この一句・2003
2003年2月26日

菜の花や投網を肩にして若き  (季語/菜の花)

ふけとしこ

 河原に一面に咲いている菜の花。そこへ投網を肩にした人が現れた。いかにも若々しい足取りで。もっとも、「肩にして若き」はほんとうに若い人とも、若くはないが投網を肩にしたら若々しい、とも読める。現代の風景だとすると後者の意味が作者の意図に近いかもしれない。だが、私は前者が好き。若者の粋な感じの風景として読みたい。
 句集『真鍮』にあるこの句から連想するのは、久留米の石橋美術館で見た青木繁の「海の幸」。裸の男女が魚を担いで渚を歩いている絵だ。としこの句にも「海の幸」の原始的エネルギーに通じる健康さがある。
 ところで、投網というものに少年の頃、あこがれていた。きれいに網をうつ漁師になりたい、と思ったのだ。だが、網を手にする機会はついに訪れなかった。
(坪内稔典)


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