「e船団」のドクターがあなたの俳句を診断したものです。


2015年8月26日

須山つとむドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 北アルプス 薬師岳(2925m)を登ってきた。夏嶺、雪渓、お花畑、ケルン、夏銀河 など、季語に埋め尽くされた時間を満喫しながら。 皆様のパワーあふれる句々を読んでいて、背中をポンと押されるように『夏山の秀句』を授かる気がしてきた。

【十句選】

この面は説得力よどてかぼちゃ   加納綾子
 面(つら)、どてかぼちゃなど、貶(けな)し言葉すれすれの際どい措辞が、カボチャの生命力を活写した。中七「説得力よ」に惹かれたが、さらにもっと適切な言葉がみつけられないか。

どの顔もどの手も美人阿波踊   まゆみ
 動作の描写が一切無いのに、『えらいやっちゃ、えらいやっちゃ』の2拍子のリズムが聞こえ、手足の躍動が見えてくる。どの顔も、どの手もとの畳句の持つ力だろうか。

やめたやめたすっぽんぽんや紅い空   ロミ
  幼子か、自分自信の鏡像だろうか、罷り出でたる全裸の爽快さとおかしみが伝わる。下五の景の印象がややあいまい。『大西日』などと、鮮明な夏の季語に置き換えてみるのも一方法。

鼻先を掻いてなんだか秋だなあ    川嶋ぱんだ
 手の平で顎髭のザラザラをなで、指で無意味に鼻先を掻くオトコ。よく口にする『なんだか』が句の中に見事に納まって、秋めく、初秋の気分をユーモラスに伝えた。

面白き世をおもしろく浮いてこい   弧愁
 夏、水に浮かべて遊ぶ玩具『浮いて来い』と戯れている子供達。どうやらオトナが来て占拠してしまったらしい。やや反語的で、少々智に走ってしまった句のひびきを惜しむ。

ふんどしのようなレシート鰯雲   酒井とも
 それそれ。ヨドバシカメラだけか思いきや、最近では近くのスーパーでも、コンビニでも。日常の些事を、ウイットにまぶして活写した秀句。ふんどしと鰯雲のとの対比の冴え。

八朔を祝う引き戸の小間物や   茂
 自宅前から遠望できる妙見宮も、9月は八朔会で始まる。嘗て、商店街では必ず軒を連ねた小間物屋。引き戸や抽出しの細々した商品の記憶は今も鮮明。小間物『や』の表記は揺らぐ。

釣糸の吹かれ流るる敗戦日   豊田ささお
 敗戦日の景として、印象がユニークそして鮮明。平地に築かれた平(ひら)城のお堀端。風が釣り糸を流すと、ハイテクでショッキングピンクの浮子が水面を走る。堀端に遅咲きの蓮の花。

八月やモノクロームの万華鏡   紅緒
 両手で憑かれたように万華鏡を回す。ある角度に来てガタッと模様(パターン)が変わる。モノクロームに駆け巡る万感の想いが。八月と万華鏡の取り合わせに『詩』を見た句。
 上五『や』は明快な切れだが、『を』や『の』のような緩やかな切れ字に挑戦してみては。

椿の実爆ぜて方丈急ぎ足   さくら
 椿の実の爆ぜる音に驚き、畳の間を急ぐ女性のすり足の姿を連想した。整髪の椿油の香。親に教えられて、滑りをよくする為に敷居の溝に塗った椿の実の香りを、今でも思い出す。

【注目した5句】

紙屋町八月六日の人の影   大川一馬
 紙屋町は各地にあるが、ここはもちろん広島の爆心地跡。あの石段の人影が反戦をささめく。

仲見世や男日傘のしずしずと   隼人
 社寺の境内などにある商店街が仲見世。日傘がサマになる男性が。『しずしず』に一工夫を。

東京の右にひしゃげる溽暑かな   田居吾十歩
 ひしゃげ(拉げ)るの措辞に、発想の大胆さと爽快さを見た。『右に』に意味を感じてしまった。

寡黙なるそばかす美人や小鬼百合   スカーレット
 息が上がりそうになった稜線で、歓喜の出会い。中七『や』は韻律を乱す。むしろ無い方が。

水の音聞こゆる秋の空となる   戯心
 叙述内容は、季語『秋の水、水澄む』の本意にも近い。季語の熟読玩味を試みてほしい。


2015年8月19日

星野早苗ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 十一日間続いた真夏日もストップし、関西の暑さもようやくピークを過ぎたようです。朝夕の風に涼しさを感じる日もふえました。
 私は、今夏、クーラーの室外機から出る水をバケツに溜めて、花の水遣りに使っています。水道水の節約になるだけでなく、ホースでの水撒きより短時間で済み、助かります。それにしても、クーラーから、毎日バケツ一杯の水が出てくるのには驚きます。一日数時間の使用だけなのに、あの水はいったい何処から湧いて来るのでしょう。
 さて、今回は、139句の中から。暑い最中に、ありがとうございました。

