「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。


2013年6月26日

小西雅子ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 梅雨。梅の雨。ステキなネーミングですね。黴雨(ばいう)とも音で通じていて。
 虎が雨。遊女「虎御前」が愛人であった曽我兄弟の兄の死を悼んで流した涙に因んで。これまた刺激的なネーミング。「虎御前」という名前も印象深いです。
 雨が続いて外出できないときは歳時記の中をウォーキングしてください。今回も多くの俳句ありがとうございました。

【十句選】

花おうちお寺に行こかどうしょうか   涼
 お寺に行かねばならない。途中に楝(おうち)の花が咲いている。お寺やめとく?やっぱり行く?これがとても俳句的。リズムも良く今回イチオシ。「楝」は「栴檀」の別名。

さみだるる首都圏直下型歯痛   伊藤五六歩
 ちょっと作り過ぎかとも思いましたが、「さみだるる」という季語の斡旋がみごとで採りました。突然起きた歯痛のうっとうしさが「さみだるる」によってよく伝わります。「た」「た」とリズミカルでもありました。

夕立やスマホ群がる2番線   大川一馬
 駅のまわりは夕立。2番線という何かしら事件がおこりそうな設定。松本清張のドラマのよう。人は登場せずスマホばかりがあふれている様子も奇妙。

麦笛やはるお・なつこよ元気かい   せいち
 「はるお・なつこ」が春と夏などという無粋なことではありません。友人なのか子どもなのか孫なのか、とにかく「はるお・なつこ」がまさに昭和風。そして麦笛風。

沈黙とアイスとイエス観覧車   ルカ
 「観覧車」というオチに笑ってしまいました。最初はアイスが「愛す」に、「イエス」が「イエスキリスト」に見えて?でした。観覧車でアイスをなめながら相手の返事を待っているとすぐにわかり「イエス」。

不等辺三角形状夏料理   ロミ
 野菜なのか皿なのかとにかく目の前にある不等辺三角形。漢字ばかりの句とはうらはらに、ちょっと自由で闊達な夏料理の様子が目に浮かびます。

パイナップル本日休暇もらいます   鉄男
 休暇を取ってパイナップルを食べているという人っていいなあ。何よりパイナップルの形状がこののほほんとした話によく合っていると思いました。真ん中の穴も「休暇」といえば「休暇」だし。

籠枕ベルト緩めて待機室   津久見未完
 「籠枕」涼しそうですね。休憩時間なのか仮眠時間なのか、作業の合間を「緩めて」で上手く表現されています。

毛穴という毛穴ふさがる黴雨かな   いずみ
 毛穴が開くという俳句は見たことがありますが「ふさがる」とは。じとじとと雨の続く日を自分に意識はなくても、すべて閉ざして梅雨明けを待つという本能。不思議な句ですね。

大小の瓶甕揃へ梅仕事   スカーレット
 「梅仕事」っていい言葉ですね。梅酒・梅干し・梅ジュース。さまざまな容器を並べると何だか中に入っている梅がかしこまっているように見えます。梅の実ひとつひとつが主役。

【その次の10句】

昭和史の語り部熱く梅雨しとど   洋平
 「しとど」は必要でしょうか。「しとど」によって語り部の印象が薄くなり残念。

蝿払い払い熱弁立ち話   古田硯幸
 シンプルでよくわかる句。「立ち話」が上手い!

梅雨入りや船のロープに鼠除   学
 これも共感しやすい句です。大きな景色からどんどん小さな一点に集約されてゆく佳句。

万緑や告白前の深呼吸   孤愁
 はじめは10句に採っていました。「告白前」の緊張が万緑と少し違和感があるような気がして。

パソコンのゲーム難解夕の凪   茂
 海の見える部屋でしょうか。素敵ですね。取り合わせもよく整った句。

ところてんおへそのあなをみいつけた   汽白
 ところてんが一本つるっと落下。どんな恰好で食べてんねん!楽しい句です。

疲れたらピーマンの部屋空いてます   紅緒
 句会に出したら何点かは入るでしょう。しかしピーマンの中の空間を詠んだ句は多くあり、レベルアップにはもう一工夫違う視点が必要。

草笛を真面目に吹いて父の来る   たか子
 上手い句ですね。律儀なお父様の様子が目に浮かびます。小津安二郎監督の映画の笠智衆。

下駄の歯の形に打ち水乾きおり   戯心
 下駄を避けて打ち水をしたのでその下駄の下だけは乾いていた。変わった句、楽しい句ですね。

五月闇灯りの消へぬ美術室   とほる
 趣のある句。さみだれの降るころ、いつまでも窓の灯りが消えない美術室。どんな作品を仕上げているのか。この原稿を書き終えてもまだこの光景が忘れられません。「闇」と「灯り」がやや安易かも。

【良いと思った句】

蔦茂り朽ちた門塀空家告ぐ   いつせつ

外つ国のことば飛び交ひ青葉雨   きのこ

昼顔や棚田の水の拡ごれり   太郎

万緑へ一点光るものは何   山畑洋二

背山よりはじまる風や茄子の花   夢騅

杜若揺るるや舟を漕ぎ寄せて   遅足

万緑へ一瀑ぐんと立ち上がる   今村征一

臍出して二の腕出して聖五月   邯鄲

あぢさゐのフュールジッヒはアンジッヒ   秋山三人水

腕脚首縮めて過ごす夜明けの蚊   ∞

空梅雨の執行猶予付きのキス   岡野直樹

蟇掴む童の声と親の声   おがわまなぶ

岩魚食ぶ湖畔の茶屋の壁煤け   山渓

天道虫上りつめては首かしげ   すずすみ

あした咲く萱草に照る入日かな   草子

霊水の五臓六腑に梅は実に   檸檬

スナップエンドー爪の長さが気になって   あざみ

桑の実のジャムを煮る手に雨しぶき   豊田ささお

【気になる句】

ケンカ聞こえる バス停に 夏が来る
 惜しいなあ。「バス停にケンカ聞こえる夏が来る」なら◎なのに。上5・中7・下5の間にスペースは不要です。

声楽の発表会や著莪の花
 作者が室内にいるのか野外にいるのかわからないのが惜しいです。

そよ風にラインダンスやチューリップ
チューリップ中にハミング羽音かな

 先の句は「そよ風」、次の句は「ハミング」、それらが「チューリップ」と近すぎるのが難点です。「チューリップ」のイメージから離れたことばを。

がんばらずでも手をぬかず蝸牛
 これは作者の思いが入り過ぎています。思い+季語なら「がんばらずでも手をぬかずところてん」でも成り立ってしまいます。作者の考えや思いはなるべく言わないほうが良い句になりますよ。

ばりばりばりサラダ戦争幼虫君と
きゅうりもみ 入道雲 モクモク

 この2句、初心者とお見受けしました。@なるべく575に整えるA季語をひとつ入れる、ということを意識してたくさん句を作ってから次の段階へ進みましょう。上の句は季語がありません。次の句は季語が2個あります。2句とも発想は楽しい方のようですので挑戦をお待ちしています。


2013年6月19日

岡野泰輔ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 新築の隣家の窓枠の上ほんの数センチの狭いスペースに燕が巣をつくりかけた。先月のことである。なぜこんなところに?と訝ったが、そこはカーポート用に二階部分が張り出しているその下。大きな藁屋根の軒庇のような見立てなのだろうか。なるほどと感心していたが、バウハウス流の直線主体のモダンデザインの住宅には巣は不似合いだったらしく、程なく撤去された。あの燕とその子燕達も今頃この梅雨の低い空を飛んでいるだろうか。梅雨空の下、今回もたくさん投句いただきました。

【十句選】

緑さす初版に挟む正誤表   伊藤五六歩
 初夏の緑と初版本、とても気持いい取り合わせだが、それだけだとよくあるかもしれない。おやっと思わせ、しかも気が利いているのは正誤表をもってきたこと。わざわざ初版と言挙げするからにはすこし値の張る古書、そこについている正誤表もいろいろ想像をかきたてられる。栞代わりに他のものを挟むという発想もありそうがが、ここではやはり正誤表で成功。一句全体に本好きの匂いが立ちこめている。

子燕や金平糖を育て初め   太郎
 子燕から育てるという連想で金平糖まできた。この遠いとも近いとも言えない微妙な距離が俳句としての成功。金平糖は普通カラフルな外観のみで、育てるというところまで思いは至らないが、実はあのイガイガ=角を育てるに大変な手間隙をかけることを以前知ったときは驚いた。表記「育て初め」は「育て始め」ではないだろうか。

