザ   孤愁

春眠し暇な事務所の電話番   紀子

太極拳合わせゆるゆる桜落つ   檸檬

片頭痛蟻穴を出づよろよろと   檸檬

量り売るいのちの重さ白子干し   伍参堂

税理士と全夫をおいて花見かな   あざみ

剪定の夫婦無言の赤い服   あざみ

春うらら太き糞(まり)する岬馬   豊田ささお

春の空お〜いのんちゃん雲に乗って   スカーレット

一本の次は二本の花見かな   中島啓之

伐られたる疵を隠せり桃の花   中島啓之

チョコレートひと山かじり春の山   鉄男

番組を変えてはくれぬ弥生尽   意思

コニャックがラップと銀の二重蓋   意思


2013年4月3日
えなみしんさドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 3月の第3週を京都で過ごしました。
 花はまだ、と思っていたら、ことしは早くて、北野天満宮では桜と梅をカメラに収めることができました。足を延ばした奈良では、氷室神社のしだれが咲き、そして、帰ってきた東京も満開と、花のついてまわった2週間でした。
 そんな時期なので、花の句がたくさん。ただ、花の句は数知れずあり、不勉強な私でも類想句があるなぁと思う句が多かったです。それでも詠みたい?ワカルワカル、が、まだ花を詠んでいる方がいたら、ちょっと頭に入れておかれるといいのでは。10句選ぶのにちょっと苦労したのは、そういう事もカンケーあるかも。

  【十句選】

白といふ色青ざめて花こぶし   きのこ
 白を色だと考えたのが、新鮮でした。空の青、こぶしの白が印象的な句になっています。

春の月空地になりし空四角   きのこ
 腑に落ちる句です。良くかんがえると、そんなワケはないのです。「空をゆくひとかたまりの花吹雪/素十」なんかも、同じ感覚。でも、そう思える。イメージの写生句という事でしょうか。

遠き日に秘密基地あり山笑ふ   山畑洋二
 団塊以上の年代なら、うなずく方がおおいのでは。今の方にも、学校とか公園とか、コンビニとかにそんな所があるのかも。

桜散る謎の多けりいろは歌   洋平
 「いろはにほへとちりぬるを」ですね。作者不明だし、時代もあいまい、確かにそんな感じです。思いきって開いてみる手もあるか。「さくらちるなぞのおほけりいろはうた」とか。

ハイタッチ座敷わらしと真夜の雛   孤愁
 情緒はないですね。でも、今はキティちゃん雛もあったりする。こんな空想も不自然ではなく、楽しいかも。

春の夢捨子だったら橋の下   おがわまなぶ
 親に似てなかった、次男次女でかわいがってもらえなかった、などで、そう思ってた方はけっこういるのでは。季語が一考かも。何か花や草の名、ぺんぺんくさ、花すみれ、いぬふぐり、つくしんぼう。あるいは、下萌、茎立など、考えてみてください。

夕桜だまっていれば話し出す   紅緒
 言葉を尽くしてその美しさをいうのではなく、引き算の発想というか、多くを語らない読みぶりがいいと思いました。
 断定したのもいい。

春愁のぎゅうぎゅう詰めの鶏舎かな   学
 昔よりも物価の下がったもののひとつが卵なんだそうです(もうひとつはバナナ)。地方に行くと、車窓から、鶏舎を見ることがありますが、土を踏むことなく卵をうむニワトリさんには、オキノドクと言うしかありません。季語は動くような気がします。

ブランコやみんな一人になりに来た   B生
 そういう感じ、わかります。古いんですけど、黒澤明の「生きる」で、志村喬が乗ってた。にぎやかなのもブランコ。ひとりで寂しいのもブランコ。口語の語り口が効果的です。

もしかするとあの明るさは落第生   たか子
 変な句です。でも、受験に失敗すると、周りが暗くなるのをカバーするように、妙に明るくふるまう子がいたりします。そうふるまった事も含めて、後で更に落ち込んだりして。