【十句選】

熱帯夜なにを歌っても演歌   加納綾子
 蒸し暑い熱帯夜、何を歌っても演歌に聞こえるのは、いわゆる演歌調の歌い方になってしまっているのでしょう。コブシや唸りの効いた演歌が、熱帯夜をますます暑苦しくするようで、面白い句だと思いました。

向日葵は一茎一花で天地占め   いつせつ
 向日葵の花を見上げるとき、その背景は空だけで、天地占め、の措辞が素直に納得できる句です。一本にたった一つしか花を咲かせない向日葵は、その一つの花に、全てを懸けているのでしょう。向日葵の茎の高さと花の大きさもさることながら、一茎一花の気迫が、天地を占めているのではないかと思いました。

浴衣着し女子高生のジャズバンド   大川一馬
  女子高生の軽音グループは近年ポピュラーになりましたが、ジャズバンドは、まだまだ珍しいのではないでしょうか。その稀少な彼女たちが、更に浴衣姿で演奏しているのですから、きっと注目の的だったことでしょう。地域の夏祭りに招かれての一コマかと思いました。

揚花火旧知に出会ふ橋の央   みさ
 花火見物に出かけ、混み合った橋の中央で、旧知の人に出会う。それは、余程の偶然ですね。けれども、花火の夜ならそんな偶然も起こるのかも知れません。橋も、人と人とを結びつける良い場所だと思いました。尚、「央」には、なかば、の意味もありますので、「なか」と読みましたが、「橋真中」ではいかがでしょうか。

昼顔や小さき島への小さき橋   瑠璃
 句意は、小さな島へ渡る橋も小さかった、と言うだけのことなのですが、昼顔の花が、この二つを上手く引き立てています。島も橋も、昼顔のように美しく可憐に見えますね。

かなかなや遠くなりたる耳の奥   戯心
 毎年この季節にはかなかなの声が聞こえていました。今年も、遠くなった耳の奥でかなかなの声が聞こえます。けれども、それは本当に聞こえているのでしょうか。遠くなった耳の奥だけに響く幻聴かもしれない、とも思える句ですね。何もかも遠退くような晩夏の気怠さも感じられ、不思議な味わいの句だと思いました。

縁側や海なき村の青田波   ほり まき
 開け放たれた縁一面に広がる青田が、まるで海のようです。「海なき村」は、小さな村なのかもしれませんが、この縁の景色は雄大です。「青田波」が、効果的に働いています。

鉄橋の一両電車夕焼雲   南 次郎
 閑かな山間の鉄橋を行く一両電車。大自然の中を走る電車が、鮮やかに見える句です。夕焼け雲を背景に、一両電車の軽やかさがいいと思いました。

一枚の絵の中に入り夕涼み   スカーレット
 盛夏の美術館で、心にかなう絵を見つけられたか、或いは、湖や川などの涼しげな絵に心を遊ばせて居られるのでしょう。絵の中に入り込み、涼を得る、そんな夕涼みもあるのですね。

表まで綴りし葉書夜の秋   紅緒
 葉書の文章が裏面だけに収まらず、表の宛名の下にまで及んでしまいました。込み入った内容なら初めから封書にしますので、よしなしごとをとりとめなく書いてしまった結果でしょう。句の内容が「夜の秋」によく合っていると思いました。

【その他の佳句】

立秋や大崎止り山手線   伊藤五六歩
大罪は七つもありし炎暑かな   石塚 涼
浅間から夕べの風や合歓の花   太郎
夏芝居海の中なる立見席   酒井とも
乱鶯のあうむ返しとなる山湖   今村征一
山の香と網戸の風に持てなされ   今村征一
生ひ立ちに干草背負ふ痛さあり   瑠璃
貨物船海へ水吐く原爆忌   隼人
サングラス目線の合わぬ会話して   スカーレット



2015年8月12日

谷さやんドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 三日間の松山祭りが終わりました。私の住まいのすぐ近くの広場では、朝から夜まで多彩な催し物が繰り広げられ、マイクの元気な声や音楽が響いてきました。でも、この暑さ。昼間は一歩たりとも外へ出る気か起こりませんでした。ただ、最終日の今夜の花火だけは、観に出かけました。五十回記念ということもあり大勢の見物客に混じって、芝生の上で待つこと三十分。「申し訳ありません。フィナーレの花火は不具合が生じ、揚がりません」という割に淡々としたアナウンスがあり、その効果か私も先ほど淡々と戻って来たところです。暦は、もう秋です。

【十句選】

夕焼の流れ解散日比谷駅   伊藤五六歩
 例えば今だと、安保法案反対デモをすぐに思い浮べるだろう。プラカードを掲げ、炎天下を歩き続けたシュプレヒコールが辿り着いた日比谷駅。駅を出てくる仕事帰りの人たちと、溶け合うように入り混じる。夕焼けは、明日の好天を約束して。

