「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。


2015年6月24日

星野早苗ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 梅雨、紫陽花のきれいな季節ですね。関西は比較的晴れの日も多く、今年の梅雨は過ごしやすいのでは、と思います。先日、螢狩りにも行けました。その帰り、石山の幻住庵に寄ったのですが、小さな庵のわらぶき屋根や石段が、梅雨の晴れ間ならではのしっとりした佇まいでした。芭蕉は、四月から七月の約四ヶ月しかここに住んでいませんが、「幻住庵記」は俳文の傑作と言われています。麓に碑があり、全文が陶板で復元されていました。崩し字の読めないのが残念でした。
 さて、今回は、197句の中から。

【十句選】

かわほりや校舎の裏の秘密基地   二百年
 かわほりは、コウモリの古名。夏の夕方、川原や田畑の上を飛んでいるのがよく見られます。秘密基地は、その在処を仲間にしか知らせない少年たちのたまり場。放課後、指令通り秘密基地に集まった少年たちの高揚感を、少し気味の悪いコウモリがスリリングに高めています。ノスタルジックな面白味もある句だと思いました。

リコーダはユニゾンばかりアマリリス   秋山三人水
 ユニゾンは、同じ旋律をみんなで演奏する、単純な演奏法です。作者はそれを物足りなく思っているのかもしれませんが、豪毅なアマリリスとの取り合わせで、ユニゾンの力強さが伝わりました。小学校の音楽の教科書には、必ず「アマリリス」と言う合奏曲が載っていますね。

積み上がるビルの高さよ夏の月   今村征一
 近所の建築現場を見ていますと、大きなクレーンでパネルや鉄骨を空高々と吊り上げています。バベルの塔の時代には下から一つずつ煉瓦を積んでいたと思うのですが、建築のスピードも高さも、現代では桁違いではないでしょうか。掲句、延々と積み木を積むような工事が、まだ続いているのかもしれません。夏の月に届きそうなビルの高さが、不安にも感じられるところが、面白いと思いました。

ユニクロの袖の長かり更衣   隼人
 ユニクロの服は、安くてカジュアルなデザインが人気です。その、「袖が長かり」に、共感しました。衣更えで引っぱり出してきたユニクロの服が、今年はどうにも似合いません。色、柄は良くても、手足の長い若者体型に作られていたのでしょう。去年は平気で着こなせていたのに……。「更衣」に、心と体の経年変化が暗示され、目配りの利いた佳句だと思いました。

つり革をにぎったまんま梅雨に入る   ∞
 毎日、行きも帰りも、吊革を握ったままの通勤なのでしょう。そういえば梅雨入りしたんだな、とふと思ったのが列車の中。そして、そのまま、梅雨の季節も過ぎて行きます。人生もまたそのように……、と考えると、感慨深いものがあったのではないでしょうか。

初夏や一晩に縫ふワンピース   紫
 夏には、木綿のワンピースが涼し気でいいですね。衿や袖のない簡単なデザインなら、がんばれば一晩で縫えるのかもしれません。思い立って一晩で縫いあげる人の勢いに、若さを感じました。夏を迎える心はずみが、真っ直ぐに伝わる句です。

白シャツが好きでめんつゆ飛びつきぬ   ほり まき
 白シャツの人が冷や素麺を食べているのは目にも涼しい景色ですが、素麺つゆがはねて白シャツにとんだ、となると話は別です。白シャツに茶色の染みは目立ちますし、シャツが白ければ白いほど、悔しい気持ちはつのったことと思います。それを、私の白シャツがそんなに好きだったの、と、めんつゆを許す、作者の心の広さに感服しました。

主なき犬小屋の辺のすべりひゆ   南 次郎
 飼っていた犬が死に、犬小屋だけが取り残されていたのでしょう。そこに、スベリヒユが繁茂しはじめました。炎暑の中、毎年、旺盛な生命力を見せるスベリヒユと、空っぽの犬小屋との対比が際立ちます。愛犬との楽しい夏の思い出が、いくつも甦ったのではないではないでしょうか。

少年に片蔭道を貰ひけり   草子
 暑い日差しを避けて片蔭を歩いていたのは、作者も少年も同じだったと思います。、片蔭を歩いてきた者同志が行き合わせたとき、少年は素早く日差しの中に出てくれました。そんな少年への感謝の気持ちを素直に詠まれた句ですが、炎昼の日差しにためらいのない若さへの羨望も巧みに詠みこまれているように感じました。

夏草や我も大地の居候   利恵
 はびこる夏草は厄介者として嫌われますが、考えてみれば、大地にとっての厄介者は、人間の方かもしれません。人間も、つかの間の命を宿りする、大地にとっては居候のような存在ですね。万物共生のメッセージと共に、「我も大地の居候」からは、居候のふてぶてしさも感じられ、ユーモアのある句だと思いました。