父母の忌を修し訪ひ来る若き蛇   山畑洋二
 両親の法要を執り行っているところ(寺か家か?)に蛇が(それも若い)尋ねてくるという。修し、訪い、来ると動詞が中央七音にたたみかけるように入ってくる。前後の名詞句に挟まれて息急くように動詞を連呼する緩、急、緩のこのリズムを快いとするか、いかにも混みすぎである「修し」は捨て父母の忌で切るほうが主題が浮き上がってくる、という二つの見解があるだろう。一般には後者だろうが、私は迷っている。ともあれこの幻想的な内容は捨てがたい。
 若き蛇はまずそのものとして読み、やがていろいろな隠喩が発動してくる。

蜷の道田螺の道と交差せり   えんや
 蜷と田螺の合わせ技で俳句になった。そもそも蜷の道という季語のなかに俳句的な発見、目のつけどころが含意されている。季語だけで半分俳句しちゃってるわけだ。二種の巻貝の姿は見えず、その軌跡の交差のみに焦点をあてたこの句はより季語の本意だけでなりたっている。(そのわりに退屈ではない)

壊れゆく虹の声あり耳澄ます   遅足
 もともと虹という素材はどう詠んでも甘くなるもの、それは仕方がない。まして擬人化してその声を聞くというのだから、ここに俳句的抑制は働いていない。(声ありといっておきながら、耳澄ますのも冗漫かも)それら欠点がありながら、ここには抗い難い詩的源泉がみとめられる。それは崩壊に美を見いだすデカダンな世紀末感覚のようなもの。そんなものは俳句じゃない、とのご意見も承知でこの方向にも一票。

スマホって便利だな、あっ落し文   せいち
 ばかばかしいくらいの口語俳句。俳句という形式は不思議な力をもっている。
 はい、これが俳句ですと提出されれば、読者は一生懸命俳句の音数律に従がって読もうとする。既存の形式感に合わなければ、逆にその齟齬におもしろさを見いだそうとする。この句の読点はそのばかばかしい時間の切断と継続を表現して実に雄弁。つぶやきの実況中継のような句、これもまた俳句として読むところに意味あり。

正面に火の島を据え夏座敷   隼人
 一読これは桜島。視界いっぱいにせまる山塊をとらえた図像は映像、絵画も含めてたくさん見てきたように思う。この句はそうした言わばステレオタイプの桜島像を衒いなく句にしている。それだから強いし、読者の脳内に映像の立ち上がるスピードも速い。もちろん作者の実感に基づいた写生であろうとも。
 開け放った開口部に火山島を据えるといった措辞も絵画的な印象を強めているのだろう。桜島でなかったらごめんなさい。

骨盤のきゅきゅっと締まり夏に入る   茂
 夏という季節の到来を万象に触れて感じ取るその個性。波郷は夜もみどりのプラタナスであり、三鬼は君等の乳房である。で、この句は自らの骨盤である。
 不幸にして私は骨盤の締まる感覚をもてないでいるが、作者は自らの肉体感覚から出発して天体の運行に至る(大げさか?)そのやり方は好ましい。「きゅきゅっと」というオノマトペがチャーミング。

昼吠える犬が遠くに青嵐   岡野直樹
 昼吠える犬と特定されている、繋がれているのだ。夜の犬の遠吠えとは感じが違う。吠える犬とはちょっと不吉な感じすらするが、遠くにという措辞で不思議に平安な世界をつくりだしている。吠える犬に対して「昼」と「遠く」の二つの言葉がこの句を複雑化するに役立っている。あっ、複雑化とはいい意味で。

ニョキニョキと老人生まれる夏未明   ∞
 「夏未明」がこなれないいいかたで、どうなんだろう?夏暁とか夏の朝でもいいのではないか?以上が疑問。夏の早朝は早起き老人の天下。ウォーキング、太極拳、ラジオ体操など盛んらしい。(と、夜更しの私は聞いている)そういう老人達の実態から離れてもこのニョキニョキ生まれるイメージはおもしろい。シュールかつナンセンセス。老人と夏はよいテーマになりそう。

【次点句】

 うっかり十二句も選んでしまいました。そこで次の二句を次点に。

麦吹けばふる里駆けて来るごとし   今村征一
 ある年代以上には共感度高いであろう郷愁の句。句中に異物はなにもないので、するすると飲みやすい糖衣錠のよう。ふる里という場所あるいは観念そのものが駆けて来るという像と作者であろう少年が駆けて来る像が揺れながらだぶってくる、それは句の魅力。

字がきれい背筋もきれい夏燕   岡野直樹
 とても気持ちよいこと、もの、の三段重ね。二物ならぬ三物のバランスも気持よい。前半二物は特定の人物像を想定してもよいが、そうしなくともよい。背筋は背中ではだめなのか?作者には拘りがあるかもしれない。背筋というと姿勢の良し悪しを云々されているようで、私は疑問。

【予選句】

恐竜のプリント綺麗夏のシャツ   涼

入梅や二番三番映画館   伊藤五六歩

夏帽子かぶれば父は山河なり   伊藤五六歩

草屋みな失せてふるさと麦の秋   えんや

麦秋にコンバインごと飲み込まれ   すずすみ

雨脚を眺めておりぬ夏帽子   ルカ

里の子の草笛に耳聡くせり   たか子

かっこうの声のかたちの森ひとつ   遅足

蛞蝓筋肉質の全裸かな   おがわまなぶ

爪切って彼女が去って青嵐   岡野直樹

水陸の両用バスや夏に入る   山渓

博物館を出て六月の風の中   紀子

泰山木咲いて昼食ボンカレー   可不可

ブーゲンビリヤいつも空振りの掲示板   あざみ


2013年6月12日

えなみしんさドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 東京は、どうも空梅雨のようです。
 さて、最近目にした、これはいいなぁという言葉をふたつ紹介。
 ひとつは、「作句した後に、他人の句だと思って読み返すべし」という小沢實氏の言葉。
 もうひとつが「省略はいいが、説明不足はダメ」という小川軽舟氏の言葉。
 「省略」は経験や想像で埋めることができるが、「説明不足」は伝わらないのでダメ。
 その差はわずかだが、とても大きい。省略こそ、俳句の武器かも。いやはや(汗)。
 今月は221句でした。十句は、好きな句の順に並べました。

【十句選】

雑巾と猫と息子と走り梅雨   凡鑽
 この句はけっこうスゴイ。「雑巾、猫、息子」+「走る」。これで、猫と息子が濡れた足で廊下を走り回っていて、お母さんが雑巾持って、追いかけてる風景を思い浮かべた。そうは書いてないけど、そうなるように創っているのだと思う。勝手読み?

夏めきて野の花のある茶房かな   さくら
 今週の前書きに書いた「省略」が効いている句です。「茶房」の言葉も適切。店の名をイメージしながら、モッコウバラ、シャガ、つつじ、くちなし、紫陽花、と、次々と花が咲き出すこの季節を楽しみました。

パタパタとペタペタ走る夏座敷   ルカ
 バタバタは仲居さんか、ペタペタは裸足の子供か。と、想像が楽しい。前書きに書いた省略が効いた句。似た半濁音を使い分けて句にしたアイデアも面白い。パラパラとぺらぺら、クルクルとグルグル、カタカタとガタガタとか、他にもありそう。

ロマンスカーのようにけしきがとおざかる   汽白
 「けしきがとおざかる」というのは、どちらかというと寂しい景。これに「ロマンスカー」という思いもかけない言葉がぶつけられて、ファンタジーになっていますよね。いいんじゃないですか、汽白さん。

名を書いて母の施設へ更衣   中
 施設に入っている母親へ、夏の衣服に名前を入れて届けた、という事でしょう。たった17文字で、過不足なくストーリーが描けています。また、「名を書いて」に、母親への思いがこめられていて、胸が熱くなりました。

若僧のことば五月の風に似て   涼
 若僧と五月が、ありそうでなかったのでは。しかも「若僧のことば」「五月の風」と、細工がこまかく、美的な世界を味わうことができました。「ごとく」ではなく、「似て」の表現もいいと思います。