【選外佳作】

走り去るピンクのクラウン春の雷   凡鑽
 句材は面白い。報告句っぽいのは季語のせいか。

樹林葬二体一組桜咲く   伊藤五六歩
 二体一組、の意味がつかめなかったが、樹木葬、樹林葬の雰囲気が伝わる。

歯ブラシに貼る入学の我が子の名   智弘
 学校に持っていく歯ブラシなんだろうか。ちょっと読みとれず。

ああきみがいそぎんちゃくにみえてきた   汽白
 読み手に投げている句だが、いそぎんちゃく、に妙に意味が(考えすぎか)。

三月やビニール傘に黒い雨   学
 この時期(つまり、原発も中国もある)だから分かるのかも。

笹鳴きに聖書を閉じて目をとじて   進
 聖書の取り合わせが変わってるが、成功とはいえず(ごめんなさい)。

千年の幹に一期の花なれや   与平
 調べも高いのですが、類想を思ってしましました。

花の宴花は迷惑かも知れず   せいち
 そうも思えるし、逆に喜んでいるのかも。「かも知れず」が弱いのでは。

花莚敷いて開花を早めけり   春生
 開花宣言にうかれる我ら。この詠み方も、面白いと思いました。

潮干狩り地球に痒き背中あり   紅緒
 痒き背中、で潮干狩り。季語の説明っぽくなっているのがどうか。

【その他目についた句】

耳かきの先のもふもふ草の絮   凡鑽
 もふもふが、面白いが、いまいちの感あり。

満点の星の如くに囀れる   二百年
 狙いで満点なのか、満天のマチガイとも。

するすると重機が掴む春の雲   今村征一
 良く分かる風景、ありがちかと思いました。

花時と言ふゆゆしさや西行忌   みさ
 「花のもとにて春死なん」ですが、「ゆゆしさ」がピンと来ず。

卒業の日も旋盤を回しけり   恥芽
 「成人の日」なら分かる句。さすが、卒業式は参加するのでは。

舞踏会デビュー夢見る芽芍薬   スカーレット
 擬人化がきつい。

ゴーヤ植う土もぞもぞと応へけり   紅緒
 いいんだが、何かが上手く行ってない。ゴーヤなのかも。

さざ波を広げて春のピアニスト   紅緒
 いい感じだが、少し甘すぎるかも。

 以上です。


2013年3月27日
久留島元ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 今回の投句は218句。たくさんの投句、ありがとうございました。
 かなり多くて選ぶのが大変でしたが、おもしろい句がたくさんありました。一方、季語や五七五の音律がうまく使えていない句も多かったようです。破調がいけないのではなく、順当ではない破調であればこそ、それだけの型破りなパワーのある句を読みたくなるのです。

【十句選】

菜の花や採血室のカレンダー   伊藤五六歩
 「菜の花」というと屋外を想像してしまうので、作者がどこにいるのかちょっとわかりにくかったのですが、「採血室」で「カレンダー」を見ている、のは、「春」の「採血」の、ちょっとぼうっとした感覚がよく出ていると思いました。

ローカルディスク開けばどこも木の芽時   ∞
 PCの「ローカルディスク」を開いて「木の芽時」がひろがる、という発想、ややついていきかねるところもありますが、春らしさを感じました。

嘘でしょう春が呟くなんてこと   涼
 ウソでしょう。ウソですが、逆説的に「ありそう」と思わせる言葉づかいがお見事。

蟻穴を出づ膨らんでゐる宇宙   せいち
 大小の対比、春の陽気と成長する宇宙。うまく響き合っていました、技ありの一句。

春の月おおきな切手なめて貼る 遅足
 こちらは小技ぬき直球勝負、のびやかでほほえましい句。

ひらがなの溶けるが如く春の空   学
 「如く」という言葉は説明的なので避けた方がよいのですが、「ひらがなが溶ける」というやわらかなで不思議なイメージを具体的な「春の空」に結びつけるためには有効でした。おもしろい句。

春の雲海馬のやがて天馬かな   山上 博
 言葉遊びから雄大なイメージにつながり面白いです。

蛇穴を出づ踏ん切りのつかぬまま   檸檬
 「蛇穴を出づ」で一旦切れですが、ここは踏ん切りつかぬまま出てしまった「蛇」のその後も気になります。

はまぐりがいっこへそからごまいっこ   汽白
 いちばん変な句。へそのごまが「いっこ」出てくることはない気がしますが、ありえない対比がおもしろい。

鳥曇夢から覚める逃亡者   おがわまなぶ
 「逃亡者」というだけで物語がいっきに広がりますが、「鳥曇」の薄暗さもいい。

【選外佳作】

春昼の女撃ち抜くバーコード   ∞
 目を引きましたが、バーコードが「女を撃ち抜く」とは何か、まったくつかめませんでした。何か劇的な場面とも思えますが、もうすこしヒントがほしいところ。

つまさきにふと湿りある花の雨   涼
 「ふと」気づいた、というのはやや説明的ですから、やや古風ですが「湿りありけり」としたほうがよいと思います。靴まで浸みるのは気持ちが悪いですが、花の雨なら濡れていこう、というところでしょうか。

