この一句・2004
2004年9月6日

衣被ひとりで食ぶは恥づかしき    (季語/衣被)

内田美紗

 衣被(きぬかつぎ)を一人で食べるのは、確かにやや恥ずかしいだろう。淫靡な気分になるのだ。衣被のかたちがやや卑猥、やや肉感的だから。端的にいえば男根的なのだ、衣被は。
 今日の句は出たばかりの美紗の第3句集『魚眼石』(富士見書房)から引いた。この句集には衣被の句がもうひとつある。「衣被するりと剥けて絶交中」だが、これはかなりきわどい。ちなみに、美紗は1936年生まれ。船団の会では私たちの姉御的存在だ。
 「亀鳴くや携帯電話飼つてをり」「秋の暮通天閣に跨がれて」「ミックジャガーの小さなおしり竜の玉」「湯ざめしてかつぱえびせん止まらない」「ががんぼやぶつけてしまふ向う脛」「春愁に言ひ寄られゐるどうしやう」。これらが『魚眼石』の秀句である。
(坪内稔典)


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