この一句・2004
2004年3月19日

古書店の奥の奥にて春愁  (季語/春愁)

能村研三

 うず高く本を積んだ古書店の奥で、店主が頬杖でもついているのだろうか。眼鏡が鼻眼鏡になって今にもずれ落ちそうだ。この句、『滑翔』(ふらんす堂)から引いたが、この研三の第5句集には「もの食べるための眼鏡や春の暮」という句もある。
 古書店といえば、最近はインターネットの店が便利である。時間的に余裕がなく、ゆっくりと古書店めぐりが出来ないので、近年はもっぱらインターネットで古書を買っている。もっとも、目的の本をぱっと探し当てることは出来るが、店頭でのあの立ち読みのようなことは出来ない。
 「意味のない風が吹いて 世界の昼は放心している」。最近に買った古書に『村野四郎全詩集』があるが、引用したのはその詩集の巻頭にある「春」という詩の書き出しだ。
(坪内稔典)


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