二の腕は至上の枕夏季補修   加納綾子
 こんなに堂々とぐっすりと眠りこけていていいものか。腕は、至上の枕と言われて光栄なのか。暑い最中せっかく出かけて、眠っていてはもったいないではないか。と、考えつつ枕にしてみた。

夏空の底にありけり水の音   せいち
 仰げないほど眩しくて、青く深い夏の空。その底に思いがけない水音を聞く。夏空はその底に湛えた水を映しているのかも知れない。そして過去の戦争に思いを馳せる夏だから、空に水の音を意識する思いに共鳴した。

用水を西瓜流るる遅さかな   きのこ
 「流れ行く大根の葉の早さかな」を思い出して、思わず笑ってしまった。「西瓜流るる」で、西瓜が流れて行くってどんな急流?って思ったのだが「遅さかな」で、納得した。流れているとも言えない西瓜が、ごろごろひっくり返って動いて行く様子が目の前に現れた。

揚羽蝶肩甲骨がよく動く   川嶋ぱんだ
 揚羽蝶の動きにつられて、自分の肩甲骨を意識したのだろうか。羽が生えてきそうな夏のきびきびした様子が好もしい。ちなみに、蝶には人間のような骨はなく、筋肉で成っているので死んだりするとばらばらになる。「外骨格」という骨格構造だそう。これは、蝶収集家の句友に聞いた話。
 同じ作者の<つり革に少女の脇の透けており」も、好感が持てた。季語は無いにしても薄いブラウスに、汗が滲んでいることがわかる。「透けており」に、清潔感がある。

きりきりと颱風に絞られている   紅緒
 きりきりと絞られているのは、例えば大きな木。風にあえいでいるかの木の姿は、まさしくきりきり絞られている感じがする。傘をさした人間も、飛びそうな屋根も、車もだ。そして、台風がそこまで来ている時の人の気持ちそのものでもある。

夕端居東京音頭口ずさみ   隼人
 東京音頭が、なんだか可笑しい。東京の端居というのも、いいなと思った。盆踊りの音楽が流れてきて、つい一緒に口ずさんでいる。あるいは通りすがりに、端居する人の東京音頭を耳にしたのかも知れない。

自転車を漕ぐ短パンの潔し   沖野白帆
 思い切りが良い、潔白、清々しいなどの意味の「潔し」。短パンは、白とか明るい色を想像した。炎天下、汗が噴きながら思いっ切り自転車を漕ぐ短パンの脚の潔いこと。

月見草ポストイットを貼りにけり   夢幻
 商標名であるPosto-itは、付箋紙。付箋紙ではなくポストイットの響きが月見草に合っている。ポストイットを貼ろうとして、ふと月見草の色だと思い付いたのだろう。思い付いた途端、そっと注意深く貼ったのではないだろうか。

三分は長いウルトラマンの夏   岡野直樹
 汗をかかないだろうウルトラマンも、夏は暑かったのだ。胸のカラータイマーが点滅を始めると、画面の前のわたしは「もう時間がない!」と、泣きそうになったものだが、夏の彼には長すぎる三分間だったとは。


2015年8月5日

久留島元ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 暑い。梅雨が終わったのか、終わらないのか、わからないうちに、たまらない暑さになってきました。
 八月に入ると歳時記ではすぐに「立秋」ですが、連日の「猛暑日」で「熱中症」や「紫外線」が心配、男性も「日傘」や「日焼け止め」、「塩分飴」で対策が大切ですが、「ゲリラ豪雨」にも注意が必要です。
 現実は「熱い」だけではすみませんが、俳句には現代を読み込んでいきたいものです。

【十句選】

ぐらぐらの台風わたし難破船   紅緒
 独特の文体がおもしろい。「わたし」が「台風」のなか「難破船」のように「ぐらぐら」している、と読みましたが、すべてを「ぐらぐら」にしてしまう「台風」の力強さを感じます。

取り返しつかぬ深か爪谷崎忌   弧愁
 「深か爪」の表記に「深爪」とほぼ同じと注記がありましたが、違いや意図があるのでしょうか。深爪、本人は気にしているけれど周りにはなんの意味も無い、鋭敏な感覚をもった文豪の忌日にふさわしい「事件」かも。

くすねたるグリコのおまけ雲の峰   伊藤五六歩
 むかし教科書に載っていた、蝶の標本をぬすんでしまう少年の話を思い出しました。夏の日の思い出、でしょうか。夏のノスタルジーとしては類想のある世界ですが、はまっています。 ※ 万引きは犯罪です。

針穴に小人通れる捩じり草   酒井とも
 「通れる」を現代語の可能ととるか、古語の連体形ととるか。切れを強調するなら「通れり」がいいかも。捩じり草の可憐な姿と、針穴を通るほどの小さな小人の姿がかわいらしい。