夢のすぢ変へてゆきたる時鳥   きのこ
 この「すぢ」は、ストーリーの事でしょう。ホトトギスは、夢の中で鳴いたとも取れるし、ホンモノとも取れますね。いい世界。わたしなら「夢の筋かへてゆきたる時鳥」の表記かも。

全国の銀座通りや梅雨寒し   学
 これが「阿倍野の銀座通り」とか、「祖師谷の銀座通り」では、句にならない。「全国の銀座通り」に虚を突かれました。季語は動くと言えば動く。でも、これでいいと思いました。

群れながら独立自尊チューリップ   洋平
 たしかに、チューリップは1本でも一国の主という感じ。「独立自尊」がなかなかに言い当てていると思いました。

ようやくに拭くほどの汗白タオル   涼
 うっすらとかく汗、拭くほどの汗。汗のかき方で季節の移り変わりを表現した着眼点に感心。ただ、汗と白タオルの季語がダブるので、表現はもっと練れると思います。

【次点10句】

白極む紫陽花の名は隅田川   さくら
 薔薇の名はいろいろあるが、紫陽花の名が隅田川というのが、なかなか。

花十薬ヘボンの墓碑銘ヘボン式    孤愁
 花十薬は、墓の十字を連想し適切。墓碑名は説明しすぎかも。「ヘボンの墓はヘボン式」でいい。

著莪の花振り向いてよと呼ぶやうな   邯鄲
 著莪をそんな風に思ったことはなかったが、言われてみればそんな気も。

ブローチは今朝捕りたての黄金虫   邯鄲
 悪くはないが、ちょっと子供っぽいかな。

きたをむくおしりひがしをむくおしり   汽白
 おしりがつんつんしていて、こまわり君的世界。

シェアハウス横目に見つつ蝸牛   戯心
 カタツムリも仮の宿のようなものだから、とりあわせの妙が面白い。

平凡を愛せざる夜のオーデコロン   伍詞堂
 「愛せざる夜」が美学的、季語がヘナチョコで良くない。

五月雨や京都を過ぎて大阪弁    おがわまなぶ
 当たり前の事を言われるとアレッと思う面白さがある。

凸凹が漢字だなんてパイナップル   岡野直樹
 下五、昔の人は「心太」とつけるところ。パイナップルが、愉快。

やはらかとかたさの境わらび折る   中
 写生風の俳句。「やわらかと」の言い方に工夫があります。

【予選通過だった句】

懺悔するために青葉の戸をたたく   加納りょ

麦笛を吹く子の遠き家路かな   赤芽

凭れては迷惑かしら初夏に   涼

育爺の娘(こ)に叱られて五月尽   古田硯幸

薔薇咲いた上手に嘘をつけそうだ   せいち

薔薇なる字棘の入り組む漢字なり   大川一馬

草矢射る子と草笛を鳴らす子と   今村征一

梅雨の海ノルウェーよってデンマーク   ロミ

どくだみを酒に漬け込む魔女の貌   凡鑽

蚊のよぎる保険証書と注意書き   おがわまなぶ

この先は付いてらっしゃい黒揚羽   岡野直樹

 以上


2013年6月5日

朝倉晴美ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 みなさま、こんにちは。
 たくさんのご投句、ありがとうございました。
 今回は、さまざまな挑戦の感じられる句が多くあり、うれしい悲鳴でした。
 わくわくする、とても楽しい選句でした。
 新しい言葉、句材、大胆な表現。賛否はあっても、これまでにない俳句の魅力や言葉の魅力を引き出すには、絶対に必要なことです。
 そして、私自身も勉強させてもらっています。
 今日は、神戸のオクトーバーフェスタ、ドイツのビール祭りに行ってまいりました。そこでもたくさんの新しい句材があって、ビールはもちろんですが、いろいろと楽しめました。ビール祭り句会もいいなあ、なんて。

【十句選】

路線図のどこからどこへ麦の秋   伊藤五六歩
 個人的に麦の秋も大好きなのですが、線路ではなく、「路線図」としたところが秀逸。なぜなら、実際の線路でない分、想像が大きくふくらみ、どこまでも広がっている路線を容易に感じさせます。その、想像は、読者の数だけあり、世界中の路線が可能です。どこまでも、広がる佳句でしょう。
 <麦秋や葉書一枚野を流る 山口誓子>
 こちらは、葉書一枚という小さなものから、「野」という広い視野へ展開している句です。

赤ちょうちんフルハイビジョンのさくら散る   すずすみ
 「赤ちょうちん」と「フルハイビジョン」の、いわゆる取り合わせが絶妙です。その取り合わせにより、「散るさくら」が、とても大仰な雰囲気をもち、句に力を与えています。あまた、「散る桜」の句は、ありますが、力のある、オリジナリテイある句に仕上がっています。
 <厨子の前千年の落花くりかへす 水原秋櫻子>
 こちらは、古風な句材と散る桜です。

生れし日は時の記念日鳥たてり   さくら
 「時の記念日」という季語を「生まれし日」という句材と合わせたことがおもしろくなりました。
 <時の日の時を見廻る黒揚羽 百合山羽公>
 こちらは、鳥ではなく蝶ですが、どちらの句も、時の流れを作者に代って、見ています。

夏空を見上げて宇宙膨張論   まゆみ
 思いきりが良くて、大げさで、とても楽しく、気持ちよく読めます。人の気分を良くさせる句とは、句の存在価値が高いと、私は強く思っています。
 飯田蛇笏も<夏空に地の量感あらがへり>と詠んでいます。どちらの句も、夏の空というものの持つ、強烈な力を感じさせます。恐ろしいほどの青さ、そして突き抜けるような空気感がそうさせるのでしょう。

ジャスミンの銀の香りのおもさかな   遅足
 「銀の香り」がとても良いです。観念的な重さ、ではありますが、ジャスミンの花の雰囲気、その語感のもつ雰囲気にぴったりと合っているのではないでしょうか。
 ジャスミン、茉莉花といえば香り、なのですが、<茉莉花を拾ひたる手もまた匂ふ 加藤楸邨>にもあるように、その定番である香り、匂いを、詠む。そこにオリジナルな表現、感性をもって詠む。それもまた、俳句のひとつのスタイルではないでしょうか。

コロッケパン夏草の中隠れたり   おがわまなぶ
 コロッケパン、良いですね。コロッケパンを必要以上に感傷的な食べ物にせず、さらりと夏の景に詠みこんだことが好感を与えます。あまりに、意味を強く持たせたり、感傷的に語られると、読者はしらけてしまうのですが、掲句は、頃合いのバランスです。
 情景は、コロッケパンの擬人化ではなく、コロッケパンを持っている誰か、なのでしょう。夏草の中で遊んでいるのか、ひとり夏の気分を味わっているのか、そこにあるコロッケパンが、その人物の精神の健全さ、心身の健康さを感じさせます。夏草にいる人物を、コロッケパンによって表現しきった良句です。
 芭蕉の<夏草や兵どものが夢の跡>、有名すぎる句がありますが、掲句のささやかな日常が、芭蕉とは違った夏の時空を表現しているのです。

染め糸をラグに撚りあげ夏薊   津久見未完
 ラグと夏薊が、とても呼応しあっています。薊特有の色彩が、ラグの染め糸をも、鮮やかにしていて、素晴らしいラグが仕上がることが容易に連想できます。「撚りあげ」の「あげ」も、その仕上がりを強く意識させています。
 夏薊という季語の持つ力をあますことなく、発揮させた一句です。
 <夏薊林の雨の衣をとほす 水原秋櫻子>も、モチーフに「衣」を使っています。

芥子坊主群る未売却国有地   隼人
 芥子坊主が勝因でしょう。また、ただの「売地」ではなく、国有地。それも売れていない売地。その土地に漂う雰囲気をにおわす句に仕上がっています。魅力ある土地なのか、少しいわくありそうな土地なのか、どこにもありそうな雑草だらけの忘れられた土地なのか、想像はつきませんが、考えれば考える程、その土地を見たくなる、そんな気にさせる句です。
 こちらは、なんだか馬鹿にしたようなウイットに富んだ芥子坊主の景です。
 <芥子坊主ブリキの太鼓鳴らしけり 角川春樹>

額の花宇宙ステーション地球支部   紅緒
 「宇宙ステーション地球支部」といった大仰な部署名が大成功です。
 同じ「額の花」を季語に、<額の花こころばかりが旅にでて 森澄雄>があります。額紫陽花、決して珍しくなく、高価でもない花木なのですが、心を遠くに飛ばせる力があるのかもしれません。何かしら、見ている人の心の深淵を触発するような……。