【その他の佳句】

南風や島に降り立つコンサート   花音
あぢさゐや水に書かれし物語   秋山三人水
少しづつ喘ぎて羽蟻歩きをり   酒井とも
蜜豆のずっと子どものままでいる   さわいかの
降る物のみな緑なり青嵐   草子
蕗の葉をサドルに置いて雨宿り   をがはまなぶ
島蛍カチッと火打ち石のやう   紅緒
蜘蛛の囲のゲージ取らずに仕上げけり   スカーレット


2015年6月17日

谷さやんドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 四国・松山もとっぷりと梅雨の中です。沈みがちな空気の中、それでも6月は、高校生による「松山俳句甲子園」の地方大会が開催され、周辺がにわかに活気付く月でもあります。スタッフの端くれに居る私も、今年は山口県防府市の二会場を覗いてきました。充実感ともどかしさがない交ぜになったような高校生の表情が、胸に残りました。
 せっかく防府に行ったので、松山にゆかりのある俳人種田山頭火さんの生誕地跡や墓を訪ねました。大会の日は傘を被った彼も、会場の何処かに座っていたかも知れません。後輩たちの熱闘に、丸眼鏡の奥の目を丸くして。

【十句選】

洒落のめすことも無くなり夏料理   石塚 涼
 「洒落のめす」は、思うままにしゃれたことをするということ。辞典には「冗談を言い続ける。すっかりおしゃれをする」とある。尽くした、という感じだろうか。様々な場面で洒落を発揮して生きて来たが、ふと失速している自分に気づく。その淋しさは、夏料理に似て涼しい気分でもあるだろう。

夏木立ジャズかけて風吹き渡る   伊藤五六歩
 夏とジャズの取り合わせた俳句は時々見かける。相性がいいのかも知れない。この句も、読後感がとても良い。イヤフォンを使って聴き始めたのだろうか。軽快なジャズか、重いメロディかで木立の茂った緑の陰影が違って見えてくる。身体にも心にも吹き渡る至福の風。同じ作者の「サボテンで分煙アメリカンコーヒー店」も、面白い景。

街角に街の一部でないポスト   川嶋ぱんだ
 季語は見当たらないのだが、だんだんと気になってきた句。というか、ポストが気になってきたのだ。当たり前のようにそこにあって、親しかったポストの存在が浮き立って見えてくる。ポストは窓口で、この街以外の場所なのかも知れない。さて、街のリフレインの気持ち良さはあるが、もし季語を入れるとしたら「街角に」を諦めるか。

長梅雨や包丁砥げば生臭し   川崎洋子
 包丁って、毎日生臭いモノを切り裂いてきるのだなあと、改めて思う。普段はさっと洗って仕舞うところ、長梅雨の暗い台所にきらりと光る刃。

墨堤を荷風かひとり夏帽子   孤愁
 墨堤(ぼくてい)は、永井荷風の小説『?東綺譚』の舞台となった東京墨田区の墨田堤。だから「墨堤」と「荷風」は、発想の近い取り合わせなのだ。ただ、こんな男性の粋な夏帽子もいいなと思った。

夏めくやもう頬杖は似合わない   とれもろ
 「もう頬杖はつかない」という青春映画があった。この句は「もう似合わない」。「頬杖」と呼ぶのにも年齢制限があるのだ。私なども憂いではなくただの疲れに思われるのているのか、と思わず僻んでしまった。夏の兆しが射すころに頬杖は似合わないのだ、という素直な句なのに。

起きぬけの一献窓の新樹風   戯心
 お酒は苦手なのだが、あまりに美味しそうなので。いつもの楽しみなのか、二日酔いによる「迎酒」なのか。起きぬけの人のまだボーっとした姿と、生き生きとした窓の新樹が好対照。

額の花大きな夢と小さな椅子   紅緒
 額紫陽花とも呼ぶ額の花は、この時期もっとも美しい花のひとつ。紫色の花の塊のまわりに、3〜4弁の花びらのようなガクに心惹かれる。
 額の花は大きな夢であり、その傍らに誰かが据わるための小さな椅子。私は木の丸椅子を想像した。

駅前に大学できたなめくじり   岡野直樹
 「駅前」とくれば、ビジネスホテル、ラーメン屋などの食堂をすぐに連想する。人の行きかう慌ただしい空間に手軽に利用できる建物。だから駅前の大学には意表を突かれた。しかも季語「なめくじり」で、あまり住民に歓迎されていないような。マンションのように、現代では駅前が大学を選ぶ条件になっているのだろうか?