花がふる言葉がたりない誰其に   kumi
 「誰其」(誰某?)がわかりにくいので、「花が降るいつも言葉が足りなくて」などのほうが語呂がいいと思います。

觀音の遊行の一歩いぬふぐり   夢騅
 「観音の遊行」と「いぬふぐり」の取り合わせは可愛らしくもエロティックで素敵。「一歩」はやや説明的。

ジーキル博士とハイド氏ヤジル氏コメジル氏   汽白
 どんどん変な人名にとんでいくのが面白いです。

ゆっくりとパフェの苺の卒壽かな   茂
 「パフェの苺を卒寿かな」としてはいかがでしょうか。

涅槃西風深夜ドヤ顔出刃包丁   秋山三人水
 涅槃西風が深夜に吹くかどうかわかりませんが、かなり物騒な状況。

白き紙落ちて底無し春うらら   意思
 なにか具体的な情景があるのかもしれませんが、無限の谷底を落ちていく白紙、しかものどかな「春うらら」という、ぎくしゃくした世界観には興味が引かれました。変に理屈を付けるより、いっそシュールな句であってほしいと思います。

【一言】

春の雪良しとばかりに季語とする   いつせつ
 春の雪はもとより季語ですので、季語としたうえで何か取り合わせてください。

二四歩指して眼をやる桃の花   邯鄲
 まだ序盤戦でしょうか、「桃の花」とあるだけで視野に入ったことが分かるので「眼をやる」が不要です。

パンダ交尾動物園の奥座敷   大川一馬
 着目はおもしろいのですが、動物園の「奥座敷」とは普通言わないと思います。

チューリップ畑のごとき女性車両   おがわまなぶ
 「〜のごとき」は説明的ですし、まして「花畑のような女性車両」ではまったく新味がありません。

春眠やアロマテラピー実施中   秋山三人水
 「〜中」という言葉は短く説明できるのでつい使ってしまいますが、説明的ですので避けたい言い方です。

退院の空の一族鳥帰る   啓
 「退院の空の一族」と「の」でつないでは、鳥のことか、退院される人たちのことか、わかりません。


2013年3月20日
南村健治ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 昨年の秋、四国の松山で渡部ひとみさんと写真展を開催した。内容はこのe船団のカバー写真を中心としたもの。大いに好評だったと云えば自己愛が過ぎるかも知れないが、多くの入場者があり、坪内さんが仕掛けたギャラリートークでは二人の写真が飛ぶように売れた。もちろん、貴方が買うならば、というバーチャル。で、今年は調子にのって大阪でも開催する。期間は5月15日(水)〜26日(日)。場所は大阪市北区の「ギャラリー・itohen」タイトルは「風島と空気魚」。大金を持ってご来場下さい(笑)

【十句選】

たんぽぽの方へ方へと一輪車   伊藤五六歩
 とてもかわいい句。一輪車に乗った子とそれを眺める大人(親)。まだ危うい操作なのかふらふらとして、たんぽぽの咲いている方へ行ってしまう。「方へ方へ」の繰り返しが句にリズムと動き(視線)をもたらし、ちょっとハラハラ、子の危うさを強調している。

ポタージュの色は木の芽の色かしら   涼
 口に運ぶ前の光景でしょうか、ポタージュがとても美味しそうです。スプーンで掬うとすこし色が乱れて、もわもわと春が器に広がって、お終いの「かしら」は疑問というより納得の「かしら」かしら。

かりんとのかたちをかしき春の昼   きのこ
 長閑な春昼。かりんとのかたちもそうですが、ちょっとデコボコ、不揃いのようすが作者の云うように、お菓子だけに、いやいや真面目にいとおかし。それは、美味しそうというよりやや心象的な「をかしき」なのだろう。

さいしょはグージャンケンポンはるのかち   凡鑽
 そうだそうだ、春はいろんなところで、いろんなものとジャンケンをしながらやって来るのだ。負けたり勝ったりしながら、でも、最後はやっぱり春の勝ち。訪れない春はない。「ジャンケン」という発想の大胆さがそんなふうに読ませる句。

啓蟄や街に異国語増えにけり   洋平
 啓蟄と異国語の取り合わせは絶妙。ひょろひょろと、むくむくと地中から出てきた生き物達の姿かたち、あるいはそれぞれが発する鳴き声を文字にするとまさに「異国語」。

目薬を差せば春愁治るかも   今村征一
 クスリと笑ってしまった。そして、たぶん、薬では治らない春愁は目薬に頼りたいほど悩み深きなのかと、少しだけ同情した。少しなのはこの句がユーモラスだから。そして、「かも」に続く言葉が、「やっぱり治った」を予想させるから。

春暁やねじって搾れ歯磨き粉   黴太
 出ないときは、出ない歯磨粉。でも、せめてこの一回分ぐらいは残っているはず。「ねじって搾れ」という決意にも似た語気の強さが作者と読者の寝ぼけ気分を覚醒させる。自虐的でユーモラス。

