この一句・2004
2004年3月29日

曾孫までが車座となる花の庭  (季語/花)

尾池和夫

 「車座」という言葉がよい。一族の自由な雰囲気がこの言葉から感じられる。私はこの句から、庭の大きい桜の木が自慢で、その木にちなんで「老桜」とか「香雲」と名乗った少年を連想する。その少年は後の正岡子規。彼には「鯛鮓や一門三十五六人」「故郷はいとこの多し桃の花」という句がある。
 今日の句は句集『大地』(角川書店)から引いた。著者は地球物理学専攻の地震学者として知られる。最近は京都大学総長としてよくマスコミに登場している。「あとがき」で著者は、「東宇治句会の皆様からいただいたご意見や激励の成果」がこの句集の作品にある、と述べている。金久美智子の「氷室」に拠る著者は、地元の句会に出ているようだが、句会の車座が好きなのだろう、きっと。「花散りて地球科学を開講す」「草津より電車に乗りし蜻蛉かな」「防災対策会議終はりて蜆汁」「速達を出して身軽や寅彦忌」なども『大地』にある秀句だ。
(坪内稔典)


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