琵琶の種どれも言い分ありそうな   やすこ
 瀬戸内の小さな島「祝島」は枇杷の産地で、島の至るところに枇杷の木がある。収穫時期には、沢山の枇杷の種が干される光景も目にする。その種をどのように利用するのか、島の人に聞いてみれば良かった。つるりと大きな種は、どれも言い分がありそうに犇めいていた。


2015年6月10日

久留島元ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 関西も梅雨入り、暑かったり寒かったり、難しい気候ですね。
 今回の投句は168句で少なめでしたが、いくつか、意表を突く面白い句が散見されました。

【十句選】

3番の方から順に梅雨入です   ∞
 抽選なのでしょうか、梅雨入りできる人に順番や基準があるとは知りませんでした。なんとも意表を突く面白さで、今回一番の注目句です。「改札を抜けた人から夏に入る 倉間しおり」という、現代川柳を想起しました。

脳みそのぐちゃぐちゃになる夏夕べ   鉄男
 いったいなにが起こったのか、気になりますが、「暑さ」など具体的な理由がないところが、かえって想像の余地がありますね。

麦笛を盤渉調(ばんしきちょう)で吹く童子   伊藤五六歩
 盤渉調、調べたところ雅楽の用語なのですね。麦笛を雅楽調で奏でる童子、なにか時空を超えた説話的存在のような気がします。

新しきビニール傘に緑雨かな   をがはまなぶ
 現代らしい風景。「緑雨かな老舗旅館にウォシュレット」も面白かったのですが、「雨」と「ウォシュレット」が近いかもしれません。

抱きしめる一本杉や青葉の夜   豊田ささお
 「一本杉」は、津波のあと被災地に残ったという一本杉ですね。感謝や祈りと言わず「抱きしめる」と大仰な動作であらわしている点、そしてそれが「夜」であるところに、神秘性と、若干の滑稽さ(はたから見るとすこし変な感じ)があって、いい句だと思います。

くすぐるとくすぐって来る冷奴   さわいかの
 実景としては冷や奴を前にじゃれている、兄弟なのか友だち同士なのか。冷や奴のぷるぷる感が、効いています。

詩は水に馴染んできたる盛夏かな   川嶋ぱんだ
 詩が水になじむとは何でしょうか、しかし夏の盛りのなか水に「詩」が溶け出していくというのは面白い発想。

ドローンぴかり忍びの国のさつき闇   孤愁
 「ドローン」から「忍び」、さらに「さつき闇」と、連想ゲームのような句。時事俳句は一般に難しいのですが、この句はウィットがあっていいと思います。

玉葱の涙は何処へ消えたのか   石塚 涼
 タマネギで出た涙ではなく、タマネギが流した涙ととると、なんだか不思議な気持ちになります。

アマリリス上から目線冷たかり   とれもろ
 アマリリスのあざやかな姿が「上から目線」と捉えたのは手柄ですが、それが冷たいのは当たり前。下5で工夫が欲しいところ、たとえば「アマリリス上から目線でする仕事」など。

【選外佳作】

もしかしてだけどけふ時の記念日   孤愁
 むかし、記念日俳句という企画で、365日いろいろな記念日にちなんだ句を作ったことがあります。お題が出て困ったときはこんな句がよく出ました。おかしみはあるのですが、どんな記念日でも代替可能なのが難点。

冷奴 親に言えないことgaあり   沖野白帆
 「ga」は誤字でしょうか、意図があるとすれば…? 豆腐は、シンプルゆえに、なぜか自問自答させる食べ物のようです。類想句はありそうですが、家族の姿が見えてくる句。

返事より先に下駄履く祭笛   紅緒
 これは、月並ではありますが子どものいさんだ様子が見えてきて、好感がもてる句。

裏切りは五月病からハイデッガー  秋山三人水
 「裏切りは」の部分がよく意味がわからなかったのですが、五月病から哲学書に走った結果、実存主義に目覚めたのでしょうか。

影と来て影の去りゆく夏芝居   石塚 涼
 いったい誰と来て、なぜ去って行ったのか、謎がのこる不思議な句。

咲ききってなほ紫や杜若   ほり まき
 目に鮮やかな、気品あるカキツバタの色彩や姿が浮かびます。厳しくいえばどんな花でも言い換えられるので、類句も多いと思いますが、完成した句と思います。「っ」は旧かなであれば「つ」。

更衣根性焼きといふ過失   ヤチ代
 昔の悪事、または、悪事「された」記憶でしょうか。ドラマがありそう。

蛭泳ぐオーイオーイと呼ぶ声   ∞
 「蛭」の泳ぐ姿に呼びかけているとしたら、とても奇妙な行動。「呼ぶ声」という下五の、語呂が悪いのが気になりました。「呼びかける」「呼ばう声」「呼ぶ声す」など推敲の余地がありそう。