蜜豆がすきで漁師でi-PHONEで   伍詞堂
 「〜で」という表現をタブー視することも、俳句にはありますが、その難をく払拭するどころか、逆手にとって、力とユーモアを兼ねそろえた一句。大胆さが大成功です。
 私の気に入りの句で、恐縮ですが、紹介いたします。
 <蜜豆や他人の恋に耳立てて 黛まどか>
 私は辛党ですが、蜜豆は好きなんですね。

【次点秀逸句】

青蔦の隠す落書無人駅   戯心
 蔦と無人駅は、とても平凡であるにしても、「落書きを隠す」という景が、秀逸です。また、青蔦という色彩上の美しさに加え、生命感あふれる蔦であることも抜群の選択です。
 一方で、青蔦の繁殖力を、恐怖、とはっきり捉えた句も存在します。
 <蔦茂り壁の時計の恐ろしや 池内友次郎>

【次点】

金魚玉好み生き物嫌ひなり   伊藤五六歩
 三橋鷹女の「夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり」を思い出しました。

いつの間に摘まめるほどの初夏があり   涼
 少々観念的であるようですが、その、表現の挑戦に一票です。もう、ほんの少しだけ、具体的であっても良い気もいたしました。たぶんに、それは、季語が「初夏」であるからでしょう。初秋や晩春のように、なんとはなく ぼんやりとした感覚でないはっきりした季節、季感であるからでしょう。

抜きん出てもくもく青し楠若葉   きのこ
 「抜きん出てもくもく」がとても良いです。リズムと、その語の勢いが「楠若葉」を、生き生きとさせています。いろいろな若葉が輝かしい季節ですが、この「抜きん出てもくもく」にぴったりなのは、やはり楠若葉でしょう。景をじっくりみられて、表現をじっくり練られた句と感じました。

深緑 黄緑 緑 風走る   川村範子
 とても、挑戦していらっしゃいますね!賛否大ありでしょうが、いつでもチャレンジは大切です。俳句という文芸は、それがなくてはつまらないですから。大きな挑戦をしたときには、季語をきっちりと収めることも大切です。

噴水シャンペン鉄とガラスの都市   学
 破調が、ここでは少しおしい気がいたしますが、この近代都市の景を魅力的に、そして少しシニカルに表現しえています。

梅雨寒や書き変えらるる現在史   せいち
 「現代史」ではいけませんか。
 一句として、句姿も整っておりますし、冷静な視点が「梅雨寒」であますことなく表現されています。感情の語句が一切ないにもかかわらず、作者の気持ちが一瞬にして伝わる力のある句です。

目の前の人を遠くに桐の花   遅足
 「人を遠くに」が、桐の花との対比で、生きています。

手話やがて抱擁となる花の陰   孤愁
 とてもロマンテイックであり、なお思慮のある句ではあないでしょうか。「やがて〜となる」という表現も、俳句では珍しくはないですが、ここでは、その優しい表現、ゆるりとした感覚が、絶妙かと思います。憧れてしまう世界です。

青葉雨五輪に欠ける種目あり   智弘
 時事をお上手に俳句にされています。川柳との違いはなにか、というと、いかに季語が生きているか、ということです。青葉雨の持つ瑞々しさが、俳句として成り立つ最大要素です。欠ける種目があるということは、新導入される種目もあるということ。その、ニュートラルな視点が、俳句らしくしているのではないでしょうか。

相続の話オミット新茶汲む   茂
 相続、オミット、新茶、この三つ巴が効果を奏しています。抜群の三つ組ですね。

青葉してトロ箱崩る捨て番屋   たか子
 「トロ箱」という句材がきいています。

プランターで辻説法だ葱坊主   岡野直樹
 ネギ坊主だけでも楽しい句ですのに、プランターという、ちょっとパワー不足?な葱坊主であることが、よけいに面白くしています。

みかん咲く眼下の海の波静か   山渓
 みかん山(畑)と、海のとりあわせは、似つかわしすぎるほど定番ではあるのですが、「咲く」と「静か」の、動と静の状態がとても効果的です。また、眼下という熟語の堅い表現も、優しい光景を、対比によっていっそう優しく表現しええています。

電磁波の乱れや海月浮き沈み   邯鄲
 厳密には、電磁波と海月の関わりはないのでしょうが、現代ではさまざまな場面で電磁波が問題化していますね。そんな、電磁波と海月の取り合わせには、新しい魅力を感じます。「乱れ」と「浮き沈み」という、どちらも「マイナス」なニュアンスを含む言葉。これが、また、句に何かしらの不安さを含有させ、句の世界を深めているでしょう。

廃業の貼り紙ひとつ燕の子   とほる
 燕の子に、救われています。寂しい景に、さびしい現実に、ささやかな希望が見える。生命というものは、ささやかでも、大きな未来のあるものです。

【予選句】

夏帽子弾みし声の先に子等   いつせつ
 中七下五の表現に工夫が見られます。特に「先に」が良いです。

正面にメロンの並ぶ売り場かな   涼
 「正面にメロン」にインパクトを感じました。しかし、メロンが果物屋の景としては常套かもしれません。「正面に」という「に」に強さを感じましたが。

ぼうたんの崩れて萼のくつきりと   太郎
 牡丹の「ガク」に注目した点が良かったです。
 「ぼうたん」という表記も正解でしょう。いっそ「ぼうたんや」と切れをいれて、上五を強め句に勢いと強弱をつけるメリットがあると感じます。

老妻の母かと紛ふ夏帽子   古田硯幸
 お気持ち十分伝わります。ただ、女性の目線としては、少し躊躇するものがありますね。「ふと妻か母かと紛ふ夏帽子」せっかくの、奥様の素敵な夏帽子ですもの。奥様へのプレゼント句にしていただけたら、私も幸せです。

払暁の目覚めに突如時鳥   山畑洋二
 「突如」と言わず、ほかの表現で「突如」であることを詠まれてみてはいかがでしょう。

紫陽花や「アイナ」伝へるフラガール   大川一馬
 魅力的な句材、「アイナ」「フラガール」ですが、「紫陽花」との取り合わせに好みが分かれるのではないでしょうか。フラには明るくない私ですが、一般的なイメージとして、少し不似合な感じも。ただし、その不似合加減が、俳句として魅力を発するときもあるので、難しいところですが…。私の好みでしたら、やはり、明るい色彩の花が似つかわしい気がいたしました。

わたくしをひきつけ雲雀宙ぶらり   ロミ
黄薔薇切る前向きになるためだ   ロミ

 二句とも、とてもチャレンジを感じます。とくに、口調、語調の挑戦を。どちらもはっきりした表現、情景がよく合っていると思います。

彗星はシャガールの絵をよぎるのみ   学
 独特の表現による景が、とても魅力的です。シャガールという、割に知られている作家、作品であることが勝因です。

礼服のコサ−ジュ赤し新樹光   えんや
 色彩に魅力を感じます。
 一読して、一瞬にして、鮮やかな色彩の景が浮かぶ句は、大きな魅力を持ち得ているということです。また、おめでたさのある情景という点も、この色彩に似つかわしい状況です。

シラノニ託ス戀文ヤ亀ノ鳴ク   孤愁
 挑戦を感じます。シラノ・ド・ベルジュラックですね。

古紙運ぶ台車の軋み蚊遣香   智弘
 蚊遣香が、よく合っている季語でしょう。

いつまでも海に向ひて氷水   赤芽
 「氷水」が、ノスタルジックな景を髣髴とさせます。実景は、近代的に整備されて海であっても、この人物の気持ちは、きっと遠い記憶の海であるのはないでしょうか。