啓蟄や左を向いて右向いて   すずすみ
 ひと冬寝ていた間に世間は変わっている。いや、ひと冬どころから三日くらいで世間が混沌していることもある。「左を向いて右向いて」はそのような示唆的な言葉かも。あるいは、冬眠から目覚めた生き物の可愛い仕草を作者が思い浮かべての言葉かも。

春日和プープーポーポー人まかせ   すずすみ
 ときには、いや全てにおいて人任せは気楽。いやいや、それは「プープーポーポー」の意味不明で間の抜けたオノマトペにはぐらかされているのかもしれない。「春日和」とはいえ、人任せは決して気楽ではない、はずだ・・・・でも、それもいいかとも思う。

弥生人の声出してをり野焼かな   二百年
 パキパキと草木が燃える音。ぼうぼうとした炎とそれがもたらす風の音。それらは遠い昔、例えば弥生人の暮らしぶりへと作者を遡らせたのだ。確かに炎は原始を想起させるが、それが野焼きの光景であることで稲作の始祖と謂われる弥生人の声が聞こえたとしたのだ。現実を超えた現実の声として。

【予選句】

PCの配線絡む春の月   涼

ポケットに鍵飴球根春夕   きのこ

榛名嶺の彫の豊かや揚雲雀   太郎

熊蜂の貌に手足に花粉かな   太郎

空中に浮かぶ白鷺春疾風   古田硯幸

帯ほどの湊の町や涅槃西風   えんや

啓蟄の尻がもぞもぞしてをりぬ   夢騅

オバサンのキャリーカラコロ春隣   洋平

無人駅春のしぐれの過ぎるまで   ∞

ほころびの右脳にもしや春の音   茂

古書の詩は旧字体なりあたたかし   智弘

恋恋恋春春春が前進中   黴太

春風の教室人体解剖図   遅足

ブランコを並んで漕ぎし夜のこと   B生

美し國新しき國春霞   秋山三人水

病棟は沖ゆく船よ大朧   啓

春一番池にかつぱの注意札   隼人

居酒屋の外の明るき日永かな   隼人

ジャムの蓋に輪ゴム食ひ込む二月尽   たか子

順番におちょぼ口開く馬酔木かな   スカーレット

ひとひらになりてなまめく春の雲   戯心

母の目の高さに母の雛を置く   草子

古紙そろえキリリと結ぶ四温かな   草子

霾るやわずかに曲がるお七坂   中島啓之

鉄棒に目刺のごとく一年生   塚めぐみ

初つばめ胸の白さの光りたる   紅緒

女房は春音のひびく耳を持つ   二百年




2013年3月13日
星野早苗ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 毎年、庭に豆を植えています。今年も、去年の十一月に植えた豆の成長を楽しみにしていたのですが、年明けから大きくならず、葉が一枚も広がりません。寒いのに虫がいるのかと思っていたら、先日、鳥が来て、豆の葉をむしゃむしゃ食べているのを発見しました。鵯か椋鳥か、雀よりずっと大きい鳥でした。
 プランターに植えていたジュリアンも、花を食べられてしまい、付いていた蕾も、咲く直前に次々消えてしまいます。すぐ近くの水仙は大丈夫なので、鳥にも好き嫌いがあるのでしょうが、エサにしようと植えたわけではないので、がっかりです。
 ……というわけで、目出度さも中くらいなり、の、おらが春です。それでも、三月の日射しは暖かく、心浮き立つものがありますね。
 さて、今回は、二〇七句の中から。

【十句選】

 3.11鎮魂のために
春泥に生き死にたれば馬の墓   伊藤五六歩
 馬は、一生を働き続けてくれたのでしょう。春泥にまみれて働くこれからが、馬の最も頼りにされる季節だったに違いありません。人と馬とが一体となって働いた日々が確かにここにはあった、と言うことを、「馬の墓」によって、深く納得させられました。

春おぼろ象形文字の恋の文   涼
 何千年も昔の人々は、どのような恋をしたのでしょう。ヒエログリフ(象形文字)は、エジプトの「死者の書」などが有名ですが、恋文もきっとあったに違いありません。プライベートな日記や手紙は、残りにくいとは思うのですが、象形文字の恋文が発見されたら……。春おぼろが楽しい空想を誘います。

嬬恋の山や春星かぎりなし   太郎
 群馬県の嬬恋村には、浅間山、四阿山、白根山などの斜面が広がっているそうです。それらの山々の斜面の上に広がる春の星空。「かぎりなし」の惜辞から、星空の広さ、すばらしさが伝わってきます。

獺の祭る川瀬や風の声   夢騅
 獺(カワウソ)には、捕らえた魚を岸に並べる習性があったようで、「獺の祭」といわれます。川瀬に並べられた魚を見つけて、「あれは、獺の祭だよ」と、教えて貰った遠い日があったのでしょうか。「風の声」が、昔を思わせて、巧みです。

