この一句・2004
2004年3月25日

大砲を引き出すように桜咲く  (季語/桜)

児玉硝子

 これ、面白い。桜、ことに染井吉野という桜は、たしかに「大砲を引き出すように」咲く。咲いたようすが、そこに大砲があるという感じなのだ。もちろん、その大砲は、たとえば幕末のころ、長州が英国と戦ったときの大砲だ。
 今日の句は句集『青葉同心』(ふらんす堂)から引いたが、句集でこの句に並んでいるのは次のような桜の句。「桜咲くひものほどけたような顔」「中年の居場所眠たく桜咲く」「病院の桜爆発丘の上」「友達の証しゴロ寝の桜山」。桜が庶民的というか、「ひものほどけた顔」に似合うものとして捉えられている。私にはこの作者の姿勢がとても好ましい。桜の下で気楽にゴロ寝をしてこそ友達だ、と言われると、私などはすっかりその気になってしまう。ともあれ、今年も桜の季節になった。今年はどこの桜に出会うのだろうか。
(坪内稔典)


前の一句 次の一句 記事検索 バックナンバー トップページ