この一句・2005
2005年3月23日

春愁や船から船を眺めをり    (季語/春愁)

矢島恵

 船から船を眺める、という構図が好きだ。高校時代、私は船で通学した。その日々、船から船をぼんやり眺めることがよくあった。甲板の手すりに持たれて、行き交う船やはるか沖の船を眺めた。春愁におちこんで眺めたのではないが、ただぼんやりと眺めたことが、今なお新鮮に蘇る。なぜだろうか。
 今日の句は「俳壇」2月号から引いた。作者は本年度の「俳壇賞」受賞者。私もこの人を積極的に推した。「きさらぎは船の漂ふごとき月」「立秋の輝くものに岬かな」「無花果を嫌ひなひとを好きになり」などをおもしろいと思った。作者は1943年生まれ。宮坂静生の「岳」に拠っている。
(坪内稔典)


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