ポジティブの何がよいのかゼラニューム   加納綾子
 いつも「ポジティブでいいね」と言われる人も、ときにこんなつぶやきをしたくなることもある。

ブーメラン投げて大暑を二等分   今村征一
 大暑の日を二等分したら、暑さもましになるでしょうか。ブーメランが飛ぶ勢いをよくとらえた佳句。

写真には写らないけど蝉時雨   岡野直樹
 あんなににぎやかなのに、写真にはちっとも反映されず静かな石段だけが写っていたりする、妙な違和感。

噴水や懸命に飛び跳ねている   スカーレット
 噴水の水玉がはじける様子をとらえた句として、悪くない出来。噴水には「噴水高揚る水玉が水玉を追ひ 山口誓子」など名句が多いので、なかなか難しい季語といえます。

蝙蝠がピザを食ったら現れる   意志
 関係の無いことに、関係を見いだしてしまう、きわめて俳句的な視点の句。文体の散文調を「ピザ食っていると蝙蝠現れる」と改めることも思いつきましたが、現代俳句であれば気にならないかもしれません。

大型で非常に強いウナギ喰う   秋山三人水
 台風のように強力なウナギ、暑い夏を乗り切る精力に満ちている感じがします。

【選外佳作】

スマホ手にすらりと脚の茅の輪越え   戯心
 若い女性に対する中高年男性の視線を感じますね。「スマホ手にすらりと茅の輪越える脚」としたほうが、脚に焦点が集まります。

女子大に潜り込みたい団子虫   川嶋ぱんだ
 これも中高年男性的な感性のダンゴムシ。

片陰に微分積分白き肌   さわいかの
 こちらは、数学の試験を前にした女子高生でしょうか。「算術の少年忍び泣けり夏 西東三鬼」を想起します。

付いて来る西瓜を提げたしんがりが   たか子
 「西瓜を提げたしんがりが」はいささか無愛想、付いてこなくて良いような感じがします。「西瓜を提げて」とすれば連体形でなだらかにつながり、一生懸命ついてくるけなげな「しんがり」(少年?)が目に浮かびます。

陶枕の撫でれば果ての無き如く   二百年
 陶枕のなだらかさは、それほどの夢想につながるのでしょうか。かなり大げさですが、白髪三千丈的魅力があります。

虹の橋渡ってみんな黄泉へ発ち   ポンタロウ
 悼句として、「みんな」のにぎやかさがいいと思いましたが、虹を死出の橋と見立てる発想は類想的です。

歯ブラシを銜へる夏の女かな   石塚 涼
 「歯ブラシをくわえる」女はエロティックでステキですが、「夏の女」がいかにも雑。もう少し推敲を。

砲弾で出来し池なり守宮群る   隼人
 守宮はその字のとおり「ヤモリ=家守」ですので、池に群れがいるのは「イモリ(井守)」ではないでしょうか。砲弾でできた池という素材は魅力的なので、「○○の群れ来て砲弾あとの池」のような句またがりにするなど、「池」を焦点に据えたほうがよくなりそう。

水を乞い翳を濃くする原爆忌   瀬紀
 「水を乞い翳を濃くする」までは現代の、暑い夏の風景。ふと気づけば「原爆忌」だった。「翳を濃くする」が表記もふくめ、やや思い入れ過剰かもしれません。

君は思いきり君であれ夏の図書館   Kumi
 J−POPの歌詞のようなフレーズを「図書館」にぶつけてくるチャレンジはステキ。しかし歌詞はあくまで歌詞、よくあるフレーズに止まっていると思います。

ハンカチを落として気を引く乙女かな   有明海
 「昔の話です」とコメントがありましたが、こんな古典的な、ドラマや漫画でくり返された体験があったのでしょうか。かりに事実だとしても、この句のように説明的な文体でありがちな場面を描いてしまっては、まったく面白みがありません。せめて、ハンカチを落としたシチュエーション(風景)が見えるような工夫が必要です。
 改作例「あの人の落としたハンカチ下校道」。これも中八ですので、推敲が必要。

【難解】

 今回は、文体の混乱があるのか、内容に飛躍があるのか、魅力があるのに読み切れなかった難解句が多くありました。

キトラ古墳老人星探す棺の中   利恵
 「古墳」と「星」の組み合わせが魅力的、ただ「老人星(を)探す」のか「老人、星探す」なのか。古墳に「棺」は言い過ぎではないか、あえて言うなら古墳とは別に、老人が入っている別の棺なのか・・・など、情景がうまくむすびつきませんでした。

息白しメロンの舌の熱帯夜   糸代みつ
 まず「息白し」が冬の季語なのに、「熱帯夜」というところで混乱。「メロンの舌」はメロンを食べた舌なのか、メロンのようなぬるっとした舌なのか。