足に落ち松の毛虫と分るまで   今村征一
 心象風景を感じましたが、表現が弱いかもしれません。

ババロアを掬ふスプーン夏座敷   山上 博
 どのように掬うか、表現してほしいところです。ババロアが魅力的ですから。

猫にものとつてもらうも皐月かな   二百年
 猫にお願いする行為が楽しいです。

色のないカンバスに描く薄暑光   秋山三人水
 「カンバス」、句材としては、ままあるのですが、薄暑光が新鮮味を与えています。

斑猫の憩ふ高速分離帯   戯心
 「憩ふ高速分離帯」がにくい表現です。

豆ごはん卒寿のひとのよく眠り   ∞
 どんな方なんでしょう。その卒寿の方って。きっと、愛されている90歳なのでしょう。

恐竜の忘れていった薔薇の爪   ∞
 大胆な例えが、大成功です。鷹の爪(唐辛子)ではなく、薔薇の爪というセンスが、とても新鮮です。

電柱に歩幅のボルト夏の天   啓
 視点が斬新で、句に勢いがあります。「夏の天」という表現も合っています。

夏草に猫のねむりの重さかな   啓
 これこそ、猫!という景。それを、端的に、かつ、あますことなく表現しきっているでしょう。

マネキンのヌード曝して更衣   ヤチヨ
 マネキンと更衣の句は、珍しくないのです。残念。ヌードはウイットがあります。

新緑のいろはの九十九折となり   草子
 コメントに書かれましたように、「地球の緑全員集合」というフレーズを、是非、お使いくださいませ。

新幹線に揺れる二階や夕焼空   紀子
 視点が愉快ですから、表現をもう少しだけ推敲していただきたいですね。

草押しの空に白雲缶コーヒー   豊田ささお
 夏草、白雲、缶コーヒーの取り合わせが、合っています。

青葉照りビタミンDを浴びてをり   スカーレット
 ビタミンDが良いです。


2013年5月29日

久留島元ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 梅雨前線の到来にもめげず、今回の投句は204句。そこから10句ですから、激戦です。今回、まとまった時間がとれず充分にコメントを返せなかったのですが、実験作あり、安定した佳作あり。たいへん楽しく、かつ、迷いました。
 さて、今回は初挑戦の方も多かったと思いますが、何ヶ月か「ドクター」を経験したなかでアドバイスをひとつ。
 「句の状況は、自分で説明しない方がいい」です。
 俳句は基本的に、五七五がすべて。五七五からいろいろな情景が眼に浮かんできますし、また、いろいろな情景を思い浮かべるのが俳句を読む楽しさです。逆に、五七五で伝えきれない、きちんとしたメッセージがあるなら、手紙を書いたほうがいいのです。
 詩人、谷川俊太郎さんは、「正確にメッセージを伝えたかったら、僕は散文で書きます」と言っています。
 五七五以上の説明が必要な俳句なら、いさぎよくあきらめてしまって、どんどん違う俳句を作ってしまいましょう。
 たくさん作っているうちに、きっと俳句で伝える方法も磨かれてくるはず。

【十句選】

氷河期じゃない日に目覚め風薫る   紅緒
 いまは氷河期ではない。当たり前の事実が生命力溢れる「風薫る」の恵みを感じます。

ビ‐玉の弾きあふ音青嵐   太郎
 ビー玉のはじける音、視覚的にも実にあざやか。

夕凪やペリカンは胃に重心が   涼
 なるほど、ペリカンはえっちらおっちら歩いている感じがします。

語りえぬものは語らず青葉冷え  秋山三人水
 言いおほせて何かある、俳句は省略の文学とも言われます。

あじさいのつぼみだきあえないさかな  汽白
 雨の中、永遠に抱き合えない(何故?)魚たちを思う。不思議な空間です。

昭和の日テイルランプの長き列   伍参堂
 休日の渋滞風景ですが、まるで高度成長時代の「道路開発」時代を思い起こすよう。中島みゆきの「ヘッドライト・テールライト」が聞こえてきそう。

ぷちぷちをぷちぷちゴールデンウィーク  孤愁
 ぷちぷちぷちぷちぷち・・・永遠につづくありえない娯楽? 拷問?

神様に見せぬ左手桐の花   あざみ
 「桐の花」のゆかしさとともに、なにか過去に隠したい理由でもあるのか、と想像させます。

じぐざぐの育ての川やアヤメ立つ   スカーレット
 「育ての川」の把握がいいですね。

引き算の余生となりぬ緋牡丹   草子
 枯淡の境地。でも、俳句ではまだまだ「若手」ですから、がつがついってください!

【選外佳作】

五月来る悪所の軒の辺りまで   伊藤五六歩

太古より太陽ありぬ麦の秋   学
 太古、太陽のリズムがいいですね。ちなみに「太陽は古くて立派鳥の恋 池田澄子」という先行句があります。

改札をぬけてでんでん虫となる   遅足

卯の花腐しまた誰か嘘ついてゐる  くろやぎ
 卯の花腐しの気分がよくあらわれています。

噴水に白雪姫を待つ家族   山上 博
 白雪姫、の内容が謎。娘の比喩など考え始めると面白くない。

梅雨空の重さに沈むヘリコプター   邯鄲

グランドに墜ちゆく春のグラデーション   kumi
 いっそ「おちゆく」でよいとおもいます。

秘密の鍵は蛍袋に隠しおく   みなみ
 「秘密の」はちょっと語呂が悪いので「あの鍵は」でも充分秘密めかしてます。

ほんきまらだからまつざきしげるいろ  汽白

金定規三角四角揃え夏   茂

麦わら帽ぬき足差し足トムソーヤ   孤愁

白牡丹母は働き者で困る   あざみ


2013年5月22日

南村健治ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 苦悩のひとつに自身のメタボ腹がある。なんとかならないものかと思いながらも決定的な手立てを思いつかない。いや、ひとつある。運動と食事制限。しかしなぁ・・・・運動はしんどいし食べたいものは食べたいし。そんなことを見透かした女子友が、また大きくなったん違う、とか云いながら我が腹を楽しそうに触りに来る。やれやれ・・・・メタボ腹が人気腹になりつつある、ということと何の脈絡もなく今週の10句。

【十句選】

二分三分四分五分桜お食ひ初め   伊藤五六歩
 徐々にあるいは急速に成長していく我が子への親しみと未来を桜の開花に重ね、めでたいお食い初めで締める。上手いなあ、と思う。

ヨッ来たかエッもう帰るのか半ズボン   ロミ
 こちらも子供を題材にした句。話し言葉が親密感を醸し出していて、半ズボンで子供の元気さを伝えている。

鯉幟へと立ち上がる組体操   今村征一
 「へと立ち上がる」という言葉のおかげで、一気に五月晴れの光景が浮かんでくる。爽快の一言。

夏帽子ふれば駈けくる夏帽子   今村征一
 恋人同士か、親子か、遠来の友か、、、、、、夏帽子の繰り返しが双方の距離感と動きをもたらした。

雨落ちて蕗の太さに流れけり   二百年
 蕗の太さ、、、、、緑を滴らせる健康的な夏の雨を上手く云い得ている。

化けさうな傘有りますか半夏風   孤愁
 半夏との取り合わせというか、発想がオモシロイ。買ってどうするのだろうか、ましてやそれを扱っていそうな傘屋って、ぜひ行ってみたい。

