この一句・2001
2001年5月7日

桜の実虎のくしやみが二、三回 (季語/桜の実)

谷さやン

 動物園の風景だろう。赤い実のついた桜の木の下で虎が2、3回くしゃみをした。桜の実と虎のくしゃみに関係があるわけではない。初夏のある日ある時の風景である。
 この句から、たとえば、中島敦の「山月記」を連想する人があるかもしれない。あるいは阪神タイガースを連想する人があってもよい。初夏の頃、「今年もまた駄目だ」と早くもファンが嘆いている光景。ま、このあたりの連想は自由だが、私にはとてもおかしい俳句。桜の実と虎のくしゃみにまったく関係のないことがおかしいのだ。考えてみれば、この世の事象のほとんどはこの句の桜の実と虎の関係である。
 この句のある『花のいつき組』(1999年、創風社出版)は、夏井いつきに俳句を学んだ女性たち8人のアンソロジー。さやンの句では「肩こりのゴルゴ13日脚伸ぶ」「啄木鳥の穴ばつかりと思ふ昼」「露草のホントは白といふ秘密」などを愛唱している。
(坪内稔典)


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