海の日の君を語れば人魚め   たか子
 突然の、「人魚め」。人魚が「君」についての語りを邪魔したのか。音もすわりがわるいし、何がおこったのかわからないまま、しかし突然の「人魚」登場で圧倒されました。

炎昼の七割は闇列車来て   ∞
 炎昼は比較的新しい季語ですが、昼日中でありながら「七割は闇」との把握が、つかみきれない。光の影の対比があって、夏の不気味さのなかから「列車」がやって来るような、そんな物語性は感じられるのですが。


2015年7月29日

中居由美ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 本格的な夏の到来です。このところ、年ごとに暑さが増してきているような気がします。涼を呼び込む工夫をして暮らしていますが、この暑さ、なかなか手強いですね。
 夏には魅力的な季語がたくさんあります。それらを使って句作に熱中していると、「暑さもまた楽し」の気分になります。なにかに熱中していると、しばし暑さを忘れるのです。
 あっ!本物の熱中症だけにはくれぐれもご用心くださいね!

【十句選】

イアリング楕円の中に夏の雲   石塚 涼
 楕円形の大ぶりのイヤリングが揺れています。その向こうに浮かぶ夏の雲。イヤリングの穴から見える雲に焦点をあて、リアルな夏の雲を詠んでいます。近景と遠景の対比が鮮やかです。

九階のベランダに干す竹夫人   草
 竹夫人は、竹や籐で編んだ細長い筒状の籠。寝る時に抱いたり足を持たせたりして涼をとるために使います。私は、実物を見たことがないのですが、ネーミングが面白く、興味しんしんというところです。9階のベランダに干されている竹夫人。想像しただけで楽しいですね。

大雨の硝子に白し守宮の子   きのこ
  灰黒色と思っていた守宮。守宮の子を「白し」と断定しているところに、はっとさせられました。大雨との取り合わせにより不思議な世界が生まれました。

鮨握るロボットのゐる薄暑かな   草子
 近未来、こんな寿司屋が登場するかも。すべてロボットで賄われる寿司屋。不気味だろうなあ。星新一のショートショートを連想しました。
 実際にありそうだと思わせるのは、薄暑の効果でだと思います。

夕焼けに血の色はなし口笛よ   戯心
 夕焼けは赤い。童謡などの刷り込みもあって、そういう思い込みがあります。実際に夕焼けはどんな色か?と問われると正直なところ困ってしまいます。「血の色はなし」の断定から「口笛」への転換が見事です。

音量を最大にして草取女   瑠璃
 シンプルに草取りの景を描いています。暑く単調な作業の慰めにラジオをかけているのでしょう。「最大にして」から、田の広さ、草取女の立ち位置が浮かんできました。

向日葵の明るいふりに気づかぬふり   紅緒
 不思議な感覚の句です。向日葵は明るいふりをしている。そのことに作者は気づいているけれども気づかぬふりをしている。たちまち読者は迷路に引き込まれます。これを良しとするか否かは意見が分かれるかもしれません。

大相撲向正面サングラス   をがはまなぶ
 思わずクスリと笑ってしまいました。人気力士を見ないで、その向こうのサングラスをみているズレが面白いですね。

雨粒のスパンコールや蜘蛛の網  スカーレット
 雨雫をためた蜘蛛の囲はきらきらと美しい。雨粒がスパンコールのように散りばめられていたのでしょう。蜘蛛の囲が素敵な衣装に見える楽しい句です。

薄命さうなピエロ佇む木下闇   利恵
 道化役のピエロ。場を大いに盛り上げ人々を楽しませるのが仕事ですが、これを演じるピエロは、どことなく淋しい。それを薄命そうだと捉えています。薄命と木下闇がやや近いかもしれません。ご一考ください。

【その他の佳句】

百合咲けばふる里歩み出すごとし   今村征一
捩花に乾坤ありて蟻のぼる   瀬紀
蟻の引く翅に命の戻りけり   戯心
満員の二等客室日焼けの子   瑠璃
千切りのキャベツ飛び散る更年期   ほり まき



2015年7月22日

内野聖子ドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 早く梅雨が明けないかなと思っていたところへ台風が立て続けにやってきそうな雰囲気です。みなさんのお住まいの地域は大丈夫だったでしょうか?今回の台風では西日本、特に関西地方の方々に影響があったようですね。私の住んでいる地域でも学校関係は早々に休校が決まっていました。
 さて、今回も180句もの投句をいただき、ありがとうございました。全体を通して夏に向かっている気持ちの表れた句が多かったように思います。

【十句選】

紅ばらを買う少年の眉太し   太郎
 眉の太い少年と紅ばらといった一見ミスマッチな組み合わせがほのぼのしていいですね。最近は眉をきれいに整える男の子が多いですが、あまりお洒落しない感じの朴訥とした少年が、華やかな赤いバラを買っている情景が浮かんできます。きっと頑張って買っているんでしょうね。誰へのプレゼントでしょうか。

