この一句・2001
2001年2月17日

春寒や枯木に寄れば日の匂ひ (季語/春寒)

村山葵郷

 まだ枯れたままの木に寄ったら、かすかに日の匂いがした、という句。 葵郷は村山古郷の兄。明治33年生まれのこの兄の存在が古郷を俳句に入らせた。また、古郷の姉のたか女も、やはり葵郷の影響で俳句を作った。
 葵郷、たか女、古郷は、俳句の「村山三兄弟」とでも呼びたい存在だ。
 「笈を負へば一書生たり春の風」。これは昭和6年、東京に遊学する弟の古郷におくった葵郷の句。国学院に学んだ古郷は、やがて俳句一筋の暮らしに入る。ちなみに、この上京の際の古郷の句は、「京に似し照り降りもあり暮の春」「坂多き町に住みつく袷かな」「大久保の春祭なる夜もひとり」の3句。兄弟の交響が春の瀬音のように美しいではないか。
 葵郷の句は句集『春暁』(昭和19年)から引いた。
(坪内稔典)


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