2015年6月3日

中居由美ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 みなさんこんにちは。今週もたくさんのご投句ありがとうございます。
 今回は、さわやかな前向きの句がたくさん集まりました。生命の活動が活発になると、肯定的に物事を捉えるようになるのでしょうか。わが身を振り返ってみても春夏の句は、明るいものが多いような気がします。
 もうすぐ梅雨に入ります。じめじめしてうっとうしい時期ですが、俳句の素材がたくさん転がっている季節でもあります。マイナスをプラスに転じることで面白い句ができるのではないかと思います。是非、チャレンジしてみてくださいね。余談ですが、橋本多佳子も梅雨の頃が好きだったそうです。

【十句選】

はつなつや誰かが当たる宝くじ   石塚 涼
 新緑が滴るような初夏。幸せの神様がそこにいるような気がして、宝くじをつい買ってしまった。もちろんはずれ。しかし僅かな確率ながら当たっている人がいることにふと気付くのです。かすかな理不尽さを感じつつ、「まあ、いいか」と気を取り直すのです。「はつなつ」と「宝くじ」がうまく響き合っていますね。

緑陰に空っぽになりたくて一人   まゆみ
 発想に惹かれて頂きました。表現方法にあと一工夫欲しいところです。
 ―「緑陰に三人の老婆わらへりき」西東三鬼―の不気味さはありませんが、空っぽの空間がシュールです。

髪洗ふトリケラトプスのかたちして   伊藤五六歩
 「髪洗ふ」という季語の艶っぽさを見事に裏切った一句。髪を洗っているのは男性?女性?どっちでしょう。私は女性だと思います。シャンプーのCMのように色っぽく髪を洗う女性はたぶんいません。(笑)

明快に答えし人よ夏の空   やすこ
 夏の空の懐の深さ、存在感が、明快に答える人の態度をより印象付けています。シンプルで誰にでもよくわかる句です。ひねり過ぎない潔さに好感を持ちました。 

六月をわがものとして田水張る   瀬紀
 農村の風景でしょう。かつてはどこでもよく見た景色でしたが、時代の変遷とともに都市部ではほとんど見ることがなくなってきました。
 「♪植えよ植えましょ日本のために♪」と母が口ずさんでいた田植え歌を思い出しました。食の根幹である米を作ることの誇りが「六月をわがものとして」から感じられました。

万緑の中や新刊書の匂ふ   たか子
 生命力が強く漲っている新緑の中で新刊書を開くと、想像以上に紙やインクが匂ってきたのでしょう。また、紙の原料は木ですから、新刊書が木の中にいることを喜んでいる、とも取れます。そこに書かれた本の内容に想像の余地があるところがいいと思います。

柏餅玉三郎の喉仏   ヤチ代
 玉三郎の喉仏をそばで見たことがありませんが、見たような気分になります。美しい手で柏餅を掴む。それを食べる。ごくんと飲み込む。まるでスローモーションのような動きです。この喉仏、艶っぽいですね。

暖簾ある島の街並み南風   瑠璃
 この暖簾は、夏用の涼感あるものでしょう。どの家も戸を開け放しているのどかな島の風景です。家ごとに暖簾の色や模様も違っていて海風にひらひら揺れているのです。「ある」が気になりました。表現を考えてみてくださいね。

夏ぐれに深呼吸する膝小僧   糸代みつ
 「夏ぐれ」を調べてみました。どうやら夕立を指す沖縄の言葉らしいです。その解釈でこの句を頂きました。違っていたらご指摘ください。
激しい雨に呼応するように深呼吸する膝小僧が愛しいですね。日焼けして擦り傷もある子供のひざ小僧を連想しました。いきいきした膝小僧です。

娘の歌に民の寄り合ふ島薄暑   花音
 この句も島を詠んでいます。哀愁を帯びた島唄がとてもきれいです。 「娘」を「こ」と読んで良いですか。それとも「吾子の歌に」と字余りでもすべきでしょうか。」という質問が添えられていました。娘は「こ」ではなく「むすめ」と読んだほうがいいかなと思います。


2015年5月27日

内野聖子ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 新緑の美しい季節になりましたね。気持ちいいくらいきれいに晴れた空を見ると、こんな日は室内で一日過ごすより、自然の中で過ごしたいと強く思ってしまいます。(仕事があるので仕方ないですが…)
 今週も193句という、たくさんの投句をありがとうございました。
 この時季の季語は明るい感じのものが多いのでしょうか、いつも以上に楽しく読ませていただきました。

【十句選】

小人めき新樹の森を逍遥す   まゆみ
 新緑の生命力に溢れた森の中を散歩していると、自分が急に小さく感じられて何ともいえない不安な気持ちになるのではないでしょうか。それでも森からは出ようとせずに当分歩きまわらずにはいられないんでしょうね。
 情景としてはとはもよくわかるのですが、「逍遥」ということばが少し固いかな、と思ったので、もう一工夫されてみてはいかがでしょうか。