コンタクト夏のかけらを目に入れて   加納りょうこ
 コンタクトレンズはもちろん通年使うものですが、夏のまぶしくてキラキラした感じがいつものレンズと違うんですよね。発想がいいですね。夏のかけらを装着すると、どんな風景が見えてくるんでしょうか。素敵です。

夕焼けやノートに付箋忍ばせて   川嶋ぱんだ
 付箋には何が書いてあるのか気になりますね。「忍ばせ」るから単なるメモではないと思うけれど、メモであっても何か大事なものなのかもしれません。きれいな夕焼けを見ながらも付箋が心のどこかにずっと貼ってあるんでしょうね。

香水や足の裏まだ生乾き   川嶋ぱんだ
 出かける前に急いでシャワーを浴びて、着替えて香水までつけたけれど、足の裏はまだ湿っているという情景が目に浮かびます。きっと心弾むお出かけなんだと思います。夏だから足の裏が生乾きでもOKですよね?

伊予吉田無人駅舎の涼しさよ   鉄男
 小さな無人駅はひと気がなくて、そこで電車を待っていると涼しい風がさあっと通り過ぎた、という経験はよくあることだと思います。しんとした夏の昼下がりの情景がうかんできます。

自転車とストローハット走り抜け   宮田和典
 麦わら帽子をかぶった人が自転車に乗って颯爽と横を通り過ぎていくと、なんとなくうらやましくなります。自転車を漕いでいる間は風を受けて涼しいんですよね。後で暑くなってしまいますが。

軒先の海水パンツ海の夢   宮田和典
 これぞ夏の風物詩ですね。海水浴をしたあと、ひらひらと干されている海水パンツ。パンツを穿いていた少年(多分)が泳ぎ疲れて昼寝をして夢を見ているともとれるし、海水パンツが海の夢を見ているともとれます。それとも軒先でスタンバイしている海水パンツ又はその持ち主が夢見てるのかな?色々と楽しい想像がふくらむ夏らしい句です。

ポケットにゲバラの日記雲の峰   幸久
 「ゲバラ日記」は革命家チェ・ゲバラがボリビアでゲリラ戦をしながらつけていた日記のこと。ポケットにゲバラの日記を入れて、どこへ行こうとしているんでしょう。わきたつ雲とゲバラが相まって、ワイルドな夏の雰囲気を醸し出しています。

炎天下沖を向きをり難破船   たか子
 じりじりと焼けつくような太陽の下にある難破船。沖を向いているというのが偶然だとしてももの哀しいですね。炎天下だと難破船もゆらゆら陽炎が立って見える感じで一層雰囲気がありますね。

ソーダ水溢れし後は透明に   意志
 緑色(?)のソーダ水がグラスから溢れてこぼれると透明だったという、一見なんでもない光景を詠んだものですが、そこには一種の清涼感があります。ソーダ水も一年中あるものですが、溢れさせるのはやはり夏ならではですね。


2015年7月15日

山本たくやドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 おかげさまで、また一つ歳を重ねる事ができました。27歳。これからも精進して、皆さんのお役に立てるよう頑張ります。
 今週は良い句というか、僕好みの句が多かったので、十句ご紹介させて下さい。

【十句選】

夏服の女教頭太き声   古田硯幸
 「太き声」とありますが、何だかこの女教頭の恰幅の良さも感じる一句です。「夏服」としているところに、はみ出た肉の脂肪を彷彿とさせます。

右肩の欠けて久しき夏の墓   石塚涼
 この季節らしいホラーチックな俳句ですね。Γ欠けて久しき」という所に、このΓ墓」の怨念じみたものを感じます。ただ、個人的にはΓ墓の夏」としてほしかったです。こっちの方が、よりΓ夏」を強調できると思います。

ムクゲのム 一直線に飛んで行け   沖野白帆
 たんぽぽの「ぽぽ」が火事であるように、ムクゲの「ム」はどこかへ飛ばされる花なんでしょう 。面白いのは、上五と中七の間の空白です。ムクゲの「ム」に注目している主体者が、一呼吸おいて改めて思ったことが「飛んで行け」とは。どこかコメディチックで良いですね。ところで「ム」はどの辺りですか?