テロップの流れるごとく蚊のよぎり   おがわまなぶ
 巧みな比喩。他愛のないテロップは少々うんざり。目の前をよぎる蚊も鬱陶しいものだ。実感が増す。

春の昼誰だポパイを呼んだのは   岡野直樹
 それは、オリーブだ、、、、、しかしながら突然に一句に現れたポパイに意表を突かれた。意味もなくオモシロイ。

パソコンに窓辺の若葉取り込み中   草子
 無機質なパソコンに季節の情感を取り込むという。その詩的で素敵な発想に、1票。

姉の腕が極めて短く見え初夏に   意思
 「極めて」に注目。「なんだか」でも、「とても」でもなく、その硬質な言葉が姉の腕の実態をユーモラスに伝えていないか。

【予選句】

木苺の花や冷気は赤城から   太郎

菜の花や渡し舟より声降ろす   太郎

白藤やくさり樋より雨荒ぶ   太郎

夕映を一身に吸ひ揚雲雀   きのこ

あばら骨ふくらませ鳴く野の子猫   きのこ

紫陽花に結婚まだかと訊かれけり   凡鑽

蛙鳴くATMに指タッチ   ロミ

初恋のひとつふたつは四月的   涼

そのむかし無色の蝶が翔んでゐた   涼

山滴る両腕欠けし太子像   古田硯幸

大いなる御手の如くに五月風   夢騅

さざなみの影もさざなみ柿若葉   遅足

人の影人を立たせて夕焼ける   遅足

春風と遊んで母は行ったきり   遅足

人ごゑのなきたんぽぽの荒野かな   学

空全部梅一粒の中にあり   学

日本に富士カストロに黍の髭   学

花びらが花びら乱す牡丹かな   二百年

クリムトの絵に迎えられ豆ご飯   茂

白日傘相合い傘の老男女   山上 博

柏餅色も力もなかりけり   隼人

短夜や肌掛け透かす薄あかり   津久見未完

春の雨君に包まれながらゆく   加納りょ

こごみ摘む世界遺産がなんのもの   加納りょ

漢詩みなひらがなにして明け急ぐ   秋山三人水

ジューン・ドロップ/レプリカントにある寿命   秋山三人水

土佐沖の紺より生るる初鰹   邯鄲

蚕豆の莢に入りて眠りたし   おがわまなぶ

ひらがなが寝ころんでいる春の昼   岡野直樹

鯉のぼり風立つまでの捨て話   ∞

葉桜の洗う古墳のにごり水   ∞

青銅の少女の裸像雨蛙   紀子

指切りの春風触るる二人かな   豊秋

神様に左手見せぬ桐の花   あざみ

鉄線はむしろ私を撮り返す   意思

輪ゴム二つ一つは異次元初夏の風   意思




2013年5月15日

星野早苗ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 豆の葉を一枚残らずヒヨドリに食べられて、土の上に割り箸をさしたようになっていたエンドウが、いつの間にか葉を広げ、花までつけ始めました。驚いてネットを張ると、今、一メートルほどの高さに育っています。暖かくなって、ヒヨドリも山に帰ったのか、もう姿を現しません。余所で見かける立派なエンドウとは比べものになりませんが、今年も自家製の豆ご飯が食べられると思うと嬉しいです。豆は本当にたくましい植物ですね。
 さて、今回は183句の中から。

【十句選】

鯉幟夫婦喧嘩の上そよぐ   大川一馬
 夫婦げんかの上を、「吾関せず」とそよぐ鯉のぼり。そんな鯉の悠然とした姿に、夫婦げんかなど、些細なことに見えてきます。けんかをしても、子どものためなら一致団結できるご夫婦なのでしょう。

ゆっくりと橋を歩いて朧かな   ロミ
 橋を渡る間、人は、地面から離れ、宙吊りになっています。なにもかもぼんやりと霞んでいる朧の橋の上を歩くと、自分自身も朧になってしまいそうです。橋の上ほど、朧を感じられる場所は他にないかもしれません。その発見に共感しました。

石段の百段半ば春落葉   まゆみ
 実際に外を歩いてみると、春落ち葉の量に驚きます。樟などは怖いほど降ってきますね。降り積んでいたのか、上から音を立てて降ってきたのか。百段の石段の半ばに居る心もとなさが、春落ち葉との対峙を印象付けます。青いまま降る春落ち葉に、樹木の新陳代謝の激しさを感じます。

白牡丹くずれて夜のがらんどう   遅足
 白牡丹が崩れて散ってしまった後の夜の虚しさ。がらんどうと感じるくらい、大輪の白牡丹だったのでしょう。夜の中にかつてあった牡丹の場所ががらんどうとして残っているのでしょうか。そうした意味的な了解以外にも、白牡丹が崩れ落ちて、がらんどうになるまでを、ゆっくりとリフレインさせる映像的な句だと思いました。

ウエディングドレス薔薇より歩み出す   今村征一
 薔薇の咲き乱れる庭園からウエディングドレスの花嫁が……。実際には式場の中なのかも知れませんが、「歩み出す」という静から動への瞬間が、花嫁の人生の第一歩として、美しく詠み留められていると思いました。ウエディングドレスの豪華さに釣り合う花は、やはり薔薇、漢字表記が効いています。
 原句…ウエデイングドレス薔薇より歩み出す(歴史的仮名使いの場合も、カタカナは現代表記で構いません)

お遍路の昼餉のインド料理店   伍参堂
 インド料理店に立ち寄るのは、好奇心旺盛な若いお遍路さんではないでしょうか。観光旅行ではなく、遍路姿であることに、はっとさせられます。現代のお遍路風景として、新鮮な句だと思いました。

わくらばにあまたの空がこぼれくる   秋山三人水
 青葉一色の中、そこだけが赤や黄色に変わってしまった病葉(わくらば)。散ってしまった病葉の上で、青葉が風に揺れる度、ちらちらと青空がこぼれます。

惑星のここだけに咲く野海棠   和
 惑星とは、地球のことでしょう。野海棠は霧島の花木で、固有種の天然記念物だそうです。「惑星のここだけに咲く」と言われると、満開の野海棠の花に、神秘的な美しさが加わりますね。考えてみると、地球上のあらゆる生物は、広い宇宙のここだけにある神秘的な存在なのかも知れません。

藤咲くやあまた並べる露天商   山渓
 各地で藤が満開です。広い藤棚の下に、香りも高く、いくつもの花房の揺れる美しさは、人を呼び、露店もたくさん建ち並んでいるのでしょう。藤棚の藤と露店の屋台の連なりの聖俗の対比が、面白い景色だと思いました。
 原句…藤咲くやあまた並べり露天商(切れ字の「や」、助動詞の終止形「り」と、切れが二箇所にわたっています。「り」を連体形の「る」にあらためると流れがスムーズになります。)

清明の崖を登りて海に遇ふ   紅緒
 清明は二十四節季の一つ、太陽暦四月四日頃。清く明るい気の満ちるこの季節に、崖を登ると海が見えたというのです。四月の海は明るく、視界の広がりが快い句です。「遇ふ」の表記も、思いがけず海に出会った喜びを上手く伝えています。

【佳作】

青野まで飛礫届くか雲一つ   伊藤五六歩

一点のゆるみなき空山桜   遅足

一本の木になるわたし森林浴   紅緒

グローブは未だ馴染まず燕来る   岡野直樹

てふてふは平氏の家紋春惜しむ   赤芽




2013年5月8日

早瀬淳一ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 みなさん、こんにちは。青葉雨、風光る、の季節になりました。そのような休日、大人男女6人で、真昼間から屋外で句会&宴会をしました。この人数で、缶ビール1ダース、一升瓶2本、ワイン2本。飲み食いが一段落した後は、句相撲、3人一組でばらばらに五七五をくっつける遊び、埋め字の遊び、など延々と言葉で遊んでいました。またやりましょうと約束して別れました。
 それでは、十句、よろしくお願いします。

【十句選】

豆御飯粒立つバッハ聴きながら   伊藤五六歩
 バッハのCDを聴きながら、豆御飯を炊いています。炊飯器の中のご飯粒が白くつやつやとしていて、縦にふっくらと立っている様が目に浮かんできます。豆御飯とバッハの取り合わせの面白さ、豆御飯のおいしそうな様子、立つ、で切れるリズムの面白さなどがいいと思いました。

風光るミットみたいなあんぱんに   赤芽
 あるんでしょうね、町おこしの名物・超巨大あんぱんが。それを、ミットみたいなと誇張しているのですが、たとえのキャッチャーミットがいいなあ。野球の観戦をしていて、あんぱんを食べていると思いついたたとえかもしれません。

外つ国の人も交ざりて花莚   太郎
 座敷か板の間に花茣蓙を敷いてのんびりと輪になって話し込んでいるのでしょうね。その懐かしいような光景の中にブロンドの若い女性なんかが混じっている、少し珍しい光景が面白いと思いました。外国の、とぶっきらぼうな言葉にしたほうがいいような気がします。

夕されば恋路となりぬ蜷の道   えんや
 蜷というのは、細い巻貝のことですか。それがぱらぱらと落ちている、海岸の砂浜の道が、夕方になると夕日の反射を受けて、恋の路となるというのですね。夕されば、という言葉の響き、なりぬ、の文語の効果もあって、品のあるロマンティックな俳句になりました。

春惜しむサマルカンドのプロペラ機   とれもろ
 アフリカの熱気球の悲惨な事故を少し思い出しました。サマルカンドは元チムール帝国の都で、シルクロードの要衝。今はウズベキスタンにあるのですね。その街を遊覧する小さい飛行機があるのですね。晩春の面白い素材だと思いました。

地下鉄の車庫は地上に木の芽風   隼人
 地下鉄(車両)の車庫は、もちろん地下に作る必要はなくて、地上にあります。でも、この俳句のように言われると、一瞬意外な感じがして、そしてああ、当たり前なんだという、時間差でくる面白さがあるように思いました。

