この一句・2002
2002年2月1日

別れた日いそぎんちゃくを見ていたの  (季語/いそぎんちゃく)

寺田良治

 いそぎんちゃくは春の季語。まだ春には少し早いが、このところ、折に触れてこの句を思い出す。私のゼミの学生たちがもうすっかり卒業気分で、お別れ旅行の話などがよく出るから。それに、私の職場は3月が年度替り、同僚との別れが近い。もちろん、今日の句は、恋人との別れだが、もう少し広く、いろんな別れにあてはめてもよいだろう。それにしても、別れた日にいそぎんちゃくを見ていたとは。したたかというか、哀しいというか、ともかく微妙極まる気持ちだ。この句、句集『ぷらんくとん』にある。
 明日は『ぷらんくとん』の出版記念会。この句もそうだが、この作者は、変身して句を作る。今日の句だと女性に変身している。このような試みについて、良治はしばしば「若い」と評されるらしい。先日、会ったとき、「試みは歳に関係ないですよね」とやや不満そうに言った。
(坪内稔典)


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