目刺焼き生涯詠んで行くつもり   今村征一
 「目刺し焼き」に、共感しました。確かに、どこへ行けなくても、何ができなくても、句は詠めますね。目刺しの硬さ、ほろ苦さに滋味を感じる俳人ならではの句と思いました。

てふてふと来ててふてふと去りにけり   遅足
 実際には、蝶を連れ歩く人はいないと思います。が、そんな雰囲気の人が、訪ねてきてくれたのでしょうか。短い立ち話の間、庭先に蝶が来ていたのかもしれません。のどかな春の日の一コマだと思いました。

肩と肩ぶつつけ合つて卒業す   せいち
 男子生徒の肩幅がぐんと広がる、高校の卒業式でしょうか。「肩と肩ぶつつけ合つて」からは、励まし合ったりふざけ合ったりしてきた三年間の全てが思い起こされます。それらの場面全てが「卒業す」に集約されるところが、卒業式だなぁ、と思いました。

立春大吉母は娘のピアスして   孤愁
 立春大吉は、今日から春、という日。母が娘のピアスをつけています。娘のピアスをつけた母は、少し若やいだかもしれません。出かける母のちょっとした心のはずみが、立春の明るさと、小さなピアスのきらめきに、上手く表現されたのではないかと思います。

野遊の距離の程よき二人かな   たか子
 近くの川辺か山里に出かけたおり、二人の関係が、付かず離れず程よい距離にあると感じたのでしょう。熟年世代のお二人なのかもしれません。二人の間の信頼感のようなものが感じられます。

春の日の椅子を残して猫の逝く   とほる
 椅子は、猫の指定席だったのでしょう。猫が死んで、椅子だけが残っているのは、寂しいことですが、春光がこの椅子を包んでくれています。椅子と共に、猫の思い出も、あたたかくあるのだと思いました。

【その他の佳句】

三月の光の鈴が鳴りやまず   遅足

水揺れるむかしむかしの猫の恋   加納りょ

菜の花やなにも言わずに死んだやつ   鉄男




2013年3月6日
早瀬淳一ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 皆さん、こんにちは。去年後半から、映画館にやや足繁く行くようになりました。神戸市兵庫区湊川公園にあるパルシネマしんこうえんという小さな映画館です。2本立て1200円とお得で、いい映画をやっています。最近は、「ニュー・シネマ・パラダイス」、「キネマの天地」などを見ました。また周りがとても庶民的な下町(親しみを込めて場末)で、安い飲み屋さんがたくさんあり、はねてからふらりと一人で飲むのも堪えられません。若いときの一人で放浪する癖がうずいてきています。では10句、よろしくお願いします。

【十句選】

追伸に書かれし氷柱3尺と   まゆみ
 書かれ、で切れてその内容が「氷柱三尺と」。つまり、倒置がよく効いています。追伸は、書きそびれてでも気になったこと。それが、氷柱が三尺になったというのがいいですね。書き手の朴訥とした性格が想像されます。

春雷や天気予報士鼻濁音   伊藤五六歩
 早春の頃、日本海を台湾坊主という強い低気圧が進んでくると、春の嵐になります。その雷を予報している気象予報士の話す言葉の「が」がとても鼻にかかった音であるという。それを気にしながら聞いている作者が何となくオカシイ。

長閑さや飴の中から当り飴   太郎
 当たり飴というのは、なかの中空のところにもうひとつの飴が入っているものでしょうか。その飴は違う色なら当たりになるのでしょうか。永き日の縁側などで、そんな飴をなめている、日常のささやかな幸せを感じます。

白菜の残りしままを耕せり   きのこ
 農家の方には別段なんということのない句でしょうが、都会に住むものにとっては新鮮に感じました。作りすぎたか、虫の付いたり変色した白菜が畑に所々残されている。それを鋤きこむように耕かされていく畑。郷愁と月日の循環を感じます。

偲ぶ人多き雛を飾りけり   山畑洋二
 特徴のあるお雛様を見ながら、それにまつわる話を何人かでしているのでしょうね。または、いぜんその雛を飾ったときの出来事をかもしれません。私も、今は出さない雛を盛大に飾った、子どもの小さかった頃のことを思い出しました。

春一番赤く大きく「店じまい」   せいち
 細々と開いていた商店が、しばらくぶりにその前を歩くと、いつの間にか赤い手書きの文字の「店じまい」の貼り紙だけが貼られている。春一番の明るい期待感と、閉店の寂しさがうまく取り合わされているなと思いました。

雪除けに蔵王連峰置きにけり   学
 よくは知りませんが、会津地方は雪は降るのでしょうが、あまり積もらないのでしょうか。その雪を持ってくる風を除けるために蔵王連峰をそこに置いたという、俳句らしい雄大な絵ですね。見事にきまった感じ。