にこにこと死ねる年頃葱坊主   ∞
 「死ぬにはいい日だ」というコピーをどこかで見ました。100歳くらいになると、やることはやった、行きたいところにも行った、もうここらで楽に死ねるのなら、にっこり笑って死ねますよ、ということでしょうか。葱坊主もとぼけたいい味を出しています。すこし怖いことをほんわりと言った俳句。

蛇穴を出づ検尿の紙コップ   おがわまなぶ
 検尿の紙コップがいいですね。初夏の風に吹かれている、薄っぺらいぺこぺこの小さな紙カップ。普通の紙カップなのに、すこしユーモラス。ただ、蛇穴を出づの季語が意味を持たせたり、別のものを想像させると、うるさいかも。青葉雨降り、といったあまり意味のない季語のほうがいいかもしれません。

広告のトップを飾る春だいこん   岡野直樹
 スーパーの今頃の折込チラシの一番上にでかでかと春だいこんの写真があったんですね。本日の目玉・50円とか。たかだか大根に、トップを飾る、と大げさな表現がおかしい。春キャベツ、としたらどうでしょう。好みですが。

万緑の中に沈める老いひとつ   豊田ささお
 新緑の草原にレジャーシートでも敷いて、くろいでいる年配の作者。それを老い、という一言でさらりと言い放った。また、ひとつ、と物体みたいに突き放した表現。自分を客観的に静かに見た、余韻の残る俳句ですね。

