この一句・2004
2004年2月18日

春泥や電気コードを継ぎ足して  (季語/春泥)

小倉喜郎

 先日、ある大型家電店の火事があった。蛸足コードの漏電が火災の原因ではないか、とテレビが報じていたが、それを見ていて掲出の句をふと思い出した。この句、春泥もごちゃごちゃ、そして継ぎ足した電気コードもごちゃごちゃしているのだろう。もちろん、春泥と電気コードには直接の関係はないが、なにか関係がありそうだ、と読者が感じたらこの句は作品冥利に尽きるだろう。ちなみ、この句は出たばかりの句集『急がねば』(ふらんす堂)にある。
 「早春の転がっている拡声器」「パイプ椅子を並べておれば春の雷」「春時雨窓から見える体育館」。これらも『急がねば』にあるが、春の季語と「拡声器」「パイプ椅子」「体育館」が取り合わせられている。取り合わせの妙がこれらの小気味よい作品を成り立たせている。ちなみに、喜郎は1965年生まれ。若くてしかも充実した俳人だ。
(坪内稔典)


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