この一句・2004
2004年2月15日

行きはわが足袋の真白く下萌ゆる  (季語/下萌え)

中村汀女

 小川濤美子のエッセー集『中村汀女の日々』(富士見書房)から引いた。濤美子は汀女の長女である。掲出の句は昭和15年の作。「ホトトギス」の句会などにも、「時々出かけていた母の四十代の意気さかんなころ」と濤美子は注している。
 意気さかん、といえば先日の失敗を思い出す。ある県の企業交流会で講演をしたのだが、それが近来では最低の結果になった。というのも、聴衆の企業戦士を前にして、文学という無用の側にいる者の意気を示そうと気負ったからだ。いつもだと自分を茶化すのだが、そのような余裕を欠いた講演は妙に気張ったものになってしまった。後で気分的に落ち込んだが、対抗しようとしたところは、ネンテンさん、まだ血気さかんな証拠だろうか。ああ。
(坪内稔典)


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