春が来た少し早いが口ずさむ   山上 博
 まさに今の季節。風は冷たいけどどこかに春の気配があるし、日の光は完全に春です。ぽろっと口に出た言葉をそのまま俳句にされました。覚えやすい俳句なので、私なども外に出て歩いていると、この句をぽろっと口ずさんでいます。
 街の雨鶯餅がもう出たか   富安風生

英雄に晩年なくて菜の花忌   伍参堂
 少し理屈っぽいですが、思わず膝をはたきました。私の好きな英雄、坂本龍馬、西郷隆盛、高杉晋作、土方俊三などはみな比較的若死にですね。豊臣秀吉、徳川家康などのような人もいますが。でも、菜の花忌は、司馬遼太郎さんの忌日なので、つきすぎになるのでしょうね。

亀鳴いて雨の出会は恋となる   戯心
 たしかに雨での出会いは、軒先で一緒に雨宿りとか余分に持っていた傘を貸すとか、恋に発展しそうなシチュエーションが思い浮かびますね。フィクションの「亀鳴く」の季語がよく効いていて、亀が恋の応援をしているよう。今度、何の用事のない雨の日に、外を歩き回ってみます。

【選外佳作】

歯ブラシをコップに差して春の夜   涼
 夜を雨とされたら。一人暮らしの無聊を感じます。

紅白の梅になにやら励まされ   まゆみ
 そんな感じがすること、ありますね。

春寒しまだ筋彫りの刺青(しせい)かな   伊藤五六歩
 筋彫りとは線書きの状態でしょうか。艶めかしい。

春めくや越後駄菓子のはつか糖   太郎
 はっかの甘いにおいがしてきそう。

雛人形一年間の夢語る   古田硯幸
 雛人形が語っている、ととってもおもしろい。

鳥つるむ介護施設の屋根の上   古田硯幸
 屋根の上がやや説明。でも明るさが感じられます。

春水飲む男子の小さきのどぼとけ   きのこ
 飲むが説明。春水や、でいいのでは。少年とよく合っています。

アイリッシュダンスで背伸びつくしんぼ   洋平
 背伸び、を伸びる、としたら面白いです。

啓蟄や空き地に高き槌の音   洋平
 槌の音で、虫が首を引っ込めるようで、おもしろい。

満潮の河口膨るる猫柳   山畑洋二
 膨るるが河口と猫柳の両方にかかって、おもしろい。

墨絵めく潟に四温の空青し   山畑洋二
 うますぎる。私にはつくれません。

乙女らの口紅淡し春の水   春生
 これも乙女の瑞々しさと春の水がよく合っています。

三寒の四温ポイント五倍デー   せいち
 のはとにされたら。数字で遊んでいておもしろい。

襟足は少し短く春隣り   すずすみ
 弾む気持ちがよくでています。

葡萄酒を薩摩切子に木の芽和   隼人
 どちらも食物なので季語を別のものにされたら。

仄かなる窓がともだち春の風邪   紅緒
 少しひどい春風邪かな。窓ばっかり見てるのですね。

隕石の降りくる地球春近し   和久平
 この前の事件ですが、よく考えるといつも降っているのですね。

木瓜の花叢に咲く低く咲く   紀子
 写生に徹したのがいいです。

待つ人の待つことの黙涅槃雪   啓
 春の雪ですが、とても静謐な世界。

入院の身ひとつづつの春硝子   啓
 各ベッドの横に一枚ずつの窓があるのですね。

春の大雪イナバ物置こはれけり   朱雨
 下五は修理中ぐらいでは。イナバ物置、いいですね。

地虫出づ幟を立てて陶器市   みさ
 懐かしい世界ですね。

春の雪吊上げらるる不発弾   邯鄲
 不発弾、パクリたくなる言葉ですね。

頭から囓る目刺やビートルズ   邯鄲
 取り合わせにびっくりしました。

あばら家の障子に踊る春の雪   ∞
 侘びしさ、安らぎが伝わってきます。

ふわふわとふとんふんでは桃咲く夜   ∞
 ひらがなが柔らかい不思議感を生んでいます。

ふくよかな指でお披露目雛飾り   茂
 ふくよかな指の持ち主を想像します。

チャップリンのステッキ弾み寒の明け   茂
 おもしろい取り合わせですね。

大海のふわりふくれて釘煮かな   茂
 大海がふくれてそのまま釘煮になったよう。

春隣ゴシック字体の住所録   進
 字はいらないのでは。送別会の名簿かな。

終電車となりの余寒貰いけり   鉄男
