この一句・2002
2002年8月11日

盆道をつくらば石器時代まで  (季語/盆道作る) 

矢島渚男

 今日の句、石器時代まで、とおおげさに表現したところが面白い。私などの実感としては先祖はせいぜい3代前くらいまで、という気がする。だから、石器時代まで、はおおげさなのである。もちろん、このようなおおげささが、俳句的発想のひとつであり、白雄や蕪村に通じた作者ならではの句だ。
 渚男の句は最新の句集『延年』(富士見書房)から引用した。集中、『漱石のカステラ・子規のココア』の著者稔典さんへ、と前書のついた3句がある。「永き日や漱石に髭子規に鬚」「子規庵のすがれ糸瓜の漫(すず)ろなり」「杭を打つ音やいつしか春景色」。私の本から想像を広げてくれていることが分かってうれしい句だ。ただ、これは今、書き写したので気づいたが、私の本は『子規のココア・漱石のカステラ』。子規が先に来る。書名の前後が逆転したのも俳句的発想の一種と言うべきか。とても愉快。
(坪内稔典)


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