この一句・2003
2003年5月1日

新緑や愉快愉快という男  (季語/新緑)

松本秀一

 昨日に続いて末広旅館句会の作品を紹介する。この句の「愉快愉快という男」は芝不器男がモデル。不器男生誕百年祭の講演で、私は「愉快、愉快」が不器男の口癖であり、故郷の川や丘で彼は「おお、愉快!」を口にした、と話した。自分のほんとうにしたいことがまだ見つからず、でも、結婚ははやくにした不器男。これという仕事のなかった彼は、友人への手紙に、僕はまだ若いのですから、仕事がしたいのです、と書いた。そのような不器男にとって、たとえば山の新緑は、無性に愉快なものだった。それらと心が通じたのだ。
 「四万十へつながる流れつばくらめ」(小西昭夫)、「石ひとつすみれのなかに置きにけり」(岡本亜蘇)、「花びらをすくいて今日の息をする」(東隆美)なども末広旅館句会の作品である。
(坪内稔典)


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