 隣のひとが余寒を身につけている?不思議な句です。

大空に「あ」の字を描いて青き踏む   鉄男
 早春の気分がよくでています。

文鎮を押し上ぐるほど春嵐   おがわまなぶ
 春嵐の大げさ感がよくでています。

火の玉の刺さる大地や冴返る   たか子
 これもロシアのことですね。別のものと思ってもおもしろい。

一夜草置いて明るき窓辺かな   たか子
 すみれのことですね。詩情がある。

再開の峠の茶屋や寒戻る   山渓
 中山道の茶屋に行ってみたいなあ。

三椏やワルツの調べ漂ひぬ   スカーレット
 絶妙な取り合わせです。

薄氷の下よりもるる水の音   くまさん
 こぽこぽという音が聞こえてきそう。

あかんボの突き出すこぶし春芽立つ   くまさん
 ボはカタカナですか。こぶしが春芽のようですね。

12ポのタイムズローマン風光る   秋山三人水
 少し大きめのアルファベットに風が光っています。

布団籠積まれし谷戸も春きざす   豊田ささお
 山間のひっそりした里が思い浮かびます。

春暁や雷門をひとり占め   とほる
 さすがにまだ観光客はスヤスヤなのですね。

定位置へ古老促がし木の芽和   津久見未完
 古老に対する温かい気持ちを感じます。

【ひとこと】

◎こうされては?
猫柳待合室の込み具合
・・込みあって

菜の花のレシピになごむ直売所
・・レシピ貼られた

ゆっくりと手で割るレタス再出発
・・下五を門出かな

郵便受けまた開ける母春告げ鳥
・・春告げ鳥郵便受けまた開ける

切り花の値札のにじみ春霙
・・値札小さき

春灯下王羲之の書を談論す
・・下五を拝見す

猫とゐて猫族となる日向ぼこ
・・上五をだんだんと

露天商春一番にうづくまる
・・下五を平然と

啓蟄やこの靴の紐よく解くる
・・靴紐の解けやすくて虫出づる

菱餅の由来長々宴始む
・・最後を、続く

蝋梅咲く仙人夫婦から呼出状
・・仙人からの

春一番リフレインフレ紙吹雪
・・春一番デフレインフレ紙吹雪

◎報告
空気冷え歩幅を狭く歩くなり

蒲公英真つ黄城址を埋め尽くす

美人湯へ行こううかなんて雪解風
・・美人の湯行こうかなんて雪解風

真ん中を踏めば破線や薄氷

招待状うちにも届く梅の花

剣道の選抜競う建国日

摘み取りし青菜を洗ひ春の水

水洟や寄席撥ねてより陽の落ちて

スカイツリーの影消ちさるや春の雪

山梨ナンバー屋根いつぱいの春の雪

春一番不動産屋の幟かな

◎説明
青き服出しアイロンを二月だから

人待つやうぐいす餅と店内に

音楽の根っこは平和寒牡丹

束の間の北国晴れや梅二月

数知れぬ蕾にひらく梅一輪

義理チョコの甘さよバレンタインディー

春の雪眠りの森にリス走る

溢れきてひとひら春の雪の舞う

身を屈め鶯に目を奪われて

目鼻口くしゃくしゃになり春一番

末黒野に生命の生るるうねりかな

俯いて耳を広げてパンジーは

春の灯や環状線に慣れなくて

◎類想
淡雪の光を散らす山の宿

風に舞ふ光の中の淡き雪

退任の三本締めや牡丹鍋

啓蟄や人を吐きだす昇降機

春一番外れ馬券は宙に舞ふ

春北風ビニール袋空をゆく

風呂上がり曇る鏡に春と書く

風強き嶺にあまたの樹氷かな

遠足や菓子と玉子と塩にぎり

日溜りに遊ぶ小鳥や雛飾る

薄氷を日差の渡る音微か

◎あたりまえ そのまま
庭の隅芽吹きに気配浅し春

早春のをんなシルクに首うづめ
・・早春とうづめ

荒東風や吹き飛ぶ音は缶と箱

亀の鳴く活断層が歪んでる

かのビルの失せ雪解水きらきらと

◎即きすぎ
春光や山麓の牧ひろびろと

幸せのホルモン春の光浴び

春の風邪薬局の名は全快堂

撫でられて禿頭まぶし春の寺

春雨やそつと傘出す若女将

校庭に声日々高く牡丹の芽

魚河岸の鰺のフライと蜆汁

◎言い過ぎ
懐かしき会津駄菓子や春兆す

名にし負ふ会津駄菓子やうららけし

孤高なるスカイツリーに春光る

◎季語は?
ほかほかの弁当の届く川普請

尾を振れる仔馬に駿の兆しあり

日溜りを乗せて流るる水の音

◎言葉がわからない