南風来る遊泳禁止の遥かより   一斗
 適度に湿りを含んだおだやかな快い風が看板の向こうから吹いてきて、夏の訪れを感じるけれど、なにしろ「遊泳禁止」なので海には入れないんですね。残念です。夏に限らず、いつだって季節の移ろいが感じられるとうれしくなりますね。

護衛艦洗ふ卯波に泰然と   大川一馬
 護衛艦のどっしりとした佇まいにはやはり圧倒されてしまいます。春の海をゆっくりと進んでいく様子はまさに「泰然」ですね。

冷麺や風吹くところ過ぐところ   川嶋ぱんだ
 汗ばむくらい気温が高くなってくるとやはり冷たいものを体が欲しますよね。そんなある日、冷麺を食べるとすっと汗がひくような心地よさが感じられたのでしょう。とても心地いい句だと思います。

透明な汗に抜かれるアスリート   とれもろ
 「透明な汗」が新鮮です。初夏の爽やかさが感じられて、こんな「汗」になら抜かれても悔しくないかな。

賑々し妻ゐる朝の豆の飯   孤愁
 いろんなご飯のなかでも豆ご飯は季節を強く感じる気がします。そして、豆ご飯はなんとなく饒舌な印象を受けます。朗らかな奥さんと豆ご飯がとても合っていると思いますが、「賑々し」に一工夫あればいいかな、とも思いました。
 今回、ほかにもいくつか豆ご飯の句がありました。
 「性格の違う愉しさ豆ご飯  紅緒」
 この句も心の弾みが感じられていいですね。

青葉風先生教科書誤読する   秋山三人水
 この先生はきっとご年配で厳格な方なんでしょう。でも、教室を青葉風がさっと吹き抜けた時、その心地よさに一瞬先生の気が緩んだのか、うっかりと間違えて読んでしまったのでしょうね。微笑ましい句だと思います。

麦秋をティンカーベルの羽の音   ヤチ代
 野山が緑色になっている中に黄金色の麦畑の景色は本当に美しいものです。その中をティンカーベルが飛び回っているというファンタジーですね。

明易し旅の計画第三案   草子
 とても楽しみな旅行なんでしょうね。夜に計画をあれこれ練っているうちに時間が経ち、ふと外を見るともう空が白々と明るくなってきたといった感じでしょうか。それとも旅行が楽しみなあまり、明け方にはもう目が覚めてしまったのでしょうか。いずれにせよ、第三案まで計画を立てる、うきうきした気持ちが伝わってきます。

蛍袋灯して君の手紙読む   紅緒
 蛍袋に灯をともす、という発想は本当に幻想的で素敵です。そして、(たぶん)好きな人からの手紙を読むというのも重ねてロマンチックですね。「逢ひたくて蛍袋に灯をともす  岩淵喜代子」を連想しました。


2015年5月20日

山本たくやドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 ゴールデンウィークは如何お過ごしでしたでしょうか。
 今回は177句の投稿を頂きましたが、思っていたよりもゴールデンウィークを詠んだ俳句が少なかったのが意外でした。楽しくて、俳句を作る暇がなかったのでしょうか。それなら何よりです。では、今週の十句選です。

【十句選】

広告に「男のエステ」武者人形   京子
 昨今は男性用の化粧水が販売されているほどに、男も美を意識する時代になっています。掲句もそれを意識して作句されていると思いますが、武者人形は取り合わせとしてどうかと思います。大胆ではあるのですが、微妙なミスマッチ感があります。季語の再考をオススメします。

春の月竜馬がゆくを三回目   鉄男
 司馬遼太郎の『竜馬がゆく』のことですね。掲句以外にも推敲句として、以下の俳句も送って頂きました。

 春の月竜馬がゆくを三読目
 春の月竜馬がゆくを三順目

 いづれも、何度も読み返してしまうほどの良い作品であるという句意があるかと思います。しかし、これらの句において具体的なΓ3」という数字が機能していません。下五をもう少し抽象的な言葉に置き換えることをオススメします。そうすることで、読み手の想像が膨らむと思います。また、季語であるΓ春の月」の雰囲気も引き立つかと。

こどもの日こどもとなりぬこどもかな   鉄男
 リフレインの面白さはありますが、あまり句の情景がイメージ出来ません。季語を変えて、もう少し別のイメージを加えてみてはいかがでしょうか。

新樹より水辺に鳥の矢継ぎ早   花音
 作者の方から次のような質問がありました。

 木から水浴びに降りて来る鳥たちを詠みましたが「水浴びの鳥つぎつぎに青葉風」の方が良いか迷いました。一つ質問ですが俳句を詠む場面のずれに悩みます。どの場面を詠むのが良いのかご指導お願い致します。

 掲句に関して言えば、Γ水浴びの」の方が景がはっきりしており、美しい一句になっていると思います。また、詠む場面のずれですが、その感覚は大切に持っていても良いかと思います。そのずれは他者から見れば、新しい読みに繋がることが多々あります。悩みながらもみんなで俳句を楽しみましょう。

