この一句・2001
2001年11月26日

潦大潦紅椿  (季語/椿)

酒井大岳

 潦(にわたずみ)は急に雨が降って地上にたまり流れる水。ニハは俄か、タズは夕立のタチ、ミは水。日常的には潦という言葉は死語だが、なぜか俳人好みの言葉であり、俳句にはよく出てくる。
 今日の句は1998年3月30日の朝日新聞「朝日俳壇」の入選句だという。選者は稲畑汀子。庭に潦ができ、その潦のなかにはとても大きなものもあった。そして、大きな潦に紅椿が落ちている、という光景だ。
 今日の句は川柳作家、岩井三窓のエッセー集『紙鉄砲』(新葉館出版)で教えられた。この5文字の俳句について岩井は、潦は骨董的な言葉だが、「このような、文化財的なことばを、愛し、駆使するのが、筆をとるものの使命でもある」と書いている。
 上の例が示しているように、岩井のエッセー集には言葉にかかわる楽しい話がいっぱい。言葉好きの人が、言葉と無心に遊んでいる感じ。その感じが魅力だ。
(坪内稔典)


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