草いきれ踏みつけて行く月光へ   川嶋ぱんだ
 一読すると下五のΓ月光へ」が取って付けたような印象を受けるのですが、この乱暴な取り合わせかたが逆に功をそうしたパターンと言えます。Γ草いきれ」からΓ月光」へと急に景が変わる所に、SF的な不思議な印象を与える句になっているのだと思います。

炎昼の缶のしずかなぺったんこ   さわいかの
 個人的な印象ですが、「炎昼」という季語はとても厳ついです。言葉の意味もそうですが、字面においても 。そんな季語に「缶」というのは、よくある映画のワンシーンといった感じでありきたりな気もします。しかし、下五の「ぺったんこ」という、なんとも小バカにしたような表現が素晴らしい。下五でガクッと落としているところに俳句的要素を感じます。

女は女らしく?梅雨は梅雨らしく!   草子
 男は男らしく、女は女らしく、とよく言われますが、果たして「らしさ」とは何をもって決定されるのか。ほっといてくれよと言いたくなる。でもそれが天気なら話は別。梅雨なら潔く雨降れよ!自分のジェンダーを棚上げして言いたくなります。「?」と「!」がよく効いた一句だと思います。

全身を口にして待つ燕の子   ほり まき
 俳句は文学です。文学はフィクションです。フィクション、つまり嘘が大きければ大きいほど、その作品は面白くなります。掲句はその代表と言えます。餌を待つパックリと開けた大きな口そのものが全身というのは、大胆な嘘でありとても面白く感じます。

7月の凪に人魚の光る泡   夏蝶
 とても幻想的な俳句です。川上弘美のΓ離さない」という小説を思い出しました。また、あえてΓ七月」ではなくΓ7月」としている所にも惹かれました。句の雰囲気に合わせて表記を変えることは大切なことです。

新じゃがやの断面に有る宇宙かな   意志
 新じゃがの水気を帯びた断面から急にΓ宇宙」へと景が飛ぶ所が魅力的です。中村汀女のΓたんぽぽや日はいつまでも大空に」にも負けぬ大胆な飛び方をしています。まるで新じゃがそのものが惑星のような、そんな気にもさせてくれる一句です。

扇風機付けたり切ったり無人です   意志
 扇風機のオン・オフを操っているのだから、その主体がいるかぎりΓ無人」ではないはず。だけどきっと、何もすることもなくてやる気も出なくて、ひたすらΓ扇風機」のオン・オフを繰り返しているんですね。そして最終的に強烈な虚無感に襲われて、自分すらもそこにいないように感じている。あるのは、付いたり切れたりする扇風機だけ……。現代の人が覚える屈折した感じがよく出ていると思います。


2015年7月8日

えなみしんさドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 「プレバト」という番組を見たことがありますか。
 毎日放送制作なので、たぶん全国ネットだと思います。その中に夏井いつきさん担当の俳句のコーナーがあります。芸能人が作る、どうしようもない俳句(失礼!)が、夏井さんの手にかかると、見事な句に生まれ変わる。その技にほれぼれしています。
 今週は164句。夏井さんなら、どう手をいれるだろうと思いつつ、ちょっと選にてこずりました。

【十句選】

真夏日や底の真っ赤なハイヒール   石塚 涼
 ハイヒールの底とは、足裏があたる部分か、靴の裏か迷いました。文字通りに靴の裏だとしたら、歩く度に後ろの人はその赤を見ることになってドキッとすることでしょう。季語は、ちかすぎて、その後の説明っぽくなっている気がしました。むしろ、秋の季語の方がいいかも。

山桃とは知らず行き交ふターミナル   まゆみ
 山桃は、町の中でも良く見かける木です。夏前に赤い果物のような実をたくさんつけます。この実を見つけるとうれしくなります。花はみるけど、樹木は良くわからないので通り過ぎる。ほんとに、こんな感じ。樹木をもっと知りたいと思っています。

炎天を「下流老人」闊歩せむ   夢幻
 日本の貧困は深刻なモンダイです。下流老人、は藤田孝典さんの造語で本もある、と知りました。闊歩がいいですね。胸はって生きていきたいと思います、わたしも(笑)。

芍薬や手打ち蕎麦屋の樽の中   茂
 これは写生風の句。使い終わった酒樽か何かの中に芍薬が植えてあるんですね。描写が正確。蕎麦屋の様子が見えてきます。

特大の麻服の中風の中   京子
 麻は夏の季語。大きい麻服を風の中で着ている。中の繰り返しも効果的。ただ「特大」が謎。文字としてはインパクトありますが、実際は不格好だと思うのですが。そこら辺一工夫でしょう。

紫陽花の深みに落ちてしまいけり   ∞
 寺院の裏山などが紫陽花の名所になっていたりすると、見物しながら足を取られてしまうことがあります。花の華やかさとは裏腹に闇は深い。と理解しました。もうちょっと情景が再現できるような工夫が必要かと思います。

傘ふたつ提げて母ゆく夏野かな   ∞
 お母さんが傘を持って駅に迎えに行くという風景は、日常の中で見かけますが、この句の季語は夏野。現実の風景かもしれませんが、抽象度が高くなって、ビジュアルが広がりました。「夏の雨」などとしなかったのが手柄です。