新茶淹れひと時の幸おもひをり   南次郎
 ささやかな幸せを感じる事ができ、好感が持てる句です。しかし、俳句的な面白味はありません。「ひと時の幸」から飛躍した思いを表現してみてください。

この水着あったかいんだからフナッシー   秋山三人水
 言葉が大渋滞を起こしています。上中下、どこに焦点を当てれば良いのでしょうか?まずはそこから推敲してみましょう。

女子会の締めは無口に新茶汲む   ほりまき
 「女子会」というわりに、締めで新茶とはかなり古風な感がします。無理な若作り感が漂うので、季語の再考を。

アカシアの花見せたくて君を待つ   糸代みつ
 アカシアの花言葉はΓ秘密の恋」やΓ友情」と言われているだけあって、掲句におけるΓ君」は特別な存在と言えるでしょう。だからこそ、掲句が一物仕立てで作句され、完結しているのが勿体なく感じます。二物の取り合わせにした方が、Γ君」という存在やそこからのドラマをイメージさせやすくなると思うので、ぜひ推敲してみて下さい。

抱きしめる一本杉の滴りや   豊田ささお
 初見で、星野立子のΓ囀をこぼさじと抱く大樹かな」に通低するものがあるなと感じました。しかし、掲句の場合惜しいなと思ったのは、Γ抱きしめて」いるものが、Γ滴り」というあまりにも小さく抱きしめにくいものであるという点です。その小ささなどは、Γ一本杉」との対比でより一層引き立ってしまっています。立子の場合は、Γ囀り」という目には見えないものであるという点が、ある種の壮大さを感じさせ 句として成功していると言えます。季語の推敲をしてみてはいかがでしょうか。

行く道を示すがごとく燕飛ぶ   利恵
 「行く道を示す」というのが、あまりにもありきたりな感じがします。燕が飛ぶ目的をもっと飛躍させてみてはいかがでしょう。


2015年5月13日

えなみしんさドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 すでに立夏。みなさんお元気ですか。さて、俳句の表記には、現代カナ遣いと、歴史的カナ遣いがあって、ここに投句している方は半々くらいだと思います。わたしは、今までずーっと歴史カナを使ってきたのですが、ある吟行がキッカケになって、現代カナにしようかなと思っています。
 表記だけの問題ではなく、現代カナにすると、感じ方、考え方までも変わってくるような気がしているからです。そして、わたしには現代カナの方が自然なわたしが表現できるような気がしているからです(ひどい文章でスイマセン)。
 今週は、新鮮な句、うまい句、好きな句、がたくさんあって迷いました。十句選なので十句しか選べないのですが、次点句の数句は差がないと思っています。

【十句選】

「踊り子」の右足跳ねる立夏かな   茂
 踊子というのは「伊豆の踊子」のことなんでしょう。わたしは、鈴木春信の浮世絵も思い浮かべました。「右足跳ねる」のオチャメな具体性がいいですね。左足ではダメ。8文字でゴロが悪くなる。俳句にはその事も大事だと分かります。

葉桜に馬匹繋げば一馬力   伊藤五六歩
 馬匹は、バヒツ、つまり馬のこと。勉強させてもらいました。馬が一馬力という句はあったと思いますが、バ・バ・バの連続が、馬力を感じさせて面白い句になっています。

今朝の夏リリエンタールの翼欲し   伊藤五六歩
 リリエンタールの意味が分からなくても、朝、翼欲し、で明るい句になっています。リリエンタールは航空工学に貢献したドイツの学者さんのようです。これは結果だと思いますが、リリエンタールの響きの明るさも効いていると感じます。

テレビ無き家にたつぷり夕まぐれ   鉄男
 句の裏に、テレビ批判がある。その事が共感につながっていると思います。が、それを生に言うのではなく、テレビがない事の良さを「たつぷり夕まぐれ」と暖かく表現して、好ましい句になっています。

ふるさとは山藤車窓まで触るる   きのこ
 この句はうまいな〜。車窓から見た植物を「車窓まで触るる」と表現した。さらに、上5に「ふるさとは」とつけて叙情を高めた。覚えておきたい句でした。

半世紀桜並木の自転車屋   京子
 こんな風景、あるある〜!と思ってしまう。まず「半世紀」が新鮮でいいんじゃないですか。それから、煙草屋とか歯医者とかじゃなくて「自転車屋」。選んだ単語がいい感じで響き合っています。

ビニール傘水母のやうに夜の街   洋平
 この句もうまいな〜。言われてみて、そうだと思いますよね。かすかに「夜の街」が説明っぽいかな〜と感じますが。下5はまだ工夫のしようがあるかも知れません。