【選外佳作】

春泥の路はくの字とへの字かな   涼
 視点が面白いです。くの字も横から見たらへの字です。

修善寺に朱橋幾つ竹の秋   まゆみ
 朱色の欄干のある橋ですね。静かな温泉町の風情。

風光る白一色の子の新居   古田硯幸
 ギリシア・ミコノス島みたいでおしゃれですね。

囀や子供の部屋は二重窓   えんや
 5月でも雪が降る北海道でしょうか。

青麦に風の足跡止めどなし   山畑洋二
 風の跡がつかないくらい絶え間なく青嵐でしょうか。

葉桜や土台丸ごと残りたり   学
 砲台の台座でしょうか。ひとによっていろいろ想像できます。

青嵐かつらをつけぬベートーベン   学
 いつもの写真ってかつらをつけていましたっけ?わからなくなってきました。

薔薇の字の中に入りし女かな   学
 実際の薔薇の中に入った女の方が面白いかも。

二階よりトレモロかすかリラの花   茂
 少しつきすぎですが、きれいな午後ですね。

うぐいすや鳴きまねをして山静か   ロミ
 やで切れています。鶯のへたくその鳴き声か、作者のまねでしょうか。

春光の表彰状に父の名や   山上 博
 父を労いたい、少し誇らしく思う気持ち。

雪解川思ひ出しつつ米を研ぐ   山上 博
 春先の冷たい水で米を研ぐ感じですね。

新樹街一筋奥のイタ飯屋   大川一馬
 穴場感が出ていていいですね。行ってみたい。

風薫る空に硝子の嵌められて   和久平
 澄み切った空の思い切った表現です。

屋根付きの墓の薩摩路若葉風   洋平
 鹿児島では、墓の上に木の屋根が作られているのかな。いいですね。

蛇衣に蛇の眼のうろふたつ   くろやぎ
 うろは空洞の空間なので穴かな。少し不気味な感じですね。

ターザンになりゐる少女風光る   隼人
 ぶら下がっている遊んでいる少女が見えてきます。

卯波立つ小島点せる車輪梅   みさ
 小鳥を電灯とした見立てが面白いですね。

みづすまし影たひらかに曳きゆけり   みさ
 たひらかに、が眼目ですね。

プロペラの準備完了やまぼうし   紅緒
 これも小型飛行機のものでしょうか。やまぼうしがいい。

春昼のわたしポカンと割れている   遅足
 春昼のぼーっとしているとこんな感じなのでしょうね。

万緑の風の電車を我と待て   遅足
 少しきざですが、恋人にこんなせりふを言ってみたい。

えびそばがゆげたてているみなみかぜ   汽白
 できるだけ意味を殺そうとする作者の挑戦はいいですね。たまにとんでもない成功があるかも。

月朧黒くて長いものが飛ぶ   ∞
 何かわからないですが、思わせぶりな句もいいです。

若葉して冷ゆる教室時間論   啓
 若葉冷えの教室で論じられる時間論の哲学。不思議な俳句です。

くちびるにふれぬままゆく余花の雨   秋山三人水
 恋人とのことでしょうか。ロマンティック。

叡電を降りるひとみな春マスク   秋山三人水
 花粉症?リアルですね。

シオマネキ詳しいことはウエッブで   秋山三人水
 シオマネキが言っている?シオマネキに言っている?おかしい俳句。

シャボン玉昭和の風が遠のいて   孤愁
 シャボン玉を運んだ風がふと昭和の風の感じがしたのですね。

黒南風や工作船の乱数表   孤愁
 北朝鮮の工作船?物騒ですね。

ポケットの屑取り出して春惜しむ   岡野直樹
 なんでもない日常が切り取られています。

夕暮れて赤蒲公英の影の濃し   加納りょ
 影が濃くなるほど、夕日が鮮烈なのでしょう。

白藤の地底に届く長さかな   檸檬
 地底は地面、地べた?写生が効いています。

高階に翅休めをりはぐれ蝶   檸檬
 マンションの10階ほど?高階が効果的。

わが顔に似たる羅漢や春うらら   邯鄲
 自分をユーモラスに見ています。

潮騒の闇に絡まるハマエンドウ   スカーレット
 闇に絡まる、が面白い。

春光や秘湯の文字の幟揺れ   山渓
 GWに秘湯に行きたくなりました。

とりどりの傘を吐き出す春のバス   とほる
 雨の日の光景。傘、と具象化したのがうまいです。

仰ぎ見る盲導犬や藤の寺   とほる
 盲導犬っていろんな思いがありそうですね。

藤の香やから揚げ弁当開けられず   とほる
 開けにくし、でもどうでしょうか。あせっている作者がおかしい。

【一言診断】

◎こうされては?
鳥帰り一羽が残りゐし川辺
・・鳥雲に一羽が残りゐる川辺

万緑に人こんこんと紛れ込み
・・吸い込まれ

春昼の底を蠢く就活生
・・底流れ行く

ぶらんこの漕ぐ音続く星の夕
・・のをを。

孫と聴くヴィヴァルディの四季葱坊主
・・愛人と聴くブラームス葱坊主

ぽちぽちをぷちぷち潰す春うれひ
・・ぷちぷちを

旧道に残る馬肉屋燕来る
・・旧道の馬肉屋二軒燕来る

大鴉の低空飛行躑躅園
・・上五をラジコンが

どんづきに煙草屋の路地夏に入る
・・どんつきの煙草屋の路地夏に入る

指先に髪に降る蕊達治の忌
・・指先に桜蕊あり達治の忌

遠き日のもらい湯の日よつばくろよ
・・もらい湯の遠き思い出つばくろめ

白き闇へ頭突っ込んでいる泥鰌
・・暗闇へ頭突っ込む泥鰌かな

永き日のしゃべってしまう回覧板
・・永き日の紙一枚の回覧板

楕円球抱きてトライ春の土
・・ラグビーのトライを許す春の土

待ちぼうけ改札口の春日傘
・・上五を、人込みの

剃刀の切れ味悪し花の冷え
・・悪しを試す

風待ちてたんぽぽの絮ぽぽぽぽぽ
・・風と待つたんぽぽの絮哲学す

派手好きは隔世遺伝アマリリス
・・下五を猫柳

イケメンの家庭訪問新茶汲む
・・イケメンの担任を待ち新茶汲む

兄よりもひときは大きしゃぼん玉
・・弟をまあるく包むしゃぼん玉

山笑ふ並ぶ十基の発電機
・・山笑ふきらきら光る発電所

春風がチラシを縦に切り裂けり
・・春の風チラシのなかの一の市

◎説明
春の景大和ことばのすっぽりと

遠つ世につなぐ中天懸かり藤

雨後の朝川辺明るき柳かな

迷路かなはたまた恋路蜷の道

腕にある少し艶やか春セーター

千の手が咲いて捉える春の闇

うぐひす鳴く吸ふより大き返す息

手毬花折り目正しき白なりき

逢えなくて手紙の届く藤の花

汽笛とは船のため息春惜しむ

河底を影の漕ぎゆく花筏

耕人の踏み切りわたりをる猫背

滝壺や色を重ねて藍深し

忘れ潮身を寄せ合ひて磯巾着

拾ひ猫こっそり納屋に菜種梅雨

塗り立ての土間に足跡猫の恋

無造作に散りたる処花時雨

乙女らの声走り行く春の雷

◎あたりまえ・平凡・類想
ぽつねんと穀雨の里の無人駅

忘れたる人の名多し君子蘭

山桑の芽を冷したる朝の雨

若き芽と風の戯れそれはそれ

ほどほどの風に吹かれて鯉幟

竹秋や利根の流れの滔々と

やはらかく首に降りくる穀雨かな

膝小僧まあるく並び柏餅

砂浜に埋めたあの日の桜貝

ちぎり絵の色とりどりに風薫る

遍路笠上げて笑顔のああどうも

わらび餅おやつに買ひて紙芝居

初夏の海光眩し花とべら

山笑うその稜線もまた笑う

いい人と言われつづけて暮れる春

鎮もれる堂宇の反りや新樹光

春宵や紅溶く指の柔らかき

新入児城下称える歌の中

◎報告
嬬恋の星あふれけり犬ふぐり

塀越にこでまりの花あふれ出る

つくばひて句友と見入る蜷の道

げんげ田に鳥の飛来や薄曇り

風薫る入り江の海のあおあおと

集まれば年金話春の昼

満ちきたる潮に逃げ行く桜貝

山の湯の帰路は無言や春の雲

満開のぼうたん崩す昨夜の雨

父と子の遊び倦まずや子供の日

部屋いつぱい洗ひ物干す霾ぐもり

爪楊枝ほどの足首雀の子

老木が艶めいてゆく蔦若葉

植樹せし児の名前あり躑躅かな

この庭の菫を訪ね蝶二匹

◎述べすぎ・言い過ぎ
山吹の黄は風信に似て遥か

新緑や白山光る潟光る

雪匂ふ津軽の桜弾けけり

沈黙のモスクの蒼や夏兆し

老いてゆく四月の靄に騙されて

はずしてもかけても見えぬ春メガネ

清貧は健康によし目刺食ふ

波の瀬に残る哀調鳥雲に

青麦や野路をかるがるペタル漕ぐ

◎難解・複雑
春服の仮縫ひ仮の世の懸想(けそう)

邂逅に青葉の一本道辿る

アラフォーの右目を横切る散り桜

アザーンや地軸歪めり春の暁

◎言い過ぎ
懐かしき会津駄菓子や春兆す

名にし負ふ会津駄菓子やうららけし

孤高なるスカイツリーに春光る

◎観念・抽象・気持ち
うぐひすや桃源郷の朝ぼらけ

恋猫の裏庭通りぬけ禁ず

かたばみや星の光の届くまで

亀鳴くや死ぬまでは生きてゆくんだ

老いてなほ燃ゆるもの欲し風薫る

信長はきらいな男花菖蒲

ほんのりと苦味残して春の夢

眼裏の菜の花畑はみだして

絶品の身のうへばなし夏鶯

ひねもすの彼方に在す春の海

猫の戀貧乏神は留守らしき

◎即きすぎ
春の蚊が飛んでいるわと飛蚊症

大潮や人と浅蜊と青空と

たんぽぽのやうに見上ぐる幼顔

風眩し一点差に沸く野球場

古武道の低き気合や招魂祭

綿雲やげんげ明りの休耕田

幼子の大きな嘘やチューリップ

磯笛やピアスに光る水の玉

日を溜むる利根の渡し場犬ふぐり

薫風や歓声高く舟下り

猫の恋さかりのついた高校生

一筋の光の線や山笑ふ

◎理屈
海を見たかろ抽斗の桜貝

TPP休耕田に蝶番ふ

午後の陽を鋤きこみ春田大あくび

◎言葉の意味がわからない
どびんごの雀もありぬ苗木市

春疾風エル・チョクロってタンゴなの

薫風や有平棒にいざなはれ

息づける急磴の辺に蝮蛇草

◎俳句の意味がわからない
修司忌の五月馬鹿なれ草烈し

シクラメン電蓄にファドをおく

ほら吹きを呑んでしまった鯉のぼり

春の昼とろりとろりと奴を煮る

ドラムドラム菜の花化して蝶となり

蛇穴を出る「ヨイトマケの唄」薙がれる

心臓を焼く日を決めて風薫る

鯉のぼりほがらほがらと酔ひもせず

羽衣を捨てて光となる五月

かざしたる針孔に若葉一枚

踊り狂う地震同時に油虫

清明の地球瓶よりエイリアン

春陰や四次元ポケット隠し持つ

春潮の祖父ねまりをる円座かな

チューリップ夜は寝るらし食べるらし

揚げ雲雀ローアングルの老夫婦

夏ウグヒス結構食って掛かるのだ

花雲や矢走り来たる不動滝

菜の花の嘘にこたゆるおんなかな

さくらうた残して銀輪花に消え

初撃(はつげき)が一番強く春の逝く

草餅が深き眠りの後に食べ

父言へば来訪者直ぐ春は逝く

◎ポイントは?
チューリップ私に何かご用でも

夜の新樹傘をたたみて牛丼屋

夏落葉踊らせてゐるつむじ風

母の日や夫に届かぬ宅配便

しじみ汁心療内科の薄明り

北窓は運河に開き北ホテル

春の野の青き冷たき笑顔かな

春の山老犬を捨て吾を捨て

二人来て六人掛けに春は逝く

◎その他
天寿まで元気に老いよ風薫る
・・標語

みなみかぜ3は3かくもくばの3
・・冒険はいいです。

みなみかぜおしおきは3かくもくば
・・同

ぼくのポニーいますぐだしてドラえもん
・・同

みなみかぜきみとぼくとのものがたり
・・同

朝寝して笑う老犬糞の上
・・季語は?

南無法華経つばくろの新所帯
・・無理がある

春朧エコ釜飯の不味さかな
・・ポジティブに


2013年5月1日

芳野ヒロユキドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 今回は説明的報告的俳句が多くありました。できるだけ伝えようとしないことを心がけて作るとよいと思います。十句選のものは体言止めが多いです。たぶん、散文になってしまっている俳句が多いので、体言止めの句を選んだのでしょう。今回は十句しか選べなくて申し訳ありません。もっとデタラメ、もっと誇張、もっと言葉遊び、もっと無意味、そのような俳句をお待ちしております。

【十句選】

春の蠅二河白道の夕まぐれ   伊藤五六歩
 下五「の夕まぐれ」がよくわからなかったのですが、上五と中七の取り合わせが面白いと思いました。

さへづりや金平糖の角の数   太郎
 春の明るさは金平糖の明るさでもあるわけですね。ちょうど金平糖があったので角の数を数えようとしたのですが無理でした(笑)

暖簾くぐりほうれん草がしゃべりだし   ロミ
 上五の設定がよいです。地元の商店街という感じがとても良い。

きっと恋だろう四つ葉のクローバー   せいち
 恋と四つ葉のクローバーの両方を見つけたなんて素敵な世界です。幸せな気分になりました。

桜から桜へぬける三輪車   遅足
 子や孫や幼子という言葉を使いがちですが「ぬける三輪車」という表現の仕方もあります。とても参考になりますね。

風光る街角にふとイタめし屋   大川一馬
 「ふと」から「イタめし屋」への言葉の飛び具合がよいので省略が生まれています。

ブロッコリーパンティーおろしまっていろ   汽白
 でたらめな感じがとてもいい。ブロッコリーが可愛らしい。

PPP桜が散るよPPP   岡野直樹
 どう音読したらいいのかさっぱりわからない。何を伝えたいかわからない。でも、リズムがよくて覚えやすい。報告や説明の俳句が多い中、この句だけがそこから外れていてよかったです。

花菜漬兄はベンツで帰ってくる   岡野直樹
 ポルシェやフェラーリだとかっこよすぎるかな。IT企業の社長とか。ベンツはちょっと違いますね。持ち主のイメージが。

山藤のあの揺れ具合感嘆符   あざみ
 山藤を!に見立てているのか、驚くと言わずに!と表現したのか。後者であれば、これも参考になる俳句ですね。