この一句・2002
2002年3月5日

三山の天心にして春の雷  (季語/春雷)

沢木欣一

 昨日に続いて地「風」3月号から引いた。この句は句集『二山挽歌』(1976年)にある。三山は大和三山、すなわち畝傍山、香具山、耳成山である。万葉集には、畝傍をめぐって香具山と耳成山が妻争いをする歌がある。「香具山は畝傍を愛(を)しと耳成と相争ひき神代よりかくにあるらし…」という歌。この歌に重ねて欣一の句を読むと、天心で鳴る春の雷が今なお続く三山の恋のときめきかと思われる。
 もう一つ、欣一の句を挙げよう。「桃咲くや笛吹川の矢の流れ」(句集『遍歴』)。今度は甲斐の笛吹川だが、桃の花の色と笛吹川の青い流れとがあざやかに目に浮かぶ。以上の2句と、昨日紹介した「塩田に百日筋目つけ通し」が欣一のわがベスト3だ。
(坪内稔典)


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