僕は僕どうしよもなく僕で初夏   加納りょうこ
 「ぼくよ目を伏せるぼくよ」で始まる谷川俊太郎さんの句を思いました。内容は、「目覚めるといつも私が居て遺憾」という池田澄子さんの句を思いました。切実で、真摯なものを感じます。句を選んだあとに、女性の句と知って驚いています。

行く春をパワーアシスト付き自転車   岡野直樹
 「パワーアシスト付き自転車」を詠み込んだ句を初めて読みました。誰も使ってない新しい言葉を上手に詠み込んで現代の句にしている。素晴らしいことです。行く春を、と「を」にしてるのが工夫でしょうね。季語は動くかもしれませんが、カンペキなものはありません。これでいいと思います。

行く春のトラベルミンの眠気かな   紫
 トラベルミンというのは、車酔いを防ぐために予め飲むクスリですよね。そういうクスリは眠気を誘うんでしょうか。この句もトラベルミンを詠んだのがすばらしい。「重たき琵琶のだきごこち」の気分を思い出させるのもすぐれもの。

【今週の次点句】

遠蛙こえを殺して待ってをり   ロミ
 上5で切れていると読みました。何をまっているのかいろいろ想像できます。「殺」の字が生々しく、ドラマチックな展開を想像しました。歴史カナのようなので「こえ」は「こゑ」でしょうね。

ちやぶ台に昭和の家族あさり汁   京子
 昭和の句に弱いわたしとしては、つい採ってしまいます。ちゃぶ台、あさり汁、組み合わせがまさに昭和。

卯の花や光鋭きナフタリン   伊藤五六歩
 ナフタリンを詠んだのが面白い。「鋭い」がやや違和感ありますが。

たんぽぽや私を囲む良き人々   きのこ
 「私を囲む良き人々」というのは、喜んでいるような、戸惑っているような不思議な表現です。善意だけに囲まれているのは、たんぽぽもわたしも同じという句でしょう。

覗き込む碗にたけのこ木の芽和   京子
 ゴロがいいですね。余分なような上5が、実は、覗く〜碗〜たけのこ木の芽和のクローズアップ効果を出していると思いました。

かあさまのパラソル風に溶けそうで   とれもろ
 「風に溶けそう」という感覚が新しい。かあさま、も大正ロマンちっく。

産声は最初の呼吸夏兆す   秋山三人水
 なるほど〜という句です。夏兆すも良いと思いました。

閑坐して松風を聴く清和の天   大川一馬
 漢詩の句。静かに座り松風を聞く、今は4月1日だなぁ、という句。

著莪咲いて日蔭ものこそ愛しけれ   瀬紀
 わたし著莪好きな花です。上野の都美術館の前に群生しています。たしかに、日陰っぽいところに咲きます。愛しけれまでいうと、ちょっと言い過ぎのような気が。

囀りの中の一つは舌足らず   山畑洋二
 鶯などのさえずりを聴いていると、そんな事がありそうです。

ブランコをおりたところが宇宙です   遅足
 下5の展開が面白い反面、それを言うためのダンドリっぽく感じるところがあります。と、ここまでで10句。

大仏に口づけしたるしやぼん玉   戯心
 なるほど、こういう言い方あるな〜と思う句。この内容なら「口づけをする」のような口語の方が気分なのでは。

首都奪還真夜中のゴキブリジェット   ∞
 ゴキブリは夜中に出てくるので、首都奪還。なるほど〜。

ギャンブルに勝って机にヒヤシンス   石塚 涼
 勝った高揚感と、静かなヒヤシンスの取り合わせは分かります。〜て、が説明的か。机が分からない。

閑坐して松風を聴く清和の天   大川一馬
 漢詩の句。静かに座り松風を聞く、今は4月1日だなぁ、という句。

雨脚をなだめし芝や目貼剥ぐ   太郎
 「目貼剥ぐ」は、珍しい季語ですが、今でも実景なのでは。雨脚をなだめし芝、があいまいな気がしました。

桜散る少年兵の見しままに   戯心
 良く分かる句です。

蝦蟇を喰うおばあちゃんには長い耳   秋山三人水
 和洋の物語が合体したようなおばあちゃんか。面白いが、わたしのアタマが混乱。

山ほどの罪を抱いて丘は夏   加納りょうこ
 やるせない気持ちが伝わってきます。吟行などでわかりあっている仲間なら「丘は夏」で良かったのかと思いますが、ちょっと謎。

