この一句・2004
2004年2月28日

彼と居て机の上の春のたまご  (季語/春)

三池泉

 この句の主人公が、たとえば学生だと、ワンルームマンションの光景だろうか。CDなどといっしょにゆで卵が置かれているのだろう。「机の上の春のたまご」というけだるい響きには、セックスの後の放心感のようなものが漂う。もちろん、この句の主人公は若い学生に限らない。中年とか老年の恋人でもよい。中年だと卵は生卵で、彼が一気に呑むのかもしれない。
 今日の句は泉の第3句集『戀人』 (自家版)から引いた。泉も昨日の守啓と同じく「暖流」で俳句を作っていた。今は「犀」「船団」「波」に拠っている。「戀人をつくるにいい日桃の花」「越路吹雪が濡れている立冬」「古時計大きな咳をしたい闇」「春の山笑ってばかりいては駄目」「啓蟄やブラジャー買いに銀座まで」。これらがこの句集の秀作。発想がとても奔放でのびのびしており、それがとても快い。
(坪内稔典)


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