昼顔や少女の混じる草野球   瑠璃
 女性の野球進出がめざましいので、こういう事はたくさん起きているかと想像しました。季語がいいと思います。

メイドイン我が家が並ぶ夏野菜   スカーレット
 「メイドイン我が家」がこなれていない表現で、一瞬、手作りの家かと思いました(笑)。でも、文脈から意味がとれて、現代の表現だな、と理解しました。

すぐ帰ると叱られている蟻の列   さわいかの
 今週は10句選べなかったので、最後にこれを選ばせてもらいました。
 実は意味がとれなくて、3回目くらいで、やっと分かりました。たぶん、「蟻が一匹、列から離れてしまい、すぐに戻ったのに叱られてしまった」という事でしょう。わたしは、落ち着きのない子で、すぐに親から離れて迷子になっていました。デパートで「迷子のお子さんが泣いています」とアナウンスされたのも度々だったので、共感しました(笑)。
 この句、その意味が伝わりにくいのが最初の12文字。「すぐ列に戻ったのに叱られている蟻」なんですよね、そこんとこ、工夫してみてください。


2015年7月1日

須山つとむドクター : 今週の十句  (到着順)

【はじめに】

 大阪府の北の端にある歌垣山(551メートル)。万葉の昔から 若い男女が「かがい」(歌を交わした婚活 )の宴を楽しんだという、ロマンを掻き立てる跡が今も残る。男山から女山への緩やかな稜線にはササユリが咲いて。 今回も新しい世界、楽しい景との出会いに感謝。

【十句選】

杣山の男が焼きし岩魚かな   太郎
 ごく希にだが、山仕事をする若い男女に出逢うと、つい声を掛けてゲンキをいっぱい貰う。この句のような幸運にめぐりあい、そのうち秀句を授かるかもしれない。

ドラマーの眉間口髭梅雨はげし   大川一馬
 梅雨のさなかのストリートジャズ。噴き出す汗か、しぶき雨だろうか、びしょ濡れた顔のドラマーのビートが、バンドをホットに、ぐんぐん引っぱって行く。もう、夏はそこに。

ちっぽけな家に大きな青田風   せいち
 季語「青田風」を知っただけで、見慣れた近郊の風景はぐっと身近なものへと変わる。俳句の恩寵。中七『家に』を、『家の』と一字代えてみて句の変化にも、着目を。

風荒ぶ日は麦こがし囲みたる   紅緒
 むず痒くなる軟口蓋、「はったいのこー」と売り歩いた白川女の声など、色んな景を思い出させるのも句の力。晩夏の乾いた風が、この句からイメージされる。

こらこらこら何て格好夏料理   ロミ
 板前がその技の冴えを見せた夏の器、老若集う一族の少々改まった顔々。昼下がり、気の置けない宴席の景が、ウイットにまぶして見事に活写された、秀句。

キシキシと骨の音して時計草   ∞
 優美よりもむしろ理知をイメージさせるトケイソウ。渦巻きバネが秒針を運ぶように、仙骨の一部が妙なる音をたて始めた。

打水をはらりとかわす旅籠猫   瑠璃
 馴染みになった積もりが、未だ人見知りを装う常宿の猫。客がおもしろがる打ち水を、間髪を入れずに躱すその技は流石、ただ者ではない。

苔の花昔話に耳すます   ほり まき
 華やかさは無い、いつも湿り気を帯びて、したたかな生命力。どこか憎めない苔の花。そうか、生きている者どもの悠久の歴史をずっと見てきたのだ。

何も言えずに十八の星祭り   西
 初恋を思い起こすときの、静けさを湛えた句。仏教で 眼・耳・鼻・舌・身・意の感覚器官を六根、その対象となる刺激を六境、その和合で生まれる意識を六識。これらを合わせ『十八界』と言うそうだ。ふと、こんなことも思わせる。

ウッソー昭和の味のこのトマト   中 十七波
 嘗てよく口誦した感嘆詞「ウッソー」が、こんなユニークなカタチで句を立ち上げるとは。上五、中七、下五のそれぞれの語彙が、感覚を鋭く絡ませて和音を奏でる。

【注目の5句】

斑猫はきっと真っ直ぐ俺曲がる   せいち
 後ろにも眼があるように、人の先へ先へと飛ぶハンミョウ。エイ!チョット撒いてやるか。

水打てば折り目正しき風訪ひ来   戯心
 意味はよく伝わる。だが、用言(活用する語)が多すぎて、景の説明に終始した。

御目文字を未だかなわず竹夫人   草
 レトロな措辞と、それを補強する道具立て。俗謡の都々を聞いているような安らぎはあるが。

恋人を切り取り線で切って貼る   糸代みつ
 昨年、メディアを賑わしたSTAP騒動『カット&ペースト』 を再燃させて、意味深長。

母盗む谷汲山(たにぐみさん)の百合が咲き   意志
 西国三十三所 最終の札所とか。固有名詞のもつ快感は伝わるが、上五の意味が重すぎた。