この一句・2003
2003年3月17日

春愁もヤクルト一本分くらい  (季語/春愁)

中居由美

 「ヤクルト一本分」がいい。飲み干したヤクルトの殻が春風にころころと転がっている音が聞こえる。その音が春愁の音でもあるかのように。由美の句は「船団」54号から引いた。
 昨日、超絶短詩の話をしたが、この詩の創始者・篠原資明を招いて、つい先日、柿衛文庫也雲軒で話を聞いた。超絶短詩は語句を同音に分解する。「嵐」を「あら 詩」というように。分解した一方は必ず間投詞(擬態語・擬音語を含む)でなければならず、また、分解した二つの語句の間に空白(字間あき)を持たせなければならない。この空白は俳句の切れに相当するのではないか。超絶短詩を知るには篠原資明著『言霊ほぐし』(五柳書院)が便利である。
 篠原の話を聞きながら、実は私も超絶短詩を作った。題は「愛」という。「あ 胃」。愛は時に胃を痛くさせる。
(坪内稔典)


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