この一句・2004
2004年4月28日

背に近くもたれ心や春の山  (季語/春の山)

河東碧梧桐

 1907年4月29日の作。当時の碧梧桐はいわゆる三千里の旅に出ており、函館にいた。前日、内藤鳴雪の弟、宇野恬堂という人に会い、翌日、つまり29日にその宇野氏の家に招待された。碧梧桐は、「きょう山から採って来たといわれる土筆の甘煮を殊に珍重がって、思いは故郷の天に走(は)せた」と書いている(『三千里』)。その望郷の思いの後に掲出の句が記されている。もたれたくなるような「春の山」は故郷(四国の松山)の山を連想させたのであろう。ちなみに、『三千里』によると、函館は桜の蕾が大きくふくれた状態。そして、「柳がほのかに緑を含んで」いた。
 私の住む箕面あたりはすっかり新緑である。数日前、近所の子どもたちが街路樹の根のそばを掘って芋虫を集めていた。兜虫の幼虫だ、と喜んでいたが。蛾の幼虫ではないか、と私は思った。
(坪内稔典)


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