この一句・2004
2004年2月19日

余寒なお鞄三つをぶら下げる  (季語/余寒)

児玉硝子

 首にか肩にか鞄を三つぶら下げているのだ。それはどのような鞄だろうか。その色、かたちによって、持ち主のイメージが異なってくるが、私は元気なオバサン、たとえば大阪のオバサンを連想する。当然ながら色は派手、しかも大きい鞄だ。
 今日の句は間もなく出る句集『青葉同心』(ふらんす堂)から引いた。もちろん、先の読み方は一例である。余寒の部屋の壁に鞄三つをぶら下げている、という光景も悪くない。
 『青葉同心』は楽しい。「前後ろ脚がこんなに開く春」というおおらかな句と、「春の昼テトラポッドにひとりきり」というさびしい句が並んでいる。そしてその後には「春の日や穴を掘る人見入る人」が来る。しみじみとおもしろいのである。
(坪内稔典)


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