春陰や電子書籍の鬼涙(きなだ)村

思惟仏の肩にひとひら春の雪

ヒュッテにて追出しコンパ雪の紙魚

雛菓子にお尻のでかき「とちをとめ」

魂消たる「鴻巣びっくりひな祭」

つつくらに炎走れるお山焼

鷽替や赤き鳥居の高柱

ころころと肉桂飴の社日かな

バーキンにホテルのキーをバレンタイン

清張の能登巌門の鰆東風

フロックのイカ娘なり春浅し

◎俳句の意味がわからない
花少しボタンホールに遊治郎

蛇年の女みつばをからあげに

給食のよう初めての煮凝りは

切れ端のような古代魚風光る

朝刊の足跡確と春の雪

枝ほどの腕折り曲げる焼野かな

なんどでも爪を数える春の病み

ぽろぽろと三角の雛並ぶ並ぶ

吾の指を落款のごと草の餅

啓蟄や時に泡たつ水溜り

如月や市川海老蔵決意せり

梅淋しされど軟庭部活の声

雨水明け黒き空から舞ふ白さ

万太郎の俤探し魚は氷に

虫出しの雷やほろ酔ふ宵の口

古池や鴨の倒立D難度

寒九郎指ふれあうや静電気

姑仲取りなす夫の海鼠芸

久闊を座敷わらしと真夜の雛

飛び込んで喘いでみたら春の川

梅園に赤のカイロの花盛り

吉本の芸人のごと花粉症

歓喜する春の喜び後3日

朝一にしめるメバルの姿由

国境に縁なき大地麦を踏む

あと何度大人になったら彼岸花

早春の付箋を貼った赤帽子

布団籠敷かれ敷かれてアカガエル

津波てんでんこ幾億の蝌蚪逃げよ

PM2,5五里霧中なる黄砂くる

春の雪舞ふのを止めてクラクション

原爆の話クラクションへ春寒し

◎ポイントは?
いつもより身振り豊かに雪女

雨水くる牛乳パック苗床に

ドア重し午後へ降りだす春の雪

見送りはいつもの二人春の雪

石鹸玉吹いて寂しき事言はず

太刀魚の鱗なくなり恋の果て
・・太刀魚は秋ですね。

ショッピングモールは間近余寒猶

本屋へは逆に進めり春浅し

◎詩がない
残る花サチコといふ娘合コンに

鼻水をかみてバージンロードかな

カットする人を見てゐる春隣僕

◎川柳
アリバイが欲しいのせめて春の夜は

卒業す恋の単位は取れぬまま

友来たり何はなくても熱燗を

純米のぬる燗だなんて箱の酒

猫の恋働き者の夫を持つ

山手線見下ろす宿よ大試験

◎主観  気持ちが出過ぎ
きらわれることのしんぱい春の雨

愛されることのちいささ別れ霜

蛇穴を出でんとせしをためらへり

春帽子被り佳きことありさうな

ため息の数だけ落ちて花椿

春寒し我が家の猫はおとこ前

◎抽象
残心の形となれり建国日

流し雛水のつづきにつらなれり

◎この言葉がイマイチ
つらつらと山鳩鳴くや浅き春
・・つらつらと

春色や旅かばん持ち入院す
・・別の季語に

春雪をさらり飛び切るわらべ顔
・・さらり

薄氷へこつと日差しのあたりけり
・・こつ

双眼に屋根という屋根春の雪
・・双眼がかたい

白木蓮に二百の蕾恋し人
・・下五

◎言葉の重なり
午後五時の平和の鐘や日脚伸ぶ
・・上五と下五

待針の頭七色針祭る
・・針

街巡るひひなの笑顔めぐりつつ
・・めぐる

◎その他
季語が出てあと続かずの春の朝
・・メタ俳句ですね。

貼紙にネコ餌(え)アリマス春きざす
・・そんな店ありますか

蛇穴を出づ幼子ら逃げもせず
・・小蛇ですね。

若くして孤独死なるや梅一輪
・・暗すぎ

凍返る蹴るやころがる犬の糞
・・糞を蹴りますか

果無(はてなし)てふ天空部落春近し
・・どこでしょう。

春の雪凪の港に夜は更けて
・・歌謡曲

ささやきをかはしつつ降る春の雪
・・シンプルに

下萌や玉の行方は謎めいて
・・何の玉?

命綱締めて傘寿や雪下ろし
・・キケン

のしのしとのらりうらりと春の川
・・オノマトペに頼りすぎ

春逝ける断捨離まよふ恋ひとつ
・・シンプルに

まどろみて又まどろみて二月尽
・・「しーっ」と言っている?

まどろみて又まどろみて二月尽
・・冗長

俎板に横たわる人魚春の雷
・・状況が?

半袖の異国の人や春の雪
・・大ざっぱ

春光や山の彼方の空とおく
・・パロディー

大試験合格電報ありし日
・・字足らず