この一句・2005
2005年12月12日

ひたひたと生きてとぷりと海鼠かな    (季語/海鼠)

本村弘一

 なまこを目にするたびに、これを最初に食べた人の蛮勇に感心する。でも、その蛮勇こそ俳句的勇気なのかもしれない。
 なまこはその俳句的勇気によってものの見事に俳句的存在になった。「いきながら一つに氷る海鼠かな」(芭蕉)、「尾頭のこころもとなき海鼠かな」(去来)、「憂きことを海月に語る海鼠かな」(召波)、「安々と海鼠の如き子を生めり」(漱石)というように数々の海鼠の名句が生まれた。
 掲出の句も新しく生まれた海鼠の句の秀作だ。「ひたひたと生きて」というのは人間の事だと思って読者は読む。「とぷりと」は生きてきたことの実感的把握だ。ところが急にその実感が海鼠の存在感に重なる。そのような急変が面白い。この句、「船団」65号の会員作品である。


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