青嵐父はここより戦場へ   ほり まき
 季語が近いように感じました。

花は散りポーカーフエイスの猿がゐた   石塚 涼
 ポーカーフエイスの猿、は面白いが良くわからない。

春雷や開かずの扉開けてみる   とれもろ
 「開かずの扉開けてみる」が面白いのだと思いますが、それだけに終わっているかも。

花は葉に赤子は前へ手を伸ばす   ほり まき
 取り合わせが良くわかります。わかりすぎるのかなぁ。

足太き喜一の塗り絵昭和の日   草子
 町屋のきいち美術館に行ったことがあります。まさにその通りで、好感を持ちました。でも、当たり前かなぁという気も。

 以上、まだ見落としあると思いますが、この辺にて。


2015年5月6日

須山つとむドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 岐阜と福井の県境近く、標高 1234.5 m? の 大白木山( オジロギヤマ )に登ってきた。稜線には イワウチワ、カタクリなど春の山野草。北、東に向く急な斜面では 季語『木の根開く』の景にも出逢えた。今週も挑戦的な俳句との出会いが楽しみ。

【十句選】

汽水湖や夏のスープの隠し味   伊藤五六歩
 海とつながり、低塩分の汽水からなる湖。夏には湖面の色がニュアンスに富み、楽しませてくれる。そんな景に、スープの隠し味を連想した。きっと気に入りの風味の。

夏兆す丸太ん棒を橋にして   紅緒
 細い流だが、向こう側に越せるポイントが見つからない。と、無造作に丸太ん棒が懸かり橋のようだ。渡れる?、危なくない?。遠く連山を望むこの街に、山開きの報はもうすぐ。

こいのぼりちょっとわらって壁になる   加納りょうこ
 どんな壁なのだろう。ユーモラスで不思議なイメージが連想される。中七『ちょっとわらって』は、もっと大胆に『みんな笑って』と大きな景に代えても、この句には似あいそう。

薫風の君ら修学旅行生   せいち
 まだ国鉄と呼んでいた頃、修学旅行専用列車『希望号』の長い列を近くの駅でよく見かけた。希望のかたまりだった連結車両を、ためらわずに薫風と喩えたその潔さに快感がはしる。

午後五時を告げる遅日の時計台   今村征一
 毎日聞こえているはずなのに、意識すらしていない時計台のチャイム。それが近頃、妙に気に掛かりだした。暮れようとしない日永の一日、その悠揚たる空の明るさの所為だろう。

つばくらめ路上ライブのカンツオーネ   岡 あき
 街恒例の路上ライブ。今年、この辻ではカンツォーネの明るく朗々たる調べが流れて来る。毎年来るツバメだって、あの朗唱にシンクロする飛翔の術を覚えてしまったようだ。

青き踏む吟行列のしんがりに   隼人
 季語『青き踏む』の本意を、絵にしたような吟行の列のただ中。青い萌え草を踏む高揚感が伝わる。先頭集団はベテランにお任せし,殿(しんがり)の中でこころを遊ばせている。

ガウディの教会伸びる葱坊主   琥珀
 完成途上のサグラダ・ファミリア聖堂。建築家ガウディは、自然を徹底的にモチーフとしていたとか。白い小花を球状につけた葱坊主を凝視したときの、美的な感動が伝わる。

白髪のガラスに映り花は葉に   ∞
 並木通りがすっかり葉桜に様変わりした初夏。茶房の気に入りの席で一刻を楽しむ男。薄暗がりの茂みの手前、ガラス窓に自分の白髪がクッキリ映った。季語『花は葉に』を、『葉桜(夏季)』の副題として読む。

転んでもちちんぷいぷい犬ふぐり   をがはまなぶ
 昼のテレビの人気番組。そのタイトルの持つ口誦性から、軽妙な一句に仕上がった。季語(春季)からは、幼児や高齢の男子を連想。ユーモラスな想像が広がり、力量を感じさせる句。

【注目の5句】

薄暑光いつもの道が長くなり   とれもろ
 汗ばむ前の、最も気持のいい季節の到来。温度ではなく、光にそれを感じ取った鋭い感覚。中七、下五のフレーズで、情調に流されない工夫をし、焦点がヒタと決まる句をめざしたい。

春夕焼故郷につづく送電路   紫
 空全体に明るく、柔らかく赤味が広がる春夕焼。故郷に馳せる思いが鉄塔を伝わる。『送電路』では、機能の説明に陥りやすく、例えば『送電線』と具体物による叙述を工夫したい。

逢いたくてたんぽぽの絮風に乗る   ほり まき
 花や柳の絮が飛ぶのを見詰めていると、誰だって恋情が募る。この句、そんな想いを逆転させ、恋ごころを花の絮に仮託した。句は大らかになり、メルヘンの調べが流れはじめた。

亀頭割って紅いぼうたん現れり   ∞
 句会での出句は躊躇されるが、『 白牡丹といふといえども紅ほのか  虚子』と対極にあることを意識させる句。大島渚の映画の評価とどこかで通じる俳句かも? と、注目。

四分音符逆立ちしてる土筆摘む   利恵
 今年も土筆摘みを楽しみ、その夜、袴取りに三時間を要した。苦と楽とがない交ぜの春の風物詩を、四分音符の形でユニークに表現。ただし、用言の重なり(逆立ち、摘む)には再考を。